説明

ブリスクを製造する方法

【課題】ポジティブ物質接合によって一体型ブレード付きロータを製造する方法を提供する。
【解決手段】ニッケルベース又はチタンベースの材料から成るロータディスク1をチタンアルミナイドから成るブレード3にレーザブレージングによって接続する。ロウ材金属としてブレード材料と同様の材料を使用し、当該材料はレーザビーム4内にロウ材粉末流5として導入され、溶融温度と溶融金属浴の容積とによって制御されるその熱容量によってディスク材料が溶融されてこの材料との合金になるが、ブレード材料は溶融せず当該ブレード材料は接着によって接続される。この接続はロータディスク上に形成されているブレードスタブ2を介してなされる。溶融金属浴は水冷式浴支持体8によって支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め製造されているブレードが接合プロセスにおいてポジティブ物質接合(positive-substance joining)によって、予め製造されているロータディスクに接続される、ガスタービンエンジンの高圧コンプレッサ又は低圧タービンに用いるブリスクを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの製造に使用される一体型ブレード付きロータは、「ブリスク」とも称されているが、ブレードがロータディスク上に着脱可能に取り付けられている従来のブレード付きロータに比べ、より軽量であること及び耐機械的負荷性(mechanical loadability)がより高いこと、並びに最適な流れの誘導及び高効率を特徴とする。
【0003】
一般的に知られているように、ブリスクタイプのロータは、固体材料からフライス加工によって製造される。ブレードをブレードブランクからフライス加工することによって、種々の設計オプションが提供されるが、これには、多くの労力と材料の投下を必要とする。さらに、ディスク領域及びブレード領域において異なる機械的負荷状況及び熱的負荷状況を考慮する材料選択は、不可能であるか又は限られた範囲でしか可能ではない。
【0004】
さらに、一体型ブレード付きロータは、別個に製造されているディスク及びブレードをポジティブ物質接合によって、すなわち、溶接プロセスにおいて接続することによって製造することもできる。線形摩擦溶接によるブリスクの製造は、例えば特許文献1又は特許文献2に記載されているように、一定の構成要素設計及び大きなサイズのブレードに限定され、さらに、複雑な取り付け概念を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,219,916号明細書
【特許文献2】欧州特許第1535692号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の融接によって形成される、ロータディスクとブレードとの接合部は、溶接領域の亀裂に対する脆弱性に起因して、ブリスクの必要とされる強度特性及び長い耐用寿命が確保されないという点で不利である。
【0007】
さらに、既知の接合プロセスは、ロータディスク及びブレードが溶接ゾーンにおいて必要な強度特性を得るために同じ又は少なくとも同様の材料から成ることを必要とする。実際は、ブレード特性及びディスク特性に対する要件はかなり大幅に異なっており、ブレードが、高サイクル疲労(HCF)及び腐食並びにより高い熱的負荷に曝される一方、ディスク材料は、低サイクル疲労(LCF)及びクリープ強度に対するより高い要件を満たさなければならない。このように異なる特性を有する異なるクラスの材料から成るブレード及びディスクは、接合部の強度特性が不十分になってしまうため、従来の溶接プロセスによって接合することができない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の広範な態様は、ガスタービンエンジン用の一体型ブレード付きロータを製造する、始めに明記したタイプの方法を提供するものであり、これによって、ディスク領域、ブレード領域及び接合領域に関して明記した機械的要件及び熱的要件、並びにブリスクの長い耐用寿命が確保される。
【0009】
本発明は、特許請求項1に記載の特徴に従う方法によって上記問題を解決することを特に目的としている。本発明の有用な実施の形態はサブクレームから明らかになる。
【0010】
