説明

フッ素含有ガスによる表面改質方法及びその装置

【課題】 簡便な装置において安全で容易にF2ガスによる表面改質を行う方法を提供する。
【解決手段】 含フッ素化合物を減圧状態で励起して活性種を生成させ、その後圧力を大気圧あるいはそれ以上に上昇させるとともに冷却することで、生成した活性種の全てを実質的に失活させることにより、含フッ素化合物からFガスを効率良く、充分な濃度と量とで発生させ、これにより表面改質を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素化合物含有ガスを減圧下で励起して活性種を生成させ、その後圧力を大気圧あるいはそれ以上へと上昇させるとともに冷却することで、生成した活性種の全てを実質的に失活させフッ素含有ガス(以下、F2ガスと言う場合がある)を発生させ、該F2ガスを物品の表面と接触させて該表面を改質する方法に関する。
【0002】
また、本発明は、含フッ素化合物含有ガスを減圧下で励起して活性種を生成させ、その後圧力を大気圧あるいはそれ以上へと上昇させるとともに冷却することで、生成した活性種の全てを実質的に失活させF2ガスを発生させ、該F2ガスを物品の表面と接触させて表面を改質するための装置にも関する。
【背景技術】
【0003】
プラズマCVD法は、半導体デバイスの製造における薄膜形成に広く用いられている。プラズマCVD法では、NF3等のガス状の含フッ素化合物をプラズマ化し、該プラズマ活性種により半導体基板表面のエッチングやCVDチャンバーのクリーニングが行われている。その際、F2ガスも生成するが、F2ガスは排ガスとして処理されている。
例えば、F2ガスをプラズマ化し、このプラズマ活性種を用いてCVDチャンバーの内壁をクリーニングする方法としては、特許文献1のようなものが挙げられる。この場合、F2ガス自体が利用されるのではなく、F2ガスのプラズマが使用されている。
また、含フッ素化合物に由来するプラズマを用いて半導体以外の材料の表面処理を行う方法としては、金属材料やプラスチック材料の表面処理が報告されている(特許文献2及び特許文献3を参照)。しかし、この方法ではプラズマが表面処理される物品の内部に侵入し、該物質に損傷を与える可能性がある。
【0004】
F2ガスをプラズマ化せずに用いて表面処理を行う方法も報告されている(例えば、特許文献4を参照)。しかし、このようにF2ガスを直接用いる方法には、以下の問題がある。まず、F2ガスの毒性、危険性、反応性、及び腐食性のため、F2ガスを大量に保管、輸送、及び使用することが困難である。危険性を低減するため、希釈したF2ガスを使用することもできるが、保管及び輸送コストが増加する。さらに、F2ガスが接触する部位には、非常に安定な材料を用いる必要があるため、表面処理設備のコストが高くなる。
【0005】
また、ハロゲン化合物を、大気圧又はその近傍の圧力下で低周波電圧を印加することにより励起して分解し、ハロゲン又はハロゲン化水素を発生させ、物品の表面を処理する方法が提案されている(特許文献5を参照)。大気圧又はその近傍の圧力下という条件で実施できることは、操作上簡易で安全な方法という利点をもつ。しかし、この方法では分解効率が低く、発生させ得るハロゲン又はハロゲン化水素の濃度はかなり希薄なレベルのものであって、その後の利用に供するのに充分な濃度や量を確保するのは容易なことでない。
【特許文献1】特開2004−39740号公報
【特許文献2】特開2000−319433号公報
【特許文献3】特開平8−217897号公報
【特許文献4】特開2001−240956号公報
【特許文献5】特開平9−205272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、簡便な装置において安全で容易にF2ガスによる表面改質を行う方法を提供する。本発明は、安全で容易にF2ガスによる表面改質を行うことができる装置も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、F2ガスよりも取り扱いが容易な含フッ素化合物を含有するガスを供給し、表面改質前に該含フッ素化合物をF2ガスに変換することにより、安全で容易にF2ガスによる表面改質を行うことができることを発見し、特には、含フッ素化合物を減圧状態で励起して活性種を生成させ、その後圧力を大気圧あるいはそれ以上に上昇させるとともに冷却することで、生成した活性種の全てを実質的に失活させることにより、含フッ素化合物からFガスを効率良く、充分な濃度と量とで発生させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明によれば、含フッ素化合物から表面改質に必要とされる量のF2ガスを製造して表面改質に使用できるため、大量のF2ガスを予め準備・保管する必要がない。
【0009】
即ち、本発明は、以下のものを提供する。

[A](1)第1のゾーン中で、含フッ素化合物含有ガスに減圧下でエネルギーを付与することにより、含フッ素化合物含有ガス中の少なくとも1つの含フッ素化合物を励起し、それにより発生した活性種を含む励起含フッ素化合物含有ガスを生成し、
