説明

フラックス転写装置

【課題】
転写ピンを懸吊支持するための内孔部分で、転写ピンをエアフローティングすることにより、転写ピンに掛かる摺動抵抗や付勢力をなくし、転写時のランドにかかる荷重を転写ピンの自重のみにすると共に転写ピンのセンタリングによる位置精度の向上を図ること。

【解決手段】
第1に、転写ピンと被転写物を相対的に接近させる昇降手段を備え、転写ピンの先端を被転写物の転写部位に当接させてフラックスを転写する装置とする。
第2に、転写ピンは外周を拡大させた拡径部を備える。
第3に、転写ピンを上下に遊貫させる内孔が形成され、内孔に転写ピンの拡径部を係合させて転写ピンを懸吊支持する支持部材を備える。
第4に、内孔に開口する通気路と、通気路に気体を供給する手段とを備える。
第5に、遊貫させた転写ピンと内孔の隙間に気体を供給して転写ピンに浮上力を生じさせてフラックスを転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハなどの被転写物に、半田ボールなどを搭載する装置において用いられるフラックス転写装置の改良に関するものである。詳しくは、先端にフラックスを付着させる転写ピンと、転写ピンと被転写物を上下に相対的に接近させる昇降手段を備え、転写ピンの先端を被転写物の転写部位に当接させてフラックスを転写するフラックス転写装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウエハなどの被転写物にバンプを形成するのに用いるフラックス転写技術において、従来のピン転写方式では、搭載される半田ボールなどのボール径が小さくなるに従って、転写ピンのピン先端径が小さくなってしまう。この結果、転写ピン先端が当接する転写部位の単位面積あたりの荷重は大きくなり、ウエハなどの被転写物のランド表面に圧痕などの傷をつけてしまう問題が生じていた。特にウエハなどの被転写物に反りがあったり,ゆがみがある場合にその問題は顕著なものとなっていた。
【0003】
上記問題を解決するため、特許文献1に示すようにフラックス転写ヘッドの下端部に転写ピン支持部材を設け、転写ピンを転写ピン支持部材の摺動穴にスプリングにより下方に付勢して摺動可能に支持する技術が開示されている。しかし、この開示技術では、スプリングの付勢力や重量により、転写荷重が大きくなり、更に、摺動穴を転写ピンのガイドとして用いているため摺動抵抗が転写ピンの自重に加わり、転写荷重が大きなものとなってしまい、上記問題を解決するのには不十分であった。又、摺動抵抗を減らすように、転写ピンの外径に対する摺動穴の内径の大きさを大きくすると、転写ピンの求心精度は低下するため、精度誤差が大きくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4016202号特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は,転写ピンを懸吊支持するための内孔部分(従来の転写ピンの摺動穴に相応する部分)で、転写ピンをエアフローティングすることにより、転写ピンにかかる摺動抵抗をなくすと共に、スプリングの自重や付勢力をなくし、転写時に転写ピンによるランドにかかる荷重を、転写ピンの自重のみし、ウエハなどの被転写物のランド表面に圧痕などの傷をつけてしまうことのないフラックス転写装置を提供することであり、第2の目的は、摺動抵抗を減らすように、転写ピンの外径に対する摺動穴の内径の大きさを大きくすると、転写ピンの求心精度は低下し、精度誤差が大きくなるが、本発明では、転写ピンのセンタリングを容易とし、転写ピンの位置精度を高くすることのできるフラックス転写装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は,上記課題を解決するため,次の手段を採用する。
第1に、先端にフラックスを付着させる転写ピンと、この転写ピンと被転写物を上下に相対的に接近させる昇降手段を備え、前記転写ピンの先端を被転写物の転写部位に当接させてフラックスを転写するフラックス転写装置とする。
第2に、前記転写ピンは外周を拡大させた拡径部を備える。