本発明は、本質的に、ニッケルベース又はチタンベースの材料から成る予め製造されているロータディスクを、チタンアルミナイドから成るブレードにレーザブレージングによって接合する方法を提供する。ロウ付け用金属は、ニッケルベース、鉄ベース又は銅ベースの粉末材料である。レーザビームが、当該ビーム内に導入されるロウ材粉末流(brazing powder jet)のみを加熱して溶融している間、ブレードは特にロウ材粉末流によってレーザビームに対して保護される。接合される部材は、実際にはロウ付けギャップ(brazing gap)のサイズによって制御される溶融ロウ材金属の容積とロウ材金属の溶融温度とに応じて、溶融ロウ材金属によって接合部で加熱される。ディスク材料が接合領域において溶融して同様のロウ材金属との合金になる一方、ブレード材料は溶融せず、固化している同様でないロウ材金属との接続が接着によってなされるように、ロウ材粉末又はその溶融温度のそれぞれ、及び溶融ロウ材金属浴のサイズがディスク材料及びブレード材料に応じて選択される。
【0011】
このようにして製造されるブリスクは、ディスク領域及びブレード領域に適用可能な機械的負荷条件及び熱的負荷条件を満たす。チタンアルミナイドから成るブレードは軽量であるため、その結果、接合部に作用する遠心力及びこの領域における機械的負荷が比較的低く、長い耐用寿命のブリスクを比較的少ない労力と材料の投入によって作製することができる。
【0012】
ロウ材粉末の溶融温度はニッケルベースの材料によって決まっており、適用可能である場合、これに添加剤を加えて溶融温度を下げる。その熱容量が接合される2つの部材に作用し且つ当該2つの部材の加熱と各接合部の形成とに影響を及ぼすところの溶融ロウ材金属浴の容積は、ロウ付けギャップの形状及びサイズによって確定される。好ましくは、ロウ付けギャップは根部において開いており、ロウ付けギャップの深さのおよそ半分に相当する幅を有する。
【0013】
本発明の発展形態では、溶融温度を下げるのにホウ素添加材を使用することが好ましい。
【0014】
本発明のさらなる発展形態では、ロウ材金属として使用されるニッケルベースの材料が、ロータディスクのニッケルベースの材料よりも高い延性を有する。固化状態での強度がチタンアルミナイドの強度よりも低いロウ材金属の良好な延性のおかげで、溶融ロウ材金属の固化時にブレード材料に小さな力しか導入されない。したがって、ロウ材金属の固化によって生じるブレード材料における機械応力及び熱応力が、ロウ材金属によって低下するか又は吸収される。
【0015】
本発明のさらなる発展形態では、ディスクに対する直接の切り欠き効果及びその結果当該切り欠きから生じる応力を回避するために、ブレードを、ディスクの円周上に形成されているブレードスタブに取り付ける。
【0016】
添付の図面を参照して、本発明の実施形態をより詳細に後述する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ブレードがレーザブレージングによってブレードスタブに取り付けられているロータディスクの部分的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ロータディスク1は、高温においてもクリープと疲労とに対して耐性があるニッケルベース合金(ここでは例えばIN 718)から成り、小さなブレードスタブ2が円周に設けられており、当該ブレードスタブ2によって、ブレード3がロータディスク1に取り付けられる。ブレード3は、γ−チタンアルミナイド、すなわち、チタンとアルミナイドとの金属間の組合せから成る。ニッケルベースのディスク材料に比べ、チタンアルミナイドは、実質的により軽量であること、耐熱性がより高いこと、並びに密度が低いにもかかわらず良好な強度特性及び剛性特性を特徴とする。ディスクの円周上に設けられているブレードスタブ2と、各ブレード3との接合は、レーザブレージングによって、すなわち、レーザビーム4内に吹き付けられておよそ1400℃で溶融するニッケルベースのロウ材粉末流5によってなされる。レーザビーム4がロウ材粉末にのみ作用してこれを溶融している間、チタンアルミナイドはロウ材粉末流5によってレーザビーム4の熱効果に対して保護される。その延性がディスク材料の延性よりも高く、且つその溶融温度をホウ素の添加によって下げることができるロウ材金属は、固化状態ではチタンアルミナイドよりも強度が低い。固化時に生じる力及び熱応力がロウ材金属によって吸収され、その結果、チタンアルミナイドには小さな力しか導入されず、また、小さな応力しか生成されない。結局、チタンアルミナイドは、ロウ材金属によって誘発される力及び熱効果の影響を受けない。ロウ付けプロセスにおいて、接合領域においてブレードスタブ2のニッケルベースの材料が溶融して溶融ロウ材金属との合金になる一方、ブレード3のチタンアルミナイドは溶融せず、単に強固な接続のために必要とされる接着が、ここでは固化したロウ材金属と溶融しないチタンアルミナイドとの間で達成されるように、2つの接合部材2、3に導入される熱を、ロウ材金属の溶融温度、ロウ材金属供給量によって決められる溶融金属浴の容積、及びロウ付け接合部寸法を設定することによって調整する。