説明

ブローバイガス還元装置

【課題】触媒装置の温度上昇を制御するための排気空燃比のリッチ化を、燃料噴射量及びスロットル開度の補正を行うことなく行える、ブローバイガス還元装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気通路に設けられる排気浄化触媒の温度が設定温度T1よりも高くなると(S400)、ブローバイガスの還元管路に介装される流量制御バルブの目標開度を減少補正する(S1000)。上記流量制御バルブの目標開度を減少補正することによってブローバイガスと共に吸気系に吸入される空気量が減ることで、機関の混合気の空燃比が濃化(リッチ化)する。空燃比が濃化(リッチ化)すると、排気中の未燃焼成分が増え、排気浄化触媒の周囲が還元雰囲気となり、未燃焼成分の酸化反応が抑制されると共に、吸熱反応であるNOxの還元反応が促進され、触媒温度が低下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関において、ブローバイガスを吸気系に還元するブローバイガス還元装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の燃焼室からピストンとシリンダ壁の間隙を通ってクランクケース内に漏れ出るガスであるブローバイガスを吸気系に還元するPCV装置が知られている。
【0003】
ここで、PCVとは、「Positive Crankcase Ventilation」の略であり、PCV装置とは、ブローバイガス還元装置を意味する。
【0004】
前記ブローバイガス還元装置に関し、特許文献1には、内燃機関の排気系に設けられる排気浄化触媒が活性化したと判定された時に、前記排気浄化触媒にブローバイガスを供給し、ブローバイガスに含まれるHC(炭化水素類)を還元剤として用いてNOxを還元処理させる排気ガス浄化装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、NOx吸蔵機能を有する排気浄化触媒の温度が耐熱温度よりも高い場合に、燃料噴射量の増量によって前記排気浄化触媒に流入する排気ガスの排気空燃比をリッチ化し、これにより前記排気浄化触媒の熱劣化を防止する排気浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−83313号公報
【特許文献2】特開2001−65332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示されるように、排気浄化触媒の温度上昇に対して燃料噴射量を増量すると、燃料の消費量が増えてしまうという問題が発生する。
【0008】
一方、スロットル開度を絞って吸入空気量を減らすことで、排気空燃比をリッチ化する場合、ポンピングロスの増加によって、内燃機関の熱効率が低下するという問題が生じる。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、排気浄化触媒の温度上昇を制御するための排気空燃比のリッチ化を、燃料噴射量及びスロットル開度の補正を行うことなく行える、ブローバイガス還元装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明に係るブローバイガス還元装置は、排気系に排気浄化触媒が設けられる内燃機関において、ブローバイガスを、流量制御バルブが設けられるブローバイガス還元管路を介して吸気系に還元する装置であり、前記排気浄化触媒の温度が所定温度よりも高い場合に、前記流量制御バルブの開度を減少補正するようにした。
【発明の効果】
【0011】
上記発明によると、排気浄化触媒の温度が所定温度よりも高い場合に、流量制御バルブの開度を減少補正することで、燃料噴射量やスロットル開度を補正することなく、換言すれば、燃料消費量やポンピングロスを増大させることなく、排気空燃比をリッチ化でき、排気浄化触媒の温度上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のブローバイガス還元装置の一実施形態についてその構成を示す略図である。
【図2】電子制御装置によって行われる「ブローバイガス流量制御ルーチン」の手順を示すフローチャートである。
【図3】吸気管負圧とブローバイガスの発生量との相関を示す図である。
