説明

フレキシブルプリント配線板用接着剤組成物及びこれを用いたフレキシブルプリント配線板

【課題】常温での保存性能が高く、ばらつきのない安定した成形性を有し、且つ耐折れ強さ及び難燃性に優れるフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)少なくとも一種のポリエポキシド化合物、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)テトラキスフェノール系化合物と、エポキシ樹脂用硬化促進化合物との包接体であるエポキシ樹脂用硬化促進剤、(D)合成ゴム及び(E)金属水和物を含むフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温での保存性能が高く、ばらつきのない安定した成形性を有し、且つ耐折れ強さ及び難燃性に優れるフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物、この組成物を用いて得られたフレキシブル銅張積層板、カバーレイ及び接着剤フィルム、並びにこれらを用いたフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型・軽量化、高機能化に伴い、それらの機器に使用されるプリント配線板やパッケージ・モジュール基板においてファインピッチパターン化、小型化が急速に進んでいる。さらに、近年、環境問題、特に人体に対する安全性についての世界的な関心の高まりに伴って、電気・電子機器についても、ハンダ処理での鉛無使用、非ハロゲン系難燃剤の使用など、より少ない有害性、より高い安全性という要求が増大している。従って、フレキシブル配線板に用いられる絶縁材料としては、高耐熱性を有し、かつ高密度実装が可能であることが要求されている。このため、ハンダ耐熱性や銅箔引き剥がし強さに対する要求レベルがより高いものとなっている。
また、汎用のフレキシブルプリント配線板(以下、FPCということもある。)用材料は、熱硬化性樹脂組成物を主成分としているため、ポットライフの問題がある。このため、上記FPC用材料は低温で保管しなければならず、使用の際に常温の環境に移したときに結露によって性能が低下するという懸念もあり、作業上の取り扱いには特に注意を要した。また、上記高密度実装に伴い、回路のファインパターン化に起因する成形の難易度は、益々高くなってきており、保管環境がFPC用材料へ及ぼす影響が大いに注目されている。
【0003】
FPC用材料の保管に伴う問題を解消するために、FPC用接着剤組成物においては、配合する硬化剤又は硬化促進剤を潜在性のものにすること、硬化剤又は硬化促進剤を被覆することが検討されている(例えば、特許文献1及び2参照)が、FPC用接着剤組成物の耐熱性、耐湿性及び耐薬品性が低下するという問題があった。潜在性硬化剤としては、アミンアダクト型触媒やマイクロカプセル型触媒があるが、これらはFPC用接着剤組成物における上記低下を抑えるには不十分であった。
このため、FPC用材料の低温保管においては、結露による性能低下対策、保管環境温度の管理、常温放置時間の設定、使用期限の設定などを細かく規定することを要し、このため取り扱いが面倒であるという問題があった。このような保管場所、保管に必要なエネルギー、作業時間などを改善することは、省エネルギーや省スペースにつながるものであり、製品価格や環境保全の点で、エンドユーザーや地球環境に貢献することとなる。
【0004】
【特許文献1】特開平8−176280号公報
【特許文献2】特開平11−71449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、常温での保存性能が高く、ばらつきのない安定した成形性を有し、且つ耐折れ強さ及び難燃性に優れるフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物を提供することを目的とするものである。また、本発明は、この組成物を用いて得られたフレキシブル銅張積層板、カバーレイ及び接着剤フィルム、並びにこれらを用いたフレキシブルプリント配線板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ポリエポキシド化合物、エポキシ樹脂用硬化剤、特定のエポキシ樹脂用硬化促進剤、合成ゴム及び金属水和物を含む接着剤組成物により、上記目的が達成されることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、以下のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物、フレキシブル銅張積層板、カバーレイ、フレキシブルプリント配線板及びプリント配線板を提供するものである。
1. (A)少なくとも一種のポリエポキシド化合物、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)一般式(1)で表されるテトラキスフェノール系化合物と、エポキシ樹脂用硬化促進化合物との包接体であるエポキシ樹脂用硬化促進剤、(D)合成ゴム及び(E)金属水和物を含むことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Xは(CH2pを示し、pは0〜3の整数である。R1〜R8は、それぞれ独立に水素原子、低級アルキル基、置換又は非置換のフェニル基、ハロゲン原子又は低級アルコキシ基を示す。)
