説明

フィルムミラー、その製造方法及び太陽光反射用ミラー

【課題】耐光性、耐候性及び耐傷性を維持しながら、太陽光に対して良好な正反射率を有するフィルムミラー、その製造方法、及び該フィルムミラーを用いて基材に対して貼り替えを容易にした太陽光反射用ミラーを提供することである。
【解決手段】樹脂基材とその上に金属反射層を有するフィルムミラーにおいて、該金属反射層よりも光源から遠い側に自己吸着性接着層を有し、該自己吸着性接着層が吸盤状セル構造を有することを特徴とするフィルムミラー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐光性、耐候性及び耐傷性を維持しながら、太陽光に対して良好な正反射率を有するフィルムミラー、その製造方法、及び該フィルムミラーを用いて金属基材に対して貼り替えを容易にした太陽光反射用ミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油、天然ガス等の化石燃料エネルギーに代わる代替エネルギーとして、石炭エネルギー、バイオマスエネルギー、核エネルギー、並びに風力エネルギー及び太陽エネルギー等の自然エネルギーが検討されているが、化石燃料の代替エネルギーとして最も安定しており、かつ量の多い自然エネルギーは太陽エネルギーであると考えられる。
【0003】
しかしながら、太陽エネルギーは非常に有力な代替エネルギーであるものの、これを活用する観点からは、(1)太陽エネルギーのエネルギー密度が低いこと、並びに(2)太陽エネルギーの貯蔵及び移送が困難であることが問題となると考えられる。
【0004】
これに対して、太陽エネルギーのエネルギー密度が低いという問題は、巨大な反射装置で太陽エネルギーを集めることによって解決することが提案されている。
【0005】
反射装置は、太陽光による紫外線や熱、風雨、砂嵐等に晒されるため、従来、ガラス製ミラーが用いられてきた。ガラス製ミラーは環境に対する耐久性が高い反面、輸送時に破損したり、重いためミラーを設置する架台の強度を持たせるために、プラントの建設費がかさむといった問題があった。
【0006】
上記問題を解決するために、ガラス製ミラーを樹脂製反射シートに置き換えることが考えられてきたが(例えば、特許文献1参照)、樹脂は外部環境に対して弱く、また反射層に銀等の金属を用いると、樹脂層を介して酸素や水蒸気、硫化水素等が透過し、銀を腐食してしまうといった問題もあり、樹脂製ミラーの適用は困難であった。
【0007】
太陽光を集光する目的において、高い反射率を得るという観点では、特許文献2に開示されているように、金属層を可視光領域の反射率の高い銀で構成することが好ましい。しかしながら、銀は耐候性に劣り、酸素・水蒸気・硫黄等で劣化しやすいという問題がある。
【0008】
この問題に対し、特許文献2においては、プラスチック基板が銀膜層の保護層として機能していると考えられる。しかしながら、プラスチックは空気中の水蒸気や酸素を透過しやすいため、酸化により銀が劣化することにより、ミラーの反射率が低下するという問題も招いてしまう。
【0009】
さらに、太陽光を反射する目的でミラーを使用する場合、ミラーを屋外で使用することが多い。屋外で使用する場合には、ミラーが風雨に曝されることになり、そのような厳しい環境下では銀の酸化劣化が早まり、ミラーの反射率の低下の問題はより顕著な問題となる。
【0010】
銀の腐食防止技術については、銀層の光入射面側の隣接層として樹脂層等腐食防止層を塗設する方法が既に知られている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、このような技術でも太陽光反射用のミラーとして用いた場合には、屋外の厳しい環境下におかれるため、腐食に対して十分な効果が得られず、反射率の低下を十分に解消することができなかった。
【0011】
また、銀ミラーの劣化を防止する一つの手段として、紫外線吸収剤と腐食防止剤を含有する層を銀の上層として設ける方法も提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、太陽光反射用ミラーとして使用した場合、紫外線吸収剤自体が経年劣化することで紫外線吸収機能が弱まるにしたがって、銀の光入射面から遠い側から劣化が進み、正反射率の低下を引き起こす問題が発生した。太陽熱発電用の反射ミラーにおいては、太陽光を所望の位置に集光させる必要があるため、高い反射率を維持するだけでなく、高い正反射率を維持する必要があり、銀の裏側からの劣化が正反射率の低下を引き起こすことで問題となることが判明した。
【0012】
従来から、このように外部環境に対して劣化が進行するシート材料に対して、自己吸着性接着層を持たせて交換を容易にする方法が知られていた(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、これら自己吸着性接着層は、アクリル系やエポキシ系等の粘着性接着層と比べて、剥離が容易な反面、屋外での長期間の使用において、太陽光の照射による自己吸着性接着層の劣化により自己吸着性接着層と基材の間に僅かな隙間が生じ、生じた隙間に砂塵やゴミ等が侵入する等して、剥離が生じるといった問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−59382号公報
【特許文献2】特開平6−38860号公報
【特許文献3】特開2002−122717号公報
【特許文献4】特開2008−36895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、耐光性、耐候性及び耐傷性を維持しながら、太陽光に対して良好な正反射率を有するフィルムミラー、その製造方法、及び該フィルムミラーを用いて基材に対して貼り替えを容易にした太陽光反射用ミラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0016】
1.樹脂基材とその上に金属反射層を有するフィルムミラーにおいて、該金属反射層よりも光源から遠い側に自己吸着性接着層を有し、該自己吸着性接着層が吸盤状セル構造を有することを特徴とするフィルムミラー。
【0017】
2.前記金属反射層の金属が銀であることを特徴とする前記1に記載のフィルムミラー。
【0018】
3.前記金属反射層に隣接して金属の腐食防止層を有することを特徴とする前記1または2に記載のフィルムミラー。
【0019】
4.前記金属反射層よりも光源側にガスバリア層を有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【0020】
5.前記樹脂基材または樹脂基材上の少なくともいずれか一層が紫外線吸収剤を含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【0021】
6.光源に最も近い層が傷防止層であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【0022】
7.前記1〜6のいずれか1項に記載のフィルムミラーを製造するフィルムミラーの製造方法であって、前記金属反射層を蒸着プロセスによって形成することを特徴とするフィルムミラーの製造方法。
【0023】
8.前記1〜6のいずれか1項に記載のフィルムミラー、または前記7に記載のフィルムミラーの製造方法により得られたフィルムミラーを用いた太陽光反射用ミラーであって、前記自己吸着性接着層を介して、基材上に前記フィルムミラーを貼り付けて形成されたことを特徴とする太陽光反射用ミラー。
【0024】
9.前記基材が金属基材であることを特徴とする前記8に記載の太陽光反射用ミラー。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、耐光性、耐候性及び耐傷性を維持しながら、太陽光に対して良好な正反射率を有するフィルムミラー、その製造方法、及び該フィルムミラーを用いて基材に対して貼り替えを容易にした太陽光反射用ミラーを提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、樹脂基材とその上に金属反射層を有するフィルムミラーにおいて、該金属反射層に対して光源から遠い側に自己吸着性接着層を有することで、自己吸着性接着層に到達する入射光の照射がほとんど無くなることで自己吸着性接着層の劣化が抑制され、かつ、該自己吸着性接着層が吸盤状セル構造を有することで、金属基材とフィルムミラーの接着性が良好に維持できることを見出した。
