説明

プラズマ処理装置

【課題】マイクロ波放電に用いたマイクロ波のRF給電ラインへの漏洩をライン途中で効果的に遮断してマイクロ波漏洩障害を確実に防止する。
【解決手段】このマイクロ波プラズマ処理装置において、サセプタ12にRFバイアス用の高周波を印加するための給電棒34は、その上端がサセプタ12の下面中心部に接続され、その下端がマッチングユニット32内の整合器の高周波出力端子に接続されている。また、チャンバ10の底面とマッチングユニット32との間には、同軸線路36を形成するために、給電棒34を内部導体としてその周りを囲む円筒状の外部導体38が設けられている。同軸線路36には、チャンバ10内のプラズマ生成空間から線路内に入ってきた不所望なマイクロ波の空間伝播を遮断するためのチョーク機構40が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマプロセスにマイクロ波を利用するプラズマ処理装置に係り、特に処理容器内で被処理基板を保持する電極にRFバイアス用の高周波を印加するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶ディスプレイ等を製造するためのプラズマプロセスにおいては、真空の処理容器内で処理ガスを放電または電離させるために、高周波やマイクロ波が使用される。高周波放電方式は、処理容器内に一対の電極を適当なギャップを隔てて平行に配置し、一方の電極を接地して他方の電極にプラズマ生成用の高周波を印加する容量結合形が主流になっている。しかしながら、高周波放電方式は、低圧下で高密度のプラズマを生成するのが難しいうえ、電子温度が高いために基板表面の素子にダメージを与えやすいなどの問題を有している。その点、マイクロ波放電方式は、低圧下で電子温度の低い高密度のプラズマを生成できるという利点がある。特に、平板状の表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)は、広い圧力範囲で大口径プラズマを効率的に生成できるうえ、磁場を必要としないためプラズマ処理装置の簡略化をはかれるという長所を有している。
【0003】
マイクロ波放電方式のプラズマ処理装置、特にプラズマエッチング装置においては、処理容器内の比較的低い位置にRF電極を配置してその上に被処理基板たとえば半導体ウエハを固定し、RF電極の上方でマイクロ波放電によりプラズマを生成してプラズマ中の反応性ラジカルにウエハの被加工面(上面)を晒すとともに、RF電極にブロッキングコンデンサを介してRFバイアス用の高周波を印加して、RF電極に生じる自己バイアス電圧によりプラズマ中のイオンをウエハの被加工面に引き込むようにしている。(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2005/045913
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来より、RF電極にRFバイアス用の高周波を印加するためのRF給電ラインには、伝送効率の高い同軸構造の給電棒が多用されている。その場合、給電棒は整合器からRF電極までのRF給電ラインに設けられ、給電棒(内部導体)を囲んで帰線または接地ラインを構成する円筒状の外部導体が整合器から処理容器までの伝送区間に設けられる。給電棒と外部導体との間の空間は、誘電体を詰めてもよいが、通常は空気で満たされる。一方で、RF電極は、接地電位の処理容器に絶縁性の支持部材を介して電気的に浮いた状態で取り付けられる。
【0006】
かかる装置構造においては、マイクロ波放電のために処理容器内に導入されたマイクロ波が、RF電極上方のプラズマ生成空間から基板支持部材(絶縁体)を通り抜けて、RF給電ラインの同軸線路に入ってくることがある。この同軸線路に入ったマイクロ波は、給電棒の表面を流れるRF高周波とは逆方向に給電棒と外部導体との間の空間を伝播して、整合器の中に入り込む。整合器内にマイクロ波が入り込むと、RF制御部にはそれがノイズとなって、たとえばオートマッチングが誤動作したり、あるいは整合器の開口部(たとえば冷却ファン)からマイクロ波が外へ漏れて電波雑音の原因になることがある。