説明

プラズマエッチング方法

【課題】開口面積の広いガードリング(GR)や開口面積の小さいビアホール(Via)を同時に且つ均等深さにエッチングすることができるプラズマエッチング方法を提供する。
【解決手段】プラズマエッチング装置のサセプタ16に印加される第2の高周波電力を、ウエハWのLow−k膜又はフォトレジスト膜にデポが堆積する第1のパワーと、ウエハWのLow−k膜をエッチングする第2のパワーとの間でパワー変調させると共に、第2の高周波電力を変調する際のデューティー比(第2のパワー時間/1周期全体の時間)を25〜80%、好ましくは25〜50%としてウエハWのLow−k膜をエッチングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板等の被処理基板にプラズマエッチングを施すプラズマエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、被処理基板である半導体ウエハの所定の層に所定のパターンを形成するために、レジストをマスクとしてプラズマによってエッチングするプラズマエッチング処理が多用されている。
【0003】
このようなプラズマエッチングを行うためのプラズマエッチング装置のうち代表的なものとして、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置が挙げられる。容量結合型平行平板プラズマエッチング装置は、チャンバ内に一対の平行平板電極(上部及び下部)を配置し、処理ガスをチャンバ内に導入すると共に、電極の少なくとも一方に高周波電力を印加して電極間に高周波電界を形成し、この高周波電界によって処理ガスのプラズマを形成して半導体ウエハの処理対象膜にプラズマエッチングを施すものである。
【0004】
容量結合型平行平板プラズマエッチング装置を用いてビアホールやコンタクトホール等のエッチングを行う場合には、ホールサイズの大小によってエッチングレート(ER)が異なるマイクロローディング効果が生じるという問題があり、エッチング深さをコントロールすることは困難である。特に、ガードリング(GR)のような大きな開口面積部分ではエッチングレートが大きくなり、例えばCF系ラジカルが入りにくい小さいビアホールではエッチングレート(ER)が小さくなる。
【0005】
このようなマイクロローディング効果によって、開口面積の大きい部分と小さい部分におけるエッチングレートの差に起因してエッチング深さにばらつきが生じているのが現状であり、低圧条件で処理することによってエッチング深さのばらつきが低減される方向にはあるものの、未だばらつきを解消するまでには至っておらず、エッチング深さのばらつきの影響が、例えば次工程にも持ち越され、電気特性にもばらつきが生じるという問題がある。
【0006】
このようなマイクロローディング効果に起因する問題を解消するための従来技術が開示された公知文献として、例えば特許文献1が挙げられる。特許文献1には、被処理基板を支持する下部電極にバイアス用高周波電力を印加する高周波電力源を備えたプラズマエッチング装置において、被処理基板の所定膜にデポが堆積する第1のパワーと、所定膜をエッチングする第2のパワーとの間で周期的に高周波電力を変調する変調モードを有するプラズマエッチング方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/044633号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術は、バイアス用高周波電力をパルス的に印加するものであり、ビアホール(Via)のエッチングレート(ER)をガードリング(GR)のエッチングレート(ER)に近づけることはできるが、最終的なエッチング量は、ガードリング(GR)の方が大きくなる。すなわち、開口面積の広いガードリング(GR)と開口面積の小さいビアホール(Via)を、処理対象膜に対して均等にエッチングすることは困難であるという問題は未解決のままである。
【0009】
本発明の目的は、処理対象膜に、開口面積の広いガードリング(GR)や開口面積の小さいビアホール(Via)を均等深さに、且つ同時にエッチングすることができるプラズマエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載のプラズマエッチング方法は、真空排気可能な処理容器と、該処理容器内に設けられた第1電極と、前記第1電極に対向配置された被処理基板を載置する第2電極と、前記第1電極又は前記第2電極に励起用の第1の高周波電力を印加する第1の高周波電源と、前記第2電極にバイアス用の第2の高周波電力を印加する第2の高周波電源と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給源とを有するプラズマエッチング装置を用い、前記第1電極及び前記第2電極間に前記処理ガスのプラズマを生成して被処理基板の処理対象膜をエッチングするプラズマエッチング方法において、前記第2の高周波電力を、前記被処理基板の処理対象膜にデポが堆積する第1のパワーと、前記被処理基板の前記処理対象膜をエッチングする第2のパワーとの間で変調すると共に、前記第2の高周波電力を変調する際のデューティー比(第2のパワー時間/1周期全体の時間)を25〜80%とすることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載のプラズマエッチング