(2)生成した励起含フッ素化合物含有ガスを、第1のゾーンと連通した第2のゾーンに輸送する間に、輸送系内の圧力を大気圧または大気圧以上へと上昇させるとともに輸送系を冷却することにより、活性種の全てを実質的に失活させ、フッ素ガスに変換して、フッ素含有ガスを生成し、
(3)第2のゾーン中で、フッ素含有ガスと物品の表面とを減圧、大気圧または大気圧以上の圧力下で接触させ、該物品の表面を改質する、
表面改質方法。
[B](1)第1のゾーン中で、含フッ素化合物含有ガスに減圧下でエネルギーを付与することにより、含フッ素化合物含有ガス中の少なくとも1つの含フッ素化合物を励起し、それにより発生した活性種を含む励起含フッ素化合物含有ガスを生成し、
(2)第1のゾーン中の圧力を大気圧あるいは大気圧以上へと上昇させるとともに冷却することにより、活性種の全てを実質的に失活させ、フッ素ガスに変換して、フッ素含有ガスを生成し、
(3)生成したフッ素含有ガスを、第1のゾーンと連通した第2のゾーンに輸送し、
(4)第2のゾーン中で、フッ素含有ガスを物品の表面と減圧、大気圧または大気圧以上の圧力下で接触させ、該物品の表面を改質する、
表面改質方法。
[C]第1のゾーンが第1の反応チャンバーであり、第2のゾーンが第2の反応チャンバーである、[A]〜[B]の何れかに記載の表面改質方法。
[D]含フッ素化合物含有ガスにエネルギーを付与してから表面改質される物品と接触させるまでの間に、不活性ガスを導入する工程をさらに含む、[A]〜[C]の何れかに記載の表面改質方法。
[E]エネルギーを付与する工程が含フッ素化合物含有ガスのプラズマ化を含む、[A]〜[D]の何れかに記載の表面改質方法。
[F]含フッ素化合物が、NF3、C26、COF2、またはこれらの組み合わせから選択される、[A]〜[E]の何れかに記載の表面改質方法。
[G]含フッ素化合物含有ガスが、不活性ガス及び/または酸素を含む、[A]〜[F]の何れかに記載の表面改質方法。
[H]不活性ガスが、He、Ne、Ar、Xe、Kr、N2、またはこれらの組み合わせである、[G]に記載の表面改質方法。
[I]含フッ素化合物が、C26、COF2、またはこれら混合物のとき、酸素の存在下でプラズマ化される、[A]〜[H]の何れかに記載の表面改質方法。
[J]表面改質が、物品表面のフッ素化によって行われる、[A]〜[I]の何れかに記載の表面改質方法。
[K]表面改質される物品が、金属及び/または金属化合物及び/またはポリマーである、[A]〜[J]の何れかに記載の表面改質方法。
[L]ポリマーが、ポリプロピレンを主成分とする物品である、[K]に記載の表面改質方法。
[M]金属化合物が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物及び金属塩化物の群から選択される1種以上である、[K]に記載の表面改質方法。
[N]金属化合物がSiを主成分とする化合物である、[K]に記載の表面改質方法。
[O]Siを主成分とする化合物が、Si、SiO2、Si34、SiC、ポリシリコン、アモルファスシリコン、またはこれらの組み合わせである、[N]に記載の表面改質方法。
[P]Siを主成分とする化合物が、LPCVD装置で成膜されたものである、[N]に記載の表面改質方法。
[Q](1)含フッ素化合物含有ガスを減圧下でプラズマ化する手段を備えた、第1のゾーンと、
(2)該第1のゾーンと連通し、内部に表面改質される物品を有するとともに、該第1のゾーンから輸送する間に、輸送系内の圧力を大気圧あるいはそれ以上に調整するとともに輸送系を冷却する手段を備え、発生したフッ素含有ガスと該物品の表面とを減圧、大気圧または大気圧以上の圧力下で接触させて、該物品の表面を改質する手段を備えた、第2のゾーンと、
を備えた表面改質装置。
[R](1)含フッ素化合物含有ガスを減圧下でプラズマ化し、その後圧力を大気圧あるいはそれ以上に調整するとともに冷却することによりフッ素含有ガスを発生する手段を備えた、第1のゾーンと、
(2)該第1のゾーンと連通し、内部に表面改質される物品を有するとともに、発生したフッ素含有ガスと該物品の表面とを減圧、大気圧または大気圧以上の圧力下で接触させて、該物品の表面を改質する手段を備えた、第2のゾーンと、
を備えた表面改質装置。
[S](1)含フッ素化合物含有ガスを減圧下でプラズマ化する手段を備えた、第1のチャンバーと、
(2)該第1のチャンバーと連通し、圧力を大気圧あるいはそれ以上に調整するとともに冷却することでフッ素含有ガスを発生する手段を備えた輸送路と、
(3)該輸送路と連通し、内部に表面改質される物品を有するとともに、発生したフッ素含有ガスと該物品の表面とを減圧、大気圧または大気圧以上の圧力下で接触させて、該物品の表面を改質する手段を備えた、第2のチャンバーと、
を備えた表面改質装置。
[T]第1のチャンバーの後ろに真空ポンプが、さらに第2のチャンバーの前及び/または後に、コンプレッサー若しくは真空ポンプが設置される、[Q]〜[S]の何れかに記載の表面改質装置。
[U]第1のチャンバー、真空ポンプ、第2のチャンバー、及び真空ポンプが順に連通し、さらに、第1のチャンバーと真空ポンプ、第2のチャンバーと真空ポンプが、それぞれ独立して連通する、[Q]〜[S]の何れかに記載の表面改質装置。
[V]第1のチャンバー、真空ポンプ、コンプレッサー、及び第2のチャンバーが順に連通し、さらに、第1のチャンバーと真空ポンプ、コンプレッサーと第2のチャンバーが、それぞれ独立して連通する、[Q]〜[S]の何れかに記載の表面改質装置。