【図4】前記「ブローバイガス流量制御ルーチン」を実行した場合について、触媒温度TCAT、流量制御バルブの開度、流量補正フラグの変化を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本願発明の実施の形態について説明する。
【0014】
図1に示す内燃機関(ガソリンエンジン)11は、車両に対して動力源として搭載される機関である。
【0015】
この内燃機関11は、複数のシリンダ12が形成されたシリンダブロック13と、前記シリンダブロック13に取付けられたシリンダヘッド14とを備えている。
【0016】
各シリンダ12には、往復動可能にピストン15がそれぞれ収容され、前記各ピストン15は、それぞれコネクティングロッド16を介して、内燃機関11の出力軸であるクランクシャフト17に連結されている。
【0017】
各シリンダ12の燃焼室18には、空気を燃焼室18内に導くための吸気通路19が接続されている。
【0018】
前記吸気通路19には、バタフライ式のスロットルバルブ21が回動可能に設けられており、前記スロットルバルブ21の回転軸に連結された電動モータ等のアクチュエータ22は、スロットルバルブ21を回動させ、スロットルバルブ21の開度が変化することで、内燃機関11の吸入空気流量GAが変化する。
【0019】
また、各シリンダ12の燃焼室18には、燃焼ガスを内燃機関11の外部へ排出するための排気通路24が接続されており、前記排気通路24には、排気浄化触媒25を内蔵した触媒コンバータ26が設けられている。
【0020】
前記排気浄化触媒25は、触媒反応によって、排気中の有害成分(HC,CO,NOxなど)を無害な成分(CO2,H2O,N2など)に変換する装置であり、例えば、三元触媒やNOx吸蔵機能を有する触媒などの公知の触媒装置である。
【0021】
上記シリンダヘッド14には、前記吸気通路19の前記燃焼室18に対する接続部を開閉する吸気バルブ28と、前記排気通路24の前記燃焼室18に対する接続部を開閉する排気バルブ29とが、シリンダ12毎に設けられている。
【0022】
前記吸気バルブ28及び排気バルブ29は、バルブスプリング27により閉弁方向に付勢されており、前記吸気バルブ28は、クランクシャフト17によって回転駆動される吸気カムシャフト31によって押し下げられることで開弁し、また、前記排気バルブ29は、クランクシャフト17によって回転駆動される排気カムシャフト32によって押し下げられることで開弁する。
【0023】
前記吸気通路19には、燃料噴射弁33が各シリンダ12に対応して取り付けられ、前記燃料噴射弁33から噴射された燃料は、吸気通路19を流れる吸入空気と共に、吸気行程において、開弁される前記吸気バルブ28を介して燃焼室18内に吸引される。
【0024】
尚、前記燃料噴射弁33は、開弁時間に比例する量の燃料を噴射する。また、燃料噴射弁33が、燃焼室18内へ直接燃料を噴射する直噴式の燃料噴射システムを用いることができる。
【0025】
シリンダ12毎に設けられる点火プラグ34は、前記シリンダヘッド14に取り付けられ、各点火プラグ34は、点火コイル35を介してイグナイタ36に接続されている。
【0026】
前記点火コイル35は、イグナイタ36からの点火信号に基づき高電圧を出力し、該高電圧が各点火プラグ34に印加されることで、各点火プラグ34は火花を発生する。
【0027】
そして、燃焼室18内の燃料は、前記点火プラグ34の火花放電によって着火されて燃焼し、該燃焼によって生じた高温高圧の燃焼ガスによりピストン15が往復動され、ピストン15の往復運動が、コネクティングロッド16を介してクランクシャフト17に伝達されることで、クランクシャフト17が回転駆動され、内燃機関11の駆動力(トルク)が得られる。
【0028】
上記内燃機関11では、圧縮行程及び膨張行程で、燃焼室18内のガスが燃料と共に、ピストンリング37とシリンダ12の壁面(シリンダボア)との隙間や、ピストンリング37とピストン15との隙間を通り、クランクシャフト17が収容されるクランクケース38内に漏出する。
【0029】
上記のクランクケース38内に漏出するガスはブローバイガスと呼ばれ、該ブローバイガスが大気中に放出されると大気汚染の原因となり、また、前記ブローバイガスは、機関オイル(潤滑油)を劣化させる原因となる。
【0030】
そこで、前記内燃機関11には、前記ブローバイガスを空気と共に、クランクケース38,シリンダブロック13,シリンダヘッド14内の動弁室39を介して、吸気通路19(吸気系)に還元し、燃焼室18内で再燃焼させる、ブローバイガス還元装置(PCV装置)41が設けられている。