方法は、請求項1記載のプラズマエッチング方法において、前記デューティー比を25〜50%とすることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載のプラズマエッチング方法は、請求項1又は2記載のプラズマエッチング方法において、前記処理対象膜は、k値が2.2乃至2.9のLow−k膜であることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載のプラズマエッチング方法は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法において、前記処理ガスは、CFガス及びCHFガスを含む混合ガスであることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載のプラズマエッチング方法は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法において、前記処理ガスは、Cガス及びCOガスを含む混合ガスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載のプラズマエッチング方法によれば、第2の高周波電力を、被処理基板の処理対象膜にデポが堆積する第1のパワー(Lowパワー)と、被処理基板の処理対象膜をエッチングする第2のパワー(Hiパワー)との間で変調すると共に、第2の高周波電力を変調する際のデューティー比(第2のパワー時間/1周期全体の時間)を25〜80%としたので、開口面積の広いガードリング(GR)及び開口面積の小さいビアホール(Via)を同時に且つ均等深さにエッチングすることができる。
【0016】
請求項2記載のプラズマエッチング方法によれば、デューティー比を25〜50%としたので、ビアホールのERに対するGRのERの比であるローディング値が「1」又はその近傍の値となり、これによって、ビアホールとGRをより均等にエッチングすることができる。
【0017】
請求項3記載のプラズマエッチング方法によれば、処理対象膜を、k値が2.2乃至2.9のLow−k膜としたので、大部分のLow−k膜において、均等エッチング効果が得られる。
【0018】
請求項4記載のプラズマエッチング方法によれば、処理ガスを、CFガス及びCHFガスを含む混合ガスとしたので、過剰なデポの堆積を抑制してビアホールとGRを同時に均等にエッチングすることができる。
【0019】
請求項5記載のプラズマエッチング方法によれば、処理ガスを、Cガス及びCOガスを含む混合ガスとしたので、過剰なデポの堆積を抑制してビアホールとGRを同時に均等にエッチングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係るプラズマエッチング方法が実行されるプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
【図2】図1のプラズマエッチング装置においてプラズマ処理が施される半導体ウエハの構成を概略的に示す断面図である。
【図3】デポが堆積する第1のパワー(Lowパワー)と、エッチングを行う第2のパワー(Hiパワー)とのパワー変調を模式的に示した図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るプラズマエッチング方法におけるエッチング処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるデューティー比とローディング値の関係を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態におけるデューティー比とローディング値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、被処理基板にイオンを引き込むバイアス用高周波電力をパルス的に印加すると共に、パルスデューティー(Pluse duty)を積極的に変更させることによって、ビアホールのERに対するGRのERの比であるローディング(loading)値をコントロールして、ビアホールのER>GRのERという関係を作り出し、これによって、ビアホールとGRが混在するような被処理基板容易に形成するものである。また、ローディング値をコントロールして、エッチング深さを制御することができるので、ビアホールとGRとでエッチング深さを逆転させることもできる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係るプラズマエッチング方法が実行されるプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
【0024】
このプラズマエッチング装置は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置であり、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる円筒状のチャンバ(処理容器)10を有している。チャンバ10は保安接地されている。チャンバ10の底部には、セラミックスからなる絶縁板12を介して円柱状のサセプタ支持台14が配置され、サセプタ支持台14の上に例えばアルミニウムからなるサセプタ16が設けられている。サセプタ16は下部電極板を構成し、その上に被処理基板であるウエハWが載置される。
【0025】
