説明

フリーピストンエンジンの制御装置

【課題】簡単な制御によって圧縮比を所望の値に設定できるようにする。
【解決手段】フリーピストンエンジン11が、シリンダ31,32と、シリンダ31,32内に往復動可能に嵌合されると共にシリンダ31,32内の燃焼圧力を受けるピストン41,42とを有する。発電機12が、ピストン41、42の機械的変位に応じて変位される永久磁石4と、永久磁石45の周囲に配設された発電用コイル46とを有する。ピストン速度センサS5によって検出手段されるピストン41,42の速度VPが所定速度VC以下になったときに、発電機12の発電が停止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーピストンエンジンの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、燃焼ガスの有する熱エネルギを高効率に取り出すという観点から、フリーピストンエンジンが注目されている。特許文献1には、フリーピストンエンジンのピストンに設けた永久磁石が、リニア発電機の磁界内を往復動されることにより発電を行うものが開示されている。また、特許文献2には、熱効率向上の観点から、シリンダ内の容積変化をみながら等圧膨張となるように発電機の磁界制御を行うことが開示されている。
【特許文献1】特開2005−155345号公報
【特許文献2】特開2003−343202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、フリーピストンエンジンにおいては、いかに圧縮比を所定のものとして確保するかが重要となる。すなわち、フリーピストンエンジンにおいては、そのストローク端を機械的に規制するクランク軸やコンロッドのような部材が存在しないため、圧縮比が一律に決定され難いものとなり、例えば発電負荷の相違や燃焼圧力の相違等によって圧縮比がかなり変動されることになる。この一方、熱効率向上や運転環境の相違等の種々の観点から、圧縮比をある一定値として設定したりあるいは可変制御することが要求されることもある。
【0004】
フリーピストンエンジンにおいて、圧縮比を所望の大きさとするのに、前述の特許文献2に記載のように、発電機の磁界制御を利用すること、つまり発電負荷を微妙に変更制御することが考えられる。しかしながら、この場合は、相当に複雑な磁界制御が要求されることになり、しかもピストン速度が大きくなると磁界制御が十分に追従しきれないことにもなりかねない。とりわけ、フリーピストンエンジンによって発電されたエネルギを、自動車を駆動するためのモータ駆動用として用いた場合は、相当に大きなピストン速度が要求されることになるので、磁界制御によって圧縮比を所望の値に設定することが非常に難しいものとなる。
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、簡単な制御によって圧縮比を所望の値に設定できるようにしたフリーピストンエンジンの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
シリンダと、該シリンダ内に往復動可能に嵌合されると共に該シリンダ内の燃焼圧力を受けるピストンと、を備えたフリーピストンエンジンの制御装置において、
前記ピストンの機械的変位に応じて変位される永久磁石および該永久磁石の周囲に配設された発電用コイルを有する発電機と、
前記ピストンの速度に関連した値を検出するピストン速度検出手段と、
前記ピストン速度検出手段によって検出手段されるピストン速度が所定速度以下になったときに、前記発電機による発電を停止させる発電停止手段と、
を備えているようにしてある。
【0007】
上記解決手法によれば、ピストンが往復動されることにより、ピストンと機械的に連動された永久磁石が変位されて、発電用コイルから発電電力が取り出されることになる。そして、ピストン速度が所定速度以下にまで低下した時点で発電が停止されて、発電停止後のピストンの有する運動エネルギによって圧縮が行われることになる。ピストンの運動エネルギは、ピストン速度をV、ピストン質量をMとすると、「M・V・V・/2」であらわされる。ピストン質量Mは常に一定値であるので、ピストン速度Vに関連した値となる発電停止時のピストン所定速度を変更することによって、圧縮のためのピストンの運動エネルギが変更されることになる。換言すれば、上記所定速度をパラメータとして発電停止の制御を実行することによって、圧縮比を所望の大きさにすることができる。そして、所望の圧縮比を得るには、発電を停止するときのピストン速度をみておけばよいので、制御も非常に簡単となり、しかもピストン速度が大きくても容易に対応できるものである。
【0008】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記発電機によって充電されるバッテリを備え、