【0027】
また、フィルムミラーに金属の腐食防止層、ガスバリア層や紫外性吸収剤含有層を設けることで、フィルムミラー自身の劣化を防ぐことができるとともに、自己吸着性接着層の劣化を防ぎ、基材とフィルムミラーの接着性を長期間に渡り維持できることも同時に見出した。
【0028】
本発明のフィルムミラーは、金属反射層や樹脂層による正反射率の低下を防止するとともに、軽量で柔軟性があり、製造コストを抑え大面積化・大量生産することができ、耐光性、耐候性及び耐傷性を維持しながら、太陽光に対して良好な正反射率を有する。また、長期間の使用により劣化したフィルムミラーを太陽光反射ミラーから剥離し、新しいフィルムミラーに容易に交換することが可能である。
【0029】
〔自己吸着性接着層〕
本発明において、自己吸着性とは、粘着剤や接着剤あるいはマグネット等の第三者の貼付機構によらず、基材自体の吸着機構により貼付性を有することを指す。自己吸着性を示すものには、その吸着性を発現するメカニズムとして、物理的吸着性によるものと素材自体の吸着性によるものとがある。
【0030】
本発明者は、本発明のフィルムミラーに適用するための自己吸着性接着層を鋭意検討した結果、物理的吸着性を示す材料の中でも、吸盤状セル構造を示す自己吸着性接着層が最も吸着力に優れ、経年劣化も少ないことを見出した。
【0031】
本発明の自己吸着性接着層の吸盤状セル構造とは、表面に弾性のある微小な凹凸構造がセル状になった構造が連続的に連なった構造が、あたかも吸盤のような働きをする構造体を指す。吸盤一つの大きさは直径10nm〜1μmのものが好ましく用いられ、さらに好ましくは20〜200nmである。吸盤状セル構造を有する自己吸着性接着層については、エラストマー中にハードセグメントを導入することで、吸盤一つの大きさが直径10nm〜1μm程度の吸盤状セル構造を導入することができる。自己吸着性接着層が吸盤状セル構造を有することは電子顕微鏡により確認できる。
【0032】
本発明のフィルムミラーに設けた自己吸着性接着層の自己吸着力としては、フィルムミラーを貼合して固定するためのアルミ基材等の基材に対し、23℃、50%RH環境下、荷重20Nのロールで圧着後、24時間放置した後の180度剥離試験における吸着力が、好ましくは1〜15N/25mm、より好ましくは5〜10N/25mmの範囲にあるように選定することが望ましい。この吸着力が上記の範囲にあれば、本発明のフィルムミラーは、被着体に密着性よく貼付され、ズレや剥がれが生じにくく、かつ交換時には剥離することができる。
【0033】
本発明の自己吸着性接着層に用いられる樹脂には特に制限はなく、アクリルやポリエステルといった一般的な樹脂が適用可能であるが、中でもポリウレタンエラストマーが最も好適である。
【0034】
自己吸着性接着層を形成するには、樹脂基材上でアクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム等の合成樹脂材料またはゴム材料を化学発泡させ、自己吸着性接着層を形成することができる。
【0035】
また、樹脂基材上に、例えばアクリル樹脂系エマルジョンやスチレン−ブタジエン共重合体系エマルジョンを塗布乾燥して形成することができる。このエマルジョンは剥離性向上剤を含むことが好ましく、剥離性向上剤としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンコポリマー及びこれらの混合物等の軟化点が100〜150℃程度のオレフィン系重合体を挙げることができる。また、ベースとなるアクリル樹脂系エマルジョンやスチレン−ブタジエン共重合体系エマルジョンには、吸着性を調整するために、架橋剤を添加することができる。
【0036】
〔フィルムミラーの構成〕
本発明のフィルムミラーは、樹脂基材とその上に金属反射層を有するフィルムミラーにおいて、該金属反射層に対して光源から遠い側に自己吸着性接着層を有し、該自己吸着性接着層が吸盤状セル構造を有することを特徴とする。
【0037】
また構成層として、金属の腐食防止層、ガスバリア層や紫外性吸収剤含有層等の特別な機能層を設けることも好ましい態様である。
【0038】
(樹脂基材)
本発明に係る樹脂基材としては、従来公知の種々の樹脂フィルムを用いることができる。例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム等を挙げることができる。中でも、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、及びセルロースエステル系フィルムが好ましい。
【0039】
特にポリエステル系フィルム、セルロースエステル系フィルムを用いることが好ましく、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
【0040】
樹脂基材の厚さは、樹脂の種類及び目的等に応じて適切な厚さにすることが好ましい。例えば、一般的には10〜300μmの範囲内である。好ましくは20〜200μm、さらに好ましくは30〜100μmである。
【0041】
(金属反射層)
本発明に係る金属反射層は、太陽光を反射する機能を有する金属等からなる層である。金属反射層の表面反射率は好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。金属反射層は、Al、Ag、Cr、Cu、Ni、Ti、Mg、Rh、Pt及びAuからなる元素群の中から選ばれるいずれかの元素を含む材料により形成されることが好ましい。
【0042】
中でも、反射率、耐食性の観点からAlまたはAgを主成分としていることが好ましく、このような金属の薄膜を二層以上形成するようにしてもよい。本発明においては、特に銀を主成分とする銀反射層とすることが好ましい。
【0043】
また、金属反射層上にSiO、TiO等の金属酸化物からなる層をこの順に設けてさらに反射率を向上させてもよい。
【0044】
例えば、本発明に係る金属反射層(例えば銀反射層)の形成法としては、湿式法及び乾式法のどちらも使用することができる。
【0045】
湿式法とは、めっき法の総称であり、溶液から金属を析出させ膜を形成する方法である。具体例を挙げると銀鏡反応等がある。
【0046】
一方、乾式法とは、真空成膜法の総称であり、具体的には、抵抗加熱式真空蒸着法、電子ビーム加熱式真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト真空蒸着法、スパッタ法等がある。とりわけ、本発明には連続的に成膜するロールツーロール方式が可能な蒸着法が好ましく用いられる。すなわち、本発明のフィルムミラーの製造方法としては、金属反射層(例えば銀反射層)を金属(例えば銀)蒸着によって形成することが好ましい。
【0047】
金属(例えば銀)反射層の厚さは、反射率等の観点から、10〜200nmが好ましく、より好ましくは30〜150nmである。
【0048】
本発明において、金属反射層(例えば銀反射層)は樹脂基材に対して光線入射側にあっても、その反対側にあってもよいが、支持体が樹脂であることから、光線による樹脂劣化を防止する目的から、光線入射側に位置する方が好ましい。
【0049】
(腐食防止剤)
本発明のフィルムミラーに用いられる金属反射層(例えば銀反射層)の腐食防止剤には、大別して、金属(例えば銀)に対する吸着性基を有する腐食防止剤と酸化防止剤が好ましく用いられる。
【0050】
ここで、「腐食」とは、金属(例えば銀)がそれをとり囲む環境物質によって、化学的または電気化学的に浸食されるか若しくは材質的に劣化する現象をいう(JIS Z0103−2004参照)。
【0051】
本発明のフィルムミラーは、前記自己吸着性接着層が酸化防止剤を含有し、かつ金属反射層(例えば銀反射層)の上部隣接層が金属(例えば銀)に対する吸着性基を有する腐食防止剤を含有している態様であることが好ましい。
【0052】
なお、腐食防止剤の含有量は、使用する化合物によって最適量は異なるが、一般的には、0.1〜1.0/mの範囲内であることが好ましい。
【0053】
〈金属(例えば銀)に対する吸着性基を有する腐食防止剤〉
金属(例えば銀)に対する吸着性基を有する腐食防止剤としては、アミン類及びその誘導体、ピロール環を有する化合物、トリアゾール環を有する化合物、ピラゾール環を有する化合物、チアゾール環を有する化合物、イミダゾール環を有する化合物、インダゾール環を有する化合物、銅キレート化合物類、チオ尿素類、メルカプト基を有する化合物、ナフタレン系の少なくとも一種またはこれらの混合物から選ばれることが望ましい。