サセプタ16の上面には、ウエハWを静電力で吸着保持する静電チャック18が設けられている。静電チャック18は、導電膜からなる電極20を一対の絶縁層で挟んだ構造を有するものであり、電極20には直流電源22が電気的に接続されている。直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力によりウエハWが静電チャック18に吸着保持される。
【0026】
静電チャック18の周囲でサセプタ16の上面には、エッチングの均一性を向上させるためのフォーカスリング24が配置されている。フォーカスリング24は、例えば導電性のシリコンからなる。サセプタ16及びサセプタ支持台14の側面には、例えば石英からなる円筒状の内壁部材26が設けられている。
【0027】
サセプタ支持台14の内部には、例えば円周上に冷媒室28が設けられている。冷媒室28には、外部に設けられた図示しないチラーユニットから配管30a、30bを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給され、これによってサセプタ16上のエウハWの処理温度が制御される。また、図示しない伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスがガス供給ライン32を介して静電チャック18の上面とウエハWの裏面との間に供給される。
【0028】
下部電極であるサセプタ16の上方には、サセプタ16と対向するように平行に上部電極34が設けられている。上部電極34及び下部電極16間の空間がプラズマ生成空間となる。上部電極34は、絶縁性遮蔽部材42を介してチャンバ10の上部に支持されており、サセプタ16との対向面を構成し、かつ多数の吐出孔37を有する電極板36と、電極板36を着脱自在に支持し、導電性材料からなる水冷構造の電極支持体38とで構成されている。電極板36は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体又は半導体であることが好ましく、例えばシリコン又はSiCで構成される。電極支持体38の内部には、ガス拡散室40が設けられ、ガス拡散室40からは吐出孔37に連通する多数のガス流通孔41が下方に延びている。
【0029】
電極支持体38には、ガス拡散室40へ処理ガスを導くガス導入口62が設けられており、ガス導入口62にはガス供給管64が接続され、ガス供給管64には処理ガス供給源66が接続されている。ガス供給管64には、上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)68及び開閉バルブ70が設けられている。処理ガス供給源66からエッチング用の処理ガスとして、例えばCガスが払い出され、ガス供給管64を経てガス拡散室40に至り、ガス流通孔41及びガス吐出孔37を介してプラズマ生成空間に吐出される。上部電極34は処理ガスを供給するためのシャワーヘッドとして機能する。
【0030】
上部電極34には、可変直流電源50が電気的に接続されている。可変直流電源50は、ローパスフィルタ46aを介して上部電極34に接続されており、オン・オフスイッチ52により給電のオン・オフが可能となっている。可変直流電源50及びオン・オフスイッチ52はコントローラ51によって制御される。
【0031】
チャンバ10の側壁から上部電極34の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状の接地導体10aが設けられている。
【0032】
下部電極であるサセプタ16には、第1の整合器89を介して第1の高周波電源48が電気的に接続されている。第1の高周波電源48は、例えば60MHzの高周波を出力する。サセプタ16には、また、第2の整合器88を介して第2の高周波電源90が電気的に接続されている。第2の高周波電源90からサセプタ16に高周波電力が印加されることにより、ウエハWにバイアス電力が印加され、ウエハWにイオンが引き込まれる。第2の高周波電源90は、例えば2MHzの高周波電力を出力する。第1の高周波電源48、第1の整合器89、第2の高周波電源90及び第2の整合器88は、それぞれRF制御器95に接続されている。
【0033】
RF制御器95は、第2の高周波電源90からの高周波電力が、ウエハWの処理対象膜にデポが堆積する第1のパワー(Lowパワー)と、ウエハWの処理対象膜のエッチングが進行する第2のパワー(Hiパワー)との間で所定周期で変調するようにパワー制御を行う。RF制御器95は、また、第1の高周波電源48、第1の整合器89及び第2の整合器88を制御する。
【0034】
本実施の形態の場合、第2の高周波電源90は、高周波電力が所定周期で変調されるパワー変調モードで動作するため、このパワー変調モードの際に、RF制御器95が、第2の整合器88における整合動作を高周波電力の変調に同期させて切り換えるように制御する。
【0035】
チャンバ10の底部には排気口80が設けられており、排気口80に排気管82を介して排気装置84が接続されている。排気装置84は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内を所望の真空度まで減圧可能となっている。チャンバ10の側壁にはウエハWの搬入出口85が設けられており、搬入出口85はゲートバルブ86により開閉可能となっている。チャンバ10の底部側壁と内部部材26との間には、排気プレート83が設けられている。
