説明

プラズマ成膜装置及びプラズマ成膜方法

【課題】平坦でないワーク被成膜面であっても膜厚分布のばらつきを抑えることができるプラズマ成膜装置及びプラズマ成膜方法を提供する。
【解決手段】処理室10内に生起されたプラズマ中で、凹凸を有するワーク30に成膜を行うプラズマ成膜装置であって、処理室10内に設けられ、ワーク30を保持可能なワーク保持部12と、処理室10内でワーク保持部12に対向して設けられ、ワーク30の凹部32の内側に位置させることが可能な凸部23を有する電極21と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理室内に生起されたプラズマ中でワークに対して成膜を行うプラズマ成膜装置及びプラズマ成膜方法に関し、特に凹凸のあるワークに対する成膜に適したプラズマ成膜装置及びプラズマ成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用ヘッドランプのランプリフレクターの製造工程において、リフレクターの内側表面に反射膜としてのアルミニウム等の金属膜を成膜した後、その金属膜上にプラズマ重合によって保護膜を形成することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−195651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、プラズマ重合は、成膜対象物であるワークを保持するワーク保持部を一方の電極とし、このワーク保持部に対向する電極(上部電極とする)を他方の電極とした対向電極間で放電を起こして原料ガスをプラズマ化させ重合反応を行わせる。従来、上部電極としては平板形状もしくは棒状のものが使われており、例えばランプリフレクターのように被成膜面に凹凸があるワークについては、上部電極に対する対向距離に差がある凹部と凸部とで成膜レートにばらつきが生じ、膜厚分布がばらつくといった問題があった。特に凹部の内側の奥に膜が付き難いことが問題となっていた。
【0005】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、平坦でないワーク被成膜面であっても膜厚分布のばらつきを抑えることができるプラズマ成膜装置及びプラズマ成膜方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、処理室内に生起されたプラズマ中で、凹部を有するワークに成膜を行うプラズマ成膜装置であって、前記処理室内に設けられ、前記ワークを保持可能なワーク保持部と、前記処理室内で前記ワーク保持部に対向して設けられ、前記ワークの凹部の内側に位置させることが可能な凸部を有する電極と、を備えたことを特徴とするプラズマ成膜装置が提供される。
また、本発明の他の一態様によれば、処理室内に生起されたプラズマ中で、凸部を有するワークに成膜を行うプラズマ成膜装置であって、前記処理室内に設けられ、前記ワークを保持可能なワーク保持部と、前記処理室内で前記ワーク保持部に対向して設けられ、前記ワークの凸部を内側に位置させることが可能な凹部を有する電極と、を備えたことを特徴とするプラズマ成膜装置が提供される。
また、本発明のさらに他の一態様によれば、処理室内に生起されたプラズマ中で、凹凸を有するワークに成膜を行うプラズマ成膜装置であって、前記処理室内に設けられ、前記ワークを保持可能なワーク保持部と、前記処理室内で前記ワーク保持部に対向して設けられ、前記ワークの凹部の内側に位置させることが可能な凸部と、前記ワークの凸部を内側に位置させることが可能な凹部とを有する電極と、を備えたことを特徴とするプラズマ成膜装置が提供される。
また、本発明のさらに他の一態様によれば、処理室内に生起されたプラズマ中でワークに成膜を行うプラズマ成膜装置であって、前記処理室内に設けられ、前記ワークを保持可能なワーク保持部と、各々が前記ワーク保持部側への突出量を可変に、前記ワーク保持部に対向して設けられた複数の電極と、を備えたことを特徴とするプラズマ成膜装置が提供される。
