説明

フラットケーブル及びフラットケーブルとプリント配線板との接続構造

【課題】フラットケーブルの導体露出部と、それに対応するプリント配線板に形成された電極部とをはんだ材で接続するに当たり、長期間の振動や衝撃等の機械的負荷に対し、接続部が破断、破損等を生じることなく安定した接続信頼性を確保することができるフラットケーブル及びフラットケーブルとプリント配線板との接続構造を提供する。
【解決手段】本実施の形態に係るフラットケーブル9は、並列に配置される複数の導体2と、複数の導体2それぞれの長手方向の両端部を外部に露出させ、両端部の間の複数の導体2を被覆する絶縁フィルムと、複数の導体2の長手方向とは異なる方向で複数の導体2のそれぞれを覆い、絶縁フィルムの端を含む領域の一部に設けられる補強部材10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブル及びフラットケーブルとプリント配線板との接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用インバータユニットやエンジンコントロールユニット内等に実装される複数枚のプリント配線板間の電気的接続用の配線部品として、従来、ワイヤーハーネスが用いられており、ワイヤーハーネスとプリント配線板との接続には、コネクタ部品を用いた接続構造が採用されている。近年、車載機器の小型・薄型化と低コスト化との両立を実現する一方策として、ワイヤーハーネスに代わる配線部材の使用と、コネクタ部品を用いない接続方法の適用、及び接続工程の簡略化とが求められている。
【0003】
このような車載機器の小型化や低コスト化に対応するため、車載機器内の配線部品に、導体方向に並列配置された複数の導体(例えば、Cu合金[無酸素銅、タフピッチ銅]等で構成される導体)を、導体の厚さ方向の両面から被覆用の絶縁フィルムを接着材によって接着被覆して一体化したFlexible Flat Cable(FFC)と呼ばれるフラットケーブルを採用する基板間接続構造が提案されている。このFFCでは、導体長手方向の両端部に絶縁フィルムから外部に露出する導体露出部が形成されており、この導体露出部が、プリント配線板が有する電極部に接続される。なお、車載機器内の配線部品として用いられるフラットケーブルには、Multi Frame Joiner(MFJ)やFlexible Print Circuit(FPC)等も採用されている。
【0004】
これらフラットケーブルの露出導体部とプリント配線板に設けられた電極部との接続には、コネクタを介することなく、はんだ材や導電性接着材等の接合材で直接接続する構造が採用されることがある。はんだ材等による直接接続は、接続部の領域の縮小による小型化への対応と接続部品点数の削減とができるだけでなく、プリント配線板に実装される配線部品以外の電子部品のはんだ接続と一括接続することにより、実装工程の削減や簡略化もできる。
【0005】
一方、車載機器には、従来から、長期間の使用に耐える高い信頼性も求められている。車載機器に実装される配線部品やその接続部についても、長期間の振動負荷や熱負荷に対する信頼性確保が不可欠である。複数枚のプリント配線板間を接続する配線部品では、車載機器に作用する振動負荷に応じて発生する配線部品自体の共振振動等により、配線部品接続部に繰り返し機械的負荷が作用する。この機械的負荷により、配線部品接続部が疲労破壊する可能性が高いので、車載機器用配線部品では、特に振動負荷に対する信頼性確保が重要になっている。
【0006】
車載機器では長期間にわたる信頼性確保が不可欠であり、フラットケーブル自体やフラットケーブルの接続部にも振動負荷や熱負荷に対する信頼性確保が要求される。特に、エンジンルーム内に搭載される車載機器には、振動や衝撃等の機械的負荷に対する信頼性が重要視されている。信頼性向上には、車載機器全体の構造を最適化すると共に、フラットケーブルの接続部にかかる負荷を低減し、機械的負荷に対する耐性を向上する構造や手段を検討することが必要である。
【0007】
上述したようなフラットケーブルの導体露出部とプリント配線板の電極部とをはんだ材で接続した基板間配線部品では、導体露出部の接続部近傍に負荷がかかりやすい構造になっている。特に、被覆材端部の導体露出部や、導体露出部の先端のはんだ接続部フィレット上端部に大きな応力が集中する。
【0008】
プリント配線板の電極部とフラットケーブルの導体露出部との接続部に、機械的負荷、特に、フラットケーブルの厚さ方向(プリント配線板の電極部とフラットケーブルの導体露出部との接続界面を引き剥がす方向)に高振幅の機械的負荷が作用した場合、接続部の破断や剥がれ、又はフラットケーブルの導体露出部の断線が発生する場合がある。
【0009】
フラットケーブルの導体露出部とプリント配線板の電極部との接続部にかかる負荷を低減する方法として、FFCやFPC等のフラット配線材を回路基板に拘束するためのフラット配線材拘束用クリップを設け、回路基板上にフラット配線材の導体が接続された状態でフラット配線材拘束用クリップによって、フラット配線材を、フラット配線材の導体端部よりも回路基板端部に近い側の部分で回路基板上に押さえ込む方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
特許文献1に記載の回路基板上にフラット配線材の導体が接続された状態で、フラット配線材を、フラット配線材拘束用クリップによって回路基板上に押さえ込む手段によれば、フラット配線材の接続部に引き剥がし方向の機械的外力が加えられた場合、その力が接続部に作用するのをフラット配線材拘束用クリップの拘束によって阻止できる。この結果、回路基板とフラット配線材との接続部の破損を防止できる。
【0011】
また、フラットケーブルの導体とプリント配線板の回路との接続部を補強する手段として、FFCの端部導体に直角曲げ部を形成し、プリント配線板(FPC等)の対応する回路に形成した孔にFFCの導体の端部を挿入し、FPCの裏面でFFCの導体をFPCへ圧着又ははんだ付けして固定し、導体の両面からプラスチック板からなる補強板で補強するか、あるいは粘着テープで押さえてフラットケーブルとプリント配線板との密着性を向上させ、両者の接続部を補強する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0012】
特許文献2に記載のフラットケーブルの導体とプリント配線板の回路との接続部を補強する手段によれば、フラットケーブルの導体とプリント配線板の回路との接続部とをフラットケーブルとプリント配線板と共に上下両面から補強板又は粘着テープを何重か巻いて固定することによって、接続部に作用する機械的外力を低減することができる。
【0013】
更に、フラットケーブルやフレキシブル配線板等のケーブルをプリント配線板に接続し、かつ固定する手段として、プリント配線板上に載置したケーブルに押圧力を加える固定板(金属からなる板)をケーブル上部に設け、この固定板をネジによってプリント配線板に固定する方法や、先端に爪を形成した端子をプリント配線板に設けた孔に挿入することによってプリント配線板に固定する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0014】