前記発電機による発電電圧が前記バッテリの電圧よりも大きくなるように前記所定速度が設定されている、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、発電機による発電を行っているときは、ピストン速度が所定速度よりも大きくなって、発電電圧がバッテリ電圧よりも大きくなる。これにより、別途昇圧器を用いることなく、発電機からの発電電力をバッテリに充電することが可能となる。
【0009】
フリーピストンエンジンの失火に関する値を検出する失火検出手段と、
前記失火検出手段によって失火が検出されたときに、前記所定速度が大きくなるように補正する補正手段と、
をさらに備えているようにしてある(請求項3対応)。この場合、失火が生じたときは、所定速度を大きな値に補正することにより圧縮比が大きくされ、以後の失火を防止することができる。
【0010】
フリーピストンエンジンのノッキングに関する値を検出するノッキング検出手段と、
前記ノッキング検出手段によってノッキングが検出されたときに、前記所定速度が小さくなるように補正する補正手段と、
をさらに備えているようにしてある(請求項4対応)。この場合、ノッキングが生じたときは、所定速度を小さな値に補正することにより圧縮比が小さくされ、以後のノッキングを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な制御によって圧縮比を所望の値に設定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、車両としての自動車を駆動するモータへの給電用としてフリーピストンエンジンを利用した場合の実施形態を示すものである。この図1において、1は駆動用(走行用)のモータで、実施形態ではACモータで構成されている。2R、2Lは左右の駆動輪(前輪または後輪)であり、この駆動輪2R、2Lは、デファレンシャルギア3を介してモータ1によって駆動される。
【0013】
10は、発電ユニットであり、この発電ユニット10は、ピストンやシリンダを含むフリーピストンエンジン11と発電機12とを含めたユニット体として構成されている。フリーピストンエンジン11は、発電機12を駆動するもので、発電機12によって発電された電力(交流)は、整流器20によって直流に変換された後、DC−ACコンバータ21を介してモータ1に供給される一方、余剰電力はバッテリ22に供給される。また、バッテリ22からの電力が、上記DC−ACコンバータ21を介してモータ1に供給されるようにもなっている。制動時の回生エネルギを回収するため、制動時には、モータ1によって発電された電力が、整流器23によって直流に変換された後、DC−DCコンバータ24によって昇圧されてバッテリ22に供給される。
【0014】
自動車の運転状態に応じた電力供給の流れは、例えば次のように行われるが、フリーピストンエンジン10による最大発電量は、モータ1による最大出力を確保できる程度に十分に大きいものとされている。
(1)要求発電量が極めて少ないとき
発進時や極軽負荷時でかつバッテリ22の蓄電量が大きいときである。このときは、発電機12での発電は行われず(フリーピストンエンジン11の停止状態)、バッテリ22からのみモータ1へ電力が供給される。
(2)要求発電量が少ないとき
軽負荷〜中負荷時でかつバッテリ22の蓄電量が多いときである。このときは、発電機12での発電が行われて(フリーピストンエンジン11が作動)、発電機12からもっぱらモータ1へ電力が供給される(若干の余剰電力分を発電して、余剰電力をバッテリ22に蓄電するようにしてもよい)。
(3)要求発電量が中〜大のとき
軽負荷〜高負荷時でかつバッテリ22の蓄電量が少ないときである。このときは、発電機12で走行に必要な電力以上の十分な発電が行われて(フリーピストンエンジン11が作動)、発電機12からモータ1へ電力が供給されると共に、十分な余剰電力がバッテリ22に蓄電される。
(4)回生制動時
モータ1が駆動輪2R、2Lによって駆動される発電機として機能されるときである。このときは、モータ1で発電された電力がバッテリ22に蓄電される。なお、フリーピストンエンジン11は、停止してもよいが、次の発電に備えて、極低速で運転を継続させることもできる。
【0015】
次に、発電ユニット10の一例について、図2を参照しつつ説明する。この図2において、フリーピストンエンジン11は、両端がそれぞれ閉じられた円筒状部材によって構成されたシリンダ部材30を有する。シリンダ部材30は、その一端部側に第1シリンダ31が構成される一方、その他端部側に第2シリンダ32が構成されている。第1シリンダ31内には第1ピストン41が摺動自在に嵌合され、第2シリンダ32内には第2ピストン42が摺動自在に嵌合されている。各ピストン41と42とは、連結ロッド43によって連結されて互いに一体化されている。
【0016】