2. (C)成分におけるテトラキスフェノール系化合物が、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン及び1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンから選ばれる少なくとも一種であり、エポキシ樹脂用硬化促進化合物が、イミダゾール類及び/又はアミン類である上記1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物。
3. 上記1又は2に記載の接着剤組成物を用いて、ポリイミドフィルムの少なくとも片面に銅箔を張り合わせてなるフレキシブル銅張積層板。
4. 上記1又は2に記載の接着剤組成物を用いて、ポリイミドフィルムの表面に接着剤層を形成してなるカバーレイ。
5. 上記1又は2に記載の接着剤組成物をフィルム状に成形してなる接着剤フィルム。
6. 上記3に記載のフレキシブル銅張積層板に、所定パターンの回路を形成してなるフレキシブルプリント配線板。
7. 上記6に記載のフレキシブルプリント配線板と、上記4に記載のカバーレイとを貼り合わせてなるフレキシブルプリント配線板。
8. 上記6又は7に記載のフレキシブルプリント配線板と補強板とを、上記5に記載の接着剤フィルムを介して貼り合わせてなるプリント配線板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、常温での保存性能が高く、ばらつきのない安定した成形性を有し、且つ耐折れ強さ及び難燃性に優れるフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物を提供することができる。また、この接着剤組成物を用いて得られたフレキシブル銅張積層板、カバーレイ及び接着剤フィルム、並びにこれらを用いたフレキシブルプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いる(A)成分のポリエポキシド化合物としては、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル系変性エポキシ樹脂及びその臭化物などが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのポリエポキシド化合物は、シロキサン又はリン化合物で変性することによって、ハロゲン化合物を配合することなく、本発明の接着剤組成物に難燃性を付与することができる。
【0011】
本発明で用いる(B)成分のエポキシ樹脂用硬化剤としては、一般的なエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができ、例えば、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、ノボラック型フェノール樹脂、アミノ変性ノボラック型フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミンイミド、ポリアミン塩、モレキュラーシーブ、アミン、酸無水物、ポリアミド、イミダゾール等が挙げられる。これらの硬化剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。このエポキシ用硬化剤の使用量は、硬化性及び硬化樹脂物性のバランスなどの点から、上記(A)成分のポリエポキシド化合物に対する当量比で、通常0.2〜2.0当量比程度、好ましくは0.3〜1.2当量比の範囲で選定される。
【0012】
本発明において、(C)成分のエポキシ樹脂用硬化促進剤としては、下記一般式(1)で表されるテトラキスフェノール系化合物と、エポキシ樹脂用硬化促進化合物との包接体を用いる。ここで、エポキシ樹脂用硬化促進化合物は、エポキシ樹脂用硬化剤及び硬化促進剤を包含する。
【0013】
【化2】

【0014】
式中、Xは(CH2sを示し、pは0〜3の整数である。R1〜R8は、それぞれ独立に水素原子、低級アルキル基、置換又は非置換のフェニル基、ハロゲン原子又は低級アルコキシ基を示す。この低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基及びシクロヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。置換又は非置換のフェニル基としては、ハロゲン原子や低級アルキル基等で置換されていてもよいフェニル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子などが挙げられる。低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。
【0015】
上記一般式(1)で表されるテトラキスフェノール系化合物の具体例としては、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−ブロモ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス[(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル]エタン、
