説明

フェノール樹脂組成物、その硬化物、銅張積層板用樹脂組成物、銅張積層板、及び新規フェノール樹脂

【課題】硬化物において優れた耐熱性及び難燃性を与えるフェノール樹脂組成物、その硬化物、銅張積層板用樹脂組成物、及び、優れた耐熱性と難燃性とを兼備した銅張積層板を提供すること。
【解決手段】カルボキシル基が二価の芳香族炭化水素基を介してトリアジン環に結合した構造式で表される化学構造(A)を、フェノールノボラック樹脂の分子構造中に部分構造として有するフェノール樹脂(I)、及びエポキシ樹脂等の硬化剤(II)を必須成分とすることを特徴とするフェノール樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物における耐熱性及び難燃性に優れ、プリント基板用樹脂組成物に適するフェノール樹脂組成物、その硬化物、プリント基板用樹脂組成物、及び、優れた耐熱性と難燃性とを兼備した銅張積層板、及びこれらの性能を硬化物に与える新規フェノール樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂とエポキシ樹脂とを必須成分とする硬化性組成物は、耐熱性、密着性、電気絶縁性等に優れた硬化物を与えることから、半導体封止材、プリント基板、塗料、注型材料用途等に好適に用いられている。これらの用途のうち、電気部品、電子部品の技術分野では、樹脂材料に対して難燃性能が求められており、例えば、半導体封止材料として用いられている樹脂材料には、難燃性を付与するために臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン系難燃剤、及びは難燃助剤として三酸化、四酸化、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物が配合されている。然し乍ら、近年の環境、安全への取り組みが加速する中で、ダイオキシン発生が懸念されるハロゲン系の難燃剤や、発ガン性が疑われているアンチモン化合物は使用が避けられる傾向にあり、これらに代わる環境負荷の低い新規の難燃化方法の開発要求が強くなっている。
【0003】
さらに近年の技術革新に伴う耐熱性、耐湿性、難燃性、低誘電率、低誘電正接、低熱膨張等を高いレベルで兼備する熱硬化性樹脂組成物が求められており、このため、エポキシ樹脂と組み合わせて用いられるフェノール樹脂にも耐熱性、耐湿性、難燃性、低誘電率等の付加価値の高い性能が求められており、特にハロゲンフリーで高度な難燃性を持つ材料の開発が強く要求されている。
【0004】
上記の問題を解決するため、ハロゲンフリーで優れた難燃性を発現する熱硬化システムとして、エポキシ樹脂の硬化剤に分子構造内にトリアジン環を含有するノボラック型フェノール樹脂を用いる技術が提案されている(例えば、下記特許文献1、2参照。)。
然し乍ら、これらの分子構造内にトリアジン環を含有するノボラック型フェノール樹脂は、その硬化物において高度な難燃性を示すものの、該フェノール樹脂は燃焼時に分子構造が分解し、不活性ガスを発生させるという作用により難燃効果を発現させるものであることから、本来的に熱に弱く、耐熱性に優れた硬化物を得る事が困難なものであった。
【0005】
【特許文献1】特許第3502042号報公報
【特許文献2】特開2001−226464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化物において優れた耐熱性及び難燃性を与えるフェノール樹脂組成物、その硬化物、銅張積層板用樹脂組成物、及び、優れた耐熱性と難燃性とを兼備した銅張積層板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、カルボキシル基含有芳香族炭化水素基とアミノ基とをトリアジン環上に同時に有するトリアジン化合物を、アルデヒド類及びフェノール類と反応させて得られる縮合物を、熱硬化性樹脂組成物の主剤として用いることにより、得られる硬化物が優れた難燃性を発現すると共に、本来、これと相反する性能である耐熱性をも同時に兼備できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、カルボキシル基が二価の芳香族炭化水素基を介してトリアジン環に結合した化学構造(A)を分子構造中に部分構造として有するフェノール樹脂(I)、及び硬化剤(II)を必須成分とすることを特徴とするフェノール樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明は、更に、上記フェノール樹脂組成物に、更に有機溶剤を必須成分として含有する銅張積層板用樹脂組成物に関する。
【0010】
本発明は、更に、上記銅張積層板用樹脂組成物を、ガラスクロスに含浸させてプリプレグを得、複数のプリプレグと銅箔とを積層、硬化させて得られるものであることを特徴とする銅張積層板に関する。
【0011】
本発明は、更に、フェノール類(x1)と、カルボキシル基含有芳香族炭化水素基及びアミノ基をトリアジン環上の置換基として有するトリアジン化合物(x2)と、アルデヒド類(x3)とを反応させて得られる分子構造を有し、かつ、該分子構造中に下記構造式(1)
【0012】
【化1】


