説明

プラズマ検査方法、プラズマ処理方法、プラズマ検査装置及びプラズマ処理装置

【課題】簡便かつ的確に大気圧プラズマの良否検査を行うことができるプラズマ検査方法、プラズマ処理方法、プラズマ検査装置及びプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】測定試料42の表面に大気圧プラズマPZを照射するプラズマ照射工程(ステップST8)と、大気圧プラズマPZが照射された測定試料42の表面の状態を検出する表面状態検出工程(ステップST9)と、検出した測定試料42の表面の状態に基づいて大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行う判定工程(ステップST10及びステップST11)を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧近傍の圧力下で発生させたプラズマの状態の良否検査を行うプラズマ検査方法、プラズマ処理方法、プラズマ検査装置及びプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマを用いて被処理物の表面のクリーニング、レジストの除去、表面改質、金属酸化物の還元、成膜等の処理等のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置の中には、大気圧近傍の圧力下で発生させたプラズマ(大気圧プラズマ)を用いるものが知られている。大気圧プラズマは、反応空間内に大気圧近傍の圧力下で不活性ガスを基調としたプラズマ発生用のガス(不活性ガス又は不活性ガスと反応性ガスとの混合ガス)を供給しながらその反応空間に高周波電界を印加してグロー放電を生じさせて発生させる。
【0003】
このような大気圧プラズマの発生装置(以下、大気圧プラズマ発生装置)としては種々の形態のものが公知であり、例えば、誘電体で挟み込んだ平行平板型の電極の間にプラズマ発生用のガスを供給し、両電極間に高周波電界を印加して大気圧プラズマを発生させるようにしたものや、誘電体で挟み込んだ平行平板型の電極の間にプラズマ発生用のガスを供給し、両電極間に高周波電界を印加して発生させた(吹き出させた)プラズマに、更にプラズマ発生用のガスを供給して混ぜ合わせるようにしたもの等が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようにして発生した大気圧プラズマは、プラズマ発生装置が備えるプラズマヘッドからプラズマ光として射出される(例えば、特許文献1)。
【0004】
このような大気圧プラズマを用いたプラズマ処理では、大気圧プラズマのパワーが変動すると被処理物に対する良好なプラズマ処理を施すことができなくなるため、従来ではプラズマ光の色や輝度等を検出することにより、プラズマ処理に用いる大気圧プラズマが所定のパワーを維持しているかどうかを定期的に検査するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−188689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プラズマ処理に用いられる大気圧プラズマは、そのパワーが一定であれば常に良好なプラズマ処理結果が得られるというわけではなく、被処理物の表面に照射される面に対して一様なエッチングレートを有している必要がある。大気圧プラズマのエッチングレートの分布は、プラズマ発生用のガスの供給状態(例えば混合ガスの混合比率)等の変動等によって変化するが、上記従来のプラズマ光の色や輝度等の検出だけでは検知することはできないという問題点があった。
【0007】
そこで本発明は、簡便かつ的確に大気圧プラズマの良否検査を行うことができるプラズマ検査方法、プラズマ処理方法、プラズマ検査装置及びプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のプラズマ検査方法は、プラズマ発生用のガスが供給される反応空間内
に電界を印加して大気圧近傍の圧力下で発生させたプラズマの状態の良否検査を行うプラズマ検査方法であって、測定試料の表面に前記プラズマを照射するプラズマ照射工程と、前記プラズマが照射された前記測定試料の表面の状態を検出する表面状態検出工程と、検出した前記測定試料の表面の状態に基づいて前記プラズマの状態の良否判定を行う判定工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のプラズマ検査方法は、請求項1に記載のプラズマ検査方法であって、前記測定試料は表面に有機物膜が形成されたものから成り、前記表面状態検出工程では、前記プラズマが照射された前記測定試料の表面の撮像を行うとともに、この撮像によって得られた前記測定試料の表面の画像から有機物膜の除去状態の検出を行い、判定工程では、検出した有機物膜の除去状態に基づいて前記プラズマの状態の良否判定を行う。
【0010】
請求項3に記載のプラズマ検査方法は、請求項2に記載のプラズマ検査方法であって、前記測定試料の表面に形成される有機物膜は均一な厚みを有するレジスト材料から成る。
【0011】
請求項4に記載のプラズマ検査方法は、請求項2又は3に記載のプラズマ検査方法であって、前記測定試料の表面に形成される有機物膜は前記測定試料とは異なる色を有している。
【0012】
請求項5に記載のプラズマ検査方法は、請求項1乃至4の何れかに記載のプラズマ検査方法であって、前記電界は1KHz以上、30GHz以下の周波数帯を有する高周波電源部により励起される。
【0013】
請求項6に記載のプラズマ処理方法は、被処理物を搬入して所定位置に位置決めする位置決め工程と、位置決めした被処理物に、プラズマ発生用のガスが供給される反応空間内に電界を印加して大気圧近傍の圧力下で発生させたプラズマを照射して前記被処理物の表面をプラズマ処理するプラズマ処理工程と、プラズマ処理工程を施した前記被処理物を搬出する搬出工程とを含むプラズマ処理方法であって、プラズマ処理工程において用いるプラズマの良否検査を請求項1乃至5の何れかに記載のプラズマ検査方法により行う。
【0014】
請求項7に記載のプラズマ検査装置は、プラズマ発生用のガスが供給される反応空間内に電界を印加して大気圧近傍の圧力下で発生させたプラズマの状態の良否検査を行うプラズマ検査装置であって、表面に前記プラズマが照射される測定試料と、前記プラズマが照射された前記測定試料の表面の状態を検出する表面状態検出手段と、前記表面状態検出手段により検出された前記測定試料の表面の状態に基づいて前記プラズマの状態の良否判定を行う判定手段とを備えた。
【0015】
請求項8に記載のプラズマ検査装置は、請求項7に記載のプラズマ検査装置であって、前記測定試料は表面に有機物膜が形成されたものから成り、前記表面状態検出手段は、前記プラズマが照射された前記測定試料の表面の撮像を行う撮像手段及び前記撮像手段の撮像によって得られた前記測定試料の表面の画像から有機物膜の除去状態を検出する除去状態検出手段から成り、前記判定手段は、除去状態検出手段により検出された有機物膜の除去状態に基づいて前記プラズマの状態の良否判定を行う。
