説明

フレキシブルプリント配線基板およびフレキシブルフラットケーブル

【課題】十分な可とう性を有すると共に耐イオンマイグレーション性並びに電磁波シールド性に優れ、さらに耐食性や抗菌性にも優れた金属メッシュ状の電磁波遮蔽層付FPCおよびFFCを提供することにある。
【解決手段】FPC或いはFFCの少なくとも片側面に、Ti被覆Cu線を用いて製織した電磁波遮蔽金属メッシュを配置したFPC或いはFFCとすることによって、解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可とう性、耐イオンマイグレーション性並びに電磁波シールド特性を有すると共に、耐食性を向上させたフレキシブルプリント配線基板(以下、FPC)およびフレキシブルフラットケーブル(以下、FFC)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器等の小型化や軽量化に伴い、搭載される配線材料も小型化が進んでいる。このため限られたスペースに収まると共に可とう性が要求される。このため、例えば銅箔のエッチングにより形成された配線回路を絶縁性や耐熱性に優れたポリイミドフィルム(以下、PIフィルム)で挟んだ構造のFPCや、平角状の導体を複数本並べこれをテープ状の絶縁材料によって両側からラミネートしたFFCが多用されている。さらに、以上のFPCやFFCを用いた携帯電話等では、これ等の電子機器から発生する電磁波を遮蔽することが重要となっている。このため、前記のFPCやFFCには、可とう性を損なうことなく電磁波シールド特性が要求される。
このような可とう性と電磁波シールド特性を有するFPCやFFCとして、印刷技術を用いて銅(以下、Cu)、銀(以下、Ag)やカーボンブラック等の導電性ペーストをべた塗り印刷した後、熱硬化処理を施して硬化して電磁波遮蔽層を形成したものがあるが、このような電磁波遮蔽層を形成したものは、外部からの衝撃によって導電性ペーストが傷付いたり欠損するのを防止するためにPIフィルムやポリエステル樹脂等のカバーレイを設ける必要がある。このことは、製造工程が煩雑になると共に製造コストが上昇するので余り好ましくない。また、電磁波シールド材として、合成繊維等でできた織布の表面に電解めっきや無電解めっきなどの方法により導電性の金属皮膜を形成した電磁波シールド材を使用するものもあるが、導電性の金属皮膜を形成するために化学薬品を大量に使用する必要があるため、これ等の廃液の処理を行う必要があり環境汚染の問題が懸念される。また、導電性金属としてCuやAgめっきを用いた場合、Ag皮膜を形成したものは風があたる部分で使用するとAgが空気中の硫化水素(以下、HS)と反応して硫化銀(以下、AgS)となり、導電性が低下し電磁シールド効果が低下する等の問題や、Cuの場合には変色して耐食性の点から問題がある。さらに、金属蒸着によって導電性の金属皮膜を形成する場合は、皮膜の密度が低く寿命が短いことやコストが高くなると言った問題があると共に、CuやAgの場合には変色等の耐食性の問題がある。
さらにまた、特許文献1に記載されるように、FPCの少なくとも片面側に、導電性の金属線材を編み込んだ編地や金属箔のプレス加工によるメッシュ状の多孔性金属箔からなる電磁波シールド層を設けるものであるが、Cu線やAg線を使用して編み込んだ編地の場合には、前述したように海や腐食環境下で使用するとAgが空気中の硫化水素(以下、HS)と反応して硫化銀(以下、AgS)となり導電性が低下して電磁波シールド特性が低下し、またCu線を用いた場合には変色を生じる等の耐食性に問題があった。さらには、編地構造のものは開口率を考慮しないと、イオンマイグレーション性に問題が生じることがある。
【特許文献1】特開2005−251958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
よって本発明が解決しようとする課題は、十分な可とう性を有すると共に耐イオンマイグレーション性、電磁波シールド特性に優れ、さらに耐食性や抗菌性にも優れた金属メッシュ状の電磁波遮蔽層付FPCおよびFFCを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記解決しようとする課題は、請求項1に記載するように、FPCの少なくとも片側面に、チタン被覆銅線(以下、Ti被覆Cu線)を用いて製織した電磁波遮蔽金属メッシュを配置したFPCとすることによって、解決される。また、請求項2に記載するように、FFCの少なくとも片側面に、Ti被覆Cu線を用いて製織した電磁波遮蔽金属メッシュを配置したFFCとすることによって、解決される。