第3に、前記転写ピンを上下に遊貫させる内孔が形成され、この内孔の上方開口の周囲に前記転写ピンの拡径部を係合させて転写ピンを懸吊支持する支持部材を備える。
【0007】
第4に、前記内孔に開口する通気路と、この通気路に気体を供給する気体供給手段とを備える。
第5に、遊貫させた転写ピンと前記内孔の隙間に気体を供給して転写ピンに浮上力を生じさせ、この状態で転写ピンの先端を被転写物の転写部位に当接させてフラックスを転写することを特徴とするフラックス転写装置とする。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に、前記転写ピンの前記支持部材に対する上下動位置を検出する検出手段を設けたことを加えたフラックス転写装置とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は,フラックスの転写時にかかる荷重が転写ピンの自重のみとなり軽くなったため、転写ピン先端でウエハなどの被転写物に圧痕をつける虞がなくなった。更に、摺動抵抗を減らすように、転写ピンの外径に対する摺動穴の内径の大きさを大きくすると、転写ピンの求心精度は低下し、精度誤差が大きくなるが、本発明によれば転写ピンのセンタリングが容易となり、転写ピンの位置精度が高くなる。又、転写時にかかる荷重を転写ピンの自重のみとして軽くなったことで、転写ピンの慣性負荷が軽減でき、フラックスの転写速度や加減速を速くして転写しても、ウエハなどの被転写物に圧痕をつけることなくフラックス転写ができ、タクトアップにもつながった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明が用いられる半田ボール搭載装置の概略を示す正面説明図
【図2】フラックス転写装置の支持部材と転写ピンの関係を示す左側断面説明図
【図3】転写前の支持部材内の転写ピンと変位計との関係を示す正面断面説明図
【図4】転写時の支持部材内の転写ピンと変位計との関係を示す正面断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下,図面に従って,実施例とともに本発明の実施の形態について説明する。
図1は,本発明が利用される半田ボール搭載装置1の一例を示す概略正面説明図である。実施例では、本発明における被転写物としてウエハ3を用い、本発明に係るフラックス転写装置は、ウエハ3上に半田ボール2を搭載する半田ボール搭載装置1で用いられる。
【0012】
半田ボール搭載装置1は、図1に示すように、半田ボール2を吸着保持してウエハ3に搭載する半田ボール搭載ヘッド4と、フラックス5をウエハ3に転写するフラックス転写ヘッド6と、半田ボール搭載ヘッド4に半田ボール2を供給する半田ボール供給部7と、フラックス転写ヘッド6にフラックス5を供給するフラックス供給部8と、フラックス5の転写及び半田ボール2の搭載のためウエハ3が吸着支持されるステージ9と、フラックス転写ヘッド6及び半田ボール搭載ヘッド4の横移動装置10と,ステージ9の昇降機構11,前後移動機構12を有する。
【0013】
半田ボール搭載ヘッド4とフラックス転写ヘッド6とは、図1に示されるように各々が独立して移動し停止することが可能な第1横移動体13及び第2横移動体14に取り付けられており,半田ボール搭載ヘッド4及びフラックス転写ヘッド6は図1の左右方向(横方向)へ移動し、必要位置で停止し、フラックス転写及び半田ボール搭載の各動作が行われる。
【0014】
半田ボール搭載ヘッド4が取り付けられている第1横移動体13にはウエハ認識カメラ15が取り付けられており、ウエハ認識カメラ15は半田ボール搭載装置1に設けられた制御部19にケーブル23を介して接続されている。
【0015】
第2横移動体14に取り付けられているフラックス転写ヘッド6には、転写ピン20と、転写ピン20を支持する支持部材22と、この支持部材22に取り付けられ、転写ピン20が転写部位に当接したことによってそれ以前の浮上高さから押し上げられた量(押上量)を認識する変位計18とが設けられている。この変位計18は転写ピン20の真上に位置して、転写ピン20との間隔の変位から転写ピン20の支持部材22に対する上下動位置を検出するようになっており、これにより転写ピン20の押上量を認識するようになっている。なお、変位計18も半田ボール搭載装置1に設けられた制御部19にケーブル23を介して接続されている。