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術における問題点を解決するものであり、マイクロ波放電に用いたマイクロ波のRF給電ラインへの漏洩をライン途中で効果的に遮断してマイクロ波漏洩障害を確実に防止するようにしたプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプラズマ処理装置は、真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記処理ガスのプラズマを生成するためのマイクロ波を前記処理容器内に供給するマイクロ波供給部と、前記処理容器内で前記プラズマに晒されるように被処理基板を保持する電極と、前記電極に円柱状または円筒状の給電棒を介してRFバイアス用の高周波を印加する高周波電源と、前記給電棒の回りを囲む円筒状の外部導体と、前記給電棒と前記外部導体との間に前記マイクロ波の空間伝播を遮断するために設けられるチョーク機構とを有する。
【0009】
上記の装置構成においては、真空の処理容器内に処理ガス供給部より所定の処理ガスが導入されると同時に、マイクロ波供給部よりマイクロ波が導入され、マイクロ波のパワーによって処理ガスの粒子が放電(電離)して、プラズマが生成され、このプラズマの下で電極上の基板にエッチング、成膜、スパッタリング、酸化等の微細加工が施される。このプラズマ処理の際、特にプラズマ着火の直前に処理容器内で消費(吸収)されなかったプラズマの一部が同軸構造の給電棒の線路つまり高周波給電用の同軸線路内に入ってくることがある。しかし、チョーク機構が同軸線路の途中でマイクロ波を遮断してそれより先に伝播させないので、マイクロ波の漏洩障害を防止することができる。
【0010】
本発明におけるチョーク機構は、好適な基本構成として、給電棒の外周面と外部導体の内周面との距離間隔よりも狭いギャップ幅で給電棒の軸方向と平行に延びて円筒状に形成され、1/4波長の線路長を有する第1の導波路と、電極側から見て第1の導波路の終端に接続され、1/4波長の線路長を有し、かつ短絡終端する第2の導波路とを有する。かかる構成においては、1/4波長線路の性質を利用して、第1の導波路の始端または入口を短絡状態にし、つまり実質的に導体壁で塞いだのと同じにして、マイクロ波の伝播を効果的に阻止することができる。
【0011】
本発明のチョーク機構は、好適な一態様として、給電棒の軸方向と平行に延びて、その外周面と外部導体の内周面との間に第1の導波路を円筒状に形成するとともに、その内周面と給電棒の外周面との間に第2の導波路を円筒状に形成する第1の円筒状導体部と、給電棒から軸方向と直交する半径方向に延びて第1の円筒状導体部の前端に接続し、第2の導波路の終端を短絡させる第1の環状導体部と、給電棒から軸方向と直交する半径方向に延びて第1の円筒状導体部の後端との間および外部導体の内周面との間にそれぞれ第1および第2隙間を形成し、第1の隙間にて第1の導波路の終端と第2の導波路の始端とを接続させる第2の環状導体部とを有する。
【0012】
また、本発明の好適な一態様によれば、高周波電源と電極との間に整合器が電気的に挿入される。ここで、給電棒は、一端が整合器の第1の出力端子に接続され、他端が電極に接続される。そして、外部導体は、一端が整合器の第2の出力端子に接続され、他端が処理容器に接続される。この場合、高周波給電の同軸線路に入ってきたマイクロ波はチョーク機構で遮断されるので、整合器まで伝播してくることはなく、整合器の誤動作や整合器から外部へマイクロ波が漏れることもない。
【0013】
本発明の好適な一態様によれば、外部導体は処理容器と一緒にグランド電位に接続される。好ましくは、マイクロ波供給部は、処理容器の周囲または近傍に設けられたアンテナを有し、処理容器内にマイクロ波を導入するための誘電体からなる窓を有する。また、処理容器内に所定の磁場を形成するための磁場形成機構を処理容器の周囲または近傍に設ける構成も可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のプラズマ処理装置によれば、上記のような構成および作用により、マイクロ波放電に用いたマイクロ波がRF給電ラインに入ってきてもライン途中でチョーク機構が効果的に遮断するので、マイクロ波漏洩障害を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態におけるマイクロ波プラズマ処理装置の構成を示す図である。
【図2】図1のマイクロ波プラズマ処理装置に設けられるチョーク機構の一実施例の構成を示す縦断面図である。
【図3】図1のマイクロ波プラズマ処理装置に設けられるチョーク機構のフィルタ特性を示す図である。
【図4】別の実施例におけるチョーク機構の構成を示す図である。
