説明

フッ素除去剤、それを用いたフッ素含有排水の処理方法及びその処理装置

【課題】排水中に含まれるフッ素を、新たな排水基準(8mg/L)をクリアできるまで安定的に、かつ効率よく除去することのできるフッ素除去剤を提供するとともに、そのフッ素除去剤を用いたフッ素含有排水の処理方法・装置を提供する。
【解決手段】フッ素除去剤は、ハイドロタルサイト類、又はそのハイドロタルサイト類の他にゼオライト類を有効成分とし、フッ素含有排水の処理は、そのフッ素含有排水に上記フッ素除去剤を添加混合して反応させる反応槽と、その反応槽の処理水をその反応槽の処理水に所定の凝集剤を添加混合して凝集処理する凝集槽と、その凝集槽の処理水を固液分離する固液分離手段とを用いて処理することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水中に含まれるフッ素を除去するためのフッ素除去剤、そのフッ素除去剤を用いてフッ素含有排水からフッ素を除去するためのフッ素含有排水の処理方法及びその処理方法を実施するためのフッ素含有排水の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼板製造工場、半導体製造工場、アルミニウム製品製造工場、フッ酸製造工場、ガラス製品製造工場、メッキ加工工場、酸洗浄工程工場、肥料製造工場、ゴミ焼却場等の事業所や工場から排出されるフッ素含有排水は、所定の排水基準を満たすようにフッ素の除去処理を行った後、河川等の所定の放流水域に放流されている。従来の一般的なフッ素含有排水の処理方法としては、フッ素含有排水に消石灰等のカルシウム塩を添加して、排水中のフッ素を難溶性のフッ化カルシウムに生成させて凝集沈殿処理するカルシウム塩法(石灰中和法と呼ばれることもある。)が知られている。
【0003】
このカルシウム塩法によるフッ素除去は、20mg/L程度が限界であるので、近年、フッ素含有排水の排水基準が15mg/Lから8mg/Lに強化されたことに伴い、新たな排水基準をクリアできる処理方法も提案されている(特許文献1参照)。この提案に係るフッ素含有排水の処理方法は、フッ素含有排水を水酸化カルシウムと接触させ、さらに、二酸化炭素を加えて水酸化カルシウムとの反応で炭酸カルシウムを生成させるようにしている。この処理方法においては、フッ素と水酸化カルシウムとの反応でフッ化カルシウムを生成させ、さらに、水酸化カルシウムと二酸化炭素の反応で生成する炭酸カルシウム粒子の中にフッ素を封じ込めるとともに、炭酸カルシウム表面にフッ素を吸着させて、排水中のフッ素を吸着除去することができるため、処理水中のフッ素濃度をより低減することができる。
【0004】
また、排水の放流水域が陸水域のような所では、フッ素の排水基準が一段と厳しくなっていて、1mg/L以下に要求される場合も存在している。このような排水基準が一段と厳しい地域では、フッ素含有排水をカルシウム塩法で前処理した後、その処理水をイオン交換樹脂や逆浸透膜等を用いて高度処理している。
【0005】
さらに、近年、水環境保全・浄化への応用薬剤としてハイドロタルサイトが注目されている。このハイドロタルサイトは、アニオン交換機能を有する層状複合金属水酸化物であって、
[Mg2+1-xA]3+x(OH)2]x+[(An-x/n・mH2O]x-
{An-:n価のアニオン、0.20≦x≦0.33}
の組成式で表される。このハイドロタルサイトを処理剤として排水中からリンを除去することは提案されているが、このハイドロタルサイトを用いて排水中からフッ素を除去することは知られていない(非特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−254086号公報
【非特許文献1】THE CHEMICAL TIMES 2005 No.1 P.10〜16 2005年1月1日発行