[W][Q]〜[V]の何れかに記載の装置を、有機及び/または無機材料の直接フッ素化反応に用いる表面改質方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、第1のゾーンは、エネルギーを付与する手段により、含フッ素化合物含有ガスに減圧下でエネルギーが付与される空間をさし、第2のゾーンとは、表面改質される物品が設置される空間をさす。第1のゾーンと第2のゾーンとはガス連通し、含フッ素化合物含有ガスが第1のゾーンから第2のゾーンへガス連通する。
【0011】
第1のゾーン及び第2のゾーンは、同一のチャンバーであってもよいし、異なるチャンバーであってもよい。後者の場合、第1のゾーン及び第2のゾーンは、各々第1のチャンバー及び第2のチャンバーとなる。第1のチャンバー及び第2のチャンバーは、任意の公知の方法によりガス連通される。例えば、第1のチャンバー及び第2のチャンバーがガス流通によって接続され、含フッ素化合物含有ガスが該ガス流路を通じて第1のゾーンから第2のゾーンへ流通する。
また、第1のゾーンと第2のゾーンは独立して連通しており、両者の圧力を独立に
変動させることができる。第1のゾーンでは減圧下で含フッ素化合物含有ガスを励起し、第1のゾーンから第2のゾーンへの輸送過程で圧力を大気圧あるいはそれ以上に上げるとともに冷却することにより、生成した活性種の全てを実質的に失活させF2ガスに変換し、第2のゾーンで該F2ガスを物品の表面と、減圧、大気圧または大気圧以上の圧力下で接触させ、表面を改質する。ただし、F2への変換は、かかる様態に限定されるものではなく、第1のゾーン中で行われてもよい。
本発明において、第1のゾーンに供給される含フッ素化合物含有ガス中の含フッ素化合物はエネルギー付与によって励起し分解された後にF2ガスを生成し、F2ガスよりも取り扱いが容易であれば特に制限はないが、F2ガスを効率的に発生させるという点からNF3、C2F6、COF2が望ましい。これらの含フッ素化合物は、単独で使用しても、また組み合わせて使用してもよい。
【0012】
第1のゾーンに供給される含フッ素化合物含有ガスは、含フッ素化合物以外のガスを含有してもよい。含フッ素化合物以外のガスの種類及び流量、並びに第1のゾーンの圧力は、第1のゾーンで含フッ素化合物を励起する様態、及び、目的とする生成F2濃度に応じて選択される。第1のゾーンでプラズマを発生させる場合、含フッ素化合物以外のガスとして、不活性ガス及び/又は酸素を用いることができる。不活性ガスには、He、Ne、Ar、Xe、Kr、N2、またはそれらの組み合わせが含まれる。含フッ素化合物がC2F6あるいはCOF2を含む場合、O2が好ましい。
【0013】
第1のゾーンにおいて、含フッ素化合物にエネルギーを付与して励起する方法としては、プラズマ化が挙げられる。プラズマ化には、任意の公知の手法を用いることができ、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)、ヘリコン波プラズマ、及び電子サイクロトン共鳴プラズマ(ECR)が挙げられる。
【0014】
第1のゾーンで励起された含フッ素化合物を含有するガスは、第2のゾーンで表面改質される物品と接触するまでの間にF2を生成する。F2は第1のゾーンで生成してもよく、第1のゾーンから第2のゾーンへ輸送する間に生成してもよい。第1のゾーン及び第2のゾーンが異なるチャンバーである場合、両者を接続するガス流路中でF2が生成してもよい。F2が生成する反応機構に制限はなく、例えば励起により生じたFラジカルの再結合が挙げられる。
【0015】
含フッ素化合物含有ガスが2以上の含フッ素化合物を含有する場合、全ての種類の含フッ素化合物からF2が生成してもよく、一部の種類の含フッ素化合物のみがF2生成に寄与してもよい。なお第1のゾーンに供給される際に含フッ素化合物を含有したガスを、本明細書では「含フッ素化合物含有ガス」と表記する。第1のゾーンで励起された含フッ素化合物を含有するガスを、「励起含フッ素化合物含有ガス」と表記する。また、「励起含フッ素化合物含有ガス」中に、励起された含フッ素化合物由来のF2が含まれる場合がある。
【0016】
本発明の方法では、表面改質に必要な量のF2ガスを第1のゾーンで含フッ素化合物を励起することにより製造し、第2のゾーンで表面改質に消費するため、予め大量のF2ガスを準備または輸送し、取り扱う必要がないという利点が得られる。つまり、表面改質を行う前はF2ガスよりも安定で取り扱いが容易な含フッ素化合物の形態で保存し、表面改質の際に当該含フッ素化合物をF2ガスに変換して利用することにより、従来のF2ガスの取り扱いに関する問題を解決することができる。
【0017】
含フッ素化合物を励起してから表面改質される物品と接触させるまでの間に、該含フッ素化合物に別のガスを混合してもよい。これにより、発生F2ガス濃度を任意に調整することができる。混合する別のガスとしては、不活性ガスが好ましい。ここで不活性ガスとは、前述の通りである。別のガスの導入は、第1のゾーン内及び第2のゾーン内の任意の位置で行うことができる。第1のゾーン及び第2のゾーンが異なるチャンバーである場合、第1のチャンバーと第2のチャンバーとを接続するガス流路の任意の位置で行うことができる。