【図5】別の実施例におけるチョーク機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態におけるマイクロ波プラズマエッチング装置の構成を示す。このマイクロ波プラズマエッチング装置は、磁場を必要としない平板状SWP型プラズマ処理装置として構成されており、たとえばアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属製の円筒型真空チャンバ(処理容器)10を有している。チャンバ10は保安接地されている。
【0018】
先ず、このマイクロ波プラズマエッチング装置においてプラズマ生成に関係しない各部の構成を説明する。
【0019】
チャンバ10内の下部中央には、被処理基板としてたとえば半導体ウエハWを載置する円板状のサセプタ12が高周波電極を兼ねる基板保持台として水平に配置されている。このサセプタ12は、たとえばアルミニウムからなり、チャンバ10の底から垂直上方に延びる絶縁性の筒状支持部14に支持されている。
【0020】
筒状支持部14の外周に沿ってチャンバ10の底から垂直上方に延びる導電性の筒状支持部16とチャンバ10の内壁との間に環状の排気路18が形成され、この排気路18の上部または入口に環状のバッフル板20が取り付けられるとともに、底部に1つまたは複数の排気ポート22が設けられている。排気ポート22にはAPC機能付きの可変排気バルブ24を介して真空ポンプ26が接続されている。真空ポンプ26は、たとえばターボ分子ポンプ等を含み、チャンバ10内のプラズマ処理空間を所望の真空度まで減圧することができる。チャンバ10の側壁の外には、半導体ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ28が取り付けられている。
【0021】
サセプタ12には、RFバイアス用の高周波電源30がマッチングユニット32および給電棒34を介して電気的に接続されている。高周波電源30は、半導体ウエハWに引き込むイオンのエネルギーを制御するのに適した比較的低い周波数たとえば13.56MHzの高周波を出力する。マッチングユニット32は、高周波電源30側のインピーダンスと負荷(主に電極、プラズマ、チャンバ)側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合器を収容しており、この整合器の中に自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。また、マッチングユニット32には、整合器(整合回路)の他にも、負荷インピーダンスを測定するためのRFセンサや、整合器内の可変リアクタンス素子の値(インピーダンス・ボジション)を可変調整するためのコントローラおよびステップモータ、さらには冷却用のファン等が設けられている。
【0022】
給電棒34は、所定の外径を有する円柱状または円筒状の導体からなり、その上端がサセプタ12の下面中心部に接続され、その下端がマッチングユニット32内の上記整合器の高周波出力端子に接続されている。また、チャンバ10の底面とマッチングユニット32との間には、同軸線路36を形成するために、給電棒34を内部導体としてその周りを囲む円筒状の外部導体38が設けられている。より詳細には、チャンバ10の底面(下面)に給電棒36の外径よりも一回り大きな所定の口径を有する円形の開口部が形成され、外部導体38の上端部がこの開口部に接続されるとともに、外部導体38の下端部が上記整合器の接地(帰線)端子に接続されている。
【0023】
この同軸線路36には、線路内に入ってきた不所望なマイクロ波の空間伝播を遮断するためのチョーク機構40が設けられている。このチョーク機構40の構成および作用は、後に詳細に説明する。
【0024】
サセプタ12の上面には、半導体ウエハWを静電気力で保持するための静電チャック42が設けられ、この静電チャック42の半径方向外側に半導体ウエハWの周囲を環状に囲むフォーカスリング44が設けられている。静電チャック42は導電膜からなる電極42aを2層の絶縁膜42b,42cの間に挟み込んだものであり、電極42aには直流電源46がスイッチ48を介して電気的に接続されている。直流電源46より印加される直流電圧により、クーロン力で半導体ウエハWを静電チャック42上に吸着保持することができる。
【0025】