特許文献3に記載のフラットケーブルやフレキシブル配線板などのケーブルをプリント配線板に固定する手段によれば、ケーブルの導体とプリント配線板との接続部を覆う固定板をネジや先端に爪を形成した端子によってプリント配線板に固定することができ、接続部に作用する機械的外力を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−143784号公報
【特許文献2】特開平8−203577号公報
【特許文献3】特開2002−216873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、特許文献1に記載の方法においては、フラット配線材拘束用クリップが単一棒材の曲げ加工によって形成されており、回路基板を挟み込むような形状に曲げ加工した部分の弾性変形力(ばね力)によってフラット配線材を回路基板に押さえ込む構造になっている。このフラット配線材拘束用クリップの弾性変形力は、振動等の機械的負荷が長期間、繰り返し加わることによって次第に劣化することが懸念される。この弾性変形力、すなわち、拘束力の劣化によって、フラット配線材の接続部に作用する引き剥がし方向への機械的外力が次第に増加していき、いずれは破損に至ることが考えられる。
【0017】
また、特許文献2の記載の構造は、フラットケーブルとプリント配線板とを含めて両者の接続部を覆うように補強する構造であるので、補強用の上記部材を設ける領域がフラットケーブルの幅やプリント配線板の幅よりも拡大し、接続部の小型化を阻害する要因になる。
【0018】
また、特許文献2に記載の技術では、プラスチック板からなる補強板や粘着テープによって接続部を補強する構成になっている。プラスチック板の補強板は、車載機器に搭載した場合の機械的負荷に対して剛性不足になることが予想され、十分な負荷抑制効果が得られない場合がある。
【0019】
更に、特許文献3に記載の手段では、振動等の機械的負荷が長期間、繰り返し加わることによってネジや先端に爪を形成した端子とプリント配線板との固定部に緩みが生じることが予想される。この緩みによって固定板による拘束力が低下し、ケーブル導体の接続部に作用する機械的外力が増加し、ケーブルの導体に破損が発生する場合がある。
【0020】
また、フラットケーブルの導体露出部とプリント配線板の電極との接続において、導体露出部にS字状の折り曲げ部を形成し、折り曲げ部の先端部分をプリント配線板の電極の上に載置し、はんだ接続する構造が適用される場合がある。この接続構造では、導体露出部のフィルムの根元部分において、フラットケーブル下面(プリント配線板に対向する面)とプリント配線板の上面との間に隙間が生じる。
【0021】
接続部の近傍においてフラットケーブルとプリント配線板との間に隙間が存在する状態で特許文献1に記載の技術を用いると、フラット配線材拘束用クリップの弾性変形力(ばね力)によってフラットケーブルがプリント配線板の側に変形することが予想される。このような変形によって、導体露出部のはんだ接続部やフィルム端部の導体に機械的応力が発生し、この応力が長時間、継続して作用することにより上記応力の発生部分において破損が発生する場合がある。
【0022】
また、特許文献2に記載の技術についても、補強板や粘着テープでフラットケーブルをプリント配線板に押さえつける構造であるので、特許文献1と同様の問題が生じる場合がある。更に、特許文献3に記載の技術についても、金属板からなる固定板によってケーブル導体接続部をプリント配線板に押さえつける構造であるので、上記した他の特許文献に記載の技術と同様の問題が生じる場合がある。
【0023】
つまり、従来の接続方法では、長期間の振動や衝撃等の機械的負荷によって拘束力が低下してしまうことや、フラットケーブルが変形してしまうことが懸念される。
【0024】
したがって、本発明の目的は、フラットケーブルの導体露出部と、それに対応するプリント配線板に形成された電極部とをはんだ材で接続するに当たり、長期間の振動や衝撃等の機械的負荷に対し、接続部が破断、破損等を生じることなく安定した接続信頼性を確保することができるフラットケーブル及びフラットケーブルとプリント配線板との接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、並列に配置される複数の導体と、前記複数の導体それぞれの長手方向の両端部を外部に露出させ、前記両端部の間の前記複数の導体を被覆する絶縁フィルムと、前記複数の導体の幅方向に沿って前記複数の導体のそれぞれを覆い、前記絶縁フィルムの表面であって、前記絶縁フィルムの端を含む領域の一部に設けられ、金属板と前記金属板を被覆する絶縁被覆層とを有する補強部材とを備えるフラットケーブルが提供される。
【0026】
また、上記フラットケーブルにおいて、前記複数の導体が、前記複数の導体の幅方向に並列配置されて導体群を構成し、前記両端部のそれぞれが、外部に露出される露出部であり、前記露出部が、前記露出部の先端を含む領域に、外部の導体に接続可能に設けられる導体接続部を有し、前記補強部材が、前記導体群の幅方向に沿って前記導体群を横断して前記導体群の一部を覆うと共に、前記補強部材の中心が前記絶縁フィルムの端から予め定められた距離をおいた位置に設けられてもよい。
【0027】
また、上記フラットケーブルにおいて、前記補強部材が、外部のプリント配線板に固定可能に設けられてもよい。
【0028】
また、上記フラットケーブルにおいて、前記補強部材が、前記補強部材の前記金属板の一部が、前記絶縁被覆層から外部に露出する金属板露出部を含み、前記金属板露出部が、前記外部のプリント配線板に固定可能に設けられてもよい。
【0029】
また、上記フラットケーブルにおいて、前記金属板露出部が、前記外部のプリント配線板が備えるスルーホールに挿入可能に設けられると共に、前記スルーホールに固定可能に設けられてもよい。
【0030】
また、上記フラットケーブルにおいて、前記補強部材が、前記外部のプリント配線板の表面の非対向面になる前記絶縁フィルムの表面に設けられ、前記補強部材が設けられている領域と実質的に同一の位置であって、前記外部のプリント配線板の表面の対向面になる前記絶縁フィルムの表面に、前記外部のプリント配線板の表面と前記絶縁フィルムとの間に配置可能に設けられる介在部を更に備えることもできる。
【0031】
また、上記フラットケーブルにおいて、前記介在部が、基材と、前記基材の両面に形成された接着剤とを有し、前記基材の前記両面に形成された前記接着剤によって前記外部のプリント配線板の表面と前記絶縁フィルムに接着されていてもよい。
【0032】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、プリント配線板とフラットケーブルとを備え、前記フラットケーブルが、並列に配置される複数の導体と、前記複数の導体それぞれの長手方向の両端部を外部に露出させ、前記両端部の間の前記複数の導体を被覆する絶縁フィルムと、前記複数の導体の幅方向に沿って前記複数の導体のそれぞれを覆い、前記絶縁フィルムの表面であって、前記絶縁フィルムの端を含む領域の一部に設けられ、金属板と前記金属板を被覆する絶縁被覆層とを有する補強部材とを有し、前記補強部材の一部が前記プリント配線板に固定されるフラットケーブルとプリント配線板との接続構造が提供される。