【0018】
第2のゾーンの圧力、温度及び発生F2濃度は、表面改質される物品の材質及び表面積に応じて選択される。
表面改質がなされる物品に特に制限はなく、F2ガスと接触して反応するものがあれば、何れの材質の物品でもよい。F2ガスと反応するという観点から、表面改質される物品は、金属及び/または金属化合物及び/またはポリマーであることが好ましい。金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、チタン、亜鉛、ニッケル、スズ、銅等の単体金属や、ステンレス、真鍮等の合金が挙げられる。金属化合物としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物及び金属塩化物の群から選択される1種以上が挙げられ、例えば、Siを主成分とする化合物、即ちSi、SiO2、Si3N4、SiC、ポリシリコン、アモルファスシリコン、またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。また、該Siを主成分とする化合物はLPCVD装置で成膜されたものも挙げられる。ポリマーとしては、ポリプロピレンを主成分とする物が挙げられる。
【0019】
本発明は、第1のゾーン及び第2のゾーンを備えた表面改質装置に関し、第1のチャンバー、第2のチャンバー、及び第1のチャンバーと第2のチャンバーとを接続するガス流路を備えた表面改質装置にも関する。
【0020】
第1のゾーンは減圧下でエネルギーを付与する手段を備え、含フッ素化合物含有ガスにエネルギーを付与することにより、含フッ素化合物含有ガス中の少なくとも1つの含フッ素化合物が励起される。エネルギーを付与する手段としては、プラズマ発生装置が挙げられる。プラズマ発生装置としては、ICPプラズマ装置、ECRプラズマ装置、及びヘリコン波プラズマ発生装置等が挙げられる。
【0021】
第1のゾーンで含フッ素化合物を励起した後は、励起含フッ素化合物含有ガスは第2のゾーンに輸送される。第2のゾーンは、表面改質される物品を搬入する手段を備えることができる。搬入手段に特に制限はなく、移動ステージが試料搬入室を経由して搬入されてもよい。
【0022】
第1及び第2のゾーンが異なるチャンバーである場合、第1のチャンバー及び第2のチャンバーを接続するガス流路を通じて励起含フッ素化合物含有ガスが流通する。また、第1のチャンバーを減圧にするため第1のチャンバーの後ろに真空ポンプが、さらに、第2のチャンバーを表面改質される物品に応じて減圧乃至加圧にするため第2のチャンバーの前及び/または後に、コンプレッサー若しくは真空ポンプが設置される。
【0023】
本発明の表面改質装置は、輸送系を冷却する手段をさらに備える。冷却する温度としては100℃以下とすることが望ましく、好ましくは50℃以下、より好ましくは25℃以下であり、また0℃以上が好ましい。この条件により活性種の全てを実質的に失活させ、効率的にフッ素ガスへの変換が行われるとともに、輸送系材料への腐食をも抑えることが可能となる。
【0024】
本発明の表面改質装置は、励起含フッ素化合物含有ガスと不活性ガスとを混合する手段をさらに備えてもよい。励起含フッ素化合物含有ガスと不活性ガスとを混合する手段に特に制限はなく、単に励起含フッ素化合物含有ガスの流路と不活性ガスの流路とが合流するよう設計されていてもよい。
【0025】
第2のゾーンあるいは第2のチャンバーから排出されたガスにはF2や含フッ素化合物が残存する場合があるため、該排出ガスは排出ガス処理装置へ送られる。
【0026】
以下、含フッ素化合物含有ガスをプラズマ化により励起する本発明の実施態様について、図1を参照して説明する。
【0027】
図1の表面改質装置において、第1のチャンバーはプラズマ発生装置を備え、該第1のチャンバー後ろの真空ポンプでプラズマ発生に適した圧力まで減圧にする。減圧にした後、Ar等でプラズマを発生させる。作動条件は、供給される含フッ素化合物が励起されるよう選択される。作動条件は、含フッ素化合物の分解率が高くなるよう、好ましくは含フッ素化合物が完全に分解されるよう、選択される。好ましくは133.3Pa〜1333Paである。その後、含フッ素化合物、例えばNF3を含有するガスを第1のチャンバーに供給する。含フッ素化合物を、第1のチャンバーに供給する前に他のガス、例えばN2やArを混合してもよい。この混合を行う場合、含フッ素化合物及び別のガスを含有するガスが含フッ素化合物含有ガスとして第1のチャンバーに供給される。即ち、その供給される含フッ素化合物含有ガスは、NF3単独でもよいし、NF3とN2やArとの混合ガスであってもよい。
【0028】
含フッ素化合物含有ガスがNF3単独の場合は、
NF3 → 1/2N2 + 3/2F2
のように、NF3が完全にF2に変換されると、25%のN2ガスが発生するため、発生するF2ガスの濃度は最大75%となる。本発明の好ましい特徴の一つは、NF3の完全分解を実質的に達成できることにある。
【0029】
励起含フッ素化合物含有ガスは、ガス流路を通じて第1のチャンバーから第2のチャンバーに輸送される。該ガス流路中で、圧力を大気圧あるいはそれ以上へと上昇させるとともに冷却することにより、活性種の全てを実質的に失活させ、フッ素ガスへと変換する。