【0031】
前記ブローバイガス還元装置41は、クランクケース38の内部とシリンダヘッド14内部と連通させる連通路43aと、シリンダヘッド14内の動弁室39とスロットルバルブ21よりも下流側の吸気通路19(吸気系)とを連通させる還元管路43bと、シリンダヘッド14内の動弁室39とスロットルバルブ21よりも上流側の吸気通路19(吸気系)とを連通させる空気導入管路43cと、前記還元管路43bに介装される流量制御バルブ(PCVバルブ)44とを備える。
【0032】
前記流量制御バルブ44は、スプリングによって閉弁方向に付勢される電磁弁であり、電磁コイルへの通電制御によって開弁方向に作用する電磁力を制御することで、開度が変更可能に構成されており、前記流量制御バルブ(PCVバルブ)44の開度を調整することで、還元管路43bを介して内燃機関11の吸気系に吸入されるブローバイガスと空気との混合ガスの流量が制御される。
【0033】
尚、空気導入管路43cによって、スロットルバルブ21よりも上流側の吸気通路19(吸気系)とクランクケース38の内部とを直接連通させることができる。
【0034】
前記ブローバイガス還元装置41によって、ブローバイガスがそのまま大気に開放され、大気汚染の原因となることが防止され、また、クランクケース38内を換気することで、ブローバイガスに因る機関オイル(潤滑油)の劣化が抑制される。
【0035】
また、内燃機関11の運転状態を含む車両の各部の状態を検出するために、クランク角センサ51、水温センサ52、エアフロメータ53、スロットルセンサ54、アクセルセンサ55、空燃比センサ56、触媒温度センサ57等のセンサが設けられている。
【0036】
前記クランク角センサ51は、クランクシャフト17が一定角度だけ回転する毎にパルス信号を発生し、このパルス信号は、クランクシャフト17の回転角度の算出や、機関回転速度NEの算出に用いられる。
【0037】
前記水温センサ52は、内燃機関11のウォータジャケット内の冷却水の温度(冷却水温度THW)を検出し、エアフローセンサ53は、吸気通路19を流れる空気の流量(吸入空気流量GA)を検出する。
【0038】
前記スロットルセンサ54は、スロットルバルブ21の開度(スロットル開度)を検出し、アクセルセンサ55は、運転者によるアクセルペダル23の踏込み量(アクセル開度)を検出する。
【0039】
前記空燃比センサ56は、触媒コンバータ26よりも上流側の排気通路24に設けられ、燃焼室18内の混合気の空燃比と密接な関係にある排気中の酸素濃度に応じた信号を出力するセンサであり、理論空燃比を境に出力が急変することで理論空燃比に対するリッチ・リーンを検出するセンサ(ストイキセンサ)、又は、排気空燃比に対応する出力を発生することで空燃比をリニアに検出するセンサである。
【0040】
前記触媒温度センサ57は、触媒コンバータ26に内蔵される排気浄化触媒25の温度を検出する。
【0041】
また、電子制御装置61が設けられており、この電子制御装置61は、前記各種センサ51〜56からの信号に基づいて、内燃機関11の各部を制御する。
【0042】
前記電子制御装置61は、CPU,ROM,RAM,EEPROMなどを備えたマイクロコンピュータを含んで構成され、前記CPUが、ROMに記憶されている制御プログラム、初期データ、制御マップ等に従って演算処理を行い、その演算結果に基づいて、内燃機関11の運転や車両の走行に係る各種制御を実行する。
【0043】
前記電子制御装置61が行う制御としては、アクチュエータ22の駆動制御(スロットル制御)、燃料噴射弁33の駆動制御(燃料噴射制御)、点火プラグ34の駆動制御(点火時期制御)、前記流量制御バルブ(PCVバルブ)44の駆動制御(ブローバイガス流量制御)などがある。
【0044】
前記スロットル制御においては、アクセルセンサ55で検出されるアクセルペダル23の踏み込み量やクランク角センサ51からの信号に基づいて検出される機関回転速度NEに基づいて、スロットル開度の制御目標値(目標スロットル開度)を算出する。
【0045】
そして、電子制御装置61は、スロットルセンサ54で検出される実際のスロットル開度が上記目標スロットル開度に近づくように、アクチュエータ22の操作量を演算して出力する、スロットル開度のフィードバック制御を行う。
【0046】
また、燃料噴射制御においては、下式(1)に従って燃料噴射量(燃料噴射時間)TAUを算出し、該燃料噴射量(燃料噴射時間)TAUに基づき、燃料噴射弁33に対する通電を制御する。