【0016】
請求項9に記載のプラズマ検査装置は、請求項8に記載のプラズマ検査装置であって、前記測定試料の表面に形成される有機物膜は均一な厚みを有するレジスト材料から成る。
【0017】
請求項10に記載のプラズマ検査装置は、請求項8又は9に記載のプラズマ検査装置であって、前記測定試料の表面に形成される有機物膜は前記測定試料とは異なる色を有している。
【0018】
請求項11に記載のプラズマ検査装置は、請求項7乃至10の何れかに記載のプラズマ検査装置であって、前記電界は1KHz以上、30GHz以下の周波数帯を有する高周波電源部により励起される。
【0019】
請求項12に記載のプラズマ処理装置は、被処理物を搬入して所定位置に位置決めする位置決め手段と、位置決め手段により位置決めされた被処理物に、プラズマ発生用のガスが供給される反応空間内に電界を印加して大気圧近傍の圧力下で発生させたプラズマを照射して前記被処理物の表面をプラズマ処理するプラズマ処理手段と、プラズマ処理手段によるプラズマ処理が施された前記被処理物を搬出する搬出手段と、プラズマ処理手段において用いられるプラズマの良否判定を行う請求項7乃至11の何れかに記載のプラズマ検査装置とを備えた。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、測定試料の表面に大気圧下で発生させたプラズマ(大気圧プラズマ)を照射して測定試料の表面の状態を検出し、その検出した測定試料の表面の状態に基づいて大気圧プラズマの状態の良否判定を行うようになっているので、簡便かつ的確に大気圧プラズマの良否検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の要部の構成図
【図2】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置においてプラズマ処理が施される被処理物の一例の平面図
【図3】本発明の実施の形態1におけるプラズマ発生装置の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態1におけるプラズマ発生装置が備えるプラズマヘッドの一部の(a)斜視図(b)断面図
【図5】本発明の実施の形態1における酸素ガスを含む混合ガスでプラズマを発生させたときの酸素ガスの体積比と発光強度の関係を示すグラフ
【図6】本発明の実施の形態1における酸素ガスを含む混合ガスを用いたプラズマ処理において酸素ガス濃度を変化させたときのエッチング量の特性を示すグラフ
【図7】(a)(b)(c)(d)(e)本発明の実施の形態1におけるププラズマ処理の流れを説明する図
【図8】本発明の実施の形態1における測定試料を検査ステーションとともに示す側面図
【図9】(a)(b)(c)(d)(e)本発明の実施の形態1におけるプラズマ検査装置によりプラズマ検査を行っている様子を示す図
【図10】本発明の実施の形態1における大気圧プラズマが照射された測定試料の(a)平面図(b)断面図
【図11】本発明の実施の形態1における大気圧プラズマが照射された測定試料の(a)平面図(b)断面図
【図12】本発明の実施の形態1における大気圧プラズマが照射された測定試料の(a)平面図(b)断面図
【図13】本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置による作業の流れを示すフローチャート
【図14】(a)(b)(c)(d)(e)本発明の実施の形態1におけるプラズマ発生装置の構成説明図
【図15】(a)(b)(c)本発明の実施の形態2における大気圧プラズマが照射された測定試料の平面図
【図16】本発明の実施の形態3における測定試料の表面における試薬の接触角の説明図
【図17】本発明の実施の形態3におけるプラズマ発生装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施の形態1)
先ず、図1〜図14を用いて本発明の実施の形態1について説明する。図1において、プラズマ処理装置1は、筐体2の内部に水平面内の一の方向に延びて設置された搬送路3と、搬送路3の上方に設けられたロボット部4及びロボット部4によって移動自在に設けられたプラズマヘッド5を備えている。搬送路3は一対のベルトコンベアから成り、筐体2の一方の側面に設けられた搬入開口部2aより投入された被処理物Wを筐体2内に搬入して所定の位置に位置決めする位置決め動作と、位置決めした被処理物Wを筐体2の他方の側面に設けられた搬出開口部2bから筐体2の外部へ搬出する搬出動作を行う。ここでは、搬送路3による被処理物Wの搬送(搬入及び搬出)方向をX軸方向、X軸方向と直交する水平面内方向をY軸方向とする。また、上下方向をZ軸方向とする。
【0023】
図1において、ロボット部4は支持プレート4aをXYZの3軸の方向に移動させることができる機構を有しており、支持プレート4aに取り付けられたプラズマヘッド5を三次元的に移動させることができるようになっている。
【0024】
図2において、被処理物Wにはプラズマ処理を行うべき処理部位Sが複数箇所に分散されて配されている。被処理物Wは例えば、液晶パネルやプラズマディスプレイパネルのフラットパネルディスプレイ等から成り、各処理部位Sにクリーニングや表面改質等のプラズマ処理が施される。
【0025】
図3において、プラズマ処理装置1が備えるプラズマ発生装置10は、上述のプラズマヘッド5及びこのプラズマヘッド5を移動させるロボット部4のほか、第1の不活性ガスG1が充填された第1の不活性ガス容器11a、第2の不活性ガスG2が充填された第2の不活性ガス容器11b、反応性ガスG3が充填された反応性ガス容器11c、第1の不活性ガス容器11aから供給される第1の不活性ガスG1の流量調節を行う第1流量制御弁12a、第2の不活性ガス容器11bから供給される第2の不活性ガスG2の流量調整を行う第2流量制御弁12b、反応性ガス容器11cから供給される反応性ガスG3の流量調節を行う第3流量制御弁12c、第2流量制御弁12bを経て供給される第2の不活性ガスG2と第3流量制御弁12cを経て供給される反応性ガスG3が混合されて混合ガスG4が生成される混合器13、第1流量制御弁12aとプラズマヘッド5の間のガス管路に介装され、プラズマヘッド5への第1の不活性ガスG1の供給及び遮断制御を行う第1開閉弁14a、混合器13とプラズマヘッド5の間のガス管路に介装され、プラズマヘッド5への混合ガスG4の供給及び遮断制御を行う第2開閉弁14b、高周波電圧をプラズマヘッド5に印加する高周波電源部15、高周波電源部15とプラズマヘッド5の間に介装され、高周波電源部15とプラズマヘッド5の間に発生する反射波を抑えてインピーダンス整合を行う整合回路16、プラズマヘッド5に混合ガスG4が供給され、かつ高周波電圧が印加されている状態でプラズマヘッド5に大気圧プラズマPZを点灯させる点灯回路17、第1流量制御弁12a、第2流量制御弁12b、第3流量制御弁12c、第1開閉弁14a、第2開閉弁14b、搬送路3、ロボット部4、高周波電源部15、点灯回路17等の作動制御を行う制御装置20、制御装置20に繋がるデータ保存部21及びディスプレイ装置22等から構成されている。