(式中、Rは、水素原子、炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、臭素原子、又は塩素原子を表し、破線部は他の分子構造との結合手を表し、n及びmは1〜4の整数を表す。)
で表される構造部位を有し、かつ、150℃でのICI溶融粘度が100ポイズ以下であることを特徴とする新規フェノール樹脂に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、硬化物に優れた耐熱性及び難燃性を与えるフェノール樹脂組成物、その硬化物、新規フェノール樹脂、銅張積層板用樹脂組成物、及び、優れた耐熱性と難燃性とを兼備した銅張積層板を提供できる。
このため、本発明のフェノール樹脂組成物は、特に、銅張積層板用樹脂組成物用途において、高密度実装化や、高周波対応化、高速演算化などに対応した高性能材料として有用である。また、該組成物を熱硬化してなる硬化物は、難燃性及び耐熱性に加え、耐湿性、密着性等においても良好な性能を発現するため、電気電子部品のみならず、接着剤、複合材料等の用途においても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のフェノール樹脂組成物は、前記した通り、カルボキシル基が二価の芳香族炭化水素基を介してトリアジン環に結合した化学構造(A)を分子構造中に部分構造として有するフェノール樹脂(I)、及び硬化剤(II)を必須成分とするものである。本発明ではフェノール樹脂(I)の分子構造中にトリアジン骨格を有することから硬化物を、一般に燃焼を招く300℃近い高温環境に晒した際に、該トリアジン骨格が分解し、不活性な窒素ガスを放出して、成形物表面に不活性ガスの層を形成することによって優れた難燃性を発現する。一方、前記フェノール樹脂(I)を硬化させた際、該樹脂中のカルボキシル基が硬化剤(II)と結合することによって、高温環境下においてトリアジン骨格が過度に分解するのが抑制される。その結果、カルボキシル基含有トリアジン骨格(A)を分子構造内に有するフェノール樹脂(I)は耐熱性と難燃性とをバランスよく兼備した材料となる。
【0015】
ここで、前記フェノール樹脂(I)中に存在する、カルボキシル基が二価の芳香族炭化水素基を介してトリアジン環に結合した化学構造(A)は、カルボキシル基とトリアジン環とが、二価の芳香族炭化水素基を介して結合した構造を有する部分化学構造である。ここで、二価の芳香族炭化水素基としてはフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、及びこれらの芳香核に炭素原子数1〜4のアルキル基が結合した構造のものなどが挙げられる。かかる化学構造(A)は、具体的には、本発明では下記構造式(1)で表されるものが、硬化物の耐熱性の改善効果が顕著なものとなる点から好ましい。
【0016】
【化2】

ここで、Rは、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基等の炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の芳香族炭化水素基、臭素原子、又は塩素原子を表す。また、破線部は他の分子構造との結合手を表し、n及びmは1〜4の整数を表す。
【0017】
かかる構造式(1)の中でも特に下記構造式で表される安息香酸構造を有するトリアジン構造が耐熱性の改善効果が優れる点から好ましい。
【0018】
【化3】

【0019】
前記カルボキシル基含有トリアジン骨格(A)を分子構造内に有するフェノール樹脂(I)は、具体的には、フェノール類(x1)と、カルボキシル基含有芳香族炭化水素基及びアミノ基をトリアジン環上の置換基として有するトリアジン化合物(x2)と、アルデヒド類(x3)とを反応させて得られる分子構造であることが硬化物の硬化性及び難燃性が良好となる点から好ましい。
【0020】
ここで用いるフェノール類(x1)は、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−イソプロピルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−sec−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール等のフェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール等のナフトール類、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール等のキシレノール類等の一価フェノール類;レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1’−ビス(ジヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(ジヒドロキシナフチル)メタン、テトラメチルビフェノール、ビフェノール、ヘキサメチルビフェノール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のナフタレンジオール類等の二価フェノール類;トリスヒドロキシフェニルメタン等の三価フェノール類が挙げられる。
【0021】
これらのなかでも、特にフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、ナフトール類、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,6−キシレノール、レゾルシン、ハイドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンが、工業的生産が容易であり、かつ、硬化性に優れフェノール樹脂(I)が得られる点から好ましく、とりわけフェノール、o−クレゾールが好ましい。
【0022】
カルボキシル基含有芳香族炭化水素基及びアミノ基をトリアジン環上の置換基として有するトリアジン化合物(x2)は、例えば、カルボキシルナフチル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン;カルボキシルビフェニル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン;その他下記構造式(2)
【0023】
【化4】

(式中、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子のいずれかを表し、n及びmは1〜5の整数を表す)
で表わされる化合物が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、特に上記構造式(2)で表される化合物が硬化物の耐熱性の改善効果が顕著なものとなる点から好ましい。
【0025】
前記アルデヒド類(x3)は、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、
アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド;ベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフチルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド、サリチルアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−3,4−ジメチルベンズアルデヒド、4−ヒドロキシビフェニルアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、5−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、6−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、7−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒドなどのヒドロキシル基置換芳香族アルデヒドが挙げられる。これらの中でも、特に工業的供給安定性、得られる硬化物の耐熱性、難燃性、誘電特性に優れる点からホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドが好ましく、特にホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが好ましい。
【0026】
前記したフェノール樹脂(I)は、フェノール類(x1)と、カルボキシル基、アミノ基、及びトリアジン骨格を有する化合物(x2)と、アルデヒド類(x3)に加え、更に、前記化合物(x2)の他のアミノ基含有トリアジン骨格を有する化合物(x4)を反応させた構造のものであってもよい。かかる化合物(x4)を用いることで、硬化物の難燃性と耐熱性とのバランスの調整が容易となる。
【0027】
前記トリアジン環を有する化合物(x4)としては、特に限定されるものではないが、下記構造式(3)
【0028】
【化5】

【0029】
(式中、R、R、Rは、アミノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、フェニル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数1〜6のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数1〜6のアルキルオキシカルボニル基、酸基、ビニル基、シアノ基、ハロゲン原子のいずれかを表す)
で表わされる化合物が挙げられる。
【0030】
前記構造式(3)で表わされる化合物は、具体的にはメラミン、あるいはアセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどのグアナミン誘導体、シアヌル酸、あるいはメチルシアヌレート、エチルシアヌレート、アセチルシアヌレート、塩化シアヌルなどのシアヌル酸誘導体等が挙げられる。これらの中でも、R、R、Rのうちのいずれか2つ又は3つがアミノ基であるメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどのグアナミン誘導体が、工業的に入手が容易なことから、より好ましい。
【0031】
本発明で用いるフェノール樹脂(I)は、上記(x1)〜(x3)の各成分、或いは、(x1)〜(x4)の各成分を反応させて得られるものであるが、具体的には、例えば、
フェノールノボラック樹脂の分子構造中に下記構造a又は構造b
【0032】
【化6】


を有するものが挙げられる。なお、ここでR及びnは前記構造式(1)におけるものと同義であり、Xは前記フェノールノボラック樹脂中の芳香核を表す。また、該フェノール樹脂(I)の分子構造中には、下記構造cに示すようにトリアジン構造が複数連結した構造を有していてもよい。
【0033】
【化7】