第1シリンダ31と第1ピストン41とによって第1燃焼室51が画成され、第2シリンダ32と第2ピストン42とによって第2燃焼室52が画成されている。フリーピストンエンジン11は、実施形態では、自己着火式の2サイクルエンジンとされて、圧縮、膨張、排気、掃気のサイクルが繰り返されるようになっている。第1ピストン41と第2ピストン42とは、互いに行程が相違されて、一方のピストンが膨張行程末期にあるとき、他方のピストンが圧縮行程末期となるように設定される。これにより、一対のピストン41、42と連結ロッド43との連結ユニットUTは、互いに一体となって、シリンダ部材30の軸線方向に往復動されることになる。なお、図2は簡略表示のため、吸気ポート、排気ポート、掃気ポート等は図示を略してある。
【0017】
前記連結ロッド43には、質量対となる磁石保持体44が一体形成されている。この磁石保持体44には、連結ロッド43の軸線方向に沿って多数の永久磁石45が固定されている。この永久磁石45に対応して、シリンダ30の外部には、3相交流用となる発電用コイル46が固定配置されている。これにより、発電用コイル46に磁界を与えた状態で、連結ユニットUTが往復動されると、永久磁石45が発電用コイル46の直近を移動して磁界の変化が生じて、発電用コイル46に誘導起電力が発生される(発電電力の発生)。このように、実施形態では、永久磁石45と発電用コイル46とで共同して、リニア式の発電機12が構成されている。
【0018】
図3は、燃料噴射の制御と発電制御とを行うための制御系統をブロック図的に示すものである。この図3において、Uは、マイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラ(制御ユニット)である。このコントローラUには、各種センサS1〜S6からの信号が入力される。そして、コントローラUは、上記各種センサS1〜S6からの入力信号に基づいて、燃料噴射弁51からの燃料噴射制御と,発電機12の発電制御とを行う。
【0019】
上記センサS1は、車速を検出する車速センサである。センサS2は、アクセル開度を検出するアクセル開度センサである。センサS3は、ノッキング(のレベル)を検出するノッキングセンサである。センサS4は、失火を検出する失火センサである。センサS5は、ピストン速度度を検出するピストン速度センサである。センサS6は、ピストン位置を検出するピストン位置センサである。
【0020】
上記ノッキングセンサS3は、ノッキングに関する値を検出する適宜のものを用いることができる。失火センサS4は、例えば燃焼によって発生するイオンの発生態様に応じた信号を出力するセンサ等、失火に関する値を検出する適宜のものを用いることができる。ピストン速度センサS5は、ユニット体UTの速度に関する適宜の値を検出するものとすることができ、例えば、もっとも精度よく検出できるセンサとしてリニアエンコーダを用いることができ、この他、発電電圧の大きさ(永久磁石45の移動速度に応じて変化する磁界の変化速度に相当)や、発電された交流電圧の相の変化をみることによってピストン速度を間接的に検出するものであってもよい。
【0021】
発電機12による発電は、ピストン速度(連結ユニット体UTの速度)が所定速度よりも大きい状態のときにのみ実行され、所定速度以下では発電が停止される。ピストン速度が所定速度以下となったときに発電を停止した場合において、ピストン速度が変化する一例が示され図4に示され、この図4に示すような態様でピストン速度を変化させたときの発電電圧の変化態様が図5に示される。この図5において、BVで示す電圧値がバッテリ22の電圧値(出力電圧値)に相当しており、上記所定速度は、発電機12での発電電圧がBVよりも大きくなるような範囲でもって設定される。
【0022】
上述のように、発電を停止するときの所定速度が、バッテリ電圧よりも大きくなる範囲に設定されることから、発電機12で発電を実行している限り、発電機12での発電電圧はバッテリ電圧よりも大きい状態となる。これにより、別途電圧昇圧器を用いることなく、発電機12での発電電力をバッテリ22への充電用として供給することが可能となる。なお、発電電圧の波形は、ほぼ矩形波状となる。
【0023】
図6は、燃焼室51,52に供給される混合気の空気過剰率λを2の一定値に設定し、発電機負荷G(N/(m/s))を2000の一定値に設定した状態で、発電を停止するときの所定速度VCを変化させたときのピストン移動量(移動位置)とピストン速度と圧縮比との関係を示すものである。この図6において、ピストン移動量は、連結ユニットUTの移動量として示してあり、ピストン速度が0の位置を境にして、上側部分が、一方の燃焼室(例えば燃焼室51)での燃焼圧力を受けて往動する様子を示し、下側部分が他方の燃焼室(例えば燃焼室52)での燃焼圧力を受けて復動するときの様子を示す。また、実線が発電を停止する所定速度VCを8.0m/sに設定したときを示し、破線が所定速度VCを7.0m/sに設定したときを示し、一点鎖線が所定速度VCを6.0m/sに設定したときを示す。
【0024】