【0033】
また、上記フラットケーブルとプリント配線板との接続構造において、前記フラットケーブルが、前記複数の導体が前記複数の導体の幅方向に並列配置されて構成される導体群を有し、前記両端部のそれぞれが、外部に露出される露出部であり、前記露出部が、前記露出部の先端を含む領域に、外部の導体に接続可能に設けられる導体接続部を含み、前記補強部材が、前記導体群の幅方向に沿って前記導体群を横断して前記導体群の一部を覆い、前記絶縁フィルムの端から予め定められた距離をおいた位置に設けられると共に、前記プリント配線板に固定され、前記プリント配線板が、前記複数の導体のそれぞれに対応し、複数の前記導体接続部のそれぞれが接続される複数の電極部を更に有することもできる。
【0034】
また、上記フラットケーブルとプリント配線板との接続構造において、前記補強部材の前記金属板の一部が、前記絶縁被覆層から外部に露出する金属板露出部を含み、前記金属板露出部が、前記プリント配線板に固定されてもよい。
【0035】
また、上記フラットケーブルとプリント配線板との接続構造において、前記金属露出部が、前記プリント配線板が有するスルーホールに挿入され、前記スルーホールに固定されてもよい。
【0036】
また、上記フラットケーブルとプリント配線板との接続構造において、前記補強部材が、前記プリント配線板の表面の非対向面になる前記絶縁フィルムの表面に設けられ、前記補強部材が設けられている領域と実質的に同一の位置であって、前記プリント配線板の表面の対向面になる前記絶縁フィルムの表面に、前記プリント配線板の表面と前記絶縁フィルムとの間に配置される介在部を更に含んでもよい。
【0037】
また、上記フラットケーブルとプリント配線板との接続構造において、前記介在部が、基材と、前記基材の両面に形成された接着剤とを有し、前記基材の前記両面に形成された前記接着剤によって前記プリント配線板の表面と前記絶縁フィルムに接着されていてもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係るフラットケーブル及びフラットケーブルとプリント配線板との接続構造によれば、フラットケーブルの導体露出部と、それに対応するプリント配線板に形成された電極部とをはんだ材で接続するに当たり、長期間の振動や衝撃等の機械的負荷に対し、接続部が破断、破損等を生じることなく安定した接続信頼性を確保することができるフラットケーブル及びフラットケーブルとプリント配線板との接続構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施の形態に係る補強部材と固定部材とを備えるフラットケーブルの側面図である。
【図2】図1に示すフラットケーブルの平面図である。
【図3】図1に示すフラットケーブルを構成する補強部材の平面図である。
【図4】図3に示す補強部材の側面図である。
【図5】図3に示す補強部材の内部構造の部分断面図である。
【図6】フラットケーブルが備えるフラットケーブルの内部構造を表す部分断面図である。
【図7】(a)は、図1に示すフラットケーブルが備えるはんだ接続部を拡大した部分側面図、(b)〜(d)は、挿入部の変形例を示す図である。
【図8】図1に示すフラットケーブルをプリント配線板に実装した状態の部分断面図である。
【図9】図8に示すフラットケーブルを実装した状態の平面図である。
【図10】図1に示すフラットケーブルを2枚のプリント配線板の間を繋ぐように実装した状態の断面図である。
【図11】補強部材と固定部材とを備える本実施の形態に係るフラットケーブルの他の形態の側面図である。
【図12】図11に示すフラットケーブルの平面図である。
【図13】図11に示すフラットケーブルをプリント配線板に実装した状態の平面図である。
【図14】補強部材と固定部材とを備える本実施の形態に係るフラットケーブルの更に他の形態の側面図である。
【図15】図14に示すフラットケーブルをプリント配線板に実装した状態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[実施の形態]
図1は、本実施の形態に係る補強部材と固定部材とを備えるフラットケーブルの側面の概要を示し、図2は、図1に示すフラットケーブルの平面の概要を示す。また、図3は、図1に示すフラットケーブルを構成する補強部材の平面の概要を示し、図4は、図3に示す補強部材の側面を示す。更に、図5は、図3に示す補強部材の内部構造の部分断面の概要を示す。また、図6は、フラットケーブルが備えるフラットケーブルの内部構造を表す部分断面を示し、図7(a)〜(d)は、図1に示すフラットケーブルが備えるはんだ接続部を拡大した部分側面を示す。
【0041】
まず、図1に示すように本実施の形態に係るフラットケーブル9は、フラットケーブル本体1と、フラットケーブル本体1の長手方向の両端の近傍においてフラットケーブル本体1を補強する補強部材10と、補強部材10が固定されたフラットケーブル本体1の端部を後述するプリント配線板に固定する介在部の一例としての固定部材19とを備える。
【0042】
フラットケーブル本体1は、図6に示すように、幅方向に並列に配置される複数の導体2と、複数の導体2それぞれの長手方向の両端部を外部に露出させ、両端部の間の複数の導体2を被覆する被覆部材3(すなわち、絶縁フィルム)と、複数の導体2と被覆部材3とを接着する接着剤4とを有する。複数の導体2は、複数の導体2の幅方向に並列に配置されて導体群を構成する。そして、複数の導体2それぞれの長手方向の両端部は、複数の導体2が部分的に被覆部材3から露出することにより形成される、露出部としての導体露出部5を有する。そして、導体露出部5の複数の導体2のそれぞれは、側面視にてS字形状の折り曲げ部7を有する。また、導体露出部5の先端を含む領域(主として導体露出部5の先端部)は、プリント配線板が備える外部の導体としての電極部に接続可能に設けられる導体接続部としてのはんだ接続部6を有する。そして、フラットケーブル本体1が有する被覆部材3から複数の導体2が外部に露出する部分の近傍に位置する被覆部材3の端部である被覆部材端部8の表面には、前述した補強部材10と固定部材19とが設けられる。導体露出部5が必要以上にあると、他の部品や配線部品を搭載する機器の筐体(ケース)との接触で短絡が生じる可能性があるため、導体露出部5は、極力少なくするのが好ましい。
【0043】
補強部材10は、複数の導体2の長手方向とは異なる方向で複数の導体2のそれぞれを覆い、被覆部材3の端を含む領域の一部に設けられる。すなわち、補強部材10は、導体群の幅方向に沿って導体群を横断して導体群の一部を覆うと共に、補強部材10の中心が被覆部材3の端から予め定められた距離をおいた位置に設けられる。そして、補強部材10は、外部のプリント配線板に固定可能に設けられる。なお、補強部材10は、フラットケーブル本体1の端面から導体露出部5側に突出していてもよい。
【0044】