ここで、構造c中、R、n、Xは前記構造a又は構造bにおけるものと同義であり、pは1〜5の整数である。
【0034】
また、本発明においては、前記フェノール樹脂(I)中、残留する未反応フェノール類(x1)の含有率が3質量%以下であることが好ましい。未反応フェノール類(x1)の含有率が3質量%以下である場合、これを硬化させて得られる硬化物の耐熱性、耐湿性に優れたものとなる。
【0035】
次に、上記した(x1)〜(x3)の各成分、或いは、(x1)〜(x4)の各成分を反応させてフェノール樹脂(I)を製造する方法は、具体的には、フェノール類(x1)、化合物(x2)、及びアルデヒド類(x3)、更に必要により前記化合物(x4)を無触媒あるいは触媒存在下で反応させる方法が挙げられる。この際、系のpHは3.0〜9.0の範囲であることが好ましい。また、各原料の反応順序も特に制限はなく、フェノール類(x1)、アルデヒド類(x3)をまず反応させてから化合物(x2)、必要により更に化合物(x4)を加えてもよいし、逆にアルデヒド類(x3)、化合物(x2)、必要により化合物(x4)を反応させてからフェノール類(x1)を加えて反応させてもよい。或いは、同時に全ての原料を加えて反応させてもよい。
【0036】
この時、フェノール類(x1)に対するアルデヒド類(x3)のモル比は特に限定されるものではないが、好ましくはアルデヒド類(x3)/フェノール類(x1)=0.1〜1.1(モル比)であり、より好ましくは前記比として0.2〜0.8である。
【0037】
フェノール類(x1)に対する化合物(x2)とのモル比は、反応系が均一であって、かつ、反応物も均一になる点、及び得られる硬化物の架橋密度が適当であり、硬化物物性に優れる点から、化合物(x2)/フェノール類(x1)=0.05〜1.50(モル比)となる範囲であることが好ましく、特に化合物(x2)/フェノール類(x1)=0.05〜0.50(モル比)であることが好ましい。
【0038】
また、化合物(x4)を用いる場合は、フェノール類(x1)に対する化合物(x2)と化合物(x4)の総量とのモル比は、反応系が均一であって、かつ反応物も均一になる点、及び得られる硬化物の架橋密度が適当であり、難燃効果と耐熱性とのバランスに優れる点から、化合物(x2)と化合物(x4)の総量/フェノール類(x1)=0.05〜1.50(モル比)である事が好ましく、特に好ましくは前記比として0.05〜0.50となる範囲であって、かつ、化合物(x2)/化合物(x4)=0.05〜9.00(モル比)となる範囲であることが好ましい。更に、物性バランス上、耐熱性を重視する場合には化合物(x2)/化合物(x4)=0.5〜7.0(モル比)となる範囲であることが好ましく、これに対して、溶剤溶解性を重視する場合には化合物(x2)/化合物(x4)=0.1〜3.0(モル比)がとなる範囲であることが好ましい。従って、これらの範囲が重複する(x2)/化合物(x4)=0.5〜3.0なる範囲は耐熱性と溶剤溶解性のバランスが良好なフェノール樹脂(I)が得られる点から特に好ましい。
【0039】
また、触媒を使用する場合、塩基性触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、およびこれらの酸化物、アンモニア、1〜3級アミン類、ヘキサメチレンテトラミン、炭酸ナトリウム等が挙げられ、酸触媒としては、例えば塩酸、硫酸、スルホン酸、燐酸等の無機酸、シュウ酸、酢酸等の有機酸、ルイス酸、あるいは酢酸亜鉛などの2価金属塩等が挙げられる。ここで、本発明のフェノール樹脂組成物を電気電子材料用の樹脂として使用する場合には、金属などの無機物が触媒残として残ないようにすることが好ましいことから、塩基性の触媒としてはアミン類、酸性の触媒としては有機酸を使用することが好ましい。このような観点から本発明では、上記反応を無触媒にて行うことが特に好ましい。
【0040】
また、上記反応は反応制御の面から反応を各種溶媒の存在下で行ってもよい。必要に応じて中和、水洗して塩類などの不純物の除去を行ってもよいが、無触媒あるいは触媒にアミン類を使用した場合は不純物の除去は行わなくてもよい。
【0041】
反応終了後、縮合水、未反応のアルデヒド類(x3)、フェノール類(x1)、溶媒等を常圧蒸留、真空蒸留等の常法にしたがって除去する。この時、メチロール基を実質的に含まないフェノール樹脂(I)を得るためには120℃以上の加熱処理を行うことが好ましい。また120℃以上の温度であれば充分時間をかけることによりメチロール基を消滅させることができるが、効率的に消滅させるにはより高い温度、好ましくは150℃以上の加熱処理を行うことが好ましい。この時高温においてはノボラック樹脂を得るときの常法にしたがい、加熱とともに蒸留することが好ましい。
【0042】
このようにして得られるフェノール樹脂(I)は、特に、150℃でのICI溶融粘度が100ポイズ以下であることを特徴とする本発明の新規フェノール樹脂であることが難燃性と耐熱性とのバランスに優れる点から好ましく、従って、分子構造中に下記構造式(1)
【0043】
【化8】