【0054】
アミン類及びその誘導体としては、エチルアミン、ラウリルアミン、トリ−n−ブチルアミン、O−トルイジン、ジフェニルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2N−ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アセトアミド、アクリルアミド、ベンズアミド、p−エトキシクリソイジン、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウムサリシレート、モノエタノールアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンカーバメイト、ニトロナフタレンアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムシクロヘキサンカルボキシレート、シクロヘキシルアミンシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロヘキシルアンモニウムアクリレート、シクロヘキシルアミンアクリレート等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0055】
ピロール環を有する物としては、N−ブチル−2,5−ジメチルピロール,N−フェニル−2,5ジメチルピロール、N−フェニル−3−ホルミル−2,5−ジメチルピロール,N−フェニル−3,4−ジホルミル−2,5−ジメチルピロール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
トリアゾール環を有する化合物としては、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−ヒドロキシ−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−メチル−1,2,3−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4,5,6,7−テトラハイドロトリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ3’5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
ピラゾール環を有する化合物としては、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリジン、ピラゾリドン、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ヒドロキシピラゾール、4−アミノピラゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
チアゾール環を有する化合物としては、チアゾール、チアゾリン、チアゾロン、チアゾリジン、チアゾリドン、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、P−ジメチルアミノベンザルロダニン、2−メルカプトベンゾチアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0059】
イミダゾール環を有する化合物としては、イミダゾール、ヒスチジン、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5ジヒドロキシメチルイミダゾール、4−フォルミルイミダゾール、2−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−フォルミルイミダゾール、4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
インダゾール環を有する化合物としては、4−クロロインダゾール、4−ニトロインダゾール、5−ニトロインダゾール、4−クロロ−5−ニトロインダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0061】
銅キレート化合物類としては、アセチルアセトン銅、エチレンジアミン銅、フタロシアニン銅、エチレンジアミンテトラアセテート銅、ヒドロキシキノリン銅等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0062】
チオ尿素類としては、チオ尿素、グアニルチオ尿素等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0063】
メルカプト基を有する化合物としては、すでに上記に記載した材料も加えれば、メルカプト酢酸、チオフェノール、1,2−エタンジオール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、グリコールジメルカプトアセテート、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
ナフタレン系としては、チオナリド等が挙げられる。
【0065】
〈酸化防止剤〉
本発明のフィルムミラーに用いられる金属反射層の腐食防止剤としては、酸化防止剤を用いることもできる。
【0066】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、チオール系酸化防止剤及びホスファイト系酸化防止剤を使用することが好ましい。
【0067】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス−〔メチレン−3−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネー〕、3,9−ビス[1,1−ジ−メチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−2,4,8,10−テトラオキオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。特に、フェノール系酸化防止剤としては、分子量が550以上のものが好ましい。
【0068】
チオール系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)等を挙げられる。
【0069】
ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス−(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
【0070】
なお、本発明においては、上記酸化防止剤と下記の光安定剤を併用することもできる。
【0071】
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、1−メチル−8−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2、6,6−テトラメチルピペリジン、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタン−テトラカルボキシレート、トリエチレンジアミン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン等が挙げられる。
【0072】
その他ニッケル系紫外線安定剤として、〔2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)〕−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、ニッケルコンプレックス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル・リン酸モノエチレート、ニッケル・ジブチル−ジチオカーバメート等も使用することが可能である。
【0073】
特にヒンダードアミン系の光安定剤としては、3級のアミンのみを含有するヒンダードアミン系の光安定剤が好ましく、具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、または1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール/トリデシルアルコールと1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸との縮合物が好ましい。