また、本発明のさらに他の一態様によれば、処理室内に設けられたワーク保持部にワークを保持し、各々が前記ワーク保持部側への突出量を可変に前記ワーク保持部に対向して設けられた複数の電極の前記突出量を前記ワークの形状に合わせて個々に設定した状態で、前記電極に電力を印加して前記処理室内にプラズマを生起し前記ワークに成膜を行うことを特徴とするプラズマ成膜方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、平坦でないワーク被成膜面であっても膜厚分布のばらつきを抑えることができるプラズマ成膜装置及びプラズマ成膜方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラズマ成膜装置の構成を例示する模式図。
【図2】同プラズマ成膜装置における電極の凸部の他の具体例を示す模式図。
【図3】本発明の第2実施形態に係るプラズマ成膜装置の構成を例示する模式図。
【図4】本発明の第3実施形態に係るプラズマ成膜装置の構成を例示する模式図。
【図5】同第3実施形態における電極のフィードスルーを示す模式図。
【図6】本発明の第4実施形態に係るプラズマ成膜装置の構成を例示する模式図。
【図7】図4の装置を、図4とは異なるワーク形状のものに適用した形態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るプラズマ成膜装置の構成を例示する模式図である。本実施形態に係るプラズマ成膜装置は、気密容器11、電極21、ワーク保持部12などを備える。
【0011】
気密容器11の内部には処理室10が形成されている。図示の例では、気密容器11の上部壁にガス導入口15が形成され、側壁部に排気口16が形成されている。ガス導入口15はガス供給管、ガス供給源などのガス供給系に接続され、排気口16は排気管、真空ポンプなどの真空排気系に接続されている。ガス導入量と排気量の制御により、処理室10内を所望のガスによる所望の圧力下にすることができる。
【0012】
処理室10の底部にはワーク保持部12が設けられている。ワーク保持部12は、気密容器11の底部壁を貫通するロッド部13を有する。気密容器11の底部壁におけるロッド部13が貫通する部分には、処理室10内の気密状態を確保しつつロッド部13の上下動(昇降)を可能にするフィードスルー14が設けられている。ロッド部13は処理室10の外部で駆動機構に連結され、その駆動機構の駆動によりワーク保持部12は処理室10内を昇降することができる。
【0013】
本実施形態における成膜対象物であるワーク30は、例えば自動車等のランプリフレクターであり凹凸を有する。ワーク30は、全体としては半球形もしくは椀状に形成され、その内表面に複数のリブ状の凸部31が形成され、それら凸部31の間が凹部32となる。凸部31は、デザインや補強などの理由から設けられ、また凹部32に光源を配置する構成では凸部31はライトガイドとして設けられることもある。
【0014】
処理室10の上部には、ワーク保持部12に対向して電極21が設けられている。電極21およびワーク保持部12は、処理室10内に放電を生じさせる対向電極として機能し、電極21は処理室10の外部に設けられた電源25に接続され、ワーク保持部12及び気密容器11の壁部は接地されている。また、電極21と電源25との間には、インピーダンス整合用のマッチングボックス(図示せず)が接続されている。
【0015】
電極21は、板状のベース部22と凸部23とを有する。ベース部22の一方の面側は、絶縁部材24を介して気密容器11の上部壁に取り付けられている。ベース部22の他方の面側は処理室10内に臨んでワーク保持部12に対向している。そのベース部22の他方の面側に凸部23が設けられている。ベース部22及び凸部23は、金属材料からなる。なお、本明細書で「金属」とは純金属に限らず合金も含む。ベース部22と凸部23とは、一体に形成してもよいし、別体のものを結合させてもよい。
【0016】
絶縁部材24および電極21におけるベース部22の周囲は遮蔽体17で覆われ、その部分の膜付着を防ぐ構造となっている。
【0017】
次に、本実施形態に係るプラズマ成膜装置を用いたワーク30への成膜について説明する。本実施形態では、成膜材料の元素を含む原料ガスとして例えばモノマーガスを処理室10内に導入し、そのモノマーガスをプラズマ化させて、気相中またはワーク30表面で重合反応を起こさせて、ワーク30表面にポリマー(高分子)膜を形成する例を挙げて説明する。