【0036】
プラズマエッチング装置の各構成部材は、制御部100に接続されて制御される構成となっている。また、制御部100には、工程管理者がプラズマエッチング装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うユーザーインターフェース101が接続されている。さらに、制御部100には、プラズマエッチング装置で実行される各種処理を制御部100の制御によって実現するための制御プログラムや処理条件に応じてプラズマエッチング装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムが格納された記憶部102が接続されている。そして、必要に応じてユーザーインターフェース101からの指示によって任意のレシピを記憶部102から呼び出して制御部100に実行させることで、制御部100の制御下、プラズマエッチング装置で所望の処理が行われる。
【0037】
以下、このような構成のプラズマエッチング装置を用いた被処理基板であるウエハWのエッチング方法について説明する。
【0038】
図2は、図1のプラズマエッチング装置においてプラズマ処理が施されるウエハWの構成を概略的に示す断面図である。
【0039】
図2において、ウエハWは、下地層201と、該下地層201上に形成された銅膜202と、該銅膜202上に積層されたLow−k膜203と、該Low−k膜203上に積層されたフォトレジスト膜204とから主として構成されている。
【0040】
このような構成のウエハWにおいて、フォトレジスト膜204をマスクとしてLow−k膜203に開口面積の小さいビアホール205と、開口面積の大きいガードリング(GR)206をエッチングする際、マイクロローディング効果により、開口面積の小さいビアホール205にはラジカルが入りにくくエッチング速度が遅くなる。一方、開口面積の大きいGR206ではエッチング速度が速くなる傾向がある。
【0041】
そこで、本実施の形態においては、プラズマエッチング装置におけるバイアス用の高周波電力を、Low−k膜203又はその上のフォトレジスト膜204にデポが堆積する第1のパワー(Lowパワー)と、Low−k膜203をエッチングする第2のパワー(Hiパワー)との間で所定周期で変調すると共に、バイアス用高周波電力を変調する際のデューティー比(第2のパワー時間/1周期全体の時間(第1のパワー時間+第2のパワー時間))を、例えば25〜80%、好ましくは25〜50%に制御し、これによって、ビアホール205のERに対するGR206のERの比であるローディング値を「1」又はその近傍に調整してビアホール205とGR206が均等にエッチングされるようにする。
【0042】
図3は、デポが堆積する第1のパワー(Lowパワー)と、エッチングを行う第2のパワー(Hiパワー)との変調を模式的に示した図である。本実施の形態においては、図3のようにバイアス電力をパルス的に変調してウエハWのLow−k膜203にエッチングを施す。
【0043】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係るプラズマエッチング方法におけるエッチング処理を示すフローチャートである。
【0044】
ウエハWをエッチングする際は、まず、図1のプラズマエッチング装置のゲートバルブ86を開状態とし、搬入出口85を介してLow−k膜203を有する図2のウエハWをチャンバ10内に搬入し、サセプタ16上に載置し、固定する(ステップS1)。なお、Low−k膜203におけるK値は、2.5である。
【0045】
次いで、チャンバ10内の圧力を排気装置84等によって例えば50mToor(6.65Pa)に設定する(ステップS2)と共に、ウエハWの上部温度を例えば60℃、下部温度を20℃に設定する(ステップS3)。そして、上部電極34のガス拡散室40から、処理ガスとして、例えばCFガス(20sccm)、CHFガス(40sccm)、Arガス(1000sccm)及びNガス(150sccm)を混合した混合ガスをチャンバ10へ導入する(ステップS4)。
【0046】
そして、チャンバ10内に処理ガスを導入した状態で、第1の高周波電源48から励起用の高周波電力をサセプタ16に印加すると共に、第2の高周波電源90からからバイアス用の高周波電力をサセプタ16に印加する。このとき、バイアス用の高周波電力として第1のパワー、例えば100Wと、第2のパワー、例えば2800Wを、デューティー比を例えば50%、パルスを15Hzとして印加し(ステップS5)、Low−k膜203上にデポが堆積する第1のパワーと、CFガス、CHFガス、Arガス及びNガスが処理空間に印加された高周波電力によって励起されたプラズマよってLow−k膜203がエッチングされる第2のパワーとの間で周期的にバイアス用高周波電力を変調する(ステップS6)。これによって、ビアホール(Via)のERとガードリング(GR)のエッチングレート(ER)がほぼ等しくなり、Low−k膜203にビアホール205とGR206を均等に形成して本処理を終了する。
【0047】
本実施の形態においては、ガードリング(GR)のエッチングレート(ER)とビアホール(Via)のERがほぼ等しくなってローディング(GRのER/ViaのER)が「1」に近づくので、良好な形状のビアホール205及びGR206を同時に形成することができる。なお、パワー変調モードは、制御部100の指令によりRF制御器95が第2の高周波電源90を所定の周期で第1モードと第2モードとに切り替えることによって調整される。