【0026】
図3において、プラズマヘッド5内には反応容器30が設けられている。反応容器30は誘電体材料から成り、図4(a),(b)に示すように、中空円筒状で小径の容器上部31と下方に開口した大径の容器下部32から成り、容器上部31が容器下部32に上方から貫通することによって、容器上部31の内部空間(上部反応空間33)と容器下部32の内部空間(下部反応空間34)が連通した状態となっている。
【0027】
容器下部32の外周面には反応容器30の平面視において90度ずつずれた位置に計4つのガス供給管35が設けられており、各ガス供給管35は容器下部32の外周面に設けられた連通口36を介して容器下部32の内部(下部反応空間34)と連通した状態となっている。また、容器上部31の周囲には高周波電源部15に繋がるコイル状のアンテナ37が巻き付けられている。
【0028】
ここで、アンテナ37に高周波電圧を印加する高周波電源部15としては、13.56MHzに代表されるRF周波数帯、100MHzに代表されるVHF周波数帯が使用される。また、後記の図14のプラズマ発生装置においては、上記周波数帯以外のマイクロ波周波数帯や10KHz以下の矩形波やパルス波等を使用することができる周波数帯、具体的には、1KHz以上、30GHz以下の周波数帯を有するものによっても大気圧プラズマを発生することができる。
【0029】
また、第1及び第2の不活性ガスG1,G2としては例えば、アルゴン、ネオン、キセノン、ヘリウム、窒素から選択された単独ガス又は複数のガスの混合ガスが適用される。また、反応性ガスG3としては例えば、プラズマ処理の種類に応じて酸素、空気、CO、NO等の酸化性ガス、水素、アンモニア等の還元性ガス、CF等のフッ素系ガスが適用される。なお、窒素ガスは字義通りの不活性ガスではないが、大気圧プラズマの発生においては、本来の不活性ガスに準ずる挙動を示し、ほぼ同様に用いることができるので、ここでは、不活性ガスを広い定義に基づいて窒素ガスを含むものとする。また、ここでは第1の不活性ガスG1に混ぜ合わされる混合ガスG4が、第2の不活性ガスG2に反応性ガスG3を混合させた混合ガスG4であるとしているが、この混合ガスG4には反応性ガスG3を含まない第2の不活性ガスG2のみ(反応性ガスG3の流量を零にした場合)のガスも含まれるものとする。また、空気も窒素と酸素の混合ガスであるといえるので、ここでは、混合ガスG4には空気も含まれるものとする。
【0030】
プラズマ発生装置10において大気圧プラズマPZを発生(点灯)させるには、制御装置20は高周波電源部15の作動制御を行い、アンテナ37に高周波電圧を供給することによって上部反応空間33に高周波電界を印加するとともに、容器上部31の上方から反応容器30の上部反応空間33内に第1の不活性ガスG1を供給し、容器上部31の下方すなわち下部反応空間34内に一次プラズマPZ1(図4(b))を発生させつつ、容器下部32に繋がる複数のガス供給管35から下部反応空間34内に第2の不活性ガスG2と反応性ガスG3との混合ガスG4を供給し、この混合ガスG4を上記一次プラズマPZ1と衝突させる。これにより下部反応空間34内に二次プラズマPZ2(図4(b))が発生し、これが大気圧プラズマPZとしてプラズマ発生装置10の下方に射出される。
【0031】
このように一次プラズマPZ1に混合ガスG4を衝突させて発生させた二次プラズマPZ2は、内部に反応性ガスG3のラジカルを高密度で含むので、この二次プラズマPZ2(大気圧プラズマPZ)を被処理物Wに照射することで、効率的なプラズマ処理を行うことができる。
【0032】
なお、第1の不活性ガスG1の上部反応空間33内への供給制御は、制御装置20が第1流量制御弁12aの作動制御及び第1開閉弁14aの作動制御を行うことによってなされ、混合ガスG4の下部反応空間34内への供給制御は、制御装置20が第2流量制御弁12bと第3流量制御弁12cの作動制御及び第2開閉弁14bの作動制御を行うことによってなされる。
【0033】
ここで、混合ガスG4における反応性ガスG3の濃度、すなわち第2の不活性ガスG2と反応性ガスG3の混合比率の具体例について説明する。第2の不活性ガスG2としてヘ
リウムガスを、反応性ガスG3として酸素ガスを採用してエッチング処理を行う場合には、ヘリウムガスはプラズマを発生し易いが、プラズマ処理に直接寄与するのは酸素ラジカルである。一方、酸素はプラズマを弱くするため、ヘリウムガスに対する酸素ガスの混合比率にはピークがあり、効率的にプラズマ処理を行うには酸素ガスの混合比率をそのピーク値近傍に調整する必要がある。そこで、ヘリウムガスに対する酸素ガスの混合比率(体積比:%)を変化させて酸素原子に対応する777nmの発光強度を測定したところ、図5に示すように、酸素ガスの混合比率が0.05%付近のときに酸素ラジカルの発生量がピークを示すことが判明した。測定条件は、アンテナ37に印加した高周波電圧(上部反応空間33に印加した高周波電界)の周波数が13.56MHz、パワーが100Wであり、測定器具には浜松フォト社製のプラズマプロセスモニター(品番C7476)を使用した。
【0034】
また、実際のプラズマエッチング処理におけるエッチング処理性能について、第2の不活性ガスG2としてアルゴンガスを、反応性ガスG3として酸素ガスを採用し、アルゴンガスの供給流量を500sccm、酸素ガスの供給流量を1sccm(0.2%)として混合した混合ガスG4を使用した場合と、酸素ガスを混合しなかった場合についてエッチング量を調査した結果を図6に示す。図6より、酸素ガスを混合しない場合でもプラズマが大気中の酸素ガスと反応することで、或る程度のエッチング能力が発揮されるが、酸素ガスを混合した混合ガスG4を使用することでエッチング能力が向上し、アルゴンガスに対する酸素ガスの混合比率の変化によってプラズマ処理能力が大きく変化すること、及び、そのため酸素ガスの混合比率を最適な値に設定してそれを維持することで、効率的にエッチング処理をすることができるとともに、被処理物Wに対する処理状態の品質を安定して確保することができることが分かる。
【0035】
このような構成のプラズマ処理装置1において、被処理物Wにプラズマクリーニング等のプラズマ処理を行うには、制御装置20はプラズマヘッド5から大気圧プラズマPZを発生させてこれを下方に向けて照射させた状態で(図7(a)。プラズマ点灯工程)、搬送路3の作動制御を行って、搬入開口部2aから投入された被処理物Wをプラズマ処理装置1の筐体2の内部に搬入し、その被処理物Wをプラズマヘッド5の直下の作業位置に位置決めする(図7(b)。位置決め工程)。制御装置20は、被処理物Wを作業位置に位置決めしたら、プラズマヘッド5を下降させて、被処理物Wに大気圧プラズマPZによって照射されるようにする(図7(c))。これにより被処理物Wにプラズマ処理が施される(プラズマ処理工程)。制御装置20は、プラズマ処理が終了したら、プラズマヘッド5を上昇させた後(図7(d))、搬送路3の作動制御を行って、被処理物Wを搬出開口部2bからプラズマ処理装置1の筐体2の外部に搬出する(図7(e)。搬出工程)。制御装置20はこのような被処理物Wの搬入と位置決め、被処理物Wへの大気圧プラズマPZの照射によるプラズマ処理及び被処理物Wの搬出から成る一連の工程を繰り返し実行し、複数の被処理物Wに対するプラズマ処理を連続的に行う。