図6において、ピストン移動量が、0mmの位置が一方の圧縮ストローク端位置となり、140mmの位置が他方側の圧縮ストローク端位置となる。したがって、ピストン速度が0のときに、ピストン移動量0mm(あるいは140mm)の位置から離れているほど、圧縮比が小さくなる。そして、発電停止となる所定速度VCが大きくなるほど、もっぱら圧縮のために用いられるユニット体UTの運動エネルギが大きくなって圧縮比が大きくなる、ということが理解される。
【0025】
図7は、図6に対応した図であるが、発電停止となる所定速度VCを一定値である7.0m/sに設定した場合に、空気過剰率λと発電機負荷Gとを変化させたときの状態を示してある。すなわち、実線がλ=5、発電機負荷G=2500の場合を示し、一点鎖線がλ=5、発電機負荷G=2000の場合を示し、破線がλ=2、発電機負荷G=2500の場合を示し、二点鎖線がλ=2、発電機負荷G=2000の場合を示してある。この図7から明らかなように、発電停止する所定速度VCが一定値であれば、空気過剰率λの変化や発電負荷Gの変化にかかわらず、圧縮比が一定になることが理解される。
【0026】
次に、ピストン速度度が所定速度VC以下になったときに発電停止(発電カット)を行うための制御例について、燃料噴射の制御と共に、図8、図9のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、以下の説明でQはステップを示す。
【0027】
メインのフローチャートとなる図8において、まず、Q1において、各種センサ等のからの信号が入力された後、Q2において、発電要求量が決定される。この発電要求量は、例えば、車速とアクセル開度とに基づいて決定することができる。この後、Q3において、発電要求量に応じた燃料噴射量が決定された後、Q4において、燃料噴射が実行される(吸気ポート噴射であるので、噴射タイミングの設定の自由度が高いものとなり、かつ燃焼室51,52では均一燃焼とされる)。
【0028】
前記Q4の後、Q5において、ノッキングセンサS3からの出力に基づいて、今回の燃焼がノッキングぎみであるか否かが判別される。このQ5の判別でYESのときは、発電停止するときの所定速度VCが、現在値よりも小さい値に補正される。この補正の度合は、ノッキングのレベルが高いほど大きくされる。
【0029】
前記Q5の判別でNOのときは、Q6において、失火センサS4からの出力に基づいて、今回の燃焼が失火ぎみであるか否かが判別される。このQ6の判別でYESのときは、Q8において、発電停止するときの所定速度VCが、現在値よりも大きい値に補正される。この補正の度合は、失火のレベルが高いほど大きくされる。
【0030】
前記Q6の判別でNOのときは、現在の所定速度VCであってもノッキングや失火が生じていないときであり、このときは、Q9において、現在の所定速度VCがそのまま維持される。前記Q7、Q8あるいはQ9の後は、それぞれ、Q10に移行して、設定された所定速度VCに記憶(更新)される。このQ10での処理は、例えば、基本的に要求圧縮比と発電停止となる所定速度VCとの対応関係を示すマップへの記憶値の更新となり、Q8,やQ9での補正は、このマップ値の補正となる。
【0031】
図9のフローチャートは、図8のフローチャートに対して所定時間毎に割り込み処理されるもので、まずQ21において、各種センサからの信号が読み込まれる。この後、Q22において、要求圧縮比が決定される。すなわち、例えば、現在のフリーピストンエンジン11の運転状態(例えば、燃料噴射量およびピストン速度)に基づいて空気過剰率λを決定して(例えばλ=2〜5の範囲で決定)、この決定された空気過剰率λに基づいて要求圧縮比が決定される(例えばマップによる照合)。
【0032】
前記Q22の後、Q23において、要求圧縮比に基づいて、発電停止するときの所定速度VCが決定される。この所定速度VCの決定は、前述したQ10で説明したマップに照合することによって行われる(Q7,Q8での補正が行われている場合あり)。
【0033】
前記Q23の後、S24において、ピストン速度センサS5で検出された実際のピストン速度VPが、Q23で設定された所定速度VC以下であるか否かが判別される。このQ24のNOのときは、Q25において、発電をそのまま継続して実行させる処理を行った後、Q24に戻る。Q24の判別でYESのときは、Q26において、発電が停止される。
【0034】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。ピストンは、互いに一体化された一対構造の場合に限らず、1つのみであってもよく、あるいは図2に示す構造のものを複数段並置したものであってもよい。例えば、図2に示す構造のものを3段並置して(ピストンつまり燃焼室の数は合計で6個)、1つの燃焼室の排気量を330ccとした場合には、総排気量1980ccのフリーピストンエンジンが得られることになる。ピストンを図2に示すような一対構造として採択しない場合は、例えば、ピストンを圧縮方向に付勢するリターンスプリングを別途設けるようにすればよい(所定速度VCで発電停止された時点でのピストン運動エネルギでもって、リターンスプリングに対して次の圧縮のためのエネルギを蓄積させる)。