【0074】
(ガスバリア層)
本発明に係るガスバリア層は、湿度の変動、特に高湿度による樹脂基材及び当該樹脂基材で保護される各種機能素子等の劣化を防止するためのものであるが、特別の機能・用途を持たせたものであってもよく、上記特徴を維持する限りにおいて、種々の態様のガスバリア層を設けることができる。本発明においては、前記金属反射層よりも光源側にガスバリア層を設けることが好ましい。
【0075】
ガスバリア層の防湿性としては、40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が、100g/m・day/μm以下、好ましくは50g/m・day/μm以下、さらに好ましくは20g/m・day/μm以下となるように当該ガスバリア層の防湿性を調整することが好ましい。また。酸素透過度としては、測定温度23℃、湿度90%RHの条件下で、0.6cm/m/day/atm以下であることが好ましい。
【0076】
本発明に係るガスバリア層に関しては、その形成方法において特に制約は無いが、無機酸化物膜のセラミック前駆体を塗布した後に、塗布膜を加熱及び/または紫外線照射により、無機酸化物膜を形成する方法が好ましく用いられる。
【0077】
〈セラミック前駆体〉
本発明に係るガスバリア層は、加熱により無機酸化物膜を形成するセラミック前駆体を塗布した後に、一般的な加熱方法が適用して形成することできるが、局所的加熱により形成することが好ましい。当該セラミック前駆体は、ゾル状の有機金属化合物またはポリシラザンが好ましい。
【0078】
〈有機金属化合物〉
本発明に係る有機金属化合物は、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、亜鉛(Zn)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、及びニオブ(Nb)のうちの少なくとも一つの元素を含有することが好ましい。特に、当該有機金属化合物が、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、及びバリウム(Ba)のうちの少なくとも一つの元素を含有することが好ましい。さらに、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、及びリチウム(Li)のうちの少なくとも一つの元素を含有することが好ましい。
【0079】
有機金属化合物としては、加水分解が可能なものであればよく、特に限定されるものではないが、好ましい有機金属化合物としては、金属アルコキシドが挙げられる。
【0080】
前記金属アルコキシドは、下記一般式(I)で表される。
【0081】
一般式(I):MR(ORn−m
前記一般式(I)において、Mは、酸化数nの金属を表す。R及びRは、各々独立に、アルキル基を表す。mは、0〜(n−1)の整数を表す。R及びRは、同一でもよく、異なっていてもよい。R及びRとしては、炭素原子4個以下のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基CH(以下、Meで表す。)、エチル基C(以下、Etで表す)、プロピル基C(以下、Prで表す。)、イソプロピル基i−C(以下、i−Prで表す。)、ブチル基C(以下、Buで表す)、イソブチル基i−C(以下、i−Buで表す)等の低級アルキル基がより好ましい。
【0082】
前記一般式(I)で表される金属アルコキシドとしては、例えば、リチウムエトキシドLiOEt、ニオブエトキシドNb(OEt)、マグネシウムイソプロポキシドMg(OPr−i)、アルミニウムイソプロポキシドAl(OPr−i)、亜鉛プロポキシドZn(OPr)、テトラエトキシシランSi(OEt)、チタンイソプロポキシドTi(OPr−i)、バリウムエトキシドBa(OEt)、バリウムイソプロポキシドBa(OPr−i)、トリエトキシボランB(OEt)、ジルコニウムプロポキシドZn(OPr)、ランタンプロポキシドLa(OPr)、イットリウムプロポキシドY(OPr)、鉛イソプロポキシドPb(OPr−i)等が好適に挙げられる。これらの金属アルコキシドは何れも市販品があり、容易に入手することができる。また、金属アルコキシドは、部分的に加水分解して得られる低縮合物も市販されており、これを原料として使用することも可能である。
【0083】
〈無機酸化物〉
本発明に係る無機酸化物は、上記有機金属化合物を原料とするゾルから局所的加熱により形成されたものであることを特徴とする。したがって、有機金属化合物に含有されているケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、亜鉛(Zn)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)等の元素の酸化物であることを特徴とする。
【0084】
例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等である。これらのうち、好ましくは、酸化ケイ素である。
【0085】
本発明において、有機金属化合物から無機酸化物を形成する方法としては、いわゆるゾル−ゲル法及びポリシラザンを塗布する方法を用いることが好ましい。
【0086】
〈ゾル−ゲル法〉
ここで、「ゾル−ゲル法」とは、有機金属化合物を加水分解すること等により、水酸化物のゾルを得て、脱水処理してゲルとし、さらにこのゲルを加熱処理することで、ある一定の形状(フィルム状、粒子状、繊維状等)の金属酸化物ガラスを調製する方法をいう。異なる複数のゾル溶液を混合する方法、他の金属イオンを添加する方法等により、多成分系の金属酸化物ガラスを得ることも可能である。
【0087】
具体的には、下記工程を有するゾル−ゲル法で、無機酸化物を製造することが好ましい。
【0088】
すなわち、少なくとも水及び有機溶媒を含有する反応液中で、ホウ素イオン存在下にてハロゲンイオンを触媒として、pHを4.5〜5.0に調整しながら、有機金属化合物を加水分解及び脱水縮合して反応生成物を得る工程、及び該反応生成物を200℃以下の温度で加熱してガラス化する工程、を有するゾル−ゲル法により製造されてなることが、高温熱処理による微細孔の発生や膜の劣化等が発生しないという観点から、特に好ましい。
【0089】
前記ゾル−ゲル法において、原料として用いられる有機金属化合物としては、加水分解が可能なものであればよく、特に限定されるものではないが、好ましい有機金属化合物としては、前記金属アルコキシドが挙げられる。
【0090】
上記ゾル−ゲル法において、前記有機金属化合物は、そのまま反応に用いてもよいが、反応の制御を容易にするため溶媒で希釈して用いることが好ましい。希釈用溶媒は、前記有機金属化合物を溶解することができ、かつ水と均一に混合することができるものであればよい。そのような希釈用溶媒としては、脂肪族の低級アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びそれらの混合物が好適に挙げられる。また、ブタノールとセロソルブとブチルセロソルブの混合溶媒、あるいはキシロールとセロソルブアセテートとメチルイソブチルケトンとシクロヘキサンの混合溶媒等を使用することもできる。
【0091】
前記有機金属化合物において、金属がCa、Mg、Al等である場合には、反応液中の水と反応して水酸化物を生成したり、炭酸イオンCO2−が存在すると炭酸塩を生成して沈殿を生ずるため、反応液に隠蔽剤としてトリエタノールアミンのアルコール溶液を添加することが好ましい。溶媒に混合溶解するときの前記有機金属化合物の濃度としては、70質量%以下が好ましく、5〜70質量%の範囲に希釈して使用することがより好ましい。
【0092】
前記ゾル−ゲル法において用いられる反応液は、少なくとも水及び有機溶媒を含有する。前記有機溶媒としては、水及び酸、アルカリと均一な溶液をつくるものであればよく、通常、前記有機金属化合物の希釈に用いる脂肪族の低級アルコール類と同様のものが好適に挙げられる。前記脂肪族の低級アルコール類の中でも、メタノール、エタノールより、炭素数の多いプロパノール、イソプロパノール、ブタノール、及びイソブタノールが好ましい。これは、生成する金属酸化物ガラスの膜の成長が安定であるためである。前記反応液において、水の割合としては、水の濃度として0.2〜50mol/Lの範囲が好ましい。
【0093】