補強部材10は、図3及び図5等に示すように、金属板11と、金属板11を被覆する絶縁被覆層としての被覆部材13と、金属板11と被覆部材13とを接着する接着剤14とを有する。そして、図3に示すように、本実施の形態に係る補強部材10は、平面視にて略矩形状を有する。例えば、補強部材10は、短冊形状を有する。そして、フラットケーブル本体1から露出した導体2のはんだ接続部6の近傍(換言すれば、被覆部材3の端部の近傍)において、導体群を幅方向に横断して形成され、被覆部材3の表面に接着剤、粘着剤等を用いて固定される。
【0045】
また、補強部材10の長手方向の両端部は、金属板11の一部が被覆部材13から外部に露出することにより形成される金属板露出部16を含む。金属板露出部16は、外部のプリント配線板に固定可能に設けられる。例えば、補強部材10の長手方向の両端部において、被覆部材13の一部を除去することにより金属板11の表面を外部に露出させる。これにより、補強部材10の両端部のそれぞれに金属板露出部16が形成される。そして、金属板露出部16は、複数の導体2のそれぞれに対応して設けられるプリント配線板の電極部に接続可能に設けられる。
【0046】
そして、金属板露出部16の先端の一部は、プリント配線板に固定可能に設けられる。一例として、金属板露出部16は、外部のプリント配線板が備えるスルーホール(スルーホール状の電極部)に挿入可能に設けられると共に、スルーホールに固定可能に設けられる。そして、金属板露出部16がスルーホールに挿入され、スルーホールに挿入された金属板露出部16が、接合材等を用いてスルーホールに固定される。
【0047】
例えば、図4に示すように、金属板露出部16は、金属板露出部16をプリント配線板が有するスルーホールに容易に挿入させるべく、金属板露出部16の長手方向の端部に、側面視にて略直角の折り曲げ部15を有することもできる。例えば、補強部材10の長手方向の端部に形成した金属板露出部16の先端部分をプリント配線板が有するスルーホールに挿入可能に折り曲げて折り曲げ部15を形成する。そして、折り曲げ部15をスルーホールの挿入した後、はんだ材等の接合材を用いてスルーホールに折り曲げ部15を固定する。スルーホールの内部には電極部が設けられており、はんだ材等の接合材で折り曲げ部15と当該電極部とが電気的に接続される。この場合において、折り曲げられた金属板11の先端部は、プリント配線板の対応するスルーホール状の電極部等に挿入される挿入部12としての機能を有しており、挿入部12の先端部分は、スルーホール状の電極部に接続されるはんだ接続部17を有する。挿入部12は、図7(a)に示すようにストレートな形状の他に、図7(b)に示すように、はんだ接続部17の近傍をテーパ形状にしてもよく、図7(c)に示すように、はんだ接続部17を弧状にしてもよく、図7(d)に示すように、はんだ接続部17を含む領域を傾斜の緩やかなテーパ形状にしてもよい。挿入部12を図7(b)〜(d)に示す形状にすることにより、プリント配線板に設けられたスルーホールへの挿入が容易になる。
【0048】
補強部材10は、図2に示すように、フラットケーブル本体1の上面(すなわち、プリント配線板に対向しない面側(以下、非対向面側とする))に、複数の導体2の長手方向に直交する方向に補強部材10の長手方向を向けて配置される。そして、補強部材10は、フラットケーブル本体1の被覆部材端部8の表面において、複数の導体2を覆って設けられる。補強部材10の金属板露出部16は、並列に配置された複数の導体2の配列方向の端部に位置する導体2aより外側で被覆部材13から露出する。そして、金属板露出部16は、フラットケーブル本体1の下面側(すなわち、プリント配線板に対向する面側(以下、対向面側とする))方向に折り曲げ部15を有する。補強部材10は、フラットケーブル本体1の被覆部材端部8の近傍において、フラットケーブル本体1の上面側の被覆部材3の表面に、接着部材18で固定される。接着部材18は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等を接着剤として塗布し、これを硬化させて接着部材とする。接着部材18の厚さは、補強部材10とフラットケーブル本体1とを接着する機能を損なわない限り薄く形成するのが好ましい。また、接着部材18は、補強部材10に対して部分的に設けてもよいが、界面の剥離防止の観点から補強部材10の全長に亘って設けるのが好ましい。
【0049】
固定部材19は、図7(a)に示すように、フィルム状の基材20と、フィルム状の基材20の上下両面に形成される接着剤21とを有する。固定部材19は、補強部材10と同様に、平面視にて略矩形状を有する(図示しない)。例えば、固定部材19は、短冊形状を有する(図示しない)。そして、固定部材19は、フラットケーブル本体1の下面に複数の導体2の長手方向に直交する方向に固定部材19の長手方向を向けて配置され、フラットケーブル本体1の被覆部材端部8の近傍に設けられる。すなわち、固定部材19は、補強部材10の略投影面内に配置される。固定部材19は、上面側の接着剤21によりフラットケーブル本体1の下面側の被覆部材3の表面に固定される。もう一方の下面側の接着剤21は、フラットケーブル9をプリント配線板に実装した場合に、固定部材19をプリント配線板の表面に固定する機能を有する。接着剤21は、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。基材20の厚さは、接着剤21の厚さよりも薄い方が好ましい。固定部材19の機能から言えば、固定部材19は変形しにくい特性を有するものが良く、具体的には弾性率が高いことが好ましい。一般的に基材20は接着剤21よりも弾性率が高いため、固定部材19として基材20を用いることで、固体部材19全体の弾性率の低下を抑制することができる。
【0050】
(フラットケーブルのプリント配線板への実装例)
本実施の形態に係るフラットケーブル9をプリント配線板に実装した場合について、図8及び図9を用いて説明する。
【0051】
図8は、図1に示すフラットケーブルをプリント配線板に実装した状態の部分断面の概要を示し、図9は、図8に示すフラットケーブルを実装した状態の平面の概要を示す。また、図10は、図1に示すフラットケーブルを2枚のプリント配線板の間を繋ぐように実装した状態の断面の概要を示す。
【0052】
フラットケーブル本体1が備える複数の導体2が有する導体露出部5の先端部分のはんだ接続部6は、はんだ材や導電性接着材等の接合材25により、プリント配線板22が有する電極部23に接合される。複数のはんだ接続部6のそれぞれに対応する複数の電極部23が、プリント配線板22に設けられている。プリント配線板22の表面では、電極部23が電気的に絶縁性を有するソルダーレジスト24から露出しており、複数の導体2それぞれのはんだ接続部6と電気的に導通するように接合される。
【0053】
補強部材10が有する被覆部材13から露出している挿入部12は、プリント配線板22に設けられているスルーホール26に挿入され、スルーホール26の内面に設けられているスルーホール電極部27にはんだ材等の接合材28により接合される。また、固定部材19は、プリント配線板22の表面に接着剤(図示しない)により固定される。
【0054】