【0016】
1,1,3,3−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
【0017】
1,1,4,4−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン等を例示することができる。これらのテトラキスフェノール系化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのテトラキスフェノール系化合物の中で、本発明においては、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン及び1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0018】
(C)成分のエポキシ樹脂用硬化促進剤である包接体は、ホスト化合物である上記テトラキスフェノール系化合物と、ゲスト化合物であるエポキシ樹脂用硬化促進化合物とを反応させることにより得ることができる。一般に、例えば、ゲスト化合物が液体の場合、テトラキスフェノール系化合物とゲスト化合物との反応は、テトラキスフェノール系化合物を、この液体に直接加えることにより行うことができる。また、ゲスト化合物が固体の場合には、それらの化合物の含有液中にテトラキスフェノール系化合物を入れて反応させることにより、あるいは固体のゲスト化合物と粉末のテトラキスフェノール系化合物とを固相反応させることにより、テトラキスフェノール系化合物とゲスト化合物との包接体を得ることができる。このような反応により、包接体が高選択率及び高収率で生成される。包接体は、ホスト化合物の分子の作る結晶格子空孔内にゲスト化合物の分子が入り込むことにより生成する。従って、どの化合物がゲストとして取り込まれやすいか否かは、ゲスト化合物の分子の大きさ、立体、極性、溶解度などに支配される。生成した包接体は、結晶性の固体である。
本発明において、エポキシ樹脂用硬化促進化合物としては、イミダゾール類及びアミン類が好ましく、これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
ゲスト化合物のイミダゾール類としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−n−プロピルイミダゾール、2−ウンデシル−1H−イミダゾール、2−ヘプタデシル−1H−イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−1H−イミダゾール、4−メチル−2−フェニル−1H−イミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2'−ウンデシルイミダゾリル−(1'))−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチル−4−イミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール塩酸塩及び1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイトなどを挙げることができる。
これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのイミダゾール類の中で、本発明においては、2−エチル−4−メチルイミダゾール及び2−メチルイミダゾールが好ましい。
【0020】
一方、ゲスト化合物のアミン類としては、例えば脂肪族アミン類、脂環式アミン類、複素環式アミン類、芳香族アミン類及び変性アミン類などが用いられる。脂肪族アミン類としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ペンタメチルジエチレントリアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(トリエチレンジアミン)、N,N,N',N'−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール及びジメチルアミノヘキサノールなどが挙げられる。
【0021】
脂環式及び複素環式アミン類としては、ピペリジン、ピペラジン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、N,N',N"−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ[5,5]ウンデカンアダクト、N−アミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、N,N'−ジメチルピペラジン及び1,8−ジアザビシクロ[4.5.0]ウンデセン−7などが挙げられる。
【0022】
芳香族アミン類としては、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルメチルアミン、ジメチルベンジルアミン、m−キシリレンジアミン、ピリジン及びピコリンなどが挙げられる。