前記ゾル−ゲル法においては、前記反応液中において、ホウ素イオンの存在下にて、ハロゲンイオンを触媒として、有機金属化合物を加水分解する。前記ホウ素イオンB3+を与える化合物としては、トリアルコキシボランB(OR)が好適に挙げられる。その中でも、トリエトキシボランB(OEt)がより好ましい。また、前記反応液中のB3+イオン濃度としては、1.0〜10.0mol/Lの範囲が好ましい。
【0094】
前記ハロゲンイオンとしては、フッ素イオン及び/または塩素イオンが好適に挙げられる。即ち、フッ素イオン単独、塩素イオン単独でもよく、これらの混合物でもよい。用いる化合物としては、上記反応液中でフッ素イオン及び/または塩素イオンを生ずるものであればよく、例えば、フッ素イオン源として、フッ化水素アンモニウムNHHF・HF、フッ化ナトリウムNaF等が好適に挙げられ、塩素イオン源として、塩化アンモニウムNHCl等が好適に挙げられる。
【0095】
前記反応液中の前記ハロゲンイオンの濃度としては、製造しようとする無機マトリックスを有する無機組成物からなるフィルムの膜厚や、その他の条件によって異なるが、一般的には、触媒を含む前記反応液の合計質量に対して、0.001〜2mol/kg、特に0.002〜0.3mol/kgの範囲が好ましい。ハロゲンイオンの濃度が0.001mol/kgより低いと、有機金属化合物の加水分解が十分に進行し難くなり、膜の形成が困難となる。またはロゲンイオンの濃度が2mol/kgを超えると、生成する無機マトリックス(金属酸化物ガラス)が不均一になり易いため、いずれも好ましくない。
【0096】
なお、反応時に使用したホウ素に関しては、得られる無機マトリックスの設計組成中にB成分として含有させる場合は、その含有量に応じた有機ホウ素化合物の計算量を添加したまま生成物とすればよく、またホウ素を除去したいときは、成膜後、溶媒としてのメタノールの存在下、またはメタノールに浸漬して加熱すればホウ素はホウ素メチルエステルとして蒸発させて除去することができる。
【0097】
前記有機金属化合物を、加水分解及び脱水縮合して反応生成物を得る工程においては、通常所定量の前記有機金属化合物を所定量の水及び有機溶媒を含有する混合溶媒に混合溶解した主剤溶液、ならびに所定量の前記ハロゲンイオンを含有する所定量の反応液を、所定の比で混合し十分に攪拌して均一な反応溶液とした後、酸またはアルカリで反応溶液のpHを希望の値に調整し、数時間熟成することにより進行させて反応生成物を得る。前記ホウ素化合物は、主剤溶液または反応液に予め所定量を混合溶解しておく。また、アルコキシボランを用いる場合は、他の有機金属化合物と共に主剤溶液に溶解するのが有利である。
【0098】
前記反応溶液のpHは、目的によって選択され、無機マトリックス(金属酸化物ガラス)を有する無機組成物からなる膜(フィルム)の形成を目的とするときは、例えば、塩酸等の酸を用いてpHを4.5〜5の範囲に調整して熟成するのが好ましい。この場合は、例えば、指示薬としてメチルレッドとブロモクレゾールグリーンとを混合したもの等を用いると便利である。
【0099】
なお、前記ゾル−ゲル法においては、同一成分の同一濃度の主剤溶液、及び反応液(B3+及びハロゲンイオンを含む。)を所定のpHに調整しながら、逐次同一割合で追加添加することにより簡単に継続して、反応生成物を製造することもできる。なお、前記反応溶液の濃度は±50質量%の範囲で、水(酸またはアルカリを含む。)の濃度は、±30質量%の範囲で、及びハロゲンイオンの濃度は±30質量%の範囲で変化させることができる。
【0100】
次に、前工程で得られた反応生成物(熟成後の反応溶液)を、200℃以下の温度に加熱して乾燥しガラス化させる。加熱にあたって、特に50〜70℃の温度区間を注意して徐々に昇温して、予備乾燥(溶媒揮散)工程を経た後さらに昇温することが好ましい。この乾燥は、膜形成の場合、無孔化膜とするために重要である。予備乾燥工程後、加熱し乾燥する温度としては、70〜150℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。
【0101】
〈ポリシラザンを塗布する方法〉
本発明に係るガスバリア層は、加熱により無機酸化物膜を形成するセラミック前駆体を塗布した後に、塗布膜の局所的加熱により形成された無機酸化物を含有することも好ましい。
【0102】
セラミック前駆体が、ポリシラザンを含有する場合は、下記式(I)で表されるポリシラザン及び有機溶剤中に必要に応じて触媒を含む溶液で樹脂基材を被覆し、そして、この溶剤を蒸発させて除去し、それによって樹脂基材上に0.05〜3.0μmの層厚を有するポリシラザン層を残し、そして、水蒸気を含む雰囲気中で酸素、活性酸素、場合によっては、及び窒素の存在下に、上記のポリシラザン層を、局所的加熱することによって、当該樹脂基材上にガラス様の透明な被膜を形成する方法を採用することが好ましい。
【0103】
式(I): −(SiR−NR
式中、R、R、及びRは、同一かまたは異なり、互いに独立して、水素あるいは置換されたアルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基、好ましくは水素、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、フェニル、ビニルまたは3−(トリエトキシシリル)プロピル、3−(トリメトキシシリルプロピル)からなる群から選択される基を表し、この際、nは整数であり、そしてnは、当該ポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められる。
【0104】
触媒としては、好ましくは、塩基性触媒、特にN,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミンまたはN−複素環式化合物が使用される。触媒濃度は、ポリシラザンを基準にして通常0.1〜10モル%、好ましくは0.5〜7モル%の範囲である。
【0105】
好ましい態様の一つでは、R、R及びRの全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザンを含む溶液が使用される。
【0106】
さらに別の好ましい態様の一つでは、本発明によるコーティングは、次式(III)の少なくとも一種のポリシラザンを含む。
【0107】
式(III):−(SiR−NR−(SiR−NR
式中、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素あるいは置換されたアルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基を表し、この際、n及びpは整数であり、そしてnは、当該ポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められる。
【0108】
特に好ましいものは、R、R及びRが水素を表し、そしてR、R及びRがメチルを表す化合物、R、R及びRが水素を表し、そしてR、Rがメチルを表し、そしてRがビニルを表す化合物、R、R、R及びRが水素を表し、そしてR及びRがメチルを表す化合物である。
【0109】
また、次式(IV)の少なくとも一種のポリシラザンを含む溶液も同様に好ましい。
【0110】
式(IV):−(SiR−NR−(SiR−NR−(SiR−NR
式中、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素あるいは置換されたアルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基を表し、この際、n、p及びqは整数であり、そしてnは、当該ポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められる。
【0111】
特に好ましいものは、R、R及びRが水素を表し、そしてR、R、R及びRがメチルを表し、Rが(トリエトキシシリル)プロピルを表し、そしてRがアルキルまたは水素を表す化合物である。
【0112】
溶剤中のポリシラザンの割合は、一般的には、ポリシラザン1〜80質量%、好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは10〜40質量%である。
【0113】