【0036】
ところで、このようなプラズマ処理装置1において、プラズマ発生装置10より射出される大気圧プラズマPZは、プラズマヘッド5に供給されるプラズマ発生用の第1の不活性ガスG1及び混合ガスG4それぞれの流量及び混合ガスG4の混合比率が変動するとその状態(エッチングレートの分布など)が変わってプラズマ処理能力が変化してしまう。このため、大気圧プラズマPZの状態が当初最適の状態に調整されていたとしても、複数の被処理物Wに対するプラズマ処理を継続している間にプラズマ処理能力が低下してしまう場合があり得る。
【0037】
また、その他、プラズマ発生用のガス(第1及び第2の不活性ガスG1,G2及び反応性ガスG3)に空気等の不純なガスが混合した場合、高周波電源部15に供給する電圧が変化した場合、整合回路16が熱を帯びて反射波が増加した場合等においても大気圧プラ
ズマPZの状態が悪化(プラズマ処理能力が低下)してしまう場合があり得る。このため上記のプラズマ処理装置1には、大気圧プラズマPZの状態の良否検査を行うためのプラズマ検査装置40が設けられており、このプラズマ検査装置40により定期的にプラズマ検査を行いながら被処理物Wに対するプラズマ処理を行うことができるようになっている。
【0038】
図1において、プラズマ検査装置40は、筐体2内に設けられた検査ステーション41、検査ステーション41に支持(載置)され、表面42aにレジスト等の有機物膜43が形成された測定試料42、ロボット部4の支持プレート4aに取り付けられた認識カメラ44及び前述の制御装置20を備えて構成されている。測定試料42は検査ステーション41に手置きにより載置されるが、ロボットアーム等を用いて自動で検査ステーション41に載置されるようにしてもよい。或いは、検査ステーション41を設けずに、搬送路3によって測定試料42を搬送し、所定の位置に位置決めするようにしてもよい。なお、ここでは、測定試料42は検査ステーション41に1枚だけ載置するようにしているが、検査ステーション41に測定試料42を複数枚載置するようにしてもよい。
【0039】
測定試料42はここでは矩形の平板状に形成されているものとし、材料はシリコンとする。測定試料42の表面42aには、図8に示すように、均一な厚みを有するレジスト材料から成る有機物膜43が形成されている。なお、以下、「測定試料の表面」という表現には、測定試料42の表面に設けられた有機物膜43も含む場合があるものとする。
【0040】
認識カメラ44は例えばCCDカメラから成り、撮像視野を下方に向けて設置されている。認識カメラ44は制御装置20から作動制御がなされ、プラズマ発生装置10より発生された大気圧プラズマPZが照射された測定試料42の表面を上方から撮像し、その撮像結果(画像データ)を制御装置20に送信する(図3)。制御装置20は認識カメラ44から送信された測定試料42の画像データに基づいて後述する所定の処理を行い、測定試料42に照射された大気圧プラズマPZの状態の良否判断を行う。
【0041】
プラズマ検査装置40によるプラズマ検査、すなわち大気圧プラズマPZの状態の良否検査では、制御装置20は先ず、ロボット部4の作動制御を行って、検査ステーション41に支持された測定試料42の上方にプラズマヘッド5を移動させた後(図9(a))、プラズマヘッド5を下降させて、プラズマヘッド5の下方に発生させた大気圧プラズマPZを測定試料42に照射させる(図9(b)。プラズマ照射工程)。これにより測定試料42の表面42aに形成された有機物膜43は大気圧プラズマPZが照射された部分が除去され、測定試料42の表面42aのうち、有機物膜43が除去された部分が露出した状態となる(図10(a),(b)、図11(a),(b)及び図12(a),(b))。ここで、図10(a)、図11(a)及び図12(a)は大気圧プラズマPZを照射させた後の測定試料42を上方から見た図であり、図10(b)は図10(a)の測定試料42を図中に示す矢視V1−V1から見た断面図、図11(b)は図11(a)の測定試料42を図中に示す矢視V2−V2から見た断面図、図12(b)は図12(a)の測定試料42を図中に示す矢視V3−V3から見た断面図である。
【0042】
制御装置20は、プラズマ照射工程が終了したら、プラズマヘッド5を上昇させるとともに、大気圧プラズマPZの発生を停止させる(図9(c))。そして、ロボット部4の作動制御を行って、測定試料42の大気圧プラズマPZが照射された部分の上方に認識カメラ44を移動させた後(図9(d))、認識カメラ44を下降させ、測定試料42の大気圧プラズマPZが照射された部分にピントが合うようにして、認識カメラ44に大気圧プラズマPZが照射された測定試料42の表面の撮像を行わせる(図9(e)。撮像工程)。制御装置20は、撮像工程が終了したら、認識カメラ44を上昇させる。
【0043】
撮像工程が終了したら、制御装置20の除去状態検出部20a(図3)は、認識カメラ44による撮像によって得られた画像に基づく画像認識を行って、測定試料42の表面42aにおける有機物膜43の除去状態の検出を行う(除去状態検出工程)。そして、制御装置20の良否判定部20b(図3)は、除去状態検出部20aにより検出された有機物膜43の除去状態に基づいて、大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行う(判定工程)。
【0044】
ここで、大気圧プラズマPZが照射された測定試料42を上方から撮像すると、測定試料42の表面42aに形成された有機物膜43の一部がぼぼ円形に除去された画像が得られる(図10(a),図11(a),図12(a))。そして、プラズマヘッド5から照射される大気圧プラズマPZの状態が正常であるときには、除去された有機物膜43はほぼ完全な円形となってその部分に相当する測定試料42の表面42aの全部が露出するとともに、有機物膜43の除去された部分の最大径Lは、プラズマヘッド5の下端部(大気圧プラズマPZの射出口)と測定試料42の表面42a(有機物膜43)との間の距離であるギャップG(図9(b)参照)の関数として定められる基準径L0内に収まるようになる(図10(a),(b))。
【0045】
一方、プラズマヘッド5から照射される大気圧プラズマPZの状態が正常でない(異常である)ときには、有機物膜43の除去された部分は完全な円形とならずにドーナツ形となるなど、有機物膜43の残渣43aが円形領域の内部に存在し(図11(a),(b))、或いは、有機物膜43の除去された部分の最大径Lが上記基準径L0を上回るようになる(図12(a),(b))。したがって制御装置20は、検出された有機物膜43の除去状態に基づいて大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行うことができ、その判定結果をデータ保存部21に保存するとともに、大気圧プラズマPZが異常状態にあるときには、その旨をディスプレイ装置22に表示してオペレータに警告を与える。