(式中、Rは、水素原子、炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、臭素原子、又は塩素原子を表し、破線部は他の分子構造との結合手を表し、n及びmは1〜4の整数を表す。)
で表される構造部位を有し、かつ、150℃でのICI溶融粘度が100ポイズ以下であることを特徴とする本発明の新規フェノール樹脂であることが特に好ましい。
【0044】
また、前記フェノール樹脂(I)の溶融粘度は、150℃でのICI溶融粘度が30〜100ポイズであることが樹脂の流動性と、硬化物に優れた耐熱性及び難燃性とのバランスに優れる点から特に好ましい。
また、前記フェノール樹脂(I)は、その分子構造中に窒素原子を2〜13質量%となる割合で含有するものであることが好ましい。すなわち、前記したとおり、該樹脂中に含まれるトリアジン骨格は無駄なく効率的に難燃効果に寄与するため、フェノール樹脂(I)は窒素原子の量を少なくしても優れた難燃効果を発現する。よって、従来のATN樹脂の如く大凡20質量%の窒素原子量に比べて、大幅に窒素原子の量を少なくしても優れた難燃効果を発現することは特筆すべき点である。このように、フェノール樹脂(I)中の窒素原子量を少なくできる結果、フェノール樹脂(I)は溶融粘度の低いものとなって溶融時の流動性が飛躍的に向上する結果、プリント基板用途におけるワニスの低粘度化により作業性が飛躍的に向上する。なお、フェノール樹脂(I)中の窒素原子の含有量は、原料成分の総仕込み質量と、化合物(x2)及び化合物(x4)の仕込み質量と窒素原子の質量とから算出して求めることができる。
【0045】
上記フェノール樹脂(I)は、更に、その分子量分布(Mw/Mn)が2〜5の範囲であることが好ましい。即ち、Mw/Mnが2以上の場合、溶剤溶解性が良好となる一方、Mw/Mnが5以下の場合、難燃効果が良好なものとなる。
【0046】
また、前記フェノール樹脂(I)は、耐熱性と難燃性という相互に背反する性能を兼備させるために、該フェノール樹脂(I)中のカルボキシル基の量は適正な範囲に調節されていることが望ましく、具体的にはカルボキシル基の含有率が、カルボキシル基当量500〜1500g/当量なる条件を満たす範囲であることが好ましい。なお、フェノール樹脂(I)中のカルボキシル基の含有量は、原料成分の総仕込み質量と、化合物(x2)の仕込み質量、及びカルボキシル基の質量とから算出して求めることができる。
【0047】
本発明のフェノール樹脂組成物における硬化剤(II)は、アルキレン基、ポリオキシアルキレン基で2つのマレイミドが結節された構造を有する脂肪族ビスマレイミド、
フェニレン基、ビフェニレン基で2つのマレイミドが結節された構造を有する芳香族ビスマレイミド、フェノールノボラック樹脂の芳香核にアルキル基を介してマレイミド基が結合した多官能マレイミド化合物、ヘキサミン、エポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でも、特に、電気、電子部品用途においては、硬化物の低誘電率、低誘電正接等の電気特性に優れると共に、耐熱性の改善効果が顕著なものとなる点からエポキシ樹脂が好ましい。
【0048】
ここで用いるエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等の2価のフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール変性型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等の3価以上のフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、有機リン化合物で変性されたエポキシ樹脂などが挙げられる。
更に、該フェノール樹脂組成物中のフェノール性水酸基をグリシジル化してエポキシ樹脂にしたものを、硬化剤(II)として用いて良い。
【0049】
ここで前記フェノール樹脂(I)をグリシジル化してエポキシ樹脂にする方法は、例えば、フェノール樹脂(I)とエピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリン類とを常法により反応させればよい。
【0050】
また、前記フェノール樹脂(I)と、前記エポキシ樹脂中のエポキシ基との配合割合は、該フェノール樹脂(I)中のフェノール性水酸基と、エポキシ樹脂中のエポキシ基とのモル比(フェノール性水酸基/エポキシ基)が0.8〜1.2となる割合であることが硬化性及び硬化物の耐熱性の点から好ましい。
【0051】
本発明のフェノール樹脂組成物は、前記フェノール樹脂(I)及び硬化剤(II)を必須とするものであるが、更に、用途、要求特性に応じて、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、フェノールトリメチロールメタン樹脂、テトラフェノロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ビスフェノールFノボラック樹脂等を併用してもよい。
【0052】
また、上記フェノール樹脂(I)と硬化剤(II)との硬化反応を速やかに進行させるために、硬化促進剤を適宜使用することもできる。前記硬化促進剤としては、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。
【0053】
本発明のフェノール樹脂組成物は、用途により必要に応じて、無機充填剤、改質剤として使用される熱硬化性および熱可塑性樹脂、難燃付与剤、顔料、シランカップリング剤、離型剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0054】
前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらのなかでも特に溶融シリカが無機充填材の充填率を高めることができる点から好ましい。ここで、溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。
【0055】
無機充填材の配合割合は適用用途や所望特性によって、望ましい範囲が異なるが、例えば半導体封止材用途に使用する場合は、線膨張係数や難燃性を鑑みれば高い方が好ましく、フェノール樹脂組成物全体量に対して65〜95質量%の範囲、特に85〜95質量%の範囲であることが好ましい。また導電ペーストや導電フィルムなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0056】
前記改質剤として使用される熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂としては種々のものが全て使用できるが、例えばフェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などが例示できる。
【0057】
前記難燃付与剤は、例えば、ハロゲン化合物、燐原子含有化合物や窒素原子含有化合物や無機系難燃化合物などが挙げられる。具体的には、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂やブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などのハロゲン化合物、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリス(2,6ジメチルフェニル)ホスフェート、レゾルシンジフェニルホスフェートなどのリン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、赤リン、リン酸グアニジン、ジアルキルヒドロキシメチルホスホネートなどの縮合リン酸エステル化合物などの燐原子含有化合物、メラミンなどの窒素原子含有化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、硼酸カルシウムなどの無機系難燃化合物が挙げられる。
然しながら、本発明のフェノール樹脂組成物は、環境負荷の高いハロゲン系の難燃剤を使用しなくとも優れた難燃効果を発現することを特徴とする為、上記した難燃付与剤を用いる場合には、燐原子含有化合物や窒素原子含有化合物や無機系難燃化合物を用いることが好ましい。
【0058】
本発明のフェノール樹脂組成物は、前述のフェノール樹脂(I)と硬化剤(II)と、必要に応じて配合されるその他の配合剤を均一に混合することによって得る事が出来る。この際、作業性を向上させる等の目的や、用途や加熱硬化条件に応じて、粘度調整を行っても良い。この時使用できる溶剤としては、特に限定されないがメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド等の非アルコール性極性溶媒等沸点160℃以下の溶剤およびN−メチルピロリドン等が挙げられ、用途及び加熱硬化条件等に応じて適宜選択して用いる事が好ましい。また、フェノール樹脂(I)、又は硬化剤(II)に予め溶剤を加えておいてから両者を混合する方法であっても、フェノール樹脂組成物とエポキシ樹脂、必要に応じて配合される各種配合剤を混合した後、粘度調整として溶剤を加え、均一にする方法であっても良い。
【0059】
本発明のフェノール樹脂組成物の熱硬化の条件は特に制限されるものではなく、通常のフェノール樹脂を硬化させる条件で硬化せしめることが可能であり、樹脂成分が軟化する温度以上であれば問題なく、通常、120℃以上200℃以下の温度で行うことができる。特に成形性が良好となる点から130〜180℃の温度範囲であることが好ましい。また、耐熱性に優れた摩擦材を得るためには、成形後、焼成することが好ましい。
【0060】
以上詳述した本発明のフェノール樹脂組成物は、レジストインキ用樹脂組成物、摩擦材用結合剤のほか、硬化剤(II)としてエポキシ樹脂を用いる場合には、得られる硬化物の誘電特性に優れる点から、銅張積層板用樹脂組成物、電子部品の封止材用樹脂組成物、