図8や図9では、本実施の形態に係るフラットケーブル9の一方の端末部をプリント配線板22に実装した例を示している。同様に、フラットケーブル9の他方の端末部も、プリント配線板22に実装される。両端末部がプリント配線板22に実装されたフラットケーブル9は、例えば、図10に示すように、積層された2枚のプリント配線板22a及びプリント配線板22bを互いに繋ぐことを目的として、フラットケーブル本体1の中央部29で折り曲げられた状態で実装される。
【0055】
図10に示すようなフラットケーブルのプリント配線板の実装品を搭載した機器に機械的振動が負荷されると、プリント配線板の間を繋いでいるフラットケーブル本体1自体も共振によってフラットケーブルが有する導体2の厚さ方向(つまり、図10の上下方向)に高振幅の振動変形が生じる場合がある。この振動変形は、固定端であるフラットケーブル本体1のはんだ接続部6に集中して作用し、はんだ接続部6の上端部や被覆部材端部8の導体2に高い応力を生じさせる。
【0056】
フラットケーブル本体1が備える被覆部材端部8の近傍に設けられた補強部材10は、金属板11を被覆部材13で層状に被覆した構成を有する。補強部材10は、フラットケーブル本体1の被覆部材端部8の近傍の変形を十分に抑制できる剛性を有しており、例えば、金属板11を構成する材料には、フラットケーブル本体1の導体2よりも高強度の材料を用いる。この補強部材10により、はんだ接続部6の近傍部分の振動変形が抑制され、高応力の集中を分散することができる。更に、補強部材10は、金属板露出部16の先端部分をプリント配線板22のスルーホール26に挿入し、はんだ接続部17においてスルーホール電極部27に接合することにより、プリント配線板22に固定される。フラットケーブル本体1や補強部材10より板厚が厚く(例えば、1.0mm以上1.6mm以下程度)、剛性が高いプリント配線板22に補強部材10を介してフラットケーブル本体1を固定することにより、フラットケーブル本体1のはんだ接続部6の近傍部分の振動変形がプリント配線板22により拘束され、はんだ接続部6の近傍部分の変形量は著しく減少する。
【0057】
これに加え、補強部材10の略投影面内に設けられるフラットケーブル本体1とプリント配線板22との間の隙間を埋める固定部材19により、フラットケーブル本体1は、プリント配線板22により強固に拘束されると共に、はんだ接続部6の近傍部分の変形量も更に低減することができる。すなわち、対向するプリント配線板22の方向にフラットケーブル本体1が変形しようとするフラットケーブル本体1の動きを固定部材19により抑制できるので、はんだ接続部6の近傍部分の変形量を低減することができる。
【0058】
本実施の形態に係る固定部材19は、接着剤21によりフラットケーブル本体1及びプリント配線板22に接着、固定される。接着剤21は高温になると軟化し、変形拘束効果が低下する場合がある。したがって、接着剤21には、ガラス転移温度が高い材料を用いることが好ましい。また、フラットケーブル本体1より剛性が高い補強部材10を構成する金属板露出部16の端部をプリント配線板に固定している。この補強部材10による拘束作用があるので、固定部材19の接着剤21が高温環境下で軟化した場合であっても、フラットケーブル本体1のはんだ接続部6の近傍部分の変形量が著しく増加することはない。
【0059】
また、補強部材10と固定部材19とを設けたフラットケーブル9をプリント配線板22に実装することにより、図10に示すようなプリント配線板の間を繋ぐフラットケーブル本体1のはんだ接続部6の近傍に生じる変形を抑制することができ、はんだ接続部6の上端部や被覆部材端部8の導体2に高い応力が集中することを抑制することができる。
【0060】
図1や図8等に示す本実施の形態に係るフラットケーブル9では、フラットケーブル本体1とプリント配線板22との間に固定部材19を介在させる。したがって、導体2の導体露出部5にS字形状の折り曲げ部7を設けることにより、はんだ接続部6をプリント配線板22の対応する電極部23に接続することができる。そして、導体2に折り曲げ加工を施してプリント配線板の電極部23に導体露出部5を接続することにより、導体2のはんだ接続部6の底面(プリント配線板に対向する面)を電極部23に押し付けることができ、両者の間隔が必要以上に広がることを防止できる。この間隔を制御することで、はんだ材を用いた接続時に、はんだ内にボイドが発生、残留することを抑制することができる。ボイドを抑制することにより、振動等の機械的負荷がはんだ接続部6に作用した場合であっても、ボイドが存在することによる応力集中を抑制できるので、はんだ接続部6の損傷発生を防止することができる。
【0061】
また、導体2の導体露出部5にS字形状の折り曲げ部7が設けられているので、フラットケーブル本体1をプリント配線板22に実装する場合に、フラットケーブル本体1の上方から過度の押し付け力が加わった際に、折り曲げ部7が変形する場合がある。この変形によりはんだ接続部6の上端部や被覆部材端部8の導体に高い応力が発生し、破損する場合がある。本実施の形態に係るフラットケーブル9及び接続構造は、被覆部材端部8の近傍にフラットケーブル本体1とプリント配線板22との間を埋める固定部材19を設けている。この固定部材19が、フラットケーブル本体1をプリント配線板22の側に押し付けるので、導体2の折り曲げ部7に過度な荷重が作用することを抑制できる。これにより、導体2が破損することを防止できる。
【0062】
更に、フラットケーブル本体1をプリント配線板22に実装した構造体では、実装直後から機器に搭載するまでの製造工程において、搬送時のハンドリングや機器搭載時の取り扱い方によって導体2のはんだ接続部6の近傍部分に静的あるいは動的な機械的負荷が加わり、はんだ接続部6の近傍の導体2が損傷する場合がある。このような機械的負荷に対し、本実施の形態に係るフラットケーブル9及び接続構造は、はんだ接続部6の近傍部分を補強部材10で補強すると共に、補強部材10をプリント配線板22に強固に固定するので、機械的負荷がはんだ接続部6の近傍部分に加わることを抑制できる。これにより、はんだ接続部6の近傍部分の導体が損傷することを防止できる。
【0063】
また、本実施の形態に係るフラットケーブル9及び接続構造は、図8や図9に示すように、短冊状の補強部材10の両端に形成された金属板露出部16を折り曲げている。そして、金属板露出部16の先端部に設けられる挿入部12は、プリント配線板22が有するスルーホール26に挿入される。これにより、フラットケーブル本体1をプリント配線板22に実装する場合における複数の導体2と、複数の導体2のそれぞれに対応して設けられるプリント配線板22の複数の電極部23との位置合わせを容易、かつ正確に実施することができる。
【0064】
次に、本実施の形態に係るフラットケーブル9をプリント配線板22に実装する方法を説明する。
【0065】
プリント配線板22が有する電極部23並びにスルーホール26の表面及び内部に、メタルマスクを用いた印刷法やディスペンス法によりペースト状のはんだ材等の接合材25及び接合材28を塗布する。プリント配線板22のスルーホール26にフラットケーブル9の補強部材10の挿入部12を挿入し、プリント配線板22の電極部23上に導体2のはんだ接続部6が位置合わせされた状態で載置される。
【0066】