【0005】
さらに、請求項3に記載するように、請求項1または2において使用される電磁波遮蔽金属メッシュは、直径が50〜100μmのTi被覆Cu線を用い、開口率が50〜90%となるように製織した電磁波遮蔽金属メッシュを用いることによって、解決される。
【発明の効果】
【0006】
以上のような本発明のFPCまたはFFCは、電磁波遮蔽層としてTi被覆Cu線を製織して製造した電磁波遮蔽金属メッシュを少なくとも片側面に配置したものであるから、十分な可とう性を有すると共に電磁波シールド特性、耐イオンマイグレーション性を有し、また、Tiを被覆したCu線を用いるので耐食性や抗菌性に優れたFPCおよびFFCが得られる。
【0007】
また、直径が50〜100μmであるTi被覆Cu線を用い、開口率を50〜90%とした電磁波遮蔽金属メッシュを電磁波遮蔽層としたFPCやFFCであるから、前述した効果に併せて、特に耐イオンマイグレーション性をより向上させることができる。すなわち、直径が50〜100μmのTi被覆Cu線を用いて、開口率(単位面積におけるTi被覆Cu線の存在しない部分の面積比率)を50〜90%としたので、FPCやFFCに配置した時に良好な気密性が得られ耐イオンマイグレーション性をより向上させることができる。また、電磁波遮蔽金属メッシュの製造が容易であると共に可とう性も十分に有する。さらに、Tiの被覆層を有するCu線を用いたので、電磁波シールド特性に優れると共に耐食性や抗菌性にも優れている。そして、このような電磁波遮蔽金属メッシュは、FPCやFFCに比較的簡単に取付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を説明する。本発明は、FPCの少なくとも片側面にTi被覆Cu線を用いて製織した電磁波遮蔽金属メッシュをに配置したものであるから、十分な可とう性を有すると共に電磁波シールド性、耐イオンマイグレーション性を有し、また耐食性に優れた電磁遮蔽層付のFPCが得られる。以下に詳細に説明する。
【0009】
図1に、FPCの片側面に電磁波遮蔽金属メッシュを配置した場合の例を示した。図1(a)は概略平面図であり、図1(b)は、(a)のA−A´で切断した概略断面図である。符号1が電磁波遮蔽金属メッシュ付FPCであり、2がFPCの部分、3が電磁波遮蔽金属メッシュの部分である。FPC2は、通常厚さが25μm程度の接着剤付PIフィルムからなるベースフィルム(以下、CCL)4に、18μm程度の銅箔が貼り合わされた銅貼り積層板を、サブトラクティブ法やアディティブ法等の化学的処理によって必要な銅配線回路5が形成される。また前記銅配線回路5上には、回路の保護をかねて接着剤付のPIフィルム(以下、CL)6の接着剤側を重ねてラミネートすることによって得られる。このように構成されたFPC2は十分な可とう性を有するので、種々の電子機器用として使用されている。しかしながら、最近の電子機器においてはノイズの除去のために高い電磁波のシールド機能が要求されるようになり、FPCには種々の電磁波遮蔽材が組み込まれるようになってきた。また、電磁波遮蔽材が組み込まれたFPCに対しても、十分な可とう性を有すると共に、優れた電磁波シールド特性、耐イオンマイグレーション性が要求される。しかしながら、従来の電磁波遮蔽層を設けたFPCは、海や腐食環境下で使用するとAgが空気中の硫化水素(以下、HS)と反応して硫化銀(以下、AgS)となり導電性が低下して電磁波シールド特性が低下し、またCu線を用いた場合には変色を生じる等の耐食性に問題があった。
【0010】