導電ペースト、樹脂注型材料、接着剤、絶縁塗料等のコーティング材料等に用いることができる。
【0061】
本発明のフェノール樹脂組成物をレジストインキ用樹脂組成物として用いる方法としては、例えば、前記フェノール樹脂(I)及び硬化剤(II)に、更に、有機溶剤、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。ここで用いる有機溶剤としては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコ−ルモノメチルエーテルアセテート、エチルラクテート等が挙げられる。
【0062】
本発明のフェノール樹脂組成物を摩擦材用結着剤に用いる場合、ヘキサメチレンテトラミン、パラホルムアルデヒド等の加熱によりホルムアルデヒドを発生する物質を前記硬化剤(II)として用い、その他、イミダゾール及びその誘導体、カルボン酸化合物、アミン類、BFアミン化合物などの硬化促進剤を配合することによって製造することができる。かかる摩擦材用結着剤を用いて摩擦材を調整するには、上記各成分に充填剤、添加剤等を添加、熱硬化させる方法、繊維基材に上記各成分を含浸させ熱硬化させる方法が挙げられる。ここで用いる充填剤、添加剤は、例えばシリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、カシュー油重合物、二硫化モリブデン、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、黒鉛、グラファイト、ゴム粒、アルミニウム粉、銅粉、真ちゅう粉等が挙げられる。
【0063】
摩擦材用結合剤として使用する場合には、このフェノール樹脂組成物に繊維基材と硬化剤とを併用し、熱硬化して製造する方法が挙げられる。この際、繊維基材としては、例えばガラス繊維、セラミック繊維、石綿繊維、炭素繊維、ステンレス繊維のような無機繊維、綿、麻のような天然繊維、ポリエステル、ポリアミドのような合成有機繊維等が挙げられ、繊維基材の形状は、短繊維、長繊維、ヤーン、マット、シート等が挙げられる。
【0064】
本発明のフェノール樹脂組成物から銅張積層板用樹脂組成物を製造する方法は、具体的には、前記フェノール樹脂(I)、硬化剤(II)であるエポキシ樹脂、及び有機溶剤を用いてワニス化する方法が挙げられる。
【0065】
ここで用いる、前記有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等の非アルコール性極性溶媒等の溶剤が挙げられる。
【0066】
次に、上記銅張積層板用樹脂組成物から銅張積層板を製造する方法は、具体的には、以下の方法が挙げられる。
上記の如く、前記フェノール樹脂(I)、硬化剤(II)であるエポキシ樹脂、及び有機溶剤を用いてワニス化した組成物を、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などの各種補強基材に含浸させ、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この際、用いるフェノール樹脂組成物と補強基材の配合割合は、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調整することが好ましい。
【0067】
得られたプリプレグを積層し、更に銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とする銅張積層板を得ることができる。
【0068】
また、本発明の銅張積層板用樹脂組成物は、更に、ビルドアッププリント基板の層間絶縁材料としても極めて有用である。かかるビルドアッププリント基板の層間絶縁材料は、前記したワニス化の方法のなかでも、特に、前記フェノール樹脂(I)、硬化剤(II)であるエポキシ樹脂、前記有機溶剤、ゴム、フィラーを配合する方法により調整することができる。このようにして得られたビルドアップ基板用層間絶縁材料からビルドアップ基板を製造する方法は、具体的には、以下の方法が挙げられる。
【0069】
すなわち、該ビルドアップ基板用層間絶縁材料を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させ、次いで、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法は、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基板を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行うことが好ましく、また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0070】
本発明のフェノール樹脂組成物を電子部品の封止材用樹脂組成物として用いる場合の具体的用途は、半導体封止材料、半導体のテープ状封止剤、ポッティング型液状封止剤、アンダーフィル用樹脂、半導体の層間絶縁膜等が挙げられる。
【0071】
本発明のフェノール樹脂組成物を半導体封止材料用に調整するためには、前記フェノール樹脂(I)、硬化剤(II)であるエポキシ樹脂、必要に応じて配合されるその他のカップリング剤、離型剤などの添加剤や無機充填材などを予備混合した後、押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合する手法が挙げられる。
半導体のテープ状封止剤として使用する場合には、前述の手法によって得られた樹脂組成物を加熱して半硬化シートを作製し、封止剤テープとした後、この封止剤テープを半導体チップ上に置き、100〜150℃に加熱して軟化させ成形し、170〜250℃で完全に硬化させる方法を挙げることができる。
【0072】
更にポッティング型液状封止剤として使用する場合には、前述の手法によって得られた樹脂組成物を必要に応じて溶剤に溶解した後、半導体チップや電子部品上に塗布し、直接、硬化させればよい。
【0073】
本発明のフェノール樹脂組成物をアンダーフィル用樹脂として使用する方法は、例えば、予め基板ないし半導体素子上に本発明のフェノール樹脂組成物を塗布、次いで半硬化させてから、加熱して半導体素子と基板を密着させ、完全硬化させるコンプレッションフロー法等が挙げられる。
【0074】
本発明のフェノール樹脂組成物を半導体の層間絶縁材料として使用する方法は、例えば、前記フェノール樹脂(I)及び硬化剤(II)であるエポキシ樹脂に加え、硬化促進剤、シランカップリング剤を配合して組成物を調整し、これをシリコン基板上にスピンコーティング等により塗布する方法が挙げられる。この場合、硬化塗膜は半導体に直接接することになるため、高温環境下において線膨張率の差によるクラックが生じないよう、絶縁材の線膨張率を半導体の線膨張率に近づけることが好ましい。
【0075】
次に、本発明のフェノール樹脂組成物から導電ペーストを調整する方法は、例えば、微細導電性粒子を該フェノール樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
【0076】
本発明のフェノール樹脂組成物を接着剤用樹脂組成物に調整する方法は、例えば、前記フェノール樹脂(I)、硬化剤(II)、必要に応じて樹脂類、硬化促進剤、溶剤、添加剤等を室温または加熱下で混合ミキサー等を用いて均一に混合する方法が挙げられ、各種の基材に塗布した後、室温又は加熱下に放置することによって基材の接着を行うことができる。
【0077】
本発明のフェノール樹脂組成物から複合材料を調整する方法は、前記フェノール樹脂(I)及び硬化剤(II)を用途に応じた粘度に調製するために有機溶剤を用いてワニス化し、該当ワニスを補強基材に含浸し、加熱してプリプレグを得た後、それを繊維の方向を少しずつ変えて、擬似的に等方性を持たせるように積層し、その後加熱することにより硬化成形する方法が挙げられる。ここで用いる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド等の非アルコール性極性溶媒等沸点160℃以下の溶剤が挙げられる。加熱温度としては、用いる溶剤の種類により適宜選択することができるが、50〜150℃なる範囲であることが好ましい。また、前記補強基材としては、例えば炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布が挙げられる。樹脂分と補強基材の割合も特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調整するのが好ましい。
【0078】
上記した各種の用途のなかでも、本発明のフェノール樹脂組成物は、環境負荷の低いハロゲンフリーの硬化システムであり乍ら、優れた難燃性と耐熱性とを兼備できるという点から銅張積層板用樹脂組成物としてとりわけ有用である。
【0079】
本発明の硬化物は、以上詳述した本発明のフェノール樹脂組成物を成形硬化させて得られるものであり、用途に応じて積層物、注型物、接着剤、塗膜、フィルム等として使用できる。前記した通り、プリント基板用の銅張積層板として特に有用である。
本発明のフェノール樹脂組成物を硬化させるには、硬化剤(II)の選択、その他の配合成分、用途等に応じて適宜適切な温度条件で加熱硬化させればよいが、具体的には、25℃〜200℃の温度条件で硬化させることが好ましい。
【実施例】
【0080】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」「%」は質量基準である。
【0081】
以下の実施例で用いたカルボキシル基含有芳香族炭化水素基及びアミノ基をトリアジン環上の置換基として有するトリアジン化合物(x2)は、下記構造式(4)で示される(株)日生化学工業所製ベンゾイックアシッドグアナミン(以下、「BAG」と略記する。)である。
【0082】
【化9】