【特許文献2】特開2004−216312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のカルシウム塩を利用したフッ素除去法において、新たな排水基準(8mg/L)を常時安定して達成するためには、処理薬剤を多く用いなければならず、このため薬品コストが高くなるとともに、発生汚泥(スラッジ)量が多くなるので、その処理コストが嵩むという欠点があり、さらに、処理装置の運転管理に高度な技術を要するという欠点があった。また、イオン交換樹脂等を用いて高度処理を行う場合には、逆洗・再生を頻繁に行う必要があるとともに、イオン交換樹脂等の寿命が短く、しかも再生薬剤が高価であるから、処理コストが極めて高くなるという欠点があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、排水中に含まれるフッ素を安定して除去することのできる、新規なフッ素除去剤を提供するとともに、そのフッ素除去剤を用いたフッ素含有廃水の処理方法を提供し、また、その処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフッ素除去剤は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ハイドロタルサイト類を有効成分とすることを特徴としている。
本発明で用いられるハイドロタルサイト類は、天然又は合成の粉末状又は粒状の市販のハイドロタルサイトを使用することができ、
[Mg2+1-xA]3+x(OH)2]x+[(An-x/n・mH2O]x-
{An-:n価のアニオン、0.20≦x≦0.33}
の組成式で表される。このハイドロタルサイト類は、そのアニオン交換機能によりフッ素イオンF-を吸着し、これによりフッ素含有排水中からフッ素を除去する。
また、本発明の請求項2に記載のフッ素除去剤は、ハイドロタルサイト類及びゼオライト類を有効成分とすることを特徴としている。
本発明のハイドロタルサイト類は、上述したものが使用され、ゼオライト類は、天然又は合成(人工)の粉末状又は粒状の市販のゼオライトを使用することができ、カチオンを吸着できるものであればいずれのものでも使用することができる。本発明のゼオライト類は、AlF3やNH4F等の錯体からフッ素イオンF-を解離させる。解離したフッ素イオンF-はハイドロタルサイト類により吸着され、これによりフッ素含有排水中からフッ素を除去する。
ハイドロタルサイト類及びゼオライト類の使用は、別々に使用することもできるが、通常、これらは混合して使用される。その混合割合は、重量比でハイドロタルサイト類10〜90%に対してゼオライト類90〜10%であり、この中から被処理水のフッ素含有排水の性状によって決められるが、ハイドロタルサイト類50%及びゼオライト類50%の混合比であれば大抵の排水に適用することができる。
【0009】
本発明に係るフッ素含有排水の処理方法は、上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、フッ素含有排水にハイドロタルサイト類を添加混合して、又はそのハイドロタルサイト類の他にゼオライト類を添加混合してフッ素含有排水中からフッ素を除去することを特徴としている。
本発明のハイドロタルサイト類及びゼオライト類は、上述したものが使用される。ハイドロタルサイト類は、そのアニオン交換機能によりフッ素イオンF−を吸着して除去し、ゼオライト類は、AlF3やNH4F等の錯体からフッ素イオンF-を解離させる。解離したフッ素イオンF-はハイドロタルサイト類により吸着され、これによりフッ素含有排水中からフッ素を除去する。
本発明の請求項4に記載のフッ素含有排水の処理方法は、ハイドロタルサイト類の他にカルシウム塩を添加混合して、又はそのハイドロタルサイト類及びゼオライト類の他にカルシウム塩を添加混合してフッ素含有排水中からフッ素を除去することを特徴としている。
本発明のハイドロタルサイト類及びゼオライト類は、上述したものが使用され、またカルシウム塩は、水酸化カルシウム(消石灰)、塩化カルシウム等を使用することができるが、好ましくは、一般に水酸化カルシウムが使用される。本発明では、カルシウム塩法と協働してフッ素含有排水中からフッ素を除去する。
本発明の請求項5に記載のフッ素含有排水の処理方法は、フッ素含有排水はフッ素含有排水にカルシウム塩を添加してフッ素をフッ化カルシウムとして分離した後の処理水であることを特徴としている。
【0010】