このため本発明では、電磁波遮蔽層として、Ti被覆Cu線を用いて製織した電磁波遮蔽金属メッシュ(以下、金属メッシュ)3をFPC2のCCL4の底面に配置した。もちろん、FPC2のCL6側に配置したり、CCL4およびCL6の両方に配置しても良いものである。このように、Ti被覆Cu線を縦線と横線として製織した金属メッシュ3は、比較的加工が簡単であると供に可とう性にも優れたものである。さらに、金属メッシュ3の開口率(単位面積におけるTi被覆Cu線の存在しない部分の面積比率)を自由に選択できるので、製織のピッチが確保でき気密性が良好なものとなるので、耐イオンマイグレーション性にも優れている。さらに、Ti被覆Cu線を使用するので、電磁波シールド特性も十分であると共にTi被覆層によって耐食性にも優れたものであることが確認された。そして、このような金属メッシュ3をFPC2に配置する方法としては、例えば金属メッシュ3に、ロール上でエポキシ樹脂などの接着剤を塗布し、CCL4とラミネートしてFPC2に貼り付けることによって配置できる。このようにして得られた電磁波遮蔽金属メッシュ付FPCは、十分な可とう性を有すると共に電磁波シールド特性、耐イオンマイグレーション性を有し、また、Tiを被覆したCu線を用いたことにより耐食性や抗菌性に優れたものであることが確認できた。
【0011】
つぎに、図2によってFFCの片側面に金属メッシュを配置した場合の例を示す。図2(a)は概略平面図であり、図2(b)は、(b)のA−A´で切断した場合の概略断面図である。符号1´が電磁波遮蔽金属メッシュ付FFC、符号2´がFFC、3が金属メッシュである。まずFFCについて簡単に説明すると、FFC2´は、錫めっき平角銅線(例えば、幅300μm、厚さ35μm)5´を並列に多数本配列し、その上下面にポリエステルテープ(例えば、厚さが25μm)等の絶縁テープ4´、5´を接着剤層を介して貼り合せたものである。このように構成されたFFC2´は可とう性に優れているので、種々の電子機器の接続用ケーブルとして使用されている。しかしながら、最近の電子機器においてはノイズの除去のために高い電磁波シールド機能が要求されるようなり、FFC2´にも種々の電磁波遮蔽材が組み込まれる。また、電磁波遮蔽材が組み込まれたFFC2´に対しても、十分な可とう性を有すると共に、優れた電磁波シールド特性、耐イオンマイグレーション性が要求される。しかしながら、従来の電磁波遮蔽層を設けたFFCは、海や腐食環境下で使用するとAgが空気中の硫化水素(以下、HS)と反応して硫化銀(以下、AgS)となり導電性が低下して電磁波シールド特性が低下し、またCu線を用いた場合には変色を生じる等の耐食性に問題があった。
【0012】
このため、FPCに用いたものと同様のTi被覆Cu線を用いて製織した金属メッシュ3´をFFC2´の絶縁テープ4´の底面に配置してその性能を確認した。もちろん、FFC2´の絶縁テープ5´側に配置したり、その両方に配置しても良いものである。Ti被覆Cu線を縦線と横線として製織した金属メッシュ3´は、前述したように比較的加工が簡単であると供に可とう性にも優れたものである。さらに、金属メッシュ3の開口率(単位面積におけるTi被覆Cu線の存在しない部分の面積比率)を自由に選択できるので、製織のピッチが確保でき気密性が良好なものとなるので、耐イオンマイグレーション性にも優れている。さらに、Ti被覆Cu線を使用するので、電磁波シールド特性も十分であると共にTi被覆層によって耐食性にも優れたものであることが確認された。また、金属メッシュ3´をFFC2´に配置する方法としては、FPC2の場合と同様に接着剤を用いて貼り付けることによって配置できる。このようにして得られた電磁波遮蔽金属メッシュ付FFCは、十分な可とう性を有すると共に電磁波シールド特性、耐イオンマイグレーション性を有し、また、Tiを被覆したCu線を用いたことにより耐食性や抗菌性に優れたものであることが判った。
【0013】
さらに、FPCやFFCに使用する場合に特に好ましい電磁波遮蔽金属メッシュを、図3に示す。もちろんこれに限定されるものではない。図3(a)が概略平面図、(b)はその概略断面図、(c)がTi被覆Cu線の断面図である。符号3、3´が金属メッシュである。8はTi被覆Cu線で、Cu線9の上にTi被覆層10が設けられたものである。このようなTi被覆Cu線8を用いることにより、中心のCu線9によって十分な導電性が確保され電磁波遮蔽効果を有し、その上に被覆したTi被覆層10によって耐食性や抗菌性が同時に確保される。すなわち、Ti被覆層10によりAgを使用した場合のようにHSと反応してAgSとなり導電性が低下し電磁波シールド効果が低下することや、Cu線のみを用いた場合のような変色する等の問題がない。具体的に述べると、海のような腐食環境下で使用しても前記の問題を生じることがなくなる。さらには、Ti被覆層10により抗菌性を有する金属メッシュ3、4´が得られる。なお、Ti被覆Cu線8は、電磁波遮蔽効果を十分に確保する必要からTi被覆層10を余り厚くすることは、導電性の点から好ましくない。断面被覆率で30%以下とするのが好ましい。このような被覆率で、耐食性は十分に確保できることになる。