【0018】
例えばランプリフレクターであるワーク30の内側表面にはすでにアルミニウム等の金属膜が反射膜として形成されており、本実施形態では、その反射膜の上にポリマー膜を形成する。このポリマー膜は、反射膜を腐食等から保護する保護膜として機能する。なお、保護膜以外にも、ワーク30表面に親水性、撥水性(疎水性)、装飾性、その他光学的特性、電気的特性を付与する膜を成膜してもよい。
【0019】
ワーク30は、凸部31及び凹部32が設けられた被成膜面を電極21に対向させた状態でワーク保持部12の上に保持される。電極21の凸部23は、ワーク保持部12側に向けて突出しており、ワーク保持部12上に保持されたワーク30の凹部32の内側に位置させることが可能となっている。
【0020】
処理室10内にワーク30を搬出入するときは、ワーク30の凹部32内に電極21の凸部23が入り込まない位置までワーク保持部12が下方に下げられている。その状態でワーク30がワーク保持部12上にセットされる。このとき、電極21の凸部23の下にワーク30の凹部32が位置するようにワーク30は位置決めされる。そして、ワーク保持部12が上昇することで、図1に示すように、ワーク30の凹部32の内側に電極21の凸部23が入り込む。電極21の凸部23は、ワーク30の凸部31には接触しない状態で、ワーク30の凹部32の内壁面(底面及び側壁面)に対向する。
【0021】
その状態で、ガス導入口15よりモノマーガスを処理室10内に導入し、電源25から電極21に高周波電圧を印加すると、電極21とワーク保持部12とを対向電極とする放電が生じ、モノマーガスがプラズマ化される。このプラズマ化により生成したイオンまたはラジカルが重合反応を起こして、ワーク30において電極21に対向している被成膜面にポリマー膜が形成される。
【0022】
一般に、対向電極間の放電により生成したプラズマ中の電子は接地されたチャンバ壁やワーク保持部側に引き寄せられ、正イオンまたはラジカルは、ワーク保持部に対向する電極(上部電極とする)の負の電位に引き寄せられる。したがって、上部電極近傍に、成膜に寄与するイオンやラジカルが集まるため、上部電極に近い部分ほど成膜レートが高い傾向がある。
【0023】
ここで、成膜対象物であるワークが例えば半導体ウェーハ、樹脂基板、ガラス基板などであり、被成膜面が平坦(目視でのマクロ的に見て平坦)である場合には、上部電極として平板電極を使っても、上部電極とワーク被成膜面との距離は面方向でばらつきがなく、よって成膜レートすなわち膜厚の面方向分布も均一にできる。
【0024】
しかし、ワークに凹凸(目視でのマクロ的に見た凹凸)がある場合に、平板電極を使うと、電極により近い凸部に対しては成膜レートが高く膜厚が比較的厚くなり、電極に対してより離れた凹部(特にその底面)に対しては成膜レートが低く膜厚が比較的薄くなる傾向にある。すなわち、凹凸のある被成膜面全体に均一な厚さでの成膜が困難であり、場合によっては凹部に膜が付かないことや、極薄く付く程度にとどまりピンホール等の欠陥を生じさせるといったことも懸念される。
【0025】
これに対して本実施形態では、ワーク30に対向する電極21に凸部23を設け、その凸部23をワーク30の凹部32の内側に入り込ませた状態で放電およびプラズマを起こさせる。したがって、ワーク30の凹部32内にも、成膜に寄与する十分な量のイオンやラジカルを存在させることができ、その凹部32の内壁面でもしくはその近傍で効率よく重合反応を生じさせて成膜レートの低下を抑制することができる。この結果、ワーク凹部32における相対的な膜厚低下を抑制して、凹凸を有するワーク30の被成膜面全体にわたって膜厚の均一化を図ることができ、膜厚ばらつきによる機能的、構造的、意匠的な不具合を防ぐことができる。
【0026】
電極21の凸部23の形状は、例えば棒状、角柱状、円柱状、板状など任意であり、ワーク保持部12に保持されたワーク30の凹部32の内側に入り込ませて、その凹部32内壁面に対して離間した状態で対向できればよい。
【0027】