【0030】
導入可能なNF3量が、100sccm〜5000sccmであることから、発生F2ガス量は、150sccm〜7500sccmとなる。75%よりも希釈して使用したい場合は、処理室(第2のチャンバー)手前から、また、F2ガス濃度をできる限り低い濃度で取り扱いたい場合は、真空ポンプ手前から、不活性ガスを導入する。あるいはプラズマを発生させる条件に合致するのであれば、プラズマ発生装置手前より不活性ガスを導入し、任意の濃度に調節する。即ち、図中に示した3つの入口の内、1つ以上の任意の別のガスを混合することができる。あるいはまた、別のガスを全く混合しなくてもよく、含フッ素化合物に別のガスが混合された含フッ素化合物含有ガスを予め準備してもよい。この希釈F2ガスをライン下流に設けた処理室(第2のチャンバー)に導入し、物品の表面改質に用いる。大気圧(常圧)下での表面改質は図1、減圧下での表面改質は図2、加圧下での表面改質は図3に示すような構造になる。第2のチャンバーから排出されるガスは、排出処理装置に導入される。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
図1の装置を用いて、含フッ素化合物含有ガスからF2を製造した。含フッ素化合物として、NF3を用い、またプラズマ発生装置として誘導結合プラズマ(ICP)発生装置(ASTeX社製ASTRONi)を使用した。
【0032】
まず、約25℃(20-25℃)で第1のチャンバーを1Torr(133Pa)まで減圧にした後、Arを1000sccm導入しプラズマを発生させた。次に、NF3(流量:1000 sccm)を第1のチャンバーに供給した。第1のチャンバー下流の配管を100℃以下の温度を維持するように冷却し、希釈ガス入口3で窒素(流量:48000 sccm)により希釈するとともに、含フッ素化合物含有ガスを真空ポンプ下流で大気圧下約25℃の第2のチャンバーに輸送した。
【0033】
本実施例のNF3流量では、理論上、供給したNF3が完全にF2に変換すると(NF3 → 1/2N2 + 3/2F2)、N2及びF2が、それぞれ500 sccm及び1500 sccm発生することになる。従って、NF3が完全に変換された場合には、窒素で再希釈した後のF2の濃度は3.0 vol.% となる。
【0034】
真空ポンプと第2のチャンバーとの間で含フッ素化合物含有ガスをサンプリングし、FT-IR測定及び10%KI水溶液を用いた滴定を行った。FT-IR測定装置には、Midac社製FT-IR IGA-2000を用いた。その結果、含フッ素化合物含有ガス中のF2の濃度は、3.10 vol.% であり、第1のチャンバーに供給したNF3の変換率は99.78%であることがわかった。
【0035】
次に、第2のチャンバー内でポリプロピレン板の表面処理を行った。第2のチャンバーとしては、内容積4.6LのNi製の円柱体容器を用いた。この中にポリプロピレン板(以下、PPと略すことがある。L×W×H=20mm×20mm×2mm)を5個設置し、窒素ガスで第2のチャンバー内を置換した。その後、上記操作により得た含フッ素化合物含有ガスを、第2のチャンバー内に輸送し、約25℃で所定時間、PPの表面処理を行った。処理時間ごとのPP表面の接触角(水との接触角(単位:度))を測定した(処理前のPP接触角は、89度)。その測定結果を表1に示す(PP 5個(n=5)の平均値を算出)。
実施例2
第1のチャンバーから放出された含フッ素化合物含有ガスを希釈する窒素の流量を28000 sccm に変更した点を除き、実施例1と同様に実験を行った。なお、この条件でNF3が完全に変換する場合、常圧下の第2のチャンバーに輸送される含フッ素化合物含有ガス中のF2の濃度は、5.0 vol.% となる。
【0036】
サンプリングされた含フッ素化合物含有ガス中のF2の濃度は、5.03 vol.%であり、NF3の変換率は99.78%であることがわかった。
【0037】
次に、実施例1と同様にして、PPの表面処理を行い、その接触角を測定した。その測定結果を表1に示す。
実施例3
含フッ素化合物として、C2F6を用い、またプラズマ発生装置として誘導結合プラズマ(ICP)発生装置(Landmark Technology社製Litmas Blue1200)を使用した。
まず、約25℃(20-25℃)で第1のチャンバーを1Torr(133Pa)まで減圧した。次に、C2F6(流量:40 sccm)を酸素(流量:160 sccm )で希釈して含フッ素化合物含有ガスとして第1のチャンバーに供給した。プラズマ発生装置には、1200Wの出力を印加した。第1のチャンバーから放出される含フッ素化合物含有ガスを希釈ガス入口3で窒素(流量:100slm)により再度希釈するとともに、大気圧下約25℃の第2のチャンバーに輸送した。
【0038】
サンプリングされた含フッ素化合物含有ガス中には、714 ppm のF2ガスが検出され、供給したC2F6の変換率はほぼ100%であった。
【0039】