この場合に、フラットケーブル9は、2枚のプリント配線板(例えば、図10のプリント配線板22a及びプリント配線板22b)の間を繋ぐ。具体的に、フラットケーブル9の一方の端のはんだ接続部6が一方のプリント配線板の電極部23に載置されると共に、フラットケーブル9の一方の端の挿入部12が一方のプリント配線板のスルーホール26に挿入される。これと同様に、フラットケーブル9の他方の端のはんだ接続部6が他方のプリント配線板の電極部23に載置されると共に、フラットケーブル9の他方の端の挿入部12が他方のプリント配線板のスルーホール26に挿入される。
【0067】
また、フラットケーブル本体1は、被覆部材端部8の近傍に設けられる固定部材19により、プリント配線板22に固定される。この状態でハンドリングされ、はんだリフロー炉のベルトコンベアまで搬送され、ベルトコンベアでリフロー炉内を移動する間に、はんだ材等の接合材25及び接合材28を溶融、凝固させる。これにより、導体2のはんだ接続部6と電極部23とが接合され、挿入部12のはんだ接続部17とスルーホール電極部27とが接合される。
【0068】
フラットケーブル本体1が有する複数の導体2は、無酸素銅やタフピッチ銅等の銅合金材料を用いて構成される。銅合金材料の表面にはめっき処理を施すこともできる。例えば、めっき材としては、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、及び銀(Ag)等の金属からなる群から選択される金属材料を用いることができる。そして、めっき処理により、銅合金材料の表面に単層又は複数の層の金属層を形成することができる。また、被覆部材3としては、フィルム状のポリイミド樹脂を用いることができる。そして、接着剤4としては、エポキシ樹脂を用いることができる。
【0069】
補強部材10が有する金属板11は、導体2の強度より高い強度を有する材料を用いて構成することが好ましい。例えば、金属板11は、リン青銅、又は鉄(Fe)−ニッケル(Ni)合金等の材料を用いて構成することができる。また、金属板11の表面にめっき処理を施すこともできる。補強部材10の被覆部材13は、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂(PTFE、PFA等)、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等を用いることができる。接着剤14は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。更に、補強部材10の金属板11を、フラットケーブル本体1が有する導体2と同知の材料で構成することもできる。この場合、金属板11の剛性を向上させるため、金属板11の厚さを導体2の厚さより厚くする。
【0070】
固定部材19の基材20は、ポリイミド樹脂フィルムで形成することができる。また、この基材20の上下両表面に設けられる接着剤21としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、又はエポキシ樹脂等を用いることができる。
【0071】
また、導体2とプリント配線板22の電極部23とを接続する接合材25としては、溶融温度が約218℃であるSn−3Ag−0.5Cu(mass%)や溶融温度が約221℃のSn−3.5Ag(mass%)等のはんだ材を用いることができる。補強部材10の挿入部12とプリント配線板22のスルーホール電極部27との接続にも、同様のはんだ材を用いることができる。
【0072】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係るフラットケーブル9は、フラットケーブル本体1の導体露出部5が有するはんだ接続部6とプリント配線板22の電極部23とをはんだ材等により接合して形成されるはんだ接続部6の近傍領域(つまり、導体群が外部に露出している絶縁フィルムの端、はんだ接続部6に形成されるはんだフィレットの上端部)に補強部材10を設けたので、機械的負荷がはんだ接続部6の近傍領域に加わった場合における当該近傍領域の変形(特に、フラットケーブル本体1の導体2の厚さ方向の変形量)を抑制することができる。これにより、フラットケーブル9は、はんだ接続部6の近傍領域に位置するフラットケーブル本体1の導体2、及びはんだ材等の接合材に発生する応力を低減できる。
【0073】
また、本実施の形態に係るフラットケーブル9は、補強部材10を備える。そして、補強部材10は、短冊形状を有する金属板11と、金属板11を被覆する絶縁被覆層としての被覆部材13を有して構成される。金属板11を用いて補強部材10の中心領域を構成することにより、補強部材10の剛性を向上させることができる。また、補強部材10を固定したフラットケーブル本体1の導体2のはんだ接続部6の近傍の剛性も向上させることができる。はんだ接続部6の近傍の剛性を向上させることにより、フラットケーブル本体1を構成する絶縁フィルムの端の導体部分、及びはんだフィレット上端部の導体部分の剛性差が大きく相違する箇所に加わる機械的負荷により、これらの領域に発生する応力を低減できる。すなわち、振動や衝撃等の機械的負荷がフラットケーブル9を実装したプリント配線板22を搭載している機器に加わったとしても、フラットケーブル自体の板厚方向の振動によるはんだ接続部6の近傍の変形量を低減できるので、フラットケーブルの導体に発生する応力を低減できる。
【0074】
また、補強部材10は、金属板露出部16を有する。そして、金属板露出部16は、プリント配線板22の電極部(例えば、スルーホール状の電極部)にはんだ材や導電性の接合材を用いて固定される。補強部材10が、金属板露出部16を介してフラットケーブルより剛性の高いプリント配線板22に固定されるので、はんだ接続部6の近傍の変形を、補強部材10と共にプリント配線板22で拘束できる。これにより、はんだ接続部6の近傍の変形を更に低減できる。このような補強部材10の形成と、補強部材10のプリント配線板22への固定により、フラットケーブル本体1の導体2のはんだ接続部6の近傍で生じる導体やはんだ材の損傷を抑制できるので、健全なフラットケーブル9を提供できる。
【0075】
また、補強部材10は、金属板露出部16の折り曲げ部15をプリント配線板22のスルーホール26に挿入し、接合材で接合することによりプリント配線板22に固定される。これにより、フラットケーブル9をプリント配線板22に実装する場合に、フラットケーブル本体1の複数の導体2とフラットケーブル本体1の複数の導体2に対応するプリント配線板22の電極部23との位置合わせが容易になる。
【0076】
また、本実施の形態に係るフラットケーブル9は、絶縁フィルムの表面とプリント配線板22の表面との間に介在部の一例としての固定部材19を備え、固定部材19は、絶縁フィルムの表面に接着材等により固定され、フラットケーブル本体1に一体化している。したがって、本実施の形態に係るフラットケーブル9は、部品点数を従来のケーブルに比べて削減することができると共に、フラットケーブル9をプリント配線板22に実装する工程と同時に絶縁フィルムの表面とプリント配線板22の表面との間の隙間を固定部材19で埋めることができる。