溶剤としては、特に、水及び反応性基(例えばヒドロキシル基またはアミン基)を含まずそしてポリシラザンに対して不活性の有機系で好ましくは非プロトン性の溶剤が好適である。これは、例えば、脂肪族または芳香族炭化水素、ハロゲン炭化水素、エステル、例えば酢酸エチルまたは酢酸ブチル、ケトン、例えばアセトンまたはメチルエチルケトン、エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはジブチルエーテル、並びにモノ−及びポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(ジグライム類)またはこれらの溶剤からなる混合物である。
【0114】
上記ポリシラザン溶液の追加の成分は、塗料の製造に慣用されているもののようなさらに別のバインダーであることができる。これは、例えば、セルロースエーテル及びセルロースエステル、例えばエチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートまたはセルロースアセトブチレート、天然樹脂、例えばゴムもしくはロジン樹脂、または合成樹脂、例えば重合樹脂もしくは縮合樹脂、例えばアミノプラスト、特に尿素樹脂及びメラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステルもしくは変性ポリエステル、エポキシド、ポリイソシアネートもしくはブロック化ポリイソシアネート、またはポリシロキサンである。
【0115】
ポリシラザン調合物のさらに別の成分は、例えば、調合物の粘度、下地の濡れ、成膜性、潤滑作用または排気性に影響を与える添加剤、あるいは無機ナノ粒子、例えばSiO、TiO、ZnO、ZrOまたはAlであることができる。
【0116】
本発明の方法を用いることによって、亀裂及び孔が無いためにガスに対する高いバリア作用に優れる緻密なガラス様の層を製造することができる。
【0117】
形成される被膜の厚さは、100nm〜2μmの範囲内にすることが好ましい。
【0118】
(紫外線吸収剤)
本発明においては、太陽光や紫外線による劣化防止の目的で、紫外線吸収剤を添加することができる。前記樹脂基材上に設けられた構成層のうちいずれか一層に、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
【0119】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、トリアジン系等が挙げられる。
【0120】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0121】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2ー(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2ー(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2ー(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0122】
サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤としては、フェニルサルチレート、2−4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。ヒンダードアミン系紫外線吸収剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等が挙げられる。
【0123】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0124】
紫外線吸収剤としては、上記以外に紫外線の保有するエネルギーを、分子内で振動エネルギーに変換し、その振動エネルギーを、熱エネルギー等として放出する機能を有する化合物が含まれる。さらに、酸化防止剤あるいは着色剤等との併用で効果を発現するもの、あるいはクエンチャーと呼ばれる、光エネルギー変換剤的に作用する光安定剤等も併用することができる。但し、上記の紫外線吸収剤を使用する場合は、紫外線吸収剤の光吸収波長が、光重合開始剤の有効波長と重ならないものを選択する必要がある。
【0125】
通常の紫外線防止剤を使用する場合は、可視光でラジカルを発生する光重合開始剤を使用することが有効である。
【0126】
紫外線吸収剤の使用量は、0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは3〜10質量%である。20質量%よりも多いと密着性が悪くなり、0.1質量%より少ないと耐候性改良効果が小さい。
【0127】
(フィルムミラー全体の厚さ)
本発明に係るフィルムミラー全体の厚さは、ミラーがたわみ防止、正反射率、取り扱い性等の観点から、75〜250μmが好ましく、さらに好ましくは90〜230μm、さらに好ましくは100〜220μmである。
【0128】
(太陽光反射用ミラー)
本発明のフィルムミラーは、太陽光を集光する目的において、好ましく使用できる。フィルムミラー単体で太陽光集光ミラーとして用いることもできるが、より好ましくは、樹脂基材を挟んで銀反射層を有する側と反対側の樹脂基材面に塗設された粘着層を介して、他基材上に、特に金属基材上に、フィルムミラーを貼り付けて太陽光反射用ミラーとして用いることである。
【0129】
太陽熱発電用反射装置として用いる場合、反射装置の形状を樋状(半円筒状)として、半円の中心部分に内部に流体を有する筒状部材を設け、筒状部材に太陽光を集光させることで内部の流体を加熱し、その熱エネルギーを変換して発電する形態が一形態として挙げられる。また、平板状の反射装置を複数個所に設置し、それぞれの反射装置で反射された太陽光を一枚の反射鏡(中央反射鏡)に集光させて、反射鏡により反射して得られた熱エネルギーを発電部で変換することで発電する形態も一形態として挙げられる。特に後者の形態においては、用いられる反射装置に高い正反射率が求められる為、本発明のフィルムミラーが特に好適に用いられる。
【0130】
〈粘着層〉
粘着層としては、特に制限されず、例えばドライラミネート剤、ウエットラミネート剤、粘着剤、ヒートシール剤、ホットメルト剤等のいずれもが用いられる。
【0131】
例えばポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ニトリルゴム等が用いられる。
【0132】
ラミネート方法は特に制限されず、例えばロール式で連続的に行うのが経済性及び生産性の点から好ましい。
【0133】
粘着層の厚さは、粘着効果、乾燥速度等の観点から、通常1〜50μm程度の範囲であることが好ましい。
【0134】
本発明に適宜採用される本発明のフィルムミラーと貼り合せられる他基材としては、銀反射層層の保護性を付与できるものであればよく、例えば、アクリルフィルムまたはシート、ポリカーボネートフィルムまたはシート、ポリアリレートフィルムまたはシート、ポリエチレンナフタレートフィルムまたはシート、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはシート、フッ素フィルム等のプラスチックフィルムまたはシート、または酸化チタン、シリカ、アルミニウム粉、銅粉等を練り込んだ樹脂フィルムまたはシート、これらを練り込んだ樹脂をコーティングしたり、金属蒸着等の表面加工を施した樹脂フィルムまたはシートが用いられる。
【0135】
貼り合わせフィルムまたはシートの厚さは、特に制限はないが通常12〜250μmの範囲であることが好ましい。
【0136】
また、これらの他基材は本発明のフィルムミラーと貼り合わせる前に凹部や凸部を設けてから貼り合せてもよく、貼り合せた後で凹部や凸部を有するように成形してもよく、貼り合わせと凹部や凸部を有するように成形することを同時にしてもよいものである。
【0137】
〈基材〉
本発明に係る太陽光集光ミラーの基材としては、鋼板、銅板、アルミニウム板、アルミニウムめっき鋼板、アルミニウム系合金めっき鋼板、銅めっき鋼板、錫めっき鋼板、クロムめっき鋼板、ステンレス鋼板等熱伝導率の高い金属基材を用いることができる。
【0138】
本発明においては、特に耐食性の良好なめっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板等にすることが好ましい。
【実施例】
【0139】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0140】
〔フィルムミラーの作製〕
(フィルムミラー1の作製)