そして、上記のTi被覆Cu線8は、例えば、Ti被覆材10を押出成型機等によってパイプ状に形成すると同時に、Cu材を押出成型機等によって線状に形成しながら走行させ、前記Tiパイプ中にCu線9を挿入し、これを絞り加工によって両者を密着させて、直径が50〜100μmのTi被覆Cu線8に加工することによって得ることができる。
【0014】
また、金属メッシュ3、3´の電磁波シールド特性は、用いるTi被覆Cu線8の直径とピッチによって決まることから、これ等の目安として開口率を用いて評価した。これは、開口率が単位面積におけるTi被覆Cu線8の存在しない部分の面積比率に相当するからである。また、縦線および横線の密度とそれぞれの線の直径から計算できる。このようなことから、開口率が50〜90%の金属メッシュ3、3´に製織することが好ましいことが判った。すなわち、開口率が50%未満であると気密性が悪くなって、イオンマイグレーション(配線回路間に電圧が印加されたときに陽極の配線側から金属イオンが溶出し、回路間に析出して絶縁特性を低下させる現象で、最悪の場合には回路間が短絡することがある。)が発生し易くなり、また90%を超えるものは、気密性の点からは問題がないが電磁波の遮蔽効果が十分でなくなる。
【0015】
以上のような開口率を有する金属メッシュ3、3´を効率よく製造するためには、直径が50〜100μmのTi被覆Cu線8を縦線並びに横線として製織(織物)するのが良いことが判った。これは、直径が50μm未満のTi被覆Cu線8を用いると、製織が困難となるためである。すなわち、製織の際にTi被覆Cu線8がキンクし易くダメージを受けるためである。また、100μmを超えるTi被覆Cu線8を用いると、織物の剛性が高くなりすぎ所望の可とう性が得られないためである。なお、金属メッシュ3、3´の製織方法は、図3(a)や(b)に示した平織りだけでなく、その他の織り方や編物としても良い。また、金属メッシュ3、3´の製織は、直径が同じ50〜100μmのTi被覆Cu線8を縦線と横線として用いて開口率を変えるのが効率的であるが、直径の異なるTi被覆Cu線8を縦線と横線として用いることによっても製造することができる。このようにして得られた金属メッシュ3、3´は、FPC2やFFC2´に接着剤等により配置しても可とう性を低下させることがなく、電磁波シールド特性、耐イオンマイグレーション性、さらに耐食性や抗菌性にも優れたものとなる。
【実施例】
【0016】
以下に実施例および比較例を記載して、本発明の効果を述べる。
常法によって、直径が50〜300μmの各種Ti被覆Cu線を製造した。得られた直径が50〜300μmのTi被覆Cu線を縦糸および横糸として、表1に示した構造のメッシュを平織りすることによって電磁波遮蔽金属メッシュを作製した。ここでは、縦糸と横糸に同じ直径のTi被覆Cu線を使用し、織機の筬の目によって縦糸の密度を調整することによって前記金属メッシュの開口率を種々変化させた。また、直径が25μmのCu線を縦糸および横糸として金属メッシュに平織りした。
このようにして得られた金属メッシュを、FPC並びにFFCのベース樹脂側にエポキシ樹脂接着剤を用いて接着させた。これ等について、耐食性、可とう性、耐イオンマイグレーション性、電磁波シールド特性を調べた。なお開口率(単位面積におけるTi被覆Cu線の存在しない部分の面積比率)は、Ti被覆Cu線の直径とピッチを求めることによって算出した。
【0017】
耐食性については、温度35℃、24時間の塩水噴霧試験(JIS Z 2371)を行い、携帯電話機メーカーが要求する試験後表面に変色または溶解が見られないものを合格として〇印で、この要求を満たさないものを不合格として×印で記載した。
可とう性は、MIT耐屈曲試験によって評価した。すなわち、幅10mm、長さ185mmの前記FPCおよびFFCを試料として、屈曲角度:270°、屈曲回数:30000回、屈曲速度:175回/分、張力:500gfおよび曲率半径:1mmで屈曲させた後、電磁波遮蔽金属メッシュに折れや破損がないものを合格として〇印で、折れや破損が見られる場合には不合格として×印で記載した。