また、図2に示すように、電極21の凸部23の表面に凹凸を形成し、その表面積の拡大を図ってもよい。この形態によれば、ワーク30の凹部32の内側にて、成膜に寄与するイオンやラジカルを引き寄せるための面積が大きくなり、より多くのイオンやラジカルを凹部32内に存在させることができる。この結果、凹部32内の成膜レートをより向上でき、例えば凹部32の内壁面の面積が比較的大きな場合や凹部32が深い場合であっても確実に所望の厚さの膜を成膜することができる。
【0028】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態に係るプラズマ成膜装置の構成を例示する模式図である。なお、前述した実施形態と同じ要素には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0029】
本実施形態では、電極41におけるワーク30に対向する部分に、ワーク30の凹凸に合わせて凹凸を形成している。すなわち、電極41は、ワーク30の凹部32に対応した凸部42と、ワーク30の凸部31に対応した凹部43を有する。電極41の凸部42はワーク30の凹部32の内側に位置させることが可能であり、逆に、電極41の凹部43の内側にはワーク30の凸部31を位置させることが可能である。
【0030】
そして、図3に示すように、電極41の凸部42をワーク30の凹部32の内側に入り込ませた状態で、且つワーク30の凸部31を電極41の凹部43の内側に入り込ませた状態で、電極41に例えば高周波電圧を印加して処理室10内に放電およびプラズマを起こさせる。
【0031】
これにより、前述した実施形態と同様、ワーク30の凹部32の内壁面への成膜レートを向上させることはもちろん、本実施形態においては、ワーク30の凸部31における凹部32に面しない反対側の側壁面31aに対しても電極41がすぐ近くで対向しているため、その凸部31の側壁面31aへの成膜レートも向上させることができる。さらに、本実施形態では、電極41において、ワーク30の凹状の曲面部に対向する部分が、そのワーク30の凹状曲面の曲率に合わせて凸状の曲面状に形成されている。
【0032】
すなわち、本実施形態によれば、電極41におけるワーク30の被成膜面に対向する部分が全体にわたって、ワーク30の形状に合わせて凹凸および曲面状に形成されている。このため、ワーク30の被成膜面全体にわたって電極41との対向距離のばらつきが小さく、結果として、被成膜面近傍におけるイオンやラジカルの場所の違いによる存在量のばらつきを抑えて、被成膜面全体に均一な厚さでの成膜が可能となる。
【0033】
また、電極41の表面全体がワーク30の被成膜面に対してすぐ近くで対向しているため、成膜に寄与するイオンやラジカルを効率的に電極41とワーク30の被成膜面との間に集めることができ、相対的に被成膜面以外の他の部分におけるイオンやラジカルの存在量を少なくすることができ、チャンバー内壁面や遮蔽体17などへの膜付着量を少なくすることができる。この結果、チャンバー内壁面や遮蔽体17などに付着した膜が剥がれ落ちることによるワーク汚染を抑制でき、また処理室内クリーニング等のメンテナンス回数も減らすことができる。
【0034】
[第3実施形態]
図4は、本発明の第3実施形態に係るプラズマ成膜装置の構成を例示する模式図である。なお、前述した実施形態と同じ要素には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0035】
本実施形態では、処理室10の上部に板状の電極ベース部52が設けられ、その電極ベース部52に対して複数の電極51が保持されている。電極ベース部52及び各電極51は金属材料からなり、相互に電気的に導通している。電極ベース部52は電源25に接続され、電極ベース部52に高周波電圧が印加されると、各電極51に対しても高周波電圧が印加される。
【0036】
電極ベース部52は、絶縁部材24を介して気密容器11の上部壁に取り付けられている。各電極51は、図5に例示するようなフィードスルー53を介して、電極ベース部52に保持されている。
【0037】