樹脂基材として、2軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ100μm)を用いた。上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、ポリエステル樹脂(ポリエスター SP−181、日本合成化学社製)、メラミン樹脂(スーパーベッカミンJ−820、DIC社製)、TDI系イソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート)、HDMI系イソシアネート(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)を樹脂固形分比率で20:1:1:2に、固形分濃度10質量%となるようにトルエン中に混合した樹脂を、グラビアコート法によりコーティングして、厚さ0.1μmの接着層を形成し、接着層上に、アルミ反射層として、真空蒸着法により厚さ80nmのアルミ反射層を形成し、アルミ反射層上に、ポリエステル系樹脂とTDI(トリレンジイソシアネート)系イソシアネートを樹脂固形分比率で10:2に混合した樹脂を、グラビアコート法によりコーティングして、厚さ3.0μmの上部隣接層を形成した。
【0141】
次に、上部隣接層の上からドライラミネーションプロセスにより、透明アクリルフィルム(アクリプレンHBS010P、三菱レイヨン社製 厚さ75μm)を貼合した。さらに上記ポリエステル樹脂の下部に、重量平均分子量50万の付加反応型シリコーン系粘着剤100部に白金系触媒1部を加えて35質量%トルエン溶液とし、これを厚さ25μmのポリエステルフィルムの片面に塗布し、130℃で5分間加熱して厚さ35μmのシリコーン系粘着層(Si系)を形成し比較例のフィルムミラー1を得た。
【0142】
(フィルムミラー2の作製)
フィルムミラー1の作製において、シリコーン系粘着層に換えて、アクリル酸ブチル100部、アクリル酸ビニル5部及びアクリル酸3部からなるアクリル系共重合体B100部のトルエン溶液にフェノール系粘着付与剤40部とポリウレタン系架橋剤2部を配合してなるアクリル系粘着層を形成したこと以外は同様にして、比較例のフィルムミラー2を得た。
【0143】
(フィルムミラー3の作製)
フィルムミラー1の作製において、シリコーン系粘着層に換えて、下記ポリウレタンエラストマー(A)を層厚3μmとなるように塗布し、吸盤状セル構造を有する自己吸着性接着層としたこと以外は同様にして、本発明のフィルムミラー3を得た。電子顕微鏡により、自己吸着性接着層が吸盤状セル構造を有することを確認した。
【0144】
〈ポリウレタンエラストマー(A)の合成〉
窒素雰囲気下、撹拌翼、温度計及び水冷式コンデンサーを装着した反応機に、予め減圧脱水処理した、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTG2000SN、保土ヶ谷化学株式会社製、PTMGと略す)86.16質量部と、PTMG中の水酸基に対する1,4−BIC(1)のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が1.48となるように、1,4−BIC(1)12.49質量部とを仕込み、80℃まで昇温した。
【0145】
次いで、撹拌しながら、80℃で1時間反応させた後、触媒としてオクチル酸ビスマス(ネオスタンU−600、日東化成株式会社製)を0.002質量部添加した。
【0146】
次いで、同温度にてイソシアネート基含量が1.78質量%になるまで反応させ、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー(以下、プレポリマーと略す)(A)を得た。
【0147】
次いで、プレポリマー(A)の濃度が20質量%となるように、予め、モレキュラーシーブス4Aを浸漬していたN,N′−ジメチルアセトアミド(和光純薬工業株式会社製、有機合成グレード)(以下、DMAcと略す)を、30℃以下に温度を下げたプレポリマー(A)に添加して、プレポリマーを溶解させた。
【0148】
その後、プレポリマー(A)のDMAc溶液の温度が20℃を越えないように、1.19質量部のエチレンジアミン(以下、EDAと略す)と0.15質量部のジエチルアミン(以下、DEAと略す)との混合アミンの1.13質量%のDMAc溶液(以下、アミン溶液と略す)を滴下して、鎖伸長反応させた。EDAとDEAの比率は、それぞれ90.5モル%及び9.5モル%であり、プレポリマー(A)のDMAc溶液中のイソシアネート基に対する、混合アミンのアミノ基の当量比は0.995である。
【0149】
アミン溶液を滴下後、40℃で2時間反応させた後、50℃まで昇温し、同温度にて3時間反応させてポリウレタンエラストマー(A)のDMAc溶液を得た。
【0150】
(フィルムミラー4の作製)
フィルムミラー3の作製において、アルミ蒸着層に換えて、真空蒸着法により厚さ80nmの銀反射層を形成したこと以外は同様にして、本発明のフィルムミラー4を得た。電子顕微鏡により、自己吸着性接着層が吸盤状セル構造を有することを確認した。
【0151】
(フィルムミラー5の作製)
フィルムミラー4の作製において、ポリウレタンエラストマー(A)に換えて、下記ポリウレタンエラストマー(B)を層厚3μmとなるように塗布し、吸盤状セル構造を有する自己吸着性接着層としたこと以外は同様にして、本発明のフィルムミラー5を得た。電子顕微鏡により、自己吸着性接着層が吸盤状セル構造を有することを確認した。
【0152】
〈ポリウレタンエラストマー(B)の合成〉
窒素雰囲気下、撹拌翼、温度計及び水冷式コンデンサーを装着した反応機に、フィルムミラー3で使用したPTMG85.79質量部と、PTMG中の水酸基に対する1,4−BIC(2)とH12MDI(7)(後述)との混合ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が1.48となるように、1,4−BIC(2)11.19質量部、及び4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(ベスタナットH12MDI、デグサ社製、H12MDI(7)と略す)1.68質量部を仕込み、80℃まで昇温した。
【0153】
次いで、撹拌しながら、80℃で3時間反応させた後、触媒として、オクチル酸ビスマス(ネオスタンU−600、日東化成株式会社製)を0.002質量部添加した。
【0154】
次いで、同温度にてイソシアネート基含量が1.76質量%になるまで反応させ、プレポリマー(B)を得た。
【0155】
次いで、プレポリマー(B)の濃度が20質量%となるように、30℃以下に温度を下げたプレポリマー(B)にDMAcを添加して、プレポリマー(B)を溶解させた。
【0156】
その後、フィルムミラー3と同様の配合処方及び操作にて、EDAとDEAとの混合アミンの1.13質量%のDMAc溶液(アミン溶液)をプレポリマー(B)のDMAc溶液に滴下し、鎖伸長反応させた。これにより、ポリウレタンエラストマー(B)のDMAc溶液を得た。
【0157】
(フィルムミラー6の作製)
フィルムミラー5の作製において、自己吸着性接着層と上部隣接層にそれぞれ腐食防止剤としてグリコールジメルカプトアセテートを塗布後に0.2g/mとなるよう調整した量を添加したこと以外は同様にして、本発明のフィルムミラー6を得た。電子顕微鏡により、自己吸着性接着層が吸盤状セル構造を有することを確認した。
【0158】
(フィルムミラー7の作製)
フィルムミラー6の作製において、ポリエステルフィルム上に自己吸着性接着層を塗布する前に、ポリエステルフィルムと自己吸着性接着層の間に、下記真空蒸着プロセスにより、厚さ300nmの酸化ケイ素のガスバリア層を形成した以外は同様にして、本発明のフィルムミラー7を得た。電子顕微鏡により、自己吸着性接着層が吸盤状セル構造を有することを確認した。
【0159】
〈真空蒸着法によるガスバリア層〉
真空蒸着装置を用い、チャンバーの到達真空度が3.0×10−5torr(4.0×10−3Pa)になるまで排気した後、酸素ガスをコーティングドラムの近傍に、チャンバー内の圧力を3.0×10−4torr(4.0×10−2Pa)に保って導入し、蒸発源の一酸化ケイ素をピアス型電子銃により、約10kwの電力で加熱して蒸着させ、コーティングドラム上を120m/minの速度で走行するポリエステルフィルム上に、厚さが100nmの酸化ケイ素のガスバリア層を形成した。
【0160】
(フィルムミラー8の作製)