耐イオンマイグレーション性は、恒温恒湿槽を用い、85℃、85%RHの雰囲気中に、前記試料を保持し、低電圧電源を用いてFPCの隣接する銅配線間、またはFFCの錫めっき平角銅線間との電位差を50Vで一定になるように電圧を240時間負荷した後、FPCの隣接する銅配線間またはFFCの錫めっき平角銅線間に生成した析出物を、透過光によって観察ができる顕微鏡を用いて、イオンマイグレーションによるデンドライドの有無を観察した。デンドライドの見られなかった場合を合格として〇印で、デンドライドが生成していた場合を不合格として×印で記載した。
電磁波シールド特性は、KEC法(社団法人関西電子工業振興センターの標準測定方法であるMIL−STD283)により評価した。すなわち、近距離に発信アンテナと受信アンテナが設置されたシールドボックス内の所定位置にサンプルのメッシュを保持し、周波数を100KHzから1GHzの範囲で変化させて発信し、そのときの角周波数における減衰状態をスペクトラム・アナライザー(アドバンテスト社製のR3361A)で測定したものである。各周波数における減衰量が30db以上のものを良好と判断した。そして、これ等の試験項目の全てに合格する場合を、総合評価の欄に〇印で記載した。一項目でも不合格がある場合には×印とした。FPCの場合の結果を表1に、FFCの場合の結果を表2に示した。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
表1に示した実施例1〜6から明らかなように、直径が50〜100μmのTi被覆Cu線を縦線並びに横線とし、開口率が50〜90%となるようにメッシュ状に製織した金属メッシュを接着剤によって接着した電磁波遮蔽金属メッシュ付FPC(符号1)は、耐食性、耐イオンマイグレーション性、可とう性、電磁波シールド特性の全てを満足するものであることが判る。
すなわち、実施例1および2に記載するように、直径が50μmのTi被覆Cu線を用いて、開口率が50および90%となるように製織した電磁波遮蔽金属メッシュ付FPCは、耐食性、耐イオンマイグレーション性および可とう性を満足し、電磁波シールド特性も優れたものであることが判る。また、実施例3および4に記載したように、直径が80μmのTi被覆Cu線を用いて、開口率が80%および60%となるように製織した電磁波遮蔽金属メッシュ付FPCも同様に優れたものであった。さらに、実施例5および6に記載したように、直径が100μmのTi被覆Cu線を用いて、開口率が50および90%となるように製織した電磁波遮蔽金属メッシュ付FPCも同様に優れていることが判る。
【0021】
これに対して、比較例1に示すように、線材として直径が80μmのCu線を用いて製織した電磁波遮蔽金属メッシュ付FPCは、塩水噴霧試験(JIS Z 2371)により表面の変色が激しく耐食性および耐イオンマイグレーション性が不合格であった。また比較例2のように、Ti被覆Cu線を用いた場合であってもその直径が25μmの場合には、目的とする金属メッシュに製織することができなかった。このため、開口率の測定、耐食性、耐イオンマイグレーション性、可とう性、電磁波シールド特性の評価は行えなかった。
また、比較例3のように、Ti被覆Cu線の外径が70μmと本発明の範囲のものを用いた場合であっても、開口率が30%と小さい電磁波遮蔽金属メッシュ付FPCとすると、耐イオンマイグレーション性が不合格となった。さらに、比較例4のように、Ti被覆Cu線の外径が90μmと本発明の範囲のものであっても、開口率が95%のように高い電磁波遮蔽金属メッシュ付FPCとすると、電磁波シールド特性が20dbと不合格となった。
さらにまた、比較例5に示すように、Ti被覆Cu線の外径が300μmと太いものを用いて金属メッシュを製織した場合は、開口率が70%と本発明の範囲内であっても、可とう性が不合格となった。また、比較例6に示すように、Ti被覆Cu線の外径が300μmと太いものを用いて、開口率が95%の金属メッシュを用いたFPCは、可とう性が不合格となると共に耐イオンマイグレーション性も不合格であった。
【0022】
また、表2に示した実施例7〜12から明らかなように、直径が50〜100μmのTi被覆Cu線を縦線並びに横線とし、開口率が50〜90%となるようにメッシュ状に製織した金属メッシュを接着剤によって接着した電磁波遮蔽金属メッシュ付FFC(符号1´)も、耐食性、耐イオンマイグレーション性、可とう性、電磁波シールド特性の全てを満足することが判る。