変性アミン類としは、エポキシ化合物付加ポリアミン、マイケル付加ポリアミン、マンニッヒ付加ポリアミン、チオ尿素付加ポリアミン、ケトン封鎖ポリアミンなどその他アミン系としてジシアンジアミド、グアニジン、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、アミンイミド、三フッ化ホウ素−ピペリジン錯体及び三フッ化ホウ素−モノエチルアミン錯体などが挙げられる。
これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのアミン類の中で、本発明においては、エチレンジアミンが好ましい。
なお、ゲスト化合物はこれらに限定されるものではなく、上記テトラキスフェノール系化合物で包接することができる化合物であればよい。例えば、ハロゲン化ホウ素・アミン錯体もゲスト化合物として用いることができる。
【0023】
(C)成分のエポキシ樹脂用硬化促進剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、この(C)成分のエポキシ樹脂用硬化促進剤である包接体におけるゲスト化合物(エポキシ樹脂用硬化促進化合物)の含有量は、通常0.1〜60質量%程度、好ましくは10〜50質量%である。また、接着剤組成物におけるこの包接体の含有量は、イミダゾール類やアミン類として、それらが通常用いられている量と同様とすることができる。
本発明においては、(C)成分のエポキシ樹脂用硬化促進剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して通常0.1〜20質量部程度、好ましくは5〜15質量部である。
【0024】
(C)成分のエポキシ樹脂用硬化促進剤である包接体を、(A)成分のポリエポキシド化合物に配合した場合、硬化反応の制御において極めて重要な熱安定性が、包接体中のゲスト化合物(イミダゾール類及び/又はアミン類など)のみを配合した場合と比べて著しく改善される。(C)成分のエポキシ樹脂用硬化促進剤である包接体は、保存時の耐湿性が良好で、分解や昇華が起こらない。また、(C)成分のエポキシ樹脂用硬化促進剤を含有する本発明の接着剤組成物は熱特性に優れている。接着剤組成物の熱特性は、常温での安定性(一液安定性)、常温から所望する硬化温度までの加熱時の熱安定性、硬化温度の3つの特性が要求される。(C)成分のエポキシ樹脂用硬化促進剤を配合した未硬化エポキシ樹脂は、常温下では極めて安定(一液安定性が良好)であるが、ある温度以上の一定温度に加熱するのみで硬化し、迅速に所望の硬化物を与える。また、比較的熱安定性に優れた公知の硬化剤を使用した場合は、硬化開始温度が150〜180℃と高温であり、本発明の接着剤組成物はこれらに比べて低温での硬化が可能であるといえる。
(C)成分のエポキシ樹脂用硬化促進剤は、耐溶媒性に関して、若干不安な点があり、溶媒の種類、及び混合後の可使用時間には留意する必要がある。このような観点から、溶媒としては、BTX系よりも高級アルコール類が好ましい。
【0025】
本発明で用いる(D)成分の合成ゴムは、硬化接着剤層に柔軟性を付与し、屈曲特性を向上させるために用いられる。この合成ゴムとしては、例えばアクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンメチルアクリレートアクリロニトリルゴム、ブタジエンゴム、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム、ビニル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム及びポリビニルブチラールなどが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分の合成ゴムの含有量は、接着剤組成物の固形分量に基づき、通常5〜50質量%の範囲で選定される。この合成ゴムの含有量が5質量%以上であると、接着剤層の弾性率を2000MPa以下に制御することができるので、フレキシブル配線板としての柔軟性が損なわれることがない。また、50質量%以下であると長い屈曲寿命を得ることができる。この合成ゴムの好ましい含有量は10〜30質量%である。
【0026】
本発明で用いる(E)成分の金属水和物としては、通常、充填剤として用いられているものであればよいが、本発明においては、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムが好ましい。金属水和物の平均粒径は、通常、0.5〜20μm程度、好ましくは0.5〜5μmである。水酸化アルミニウムとしては、「H−42M」(昭和電工社製、平均粒径1.0μm、商品名)等が挙げられる。水酸化マグネシウムとしては、「キスマ5」(協和化学工業社製、平均粒径1.0μm、商品名)等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(E)成分の金属水和物の含有量は、接着剤組成物の固形分量に基づき、通常1〜30質量%程度、好ましくは5〜20質量%である。(E)成分の含有量が1質量%以上であると、接着剤組成物に難燃性を付与することができ、30質量%以下であると、作業性の低下、強度及び耐湿性の低下が抑制される。
【0027】