サセプタ12の内部には、たとえば円周方向に延びる環状の冷媒室50が設けられている。この冷媒室50には、チラーユニット(図示せず)より配管52,54を介して所定温度の冷媒たとえば冷却水が循環供給される。冷媒の温度によって静電チャック42上の半導体ウエハWの処理温度を制御できる。さらに、伝熱ガス供給部(図示せず)からの伝熱ガスたとえばHeガスが、ガス供給管56を介して静電チャック42の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。また、半導体ウエハWのローディング/アンローディングのためにサセプタ12を垂直方向に貫通して上下移動可能なリフトピンおよびその昇降機構(図示せず)等も設けられている。
【0026】
次に、このマイクロ波プラズマエッチング装置においてプラズマ生成に関係する各部の構成を説明する。
【0027】
チャンバ10のサセプタ12と対向する天井面には、マイクロ波導入用の誘電体板として円形の石英板58が気密に取り付けられている。この石英板58の上面には平板型のスロットアンテナとして同心円状に分布する多数のスロットを有する円板形のラジアルラインスロットアンテナ60が設置されている。このラジアルラインスロットアンテナ60は、たとえば石英等の誘電体からなる遅延板62を介してマイクロ波伝送線路64に電磁的に結合されている。
【0028】
マイクロ波伝送線路64は、マイクロ波発生器66より出力されるたとえば2.45GHzのマイクロ波をアンテナ60まで伝送する線路であり、導波管68と導波管−同軸管変換器70と同軸管72とを有している。導波管68は、たとえば方形導波管であり、TE10モードを基本モードとしてマイクロ波発生器66からのマイクロ波をチャンバ10に向けて導波管−同軸管変換器70まで伝送する。
【0029】
導波管−同軸管変換器70は、方形導波管68と同軸管72とを結合するために、方形導波管68のH面(磁界に平行な面)の幅の中央でかつ短絡板68aから1/4波長の位置にて、同軸管72の内部導体74を方形導波管68の中に突き出させている。同軸管72の特性インピーダンスは通常50Ωに設計されるのに対して、方形導波管68の特性インピーダンスはそれより格段に大きい(通常数百Ω以上)ことから、インピーダンス変換のために、コネクタ部を構成する同軸管72の内部導体74の上端部74aを図示のような逆テーパ状に太くする構成(いわゆるドアノブ形の構成)を採るのが好ましい。
【0030】
同軸管72は、導波管−同軸管変換器70からチャンバ10の上面中心部まで垂直下方に延びて、その同軸線路の終端または下端が遅延板62を介してアンナ60に結合されている。同軸管72の外部導体76は方形導波管68と一体形成された円筒体からなり、マイクロ波は内部導体74と外部導体76の間の空間をTEMモードで伝播する。
【0031】
マイクロ波発生器66より出力されたマイクロ波は、上記のような導波管68、導波管−同軸管変換器70および同軸管72からなるマイクロ波伝送線路64を伝播して、遅延板62を通ってアンテナ60に給電される。そして、アンテナ60で半径方向に広げられたマイクロ波はアンテナの各スロットからチャンバ10内に向けて放射され、石英板58とプラズマとの界面に沿って伝播する表面波から放射されるマイクロ波電力によって付近のガスが電離して、プラズマが生成されるようになっている。
【0032】
遅延板62の上には、アンテナ後面板78がチャンバ10の上面を覆うように設けられている。このアンテナ後面板78は、たとえばアルミニウムからなり、石英板58で発生する熱を吸収(放熱)する冷却ジャケットを兼ねており、内部に形成されている流路80にはチラーユニット(図示せず)より配管82,84を介して所定温度の冷媒たとえば冷却水が循環供給されるようになっている。
【0033】
この実施形態においては、チャンバ10内に処理ガスを導入するために、石英板58より幾らか低い位置でチャンバ10の側壁の中に環状に形成されたバッファ室86と、円周方向に等間隔でバッファ室86からプラズマ生成空間に臨む多数の側部ガス吐出孔88と、処理ガス供給源90からバッファ室86まで延びるガス供給管92とが設けられている。また、ガス供給管92の途中にはMFC(マス・フロー・コントローラ)94および開閉弁96が設けられている。
【0034】
かかる構成の処理ガス導入機構98において、処理ガス供給源90より送出された処理ガスは、ガス供給管92を通ってチャンバ10側壁内のバッファ室86に導入され、バッファ室86内で周回方向の圧力を均一化してから各側部ガス吐出口88よりチャンバ10の中心に向かって略水平に吐出され、プラズマ処理空間へ拡散する。