【0077】
また、固定部材19は、絶縁フィルムとプリント配線板22との双方に固定させることもできる。これにより、フラットケーブル9とプリント配線板22との間の隙間を狭くする方向の変形を抑制することが容易になる。しかし、固定部材19の表面と絶縁フィルムの表面との間、又は固定部材19の表面とプリント配線板22の表面との間に未接着(若しくは未接合)部分が存在する場合、隙間を広げる方向の変形については効果を得ることができない。したがって、補強部材10による変形の抑制効果をより向上させることを目的とする場合、固定部材19を絶縁フィルムの表面とプリント配線板22の表面との双方に固定することが好ましい。
【0078】
また、本実施の形態に係る接続構造は、導体接続部を電極部23に接合して形成されたはんだ接続部6の近傍に、導体群を導体の幅方向に横断する補強部材10(例えば、短冊状)を設け、補強部材10の一部がプリント配線板22に固定されている。これにより、機械的負荷が加わることによるはんだ接続部6の近傍の変形量を低減できるので、フラットケーブル9の導体2及びはんだに生じる応力を抑制できる。更に、プリント配線板22の表面と当該表面に対向する絶縁フィルムの表面との間に固定部材19を設けると共に、プリント配線板22と絶縁フィルムとの双方に固定部材19を固定する。これにより、フラットケーブル9の導体2の導体板厚方向に変形するために要する物理的な空間(隙間)を埋めることができると共に、固定部材19により、フラットケーブル9をプリント配線板22に固定できるので、フラットケーブル9の導体2のはんだ接続部6の近傍に生じる変形をより低減することができる。
【0079】
また、本実施の形態に係る接続構造は、フラットケーブルの端末に露出させた導体2を、導電性接合材を用いてプリント配線板22の電極部23に直接接続するので、振動、衝撃等の機械的負荷に対して高い耐性を発揮する。
【0080】
[実施の形態の変形例]
図11は、補強部材と固定部材とを備える本実施の形態に係るフラットケーブルの他の形態の側面の概要を示し、図12は、図11に示すフラットケーブルの平面図の概要を示す。
【0081】
図11に示すフラットケーブル9は、補強部材10が図11に示すようにフラットケーブル本体1の下面(つまり、プリント配線板22に対向する面)に設けられている点を除き、図1や図2に示す本実施の形態に係るフラットケーブル9と略同一の構成及び機能を備える。よって、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0082】
短冊状の補強部材10は、フラットケーブル本体1の被覆部材端部8において、複数の導体2を覆うように設けられている。補強部材10の両端部には、金属板11の金属板露出部16が形成されており、この部分で金属板11は略直角に折り曲げられ、その先端部が、プリント配線板22が有するスルーホール26に挿入される挿入部12になる。補強部材10は、フラットケーブル本体1の被覆部材端部8の近傍において、フラットケーブル本体1の下面側の被覆部材3の表面に接着部材18で固定される。
【0083】
図11に示す本実施の形態の変形例に係るフラットケーブル9をプリント配線板22に実装した状態を、図13を用いて説明する。
【0084】
図13は、図11に示すフラットケーブルをプリント配線板に実装した状態の平面の概要を示す。
【0085】
フラットケーブル本体1の導体2は、その先端部のはんだ接続部6が、プリント配線板22が有する電極部23上に載置され、はんだ材等の接合材により接合される。補強部材10の挿入部12は、プリント配線板22が有するスルーホール26に挿入され、スルーホール26の内面に形成されたスルーホール電極部27にはんだ材等の接合材により接合される。
【0086】
図1や図2等に示す本実施の形態に係るフラットケーブル9と同様に、本実施の形態の変形例に係るフラットケーブル9についても、フラットケーブル本体1の被覆部材端部8の近傍に設けられた補強部材10により、はんだ接続部6の近傍部分の振動変形を抑制し、高応力の集中を分散させることができる。更に、補強部材10の挿入部12をプリント配線板22のスルーホール26に挿入し、両者をはんだ材等で接合することによって、補強部材10をプリント配線板22に固定できる。これにより、フラットケーブル本体1のはんだ接続部6の近傍部分の振動変形は、プリント配線板22によって拘束されるので、はんだ接続部6の近傍部分の変形量を著しく減少させることができる。
【0087】
また、実施の形態の変形例では、補強部材10自体が、被覆部材端部8の近傍部分におけるフラットケーブル本体1とプリント配線板22との間の隙間を埋める機能を備えており、フラットケーブル本体1が対向するプリント配線板22の方向に変形することを抑制できる。このように、フラットケーブル本体1のはんだ接続部6の近傍部分の変形を抑制できるので、はんだ接続部6の上端部や被覆部材端部8の導体2に高い応力が発生することを抑制できる。
【0088】
実施の形態の変形例のように、補強部材10をフラットケーブル本体1とプリント配線板22との間に設けると、はんだ接続部6の近傍の応力抑制効果に加え、プリント配線板22の実装した後のはんだ接続部6の高さ(あるいは厚さ)を低くすることができ、搭載する機器の小型化、薄型化に対応することが容易になる。
【0089】
[実施の形態の他の変形例]
図14は、補強部材と固定部材とを備える本実施の形態に係るフラットケーブルの更に他の形態の側面の概要を示し、図15は、図14に示すフラットケーブルをプリント配線板に実装した状態の部分断面の概要を示す。なお、図15においては、補強部材10の金属板露出部16を取り除いた状態を示す。
【0090】
フラットケーブル本体1の構成、及びフラットケーブル本体1の上面(つまり、プリント配線板に対向しない面(非対向面))側で、フラットケーブル本体1の被覆部材端部8の近傍に設けられる補強部材10の構成は、図1や図8等に示した本実施の形態と同一である。
【0091】
本実施の形態に係るフラットケーブル9との相違点は、フラットケーブル本体1の被覆部材端部8の近傍で、補強部材10の略投影面内に配置され、フラットケーブル本体1とプリント配線板22との間の隙間を埋める介在部の一例としての短冊形状の固定部材30が、固定用金属板33と、フィルム状の基材31と、接着剤32とを備えて構成されている点である。固定用金属板33は、基材31に保持されている接着剤32で基材31に接着されており、固定部材30は、上面側の接着剤32によりフラットケーブル本体1の下面側の被覆部材3の表面に固定される。
【0092】
固定用金属板33の下面側(つまり、プリント配線板22に対向する面側)は、図14に示すように、接着剤32から露出している。フラットケーブル9をプリント配線板22に実装する場合、固定部材30の固定用金属板33は、図15に示すようにプリント配線板22の表面に形成された、対応する表面電極部34にはんだ材等の接合材35により接合、固定される。フラットケーブル本体1の導体2は、図15に示すように、はんだ接続部6においてプリント配線板22に形成された、対応する電極部23に接合される。補強部材10は、図示しない挿入部をプリント配線板22に形成されているスルーホール26に挿入し、その内面に形成されたスルーホール電極部27とはんだ材等の接合材によって接合することで、プリント配線板22に固定される。