フィルムミラー7の作製において、銀蒸着層の上部隣接層中に紫外線吸収剤として、Tinuvin928を樹脂に対して質量比で1%含有させた後に銀蒸着層に塗布したこと以外は同様にして、本発明のフィルムミラー8を得た。電子顕微鏡により、自己吸着性接着層が吸盤状セル構造を有することを確認した。
【0161】
(フィルムミラー9の作製)
フィルムミラー8の作製において、透明アクリルフィルムの上部に下記傷防止層(ハードコート層)を塗布したこと以外は同様にして、本発明のフィルムミラー9を得た。電子顕微鏡により、自己吸着性接着層が吸盤状セル構造を有することを確認した。
【0162】
〈傷防止層〉
塗布液として下記組成の傷防止層用塗布液を調製し、前記ポリエステルフィルムの上に、硬化後の膜厚が3μmとなるようにマイクログラビアコーターを用いて塗布し、溶剤を蒸発乾燥後、高圧水銀灯を用いて0.2J/cmの紫外線照射により硬化させハードコートフィルムを得た。
【0163】
〈傷防止層用塗布液〉
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 70質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 30質量部
光反応開始剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製) 4質量部
酢酸エチル 150質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 150質量部
シリコーン化合物(BYK−307、ビックケミージャパン社製) 0.4質量部
作製したフィルムミラーの内容を表1に示す。
【0164】
【表1】

【0165】
〔太陽光反射用ミラーの作製〕
(太陽光反射用ミラー1〜9の作製)
上記作製したフィルムミラー1〜9を縦4cm×横4cmに切り出し、厚さ0.1mmで、縦4cm×横5cmのアルミ板と粘着層または自己吸着性接着層を介して貼り合せて、それぞれ太陽光反射用ミラー1〜9を得た。
【0166】
〔太陽光反射用ミラーの評価〕
上記作製した太陽光反射用ミラーについて、下記の方法により正反射率及び耐候性、耐光性、鉛筆硬度、スチールウール試験、黄色試験、粘着力及び剥離性の評価を行った。
【0167】
(正反射率の測定)
島津製作所社製の分光光度計「UV265」に、積分球反射付属装置を取り付けたものを改造し、反射面の法線に対して、入射光の入射角を5°となるように調整し、反射角5°の正反射率を測定した。評価は、350nmから700nmまでの平均反射率として測定した。
【0168】
(正反射率の耐候性試験)
85℃、85%RHの条件で30日間放置後の正反射率を、上記光線反射率測定と同様の方法により測定し、強制劣化前の正反射率と強制劣化後の正反射率から、強制劣化による正反射率の低下率を算出し、下記基準で評価した。
【0169】
5:正反射率の低下率が5%未満
4:正反射率の低下率が5%以上10%未満
3:正反射率の低下率が10%以上15%未満
2:正反射率の低下率が15%以上20%未満
1:正反射率の低下率が20%以上
(正反射率の耐光性試験)
岩崎電気製アイスーパーUVテスターを用いて、65℃の環境下で7日間紫外線照射を行った後、上記方法により正反射率を測定し、紫外線照射前後における正反射率の低下率を算出し、下記基準で評価した。
【0170】
5:正反射率の低下率が5%未満
4:正反射率の低下率が5%以上10%未満
3:正反射率の低下率が10%以上15%未満
2:正反射率の低下率が15%以上20%未満
1:正反射率の低下率が20%以上
(鉛筆硬度試験)
JIS−K5400に基づいて、各サンプルの45°傾斜、1kg荷重における鉛筆硬度を測定した。
【0171】
(スチールウール試験)
表面に純水10mlを、霧吹きを用いて噴霧した後に、#0000番のスチールウールを用いて、1000g/cmの摩擦荷重で10回往復摩擦し、その後の表面の傷跡の有無を目視観察し、下記基準で評価した。
【0172】
5:全く傷が認められない
4:わずかに傷が認められる
3:傷は認められるが、実用に耐えうるレベルである
2:傷が多く、実用に耐えない
1:傷が著しい
(黄色変化)
岩崎電気製アイスーパーUVテスターを用いて、65℃の環境下で7日間紫外線照射を行った後、目視により黄色変化を観察し、下記基準で評価した。
【0173】
5:目視で色味の差が全く見えない
4:目視で色味の差がわずかに見える
3:目視で色味の差が見えるが、実用上問題ないレベルにある
2:目視で色味の差がはっきり見え、実用上問題のレベルにある
1:色味の差が著しい
(粘着力の評価)
フィルムミラーの基材に対する粘着力評価は、初期粘着力、曝露後粘着力及び熱老化後粘着力について、以下のようにして行った。フィルムミラーを25mm幅にカットし、金属基材に貼り付け、質量が2kgのゴムローラーで2往復して圧着し、以下の(a)、(b)を測定し、180°ピール法により粘着力を評価した。なお、測定はいずれも、23±2℃、剥離速度300mm/分で行った。
【0174】
(a)初期粘着力
貼り合わせてから23±2℃で1日経過した後に測定した粘着力を初期粘着力とした。
【0175】
(b)熱劣化後粘着力
貼り合わせ後、80±1℃の熱風循環式恒温槽に14日間放置し、さらに、23±2℃で2時間放置後に測定した粘着力を熱老化後粘着力とした。なお、経時変化の評価は、熱劣化前後の粘着力変化((b)/(a))を算出して比較した。粘着力変化は値が小さい方が好ましい。
【0176】
(剥離性の評価)
フィルムミラーを金属基材に貼り付け、質量が2kgのゴムローラーで2往復して圧着し、1ヶ月間放置した後に剥離した様子を、下記基準で3段階官能評価を行った。
【0177】
3:金属基材に糊残りがなく、スムーズに剥離することができる
2:僅かに糊残りが認められるが、剥離可能
1:容易に剥がすことができない、もしくは剥がれが生じてしまう
評価の結果を表2、3に示す。
【0178】
【表2】

【0179】
【表3】

【0180】
表2、3から明らかなように、本発明のフィルムミラーを用いた太陽光反射用ミラーの各種特性は、比較例に対して優れていることが分かる。すなわち、本発明の上記手段により、耐光性、耐候性及び耐傷性を維持しながら、太陽光に対して良好な正反射率を有するフィルムミラー、その製造方法、及びそれを用いた太陽光反射用ミラーを提供でき、基材に対して貼り替えを容易にした太陽光反射用ミラーを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材とその上に金属反射層を有するフィルムミラーにおいて、該金属反射層よりも光源から遠い側に自己吸着性接着層を有し、該自己吸着性接着層が吸盤状セル構造を有することを特徴とするフィルムミラー。
【請求項2】
前記金属反射層の金属が銀であることを特徴とする請求項1に記載のフィルムミラー。
【請求項3】
前記金属反射層に隣接して金属の腐食防止層を有することを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムミラー。
【請求項4】
前記金属反射層よりも光源側にガスバリア層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【請求項5】
前記樹脂基材または樹脂基材上の少なくともいずれか一層が紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【請求項6】
光源に最も近い層が傷防止層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムミラーを製造するフィルムミラーの製造方法であって、前記金属反射層を蒸着プロセスによって形成することを特徴とするフィルムミラーの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムミラー、または請求項7に記載のフィルムミラーの製造方法により得られたフィルムミラーを用いた太陽光反射用ミラーであって、前記自己吸着性接着層を介して、基材上に前記フィルムミラーを貼り付けて形成されたことを特徴とする太陽光反射用ミラー。
【請求項9】
前記基材が金属基材であることを特徴とする請求項8に記載の太陽光反射用ミラー。

【公開番号】特開2011−203553(P2011−203553A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71577(P2010−71577)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】