本発明に係るフッ素含有排水の処理装置は、上記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、フッ素含有排水にハイドロタルサイト類を添加混合して、又はそのハイドロタルサイト類の他にゼオライト類を添加混合して反応させる反応槽と、その反応槽の処理水に所定の凝集剤を添加混合して凝集処理する凝集槽と、その凝集槽の処理水を固液分離する固液分離手段とを有することを特徴としている。
本発明の請求項7に記載の有排水の処理装置は、フッ素含有排水はフッ素含有排水にカルシウム塩を添加してフッ素をフッ化カルシウムとして分離した後の処理水であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載の除去剤は、ハイドロタルサイト類を有効成分としているので、排水中に含まれるフッ素をハイドロタルサイト類のアニオン機能を利用して除去することができる。
本発明の請求項2に記載の除去剤は、ハイドロタルサイト類及びゼオライト類を有効成分としているので、ゼオライト類がAlF3やNH4F等の錯体からフッ素イオンF-を解離させるからハイドロタルサイト類によるフッ素除去能を高めることができ、各種工場等から排出される実際のフッ素含有排水に効果的に適用することができる。
【0012】
本発明の請求項3に記載のフッ素含有排水の処理方法は、フッ素含有排水にハイドロタルサイト類を添加混合して、又はそのハイドロタルサイト類の他にゼオライト類を添加混合してフッ素含有排水中からフッ素を除去することので、簡単に、かつ高度に処理することがきる。
本発明の請求項4に記載のフッ素含有排水の処理方法は、ハイドロタルサイト類の他にカルシウム塩を添加混合して、又はそのハイドロタルサイト類及びゼオライト類の他にカルシウム塩を添加混合してフッ素含有排水中からフッ素を除去するようにしているので、周知のカルシウム塩法と協働して排水中からフッ素を除去することができる。
本発明の請求項5に記載のフッ素含有排水の処理方法は、フッ素含有排水はフッ素含有排水にカルシウム塩を添加してフッ素をフッ化カルシウムとして分離した後の処理水であるので、従来のカルシウム塩法の処理水を簡単に、かつ高度に処理することができる。
【0013】
本発明の請求項6に記載のフッ素含有排水の処理装置は、フッ素含有排水にハイドロタルサイト類を添加混合して、又はそのハイドロタルサイト類の他にゼオライト類を添加混合して反応させる反応槽と、その反応槽の処理水に所定の凝集剤を添加混合して凝集処理する凝集槽と、その凝集槽の処理水を固液分離する固液分離手段とを有するので、簡単に、かつ安価に、しかも高度に排水中からフッ素を除去することができる。
本発明の請求項7に記載のフッ素含有排水の処理装置は、フッ素含有排水はフッ素含有排水にカルシウム塩を添加してフッ素をフッ化カルシウムとして分離した後の処理水であるので、従来のカルシウム塩法の処理水を簡単に、かつ高度に処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るフッ素除去剤を用いて排水中に含まれるフッ素を除去するための一実施の形態に係るフッ素含有排水の処理系統図である。図中、1は原水槽であって、ここにはフッ素含有排水が図示しない排水発生箇所から流入してくるように構成されている。
【0015】
上記原水槽1中の排水は、ポンプP及び計量升2を介して反応槽3に所定の定められた量が排出されるように構成されている。この反応槽3には、モータMによって回転駆動される攪拌機4が設けられているとともに、pH計5が設けられている。そして、この反応槽3には、ハイドロタルサイト類又はそのハイドロタルサイトの他にゼオライト類からなる本発明に係るフッ素除去剤と、水酸化カルシウム等のカルシウム塩とが図示しない薬注装置を介して添加されるように構成されている。さらに、この反応槽3には、上記pH計5が、常時、pH9〜11、好ましくはpH9〜10の範囲となるように、水酸化ナトリウム等のpH調整剤(図示の例では水酸化ナトリウム)が図示しない薬注装置を介して添加されるように構成されている。
【0016】
この反応槽3及び後述する凝集槽6の容量は、排水を所定時間、滞留できるように決められている。具体的には、その滞留時間(反応時間)は、10〜30分程度とすることができる。
【0017】