本発明の接着剤組成物には、接着剤組成物に難燃性を付与するための補助添加剤として無機充填剤を配合してもよい。無機充填剤としては、接着剤組成物としての諸特性を阻害しないものであればよく、例えば、タルク、シリカ及びアルミナ等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記無機充填剤には、(E)成分の金属水和物は含まれない。
この無機充填剤の粒径については特に制限はないが、平均粒径で、通常0.1〜10μm程度であり、好ましくは0.5〜5μmである。
この無機充填剤の含有量は、組成物の固形分量に基づき、通常5〜30質量%程度、好ましくは5〜10質量%の範囲である。
本発明のフレキシブル基板用接着剤組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて各種添加剤、例えば顔料、難燃剤等を配合することができる。
【0028】
本発明の接着剤組成物は、臭素等のハロゲン原子を樹脂骨格に持つエポキシ樹脂や添加型臭素化合物で変性することにより、難燃性を付与することができる。また、シクロヘキサン及びリン化合物で変性することによって、ハロゲンフリーで難燃性を付与することができる。この場合、リン化合物としては、縮合型リン酸エステル、リン酸エステルアミド及びホスファゼン化合物が好適である。ホスファゼン化合物としては、実質的にハロゲンを含まないものであって、耐熱性、耐湿性、難燃性、耐薬品性などの点から、融点が80℃以上であるホスファゼン化合物が好ましく用いられる。具体的な例としては、下記一般式(2)で表されるシクロホスファゼンオリゴマーを挙げることができる。
【0029】
【化3】

【0030】
(式中、X1及びX2は、それぞれ独立に水素原子又はハロゲンを含まない有機基を示し、mは3〜10の整数を示す。)
上記一般式(2)において、X1及びX2のうちのハロゲンを含まない有機基としては、例えば炭素数1〜10のアルコキシル基、フェノキシ基、アミノ基及びアリル基などが挙げられる。このシクロホスファゼン化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
このシクロホスファゼン化合物は、組成物の固形分量に基づき、5〜50質量%の割合で含まれていることが、難燃性及び他の物性のバランスの面から好ましい。より好ましい含有量は9〜40質量%であり、特に9〜30質量%が好ましい。
【0031】
本発明の接着剤組成物は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン及び酢酸エチル等から選ばれる有機溶媒の一種又は二種以上の溶媒に、上記(A)〜(E)成分及び必要に応じて用いられる各種添加剤を加え、ポットミル、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモジナイザー、スーパーミルなどを用い、均一に混合することにより、調製することができる。固形分濃度としては、塗工性及び経済性などの点から、10〜45質量%程度が好ましく、より好ましくは20〜35質量%である。
【0032】
本発明のフレキシブル銅張積層板は、本発明の接着剤組成物を用いて、ポリイミドフィルムの少なくとも片面に銅箔を張り合わせたものである。銅箔としては、圧延銅箔及び電解銅箔のいずれも用いることができる。銅箔の厚さは必要に応じて適宜のものとすればよく、通常5〜70μm程度であり、微細回路パターンを形成する場合は5〜18μmが好ましい。
本発明のフレキシブル銅張積層板は、以下のようにして製造することができる。すなわち、本発明の接着剤組成物を上記有機溶媒で希釈してなる接着剤液を、リバースロールコーター、ロールコーター等を用いてポリイミドフィルムに塗布し、これをドライヤに通し、80〜180℃程度で2〜20分間程度、加熱処理して上記接着剤液の溶媒を除去し、乾燥させて半硬化状態とした後、加熱ロールを用いてこの接着剤塗布面に、銅箔を圧力0.2〜10MPa程度、温度60〜180℃程度で熱圧着させる。本発明における接着剤組成物の塗布膜の厚さは乾燥状態で5〜30μm程度であればよく、好ましくは5〜25μmである。
【0033】
本発明のカバーレイは、本発明の接着剤組成物を上記有機溶媒で希釈してなる接着剤液を、リバースロールコーター、ロールコーター等を用いてポリイミドフィルムに塗布し、これをドライヤに通し、80〜180℃程度で2〜20分間程度、加熱処理して上記接着剤液の溶媒を除去し、乾燥させることにより製造することができる。
本発明の接着剤フィルムは、本発明の接着剤組成物を上記有機溶媒で希釈してなる接着剤液を、リバースロールコーター、ロールコーター等を用いてキャリアフィルムに塗布し、これをドライヤに通し、80〜180℃程度で2〜20分間程度、加熱処理して上記接着剤液の溶媒を除去し、乾燥させることにより製造することができる。キャリアフィルムの材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル及びポリメチルペンテンなどが挙げられる。キャリアフィルムの厚さは、通常10〜70μm程度である。
【0034】