【0048】
本実施の形態によれば、プラズマエッチング装置におけるバイアス用の高周波電力を、Low−k膜203又はその上のフォトレジスト膜204にデポが堆積する第1のパワー(例えば100W)と、Low−k膜203をエッチングする第2のパワー(例えば2800W)との間で変調すると共に、バイアス用高周波電力を変調する際のデューティー比(第2のパワー時間/1周期全体の時間)を、例えば50%に設定したので、ビアホール205のERに対するGR206のERの比(GRのER/ビアのER)が「1」近傍の値になる。従って、垂直加工形状が良好で、同様のエッチング深さを有するビアホール205及びGR206を同時に形成することができる。また、次工程におけるマージンが拡がる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、処理ガスとして、CFガス及びCHFガスを含む混合ガスを用いたので、必要以上のデポの堆積によるホール形状、GR形状の悪化を防止することができる。すなわち、CFガス及びCHFガスを含む混合ガスは、いわゆるデポガスではなく、不必要なデポの堆積を抑制する一方、必要量のデポを堆積させ、デポ量とエッチング量をバランスさせつつ、ビアホール205又はGR206を形成することができる。従って、ビアホール205又はGR206の開口部分が拡大されて断面がテーパ状になることもない。なお、従来から汎用されていたC/Ar/N系の処理ガスは、デポ堆積量が非常に多く、ビアホール形状におけるCDが拡がって、ボトム部分が短くなる等の問題があったが、本実施の形態で適用した混合ガス系では、そのような問題は解消される。
【0050】
また、本実施の形態によれば、1周期に対する第2パワーの印加時間であるデューティー比を制御するだけで、ビアホール205等のエッチング深さを制御できるので、従来技術で必要であったオーバーエッチング防止用のストップレイヤーを用いる必要がなく、エッチング深さを任意に調整することができる。
【0051】
本実施の形態において、ビアホール205とGR206とのERが等しくなる理由としては、以下のように考えられる。
【0052】
すなわち、開口面積が小さいビアホールと開口面積が大きいGRとを同時にエッチングしようとすると、GRのERが大きくなってエッチングデプスも大きくなる。これに対して、(1)デポ量がそれ程大きくなくてエッチングのための必要量のイオンを確保することができる処理ガスを選定し、且つ、(2)バイアス電力としてデポを積極的に堆積させる第1のパワーと、エッチングを積極的に行う第2のパワーとにおけるデューティー比を調整することにより、その相乗作用によって、開口面積の広いGR部分に比較的多くのデポを堆積させつつビアホール部分よりも比較的大きい速度でエッチングすると共に、開口面積が小さいビアホール部分に比較的少ないデポを堆積させながらGR部分よりも比較的小さい速度でエッチングすることができ、これによって、GR部分におけるデポ量の堆積と選択比の向上によるエッチング速度とがバランスし、且つビアホール部分におけるデポ量の堆積と選択比の向上によるエッチング速度との関係がバランスして、ビアホール部分のERに対するGR部分のERの比が「1」又はその近傍になるものと考える。なお、特に、GR部分においては、堆積したデポを削りながらエッチングするイメージと考える。
【0053】
本実施の形態において、処理対象膜は、Low−k膜であり、Low−k膜203におけるk値は、2.2〜2.9であることが好ましい。すなわち、現在知られている大部分のLow−k膜を対象とすることができる。
【0054】
次に、デューティー比を、25%〜100%の範囲で変更させた以外は、上記実施の形態と同様の条件で同様に処理し、デューティー比に対応するローディング値を求めた。結果を図5に示す。
【0055】
図5は、第1の実施の形態におけるデューティー比とローディング値との関係を示す図である。
【0056】
図5において、デューティー比が45乃至50%以下のときローディング値が「1」以下になっており、GRよりもビアホールのエッチングレートが大きくなることが分かる。また、デューティー比の増加に伴ってローディング値は大きくなるが、デューティー比が約80%以下であれば、ローディング値は概略「1」±10%の範囲内であり、実用可能条件であると考えられる。但し、GRとビアホールとのER差を限りなく「0」に近づけるか、又は必要に応じて逆転させ、これによってGRとビアホールとのエッチング深さを調整するためには、デューティー比を25〜50%に調整することが好ましい。なお、センター部分とエッジ部分のローディング値に差が認められるが、この差は10%程度であるので、許容範囲と考える。
【0057】
本実施の形態における第1パワーと第2パワーの変調パルスは、10〜30Hzであることが好ましい。
【0058】
本実施の形態においては、サセプタ16に励起用の高周波電力とバイアス用の高周波電力を印加する、いわゆる下部2周波型のプラズマエッチング装置を用いたが、本発明は、サセプタ16と対向配置された上部電極34に励起用の高周波電力を印加する、いわゆる上下2周波型のプラズマエッチング装置に適用することもできる。
【0059】
次に、反応ガスを、Cガス(6sccm)、Nガス(30sccm)及びCOガス(90sccm)の混合ガスとした以外は、第1の実施の形態と同様にしてデューティー比とローディング値との関係を求めた。結果を図6に示す。