【0046】
オペレータは、ディスプレイ装置22に表示された検査結果に基づいて、プラズマヘッド5から射出される大気圧プラズマPZが異常であることを検知したときには、プラズマヘッド5に供給されるプラズマ発生用のガス(第1の不活性ガスG1及び混合ガスG4)それぞれの流量や混合ガスG4の混合比率が正しい値になっているかどうかのチェックを行い、大気圧プラズマPZを正常な状態に復帰させる。
【0047】
図13は、プラズマ処理装置1により、所定枚数の被処理物Wに対するプラズマ処理が終了するごとに大気圧プラズマPZの状態の検査を実行しながら被処理物Wに対するプラズマ処理を連続実行する場合の作業の流れを示すフローチャートである。
【0048】
制御装置20ははじめにプラズマ発生装置10に第1流量制御弁12a、第2流量制御弁12b、第3流量制御弁12c、第1開閉弁14a及び第2開閉弁14bの作動制御を行って、プラズマヘッド5にプラズマ発生用のガス(第1の不活性ガスG1及び混合ガスG4)を供給するとともに、高周波電源部15の作動制御を行ってアンテナ37に高周波電圧を印加したうえで、点灯回路17の作動制御を行ってプラズマヘッド5に大気圧プラズマPZを点灯させる(ステップST1。プラズマ点灯工程)。
【0049】
制御装置20はプラズマヘッド5に大気圧プラズマPZを点灯させたら、検査工程を実行するべきときであるかどうかの判断を行う(ステップST2)。この判断は、例えば、被処理物Wに対するプラズマ処理を連続して行った回数(連続処理回数)が所定回数に達したか否か等に基づいて行い、連続処理回数が所定回数に達したときには検査工程を実行すべきときであると判断し、連続処理回数が所定回数に達していないときには検査工程を実行すべきときでないと判断する。
【0050】
制御装置20は、ステップST2において、検査工程を実行すべきときでないと判断したときには、制御装置20は、搬送路3の作動制御を行って、プラズマ処理装置1の外部から投入された被処理物Wの搬入及び位置決めを行い(ステップST3。位置決め工程)、その位置決めした被処理物Wに対して前述の要領で大気圧プラズマPZを照射してプラズマ処理を実行する(ステップST4。プラズマ処理工程)。
【0051】
制御装置20は、被処理物Wに対するプラズマ処理を実行したら、搬送路3の作動制御を行って、被処理物Wをプラズマ処理装置1の外部に搬出する(ステップST5。搬出工程)。そして、次にプラズマ処理を行うべき被処理物Wがあるかどうかの判断、すなわち全ての作業(プラズマ処理)が終了したかどうかの判断を行う(ステップST6)。その結果、次にプラズマ処理を行うべき被処理物Wがあったときには作業は終了していないとしてステップST2に戻り、次にプラズマ処理を行うべき被処理物Wがなかったときには、作業は終了したとして大気圧プラズマPZを消灯させる(ステップST7)。
【0052】
一方、制御装置20は、ステップST2において、検査工程を実行すべきであると判断したときには、プラズマヘッド5を検査ステーション41の上方に移動させ、測定試料42に大気圧プラズマPZを照射させる(ステップST8。プラズマ照射工程)。そして、測定試料42への大気圧プラズマPZの照射が終了したら、認識カメラ44により測定試料42の撮像を行うとともに、この撮像によって得られた測定試料42の表面の画像から有機物膜43の除去状態の検出を行う(ステップST9。撮像工程及び除去状態検出工程)。そして、測定試料42の表面に有機物膜43の残渣43aが認められるどうかの判断を行い(ステップST10)、その結果、測定試料42の表面に有機物膜43の残渣43aが認められなかったときには、更に、有機物膜43の除去された部分の最大径Lが基準径L0以下であるかどうかの判断を行う(ステップST11)。
【0053】
ここで、上記のステップST9(撮像工程及び除去状態検出工程)は、大気圧プラズマPZが照射された測定試料42の表面の状態を検出する表面状態検出工程に相当し、上記のステップST10とステップST11は、検出した測定試料42の表面の状態に基づいて大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行う判定工程に相当する。
【0054】
また、測定試料42の表面の撮像を行う撮像手段としての認識カメラ44及び認識カメラ44の撮像によって得られた測定試料42の表面の画像から有機物膜43の除去状態を検出する制御装置20の除去状態検出部20aは、大気圧プラズマPZが照射された測定試料42の表面の状態を検出する表面状態検出手段を構成し、制御装置20の良否判定部20bは、除去状態検出部20aにより検出された有機物膜43の除去状態に基づいて大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行う判定手段を構成する。
【0055】
ステップST11における判定の結果、有機物膜43の除去された部分の最大径Lが基準径L0以下であったときには、大気圧プラズマPZは正常であるとしてステップST2に戻り、有機物膜43の除去された部分の最大径Lが基準径L0を上回るとき、或いはステップST10で測定試料42の表面に有機物膜43の残渣43aが認められたときには、大気圧プラズマPZは異常であるとして、その旨をディスプレイ装置22に表示してオペレータに警告を与えた上で(ステップST12)、大気圧プラズマPZを消灯させる(ステップST7)。
【0056】
これにより、所定枚数の被処理物Wに対するプラズマ処理が終了するごとに大気圧プラズマPZの状態の検査が実行され、大気圧プラズマPZの状態の検査において異常が認められたときにはオペレータが必要な処置をとることによって、大気圧プラズマPZを正常な状態に復帰させることができる。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態におけるプラズマ検査方法は、プラズマ発生用のガス(第1の不活性ガスG1及び混合ガスG4)が供給される反応空間(上部反応空間33)内に電界を印加して大気圧近傍の圧力下で発生させた大気圧プラズマPZの状態の良否検査を行うものであり、測定試料42の表面に大気圧プラズマPZを照射するプラズマ照射工程(ステップST8)と、大気圧プラズマPZが照射された測定試料42の表面の状態を検出する表面状態検出工程(ステップST9)と、検出した測定試料42の表面の状態に基づいて大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行う判定工程(ステップST10及びステップST11)を含むものとなっている。
【0058】
そして、測定試料42は、表面に有機物膜43が形成されたものから成り、表面状態検出工程では、大気圧プラズマPZが照射された測定試料42の表面の撮像を行うとともに(撮像工程)、この撮像によって得られた測定試料42の表面の画像から有機物膜43の除去状態の検出(除去状態検出工程)を行うようになっている。また判定工程では、検出した有機物膜43の除去状態に基づいて大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行うようになっている。