【0035】
このマイクロ波プラズマエッチング装置において、エッチングを行なうには、先ずゲートバルブ28を開状態にして加工対象の半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入し、静電チャック42の上に載置する。そして、処理ガス導入機構98よりエッチングガス(一般に混合ガス)を所定の流量および流量比でチャンバ10内に導入し、排気機構(24,26)によりチャンバ10内の圧力を設定値に減圧する。さらに、高周波電源30をオンにして所定のパワーで高周波を出力させ、この高周波をマッチングユニット32および給電棒34を介してサセプタ12に印加する。また、スイッチ48をオンにして直流電源46より直流電圧を静電チャック42の電極42aに印加して、静電チャック42の静電気力により半導体ウエハWを静電チャック42上に固定する。そして、マイクロ波発生器66をオンにし、マイクロ波発生器66より出力されるマイクロ波をマイクロ波伝送線路64を介してアンテナ60に給電し、アンテナ60から放射されるマイクロ波を石英板58を介してチャンバ10内に導入する。
【0036】
処理ガス導入機構98の側部ガス吐出口88よりチャンバ10内に導入されたエッチングガスは石英板58の下に拡散し、石英板58の下面(プラズマと対向する面)に沿って伝播する表面波から放射されるマイクロ波電力によってガス粒子が電離し、表面励起のプラズマが生成される。こうして、石英板58の下で生成されたプラズマは下方に拡散して、半導体ウエハWの主面の被加工膜に対してプラズマ中のラジカルによる等方性エッチングおよびイオン照射による垂直エッチングが行われる。
【0037】
このマイクロ波プラズマエッチング装置においては、チャンバ10内のプラズマ生成空間からマイクロ波の一部が絶縁性の筒状支持部材14を通り抜けて、チャンバ10の底面開口からRF給電ラインの同軸線路36に入ってくることがある。特に、マイクロ波発生器66をオンにしてからマイクロ波放電が開始されるまでに若干のタイムラグがあり、このタイムラグの期間中(プラズマ着火の直前)にチャンバ10内に導入されたマイクロ波は放電に消費されずにプラズマ生成空間を伝播して同軸線路36に入ってくる。そして、マイクロ波は同軸線路36の中をRFバイアス用の高周波とは逆方向にTEMモードで伝播する。しかし、同軸線路36にマイクロ波が入ってきても、同軸線路36の途中に設けられているチョーク機構40によって遮断され、マッチングボックス32には来ないようになっている。このことにより、マッチングボックス32内のRFセンサやコントローラ等のRF制御部がマイクロ波のノイズによって誤動作するおそれもなければ、マッチングボックス32のファン等の開口部からマイクロ波が外へ漏れて無線LAN等に電波雑音を来たすおそれもない装置構成となっている。
【0038】
以下、この実施形態の主要な特徴部分であるチョーク機構40の構成および作用について説明する。
【0039】
図2に、チョーク機構40の一実施例の構成を示す。このチョーク機構40は、たとえばアルミニウムからなる2つの導体部材100,102を給電棒34にたとえば溶接で取り付けている。
【0040】
第1の導体部材100は、給電棒34の軸方向と平行に延びる円筒部104と、給電棒34から軸方向と直交する半径方向に延びて円筒部104の前端(上端)に接続する環状部106とを有している。ここで、円筒部104の外周面と外部導体38の内周面との間には1/4波長(λ/4)の線路長を有する円筒状の第1の1/4波長導波路M1が形成され、円筒部104の内周面と給電棒34の外周面との間には円筒状の第2の1/4波長導波路M2が形成される。
【0041】
第2の導体部材102は、給電棒34から軸方向と直交する半径方向に延びる環状部108と、この環状部108の外周端からマッチングユニット32(図1)側に向って延びる円筒部110とを有している。ここで、環状部108の外周端と第1の導体部材100の円筒部104の後端(下端)との間には環状の隙間112が形成され、環状部108の外周端および円筒部110の外周面と外部導体38の内周面との間には円筒状の隙間114が形成される。
【0042】
チョーク機構40の同軸線路36上の取付位置としては、後述する理由から、図2に示すように、第1の導波路M1の始端(A点)が同軸線路36の入口(外部導体38の上端)から高周波電源30側に向かって1/2波長(λ/2)の距離を隔てた位置に設定されるのが好ましい。
【0043】