次に、上記の窒素で希釈した含フッ素化合物含有ガスを使用して、ポリプロピレン板に代えて金属板を使用する以外は、実施例1と同様にし、その表面処理を行った。内容積4.6LのNi製の円柱体容器(第2のチャンバー)内に、アルミニウム板(以下、Alと略すことがある。L×W×H=20mm×20mm×2mm)を5個設置し、窒素ガスで第2のチャンバー内を置換した。その後、上記操作により得た含フッ素化合物含有ガスを、第2のチャンバー内に輸送し、25℃で所定時間、Alの表面処理を行った。処理時間ごとのAl表面の接触角(水との接触角(単位:度))を測定した。その測定結果を表2に示す。
実施例4
含フッ素化合物含有ガスとしてC2F6に代えてCOF2を用いた点を除き、実施例3と同様にして実験を行った。
【0040】
サンプリングされた含フッ素化合物含有ガス中には、146 ppm のF2ガスが検出され、供給したCOF2の変換率は71%であった。
【0041】
次に、実施例3と同様にして、Alに代えて銅板(Cuと略すことがある)の表面処理を行い、その接触角を測定した。なお、このときCuは、予め酸洗(Cuを0.1NのHCl溶液に入れて30 min 攪拌後、水洗3回)及び加熱処理(大気中200℃で1hr加熱後、デシケータ中で放冷)を行った。その測定結果を表2に示す。
実施例5
図1の装置を用いて、ポリプロピレンの表面改質を行った。含フッ素化合物ガスとしてNF3を用い、プラズマ発生装置として誘導結合プラズマ(ICP)発生装置(Landmark Technology社製Litmas Blue1200)を使用した。第2のチャンバーには、L×W×H=20mm×20mm×2mmのポリプロピレン(PP)試料を設置した。
【0042】
まず、約25℃(20-25℃)で第1のチャンバーを1Torrまで減圧した。次に、NF3(流量:100 sccm )を入口1で窒素(流量:400 sccm )により希釈して含フッ素化合物含有ガスを作成し、該含フッ素化合物含有ガスを第1のチャンバーに供給した。プラズマ発生装置には1200Wの出力を印加した。第1のチャンバーから放出された含フッ素化合物含有ガスを入口3で窒素(流量:14400 sccm )により再度希釈し、大気圧下約25℃の第2のチャンバーに導入した。この条件でNF3が完全に変換されると、第2のチャンバーに導入される含フッ素化合物含有ガス中のF2濃度は、1vol.% となる(サンプリングして分析した結果、F2濃度は、1.05vol.% であり、変換率99.84% であった)。
【0043】
第2のチャンバーでは、PP試料を大気圧下25℃で3時間、含フッ素化合物含有ガスと接触させた。
【0044】
PP試料表面を、ULVAC-PHI社製XPS PHI Quantum 2000により分析した。処理前では、試料表面における炭素の原子濃度は83 atom% であり、フッ素の原子濃度は0 atom% であったが、処理後では、炭素の原子濃度は48 atom% 、フッ素の原子濃度は45 atom% となった。このXPSの結果から、試料表面がフッ素化されたことがわかる。
【0045】
なお、XPS測定条件は以下の通りである。
【0046】
X-ray Source:Al Ka 1486.6eV monochromatic
X-ray Power:24.72W
X-ray Beam Diameter:100.0mm
Source Analyzer Angle:45.0°
Neutralizer Energy:1.0V
Neutralizer Current:25.0nA
Depth Profile
Sputter Ion:Ar+
Sputter Energy:3.000keV
Sputter Current:25.0nA
実施例6
NF3(流量:200 sccm )を窒素(流量:300 sccm )で希釈して含フッ素化合物含有ガスを作成し、第1のチャンバーから放出される含フッ素化合物含有ガスを流量9300 sccm の窒素で希釈した点を除き、実施例5と同様にPP試料の表面改質を行った。NF3が完全に変換されたと仮定すると、常圧下の第2のチャンバーに導入される含フッ素化合物含有ガス中のF2濃度は、3vol.% となる(サンプリングして分析した結果、F2濃度は、2.97 vol.% であり、変換率99.73% であった)。
【0047】
PP試料表面を、実施例5と同様にULVAC-PHI社製XPS PHI Quantum 2000により分析した。処理前では、試料表面における炭素の原子濃度は83 atom% であり、フッ素の原子濃度は0 atom% であったが、処理後では、炭素の原子濃度は41 atom% 、フッ素の原子濃度は52 atom% であった。この結果から、試料表面がフッ素化されたことがわかる。
実施例7
図1の装置を用いて、SiO2膜ウエハのエッチング試験を行った。内容積4.6LのNi製の円柱体容器(第2のチャンバー)内に、単結晶Si上にSiO2膜(7500Å)を成膜したウエハ(25mm×25mm)を設置した。また、この第2のチャンバーの上流に、プラズマ発生装置(第1のチャンバー)として誘導結合プラズマ(ICP)発生装置(ASTeX社製ASTRONi)を設置し、さらに第1のチャンバー下流に配管を冷却する冷却装置を設置した。
【0048】