なお、上述したように、本発明で用いる(C)成分のエポキシ樹脂用硬化促進剤である包接体は、耐溶媒性に関して、若干不安な点があるため、接着剤組成物を調製した後、速やかに塗布し、乾燥させることが肝要である。調製後、1時間程度を目安とすることが好ましい。管理のポイントは、用いる溶媒及び樹脂組成によって異なるので、チェックの上、安定状態を維持し得る時間内に使用することが肝要である。また、接着剤組成物を2液化することは、管理の幅を広げる観点から有効である。
本発明の接着剤組成物を2液化する場合、(A)成分と(D)成分と(E)成分との組み合わせと、(B)成分と(C)成分との組み合わせに分けることができる。
【0035】
フレキシブル銅張積層板に回路を形成する方法としては、サブトラクティブ法などの公知の方法を使用することができる。フレキシブル銅張積層板を用いてプリント配線板を得る方法は特に限定されないが、通常、回路を形成し、必要に応じて穴開けスルーホールメッキを行い、次いで、所定の箇所に穴を開けたカバーレイを重ねて加熱加圧成形するという方法により、製造することができる。更に、このフレキシブルプリント配線板に、本発明の接着剤フィルムを介して補強板を重ね合わせ、加熱加圧するという方法で、プリント配線板を製造することができる。補強板の材質としては、例えば、ポリイミド、ガラスエポキシ基板などが挙げられる。補強版の厚さは、通常100〜300μm程度である。
また、このプリント配線板に、本発明の接着剤フィルムを介して本発明のフレキシブル銅張積層板又はハロゲンを含まないガラスエポキシ銅張積層板等を重ね合わせ、加熱加圧成形し、スルーホールメッキを行った後、所定の回路を形成するという方法により、ハロゲンフリー多層プリント配線板を製造することができる。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、各例における諸特性は、以下に示す方法により評価した。また、下記において、接着剤フィルムは、後述する実施例3と同様にして作製したものを用いた。
(1)引剥がし強さ
JIS C6471に準拠して、幅10mmの試験片を作製し、90度の方向に50mm/分の速度で銅箔を引き剥がしたときの接着力を測定した。測定は、試験片における接着剤組成物が乾燥した直後、及び20℃で6ヶ月間保管した後について行った。保管後の測定は、20℃で6ヶ月間保管した接着剤フィルムを用いて基板を製造し、この基板について行った。以下、保管後とは、このような測定条件を意味する。また、試験片における接着剤組成物が乾燥した後に、この試験片をリフロー処理したものについても測定した。リフロー条件は、ピーク温度240℃、予熱温度180℃、予熱時間90秒、リフロー温度220℃、リフロー時間40秒とした。
(2)ハンダ耐熱性
試験片を100℃で60分間乾燥させた後、288℃及び300℃のハンダ浴に10秒間フロートさせて、フクレの有無を目視観察し、下記の基準で評価した。また、乾燥させた後に20℃で6ヶ月間保管した後、300℃のハンダ浴に10秒間フロートさせ、同様の観察及び評価を行った。
○:フクレなし。
△:一部でフクレ発生。
×:全てでフクレ発生。
(3)耐折性
JIS C6471 6.6に準拠し、曲率半径0.38mm、荷重4.9Nで測定した。
(4)吸水率
IPC−FC−241に準拠して測定した。測定は、作製直後の基板と20℃で6ヶ月間保管した基板を、50℃、24時間の条件で加熱処理し、次いで、23℃の水中に24時間浸漬した後に行った。
【0037】
(5)絶縁抵抗
JIS C6471 6.6に準拠して測定した。測定は、温度20℃、湿度65%RH、96時間の条件でコンディショニングし、次いで100℃の水中で2時間煮沸(浸漬)処理した後に行った。
(6)難燃性
UL−94に準拠して評価した。
(7))寸法変化率
IPC−TM−650 2.2.1に準拠して測定した。測定は、エッチング処理を行い、150℃、30分間の条件で加熱処理した後に行った。
(8)耐マイグレーション性
1mm間隔の櫛形パターンを用い、温度85℃、湿度85%RHにおいて、直流電圧20Vを印加し、500時間後の表面抵抗を測定した。20℃で6ヶ月間保管した接着剤フィルムを用いて製造した基板についても同様の条件で表面抵抗を測定した。
(9)成形性
作製直後の基板と、20℃で6ヶ月間保管した接着剤フィルムを用いて製造した基板について成形外観を確認し、下記の基準で評価した。
○:ボイド、かすれ及び充填不具合無し。
△:ボイド、かすれ又は充填不具合が30%以下の領域で見られた。
×:ボイド、かすれ又は充填不具合が30%を超える領域で見られた。
【0038】
実施例1
カルボキシ含有アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン社製、ニポール1072、ニトリル含有量27質量%)300質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート1001、エポキシ当量470)320質量部、シロキサン変性エポキシ樹脂(Hanse chemie社製、Albiflex 296、エポキシ当量850)147質量部、フェノールノボラック樹脂(昭和高分子社製、水酸基価106)92質量部、シクロフェノキシホスファゼンオリゴマー(融点100℃)300質量部、水酸化アルミニウム(昭和電工社製、H−42M、平均粒径1.0μm)300質量部及び包接体(日本曹達社製、TEP−2E4MZ、2−エチル−4−メチルイミダゾール含有量28〜32質量%)0.5質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)とメチルエチルケトン(MEK)とを50:50(質量比)で混合した混合溶媒に溶解し、固形分40質量%のフレキシブル基板用接着剤組成物を調製した。