【0060】
図6は、本発明の第2の実施の形態におけるデューティー比とローディング値との関係を示す図である。
【0061】
図6において、デューティー比が50%以下のときローディング値が「1」以下になっており、GRよりもビアホールのエッチングレートが大きくなることが分かる。また、デューティー比の増加に伴ってローディング値は大きくなるが、デューティー比が約65%以下であればローディング値が概略「1」±10%以下となっており、GRとビアホールとのER差はそれほど大きくないので、実用可能な条件と考えられる。但し、GRとビアホールとのER差を限りなく「0」に近づけるか、又は逆転させ流必要がある場合は、デューティー比を50%以下にすることが好ましい。
【0062】
ガス、Nガス及びCOガスの混合ガスは、いわゆるデポガスではなく、不必要なデポの堆積を抑制する一方、必要量のデポを堆積させてデポ量とエッチング量をバランスさせつつ、ビアホール又はGRを形成することができる。従って、ビアホール形状、GR形状に歪み等がなく良好なものとなる。また、ビアホール等のCDが必要以上に拡大することもない。
【0063】
上述した各実施の形態において、プラズマ処理が施される基板は半導体デバイス用のウエハに限られず、LCD(Liquid Crystal Display)等を含むFPD(Flat Panel Display)等に用いる各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等であってもよい。
【0064】
また、本発明の目的は、上述した各実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても達成される。
【0065】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した各実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0066】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。または、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
【0067】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述した各実施の形態の機能が実現されるだけではなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0068】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その拡張機能を拡張ボードや拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【符号の説明】
【0069】
10 チャンバ
16 サセプタ
18 静電チャック
48 第1の高周波電源
66 処理ガス供給源
90 第2の高周波電源
201 下地層
203 Low−k膜
204 フォトレジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気可能な処理容器と、
該処理容器内に設けられた第1電極と、
前記第1電極に対向配置された被処理基板を載置する第2電極と、
前記第1電極又は前記第2電極に励起用の第1の高周波電力を印加する第1の高周波電源と、
前記第2電極にバイアス用の第2の高周波電力を印加する第2の高周波電源と、
前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給源とを有するプラズマエッチング装置を用い、前記第1電極及び前記第2電極間に前記処理ガスのプラズマを生成して被処理基板の処理対象膜をエッチングするプラズマエッチング方法において、
前記第2の高周波電力を、前記被処理基板の処理対象膜にデポが堆積する第1のパワーと、前記被処理基板の前記処理対象膜をエッチングする第2のパワーとの間で変調すると共に、前記第2の高周波電力を変調する際のデューティー比(第2のパワー時間/1周期全体の時間)を25〜80%とすることを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項2】
前記デューティー比を25〜50%とすることを特徴とする請求項1記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記処理対象膜は、K値が2.2乃至2.9のLow−k膜であることを特徴とする請求項1又は2記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
前記処理ガスは、CFガス及びCHFガスを含む混合ガスであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項5】
前記処理ガスは、Cガス及びCOガスを含む混合ガスであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−161156(P2010−161156A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1689(P2009−1689)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】