かかる構成のチョーク機構40においては、チャンバ10側から同軸線路36内をTEMモードで伝播してくるマイクロ波に対して、第1の1/4波長導波路M1の終端と第2の1/4波長導波路M2の始端とが環状隙間112(B点)で繋がるとともに、第2の1/4波長導波路M2が環状部106の下面(C点)で短絡終端する。したがって、1/4波長線路の性質により、導波路接続点(B点)はインピーダンス無限大の開放状態となり、第1の1/4波長導波路M1の始端(A点)はインピーダンス零の短絡状態となる。つまり、マイクロ波に対しては第1の1/4波長導波路M1の始端または入口があたかも導体壁で塞がっているのと同じ状態になり、実質的にここでマイクロ波の伝播が阻止される。これにより、マイクロ波が第2の導体部材102と外部導体38との間の隙間114を通り抜けてマッチングユニット32側に向かうことはない。また、第1の1/4波長導波路M1の始端が短絡状態となることで、そこから1/2波長(λ/2)の距離を隔てた同軸線路36の入口には定在波の波節(ノード)ができて、定在波が安定する。
【0044】
一方、高周波電源30からのRFバイアス用の高周波は、給電棒34の表面を通ってRF電極12へ給電されるので、チョーク機構40より伝送上の影響を受けることはない。このように、チョーク機構40は、RFバイアス用高周波(たとえば2MHz)を通してマイクロ波(2.45GHz)を遮断する一種のローパス・フィルタとして機能する。
【0045】
図3に、シミュレーションによるチョーク機構40のフィルタ特性を示す。図示のように、2MHzの減衰量は約0dBであり、RFバイアス用高周波は殆ど減衰せずにチョーク機構40を通過する。これに対して、2.45GHzの減衰量は約−50dBであり、マイクロ波はチョーク機構40で十万分の1に減衰し、略完全に遮断される。
【0046】
この実施形態において、図2に示したチョーク機構40の構成は一例であり、本発明の技術思想の下で様々な変形が可能である。図4〜図5に、チョーク機構40の変形例を幾つか示す。
【0047】
図4に示す構成は、第2の導体部材102を、図2の環状部108と円筒部110とを併せ持つ1つの厚板環状体114に置き換えたものである。第2の導体部材102は、基本的には、第1の導体部材100の円筒部104の外周側および内周側にそれぞれ形成される第1および第2の1/4波長導波路M1,M2を繋ぐためのもの、つまり環状隙間112を形成するものであればよい。したがって、図5に示すように、第2の導体部材102を薄板の環状部108のみで構成することも可能である。
【0048】
上記したようなチョーク機構40自体の構成だけでなく、他にも本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。特に、RFバイアス用の高周波を印加する電極の構成は任意のものが可能であり、本発明の最も広い技術思想としてはチャンバ内の高周波電極に高周波を任意の用途で給電するために同軸構造の給電棒を用いる任意のプラズマ処理装置に本発明のチョーク機構を適用することができる。また、RF給電ラインに同軸ケーブルを用いる場合においても、図示省略するが、本発明にしたがい同軸ケーブルの内部導体と外部導体との間に上記実施形態のチョーク機構40と同様の構成および機能を有するチョーク機構を設けることができる。
【0049】
本発明は、プラズマ生成にマイクロ波を用いる任意のプラズマ処理装置に適用可能であり、マイクロ波導入放電機構、処理ガス導入機構、排気機構等も上記した実施形態に限定されるものではない。たとえば、マイクロ波導入放電機構に関しては、ラジアルラインスロットアンテナ60以外のアンテナを使用する装置や、マイクロ波伝送線路からアンテナを介さずに誘電体窓を通じてマイクロ波をチャンバ内に導入する装置なども可能である。また、チャンバ10の周りに永久磁石や電子コイル等の磁界形成機構(図示せず)を設けて、電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)を利用するECR装置にも本発明は適用可能である。
【0050】
さらに、本発明は、プラズマエッチング装置に限定されるものではなく、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)、プラズマ酸化、プラズマ窒化、スパッタリング等の処理装置にも適用可能である。また、本発明における被処理基板は半導体ウエハに限るものではなく、フラットパネルディスプレイ用の各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等も可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 チャンバ