【0035】
永久磁石45は、ユニット体UTつまりピストン51,52に対して一体に設けることなく、例えば、ピストン51,52に対して歯車等を介して連動された磁石保持体を設けて、この磁石保持体に永久磁石45を保持させるようにすればよい。特に、歯車を介して永久磁石をピストンと連動させる場合、ピストンの往復動に応じて永久磁石(磁石保持体)が正逆回転されるように構成することもでき、この場合は、発電機12としてはより発電効率の高い回転式のものを用いることができる。フリーピストンエンジンは、自動車用に限らず、定置式の発電用等に用いる等、その仕様範囲は限定されないものである。フリーピストンエンジンは、火花点火式であってもよく、あるいは4サイクル式にする等、適宜の形式を採択することができる。要求圧縮比は、可変とすることなく基本的に一定値のままとしもよく、また一定値とする場合には、大気圧や吸気温度等の運転環境の相違に応じて要求圧縮比を補正することもできる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】フリーピストンエンジンを自動車の走行用モータへの給電用として利用した場合の実施形態を示す全体系統図。
【図2】本発明によるフリーピストンエンジンの一例を示す一部断面平面図。
【図3】本発明の制御系統をブロック図的に示す図。
【図4】ピストン速度が所定速度以下となったときに発電停止する場合に、ピストン速度が変化する様子を示すタイムチャート。
【図5】図4のピストン速度の変化よって生じた発電電圧の変化の様子を示すタイムチャート。
【図6】空気過剰率λと発電機負荷Gとを一定値として、発電停止するときの所定速度VCを変化させたときのピストン移動量と圧縮比とピストン速度とを示す特性図。
【図7】発電停止するときの所定速度VCを一定値として、空気過剰率λと発電機負荷Gとを変化させたときのピストン移動量と圧縮比とピストン速度とを示す特性図。
【図8】本発明の制御例を示すフローチャート。
【図9】本発明の制御例を示すフローチャート。
【0037】
10:発電ユニット
11:フリーピストンエンジン
12:発電機
22:バッテリ
30シリンダ部材
31:第1シリンダ
32:第2シリンダ
41:第1ピストン
42:第2ピストン
43:連結ロッド
44:磁石保持体
45:永久磁石
46:発電用コイル
51:第1燃焼室
52:第2燃焼室
U:コントローラ
S3:ノッキングセンサ
S4:失火センサ
S5:ピストン速度センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、該シリンダ内に往復動可能に嵌合されると共に該シリンダ内の燃焼圧力を受けるピストンと、を備えたフリーピストンエンジンの制御装置において、
前記ピストンの機械的変位に応じて変位される永久磁石および該永久磁石の周囲に配設された発電用コイルを有する発電機と、
前記ピストンの速度に関連した値を検出するピストン速度検出手段と、
前記ピストン速度検出手段によって検出手段されるピストン速度が所定速度以下になったときに、前記発電機による発電を停止させる発電停止手段と、
を備えていることを特徴とするフリーピストンエンジンの制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記発電機によって充電されるバッテリを備え、
前記発電機による発電電圧が前記バッテリの電圧よりも大きくなるように前記所定速度が設定されている、
ことを特徴とするフリーピストンエンジンの制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
フリーピストンエンジンの失火に関する値を検出する失火検出手段と、
前記失火検出手段によって失火が検出されたときに、前記所定速度が大きくなるように補正する補正手段と、
をさらに備えていることを特徴とするフリーピストンエンジンの制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
フリーピストンエンジンのノッキングに関する値を検出するノッキング検出手段と、
前記ノッキング検出手段によってノッキングが検出されたときに、前記所定速度が小さくなるように補正する補正手段と、
をさらに備えていることを特徴とするフリーピストンエンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−223628(P2008−223628A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63759(P2007−63759)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】