プラズマCVD装置
【課題】絶縁膜の堆積による不都合、特に膜厚の不均一、異常放電の発生を簡単な構成で解消する。
【解決手段】プラズマCVD装置1は、ガス供給機構7およびガス排気機構9に連結した真空チャンバ3内に平行平板電極5を備え、この平行平板電極5は、マッチングボックスMBを介して交流電源PSに接続された高周波電極5Aと接地された対向電極5Bから構成される。製品の成膜処理により平行平板電極5の表面に堆積した絶縁物11を導電膜15で覆って導電化するメンテナンスを行う。これは、基板ホルダ(対向電極)5B上に基板が無い状態で導電膜、例えばアモルファスシリコン(a−Si)膜または屈折率2.3以上のSiN膜を成膜することにより行う。その後、基板の成膜処理を行うことで、均一な膜厚の絶縁膜が得られる。
【解決手段】プラズマCVD装置1は、ガス供給機構7およびガス排気機構9に連結した真空チャンバ3内に平行平板電極5を備え、この平行平板電極5は、マッチングボックスMBを介して交流電源PSに接続された高周波電極5Aと接地された対向電極5Bから構成される。製品の成膜処理により平行平板電極5の表面に堆積した絶縁物11を導電膜15で覆って導電化するメンテナンスを行う。これは、基板ホルダ(対向電極)5B上に基板が無い状態で導電膜、例えばアモルファスシリコン(a−Si)膜または屈折率2.3以上のSiN膜を成膜することにより行う。その後、基板の成膜処理を行うことで、均一な膜厚の絶縁膜が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD成膜方法およびプラズマCVD装置に関する。特に本発明は、プラズマCVD成膜方法における、異常放電を抑制する方法および膜厚均一化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な容量結合型のプラズマCVD装置は、真空チャンバと、放電のための平行平板電極と、放電用ガス供給機構と、ガス排気機構と、数十kHz〜数十MHzの交流電源と、マッチングボックスとより構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
プラズマ放電負荷を発生させるための平行平板電極と交流電源との間に挿入されたマッチングボックス(特許文献1の図2,段落[0002]参照)は、交流電源側の出力インピーダンスと、マッチングボックスの入力インピーダンスが複素共役の関係を維持するよう、可変インダクタおよび可変キャパシタを有している。マッチングボックスは、ガス流量・圧力・チャンバ3の汚れ等に起因して動的に変動するプラズマ放電負荷に対応して、可変キャパシタおよび可変インダクタを調整することによりインピーダンスマッチングを行う。そのことにより、平行平板電極5のプラズマ放電電極側からの反射電力をなくして一定の電力をプラズマ放電負荷に供給し、それによって、安定したプラズマ放電を可能としている。
【0004】
対向電極は基板ホルダを兼ねており、この基板ホルダ上に基板を載置し、ガス供給機構から反応ガスを供給し、ガス排気機構により真空チャンバ内の圧力を所定圧に保ち、平行平板電極に交流電源から交流電力を供給してプラズマ放電を起こし、反応ガスに生成したプラズマを作用させ、反応性生物を基板表面に絶縁膜を成膜する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−227816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来から知られている容量結合型のプラズマCVD装置では、成膜処理の時間・回数が経過するのに伴ってプラズマ放電電極上および対向電極(少なくともその露出面、すなわち基板が載置されない表面部分)上に絶縁物が逐次堆積していく。その結果、薄膜の膜厚が不均一になったり、異常放電を起したりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者等は上述した現象を鋭意研究し、以下のような所見を得た。
電極表面の絶縁物の堆積量は、ガス密度や電極形状の影響を受けて電極の場所によって異なり、堆積量が多い点は高インピーダンスとなり、堆積量が少ない点は低インピーダンスとなる。そのため、低インピーダンス領域は電流が流れやすくなり、高インピーダンス領域に比べてプラズマ密度が高くなり、成膜レートが高くなる。その結果、成膜レートが平行平板電極の場所によって異なる。
【0008】
図10は絶縁物の堆積による成膜レートの分布の悪化を説明する概念図であり、マッチングボックス、交流電源、ガス供給機構およびガス排気機構は省略し、反応室内の対向電極上に基板が存在しない状態での平行平板電極の表面に堆積した絶縁物の状態を示す。
【0009】
図10に示すように、平行平板電極105の両端側から中央部に向かって堆積絶縁物111の厚さが徐々に増加しており、これにともなってプラズマ密度Dが中央部で低く、両端部に向かって高くなっている。このため中央部では成膜レートが低くなり、一方両端部では成膜レートが高くなり、均一な成膜レートが得られない。その結果、製品の薄膜の膜厚が不均一になってしまう。
【0010】
また、例えばプラズマCVDを利用して半導体素子のパッシベーション膜を形成する成膜装置、特に結晶系シリコンの太陽電池の反射防止膜を形成する装置の場合などのように、反応チャンバにおいて一度に多数の基板を基板ホルダ上に配置して絶縁膜の成膜を繰り返すと、基板ホルダの基板で覆われない部分には絶縁物が堆積して行く。
【0011】
図11はこの状態を模式的に示す。図11に示すように、基板ホルダ105B上に配置された複数の基板S同士の間に、すなわち基板Sに覆われない基板ホルダ表面には、成膜を繰り返すと絶縁物111が堆積し、凹凸のある基板ホルダ表面となる。
【0012】
また、過剰な電流が流れた場合に局所的な高密度放電を引き起こす。図12は異常放電ADを説明する概念図であり、マッチングボックス、交流電源、ガス供給機構およびガス排気機構は省略し、反応室内の対向電極上に基板が存在しない状態での平行平板電極の表面に堆積した絶縁物の状態を示す。
【0013】
図12に示すように、平行平板電極105に絶縁物が一様に堆積した場合に、電極端部の電界の強い部分である高周波電極105Aの端部105Cとアースシールド113との間で局所的なアーク放電を引き起こすことがある。また、絶縁物111はキャパシタとなり絶縁物の表面には電荷が貯まるため、貯まった電荷が放電によって一気に放出された場合に、局所的なアーク放電を引き起こす。このような局所的な高密度放電やアーク放電のような異常放電ADは、図示しない基板(に形成する薄膜の膜厚分布を著しく劣化させる。特に絶縁物のコーナー部111Aにおいてこの現象は著しい。また、異常放電ADは高周波電極105Aやアースシールド113に付着した絶縁膜を剥離させ、パーティクルの発生源となる。
【0014】
以上の所見に基づいて本発明者等は、以下の請求項1〜9の発明を創案した。
(1)請求項1の発明は、電極を用いた容量結合型プラズマCVDによって基板の表面に薄膜を形成するプラズマCVD成膜方法において、前記基板の表面へ薄膜を形成する薄膜形成工程と、前記薄膜形成工程で前記基板の表面に薄膜を形成した後、前記基板が無い状態で前記薄膜と比較して導電性の高い薄膜を前記電極の表面に生成する導電性薄膜形成工程とを有することを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、電極を用いた容量結合型プラズマCVDによって基板の表面に薄膜を形成するプラズマCVD装置において、前記基板の表面へ薄膜を形成する薄膜形成手段と、前記薄膜形成手段による一定量の薄膜を前記基板の表面に形成した後、前記基板が無い状態で前記薄膜と比較して導電性の高い薄膜を前記電極の表面に生成する導電性薄膜生成手段とを備えたことを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、平行平板電極にて放電を行い、基板の表面に窒化シリコン薄膜を成膜するプラズマCVD成膜方法において、前記基板の表面へ屈折率2.3未満の窒化シリコン薄膜を形成する薄膜形成工程と、前記基板の表面へ一定量の窒化シリコン薄膜を形成した後に、基板が無い状態で、アモルファスシリコン(以下、a−Si)または屈折率2.3以上の窒化シリコン膜を前記平行平板電極の表面に生成する窒化シリコン薄膜形成工程とを有することを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、平行平板電極にて放電を行い、基板の表面に窒化シリコン薄膜を成膜するプラズマCVD装置において、前記基板表面へ屈折率2.3未満の窒化シリコン薄膜を形成する薄膜形成手段と、前記基板表面へ一定量の窒化シリコン薄膜を形成した後に、前記基板が無い状態で、アモルファスシリコン(a−Si)または屈折率2.3以上の窒化シリコン膜を前記平行平板電極の表面に生成する窒化シリコン薄膜形成手段とを備えたことを特徴とする。
(5)請求項5の発明は、平行平板電極にて放電を行い、基板に絶縁性薄膜を成膜するプラズマCVD装置を用いる絶縁性薄膜の成膜方法であって、前記基板に絶縁膜を成膜する絶縁膜成膜工程と、前記平行平板電極の表面のメンテナンスが必要であるか否かを判断する判断工程と、前記判断工程において前記メンテナンスが必要であると判断された場合に、前記基板が無い状態で前記平行平板電極の表面に導電膜を成膜する導電膜成膜工程とを備えることを特徴とする。
(6)請求項6の発明は、請求項5に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、さらに、異常放電の発生を検出する異常放電発生検出工程を備え、前記判断工程における前記メンテナンスが必要であるか否かの判断を、前記異常放電の発生の有無に基づいて行うことを特徴とする。
(7)請求項7の発明は、請求項5に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、さらに、あらかじめ連続して行われる成膜処理の回数を設定する限界成膜回数設定工程を備え、前記判断工程における前記メンテナンスが必要であるか否かの判断を、前記限界成膜回数設定工程において設定された限界成膜回数の到達により行うことを特徴とする。
(8)請求項8の発明は、請求項5に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、さらに、絶縁膜の膜厚検査工程を備え、前記判断工程における前記メンテナンスが必要であるか否かの判断を、前記膜厚検査工程において設定された膜厚の到達により行うことを特徴とする。