図中、6は凝集槽であって、上記反応槽3からの処理水を受け入れることができるように構成されている。そして、この凝集槽6には、モータMによって回転駆動される攪拌機7が設けられているとともに、pH計8が設けられている。そして、この凝集槽6には、弱アニオン系ポリマー、ノニオン系ポリマー等の高分子凝集剤が図示しない薬注装置を介して添加されるように構成されている。されに、この凝集槽6には、上記pH計8が、常時、ほぼ中性を呈するように、具体的にはpH6〜7となるように、硫酸等のpH調整剤(図示の例では硫酸)が図示しない薬注装置を介して添加されるように構成されている。
【0018】
図中、9は、本発明の固液分離手段をなす沈殿槽であって、上記凝集槽6からの処理水を受け入れることができるように構成されている。なお、固液分離手段としては、沈殿槽9の代りに加圧浮上分離装置や遠心分離装置、あるいは濾過装置等を用いることもできるが、沈殿槽9を用いたときは、最も安価に、かつ簡単に固液分離することができる。
【0019】
上記構成からなるフッ素含有排水の処理装置において、原水槽1から計量升2を介して反応槽3に受け入れられた排水は、攪拌機4を用いてその反応槽3に添加されたフッ素除去剤及びカルシウム塩と混合攪拌される。
【0020】
反応槽3内では、排水中のフッ素は、カルシウム塩と反応して難溶性のフッ化カルシウムに生成されるとともに、フッ素除去剤のハイドロタルサイト類のアニオン交換機能によりフッ素イオンF-が吸着・除去される。そして、そのフッ素除去剤中のゼオライト類により錯体からフッ素イオンF-が解離されるので、ハイドロタルサイト類のフッ素除去機能が促進される。
【0021】
原水槽1(反応槽3)に受け入れられる排水中には、通常、フッ素以外にAl等の金属を含んでいるので、AlF3等の錯体が存在し、この錯体からフッ素イオンF-を解離させるためにフッ素除去剤中にゼオライト類が混合されるが、もし、原水槽1中に受け入れられる排水に錯体を生成する物質が存在しなかったり、又は排水基準に影響を与えない程度の、極めて少ない場合には、フッ素除去剤はハイドロタルサイト類のみとすることができる。
【0022】
反応槽3内の上述の反応は、pH調整剤を用いてpH9〜11の範囲内で行われる。このpH範囲であるとフッ素はフッ化カルシウムを効率よく生成でき、pH11を超えると、フッ化カルシウムがコロイド化して後段の固液分離手段(沈殿槽9)の処理水中に混入し、フッ素除去機能を低下させてしまう。したがって、この反応槽3内のpHは、9〜11の範囲内に調整される。
【0023】
反応槽3内の処理水は、凝集槽6内に受け入れられて凝集剤と混合される。この凝集槽6内のpHは、凝集効果を高めるため及び放流水が中性を保てるようにpH調整剤を用いて6〜7に保たれる。使用されるpH調整剤は、放流水域に悪影響を及ぼさないように塩素を含まないものが選ばれる。図示の例では、pH調整剤は硫酸(H2SO4)が用いられている。
【0024】
凝集槽6の処理水は、沈殿槽9に受け入れられる。そして、その沈殿槽9の上澄水は放流されるとともに、沈降物であるスラッジは、図示しない脱水機で脱水された後、埋立等の所定の処理が行われる。
【0025】
上記構成のフッ素含有排水の処理は、既設のカルシウム塩法の処理装置を利用して簡単に実施できる特長を有している。すなわち、従来のカルシウム塩法の処理装置には、本発明の反応槽3に相当する排水にカルシウム塩を添加混合する反応槽を有しているとともに、その反応槽の処理水に凝集剤を添加混合する本発明の凝集槽6に相当する凝集槽を有しており、さらに、その凝集槽の処理水を固液分離する本発明の固液分離手段に相当する沈殿槽を有しているからである。したがって、本発明は、従来のカルシウム塩法の反応槽に本発明に係るフッ素除去剤を添加(注入)する薬注装置を付加するだけで簡単に実施することができる。
【0026】
図2は、本発明の他の実施の形態に係るフッ素含有排水の処理系統図である。ここでは、反応槽3に受け入れられる排水は、従来のカルシウム塩法により前処理(一次処理)されたものである。したがって、ここでは、反応槽3´内にカルシウム塩の添加は行われていない。凝集槽6及び沈殿槽9の構成は、上記図1と同じである。
【0027】
この図2に示される反応槽3´においても、上記図1に示される反応槽3と同様に、フッ素除去剤のハイドロタルサイト類のアニオン交換機能によりフッ素イオンF-が吸着・除去されるとともに、そのフッ素除去剤のゼオライト類により錯体からフッ素イオンF-が解離されるので、ハイドロタルサイト類のフッ素除去機能が促進される。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0029】