【0047】
TAU=TB・(1+FAF+kW+kK)…(1)
式(1)において、TBは基本燃料噴射量(基本燃料噴射時間)、FAFは空燃比フィードバック補正係数、kWは暖機増量補正係数、kKはその他の補正係数をそれぞれに表している。
【0048】
前記基本燃料噴射量(基本燃料噴射時間)TBは、空燃比を目標空燃比とするのに必要な噴射量(噴射時間)であり、機関運転状態、例えば吸入空気量GA及び機関回転数NEの関数として予めROM42内に記憶されている。
【0049】
前記空燃比フィードバック補正係数FAFは、実際の空燃比を目標空燃比に近づけるためのものであり、空燃比センサ56により検出される実際の空燃比と目標空燃比との比較に基づいて算出される。
【0050】
尚、この空燃比フィードバック補正係数FAFは、零(初期値)を中心として変動し、空燃比フィードバック補正係数FAFによって前記基本燃料噴射量(基本燃料噴射時間)TBを補正する必要がない場合(オープン制御状態)においては零に維持される。
【0051】
前記暖機増量補正係数kWは、冷間運転時に燃料噴射量(燃料噴射時間)を増量補正するためのものであり、前記暖機増量補正係数kWは、冷却水温度THWが高くなるに従ってより小さい値に設定され、設定温度以上になると、すなわち冷間運転時でなくなると(暖機完了後は)零に保持される。
【0052】
その他の補正係数kKは、始動時増量補正係数、加速時増量補正係数などをひとまとめにして表したものであり、始動時や加速状態でなく前記基本燃料噴射量(基本燃料噴射時間)TBを補正する必要がない場合には零に維持される。
【0053】
また、点火時期制御においては、機関負荷を表す前記基本燃料噴射量(基本燃料噴射時間)TB及び機関回転速度NEに基づいて点火時期の制御目標値(目標点火時期)を算出し、イグナイタ36を制御することにより前記目標点火時期において点火プラグ34による点火動作を行わせる。
【0054】
次に、電子制御装置61によるブローバイガス流量制御、換言すれば、前記流量制御バルブ44の開度(還元管路43bの開口面積)を制御する制御手段としての機能を、図2のフローチャートに従って詳細に説明する。
【0055】
尚、本実施形態において、前記流量制御バルブ44の開度によって還元管路43bの開口面積が変化し、流量制御バルブ44の開度の減少は、還元管路43bの開口面積の減少を示す。
【0056】
まず、ステップS100では、吸気管負圧の検出を行う。ここで、機関負荷を示す基本燃料噴射量(基本燃料噴射時間)TBと機関回転速度NEとから、吸気管負圧を推定することができ、また、スロットルバルブ21の下流の圧力を検出するブーストセンサを設け、該ブーストセンサで吸気管負圧を検出させることができる。
【0057】
ステップS200では、前記ステップS100で検出した吸気管負圧に基づいて、前記流量制御バルブ44の目標開度を算出する。
【0058】
図3に示すように、高負荷時ほど(吸気管負圧が小さいほど)ブローバイガスの発生量が多くなり、低負荷時ほど(吸気管負圧が大きいほど)ブローバイガスの発生量が少なくなるため、係る特性に合わせてブローバイガスと空気との混合ガスの流量を制御すべく、前記流量制御バルブ44の目標開度が設定される。
【0059】
ステップS300では、前記触媒温度センサ57からの出力信号に基づいて、触媒コンバータ26に内蔵される排気浄化触媒25の温度TCATを検出する。
【0060】
尚、温度検出手段として触媒温度センサ57を用いる代わりに、触媒温度TCATに相関する機関運転状態、例えば機関負荷及び機関回転速度NEに基づいて、前記電子制御装置61が触媒温度を推定する構成とすることができる。
【0061】
具体的には、機関負荷及び機関回転速度NEで区分される運転領域毎に触媒温度を設定したマップを予め記憶し、前記マップからそのときの機関負荷及び機関回転速度NEに対応する触媒温度を検索させることができる。
【0062】
また、排気浄化触媒25の下流側における排気温度を検出し、該排気温度から触媒温度TCATを推定することができる。
【0063】
上記のように、機関運転状態から触媒温度TCATを推定演算させる場合には、触媒温度TCATに相関する機関運転状態を検出するセンサ及び前記機関運転状態に基づき触媒温度を演算する電子制御装置61の演算機能が、温度検出手段に相当することになる。
【0064】
ステップS400では、前記ステップS300で検出した排気浄化触媒25の温度TCATが、設定温度T1よりも高いか否かを判断する。