また、以下の実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂のメチロール基の存在の有無、および未反応フェノール類(x1)、未反応アルデヒド類(x3)の有無、分子量分布は次のように求めた。
【0083】
<芳香族置換メチロール基およびメチロール基の存在の有無>
13C−NMRを用いて樹脂組成物中に存在するメチロール基の存在の有無を測定した。
【0084】
装置:日本電子株式会社製「GSX270プロトン」:270MHz、測定溶媒:重メタノールあるいは重アセトン、重ジメチルスルホキシド、基準物質:テトラメチルシラン。得られたチャートにおいて55〜70ppmにある、ノイズと明確に区別され得るピークを用いて判定した。ピークが認められた場合を「有」、認められない場合を「無」とした。
【0085】
<未反応フェノール類(x1)の含有率>
カラム:30%セライト545カルナバワックス2m×3mmφ、カラム温度:170℃、注入口温度:230℃、検出器:FID、キャリアガス:Nガス 1.0kg/cm、測定法:内部標準法の測定条件において、フェノール樹脂(I)中の一官能性フェノール量を測定した。
【0086】
<未反応アルデヒド類(x3)の存在の有無>
FT−IRを用いて反応中にフェノール樹脂(I)中に存在する未反応アルデヒド類の存在の有無を測定した。
【0087】
装置:日本分光株式会社製 FT/IR−500。反応混合物をKBr板に塗布し、得られたチャートの1700cm−1付近に観測されるアルデヒド基由来のピークを用いて判定した。ピークが認められた場合を「有」、認められない場合を「無」とした。
【0088】
<分子量分布>
下記の装置及び測定条件に従い分子量分布を測定した。
装置:東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」カラム:G2000HXLx2、G3000HXL、G4000HXL7.8mmΦ×300mm、カラム温度:40℃、検出器:RI、キャリア溶媒:テトラヒドロフラン、流速:1.0ml/分、
測定法:ポリスチレン標準法の測定条件と同一条件にてフェノール樹脂(I)の分子量分布を測定。
【0089】
<フェノール樹脂中の窒素原子含有量>
原料成分の総仕込み質量と、化合物(x2)及び化合物(x4)の仕込み質量と窒素原子の質量とから算出。
【0090】
<カルボキシル基当量>
原料成分の総仕込み質量と、化合物(x2)の仕込み質量、及びカルボキシル基の質量とから算出。
【0091】
実施例1
コンデンサーと常圧および減圧蒸留装置とを備えた反応器に、フェノール940部、BAG185部、41.5%ホルマリン434部、およびトリエチルアミン3部を仕込み、115℃に昇温して2時間反応させた。次いで、常圧蒸留しながら135℃に昇温し、そのまま2時間反応させ、再度常圧蒸留しながら180℃に昇温し、180℃で減圧蒸留を行って未反応モノマーや水等の低沸点成分を除去し、軟化点123℃の樹脂780部を得た。以下、これを「フェノール樹脂(A−1)」とする。
尚、得られたフェノール樹脂(A−1)中の固形分にはメチロール基、未反応アルデヒド類は存在せず、未反応フェノールモノマー量は0.1質量%であった。
分子量分布の測定結果を図1に示す。
また、フェノール樹脂(A−1)の窒素原子含有量は7.2質量%、カルボキシル基当量は975g/当量であり、150℃でのICI溶融粘度は55ポイズであり、分子量分布(Mw/Mn)は2.46であった。
【0092】
実施例2
仕込み比をo−クレゾール1080部に変えた以外は実施例1と同様に反応を行い、軟化点116℃の樹脂840部を得た。以下、これを「フェノール樹脂(A−2)」とする。尚、得られたフェノール樹脂組成物中の固形分にはメチロール基、未反応アルデヒド類は存在せず、未反応クレゾールモノマー量は0.2質量%であった。分量分布の測定結果を図2に示す。
また、フェノール樹脂(A−2)の窒素原子含有量は6.6質量%、カルボキシル基当量は1050g/当量であり、150℃でのICI溶融粘度は45ポイズであり、分子量分布(Mw/Mn)は3.29であった。
【0093】
実施例3
コンデンサーと常圧および減圧蒸留装置とを備えた反応器に、フェノール940部、BAG92部、メラミン50部、41.5%ホルマリン434部、およびトリエチルアミン3部を仕込み、100℃に昇温して2時間反応させた。次いで、常圧蒸留しながら135℃に昇温し、そのまま2時間反応させ、再度常圧蒸留しながら150℃に昇温し、2時間反応させた後、95℃に降温した。反応系内に41.5%ホルマリン170部を滴下により添加し、100℃に昇温して2時間反応させた。次いで、常圧蒸留しながら135℃に昇温し、そのまま2時間反応させ、再度常圧蒸留しながら180℃に昇温し、180℃で減圧蒸留を行って未反応モノマーや水等の低沸点成分を除去し、軟化点117℃の樹脂730部を得た。この樹脂組成物を「フェノール樹脂(A−3)」とする。尚、得られたフェノール樹脂(A−3)中の固形分にはメチロール基、未反応アルデヒド類は存在せず、未反応フェノールモノマー量は0.2質量%であった。分量分布の測定結果を図3に示す。
また、フェノール樹脂(A−3)の窒素原子含有量は8.4質量%、カルボキシル基当量は1825g/当量であり、150℃でのICI溶融粘度は81ポイズであり、分子量分布(Mw/Mn)は2.95であった。
【0094】
比較例1
コンデンサーと常圧および減圧蒸留装置とを備えた反応器に、フェノール940部、メラミン151部、および41.5%ホルマリン434部を仕込み、100℃に昇温して2時間リフラックス反応させた。次いで、常圧蒸留しながら135℃に昇温し、そのまま2時間リフラックス反応させ、再度常圧蒸留しながら180℃に昇温し、180℃で減圧蒸留を行って未反応モノマーや水等の低沸点成分を除去し、軟化点136℃の樹脂740部を得た。この樹脂組成物を(A’−1)とする。尚、得られたフェノール樹脂組成物中の固形分にはメチロール基、未反応アルデヒド類は存在せず、未反応フェノールモノマー量は0.9質量%であった。分量分布の測定結果を図4に示す。
また、フェノール樹脂(A’−1)の窒素原子含有量は13.6質量%であり、150℃でのICI溶融粘度は100ポイズであり、分子量分布(Mw/Mn)は2.84であった。
【0095】
実施例4〜6、比較例2及び3
第1表に示した配合に従い、下記の方法でフェノール樹脂組成物を調整、次いで、下記条件で硬化させて両面銅張積層板を試作し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
[エポキシ樹脂組成物の調整]
上記各実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂(A−1)、フェノール樹脂(A−2)、フェノール樹脂(A−3)、フェノール樹脂(A’−1)と、エポキシ樹脂(B)とを混合した後、最終的に組成物の不揮発分(N.V.)が55質量%となるように調整した。
【0097】
[積層板作製条件]
基材 :180μm; 日東紡績株式会社製 ガラスクロス「WEA 7628 H258」
プライ数 :8
プリプレグ化条件:160℃/2分
銅 箔 :35μm; 古河サ−キットホイ−ル株式会社製
硬化条件 :200℃、40kg/cmで1.5時間
成型後板厚 :1.6mm 樹脂含有量 :40%
[物性試験条件]
成形状態: エッチング処理を施し銅箔除去した後、目視で外観検査を行い、欠損、カスレ、ミーズリング等が無く、均一に成形されているものを○とした。
【0098】
ガラス転移温度: エッチング処理を施し銅箔除去した後、DMA法にて測定。昇温スピード3℃/分。
【0099】
吸湿率: エッチング処理を施し銅箔除去した後、プレッシャークッカー試験機を使用し、121℃、2.1気圧、100%RHの条件において試験片(25mm×50mm)を2時間保持後、その前後の重量変化を測定した。
【0100】
誘電特性: エッチング処理を施し銅箔除去した後、誘電特性評価器を用いて100MHz、1GHzの周波数における誘電率と誘電正接を測定した(試験片のサイズ75×25×2mm)。
【0101】
燃焼試験: エッチング処理を施し銅箔除去した後、燃焼試験用に上記エポキシ樹脂組成物中固形分に対し30質量%の水酸化アルミを分散添加したワニスを作製し、上記積層板作成条件と同様に、積層板の作成を行った。試験方法はUL−94垂直試験に準拠。
オーブン耐熱性: 空気循環装置付恒温槽を用いて、220℃、240℃、260℃の条件において試験片(50mm×50mm)を1時間処理し、試験片面および端面のふくれ、はがれの無いものを○とした。
【0102】
【表1】