実施例1〜4
フッ素標準液(1ml=1mg as F)20mlを純水で1000mlの本発明の排水に相当する検水を作り、この検水に粉末状のハイドロタルサイト(含有量95%以上)からなる、本発明に係るフッ素除去剤A(以下、同じ)を添加して攪拌した。このときの検水のpH値を6.0〜7.0に調整した。30分攪拌反応後の検水をろ紙(5C)でろ過し、そのろ液のフッ素イオン濃度をイオンメータ法で測定した。その結果を表1に示した。
【0030】
【表1】

【0031】
表1の実施例1〜4に示されるように、フッ素除去剤Aは、フッ素を効率よく除去できることが分かった。
【0032】
実施例5〜8
フッ素標準液(1ml=1mg as F)20mlを純水で1000mlの本発明の排水に相当する検水を作り、この検水に粉末状のハイドロタルサイト(含有量95%以上)と粉末状のゼオライト(含有量95%以上)とを重量比で50%の割合で混合して得られた、本発明に係るフッ素除去剤B(以下、同じ)を添加して攪拌した。このときの検水のpH値を6.0〜7.0に調整した。15分攪拌反応後の検水をろ紙(5C)でろ過し、そのろ液のフッ素イオン濃度をイオンメータ法で測定した。その結果を表2に示した。
【0033】
【表2】

【0034】
表2の実施例5〜8に示されるように、フッ素除去剤Bは、フッ素を効率よく除去できることが分かった。なお、この検水には、各種工場等から排出されるフッ素含有排水と異なりAlF3等の錯体は含まれていないので、ゼオライトによるフッ素除去効果は無いと考えられる。
【0035】
実施例9〜14
金属のパーカー処理工程から排出される排水を検水として本発明に係るフッ素除去剤Aを用いてフッ素除去処理を行った。この処理においては、検水にフッ素除去剤Aを添加して攪拌を行い、このときの検水のpH値を6.0に調整した。30分間の攪拌反応後の検水をろ紙(5C)でろ過し、そのろ液のフッ素イオン濃度をイオンメータ法とパックテスト法でそれぞれ測定した。その結果を表3に示した。
【0036】
【表3】

【0037】
表3の実施例14に示されるように、フッ素イオン濃度は、1mg/L以下となり、かなり低い値までフッ素除去がてきることが分かった。なお、このパーカー処理工程を設備する工場地域のフッ素の排水基準は0.8mg/Lである。
【0038】
実施例15〜20
金属のパーカー処理工程から排出される排水を検水として本発明に係るフッ素除去剤Bを用いてフッ素除去処理を行った。この処理においては、検水にフッ素除去剤Bを添加して攪拌を行い、このときの検水のpH値を6.0に調整した。30分間の攪拌反応後の検水をろ紙(5C)でろ過し、そのろ液のフッ素イオン濃度をイオンメータ法とパックテスト法でそれぞれ測定した。その結果を表3に示した。
【0039】
【表4】

【0040】
表4の実施例17〜20に示されるように、フッ素イオン濃度は、1mg/L以下となり、極めて低い値までフッ素除去ができることが分かった。なお、このパーカー処理工程を設備する工場地域のフッ素の排水基準は0.8mg/Lであり、本発明に係る除去剤Bを用いれば、イオン交換樹脂や逆浸透膜等を用いなくとも高度処理を行えることが分かった。
【0041】
実施例21〜24
鉄工所から排出される排水を検水として本発明に係るフッ素除去剤Aを用いてフッ素除去処理を行った。この処理においては、検水にカーバイトスラリー(10%溶液,1ml=100mg as Ca(OH)2)を加えて攪拌反応させてpH値を10.0〜10.5に調整した。次いで、フッ素除去剤Aを添加して15分間の攪拌反応を行いながら希硫酸溶液を加えてpH値を6.9〜7.1に調整し、高分子凝集剤(0.09%溶液1ml=0.9mg)を添加・攪拌後、静置してスラリーを沈殿分離させ、その上澄水のフッ素イオン濃度をイオンメータ法とパックテスト法でそれぞれ測定した。その結果を表5に示した。
【0042】
【表5】

【0043】
表5の実施例21〜24に示されるように、フッ素を8mg/L以下まで除去できることが分かった。
【0044】
実施例25〜30