フィードスルー53は筒状に形成され、その内部に電極51が上下動可能に通されている。各電極51は棒状または板状に形成され、各電極51の下端部は処理室10内に突出し、ワーク保持部12上に保持されたワーク30に対向可能となっている。各電極51の上端部は気密容器11の外部に突出している。フィードスルー53にはOリング54、55が装着され、その内周面に電極51の外周面が密着している。その状態で各電極51は上下動可能であり、すなわち、各電極51は処理室10内の気密状態を維持したまま上下動可能となっている。
【0038】
各電極51を上下動させることによって、各電極51の処理室10内への突出量を変えることができる。そして本実施形態では、ワーク30の形状に合わせて各電極51の突出量を調整している。すなわち、ワーク30の凹部32の上に位置する電極51は凹部32の内側に入り込む位置まで下降させ、ワーク30の凸部31の上に位置する電極51については凸部31に当たらないように突出量を小さくしている。
【0039】
このようにワーク30の形状に合わせて各電極51の突出量を調整することで、ワーク30の被成膜面全体にわたって電極51との対向距離のばらつきを小さくでき、結果として、被成膜面近傍におけるイオンやラジカルの場所の違いによる存在量のばらつきを抑えて、被成膜面全体に均一な厚さでの成膜が可能となる。
【0040】
本実施形態の構成によれば、複数の電極51の処理室10内への突出量を個々に調整できるため、あらゆるワーク形状に対応可能であり、形状の異なるワークごとに電極を作り変える必要がない。
【0041】
各電極51を上下動させるにあたっては、処理室10の外部に突出している部分を手動で操作してもよいし、油圧や空圧シリンダ駆動、電動モーターを使用した電気制御によって動かしてもよい。いずれにしても、フィードスルー53によって処理室10内の気密状態を維持したまま各電極51の上下動を行えるため、処理室10内を大気開放させる必要がなく、装置のダウンタイムを抑制して効率的な生産を行うことができる。
【0042】
また、本実施形態は、凹凸を有するワークに対してだけでなく、例えば図7に示すように、被成膜面が曲面状に形成されたワーク70に対しても有効である。この場合にも、ワーク70の被成膜面全体にわたって電極51との対向距離のばらつきを小さくでき、被成膜面全体に均一な厚さでの成膜が可能となる。
【0043】
[第4実施形態]
図6は、本発明の第4実施形態に係るプラズマ成膜装置の構成を例示する模式図である。なお、上記図4に示す第3実施形態と同じ要素には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0044】
本実施形態においても、処理室10の上部に板状の電極ベース部52が設けられ、その電極ベース部52に対して複数の電極61が、処理室10内の気密状態を維持したまま上下動可能に保持されている。
【0045】
さらに、本実施形態では、各電極61は中空状に形成され、各電極61の内部を通じて、処理室10内でワーク保持部12に保持されたワーク30の被成膜面の近傍にガス供給可能となっている。
【0046】
例えば、各電極61は、処理室10の外部でフレキシブルチューブ62を介して、各電極61に共通に設けられたガス導入室(もしくはガス滞留室)65に接続されている。ガス導入室65には、ガス導入口66を介して図示しないガス供給源から原料ガスが導入される。なお、各電極61へのガス導入機構としては、共通のガス導入室のようなものを設けずに個々の電極61ごとにガス供給源に接続させてもよい。また、複数の電極61のすべてをガス供給可能な構造にすることに限らず、ガス供給系につながらずに単に電極として機能するものも混在していてもよい。なお、少なくとも、膜が付きにくいワーク30の凹部32に入り込んだ電極61にはガス導入機構を設けることが望ましい。
【0047】
本実施形態によれば、ワーク30の形状に合わせて各電極61の突出量を調整することで、ワーク30の被成膜面全体にわたって電極61との対向距離のばらつきを小さくできることに加えて、ワーク被成膜面の全面にわたってその近傍に均一に効率よくガス供給することができるので、ガス分布のばらつきに起因した成膜レートのばらつきも抑制することができる。結果として、被成膜面全体に、より均一な厚さでの成膜が可能となる。