【0059】
また、本実施の形態におけるプラズマ検査装置40は、プラズマ発生用のガスが供給される反応空間(上部反応空間33)内に電界を印加して大気圧近傍の圧力下で発生させた大気圧プラズマPZの状態の良否検査を行うものであり、表面に大気圧プラズマPZが照射される測定試料42と、大気圧プラズマPZが照射された測定試料42の表面の状態を検出する表面状態検出手段と、表面状態検出手段により検出された測定試料42の表面の状態に基づいて大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行う判定手段を備えたものとなっている。
【0060】
そして、測定試料42は、表面に有機物膜43が形成されたものから成り、表面状態検出手段は、大気圧プラズマPZが照射された測定試料42の表面の撮像を行う撮像手段としての認識カメラ44及び認識カメラ44の撮像によって得られた測定試料42の表面の画像から有機物膜43の除去状態を検出する除去状態検出手段としての制御装置20の除去状態検出部20aから成っており、判定手段は、制御装置20の除去状態検出部20aにより検出された有機物膜43の除去状態に基づいて大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行う制御装置20の良否判定部20bから成っている。
【0061】
このように、本実施の形態におけるプラズマ検査方法(プラズマ検査装置40)では、測定試料42の表面に大気圧下で発生させた大気圧プラズマPZを照射して測定試料42の表面の状態を検出し、その検出した測定試料の表面の状態に基づいて大気圧プラズマの状態の良否判定を行うようになっているので、簡便かつ的確に大気圧プラズマの良否検査を行うことができる。
【0062】
ここで、測定試料42の表面に形成される有機物膜43は特に限定されないが、上述の実施の形態に示したように、有機物膜43が均一な厚みを有するレジスト材料から成るのであれば、プラズマ検査を安価かつ容易に行うことができるという利点を有する。また、測定試料42の表面に形成される有機物膜43が測定試料42とは異なる色を有しているのであれば、有機物膜43の除去状況を把握するための画像認識が容易になるので好ましい。
【0063】
また、本実施の形態におけるプラズマ処理方法は、被処理物Wを搬入して所定位置に位置決めする位置決め工程と、位置決めした被処理物Wに、プラズマ発生用のガスが供給される反応空間(上部反応空間33)内に電界を印加して大気圧近傍の圧力下で発生させた大気圧プラズマPZを照射して被処理物Wの表面をプラズマ処理するプラズマ処理工程と、プラズマ処理工程を施した被処理物Wを搬出する搬出工程を含み、プラズマ処理工程に
おいて用いる大気圧プラズマPZの良否検査を上記プラズマ検査方法により行うようになっている。
【0064】
また、本実施の形態におけるプラズマ処理装置1は、被処理物Wを搬入して所定位置に位置決めする位置決め手段としての搬送路3と、搬送路3により位置決めされた被処理物Wに、プラズマ発生用のガスが供給される反応空間(上部反応空間33)内に電界を印加して大気圧近傍の圧力下で発生させた大気圧プラズマPZを照射して被処理物Wの表面をプラズマ処理するプラズマ処理手段としてのプラズマ発生装置10と、プラズマ発生装置10によるプラズマ処理が施された被処理物Wを搬出する搬出手段としての搬送路3と、プラズマ発生装置10において用いられる大気圧プラズマPZの良否判定を行う上記プラズマ検査装置40を備えたものとなっている。
【0065】
本実施の形態におけるプラズマ処理方法(プラズマ処理装置1)では、上記プラズマ検査方法(プラズマ検査装置40)により検査した大気圧プラズマPZが用いられて被処理物Wに対するプラズマ処理が行われるので、常時良好なプラズマ処理が施された製品(被処理物W)を得ることができる。
【0066】
なお、プラズマ実装装置1が備えるプラズマ発生装置10は上述したものとは異なる形態のものを用いることもできる。
【0067】
例えば、図14(a)に示すプラズマ発生装置50は、筒状体51の内部に形成された反応空間52内に、一定間隔を有して配置された一対の誘電体53を挟むように一対の電極54が配設されている。一対の電極54には実施の形態1の場合と同様の高周波電源部15が接続されている。
【0068】
プラズマ発生装置50に大気圧プラズマPZを発生(点灯)させるには、制御装置20から高周波電源部15の作動制御を行い、両電極54間に高周波電圧を供給することによって反応空間52内に高周波電界を印加するとともに、筒状体51の上方から反応空間52内にプラズマ発生用のガス(不活性ガス又は不活性ガスと反応性ガスとの混合ガス)を供給する。これにより反応空間52内に大気圧プラズマPZが発生し、その大気圧プラズマPZがプラズマ発生装置50の下方に射出される。
【0069】
図14(b)に示すプラズマ発生装置60は、円筒状の反応容器61の外周にコイル状のアンテナ62が巻回され、アンテナ62には実施の形態1の場合と同様の高周波電源部15が接続されている。
【0070】
プラズマ発生装置60に大気プラズマPZを発生させるには、反応容器61の内部の反応空間63内にプラズマ発生用のガスを供給するとともに、制御装置20から高周波電源部15の作動制御を行い、アンテナ62に高周波電圧を供給する。これにより反応空間63内に誘導結合型の大気圧プラズマPZが発生し、その大気圧プラズマPZがプラズマ発生装置60の下方に射出される。
【0071】
図14(c)に示すプラズマ発生装置70は、誘電体から成る反応管71の内側に内側電極72が配置されるとともに外側に外側電極73が配置され、両電極72,73には実施の形態1の場合と同様の高周波電源部15が接続されている。
【0072】
プラズマ発生装置70に大気圧プラズマPZを発生させるには、制御装置20から高周波電源部15の作動制御を行い、両電極72,73の間に高周波電圧を供給するとともに、反応管71の内部の反応空間74内にプラズマ発生用のガスを供給する。これにより反応空間74内に大気圧プラズマPZが発生し、その大気圧プラズマPZがプラズマ発生装
置70の下方に射出される。
【0073】
図14(d)に示すプラズマ発生装置80は、誘電体から成る反応管81の外周部に軸心方向に間隔を空けて一対の電極82,83が配置され、両電極82,83には実施の形態1の場合と同様の高周波電源部15が接続されている。
【0074】
プラズマ発生装置80に大気圧プラズマPZを発生させるには、制御装置20から高周波電源部15の作動制御を行い、両電極82,83の間に高周波電圧を供給するとともに、反応管81の一端(上端)側から反応管81の内部の反応空間84内にプラズマ発生用のガスを供給する。これにより反応空間84内に大気圧プラズマPZが発生し、その大気圧プラズマPZが反応管81の他端(下端)側から下方に射出される。
【0075】
図14(e)に示すプラズマ発生装置90は、断面形状が細長い長方形形状の誘電体から成る反応管91の外周部に軸心方向に間隔を空けて一対の電極92,93が配置され、両電極92,93には実施の形態1の場合と同様の高周波電源部15が接続されている。