【0065】
前記設定温度T1は、触媒温度TCATが排気浄化触媒25の熱劣化を生じさせるほどに高いか否かを判断するための閾値であり、例えば、排気浄化触媒25の耐熱温度(許容最高温度)や、耐熱温度よりも余裕分だけ低い温度に設定される。
【0066】
従って、触媒温度TCATが前記設定温度T1よりも高い場合には、排気浄化触媒25の熱劣化が生じるか又は熱劣化が生じる可能性が高い高温条件であるのに対し、触媒温度TCATが前記設定温度T1以下の場合には、排気浄化触媒25の熱劣化が発生することがないか又は熱劣化が発生する可能性が低いから、設定温度T1よりも高い状態を速やかに設定温度T1以下の状態に移行させることが、排気浄化触媒25の保護のために要求される。
【0067】
触媒温度TCATが設定温度T1よりも高い高温領域に含まれる場合にはステップS900へ進み、触媒温度TCATが設定温度T1以下の低温領域に含まれる場合には、ステップS500へ進む。
【0068】
ステップS500では、初期値が零に設定される流量補正フラグFの判別を行う。
【0069】
前記流量補正フラグFは、後述するように、触媒温度TCATが設定温度T1よりも高くなって、前記流量制御バルブ44の開度が補正された場合に、「1」に設定されるようになっており、触媒温度TCATが設定温度T1以下の状態が継続していれば、零を保持する。
【0070】
ステップS500で流量補正フラグFが零であると判断されると、ステップS800へ進み、流量制御バルブ44の開度が、前記ステップS200において吸気管負圧に基づいて算出した目標開度になるように、流量制御バルブ44の通電(デューティ制御信号)を制御する。
【0071】
一方、触媒温度TCATが設定温度T1以下の状態から温度上昇して、設定温度T1よりも高くなり、ステップS900へ進むと、ステップS200において吸気管負圧に基づいて演算した流量制御バルブ44の目標開度を減少補正するための補正係数(0<補正係数<1.0)を演算する。
【0072】
前記補正係数は予め記憶された一定値とすることができると共に、触媒温度TCATが設定温度T1よりも高いほどより小さい値(開度をより大きく減少補正する値)とすることができる。
【0073】
前記補正係数として一定値を用いる場合には、触媒温度TCATを設定温度T1以下に低下させるために要求される減少補正分を、予め実験或いはシミュレーションに基づいて求めておき、これを定数として記憶させておく。
【0074】
但し、前記補正係数によって目標開度を減少補正した結果、流量制御バルブ44を通過するガス流量が、そのときのブローバイガスの発生量を下回らないように制限し、ブローバイガスがクランクケース38内に蓄積されて内圧が上がることがないようにすることが好ましい。
【0075】
ステップS1000では、ステップS200で吸気管負圧に基づいて演算した目標開度に、前記補正係数を乗算することで、ステップS200で吸気管負圧に基づいて演算した目標開度をより小さい開度に減少補正する。
【0076】
上記ステップS300,ステップS400,ステップS900,ステップS1000の処理が、排気浄化触媒25の温度に基づいて流量制御バルブ44の開度を減少補正する補正手段に相当する。
【0077】
ここで、前記補正係数の乗算処理に代えて、目標開度から予め記憶された減少補正分だけ減算する処理を行わせ、触媒温度TCATが設定温度T1よりも高い状態が継続する場合には、前記減少補正分の減算処理を繰り返すことで、徐々に流量制御バルブ44の開度をより小さい開度に変化させることができる。
【0078】
ステップS1100では、前記流量補正フラグFに、流量制御バルブ44の目標開度の減少補正状態であることを示す「1」を設定する。
【0079】
そして、ステップS1200では、ステップS1000で補正した目標開度に基づいて、前記流量制御バルブ44の通電(制御デューティ信号)を制御する。
【0080】
前記流量制御バルブ44の開度を減少補正すると、この開度減少分だけブローバイガスと共に吸気系に吸入される空気量が減ることで、燃料噴射量に対する空気量が減り、機関11の燃焼室18に導入される混合気の空燃比を濃化(リッチ化)させることになる。
【0081】
尚、前記流量制御バルブ44の開度を減少補正する場合には、前記空燃比フィードバック補正係数FAFを零にクランプすることで、流量制御バルブ44の開度の減少補正によって濃化(リッチ化)した空燃比が目標空燃比に戻されることがないようにする。