【0093】
本実施の形態の他の変形例においても、フラットケーブル本体1の上面に設けられ、プリント配線板22に固定される補強部材10と、フラットケーブル本体1の下面とプリント配線板22との間の隙間を埋め、両者にそれぞれ固定される固定部材30とを用いることで、フラットケーブル本体1の導体2のはんだ接続部6の近傍部分の振動変形を抑制できる。特に、固定部材30を構成する固定用金属板33の下側表面を外部に露出させ、対応するプリント配線板22の表面電極部34にはんだ材を用いて金属的に接合している。固定部材30は、幅方向に並列配置された導体2を横断するように設けられているので、固定用金属板33と表面電極部34との接合面積が広くなり、かつ、強固な金属接合を用いるので、より強固な固定を実現できる。これにより、はんだ接続部6の近傍部分の振動変形抑制効果もより向上させることができる。
【0094】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0095】
1…フラットケーブル本体、2、2a…導体、3…被覆部材、4…接着剤、5…導体露出部、6…はんだ接続部、7…折り曲げ部、8…被覆部材端部、9…フラットケーブル、10…補強部材、11…金属板、12…挿入部、13…被覆部材、14…接着剤、15…折り曲げ部、16…金属板露出部、17…はんだ接続部、18…接着部材、19…固定部材、20…基材、21…接着剤、22、22a、22b…プリント配線板、23…電極部、24…ソルダーレジスト、25…接合材、26…スルーホール、27…スルーホール電極部、28…接合材、29…中央部、30…固定部材、31…基材、32…接着剤、33…固定用金属板、34…表面電極部、35…接合材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置される複数の導体と、
前記複数の導体それぞれの長手方向の両端部を外部に露出させ、前記両端部の間の前記複数の導体を被覆する絶縁フィルムと、
前記複数の導体の幅方向に沿って前記複数の導体のそれぞれを覆い、前記絶縁フィルムの表面であって、前記絶縁フィルムの端を含む領域の一部に設けられ、金属板と前記金属板を被覆する絶縁被覆層とを有する補強部材と
を備えるフラットケーブル。
【請求項2】
前記複数の導体が、前記複数の導体の幅方向に並列配置されて導体群を構成し、
前記両端部のそれぞれが、外部に露出される露出部であり、
前記露出部が、前記露出部の先端を含む領域に、外部の導体に接続可能に設けられる導体接続部を有し、
前記補強部材が、前記導体群の幅方向に沿って前記導体群を横断して前記導体群の一部を覆うと共に、前記補強部材の中心が前記絶縁フィルムの端から予め定められた距離をおいた位置に設けられる請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項3】
前記補強部材が、外部のプリント配線板に固定可能に設けられる請求項2に記載のフラットケーブル。
【請求項4】
前記補強部材の前記金属板の一部が、前記絶縁被覆層から外部に露出する金属板露出部を含み、
前記金属板露出部が、前記外部のプリント配線板に固定可能に設けられる請求項3に記載のフラットケーブル。
【請求項5】
前記金属板露出部が、前記外部のプリント配線板が備えるスルーホールに挿入可能に設けられると共に、前記スルーホールに固定可能に設けられる請求項4に記載のフラットケーブル。
【請求項6】
前記補強部材が、前記外部のプリント配線板の表面の非対向面になる前記絶縁フィルムの表面に設けられ、
前記補強部材が設けられている領域と実質的に同一の位置であって、前記外部のプリント配線板の表面の対向面になる前記絶縁フィルムの表面に、前記外部のプリント配線板の表面と前記絶縁フィルムとの間に配置可能に設けられる介在部を更に備える請求項5に記載のフラットケーブル。
【請求項7】
前記介在部が、基材と、前記基材の両面に形成された接着剤とを有し、前記基材の前記両面に形成された前記接着剤によって前記外部のプリント配線板の表面と前記絶縁フィルムに接着される請求項6に記載のフラットケーブル。
【請求項8】
プリント配線板とフラットケーブルとを備え、
前記フラットケーブルが、並列に配置される複数の導体と、前記複数の導体それぞれの長手方向の両端部を外部に露出させ、前記両端部の間の前記複数の導体を被覆する絶縁フィルムと、前記複数の導体の幅方向に沿って前記複数の導体のそれぞれを覆い、前記絶縁フィルムの表面であって、前記絶縁フィルムの端を含む領域の一部に設けられ、金属板と前記金属板を被覆する絶縁被覆層とを有する補強部材とを有し、
前記補強部材の一部が前記プリント配線板に固定されるフラットケーブルとプリント配線板との接続構造。
【請求項9】
前記フラットケーブルが、前記複数の導体が前記複数の導体の幅方向に並列配置されて構成される導体群を有し、
前記両端部のそれぞれが、外部に露出される露出部であり、
前記露出部が、前記露出部の先端を含む領域に、外部の導体に接続可能に設けられる導体接続部を含み、
前記補強部材が、前記導体群の幅方向に沿って前記導体群を横断して前記導体群の一部を覆い、前記絶縁フィルムの端から予め定められた距離をおいた位置に設けられると共に、前記プリント配線板に固定され、
前記プリント配線板が、前記複数の導体のそれぞれに対応し、複数の前記導体接続部のそれぞれが接続される複数の電極部を更に有する請求項8に記載のフラットケーブルとプリント配線板との接続構造。
【請求項10】
前記補強部材の前記金属板の一部が、前記絶縁被覆層から外部に露出する金属板露出部を含み、
前記金属板露出部が、前記プリント配線板に固定される請求項9に記載のフラットケーブルとプリント配線板との接続構造。
【請求項11】
前記金属板露出部が、前記プリント配線板が有するスルーホールに挿入され、前記スルーホールに固定される請求項10に記載のフラットケーブルとプリント配線板との接続構造。
【請求項12】
前記補強部材が、前記プリント配線板の表面の非対向面になる前記絶縁フィルムの表面に設けられ、
前記補強部材が設けられている領域と実質的に同一の位置であって、前記プリント配線板の表面の対向面になる前記絶縁フィルムの表面に、前記プリント配線板の表面と前記絶縁フィルムとの間に配置される介在部を更に含む請求項10に記載のフラットケーブルとプリント配線板との接続構造。
【請求項13】
前記介在部が、基材と、前記基材の両面に形成された接着剤とを有し、前記基材の前記両面に形成された前記接着剤によって前記プリント配線板の表面と前記絶縁フィルムに接着される請求項12に記載のフラットケーブルとプリント配線板との接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−146573(P2012−146573A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5105(P2011−5105)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】