この接着剤組成物を厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レデュポン社製、カプトン)に、乾燥後の厚さが15μmとなるようにロールコーターで塗布し、乾燥させた。この塗布は、接着剤組成物の調製後、直ちに行った。乾燥させた後、接着剤組成物面と圧延銅箔(厚さ35μm)の処理面とを重ね合わせて120℃のラミネートロールで圧着した後、オーブンにて、100℃で3時間、130℃で3時間、160℃で3時間、順次処理することによって接着剤組成物を硬化させ、フレキシブル銅張積層板を作製した。
【0039】
実施例2
カルボキシ含有アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン社製、ニポール1072、ニトリル含有量27質量%)400質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート1001、エポキシ当量470)274質量部、シロキサン変性エポキシ樹脂(Hanse chemie社製、Albiflex XP 544、エポキシ当量750)126質量部、フェノールノボラック樹脂(昭和高分子社製、水酸基価106)80質量部、シクロフェノキシホスファゼンオリゴマー(融点100℃)300質量部、水酸化アルミニウム(昭和電工社製、H−42M、平均粒径1.0μm)300質量部及び包接体(日本曹達社製、TEP−2E4MZ、2−エチル−4−メチルイミダゾール含有量28〜32質量%)2質量部を、PGMとMEKとを50:50(質量比)で混合した混合溶媒に溶解し、固形分34質量%のフレキシブル基板用接着剤組成物を調製した。
この接着剤組成物を厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レデュポン社製、カプトン)に、乾燥後の厚さが25μmとなるようにロールコーターで塗布し、乾燥させ、カバーレイを製造した。この塗布は、接着剤組成物の調製後、直ちに行った。実施例1で得られたフレキシブル銅張積層板の銅表面をソフトエッチング処理し、この銅表面に上記カバーレイを重ね合わせ、熱プレスにて、温度160℃及び圧力4MPaで1時間加熱加圧して接着し、カバーレイ付きフレキシブル基板を作製した。
【0040】
実施例3
カルボキシ含有アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン社製、ニポール1072、ニトリル含有量27質量%)400質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート1001、エポキシ当量470)274質量部、シロキサン変性エポキシ樹脂(Hanse chemie社製、Albiflex XP 544、エポキシ当量750)126質量部、フェノールノボラック樹脂(昭和高分子社製、水酸基価106)80質量部、シクロフェノキシホスファゼンオリゴマー(融点100℃)300質量部、水酸化アルミニウム(昭和電工社製、H−42M、平均粒径1.0μm)300質量部及び包接体(日本曹達社製、TEP−2E4MZ、2−エチル−4−メチルイミダゾール含有量28〜32質量%)2質量部を、PGMとMEKとを50:50(質量比)で混合した混合溶媒に溶解し、固形分34質量%のフレキシブル基板用接着剤組成物を調製した。
この接着剤組成物を厚さ40μmのポリプロピレンフィルム(東レ社製、トレファン)に、乾燥後の厚さが50μmとなるようにロールコーターで塗布し、接着剤フィルムを製造した。この塗布は、接着剤組成物の調製後、直ちに行った。この接着剤フィルムを厚さ125μmのポリイミド補強板(東レ・デュポン社製、カプトン)に、120℃のラミネートロールで圧着した後、キャリアフィルムであるポリプロピレンフィルムを剥がし、実施例1で得られたフレキシブル銅張積層板のフィルム面を重ね合わせ、熱プレスにて、温度160℃及び圧力0.5MPaで15分間加熱加圧して接着し、補強板付きフレキシブル基板を作製した。
【0041】
実施例4
実施例1において、包接体(日本曹達社製、TEP−2E4MZ)の替わりに包接体(日本曹達社製、TEP−ED、エチレンジアミン28〜32質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてフレキシブル銅張積層板を作製した。
【0042】
実施例5
実施例2において、包接体(日本曹達社製、TEP−2E4MZ)の替わりに包接体(日本曹達社製、TEP−ED、エチレンジアミン28〜32質量%)を用いた以外は、実施例2と同様にしてカバーレイ付きフレキシブル基板を作製した。
【0043】
実施例6
実施例3において、包接体(日本曹達社製、TEP−2E4MZ)の替わりに包接体(日本曹達社製、TEP−ED、エチレンジアミン28〜32質量%)を用いた以外は、実施例3と同様にして補強板付きフレキシブル基板を作製した。
【0044】
比較例1