すなわち、実施例7および8に記載するように、直径が50μmのTi被覆Cu線を用いて、開口率が50および90%となるように製織した電磁波遮蔽金属メッシュ付FPCは、耐食性、耐イオンマイグレーション性および可とう性を満足し、電磁波シールド特性も優れたものであることが判る。また、実施例9および10に記載したように、直径が80μmのTi被覆Cu線を用いて、開口率が80%および60%となるように製織した電磁波遮蔽金属メッシュ付FPCも同様に優れたものであった。さらに、実施例11および12に記載したように、直径が100μmのTi被覆Cu線を用いて、開口率が50および90%となるように製織した電磁波遮蔽金属メッシュ付FPCも同様に優れていることが判る。
【0023】
これに対して、比較例7に示すように、Ti被覆Cu線の外径が70μmと本発明の範囲のものを用いた場合であっても、開口率が30%と小さい電磁波遮蔽金属メッシュ付FPCとすると、耐イオンマイグレーション性が不合格となった。また、比較例8のように、Ti被覆Cu線の外径が90μmと本発明の範囲のものであっても、開口率が95%のように高い電磁波遮蔽金属メッシュ付FPCとすると、電磁波シールド特性が20dbと不合格となった。さらにまた、比較例9に示すように、Ti被覆Cu線の外径が300μmと太いものを用いて金属メッシュを製織した場合は、開口率が70%と本発明の範囲内であっても、可とう性が不合格となった。また、比較例10に示すように、Ti被覆Cu線の外径が300μmと太いものを用いて、開口率が95%の金属メッシュを用いたFPCは、可とう性が不合格となると共に耐イオンマイグレーション性も不合格であった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、電子機器類に使用されるFPCやFFCとして、可とう性、耐イオンマイグレーション性、電磁波シールド特性に優れていると共に、耐食性にも優れた電磁波遮蔽金属メッシュ付のFPC、FFCとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は本発明の電磁波遮蔽メッシュ付FPCの概略平面図、(b)は(a)をA−A´方向で切断した概略断面図である。
【図2】(a)は本発明の電磁波遮蔽メッシュ付FFCの概略平面図、(b)は(a)をA−A´方向で切断した概略断面図である。
【図3】(a)は本発明の電磁波遮蔽メッシュの一部を示す概略平面図、(b)は(a)の断面を示す概略断面図、(c)は、電磁波遮蔽メッシュに使用するTi被覆Cu線の断面を示す概略図である。
【符号の説明】
【0026】
1 電磁波遮蔽金属メッシュ付FPC
1´ 電磁波遮蔽金属メッシュ付FFC
2、FPC
2´ FFC
3 、3´ 電磁波遮蔽金属メッシュ
4 CCL
4´ ベース樹脂テープ
5 銅配線回路
5´ 平角錫めっき銅導体
6 CL
6´ 接着剤付樹脂テープ
7、7´ 接着剤層
8 Ti被覆Cu線
9 Cu線
10 Ti被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルプリント配線基板の少なくとも片側面に、チタン被覆銅線を用いて製織した電磁波遮蔽金属メッシュを配置したことを特徴とするフレキシブルプリント配線基板。
【請求項2】
フレキシブルフラットケーブルの少なくとも片側面に、チタン被覆銅線を用いて製織した電磁波遮蔽金属メッシュを配置したことを特徴とするフレキシブルフラットケーブル。
【請求項3】
請求項1または2において使用される電磁波遮蔽金属メッシュは、直径が50〜100μmのチタン被覆銅線を用い、開口率が50〜90%となるように製織したものであることを特徴とする電磁波遮蔽金属メッシュ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−129847(P2010−129847A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304237(P2008−304237)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】