【0103】
尚、表1中の各原料及び略号は以下の通りである。
「N−673」 :クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名[EPICLON N−673]、エポキシ当量211g/eq.)
「N−690」 :クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名[EPICLON N−690]、エポキシ当量216g/eq.)
「1121N−80M」 :臭素化エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名[EPICLON 1121N−80M]、エポキシ当量490g/eq.(固形分)、不揮発分80%)
「MEK」 :メチルエチルケトン
「DMF」 :ジメチルホルムアミド
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施例1で得られたフェノール樹脂(A−1)のGPCチャートである。
【図2】実施例2で得られたフェノール樹脂(A−2)のGPCチャートである。
【図3】実施例3で得られたフェノール樹脂(A−3)のGPCチャートである。
【図4】比較例1で得られたフェノール樹脂(A’−1)のGPCチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基が二価の芳香族炭化水素基を介してトリアジン環に結合した化学構造(A)を分子構造中に部分構造として有するフェノール樹脂(I)、及び硬化剤(II)を必須成分とすることを特徴とするフェノール樹脂組成物。
【請求項2】
前記フェノール樹脂(I)中の前記化学構造(A)が、下記構造式(1)
【化1】


(式中、Rは、水素原子、炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、臭素原子、又は塩素原子を表し、破線部は他の分子構造との結合手を表し、n及びmは1〜4の整数を表す。)
で表されるものである請求項1記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項3】
カルボキシル基が二価の芳香族炭化水素基を介してトリアジン環に結合した化学構造(A)を分子構造中に部分構造として有するフェノール樹脂(I)が、フェノール類(x1)と、カルボキシル基含有芳香族炭化水素基及びアミノ基をトリアジン環上の置換基として有するトリアジン化合物(x2)と、アルデヒド類(x3)とを反応させて得られる分子構造を有するものである請求項1又は2記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項4】
カルボキシル基含有芳香族炭化水素基及びアミノ基をトリアジン環上の置換基として有するトリアジン化合物(x2)が下記構造式(2)
【化2】