【0082】
また、上記のように、流量制御バルブ44の開度の減少補正によって空燃比を濃化(リッチ化)させるので、触媒温度を抑制するための燃料噴射量の増量補正は行われないようにしてある。
【0083】
混合気の空燃比が濃化(リッチ化)すると、排気ガス中の未燃焼成分(HC)が増えることで、排気浄化触媒25の周囲が還元雰囲気となり、未燃焼成分(HC)の酸化反応が抑制されると共に、吸熱反応であるNOxの還元反応が促進され、触媒温度TCATが低下することになる。
【0084】
従って、触媒温度TCATが設定温度T1よりも高い場合に、流量制御バルブ44の開度を絞る(減少補正する)ことで、触媒温度TCATを減少変化させて設定温度T1以下にまで低下させることができ、これにより、触媒温度TCATが設定温度T1よりも高い状態を速やかに解消させて、排気浄化触媒25の熱劣化の発生を抑制することができる。
【0085】
燃料噴射弁33からの噴射量を増量補正することで空燃比を濃化(リッチ化)させ、触媒温度TCATの低下を図る場合には、燃料の消費量が増えてしまうが、ブローバイガス中の未燃ガスは、燃料噴射弁33から噴射させた燃料のうち燃焼されなかったものであるから、この未燃ガスの還元によって空燃比を濃化(リッチ化)させることは燃料の消費量を増やすことにならず、触媒温度TCATの低下を、燃料の消費量を増やすことなく実現できる。
【0086】
また、燃料噴射量を増量補正せずに、スロットル開度を絞ることで吸入空気量を減少させて空燃比を濃化(リッチ化)させ、これによって触媒温度TCATの低下を図る場合には、ポピングロスが増大し、内燃機関11の熱効率が低下させてしまうが、前記流量制御バルブ44の開度を絞る補正であれば、ポピングロスを増やすことはなく、熱効率の低下は抑制される。
【0087】
更に、前記流量制御バルブ44の開度を絞って、流量制御バルブ44の通過流量を減少させれば、ブローバイガスと共に吸気系に吸入されるオイル量も減り、燃焼状態が改善される結果、点火時期の進角補正が可能となる。
【0088】
従って、前記流量制御バルブ44の開度を絞る補正制御と共に、点火時期の進角補正によって排気温度を低下させる処理を行い、触媒温度TCATの低下をより促進させることができる。
【0089】
尚、前記流量制御バルブ44の開度を絞る補正制御によって、触媒温度TCATを設定温度T1以下に応答良く低下させることができない場合に、追加の処理として、点火時期の進角補正や燃料噴射量の増量を併用することができる。
【0090】
例えば、前記流量制御バルブ44の開度を絞る補正制御を開始してから所定時間が経過しても触媒温度TCATが設定温度T1以下にならなかった場合や、前記流量制御バルブ44の開度を絞る補正制御を開始した後の触媒温度TCATの減少速度が所定速度に達していない場合に、点火時期の進角補正及び/又は燃料噴射量の増量を開始させることができる。
【0091】
上記の燃料噴射量の増量補正は、前記流量制御バルブ44の開度を絞る補正制御による空燃比の濃化(リッチ化)による不足分を補うことになるので、燃料噴射量の増量補正のみで触媒温度の低下を図る場合に比べて、燃料消費量を節約することができる。
【0092】
前記流量制御バルブ44の開度を絞る補正制御によって、ステップS400で触媒温度TCATが設定温度T1以下にまで低下したと判断されるようになると、ステップS500へ進むが、前記ステップS1100で前記流量補正フラグFに「1」を設定されているので、ステップS500からステップS600に進むことになる。
【0093】
ステップS600では、触媒温度TCATが設定温度T2(<設定温度T1)以下に低下したか否かを判断する。
【0094】
そして、触媒温度TCATが設定温度T2よりも高い場合には、ステップS900へ進み、前記流量制御バルブ44の開度を絞る補正制御を継続させ、触媒温度TCATが設定温度T2以下になると、ステップS600からステップS700へ進んで、前記流量補正フラグFを零にリセットし、ステップS800に進む。
【0095】
ステップS700からステップS800に進んだ場合には、前記流量制御バルブ44の開度を絞る補正制御をキャンセルし、ステップS200で算出した目標開度に基づいて前記流量制御バルブ44を制御する。
【0096】
すなわち、触媒温度TCATが設定温度T1よりも高くなると、前記流量制御バルブ44の開度を絞る補正制御を開始し、該補正制御によって触媒温度TCATが設定温度T1以下になってもそのまま補正制御を継続させ、触媒温度TCATが設定温度T2以下になって初めて補正制御を停止させる。