これは、ブレードスタブ2が上に形成されているロータディスク1の同様のニッケルベースの材料と、ロウ材金属との間に合金が形成される一方で、脆くてブレード3の分離を引き起こす、チタンアルミナイドとロウ材金属との間の合金形成が確実に回避されることを意味する。それぞれ接合領域における熱制御用及び温度設定用に設けられる溶融金属浴の容積は、その接合幅が接合深さのおよそ半分に相当し且つ一定の根部開口7を有するロウ付け接合部6(ロウ付けギャップ)のサイズに応じて設定される。溶融金属浴は、銅から成る水冷式浴支持体8によって根部開口7の下方に支持される。ブレード3を、ディスクの円周上に設けられているブレードスタブ2に接続することによって、ロータディスク1において直接、切り欠きが形成されて対応する応力が発生することが回避される。
【符号の説明】
【0019】
1 ロータディスク
2 ブレードスタブ
3 ブレード
4 レーザビーム
5 ロウ材粉末流
6 ロウ付け接合部
7 根部開口
8 浴支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め製造されているブレード(3)が接合プロセスにおいてポジティブ物質接合によって、予め製造されているロータディスク(1)に接続される、ガスタービンエンジンの高圧コンプレッサ又は低圧タービンに用いるブリスクを製造する方法であって、
ニッケルベース又はチタンベースの材料から成るロータディスク(1)を、ニッケルベース、鉄ベース又は銅ベースのロウ材金属を使用するレーザブレージングによって、チタンアルミナイドから成るブレード(3)に接合し、接合される部材の加熱を、前記ディスクの材料が溶融して同様の前記ロウ材金属との合金になる一方、前記ブレードの材料は溶融せず、前記ロウ材金属との接続が接着によってなされるように、前記ロウ材金属の溶融温度と溶融金属浴の容積とによって制御することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記溶融ロウ材金属は、レーザビーム(4)内に導入されるロウ材粉末流(5)によって生成され、前記ロウ材粉末流(5)は、前記窒化アルミニウムから成る前記ブレード(3)を前記レーザビーム(4)に対して少なくとも保護し、前記ロウ材金属しか前記レーザビーム(4)によって加熱及び溶融されないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ロウ付けギャップの幅は、前記溶融金属浴の容積を設定するように可変であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ロウ付けギャップは根部において開いており、前記ロウ付けギャップの深さのおよそ半分に相当する幅を有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融金属浴は、水冷式浴支持体(8)によって支持されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ロウ材金属の延性は、前記同様のディスク材料の延性よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ロウ材金属の溶融温度は、添加剤によって下げられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記溶融温度を下げる前記添加剤はホウ素であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ブレードは、切り欠き効果によって誘発される応力を回避するように、前記ディスクの円周上に形成されているブレードスタブにロウ付けされることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−297788(P2009−297788A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−116561(P2009−116561)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(505421788)ロールスロイス ドイチランド リミテッド ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (9)
【氏名又は名称原語表記】Rolls−Royce Deutschland Ltd & Co KG
【住所又は居所原語表記】Eschenweg 11,15827 Blankenfelde−Mahlow,Germany
【Fターム(参考)】