【0076】
プラズマ発生装置90に大気圧プラズマPZを発生させるには、制御装置20から高周波電源部15の作動制御を行い、両電極92,93の間に高周波電圧を供給するとともに、反応管91の内部の反応空間94内に、反応管91の一端(上端)側からプラズマ発生用のガスを供給する。これにより反応空間94内に大気圧プラズマPZが発生し、その大気圧プラズマPZがプラズマ発生装置90の他端(下端)側から下方に射出される。
【0077】
(実施の形態2)
次に、図15を用いて本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2におけるプラズマ実装装置1は、上述の実施の形態1におけるプラズマ処理装置1と同様の構成であるが、実施の形態1におけるプラズマ処理装置1が、プラズマヘッド5に対して相対的に固定した測定試料42に対して大気圧プラズマPZを照射していたのに対し、実施の形態2におけるプラズマ処理装置1では、プラズマヘッド5に対して測定試料42を相対的に移動させながら大気圧プラズマPZを測定試料42の表面に(有機物膜43に)照射させるものである。
【0078】
プラズマヘッド5に対して測定試料42を相対的に移動させるのは、検査ステーション41により支持した測定試料42に対してプラズマヘッド5を水平方向(例えばX軸方向)に移動させるのであってもよいし、搬送路3によって測定試料42を搬送してプラズマヘッド5の下方を通過させ、その通過の際にプラズマヘッド5から照射される大気圧プラズマPZが測定試料42に当たるようにしてもよい。
【0079】
実施の形態2では、プラズマヘッド5に対して測定試料42を相対的に移動させながら大気圧プラズマPZを測定試料42の表面に照射させるため、大気圧プラズマPZが照射された後の測定試料42を上方から撮像すると、測定試料42の表面に形成された有機物膜43の一部が、プラズマヘッド5と測定試料42の相対移動方向に延びた、ほぼ一定幅の帯状に除去された画像が得られる(図15(a),(b),(c))。そして、プラズマヘッド5から照射される大気圧プラズマPZの状態が正常であるときには、有機物膜43の除去された部分は一本の帯状部となってその部分に相当する測定試料42の表面42aの全部が露出するとともに、有機物膜43の除去された部分の最大幅径Tは、プラズマヘッド5の下端部(大気圧プラズマPZの射出口)と測定試料42の表面(有機物膜43)との間の距離であるギャップG(図9(b))の関数として定められる基準幅T0内に収まるようになる(図15(a))。
【0080】
一方、プラズマヘッド5から照射される大気圧プラズマPZの状態が正常でないときに
は、有機物膜43の除去された部分は一本の帯状部とならずに複数の帯状部となって間に有機物膜43の残渣43aが帯状に存在し(図15(b))、或いは、有機物膜43の除去された部分の最大幅Tが上記基準幅T0を上回るようになる(図15(c))。したがって、この場合も制御装置20は、検出された有機物膜43の除去状態に基づいて大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行うことができ、大気圧プラズマPZが異常状態にあるときには、その旨をディスプレイ装置22に表示してオペレータに警告を与えることができる。なお、実施の形態2では、図13のフローチャートのステップST11において、「最大径」を「最大幅」と読み替え、「基準径」を「基準幅」と読み替えることになる。
【0081】
このような実施の形態2におけるプラズマ検査方法、プラズマ検査装置40であっても、実施の形態1におけるプラズマ検査方法、プラズマ検査装置40と同様の効果を得ることができる。
【0082】
(実施の形態3)
次に、図16及び図17を用いて本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3におけるプラズマ処理装置1は、上述の実施の形態1又は2におけるプラズマ処理装置1と同様の構成であるが、大気圧プラズマPZを照射した後の測定試料42の表面の状態の検出及びその検出結果に基づいて行う大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行う方法が異なるものである。
【0083】
反応性ガスとして酸素が微量でも混入している場合、発生する大気圧プラズマPZが、所定の材料から成る測定試料42(例えばガラス基板)に照射されると、測定試料42の表面の親水性が大幅に向上することが知られていることから、実施の形態3では、大気圧プラズマPZを照射した後の測定試料42の表面42aに所定の試薬を滴下して、測定試料42の表面42aにおける試薬100の接触角(図16に示すように、測定試料42の表面42a上に滴下された試薬100の「上方に凸」の部分の下縁101における、試薬100の表面に対する接線102と測定試料42の表面42aとがなす角度)θを検出し、その検出した接触角θの大きさに基づいて測定試料42の表面の親水性を求め、これに基づいて測定試料42の表面の状態を検出するものである。
【0084】
このため実施の形態3におけるプラズマ処理装置1では、測定試料42の表面に有機物膜43が形成されることは必ずしも必要ではなく、図17に示すように、大気圧プラズマPZが照射された測定試料42の表面42aに試薬を滴下する試薬滴下手段111と、試薬が滴下された測定試料42を側方から撮像する撮像手段(例えば認識カメラ)112と、撮像手段112により撮像された画像に基づいて、測定試料42の表面における試薬100の接触角θを算出する接触角算出手段としての制御装置20の接触角算出部20cと、接触角算出部20cにおいて算出された接触角θから求められる測定試料42の表面の状態に基づいて、大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行う判定手段としての制御装置20の良否判定部20dを備えている。ここで、試薬滴下手段111と撮像手段112は、プラズマ処理装置1が備える制御装置20によって作動制御がなされる。
【0085】
このように実施の形態3におけるプラズマ処理方法では、大気圧プラズマPZが照射された測定試料42の表面の状態を検出する表面状態検出工程は、大気圧プラズマPZが照射された測定試料42の表面に試薬を滴下する試薬滴下工程と、試薬が滴下された測定試料42を側方から撮像する撮像工程と、撮像された画像に基づいて、測定試料42の表面における試薬100の接触角θを算出する接触角算出工程から成り、検出された測定試料42の表面の状態に基づいて大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行う判定工程は、表面状態検出工程(接触角算出工程)において算出された接触角θから求められる測定試料42の表面の状態に基づいて、大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行う接触角判定工程から成る。
【0086】