(9)請求項9の発明は、請求項6に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、前記絶縁膜成膜工程と、前記異常放電発生検出工程と、前記導電膜成膜工程とを繰り返すことを特徴とする。
(10)請求項10の発明は、請求項5〜9のいずれか一項に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、前記絶縁性薄膜は屈折率2.3未満のSiN膜であり、前記導電膜はa−Si膜または屈折率2.3以上のSiN膜であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プラズマCVD装置に追加の部品または装置を設けることなく、電極に付着した絶縁膜の悪影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のプラズマCVD装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態による導電膜成膜処理を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の他の実施の形態による導電膜成膜処理を説明するフローチャートである。
【図4】本発明のメンテナンス工程を説明する工程図である。
【図5】本発明の一実施の形態によるプラズマCVD装置の概念図である。
【図6】本発明の一実施の形態によるプラズマCVD装置の概念図である。
【図7】絶縁膜の成膜工程を示す工程図である。
【図8】本発明の絶縁膜成膜方法により得られた絶縁膜の膜厚分布を示すグラフである。
【図9】本発明の絶縁膜成膜方法により得られた絶縁膜のVdcの変化を示すグラフである。
【図10】従来装置における絶縁物の堆積による成膜レートの分布の悪化を説明する概念図である。
【図11】従来装置における平行平板電極上の絶縁物の堆積状況を説明する概念図である。
【図12】従来装置における平行平板電極上に堆積した絶縁物による異常放電の発生の様子を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態によるプラズマCVD装置を説明する。以下の図面の記載において、図面は模式的なものであり、必ずしも現実のものを忠実に表現するものではなく、各部品、要素等の相対的位置関係は、説明の便宜上のものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が必ずしも同じではない。
【0018】
図1は本発明の一実施の形態にかかるプラズマCVD装置を示す概念図である。図に示すように、プラズマCVD装置1は、真空チャンバ3内に平行平板電極5を備える。この平行平板電極5は、マッチングボックスMBを介して交流電源PSに接続された高周波電極5Aと、接地された対向電極(基板ホルダとも呼ぶ)5Bから構成される。高周波電極5Aと対向電極5Bの電極間距離は場所によらず一定の距離に保たれる。真空チャンバ3にはガス供給機構7とガス排気機構9とが接続されている。プラズマCVD装置1は、また、制御装置10、検出器12、スイッチ14を備える。制御装置は、プログラムを展開・実行し、あるいは各種演算を行うCPU16と、成膜シーケンスおよび後述する本発明のメンテナンスのシーケンスを実行するプログラムを格納したROM18を備えている。
【0019】
ガス供給機構7には流量調節計(図示しない)が設けられ、成膜中のガス供給量を一定に保ち、一方、ガス排気機構9にはガス調圧弁(図示しない)が備えられ、制御装置10の制御により真空チャンバ3内の圧力を一定且つ一様に保つ。これにより、真空チャンバ3内のガス分布が一様に保たれる。電極間距離、ガス分布が場所によらずに一様に保たれることによって、プラズマ放電負荷が一様となり、局所的に過剰な電流が流れることなく、安定した正規グロー放電を可能にしている。
【0020】
プラズマ放電負荷を発生させるための平行平板電極5と交流電源PSとの間に挿入されたマッチングボックスMBは、ガス流量・圧力・チャンバ3の汚れ等に起因して動的に変動するプラズマ放電負荷に対応して、可変キャパシタおよび可変インダクタを調整することによりインピーダンスマッチングを行う。そのことにより、平行平板電極5のプラズマ放電電極5A側からの反射電力をなくして一定の電力をプラズマ放電負荷に供給し、それによって、安定したプラズマ放電を可能としている。
【0021】
本発明の一実施の形態によれば、図1に示すプラズマCVD装置1を用いて、下記のシーケンスに従って成膜を行う。図2は、本発明の一実施の形態による絶縁性薄膜成膜方法を説明するフローチャートである。
【0022】
図2に示すように、成膜プロセスは装置起動(ステップS1)後、ガス供給機構7およびガス排気機構9の給排気の調節(流速、圧力等)、図示しないヒーターによる温度調節などを行い、成膜環境を整える(ステップS2)。次いで、基板Sを基板ホルダ上に載置し、交流電源PSによりプラズマ放電負荷を高周波電極5Aにかけて、プラズマを発生させ、ガス供給機構7から導入された反応ガスにプラズマを作用させて材料ガスを反応させ、反応生成物(絶縁物)を基板Sの表面に堆積させ、絶縁膜が成膜された基板を真空チャンバ3から取り出して絶縁性薄膜を成膜する(ステップS3)。成膜を一回行うごとに成膜回数カウンタを1だけインクリメントする(C=C+1)(ステップS4)。次いで、この絶縁膜成膜工程における成膜回数Cが所定の限界成膜回数Rcに達したかを判断する(ステップS5)。すなわち、ステップS5において、メンテナンスが必要か否かを判断する。
【0023】
この判断は次のようにして行われる。成膜工程を繰り返した場合にそれ以後の成膜された製品の薄膜の膜厚分布が初めて許容範囲を超えて不均一になる回数を求め、安全を見込んでそれ以下の適切な値に設定された限界成膜回数値をあらかじめ設定しておき、成膜工程が行われた回数の値(C)をこの所定の限界成膜回数値(Rc)と比較する。
【0024】
C<Rcのときは、平行平板電極のメンテナンスが不要であると判断され(ステップS5,NO)、C=Rcのときは、平行平板電極のメンテナンスが必要である(ステップS5、YES)と判断され、ステップS7に進み、生産(成膜)が中止され、ついでステップS8において導電膜の成膜(メンテナンス)が行われる。
【0025】
ステップS5において、C<Rcのときは、ステップS6に進み、異常放電の発生の有無を判断する。異常放電の発生は、図1の検出器(公知の放電検出器)14によりアーク放電の有無その他の指標を検知することによって行われる。異常放電の発生が検知されなかったとき(ステップS6,NO)は、ステップS3に戻り、絶縁膜の成膜(生産)を続行する。一方、異常放電の発生が検知されたときは(ステップS6,YES)、ステップS7に進み、絶縁膜の成膜(生産)を中止し、さらにステップS8に進み、平行平板電極5の電極面のメンテナンスを行う。
【0026】
このメンテナンスは、基板ホルダである対向電極5B上に基板が存在しない状態で導電膜を成膜することによって行われる。導電膜は、製品の薄膜よりも導電性の高い材料を用いて成膜される。
【0027】
図4は、メンテナンスの工程を模式的に説明する工程図である。図4(a)は対向電極5B上に基板Sを相互に距離をおいて複数個並べた状態を示す平面図である。図4(b)は図4(a)の基板に絶縁膜を成膜する工程を繰返し、対向電極5Bの基板が載置されない電極表面上に絶縁物11が堆積した状態を示す断面図である。基板が載置される位置の電極表面にはこの絶縁物の堆積が見られず、電極表面は凹凸状になる。図4(c)は図4(b)の状態の対向電極5Bに対して導電膜15を成膜し、絶縁物11を完全に覆った状態を示す断面図である。一方、図4(d)は高周波電極5Aの電極表面を示す平面図である。図4(e)は、基板ホルダ上に基板Sを載置して基板Sに対して絶縁膜の成膜を繰り返したため高周波電極5Aの電極表面にも絶縁物が堆積した状態を示す断面図である。図4(f)は、図4(e)の絶縁物11の上に全面的に誘電体膜を成膜した状態を示す断面図である。このようにして、高周波電極5Aおよび対向電極5Bのメンテナンスが行われる。
【0028】
本発明の絶縁性薄膜の製造方法において使用可能な絶縁膜の例としては、窒化シリコン膜(SiNx)、酸化シリコン膜(SiOx)、および酸化窒化シリコン膜(SiOxNy)が挙げられる。これらの絶縁膜はシラン(SiH4)、酸素(O2)、窒素(N2)、水素(H2)、アンモニア(NH3)から製品の薄膜の組成に応じて選ばれた反応ガスをプラズマの存在下に反応させて製造される。窒化シリコン膜が好ましい。
【0029】
メンテナンスに用いられる導電膜の材料としては、製品の薄膜よりも導電性が高いものであれば使用可能である。アモルファスシリコン(以下、「a−Si」という)および窒化シリコンが導電膜の材料として好ましい。a−Siの場合は、堆積したa−Siが光照射下で導電性を示すため、プラズマ放電の光照射によって導電膜となる。また、窒化シリコン膜は屈折率が2.3未満であると絶縁性が高いが、屈折率を2.3以上とすると導電性が高まる。このため、屈折率2.3以上の窒化シリコン薄膜を成膜した場合も、a−Siを成膜した場合と同様の導電化作用が得られる。
【0030】
メンテナンスは、例えば、次のように行われる。平行平板電極5に絶縁物が堆積し、対向電極5B上に基板Sが載置されていない状態で、例えば、次の条件で行われる。すなわち、真空チャンバ内に材料ガスを一定流量で供給し、真空チャンバ内の圧力を一定(例えば、300〜800Pa)に保った状態で、平行平板電極5に高周波電圧(例えば、300〜600W)を印加し、基板温度を一定温度(例えば、300〜670℃)でプラズマCVDを利用して、導電性の高いa−Siもしくは屈折率2.3以上の窒化シリコン薄膜を、平行平板電極5に成膜する。a−Siについては、材料ガスにシラン、水素、窒素を用い、屈折率2.3以上の窒化シリコン薄膜については材料ガスにシラン、アンモニア、水素を用いる。
【0031】
堆積したa−Siは、光照射下で導電性を示すため、SiN膜成膜中はプラズマ放電の光照射により導電膜となる。平行平板電極5が導電膜に覆われることにより、場所によるプラズマインピーダンスの差がなく、局所的な過剰電流が流れなくなるため、局所的なアーク放電や高密度放電の異常放電を抑えることができる。窒化シリコン膜は屈折率が2.3より小さくなると絶縁性が高くなるが、屈折率を2.3以上とすると導電性が高まるため、屈折率2.3以上の窒化シリコン薄膜を成膜した場合も、a−Si成膜した場合と同様の作用が得られる。
【0032】