鉄工所から排出される排水を検水として本発明に係るフッ素除去剤Bを用いてフッ素除去処理を行った。この処理においては、検水にカーバイトスラリー(10%溶液,1ml=100mg as Ca(OH)2)を加えて攪拌反応させてpH値を10.0〜10.5に調整した。次いで、フッ素除去剤Bを添加して15分間の攪拌反応を行いながら希硫酸溶液を加えてpH値を6.9〜7.1に調整し、高分子凝集剤(0.09%溶液1ml=0.9mg)を添加・攪拌後、静置してスラリーを沈殿分離させ、その上澄水のフッ素イオン濃度をイオンメータ法とパックテスト法でそれぞれ測定した。その結果を表6に示した。
【0045】
【表6】

【0046】
表6の実施例26〜30にされるように、フッ素を8mg/L以下まで除去できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係るフッ素除去剤、そのフッ素除去剤を用いてフッ素含有排水からフッ素を除去するためのフッ素含有排水の処理方法及びその処理方法を実施するためのフッ素含有排水の処理装置は、ステンレス鋼板製造工場、半導体製造工場、アルミニウム製品製造工場、フッ酸製造工場、ガラス製品製造工場、メッキ加工工場、酸洗浄工程工場、肥料製造工場、ゴミ焼却場、下水処理場等の事業所や工場から排出されるフッ素含有排水を効率よく処理して、排水基準以下の高水質処理水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るフッ素含有排水の一処理系統図である。
【図2】本発明に係るフッ素含有排水の他の処理系統図である。
【符号の説明】
【0049】
1 原水槽
2 計量升
3,3´ 反応槽
4 攪拌機
5 pH計
6 凝集槽
7 攪拌機
8 pH計
9 沈殿槽
M モータ
P ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロタルサイト類を有効成分とすることを特徴とするフッ素除去剤。
【請求項2】
ハイドロタルサイト類及びゼオライト類を有効成分とすることを特徴とするフッ素除去剤。
【請求項3】
フッ素含有排水にハイドロタルサイト類を添加混合して、又はそのハイドロタルサイト類の他にゼオライト類を添加混合してフッ素含有排水中からフッ素を除去することを特徴とするフッ素含有排水の処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載のフッ素含有排水の処理方法において、ハイドロタルサイト類の他にカルシウム塩を添加混合して、又はそのハイドロタルサイト類及びゼオライト類の他にカルシウム塩を添加混合してフッ素含有排水中からフッ素を除去することを特徴とするフッ素含有排水の処理方法。
【請求項5】
請求項3に記載のフッ素含有排水の処理方法において、前記フッ素含有排水は、フッ素含有排水にカルシウム塩を添加してフッ素をフッ化カルシウムとして分離した後の処理水であることを特徴とするフッ素含有排水の処理方法。
【請求項6】
フッ素含有排水にハイドロタルサイト類を添加混合して、又はそのハイドロタルサイト類の他にゼオライト類を添加混合して反応させる反応槽と、その反応槽の処理水に所定の凝集剤を添加混合して凝集処理する凝集槽と、その凝集槽の処理水を固液分離する固液分離手段とを有することを特徴とするフッ素素含有排水の処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載のフッ素含有排水の処理装置において、前記前記フッ素含有排水は、フッ素含有排水にカルシウム塩を添加してフッ素をフッ化カルシウムとして分離した後の処理水であることを特徴とするフッ素含有排水の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−209886(P2007−209886A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31949(P2006−31949)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(505094009)墨東化成工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】