第1及び第2のチャンバー内を、窒素により置換した。その後、第2のチャンバー内を、0.5×105Paまで減圧し、所定温度((1)260℃、並びに(2) 310℃)に加熱した。また、約25℃(20-25℃)で第1のチャンバーを1Torr(133Pa)まで減圧にした後、Arを1000sccm導入しプラズマを発生させた。次に、NF3(流量:1000 sccm)を第1のチャンバーに供給した。第1のチャンバー下流の配管を100℃以下の温度を維持するように冷却し、希釈ガス入口3で窒素(流量:5500 sccm)により希釈した。これにより、F2濃度20 vol.% の含フッ素化合物含有ガスを発生させた。この含フッ素化合物含有ガスのうち1000 sccm を、上記の0.5×105Pa 及び各々の所定温度に保ったまま第2のチャンバー内に輸送し、それぞれの温度において目的のウエハの表面処理を行った。
【0049】
処理後のウエハは、Nanometrics社製Nano Spec 3000AF-T を用いて膜厚測定を行い、各々の所定温度でのエッチングレートを求めた。その結果を表3に示す。
実施例8
図1の表面処理装置を使用して、化合物のフッ素化を行った。
【0050】
図1の表面処理装置において、処理室の位置に捕集ボンベを置き、その後段に恒温槽を付帯した1000mlのPFA製反応器を設置した。その反応器に1,3-ジオキソラン-2-オン 517g(5.87mol)を入れ、50℃の恒温槽中で融解させた。次に、窒素ガスを200sccmの流量で反応器内に30分間吹き込みながら、溶存している空気等のガス成分を系外に追い出し、系内の窒素置換を行った。その後、含フッ素化合物含有ガスとしてNF3を用い、更にプラズマ発生装置としては誘導結合プラズマ(ICP)発生装置(ASTeX社製ASTRONi)を使用して、NF3からF2を50−100℃の温度制御のもとで発生させた。NF3:1000sccmを導入し、N2:3000sccmで希釈し30%F2を発生させた。その30%F2のうち350sccmを、先端にSUS製フィルター(細孔直径15μm、表面積 7.5cm2)を装着したガス吹き込み管を使用して反応器に導入した。回転数を約800rpmにした攪拌機によって絶えず反応液を攪拌して、一ヶ所にフッ素ガスを滞留させないようにした。反応器内の液相温度は、外部の恒温槽により50−60℃に保つようにした。同時に、反応器上部に取り付けた冷却器で、原料、生成物及び副生したフッ化水素の蒸気を凝縮・還流させながら、気相温度を35−50℃に保つようにした。未反応フッ素等の不凝縮ガスは、冷却器の後に設けた除害装置で処理した。
【0051】
フッ素の導入量が10.6mol(原料の1.8モル当量)に達した時点で反応を終了し、副生したフッ化水素を蒸留して除去した後、水(200ml)及び10%NaHCO3水溶液(100ml)で洗浄し、ジクロロメタン(500ml×6回)で抽出した。その抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ジクロロメタンを留去した。得られた粗生成物590gを蒸留精製したところ、純度90%以上の4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンが480g得られた(収率 約70%)。
【0052】
純度90%の粗生成物は、15℃にて再結晶を3回繰り返したところ、純度99%以上の4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンが約390g得られた。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明による大気圧(常圧)下での表面改質を行う装置の概略を示す図である。
【図2】本発明による減圧下での表面改質を行う装置の概略を示す図である。
【図3】本発明による加圧下での表面改質を行う装置の概略を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)第1のゾーン中で、含フッ素化合物含有ガスに減圧下でエネルギーを付与することにより、含フッ素化合物含有ガス中の少なくとも1つの含フッ素化合物を励起し、それにより発生した活性種を含む励起含フッ素化合物含有ガスを生成し、
(2)生成した励起含フッ素化合物含有ガスを、第1のゾーンと連通した第2のゾー
ンに輸送する間に、輸送系内の圧力を大気圧または大気圧以上へと上昇させるとともに輸送系を冷却することにより、活性種の全てを実質的に失活させ、フッ素ガスに変換して、フッ素含有ガスを生成し、
(3)第2のゾーン中で、フッ素含有ガスと物品の表面とを減圧、大気圧または大気圧以上の圧力下で接触させ、該物品の表面を改質する、
表面改質方法。
【請求項2】
(1)第1のゾーン中で、含フッ素化合物含有ガスに減圧下でエネルギーを付与することにより、含フッ素化合物含有ガス中の少なくとも1つの含フッ素化合物を励起し、それにより発生した活性種を含む励起含フッ素化合物含有ガスを生成し、
(2)第1のゾーン中の圧力を大気圧あるいは大気圧以上へと上昇させるとともに冷却することにより、活性種の全てを実質的に失活させ、フッ素ガスに変換して、フッ素含有ガスを生成し、
(3)生成したフッ素含有ガスを、第1のゾーンと連通した第2のゾーンに輸送し、
(4)第2のゾーン中で、フッ素含有ガスを物品の表面と減圧、大気圧または大気圧以上の圧力下で接触させ、該物品の表面を改質する、
表面改質方法。
【請求項3】