再び図2を参照すると、ステップS5で限界成膜回数に達した(C=Rc)と判断されるか、またはステップS6で異常放電の発生が検知される(すなわちメンテナンスが必要であると判断される)と、ステップS7で製品である絶縁膜の生産がいったん中止され、ステップS8で導電膜が成膜される。これにより、絶縁性堆積物11が、導電膜15で覆われる。このメンテナンスが終了すると、ステップS9に進み、成膜回数カウンタのカウントがリセットされ、C=0となる。そして、ステップS2に戻り、絶縁膜の成膜準備をし、ステップS3で絶縁膜を成膜する。このようにして絶縁膜の成膜(生産)が行われる。
【0033】
図3は、本発明の別の実施の形態による絶縁性薄膜成膜方法を説明するフローチャートである。図3に示すフローチャートは、図2に示すフローチャートにおけるステップS4およびS5をステップS4AおよびS5Aに置き換え、ステップS9をなくした以外は図2と同様である。図2に示すフローチャートによる成膜方法では、メンテナンスが必要か否かの判断は絶縁膜成膜工程における成膜回数Cが所定の限界成膜回数Rcに達したかを判断することで行われたが、図3に示すフローチャートによる成膜方法では、メンテナンスが必要か否かは、絶縁膜成膜工程において平行平板電極上に堆積した絶縁物の膜厚が所定の膜厚(値)に到達したか否かをもって判断される。このため、ステップS4Aにおいて、成膜(生産)中に例えば光学式の膜厚測定装置を用いて好ましくはリアルタイムで成膜の膜厚を検査し、ステップS5Aにおいて、検査により得られた膜厚値(D)が予め設定された所定値(Dc)に到達したか否かが判断される。
【0034】
D<Dcのときは、平行平板電極のメンテナンスが不要であると判断され(ステップS5A,NO)、図2に示すフローチャートによる場合と同様に、プロセスはステップS6に進む。D=Dcのときは、平行平板電極のメンテナンスが必要である(ステップS5A、YES)と判断され、ステップS7に進み、生産(成膜)が中止され、ついでステップS8において導電膜の成膜(メンテナンス)が行われる。ステップS8で誘電膜の成膜が行われた後、プロセスはステップS2に戻り、絶縁膜を成膜するための成膜準備が行われ、プロセスが繰り返される。
【0035】
図5および図6はそれぞれ、本発明の一実施の形態によるプラズマCVD装置の概念図であって、基板ホルダである対向電極5B上に堆積された絶縁性堆積物11を覆うように導電膜15を設けた状態を示す。ただし、図5および図6においては、制御装置10、検知器12、スイッチ14は、図示を省略した。導電膜15を設けたことにより、電荷は導電膜15の表面を容易に移動し均一に分布することができる。なお、導電膜15は一面に成膜させ、絶縁堆積物11が露出している部分がないようにする。これによって、電極ホルダ上の位置によらず均一に電荷が分布し、電荷の局所集中が生じない。
【0036】
したがって、図5または図6に示すように、メンテナンス終了後のプラズマCVD装置を用いて、図2のステップS3において新たに基板を導入し、絶縁膜の成膜を行うと、プラズマ密度が偏ることがないため、均一な膜厚の絶縁膜を成膜することができる。また、対向電極5B上に堆積した絶縁物にコーナー部が存在しても導電膜に覆われるため、異常放電が発生することがない。このため、安定したプラズマ放電が得られ、基板表面上に均一な膜厚の絶縁膜を形成することができる。
【0037】
上述のように、本発明のCVD装置およびCVD成膜方法では、基板表面に絶縁膜の成膜を繰返し、異常放電が検知されるか、あるいは所定の成膜回数または平行電極面上に堆積した絶縁物の所定の膜厚が到達されることを指標に、平行平板電極5A,5B上の堆積絶縁物の上に導電膜を成膜してメンテナンスを行う。その結果、特別の部品、装置を設けることなく、平行平板電極の対抗面に堆積してくる絶縁物の膜厚分布に対する悪影響を取り除くことができる。
【0038】
[比較例1]
上述したように図1に示すCVD装置1は図2に示すメンテナンス機能をオンオフすることができる。そこで、図1に示すCVD装置1のメンテナンス機能をオフにして、図7(a)〜(d)に示す手順に従ってまず電極表面に絶縁膜を成膜し、その後、基板表面に絶縁膜を形成した。
【0039】
図7(a)は、基板Sを載せない状態の真空チャンバ3内の対向電極5Bを示す。まず、この対向電極5Bの表面に対して、標準レシピで屈折率2.0(屈折率2.3未満)の高絶縁性のSiN膜の成膜を繰返し行い、対向電極5B上に十分にSiN膜11aを成膜した(図7(b))。このとき、高周波電極5Aの表面にも屈折率2.0のSiN膜11aが成膜される。絶縁物11aの堆積量は、ガス密度や電極形状の影響を受けて電極の場所によって異なり、平行平板電極5A,5Bの表面の絶縁膜の厚みは一様ではない。このようにして、基板表面に絶縁膜を繰り返し成膜した際の平行平板電極5の表面状態を再現した。
【0040】
このように一様でないSiN膜11aで覆われた対向電極5Bの上に基板Sを載せ(図7(c))、この基板Sの表面に、屈折率2.0、膜厚80nmが得られるように調整されたSiN膜成膜条件で成膜した(図7(d))。膜厚分布Dtは10.58%であった。
【実施例1】
【0041】
図1に示すCVD装置1を用いて、比較例1と同様にして標準レシピで対向電極5B上に屈折率2.0のSiN膜11aを成膜した(図7(b))。このとき、高周波電極5Aの表面にも屈折率2.0のSiN膜11aが成膜される。このようにして、成膜工程を繰返し実施した後の平行平板電極5の状態を模擬的に再現した。この状態で、図1のCVD装置1のメンテナンス機能を用いて次のようにメンテナンスを行った。
【0042】
対向電極5B上に基板を載置しない状態で、プラズマCVD装置1の真空チャンバ3内にシランおよび窒素を一定流量で供給する。真空チャンバ3内の圧力を一定に保った状態で、高周波電極5Aに定電流制御された交流電源PSから高周波電圧を印加し、絶縁膜11aの付着した対向電極5B上にa−Si膜15aを成膜した。対向電極5Bの絶縁膜11aを導電性のa−Si15Aで覆うことによって、対向電極5Bを一定の厚みの導電性薄膜で覆った(図7(e))。このとき、高周波電極5Aの表面にもa−Si15Aが成膜される。絶縁堆積物11aはa−Si膜15aで覆われ、このa−Si膜はSiN薄膜の成膜中のプラズマ放電の光照射により導電膜となるため、SiN薄膜の成膜中に電荷が局所に集中することがなくなり、プラズマの生成が均一になる。その結果、基板Sを載せて基板表面に絶縁膜としてSiN薄膜を形成した場合、その膜厚が均一になる。
【0043】
実際、図7(e)のa−Si膜15aの成膜後に、基板Sを対向電極5B上に載せ(図7(f))、再び標準成膜レシピに従って基板に屈折率2.0のSiN膜を成膜したところ(図7(g))、基板上のSiN膜の膜厚分布Dtは6.70%となり、平行平板電極内の基板に形成されたSiN膜の膜厚が均一化された。
【0044】
図8は、a−Si膜を成膜する前および後に成膜した基板上のSiN膜の膜厚の分布を示す図である。図8(a)は、平行平板電極5の表面にa−Si膜を成膜せずに基板表面にSiN薄膜を成膜した場合を示す。成膜レートは28.4mm/minであり、膜厚分布は10.58%であった。図8(b)は、平行平板電極5の表面にa−Si膜を成膜後に基板表面にSiN薄膜を成膜した場合を示す。成膜レートは30.3mm/minであり、膜厚分布は6.70%であった。
【0045】
また、図9はa−Siコートの効果を示すグラフである。図9から明らかなように、基板に薄膜を成膜中の直流電圧Vdcの変動は、a−Si膜の成膜(メンテナンス)を行わずにSiN膜の成膜を続けた場合(図9、◆)、電極が高絶縁成膜(屈折率2.0のSiN)に覆われているために、Vdcが安定するまでの時定数が約150秒と長い。平行平板電極5の表面にa−Si膜を成膜した後は、第1回目の絶縁膜の成膜(図9、▲)、第2回目(図9、■)ともにVdcは迅速に安定していることが分かる。
【0046】
[変形例1]
実施例1において、a−Si膜の成膜および屈折率2.3以上の窒化シリコン(SiN)膜の成膜を、シランの他に、窒素および水素、アンモニアを含むガス組成を用いて行った。実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【実施例2】
【0047】
図1に示すCVD装置1を用いて、比較例1と同様にして標準レシピで対向電極5B上に屈折率2.0のSiN膜11aを成膜した(図7(b))。このとき、高周波電極5Aの表面にも屈折率2.0のSiN膜11aが成膜される。このようにして、成膜工程を繰返し実施した後の平行平板電極5の状態を模擬的に再現した。この状態で、図1のCVD装置1のメンテナンス機能を用いて次のようにメンテナンスを行った。実施例1と異なる点は、導電性薄膜としてa−siに代えてSiNを使用する点である。
【0048】
対向電極5B上に基板を載置しない状態で、プラズマCVD装置1の真空チャンバ3内にシランおよび窒素を一定流量で供給し、真空チャンバ3内の圧力を一定に保った状態で、平行平板電極5に定電流制御された交流電源PSから高周波電圧を印加し、絶縁膜11aの付着した平行平板電極に屈折率2.3のSiN膜(n=2.3 SiN)15bを成膜した。屈折率2.3のSiN膜は屈折率2.0のSiN膜(n=2.0 SiN)11aより導電性が高く、平行平板電極5A,5Bの絶縁膜を屈折率2.3のSiNで覆うことによって、図7(e)のa−Si膜15と同様に平行平板電極が一様に導電化された状態とした。絶縁堆積物11は屈折率2.3のSiN膜15bで覆われ、導電性となった。この状態で対向電極5B上に基板を載置し、基板表面に絶縁膜(屈折率2.0のSiN膜)を成膜すると、電荷が局所に集中することがなく、プラズマの生成が均一になり、その結果、得られるSiN膜の膜厚が均一になる。
【0049】
実際、図7(e)の屈折率2.3のSiN膜の成膜後に、基板Sを対向電極5B上に載せ(図7(f))、再び標準成膜レシピに従ってSiN膜(屈折率2.0)を成膜したところ(図7(g))、基板の膜厚分布は実施例1のа−Siを用いた場合とほぼ同じとなり、平行平板電極内の基板に形成されたSiN膜の膜厚が場所によらず均一化された。
【0050】
[比較例2]
図1に示すCVD装置1を用いて、比較例と同様にして標準レシピで対向電極5B上に屈折率2.0のSiN膜11aを成膜した(図7(b))。このとき、高周波電極5Aの表面にも屈折率2.0のSiN膜11aが成膜される。このようにして、成膜工程を繰返し実施した後の平行平板電極5の状態を模擬的に再現した。電極表面がほぼ完全に絶縁膜11で覆われる状態になったため、SiN膜の成膜を続行した場合に、高周波電極5Aの端部付近に周囲より高密度のプラズマ放電が目視で観察された(図12参照)。また、放電中は高周波電極5Aの負の直流電位Vdcが一定でなく変動し、高周波電極5Aに蓄積する電荷量が不安定であった(図9参照)。