12 サセプタ(基板保持台)
26 真空ポンプ
30 高周波電源
32 マッチングユニット
34 給電棒
36 同軸線路
38 外部導体
40 チョーク機構
58 石英板(誘電体窓)
60 アンテナ
64 マイクロ波伝送線路
66 マイクロ波発生器
98 処理ガス導入部
100 第1の導体部材
102 第2の導体部材
104 円筒部
106 環状部
108 環状部
110 円筒部
112 環状隙間
M1 第1の1/4波長導波路
M2 第2の1/4波長導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気可能な処理容器と、
前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
前記処理ガスのプラズマを生成するためのマイクロ波を前記処理容器内に供給するマイクロ波供給部と、
前記処理容器内で前記プラズマに晒されるように被処理基板を保持する電極と、
前記電極に円柱状または円筒状の給電棒を介してRFバイアス用の高周波を印加する高周波電源と、
前記給電棒の回りを囲む円筒状の外部導体と、
前記給電棒と前記外部導体との間に前記マイクロ波の空間伝播を遮断するために設けられるチョーク機構と
を有するプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記チョーク機構が、
前記給電棒の外周面と前記外部導体の内周面との距離間隔よりも狭いギャップ幅で前記給電棒の軸方向と平行に延びて円筒状に形成され、1/4波長の線路長を有する第1の導波路と、
前記電極側から見て前記第1の導波路の終端に接続され、1/4波長の線路長を有し、かつ短絡終端する第2の導波路と
を有する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記チョーク機構が、
前記給電棒の軸方向と平行に延びて、その外周面と前記外部導体の内周面との間に前記第1の導波路を円筒状に形成するとともに、その内周面と前記給電棒の外周面との間に前記第2の導波路を円筒状に形成する第1の円筒状導体部と、
前記給電棒から軸方向と直交する半径方向に延びて前記第1の円筒状導体部の前端に接続し、前記第2の導波路の終端を短絡させる第1の環状導体部と、
前記給電棒から軸方向と直交する半径方向に延びて前記第1の円筒状導体部の後端との間および前記外部導体の内周面との間にそれぞれ第1および第2隙間を形成し、前記第1の隙間にて前記第1の導波路の終端と前記第2の導波路の始端とを接続させる第2の環状導体部と
を有する、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記高周波電源と前記電極との間に整合器が電気的に挿入され、
前記給電棒は、一端が前記整合器の第1の出力端子に接続され、他端が前記電極に接続され、
前記外部導体は、一端が前記整合器の第2の出力端子に接続され、他端が前記処理容器に接続される、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記外部導体がグランド電位に接続される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記マイクロ波供給部は、前記処理容器の周囲または近傍に設けられたアンテナを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記マイクロ波供給部は、前記処理容器内に前記マイクロ波を導入するための誘電体からなる窓を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記処理容器内に所定の磁場を形成するための磁場形成機構を前記処理容器の周囲または近傍に設ける、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−12650(P2013−12650A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145476(P2011−145476)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】