また、実施の形態3におけるプラズマ処理装置1では、大気圧プラズマPZが照射された測定試料42の表面の状態を検出する表面状態検出手段は、大気圧プラズマPZが照射された測定試料42の表面に試薬を滴下する試薬滴下手段111と、試薬が滴下された測定試料42を側方から撮像する撮像手段112と、撮像手段112により撮像された画像に基づいて、測定試料42の表面における試薬100の接触角θを算出する接触角算出手段(制御装置20の接触角算出部20c)から成り、表面状態検出手段により検出された測定試料42の表面の状態に基づいて大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行う判定手段は、表面状態検出手段(制御装置20の接触角算出部20c)において算出された接触角θから求められる測定試料42の表面の状態に基づいて、大気圧プラズマPZの状態の良否判定を行う制御装置20の良否判定部20dから成る。
【0087】
このような実施の形態3におけるプラズマ検査方法、プラズマ検査装置40であっても、実施の形態1又は実施の形態2におけるプラズマ検査方法、プラズマ検査装置40と同様の効果を得ることができる。
【0088】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述の実施の形態に限定されない。例えば、上述の実施の形態の図1等において示した測定試料42の形状は矩形形状であったが、これは一例に過ぎず、円形等、他の形状であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
簡便かつ的確に大気圧プラズマの良否検査を行うことができるプラズマ検査方法、プラズマ処理方法、プラズマ検査装置及びプラズマ処理装置を提供する。
【符号の説明】
【0090】
1 プラズマ処理装置
3 搬送路(位置決め手段、搬出手段)
10 プラズマ発生手段(プラズマ処理手段)
15 高周波電源部
20a 除去状態検出部(表面状態検出手段、除去状態検出手段)
20b 良否判定部(判定手段)
33 上部反応空間(反応空間)
40 プラズマ検査装置
42 測定試料
43 有機物膜
44 認識カメラ(表面状態検出手段、撮像手段)
G1 第1の不活性ガス(プラズマ発生用のガス)
G4 混合ガス(プラズマ発生用のガス)
PZ 大気圧プラズマ(プラズマ)
W 被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ発生用のガスが供給される反応空間内に電界を印加して大気圧近傍の圧力下で発生させたプラズマの状態の良否検査を行うプラズマ検査方法であって、
測定試料の表面に前記プラズマを照射するプラズマ照射工程と、
前記プラズマが照射された前記測定試料の表面の状態を検出する表面状態検出工程と、
検出した前記測定試料の表面の状態に基づいて前記プラズマの状態の良否判定を行う判定工程とを含むことを特徴とするプラズマ検査方法。
【請求項2】
前記測定試料は表面に有機物膜が形成されたものから成り、
前記表面状態検出工程では、前記プラズマが照射された前記測定試料の表面の撮像を行うとともに、この撮像によって得られた前記測定試料の表面の画像から有機物膜の除去状態の検出を行い、
判定工程では、検出した有機物膜の除去状態に基づいて前記プラズマの状態の良否判定を行うことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ検査方法。
【請求項3】
前記測定試料の表面に形成される有機物膜は均一な厚みを有するレジスト材料から成ることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ検査方法。
【請求項4】
前記測定試料の表面に形成される有機物膜は前記測定試料とは異なる色を有していることを特徴とする請求項2又は3に記載のプラズマ検査方法。
【請求項5】
前記電界は1KHz以上、30GHz以下の周波数帯を有する高周波電源部により励起されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のプラズマ検査方法。
【請求項6】
被処理物を搬入して所定位置に位置決めする位置決め工程と、
位置決めした被処理物に、プラズマ発生用のガスが供給される反応空間内に電界を印加して大気圧近傍の圧力下で発生させたプラズマを照射して前記被処理物の表面をプラズマ処理するプラズマ処理工程と、
プラズマ処理工程を施した前記被処理物を搬出する搬出工程とを含むプラズマ処理方法であって、
プラズマ処理工程において用いるプラズマの良否検査を請求項1乃至5の何れかに記載のプラズマ検査方法により行うことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項7】
プラズマ発生用のガスが供給される反応空間内に電界を印加して大気圧近傍の圧力下で発生させたプラズマの状態の良否検査を行うプラズマ検査装置であって、
表面に前記プラズマが照射される測定試料と、
前記プラズマが照射された前記測定試料の表面の状態を検出する表面状態検出手段と、
前記表面状態検出手段により検出された前記測定試料の表面の状態に基づいて前記プラズマの状態の良否判定を行う判定手段とを備えたことを特徴とするプラズマ検査装置。
【請求項8】
前記測定試料は表面に有機物膜が形成されたものから成り、
前記表面状態検出手段は、前記プラズマが照射された前記測定試料の表面の撮像を行う撮像手段及び前記撮像手段の撮像によって得られた前記測定試料の表面の画像から有機物膜の除去状態を検出する除去状態検出手段から成り、
前記判定手段は、除去状態検出手段により検出された有機物膜の除去状態に基づいて前記プラズマの状態の良否判定を行うことを特徴とする請求項7に記載のプラズマ検査装置。
【請求項9】
前記測定試料の表面に形成される有機物膜は均一な厚みを有するレジスト材料から成る
ことを特徴とする請求項8に記載のプラズマ検査装置。
【請求項10】
前記測定試料の表面に形成される有機物膜は前記測定試料とは異なる色を有していることを特徴とする請求項8又は9に記載のプラズマ検査装置。
【請求項11】
前記電界は1KHz以上、30GHz以下の周波数帯を有する高周波電源部により励起されることを特徴とする請求項7乃至10の何れかに記載のプラズマ検査装置。
【請求項12】
被処理物を搬入して所定位置に位置決めする位置決め手段と、
位置決め手段により位置決めされた被処理物に、プラズマ発生用のガスが供給される反応空間内に電界を印加して大気圧近傍の圧力下で発生させたプラズマを照射して前記被処理物の表面をプラズマ処理するプラズマ処理手段と、
プラズマ処理手段によるプラズマ処理が施された前記被処理物を搬出する搬出手段と、
プラズマ処理手段において用いられるプラズマの良否判定を行う請求項7乃至11の何れかに記載のプラズマ検査装置とを備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−251145(P2010−251145A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99805(P2009−99805)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】