【実施例3】
【0051】
図1に示すCVD装置1を用いて、比較例2と同様にして標準レシピで対向電極5B上に屈折率2.0のSiN膜11aを成膜した(図7(b))。このとき、高周波電極5Aの表面にも屈折率2.0のSiN膜11aが成膜される。このようにして、絶縁膜の成膜工程を繰返し実施した後の平行平板電極5の状態を模擬的に再現した。この状態で図1のCVD装置1のメンテナンス機能を用いて成膜を続けたところ、放電が検知され(図2、ステップS6参照)、SiN膜の成膜(生産)が中止され、次のようにメンテナンスが行われた。
【0052】
プラズマCVD装置1の真空チャンバ3内に屈折率2.3のSiNが得られるように調整された原料ガスをガス供給機構7より導入し、真空チャンバ内3の圧力を一定に保った状態で、平行平板電極5に高周波電圧を印加し、平行平板電極5に屈折率2.3のSiN膜を成膜した。平行平板電極5の堆積絶縁物11をSiN(屈折率2.3)で覆うことによって、平行平板電極5は導電化され、プラズマ発生時に平行平板電極5に蓄積する電荷量が一様に分布する状態となった。
【0053】
平行平板電極5の表面をSiN(屈折率2.3)膜で一様に覆った後に、再び標準成膜レシピでSiN(屈折率2.0)膜を成膜した。これにより、局所的な高密度プラズマ放電(異常放電)ADの発生が検知されなかった。成膜中のVdcは一定値であり、高周波電極に蓄積する電荷量が安定しており、局所的に過剰電流が流れることがなかった。SiN(屈折率2.3)膜の成膜後における成膜中の直流電圧Vdcの変動は、実施例2の図9とほぼ同様であった。
【0054】
[変形例2]
実施例3において、a−Si成膜および屈折率2.3以上の窒化シリコン(SiN)膜の成膜を、シランの他に、窒素および水素、アンモニアを含むガス組成を用いて行った。実施例3とほぼ同様の結果が得られた。
【実施例4】
【0055】
実施例1〜3では、基板を載置することなく平行平板電極表面に意図的に絶縁膜を堆積して、堆積絶縁物11の存在するプラズマCVD装置の平行平板電極の状態を模擬的に再現したが、本実施例では、実際に、図1のCVD装置1を用いて、メンテナンス機能をオンにした状態で絶縁膜の成膜(生産)を行った。
【0056】
スイッチ14により装置を起動させ、制御装置10のROM18に格納されている成膜処理プログラムにより成膜を行う。図示しない入力手段により標準レシピでSiN膜(屈折率2.0)を成膜する成膜条件を記憶装置(不図示)に設定する。制御装置10のCPU16は設定された条件のデータを参照して、ガス供給機構7とガス排気機構9等を制御し、これにより制御装置10の制御に基づいて成膜準備が行われる(図2、ステップS2)。成膜を繰り返して行っている際、異常放電が検知器12により検知されると、検知器12から検知信号が制御装置10に送信される。制御装置10のCPUは検知器12からの信号を受信するとガス供給機構7とガス排気機構9等に成膜中止指令を送信し、絶縁膜の成膜(生産)が中止される。生産が中止されると、制御装置10はガス供給機構7とガス排気機構9等に導電膜の成膜の開始指令を発し、メンテナンスが開始される。基板Sを基板ホルダ上に載置せずに、a−Si膜を平行平板電極5の電極面に成膜する。このメンテナンスが終了すると、プログラムに従い、制御装置10は、先に設定された絶縁膜の成膜条件に従って基板の表面に成膜を行う準備を行い、基板表面に対して絶縁膜の成膜(生産)が再開される。
【0057】
上記の場合は、装置起動後、絶縁膜の成膜処理の回数(C)が所定の限界成膜回数(Rc)より小さい(C<Rc)段階で検知器12により異常放電が検知された場合である。C<Rcの段階で異常放電が検知されなかった場合は、成膜処理の回数がC=Rcとなった段階で、制御装置10により生産中止指令が送信され、生産が中止される。生産が中止されると、上述のメンテナンスが行われ、メンテナンスが終了すると、設定された成膜条件に従って成膜準備がなされ、絶縁膜の成膜が再開される。このようにして、適宜メンテナンスを行いつつ、基板表面への絶縁膜の成膜が繰り返される。これにより均一な膜厚の絶縁膜を有する製品が得られた。
【実施例5】
【0058】
実施例4において導電膜としてa−Si膜の替わりに実施例2と同様に屈折率2.3のSiN膜を成膜したところ、同様に均一な膜厚の絶縁膜が得られた。
【実施例6】
【0059】
準備段階として、絶縁膜の成膜を繰り返して、初めて製品に膜厚が不均一であることが観察された成膜回数を記録しておく。この記録された回数に基づき安全を見込んだ若干内輪の回数、例えば8回を限界成膜回数として設定し、絶縁膜の成膜処理の回数がこの限界成膜回数の値に達した段階で製品の製造をいったん中止し、実施例1と同様に基板ホルダ5に基板Sの無い状態で導電膜の成膜を行う。このメンテナンスを行った後、再び実施例1と同様に基板に絶縁膜の成膜を繰り返す。目標成膜回数になった時点で成膜処理を終了する。目標成膜回数になる前に限界成膜回数に達した場合は、製品の製造をいったん中止し、メンテナンスを行った後、製品の製造を行う。このサイクルを目標成膜回数に達するまで繰り返す。
【実施例7】
【0060】
実施例6では、メンテナンスを行うか否かを上述の限界成膜回数を設定して成膜回数がその限界成膜回数に達したか否かにより判断しているが、本実施例では、製品の製造を繰り返して、最初に異常放電が観察または検知された段階でいったん製品の製造を中止し、他の実施例と同様のメンテナンスを行う。
【0061】
[変形例3]
実施例7において、限界成膜回数はさらに異常放電の発生がはじめて観察または検知される成膜回数も考慮して設定してもよい。
【0062】
限界成膜回数を設定する方式による場合は、異常放電の発生を指標にする場合に比べて製品の歩留まりがさらに向上する利点がある。
【0063】
[変形例4]
実施例1〜4および変形例1〜3において、異常放電の検知は検知器12により検知したが、目視により異常放電の発生を検知してもよい。また、プログラムに従い自動的に成膜処理工程が進行するように構成したが、各工程への移行はマニュアル操作によってもよい。
【実施例8】
【0064】
実施例6では、限界成膜回数を設定して成膜回数がその限界成膜回数に達したか否かにより、また変形例3では異常放電の発生がはじめて観察または検知されたことにより、メンテナンスを行うか否かを判断している。本実施例では、成膜(生産)中に平行平板電極の電極面に堆積した絶縁物の膜厚を、図示しない光学式膜厚測定装置によりリアルタイムに測定し、膜厚が所定の膜厚に到達した段階でいったん製品の製造を中止し、他の実施例と同様のメンテナンスを行う。メンテナンス終了後、成膜準備を行い、成膜(生産)を再開する。
【0065】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上述した実施の形態および変形例に限定されるものではない。また、実施の形態と変形例の一つとを組み合わせること、もしくは、実施の形態と変形例の複数とを組み合わせることも可能である。さらに、変形例同士をどのように組み合わせることも可能である。あるいは、実施の形態または実施例、変形例中の一部の工程を他の実施の形態または実施例、変形例において用いること、または置きかえることも可能である。さらにまた、本発明の技術的思想の範囲内で考えられる他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【0066】
本発明は従来のプラズマCVD装置に装置または部品を追加することなく、均一な膜厚分布の薄膜を形成することができ、特に太陽電池用絶縁薄膜の製造に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 プラズマCVD装置
3 真空チャンバ
5 平行平板電極
5A 高周波電極
5B 対向電極(基板ホルダ)
7 ガス供給機構
9 ガス排気機構
11 絶縁物
11a SiN膜(屈折率2.0)
12 検知器
13 アースシールド
14 スイッチ
15 導電膜
15a a−Si膜
15b SiN膜(屈折率2.3)
16 CPU
18 ROM
105C 端部
111A 絶縁物のコーナー部
MB マッチングボックス
AD 異常放電
D プラズマ放電(グロー放電)
PS 交流電源
S 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD成膜方法およびプラズマCVD装置に関する。特に本発明は、プラズマCVD成膜方法における、異常放電を抑制する方法および膜厚均一化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な容量結合型のプラズマCVD装置は、真空チャンバと、放電のための平行平板電極と、放電用ガス供給機構と、ガス排気機構と、数十kHz〜数十MHzの交流電源と、マッチングボックスとより構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
プラズマ放電負荷を発生させるための平行平板電極と交流電源との間に挿入されたマッチングボックス(特許文献1の図2,段落[0002]参照)は、交流電源側の出力インピーダンスと、マッチングボックスの入力インピーダンスが複素共役の関係を維持するよう、可変インダクタおよび可変キャパシタを有している。マッチングボックスは、ガス流量・圧力・チャンバ3の汚れ等に起因して動的に変動するプラズマ放電負荷に対応して、可変キャパシタおよび可変インダクタを調整することによりインピーダンスマッチングを行う。そのことにより、平行平板電極5のプラズマ放電電極側からの反射電力をなくして一定の電力をプラズマ放電負荷に供給し、それによって、安定したプラズマ放電を可能としている。
【0004】
対向電極は基板ホルダを兼ねており、この基板ホルダ上に基板を載置し、ガス供給機構から反応ガスを供給し、ガス排気機構により真空チャンバ内の圧力を所定圧に保ち、平行平板電極に交流電源から交流電力を供給してプラズマ放電を起こし、反応ガスに生成したプラズマを作用させ、反応性生物を基板表面に絶縁膜を成膜する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−227816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来から知られている容量結合型のプラズマCVD装置では、成膜処理の時間・回数が経過するのに伴ってプラズマ放電電極上および対向電極(少なくともその露出面、すなわち基板が載置されない表面部分)上に絶縁物が逐次堆積していく。その結果、薄膜の膜厚が不均一になったり、異常放電を起したりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者等は上述した現象を鋭意研究し、以下のような所見を得た。