実施例1において、包接体(日本曹達社製、TEP−2E4MZ)の替わりに2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2E4MZ−CN)を用いた以外は、実施例1と同様にしてフレキシブル銅張積層板を作製した。
【0045】
比較例2
実施例2において、包接体(日本曹達社製、TEP−2E4MZ)の替わりに2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2MA−OK)を用いた以外は、実施例2と同様にしてカバーレイ付きフレキシブル基板を作製した。
【0046】
比較例3
実施例3において、包接体(日本曹達社製、TEP−2E4MZ)の替わりに2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2MA−OK)を用いた以外は、実施例3と同様にして補強板付きフレキシブル基板を作製した。
【0047】
比較例4
実施例1において、包接体(日本曹達社製、TEP−2E4MZ)の替わりにエチレンジアミン(和光純薬社製、試薬)を用いた以外は、実施例1と同様にしてフレキシブル銅張積層板を作製した。
【0048】
比較例5
実施例2において、包接体(日本曹達社製、TEP−2E4MZ)の替わりにエチレンジアミン(和光純薬社製、試薬)を用いた以外は、実施例2と同様にしてカバーレイ付きフレキシブル基板を作製した。
【0049】
比較例6
実施例3において、包接体(日本曹達社製、TEP−2E4MZ)の替わりにエチレンジアミン(和光純薬社製、試薬)を用いた以外は、実施例3と同様にして補強板付きフレキシブル基板を作製した。
【0050】
上記実施例及び比較例で得られた各基板について、上記の方法により性能を評価した。結果を表1及び表2に示す。なお、表1及び表2において、「A」は作製直後の接着剤組成物又は接着剤フィルムを用いて製造した基板を用いて測定したことを意味する。また、「保管後」は、20℃で6ヶ月間保管した接着剤フィルムを用いて基板を製造し、この基板を用いて測定したことを意味する。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のフレキシブル基板用接着剤組成物は、常温での保存性能が高く、ばらつきのない安定した成形性を有し、且つ耐折れ強さ及び難燃性に優れるので、フレキシブル銅張積層板及びカバーレイにおける接着剤層として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも一種のポリエポキシド化合物、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)一般式(1)で表されるテトラキスフェノール系化合物と、エポキシ樹脂用硬化促進化合物との包接体であるエポキシ樹脂用硬化促進剤、(D)合成ゴム及び(E)金属水和物を含むことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物。
【化1】

(式中、Xは(CH2pを示し、pは0〜3の整数である。R1〜R8は、それぞれ独立に水素原子、低級アルキル基、置換又は非置換のフェニル基、ハロゲン原子又は低級アルコキシ基を示す。)
【請求項2】
(C)成分におけるテトラキスフェノール系化合物が、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン及び1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンから選ばれる少なくとも一種であり、エポキシ樹脂用硬化促進化合物が、イミダゾール類及び/又はアミン類である請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接着剤組成物を用いて、ポリイミドフィルムの少なくとも片面に銅箔を張り合わせてなるフレキシブル銅張積層板。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の接着剤組成物を用いて、ポリイミドフィルムの表面に接着剤層を形成してなるカバーレイ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の接着剤組成物をフィルム状に成形してなる接着剤フィルム。
【請求項6】
請求項3に記載のフレキシブル銅張積層板に、所定パターンの回路を形成してなるフレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
請求項6に記載のフレキシブルプリント配線板と、請求項4に記載のカバーレイとを貼り合わせてなるフレキシブルプリント配線板。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のフレキシブルプリント配線板と補強板とを、請求項5に記載の接着剤フィルムを介して貼り合わせてなるプリント配線板。

【公開番号】特開2008−208311(P2008−208311A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49072(P2007−49072)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】