【0016】
転写ピン20は、図2に示されるように、下端にフラックス5を付着させる先端部24を有し、上端の外周を後述する支持部材22の内孔21より大きく拡大させ、内孔21上方開口部の周囲に係合可能な拡径部25を有する。転写ピン20は、拡径部25を内孔21の上方開口部の周囲に係合して懸吊支持される。転写ピン20は、内孔21の上下方向に遊貫している。該転写ピン20は、先端部24を被転写物たるウエハ3の転写部位であるランド16に当接させて、ランド16にフラックス5を転写するものである。
【0017】
第2横移動体14に取り付けられる支持部材22には、転写ピン20が拡径部25により係合でき、且つ、遊貫可能な大きさの内孔21が形成されており、内孔21には、そこに装着される転写ピン20に向かって周囲四方より転写ピン20を浮上させる気体を供給する通気路26が開口されている。通気路26は、気体供給路28を介して半田ボール搭載装置1に設けられた気体供給部27と接続されている。
【0018】
気体供給部27より送り出された気体は、気体供給路28を通り内孔21に開口された通気路26より内孔21と遊貫させた転写ピン20との隙間に、内孔21の四方より供給され、図3に示されるように、拡径部25を押し上げて転写ピン20を浮上させる。
【0019】
ステージ9は、昇降機構11と前後移動機構12を有する。昇降機構11が、本発明における転写ピン20と被転写物であるウエハ3を上下に相対的に接近させる昇降手段となる。もちろん、相対的に接近させる手段として、転写ピン20を下降させる手段でも良いし、転写ピン20及びステージ9の両者を昇降させる手段でも良い。
【0020】
以下、本実施例におけるボール搭載動作について説明する。まず、ステージ9上にウエハ3を位置させる。その後、ステージ9の前後移動機構12によりステージ9を第1横移動体13の下方の設定位置に移動させるとともに、第1横移動体13を移動させることにより、ウエハ認識カメラ15をステージ9上で横移動させ、ウエハ認識カメラ15を半田ボール搭載対象となるウエハ3のランド16の上方に位置させ、ランド16の位置を認識する。
【0021】
この際、ステージ9は基準の高さにあり、他方フラックス転写ヘッド6の転写ピン20の先端及び、半田ボール搭載ヘッド4の吸着ノズル17の先端は、ステージ9の表面に対し所定の高さにある。又、転写ピン20は気体(エア)の供給により、内孔21の中央の位置にセンタリングされ、且つ、浮上した高さにある。
【0022】
前後移動機構12及び第2横移動体14を移動させることにより、転写ピン20をフラックス供給部8の上方に位置させる。なお、このとき、半田ボール搭載ヘッド4の吸着ノズル17は、ステージ9の上昇時にステージ9と干渉しないように第1横移動体13により、退避(横移動)させておく。
【0023】
続いて、昇降機構11により設定量だけステージ9を上昇させ、転写ピン20をフラックス供給部8に接触させ転写ピン20の先端部24にフラックス5を付着させた後、ステージ9を基準の高さへ下降させる。
【0024】
ウエハ認識カメラ15により認識したランド16のフラックス転写部位の上方に転写ピン20を位置合わせする。位置合わせはステージ9の前後移動機構12と第2横移動体14とにより行われる。その後、昇降機構11により設定量だけステージ9を上昇させる。この上昇量は、転写ピン20とステージ9の相対的な接近量であり、実施例ではステージ9の上昇によるものであるが、転写ピン20の下降によって行っても良いし、ステージ9の上昇及び転写ピン20の下降の両者によって行っても良い。ステージ9の上昇により、転写ピン20の先端部24を転写部位に当接させて、フラックス5を転写し、転写後ステージ9を基準の高さへ下降させる。
【0025】