電極表面の絶縁物の堆積量は、ガス密度や電極形状の影響を受けて電極の場所によって異なり、堆積量が多い点は高インピーダンスとなり、堆積量が少ない点は低インピーダンスとなる。そのため、低インピーダンス領域は電流が流れやすくなり、高インピーダンス領域に比べてプラズマ密度が高くなり、成膜レートが高くなる。その結果、成膜レートが平行平板電極の場所によって異なる。
【0008】
図10は絶縁物の堆積による成膜レートの分布の悪化を説明する概念図であり、マッチングボックス、交流電源、ガス供給機構およびガス排気機構は省略し、反応室内の対向電極上に基板が存在しない状態での平行平板電極の表面に堆積した絶縁物の状態を示す。
【0009】
図10に示すように、平行平板電極105の両端側から中央部に向かって堆積絶縁物111の厚さが徐々に増加しており、これにともなってプラズマ密度Dが中央部で低く、両端部に向かって高くなっている。このため中央部では成膜レートが低くなり、一方両端部では成膜レートが高くなり、均一な成膜レートが得られない。その結果、製品の薄膜の膜厚が不均一になってしまう。
【0010】
また、例えばプラズマCVDを利用して半導体素子のパッシベーション膜を形成する成膜装置、特に結晶系シリコンの太陽電池の反射防止膜を形成する装置の場合などのように、反応チャンバにおいて一度に多数の基板を基板ホルダ上に配置して絶縁膜の成膜を繰り返すと、基板ホルダの基板で覆われない部分には絶縁物が堆積して行く。
【0011】
図11はこの状態を模式的に示す。図11に示すように、基板ホルダ105B上に配置された複数の基板S同士の間に、すなわち基板Sに覆われない基板ホルダ表面には、成膜を繰り返すと絶縁物111が堆積し、凹凸のある基板ホルダ表面となる。
【0012】
また、過剰な電流が流れた場合に局所的な高密度放電を引き起こす。図12は異常放電ADを説明する概念図であり、マッチングボックス、交流電源、ガス供給機構およびガス排気機構は省略し、反応室内の対向電極上に基板が存在しない状態での平行平板電極の表面に堆積した絶縁物の状態を示す。
【0013】
図12に示すように、平行平板電極105に絶縁物が一様に堆積した場合に、電極端部の電界の強い部分である高周波電極105Aの端部105Cとアースシールド113との間で局所的なアーク放電を引き起こすことがある。また、絶縁物111はキャパシタとなり絶縁物の表面には電荷が貯まるため、貯まった電荷が放電によって一気に放出された場合に、局所的なアーク放電を引き起こす。このような局所的な高密度放電やアーク放電のような異常放電ADは、図示しない基板(に形成する薄膜の膜厚分布を著しく劣化させる。特に絶縁物のコーナー部111Aにおいてこの現象は著しい。また、異常放電ADは高周波電極105Aやアースシールド113に付着した絶縁膜を剥離させ、パーティクルの発生源となる。
【0014】
以上の所見に基づいて本発明者等は、以下の請求項1〜9の発明を創案した。
(1)請求項1の発明は、電極を用いた容量結合型プラズマCVDによって基板の表面に薄膜を形成するプラズマCVD成膜方法において、前記基板の表面へ薄膜を形成する薄膜形成工程と、前記薄膜形成工程で前記基板の表面に薄膜を形成した後、前記基板が無い状態で前記薄膜と比較して導電性の高い薄膜を前記電極の表面に生成する導電性薄膜形成工程とを有することを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、電極を用いた容量結合型プラズマCVDによって基板の表面に薄膜を形成するプラズマCVD装置において、前記基板の表面へ薄膜を形成する薄膜形成手段と、前記薄膜形成手段による一定量の薄膜を前記基板の表面に形成した後、前記基板が無い状態で前記薄膜と比較して導電性の高い薄膜を前記電極の表面に生成する導電性薄膜生成手段とを備えたことを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、平行平板電極にて放電を行い、基板の表面に窒化シリコン薄膜を成膜するプラズマCVD成膜方法において、前記基板の表面へ屈折率2.3未満の窒化シリコン薄膜を形成する薄膜形成工程と、前記基板の表面へ一定量の窒化シリコン薄膜を形成した後に、基板が無い状態で、アモルファスシリコン(以下、a−Si)または屈折率2.3以上の窒化シリコン膜を前記平行平板電極の表面に生成する窒化シリコン薄膜形成工程とを有することを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、平行平板電極にて放電を行い、基板の表面に窒化シリコン薄膜を成膜するプラズマCVD装置において、前記基板表面へ屈折率2.3未満の窒化シリコン薄膜を形成する薄膜形成手段と、前記基板表面へ一定量の窒化シリコン薄膜を形成した後に、前記基板が無い状態で、アモルファスシリコン(a−Si)または屈折率2.3以上の窒化シリコン膜を前記平行平板電極の表面に生成する窒化シリコン薄膜形成手段とを備えたことを特徴とする。
(5)請求項5の発明は、平行平板電極にて放電を行い、基板に絶縁性薄膜を成膜するプラズマCVD装置を用いる絶縁性薄膜の成膜方法であって、前記基板に絶縁膜を成膜する絶縁膜成膜工程と、前記平行平板電極の表面のメンテナンスが必要であるか否かを判断する判断工程と、前記判断工程において前記メンテナンスが必要であると判断された場合に、前記基板が無い状態で前記平行平板電極の表面に導電膜を成膜する導電膜成膜工程とを備えることを特徴とする。
(6)請求項6の発明は、請求項5に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、さらに、異常放電の発生を検出する異常放電発生検出工程を備え、前記判断工程における前記メンテナンスが必要であるか否かの判断を、前記異常放電の発生の有無に基づいて行うことを特徴とする。
(7)請求項7の発明は、請求項5に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、さらに、あらかじめ連続して行われる成膜処理の回数を設定する限界成膜回数設定工程を備え、前記判断工程における前記メンテナンスが必要であるか否かの判断を、前記限界成膜回数設定工程において設定された限界成膜回数の到達により行うことを特徴とする。
(8)請求項8の発明は、請求項5に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、さらに、絶縁膜の膜厚検査工程を備え、前記判断工程における前記メンテナンスが必要であるか否かの判断を、前記膜厚検査工程において設定された膜厚の到達により行うことを特徴とする。
(9)請求項9の発明は、請求項6に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、前記絶縁膜成膜工程と、前記異常放電発生検出工程と、前記導電膜成膜工程とを繰り返すことを特徴とする。
(10)請求項10の発明は、請求項5〜9のいずれか一項に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、前記絶縁性薄膜は屈折率2.3未満のSiN膜であり、前記導電膜はa−Si膜または屈折率2.3以上のSiN膜であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プラズマCVD装置に追加の部品または装置を設けることなく、電極に付着した絶縁膜の悪影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のプラズマCVD装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態による導電膜成膜処理を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の他の実施の形態による導電膜成膜処理を説明するフローチャートである。
【図4】本発明のメンテナンス工程を説明する工程図である。
【図5】本発明の一実施の形態によるプラズマCVD装置の概念図である。
【図6】本発明の一実施の形態によるプラズマCVD装置の概念図である。
【図7】絶縁膜の成膜工程を示す工程図である。
【図8】本発明の絶縁膜成膜方法により得られた絶縁膜の膜厚分布を示すグラフである。
【図9】本発明の絶縁膜成膜方法により得られた絶縁膜のVdcの変化を示すグラフである。
【図10】従来装置における絶縁物の堆積による成膜レートの分布の悪化を説明する概念図である。
【図11】従来装置における平行平板電極上の絶縁物の堆積状況を説明する概念図である。
【図12】従来装置における平行平板電極上に堆積した絶縁物による異常放電の発生の様子を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態によるプラズマCVD装置を説明する。以下の図面の記載において、図面は模式的なものであり、必ずしも現実のものを忠実に表現するものではなく、各部品、要素等の相対的位置関係は、説明の便宜上のものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が必ずしも同じではない。
【0018】
図1は本発明の一実施の形態にかかるプラズマCVD装置を示す概念図である。図に示すように、プラズマCVD装置1は、真空チャンバ3内に平行平板電極5を備える。この平行平板電極5は、マッチングボックスMBを介して交流電源PSに接続された高周波電極5Aと、接地された対向電極(基板ホルダとも呼ぶ)5Bから構成される。高周波電極5Aと対向電極5Bの電極間距離は場所によらず一定の距離に保たれる。真空チャンバ3にはガス供給機構7とガス排気機構9とが接続されている。プラズマCVD装置1は、また、制御装置10、検出器12、スイッチ14を備える。制御装置は、プログラムを展開・実行し、あるいは各種演算を行うCPU16と、成膜シーケンスおよび後述する本発明のメンテナンスのシーケンスを実行するプログラムを格納したROM18を備えている。
【0019】
ガス供給機構7には流量調節計(図示しない)が設けられ、成膜中のガス供給量を一定に保ち、一方、ガス排気機構9にはガス調圧弁(図示しない)が備えられ、制御装置10の制御により真空チャンバ3内の圧力を一定且つ一様に保つ。これにより、真空チャンバ3内のガス分布が一様に保たれる。電極間距離、ガス分布が場所によらずに一様に保たれることによって、プラズマ放電負荷が一様となり、局所的に過剰な電流が流れることなく、安定した正規グロー放電を可能にしている。