【0048】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0049】
成膜対象物であるワークは、自動車用のランプリフレクターに限らず、他用途に用いられるランプリフレクターであってもよく、さらにはランプリフレクターにも限ることはなく、膜厚にばらつきが生じやすい凹凸を有するワークに本発明は有効である。
【0050】
処理室内に導入されるガス種やワークに形成される膜種も前述した実施形態に限られるものではなく、ポリマー膜の形成以外にも、その他の絶縁膜、金属膜、半導体膜の成膜にも適用可能である。すなわち、処理室内で原料ガスをプラズマ化させ、原料ガスの分解、重合、還元、酸化などの化学反応を起こさせてワーク表面に膜を形成するプラズマ成膜に本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
10…処理室、12…ワーク保持部、21,41,51,61…電極、23,42…電極の凸部、43…電極の凹部、30…ワーク、31…ワークの凸部、32…ワークの凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内に生起されたプラズマ中で、凹部を有するワークに成膜を行うプラズマ成膜装置であって、
前記処理室内に設けられ、前記ワークを保持可能なワーク保持部と、
前記処理室内で前記ワーク保持部に対向して設けられ、前記ワークの凹部の内側に位置させることが可能な凸部を有する電極と、
を備えたことを特徴とするプラズマ成膜装置。
【請求項2】
処理室内に生起されたプラズマ中で、凸部を有するワークに成膜を行うプラズマ成膜装置であって、
前記処理室内に設けられ、前記ワークを保持可能なワーク保持部と、
前記処理室内で前記ワーク保持部に対向して設けられ、前記ワークの凸部を内側に位置させることが可能な凹部を有する電極と、
を備えたことを特徴とするプラズマ成膜装置。
【請求項3】
処理室内に生起されたプラズマ中で、凹凸を有するワークに成膜を行うプラズマ成膜装置であって、
前記処理室内に設けられ、前記ワークを保持可能なワーク保持部と、
前記処理室内で前記ワーク保持部に対向して設けられ、前記ワークの凹部の内側に位置させることが可能な凸部と、前記ワークの凸部を内側に位置させることが可能な凹部とを有する電極と、
を備えたことを特徴とするプラズマ成膜装置。
【請求項4】
前記電極の前記凸部の表面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1または3に記載のプラズマ成膜装置。
【請求項5】
処理室内に生起されたプラズマ中でワークに成膜を行うプラズマ成膜装置であって、
前記処理室内に設けられ、前記ワークを保持可能なワーク保持部と、
各々が前記ワーク保持部側への突出量を可変に、前記ワーク保持部に対向して設けられた複数の電極と、
を備えたことを特徴とするプラズマ成膜装置。
【請求項6】
前記電極は中空状に形成され、前記電極の内部を通じて、前記処理室内で前記ワーク保持部に保持された前記ワークの近傍にガス供給可能であることを特徴とする請求項5記載のプラズマ成膜装置。
【請求項7】
処理室内に設けられたワーク保持部にワークを保持し、
各々が前記ワーク保持部側への突出量を可変に前記ワーク保持部に対向して設けられた複数の電極の前記突出量を前記ワークの形状に合わせて個々に設定した状態で、前記電極に電力を印加して前記処理室内にプラズマを生起し前記ワークに成膜を行うことを特徴とするプラズマ成膜方法。
【請求項8】
前記電極は中空状に形成され、前記電極の内部を通じて、前記処理室内で前記ワーク保持部に保持された前記ワークの近傍にガスを供給することを特徴とする請求項7記載のプラズマ成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−168604(P2010−168604A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10022(P2009−10022)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】