このときの、転写ピン20が当接することにより、図3に示される転写ピン20の浮上の高さから、図4に示される押し上げられた量(押上量)を変位計18で認識し、転写ピン20を転写部位に当接させる際の設定されたステージ9の上昇量から、この押上量を除いた値に基づいて、今回のボール搭載時の吸着ノズル17へのステージ9の基準の高さからの上昇量が求められる。この基準の高さからの上昇量も、相対的な接近量であり、この相対的な接近は、実施例ではステージ9の上昇によるものであるが、吸着ノズル17の下降によって行っても良いし、ステージ9の上昇及び吸着ノズル17の下降の両者によって行っても良い。
【0026】
このようにフラックス転写高さの検出手段を、変位計18により検出される転写ピン20の高さ検出をする手段とし、転写ピン20に取り付けられたトグ(特許文献1記載の部材)の代わりに直接転写ピン20を検出するようにしたため、転写ピン20の自重のみとなり、軽さのため転写速度や加減速を上げることができ、タクトアップにつながった。
【0027】
続いて、吸着ノズル17は、前後移動機構12及び第1横移動体13を移動させることにより半田ボール供給部7の上方に位置する。なお、このとき、フラックス転写ヘッド6の転写ピン20はステージ9の上昇時にステージ9と干渉しないように第2横移動体14により退避(横移動)させておく。
【0028】
その後、設定量だけ昇降機構11によりステージ9を上昇させ、半田ボール搭載ヘッド4の吸着ノズル17を半田ボール供給部7に接近させ、吸着ノズル17に半田ボール2を吸着させた後、ステージ9を基準の高さへ下降させる。これに伴い、フラックス転写の際の位置合わせと同様、前後移動機構12と第1横移動体13でウエハ認識カメラ15で認識したランド16のボール搭載部位(フラックス転写部位と同じ)の上方に吸着ノズル17を位置合わせする。
【0029】
転写ピン20の浮上高さからの押上量から求めておいたステージ9の上昇量(符号0025に記載のステージ9の上昇量)だけステージ9を上昇させ、半田ボール2を吸着ノズル17からランド16に搭載する。搭載後、吸着ノズル17の吸引を解除し、ステージ9を基準の高さへ下降させることにより、ボール搭載動作は完了する。
【符号の説明】
【0030】
1・・・半田ボール搭載装置
2・・・半田ボール
3・・・ウエハ
4・・・半田ボール搭載ヘッド
5・・・フラックス
6・・・フラックス転写ヘッド
7・・・半田ボール供給部
8・・・フラックス供給部
9・・・ステージ
10・・・横移動装置
11・・・昇降機構
12・・・前後移動機構
13・・・第1横移動体
14・・・第2横移動体
15・・・ウエハ認識カメラ
16・・・ランド
17・・・吸着ノズル
18・・・変位計
19・・・制御部
20・・・転写ピン
21・・・内孔
22・・・支持部材
23・・・ケーブル
24・・・先端部
25・・・拡径部
26・・・通気路
27・・・気体供給部
28・・・気体供給路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にフラックスを付着させる転写ピンと、この転写ピンと被転写物を上下に相対的に接近させる昇降手段を備え、前記転写ピンの先端を被転写物の転写部位に当接させてフラックスを転写するフラックス転写装置において、
前記転写ピンは外周を拡大させた拡径部を備えるとともに、
この転写ピンを上下に遊貫させる内孔が形成され、この内孔の上方開口の周囲に前記転写ピンの拡径部を係合させて転写ピンを懸吊支持する支持部材と、
前記内孔に開口する通気路と、
この通気路に気体を供給する気体供給手段とを備え、
遊貫させた転写ピンと内孔の隙間に気体を供給して転写ピンに浮上力を生じさせ、この状態で転写ピンの先端を被転写物の転写部位に当接させてフラックスを転写することを特徴とするフラックス転写装置。
【請求項2】
前記転写ピンの前記支持部材に対する上下動位置を検出する検出手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載のフラックス転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−258141(P2010−258141A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105038(P2009−105038)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】