【0020】
プラズマ放電負荷を発生させるための平行平板電極5と交流電源PSとの間に挿入されたマッチングボックスMBは、ガス流量・圧力・チャンバ3の汚れ等に起因して動的に変動するプラズマ放電負荷に対応して、可変キャパシタおよび可変インダクタを調整することによりインピーダンスマッチングを行う。そのことにより、平行平板電極5のプラズマ放電電極5A側からの反射電力をなくして一定の電力をプラズマ放電負荷に供給し、それによって、安定したプラズマ放電を可能としている。
【0021】
本発明の一実施の形態によれば、図1に示すプラズマCVD装置1を用いて、下記のシーケンスに従って成膜を行う。図2は、本発明の一実施の形態による絶縁性薄膜成膜方法を説明するフローチャートである。
【0022】
図2に示すように、成膜プロセスは装置起動(ステップS1)後、ガス供給機構7およびガス排気機構9の給排気の調節(流速、圧力等)、図示しないヒーターによる温度調節などを行い、成膜環境を整える(ステップS2)。次いで、基板Sを基板ホルダ上に載置し、交流電源PSによりプラズマ放電負荷を高周波電極5Aにかけて、プラズマを発生させ、ガス供給機構7から導入された反応ガスにプラズマを作用させて材料ガスを反応させ、反応生成物(絶縁物)を基板Sの表面に堆積させ、絶縁膜が成膜された基板を真空チャンバ3から取り出して絶縁性薄膜を成膜する(ステップS3)。成膜を一回行うごとに成膜回数カウンタを1だけインクリメントする(C=C+1)(ステップS4)。次いで、この絶縁膜成膜工程における成膜回数Cが所定の限界成膜回数Rcに達したかを判断する(ステップS5)。すなわち、ステップS5において、メンテナンスが必要か否かを判断する。
【0023】
この判断は次のようにして行われる。成膜工程を繰り返した場合にそれ以後の成膜された製品の薄膜の膜厚分布が初めて許容範囲を超えて不均一になる回数を求め、安全を見込んでそれ以下の適切な値に設定された限界成膜回数値をあらかじめ設定しておき、成膜工程が行われた回数の値(C)をこの所定の限界成膜回数値(Rc)と比較する。
【0024】
C<Rcのときは、平行平板電極のメンテナンスが不要であると判断され(ステップS5,NO)、C=Rcのときは、平行平板電極のメンテナンスが必要である(ステップS5、YES)と判断され、ステップS7に進み、生産(成膜)が中止され、ついでステップS8において導電膜の成膜(メンテナンス)が行われる。
【0025】
ステップS5において、C<Rcのときは、ステップS6に進み、異常放電の発生の有無を判断する。異常放電の発生は、図1の検出器(公知の放電検出器)14によりアーク放電の有無その他の指標を検知することによって行われる。異常放電の発生が検知されなかったとき(ステップS6,NO)は、ステップS3に戻り、絶縁膜の成膜(生産)を続行する。一方、異常放電の発生が検知されたときは(ステップS6,YES)、ステップS7に進み、絶縁膜の成膜(生産)を中止し、さらにステップS8に進み、平行平板電極5の電極面のメンテナンスを行う。
【0026】
このメンテナンスは、基板ホルダである対向電極5B上に基板が存在しない状態で導電膜を成膜することによって行われる。導電膜は、製品の薄膜よりも導電性の高い材料を用いて成膜される。
【0027】
図4は、メンテナンスの工程を模式的に説明する工程図である。図4(a)は対向電極5B上に基板Sを相互に距離をおいて複数個並べた状態を示す平面図である。図4(b)は図4(a)の基板に絶縁膜を成膜する工程を繰返し、対向電極5Bの基板が載置されない電極表面上に絶縁物11が堆積した状態を示す断面図である。基板が載置される位置の電極表面にはこの絶縁物の堆積が見られず、電極表面は凹凸状になる。図4(c)は図4(b)の状態の対向電極5Bに対して導電膜15を成膜し、絶縁物11を完全に覆った状態を示す断面図である。一方、図4(d)は高周波電極5Aの電極表面を示す平面図である。図4(e)は、基板ホルダ上に基板Sを載置して基板Sに対して絶縁膜の成膜を繰り返したため高周波電極5Aの電極表面にも絶縁物が堆積した状態を示す断面図である。図4(f)は、図4(e)の絶縁物11の上に全面的に誘電体膜を成膜した状態を示す断面図である。このようにして、高周波電極5Aおよび対向電極5Bのメンテナンスが行われる。
【0028】
本発明の絶縁性薄膜の製造方法において使用可能な絶縁膜の例としては、窒化シリコン膜(SiNx)、酸化シリコン膜(SiOx)、および酸化窒化シリコン膜(SiOxNy)が挙げられる。これらの絶縁膜はシラン(SiH4)、酸素(O2)、窒素(N2)、水素(H2)、アンモニア(NH3)から製品の薄膜の組成に応じて選ばれた反応ガスをプラズマの存在下に反応させて製造される。窒化シリコン膜が好ましい。
【0029】
メンテナンスに用いられる導電膜の材料としては、製品の薄膜よりも導電性が高いものであれば使用可能である。アモルファスシリコン(以下、「a−Si」という)および窒化シリコンが導電膜の材料として好ましい。a−Siの場合は、堆積したa−Siが光照射下で導電性を示すため、プラズマ放電の光照射によって導電膜となる。また、窒化シリコン膜は屈折率が2.3未満であると絶縁性が高いが、屈折率を2.3以上とすると導電性が高まる。このため、屈折率2.3以上の窒化シリコン薄膜を成膜した場合も、a−Siを成膜した場合と同様の導電化作用が得られる。
【0030】
メンテナンスは、例えば、次のように行われる。平行平板電極5に絶縁物が堆積し、対向電極5B上に基板Sが載置されていない状態で、例えば、次の条件で行われる。すなわち、真空チャンバ内に材料ガスを一定流量で供給し、真空チャンバ内の圧力を一定(例えば、300〜800Pa)に保った状態で、平行平板電極5に高周波電圧(例えば、300〜600W)を印加し、基板温度を一定温度(例えば、300〜670℃)でプラズマCVDを利用して、導電性の高いa−Siもしくは屈折率2.3以上の窒化シリコン薄膜を、平行平板電極5に成膜する。a−Siについては、材料ガスにシラン、水素、窒素を用い、屈折率2.3以上の窒化シリコン薄膜については材料ガスにシラン、アンモニア、水素を用いる。
【0031】
堆積したa−Siは、光照射下で導電性を示すため、SiN膜成膜中はプラズマ放電の光照射により導電膜となる。平行平板電極5が導電膜に覆われることにより、場所によるプラズマインピーダンスの差がなく、局所的な過剰電流が流れなくなるため、局所的なアーク放電や高密度放電の異常放電を抑えることができる。窒化シリコン膜は屈折率が2.3より小さくなると絶縁性が高くなるが、屈折率を2.3以上とすると導電性が高まるため、屈折率2.3以上の窒化シリコン薄膜を成膜した場合も、a−Si成膜した場合と同様の作用が得られる。
【0032】
再び図2を参照すると、ステップS5で限界成膜回数に達した(C=Rc)と判断されるか、またはステップS6で異常放電の発生が検知される(すなわちメンテナンスが必要であると判断される)と、ステップS7で製品である絶縁膜の生産がいったん中止され、ステップS8で導電膜が成膜される。これにより、絶縁性堆積物11が、導電膜15で覆われる。このメンテナンスが終了すると、ステップS9に進み、成膜回数カウンタのカウントがリセットされ、C=0となる。そして、ステップS2に戻り、絶縁膜の成膜準備をし、ステップS3で絶縁膜を成膜する。このようにして絶縁膜の成膜(生産)が行われる。
【0033】
図3は、本発明の別の実施の形態による絶縁性薄膜成膜方法を説明するフローチャートである。図3に示すフローチャートは、図2に示すフローチャートにおけるステップS4およびS5をステップS4AおよびS5Aに置き換え、ステップS9をなくした以外は図2と同様である。図2に示すフローチャートによる成膜方法では、メンテナンスが必要か否かの判断は絶縁膜成膜工程における成膜回数Cが所定の限界成膜回数Rcに達したかを判断することで行われたが、図3に示すフローチャートによる成膜方法では、メンテナンスが必要か否かは、絶縁膜成膜工程において平行平板電極上に堆積した絶縁物の膜厚が所定の膜厚(値)に到達したか否かをもって判断される。このため、ステップS4Aにおいて、成膜(生産)中に例えば光学式の膜厚測定装置を用いて好ましくはリアルタイムで成膜の膜厚を検査し、ステップS5Aにおいて、検査により得られた膜厚値(D)が予め設定された所定値(Dc)に到達したか否かが判断される。
【0034】
D<Dcのときは、平行平板電極のメンテナンスが不要であると判断され(ステップS5A,NO)、図2に示すフローチャートによる場合と同様に、プロセスはステップS6に進む。D=Dcのときは、平行平板電極のメンテナンスが必要である(ステップS5A、YES)と判断され、ステップS7に進み、生産(成膜)が中止され、ついでステップS8において導電膜の成膜(メンテナンス)が行われる。ステップS8で誘電膜の成膜が行われた後、プロセスはステップS2に戻り、絶縁膜を成膜するための成膜準備が行われ、プロセスが繰り返される。
【0035】
図5および図6はそれぞれ、本発明の一実施の形態によるプラズマCVD装置の概念図であって、基板ホルダである対向電極5B上に堆積された絶縁性堆積物11を覆うように導電膜15を設けた状態を示す。ただし、図5および図6においては、制御装置10、検知器12、スイッチ14は、図示を省略した。導電膜15を設けたことにより、電荷は導電膜15の表面を容易に移動し均一に分布することができる。なお、導電膜15は一面に成膜させ、絶縁堆積物11が露出している部分がないようにする。これによって、電極ホルダ上の位置によらず均一に電荷が分布し、電荷の局所集中が生じない。
【0036】
したがって、図5または図6に示すように、メンテナンス終了後のプラズマCVD装置を用いて、図2のステップS3において新たに基板を導入し、絶縁膜の成膜を行うと、プラズマ密度が偏ることがないため、均一な膜厚の絶縁膜を成膜することができる。また、対向電極5B上に堆積した絶縁物にコーナー部が存在しても導電膜に覆われるため、異常放電が発生することがない。このため、安定したプラズマ放電が得られ、基板表面上に均一な膜厚の絶縁膜を形成することができる。
【0037】
上述のように、本発明のCVD装置およびCVD成膜方法では、基板表面に絶縁膜の成膜を繰返し、異常放電が検知されるか、あるいは所定の成膜回数または平行電極面上に堆積した絶縁物の所定の膜厚が到達されることを指標に、平行平板電極5A,5B上の堆積絶縁物の上に導電膜を成膜してメンテナンスを行う。その結果、特別の部品、装置を設けることなく、平行平板電極の対抗面に堆積してくる絶縁物の膜厚分布に対する悪影響を取り除くことができる。