第1のゾーンが第1の反応チャンバーであり、第2のゾーンが第2の反応チャンバーである、請求項1〜2の何れかに記載の表面改質方法。
【請求項4】
含フッ素化合物含有ガスにエネルギーを付与してから表面改質される物品と接触させるまでの間に、不活性ガスを導入する工程をさらに含む、請求項1〜3の何れかに記載の表面改質方法。
【請求項5】
エネルギーを付与する工程が含フッ素化合物含有ガスのプラズマ化を含む、請求項1〜4の何れかに記載の表面改質方法。
【請求項6】
含フッ素化合物がNF3、C26、COF2、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項1〜5の何れかに記載の表面改質方法。
【請求項7】
含フッ素化合物含有ガスが、不活性ガス及び/または酸素を含む、請求項1〜6の何れかに記載の表面改質方法。
【請求項8】
不活性ガスが、He、Ne、Ar、Xe、Kr、N2、またはこれらの組み合わせである、請求項7に記載の表面改質方法。
【請求項9】
含フッ素化合物が、C26、COF2、またはこれら混合物のとき、酸素の存在下でプラズマ化される、請求項1〜8の何れかに記載の表面改質方法。
【請求項10】
表面改質が、物品表面のフッ素化によって行われる、請求項1〜9の何れかに記載の表面改質方法。
【請求項11】
表面改質される物品が、金属及び/または金属化合物及び/またはポリマーである、請求項1〜10の何れかに記載の表面改質方法。
【請求項12】
ポリマーが、ポリプロピレンを主成分とする物品である、請求項11に記載の表面
改質方法。
【請求項13】
金属化合物が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物及び金属塩化物の群から選択される1種以上である、請求項11に記載の表面改質方法。
【請求項14】
金属化合物がSiを主成分とする化合物である、請求項11に記載の表面改質方法。
【請求項15】
Siを主成分とする化合物が、Si、SiO2、Si34、SiC、ポリシリコン、アモルファスシリコン、またはこれらの組み合わせである、請求項14に記載の表面改質方法。
【請求項16】
Siを主成分とする化合物が、LPCVD装置で成膜されたものである、請求項14に記載の表面改質方法。
【請求項17】
(1)含フッ素化合物含有ガスを減圧下でプラズマ化する手段を備えた、第1のゾーンと、
(2)該第1のゾーンと連通し、内部に表面改質される物品を有するとともに、該第1のゾーンから輸送する間に、輸送系内の圧力を大気圧あるいは大気圧以上に調整するとともに輸送系を冷却する手段を備え、発生したフッ素含有ガスと該物品の表面とを減圧、大気圧または大気圧以上の圧力下で接触させて該物品の表面を改質する手段を備えた、第2のゾーンと、
を備えた表面改質装置。
【請求項18】
(1)含フッ素化合物含有ガスを減圧下でプラズマ化し、その後圧力を大気圧あるいはそれ以上に調整するとともに冷却することによりフッ素含有ガスを発生する手段を備えた、第1のゾーンと、
(2)該第1のゾーンと連通し、内部に表面改質される物品を有するとともに、発生したフッ素含有ガスと該物品の表面とを減圧、大気圧または大気圧以上の圧力下で接触させて、該物品の表面を改質する手段を備えた、第2のゾーンと、
を備えた表面改質装置。
【請求項19】
(1)含フッ素化合物含有ガスを減圧下でプラズマ化する手段を備えた、第1のチャンバーと、
(2)該第1のチャンバーと連通し、圧力を大気圧あるいはそれ以上に調整するとともに冷却することによりフッ素含有ガスを発生する手段を備えた輸送路と、
(3)該輸送路と連通し、内部に表面改質される物品を有するとともに、発生したフッ素含有ガスと該物品の表面とを減圧、大気圧または大気圧以上の圧力下で接触させて、該物品の表面を改質する手段を備えた、第2のチャンバーと、
を備えた表面改質装置。
【請求項20】
第1のチャンバーの後ろに真空ポンプが、さらに第2のチャンバーの前及び/または後に、コンプレッサー若しくは真空ポンプが設置される、請求項17〜19の何れかに記載の表面改質装置。
【請求項21】
第1のチャンバー、真空ポンプ、第2のチャンバー、及び真空ポンプが順に連通し、さらに、第1のチャンバーと真空ポンプ、第2のチャンバーと真空ポンプが、それぞれ独立して連通する、請求項17〜19の何れかに記載の表面改質装置。
【請求項22】
第1のチャンバー、真空ポンプ、コンプレッサー、及び第2のチャンバーが順に連通し、さらに、第1のチャンバーと真空ポンプ、コンプレッサーと第2のチャンバーが、それぞれ独立して連通する、請求項17〜19の何れかに記載の表面改質装置。
【請求項23】
請求項17〜22の何れかに記載の装置を、有機及び/または無機材料の直接フッ素化反応に用いる表面改質方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−272265(P2006−272265A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98889(P2005−98889)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000157119)関東電化工業株式会社 (68)
【Fターム(参考)】