(式中、Rは、水素原子、炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、臭素原子、又は塩素原子を表し、n及びmは1〜4の整数を表す。)
で示される化合物である請求項1記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項5】
フェノール樹脂(I)が、前記フェノール類(x1)、前記化合物(x2)、及び前記アルデヒド類(x3)に加え、更に、前記化合物(x2)の他のアミノ基含有トリアジン化合物(x4)を反応させた得られるものである請求項3又は4記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項6】
前記アミノ基含有トリアジン有化合物(x4)がメラミン、アセトグアナミン及びベンゾグアナミンからなる群から選ばれる1つ以上の化合物である請求項5記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項7】
前記フェノール樹脂(I)が、150℃でのICI溶融粘度が100ポイズ以下のものである請求項1〜6の何れか1つに記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項8】
前記フェノール樹脂(I)が、その分子構造中に窒素原子を2〜13質量%となる割合で含有するものである請求項1〜7の何れか1つに記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項9】
前記フェノール樹脂(I)が、該樹脂中に含まれるカルボキシル基をカルボキシル基当量500〜1500g/当量となる範囲で含有するものである請求項8記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項10】
前記硬化剤(II)が、エポキシ樹脂である請求項1〜9の何れか1つに記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項11】
前記フェノール樹脂(I)と、エポキシ樹脂との配合割合が、該フェノール樹脂(I)中のフェノール性水酸基と、該エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基とのモル比(フェノール性水酸基/エポキシ基)が0.8〜1.2となる割合である請求項10記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1つに記載のフェノール樹脂組成物を熱硬化させてなるフェノール樹脂硬化物。
【請求項13】
請求項1〜11の何れか1つに記載されたフェノール樹脂組成物に、更に有機溶剤を必須成分として含有する銅張積層板用樹脂組成物。
【請求項14】
請求項13記載の樹脂組成物を、ガラスクロスに含浸させてプリプレグを得、複数のプリプレグ及び銅箔を積層、硬化させて得られるものであることを特徴とする銅張積層板。
【請求項15】
フェノール類(x1)と、カルボキシル基含有芳香族炭化水素基及びアミノ基をトリアジン環上の置換基として有するトリアジン化合物(x2)と、アルデヒド類(x3)とを反応させて得られる分子構造を有し、かつ、該分子構造中に下記構造式(1)
【化3】


(式中、Rは、水素原子、炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、臭素原子、又は塩素原子を表し、破線部は他の分子構造との結合手を表し、n及びmは1〜4の整数を表す。)
で表される構造部位を有し、かつ、150℃でのICI溶融粘度が100ポイズ以下であることを特徴とする新規フェノール樹脂。
【請求項16】
前記フェノール樹脂が、前記フェノール類(x1)、前記化合物(x2)、及び前記アルデヒド類(x3)に加え、更に、前記化合物(x2)の他のアミノ基含有トリアジン化合物(x4)を反応させた得られるものである請求項15記載の新規フェノール樹脂。
【請求項17】
前記フェノール樹脂が、その分子構造中に窒素原子を2〜13質量%となる割合で含有するものである請求項15又は16記載の新規フェノール樹脂。
【請求項18】
前記フェノール樹脂が、該樹脂中に含まれるカルボキシル基をカルボキシル基当量500〜1500g/当量となる範囲で含有するものである請求項15、16又は17記載の新規フェノール樹脂。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−177218(P2007−177218A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305222(P2006−305222)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】