【0038】
[比較例1]
上述したように図1に示すCVD装置1は図2に示すメンテナンス機能をオンオフすることができる。そこで、図1に示すCVD装置1のメンテナンス機能をオフにして、図7(a)〜(d)に示す手順に従ってまず電極表面に絶縁膜を成膜し、その後、基板表面に絶縁膜を形成した。
【0039】
図7(a)は、基板Sを載せない状態の真空チャンバ3内の対向電極5Bを示す。まず、この対向電極5Bの表面に対して、標準レシピで屈折率2.0(屈折率2.3未満)の高絶縁性のSiN膜の成膜を繰返し行い、対向電極5B上に十分にSiN膜11aを成膜した(図7(b))。このとき、高周波電極5Aの表面にも屈折率2.0のSiN膜11aが成膜される。絶縁物11aの堆積量は、ガス密度や電極形状の影響を受けて電極の場所によって異なり、平行平板電極5A,5Bの表面の絶縁膜の厚みは一様ではない。このようにして、基板表面に絶縁膜を繰り返し成膜した際の平行平板電極5の表面状態を再現した。
【0040】
このように一様でないSiN膜11aで覆われた対向電極5Bの上に基板Sを載せ(図7(c))、この基板Sの表面に、屈折率2.0、膜厚80nmが得られるように調整されたSiN膜成膜条件で成膜した(図7(d))。膜厚分布Dtは10.58%であった。
【実施例1】
【0041】
図1に示すCVD装置1を用いて、比較例1と同様にして標準レシピで対向電極5B上に屈折率2.0のSiN膜11aを成膜した(図7(b))。このとき、高周波電極5Aの表面にも屈折率2.0のSiN膜11aが成膜される。このようにして、成膜工程を繰返し実施した後の平行平板電極5の状態を模擬的に再現した。この状態で、図1のCVD装置1のメンテナンス機能を用いて次のようにメンテナンスを行った。
【0042】
対向電極5B上に基板を載置しない状態で、プラズマCVD装置1の真空チャンバ3内にシランおよび窒素を一定流量で供給する。真空チャンバ3内の圧力を一定に保った状態で、高周波電極5Aに定電流制御された交流電源PSから高周波電圧を印加し、絶縁膜11aの付着した対向電極5B上にa−Si膜15aを成膜した。対向電極5Bの絶縁膜11aを導電性のa−Si15Aで覆うことによって、対向電極5Bを一定の厚みの導電性薄膜で覆った(図7(e))。このとき、高周波電極5Aの表面にもa−Si15Aが成膜される。絶縁堆積物11aはa−Si膜15aで覆われ、このa−Si膜はSiN薄膜の成膜中のプラズマ放電の光照射により導電膜となるため、SiN薄膜の成膜中に電荷が局所に集中することがなくなり、プラズマの生成が均一になる。その結果、基板Sを載せて基板表面に絶縁膜としてSiN薄膜を形成した場合、その膜厚が均一になる。
【0043】
実際、図7(e)のa−Si膜15aの成膜後に、基板Sを対向電極5B上に載せ(図7(f))、再び標準成膜レシピに従って基板に屈折率2.0のSiN膜を成膜したところ(図7(g))、基板上のSiN膜の膜厚分布Dtは6.70%となり、平行平板電極内の基板に形成されたSiN膜の膜厚が均一化された。
【0044】
図8は、a−Si膜を成膜する前および後に成膜した基板上のSiN膜の膜厚の分布を示す図である。図8(a)は、平行平板電極5の表面にa−Si膜を成膜せずに基板表面にSiN薄膜を成膜した場合を示す。成膜レートは28.4mm/minであり、膜厚分布は10.58%であった。図8(b)は、平行平板電極5の表面にa−Si膜を成膜後に基板表面にSiN薄膜を成膜した場合を示す。成膜レートは30.3mm/minであり、膜厚分布は6.70%であった。
【0045】
また、図9はa−Siコートの効果を示すグラフである。図9から明らかなように、基板に薄膜を成膜中の直流電圧Vdcの変動は、a−Si膜の成膜(メンテナンス)を行わずにSiN膜の成膜を続けた場合(図9、◆)、電極が高絶縁成膜(屈折率2.0のSiN)に覆われているために、Vdcが安定するまでの時定数が約150秒と長い。平行平板電極5の表面にa−Si膜を成膜した後は、第1回目の絶縁膜の成膜(図9、▲)、第2回目(図9、■)ともにVdcは迅速に安定していることが分かる。
【0046】
[変形例1]
実施例1において、a−Si膜の成膜および屈折率2.3以上の窒化シリコン(SiN)膜の成膜を、シランの他に、窒素および水素、アンモニアを含むガス組成を用いて行った。実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【実施例2】
【0047】
図1に示すCVD装置1を用いて、比較例1と同様にして標準レシピで対向電極5B上に屈折率2.0のSiN膜11aを成膜した(図7(b))。このとき、高周波電極5Aの表面にも屈折率2.0のSiN膜11aが成膜される。このようにして、成膜工程を繰返し実施した後の平行平板電極5の状態を模擬的に再現した。この状態で、図1のCVD装置1のメンテナンス機能を用いて次のようにメンテナンスを行った。実施例1と異なる点は、導電性薄膜としてa−siに代えてSiNを使用する点である。
【0048】
対向電極5B上に基板を載置しない状態で、プラズマCVD装置1の真空チャンバ3内にシランおよび窒素を一定流量で供給し、真空チャンバ3内の圧力を一定に保った状態で、平行平板電極5に定電流制御された交流電源PSから高周波電圧を印加し、絶縁膜11aの付着した平行平板電極に屈折率2.3のSiN膜(n=2.3 SiN)15bを成膜した。屈折率2.3のSiN膜は屈折率2.0のSiN膜(n=2.0 SiN)11aより導電性が高く、平行平板電極5A,5Bの絶縁膜を屈折率2.3のSiNで覆うことによって、図7(e)のa−Si膜15と同様に平行平板電極が一様に導電化された状態とした。絶縁堆積物11は屈折率2.3のSiN膜15bで覆われ、導電性となった。この状態で対向電極5B上に基板を載置し、基板表面に絶縁膜(屈折率2.0のSiN膜)を成膜すると、電荷が局所に集中することがなく、プラズマの生成が均一になり、その結果、得られるSiN膜の膜厚が均一になる。
【0049】
実際、図7(e)の屈折率2.3のSiN膜の成膜後に、基板Sを対向電極5B上に載せ(図7(f))、再び標準成膜レシピに従ってSiN膜(屈折率2.0)を成膜したところ(図7(g))、基板の膜厚分布は実施例1のа−Siを用いた場合とほぼ同じとなり、平行平板電極内の基板に形成されたSiN膜の膜厚が場所によらず均一化された。
【0050】
[比較例2]
図1に示すCVD装置1を用いて、比較例と同様にして標準レシピで対向電極5B上に屈折率2.0のSiN膜11aを成膜した(図7(b))。このとき、高周波電極5Aの表面にも屈折率2.0のSiN膜11aが成膜される。このようにして、成膜工程を繰返し実施した後の平行平板電極5の状態を模擬的に再現した。電極表面がほぼ完全に絶縁膜11で覆われる状態になったため、SiN膜の成膜を続行した場合に、高周波電極5Aの端部付近に周囲より高密度のプラズマ放電が目視で観察された(図12参照)。また、放電中は高周波電極5Aの負の直流電位Vdcが一定でなく変動し、高周波電極5Aに蓄積する電荷量が不安定であった(図9参照)。
【実施例3】
【0051】
図1に示すCVD装置1を用いて、比較例2と同様にして標準レシピで対向電極5B上に屈折率2.0のSiN膜11aを成膜した(図7(b))。このとき、高周波電極5Aの表面にも屈折率2.0のSiN膜11aが成膜される。このようにして、絶縁膜の成膜工程を繰返し実施した後の平行平板電極5の状態を模擬的に再現した。この状態で図1のCVD装置1のメンテナンス機能を用いて成膜を続けたところ、放電が検知され(図2、ステップS6参照)、SiN膜の成膜(生産)が中止され、次のようにメンテナンスが行われた。
【0052】
プラズマCVD装置1の真空チャンバ3内に屈折率2.3のSiNが得られるように調整された原料ガスをガス供給機構7より導入し、真空チャンバ内3の圧力を一定に保った状態で、平行平板電極5に高周波電圧を印加し、平行平板電極5に屈折率2.3のSiN膜を成膜した。平行平板電極5の堆積絶縁物11をSiN(屈折率2.3)で覆うことによって、平行平板電極5は導電化され、プラズマ発生時に平行平板電極5に蓄積する電荷量が一様に分布する状態となった。
【0053】
平行平板電極5の表面をSiN(屈折率2.3)膜で一様に覆った後に、再び標準成膜レシピでSiN(屈折率2.0)膜を成膜した。これにより、局所的な高密度プラズマ放電(異常放電)ADの発生が検知されなかった。成膜中のVdcは一定値であり、高周波電極に蓄積する電荷量が安定しており、局所的に過剰電流が流れることがなかった。SiN(屈折率2.3)膜の成膜後における成膜中の直流電圧Vdcの変動は、実施例2の図9とほぼ同様であった。
【0054】
[変形例2]
実施例3において、a−Si成膜および屈折率2.3以上の窒化シリコン(SiN)膜の成膜を、シランの他に、窒素および水素、アンモニアを含むガス組成を用いて行った。実施例3とほぼ同様の結果が得られた。
【実施例4】
【0055】
実施例1〜3では、基板を載置することなく平行平板電極表面に意図的に絶縁膜を堆積して、堆積絶縁物11の存在するプラズマCVD装置の平行平板電極の状態を模擬的に再現したが、本実施例では、実際に、図1のCVD装置1を用いて、メンテナンス機能をオンにした状態で絶縁膜の成膜(生産)を行った。
【0056】
スイッチ14により装置を起動させ、制御装置10のROM18に格納されている成膜処理プログラムにより成膜を行う。図示しない入力手段により標準レシピでSiN膜(屈折率2.0)を成膜する成膜条件を記憶装置(不図示)に設定する。制御装置10のCPU16は設定された条件のデータを参照して、ガス供給機構7とガス排気機構9等を制御し、これにより制御装置10の制御に基づいて成膜準備が行われる(図2、ステップS2)。成膜を繰り返して行っている際、異常放電が検知器12により検知されると、検知器12から検知信号が制御装置10に送信される。制御装置10のCPUは検知器12からの信号を受信するとガス供給機構7とガス排気機構9等に成膜中止指令を送信し、絶縁膜の成膜(生産)が中止される。生産が中止されると、制御装置10はガス供給機構7とガス排気機構9等に導電膜の成膜の開始指令を発し、メンテナンスが開始される。基板Sを基板ホルダ上に載置せずに、a−Si膜を平行平板電極5の電極面に成膜する。このメンテナンスが終了すると、プログラムに従い、制御装置10は、先に設定された絶縁膜の成膜条件に従って基板の表面に成膜を行う準備を行い、基板表面に対して絶縁膜の成膜(生産)が再開される。
【0057】