【0097】
上記設定温度T1,T2によって補正制御の開始・停止を判断して、補正制御にヒステリシス特性を持たせることで、補正制御の開始・停止が繰り返されること(制御のハンチング)が抑制されるようにしてあり、設定温度T1と設定温度T2との差は、過剰な開度補正制御を回避しつつハンチングを防止できるように適合される。
【0098】
図4は、図2のフローチャートに示すブローバイガス流量制御ルーチンを実行した場合の触媒温度TCAT、流量制御バルブ44の開度、流量補正フラグFの変化を示すタイミングチャートである。
【0099】
図4において、時刻t1の時点では、触媒温度TCATは設定温度T1以下であるため、流量制御バルブ44の目標開度は減少補正されず、また、流量補正フラグFは零を保持する。
【0100】
一方、前記時刻t1から時刻t2に至るまでの間で、触媒温度TCATが上昇し、時刻t2の時点で、触媒温度TCATが設定温度T1よりも高いと判断されると、該判断に基づいて流量制御バルブ44の開度の減少補正が開始され、かつ、流量補正フラグFは1に設定される。
【0101】
前記流量制御バルブ44の開度の減少補正により、時刻t3の時点では、触媒温度TCATが設定温度T1以下にまで低下しているが、この時刻t3の時点では、補正制御はキャンセルされず、流量補正フラグFも「1」を保持する。
【0102】
そして、時刻t4で触媒温度TCATが設定温度T2(<設定温度T1)以下になったと判断されると、流量制御バルブ44の目標開度の減少補正がキャンセルされると共に、流量補正フラグFは零にリセットされ、その後、触媒温度TCATが設定温度T1よりも高くなるまでは、開度補正の停止状態及び流量補正フラグF=0の状態を保持する。
【0103】
尚、上記実施形態では、固定の設定温度T1と触媒温度TCATとの比較に基づいて、前記流量制御バルブ44の開度を絞る補正制御の開始を判断させるようにしたが、例えば、触媒温度TCATの上昇速度が速い場合には、設定温度T1をより低い温度に補正することで、より低い触媒温度TCATから前記補正制御を開始させることができる。
【0104】
上記構成とすれば、補正制御が実際の触媒温度TCATを変化させるまでの遅れ時間によって、触媒温度TCATが設定温度T1を大きく上回るようになることを抑制できる。
【0105】
また、触媒温度TCATが設定温度T1よりも高いと判断された場合に、流量制御バルブ44の開度を減少補正し、触媒温度TCATが設定温度T1以下であると判断された場合に、前記開度補正をキャンセルすることができる。
【符号の説明】
【0106】
11…内燃機関、13…シリンダブロック、14シリンダヘッド、18…燃焼室、19…吸気通路、24…排気通路、25…排気浄化触媒、26…触媒コンバータ、41…ブローバイガス還元装置(PCV装置)、43a…連通路、43b…還元管路、43c…空気導入管路、44…流量制御バルブ(PCVバルブ)、57…触媒温度センサ(温度検出手段)、61…電子制御装置(制御手段、補正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気系に排気浄化触媒が設けられる内燃機関において、ブローバイガスを、流量制御バルブが設けられる還元管路を介して吸気系に還元するブローバイガス還元装置であって、
前記流量制御バルブの開度を制御する制御手段と、
前記排気浄化触媒の温度を検出する温度検出手段と、を含み、
前記制御手段が、
前記温度検出手段で検出された前記排気浄化触媒の温度が所定温度よりも高い場合に、前記流量制御バルブの開度を減少補正する補正手段を含むことを特徴とするブローバイガス還元装置。
【請求項2】
前記所定温度が、前記排気浄化触媒の耐熱温度に設定される請求項1記載のブローバイガス還元装置。
【請求項3】
前記補正手段が、前記排気浄化触媒の温度が高いほど、前記流量制御バルブの開度をより大きく減少補正する請求項1又は2記載のブローバイガス還元装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−159721(P2010−159721A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3480(P2009−3480)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】