上記の場合は、装置起動後、絶縁膜の成膜処理の回数(C)が所定の限界成膜回数(Rc)より小さい(C<Rc)段階で検知器12により異常放電が検知された場合である。C<Rcの段階で異常放電が検知されなかった場合は、成膜処理の回数がC=Rcとなった段階で、制御装置10により生産中止指令が送信され、生産が中止される。生産が中止されると、上述のメンテナンスが行われ、メンテナンスが終了すると、設定された成膜条件に従って成膜準備がなされ、絶縁膜の成膜が再開される。このようにして、適宜メンテナンスを行いつつ、基板表面への絶縁膜の成膜が繰り返される。これにより均一な膜厚の絶縁膜を有する製品が得られた。
【実施例5】
【0058】
実施例4において導電膜としてa−Si膜の替わりに実施例2と同様に屈折率2.3のSiN膜を成膜したところ、同様に均一な膜厚の絶縁膜が得られた。
【実施例6】
【0059】
準備段階として、絶縁膜の成膜を繰り返して、初めて製品に膜厚が不均一であることが観察された成膜回数を記録しておく。この記録された回数に基づき安全を見込んだ若干内輪の回数、例えば8回を限界成膜回数として設定し、絶縁膜の成膜処理の回数がこの限界成膜回数の値に達した段階で製品の製造をいったん中止し、実施例1と同様に基板ホルダ5に基板Sの無い状態で導電膜の成膜を行う。このメンテナンスを行った後、再び実施例1と同様に基板に絶縁膜の成膜を繰り返す。目標成膜回数になった時点で成膜処理を終了する。目標成膜回数になる前に限界成膜回数に達した場合は、製品の製造をいったん中止し、メンテナンスを行った後、製品の製造を行う。このサイクルを目標成膜回数に達するまで繰り返す。
【実施例7】
【0060】
実施例6では、メンテナンスを行うか否かを上述の限界成膜回数を設定して成膜回数がその限界成膜回数に達したか否かにより判断しているが、本実施例では、製品の製造を繰り返して、最初に異常放電が観察または検知された段階でいったん製品の製造を中止し、他の実施例と同様のメンテナンスを行う。
【0061】
[変形例3]
実施例7において、限界成膜回数はさらに異常放電の発生がはじめて観察または検知される成膜回数も考慮して設定してもよい。
【0062】
限界成膜回数を設定する方式による場合は、異常放電の発生を指標にする場合に比べて製品の歩留まりがさらに向上する利点がある。
【0063】
[変形例4]
実施例1〜4および変形例1〜3において、異常放電の検知は検知器12により検知したが、目視により異常放電の発生を検知してもよい。また、プログラムに従い自動的に成膜処理工程が進行するように構成したが、各工程への移行はマニュアル操作によってもよい。
【実施例8】
【0064】
実施例6では、限界成膜回数を設定して成膜回数がその限界成膜回数に達したか否かにより、また変形例3では異常放電の発生がはじめて観察または検知されたことにより、メンテナンスを行うか否かを判断している。本実施例では、成膜(生産)中に平行平板電極の電極面に堆積した絶縁物の膜厚を、図示しない光学式膜厚測定装置によりリアルタイムに測定し、膜厚が所定の膜厚に到達した段階でいったん製品の製造を中止し、他の実施例と同様のメンテナンスを行う。メンテナンス終了後、成膜準備を行い、成膜(生産)を再開する。
【0065】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上述した実施の形態および変形例に限定されるものではない。また、実施の形態と変形例の一つとを組み合わせること、もしくは、実施の形態と変形例の複数とを組み合わせることも可能である。さらに、変形例同士をどのように組み合わせることも可能である。あるいは、実施の形態または実施例、変形例中の一部の工程を他の実施の形態または実施例、変形例において用いること、または置きかえることも可能である。さらにまた、本発明の技術的思想の範囲内で考えられる他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【0066】
本発明は従来のプラズマCVD装置に装置または部品を追加することなく、均一な膜厚分布の薄膜を形成することができ、特に太陽電池用絶縁薄膜の製造に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 プラズマCVD装置
3 真空チャンバ
5 平行平板電極
5A 高周波電極
5B 対向電極(基板ホルダ)
7 ガス供給機構
9 ガス排気機構
11 絶縁物
11a SiN膜(屈折率2.0)
12 検知器
13 アースシールド
14 スイッチ
15 導電膜
15a a−Si膜
15b SiN膜(屈折率2.3)
16 CPU
18 ROM
105C 端部
111A 絶縁物のコーナー部
MB マッチングボックス
AD 異常放電
D プラズマ放電(グロー放電)
PS 交流電源
S 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を用いた容量結合型プラズマCVDによって基板の表面に薄膜を形成するプラズマCVD成膜方法において、
前記基板の表面へ薄膜を形成する薄膜形成工程と、
前記薄膜形成工程で前記基板の表面に薄膜を形成した後、前記基板が無い状態で前記薄膜と比較して導電性の高い薄膜を前記電極の表面に生成する導電性薄膜形成工程とを有することを特徴とするプラズマCVD成膜方法。
【請求項2】
電極を用いた容量結合型プラズマCVDによって基板の表面に薄膜を形成するプラズマCVD装置において、
前記基板の表面へ薄膜を形成する薄膜形成手段と、
前記薄膜形成手段による一定量の薄膜を前記基板の表面に形成した後、前記基板が無い状態で前記薄膜と比較して導電性の高い薄膜を前記電極の表面に生成する導電性薄膜生成手段とを備えたことを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項3】
平行平板電極にて放電を行い、基板の表面に窒化シリコン薄膜を成膜するプラズマCVD成膜方法において、
前記基板の表面へ屈折率2.3未満の窒化シリコン薄膜を形成する薄膜形成工程と、
前記基板の表面へ一定量の窒化シリコン薄膜を形成した後に、基板が無い状態で、アモルファスシリコン(以下、a−Si)または屈折率2.3以上の窒化シリコン膜を前記平行平板電極の表面に生成する窒化シリコン薄膜形成工程とを有することを特徴とするプラズマCVD成膜方法。
【請求項4】
平行平板電極にて放電を行い、基板の表面に窒化シリコン薄膜を成膜するプラズマCVD装置において、
前記基板表面へ屈折率2.3未満の窒化シリコン薄膜を形成する薄膜形成手段と、
前記基板表面へ一定量の窒化シリコン薄膜を形成した後に、前記基板が無い状態で、アモルファスシリコン(a−Si)または屈折率2.3以上の窒化シリコン膜を前記平行平板電極の表面に生成する窒化シリコン薄膜形成手段とを備えたことを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項5】
平行平板電極にて放電を行い、基板に絶縁性薄膜を成膜するプラズマCVD装置を用いる絶縁性薄膜の成膜方法であって、
前記基板に絶縁膜を成膜する絶縁膜成膜工程と、
前記平行平板電極の表面のメンテナンスが必要であるか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程において前記メンテナンスが必要であると判断された場合に、前記基板が無い状態で前記平行平板電極の表面に導電膜を成膜する導電膜成膜工程とを備える絶縁性薄膜成膜方法。
【請求項6】
請求項5に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、
さらに、異常放電の発生を検出する異常放電発生検出工程を備え、
前記判断工程における前記メンテナンスが必要であるか否かの判断を、前記異常放電の発生の有無に基づいて行うことを特徴とする絶縁性薄膜成膜方法。
【請求項7】
請求項5に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、
さらに、あらかじめ連続して行われる成膜処理の回数を設定する限界成膜回数設定工程を備え、
前記判断工程における前記メンテナンスが必要であるか否かの判断を、前記限界成膜回数設定工程において設定された限界成膜回数の到達により行うことを特徴とする絶縁性薄膜成膜方法。
【請求項8】
請求項5に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、
さらに、絶縁膜の膜厚検査工程を備え、
前記判断工程における前記メンテナンスが必要であるか否かの判断を、前記膜厚検査工程において設定された膜厚の到達により行うことを特徴とする絶縁性薄膜成膜方法。
【請求項9】
請求項6に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、
前記絶縁膜成膜工程と、前記異常放電発生検出工程と、前記導電膜成膜工程とを繰り返すことを特徴とする絶縁性薄膜成膜方法。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか一項に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、
前記絶縁性薄膜は屈折率2.3未満のSiN膜であり、前記導電膜はa−Si膜または屈折率2.3以上のSiN膜であることを特徴とする絶縁性薄膜成膜方法。
【請求項1】
電極を用いた容量結合型プラズマCVDによって基板の表面に薄膜を形成するプラズマCVD成膜方法において、
前記基板の表面へ薄膜を形成する薄膜形成工程と、
前記薄膜形成工程で前記基板の表面に薄膜を形成した後、前記基板が無い状態で前記薄膜と比較して導電性の高い薄膜を前記電極の表面に生成する導電性薄膜形成工程とを有することを特徴とするプラズマCVD成膜方法。
【請求項2】
電極を用いた容量結合型プラズマCVDによって基板の表面に薄膜を形成するプラズマCVD装置において、
前記基板の表面へ薄膜を形成する薄膜形成手段と、
前記薄膜形成手段による一定量の薄膜を前記基板の表面に形成した後、前記基板が無い状態で前記薄膜と比較して導電性の高い薄膜を前記電極の表面に生成する導電性薄膜生成手段とを備えたことを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項3】
平行平板電極にて放電を行い、基板の表面に窒化シリコン薄膜を成膜するプラズマCVD成膜方法において、
前記基板の表面へ屈折率2.3未満の窒化シリコン薄膜を形成する薄膜形成工程と、
前記基板の表面へ一定量の窒化シリコン薄膜を形成した後に、基板が無い状態で、アモルファスシリコン(以下、a−Si)または屈折率2.3以上の窒化シリコン膜を前記平行平板電極の表面に生成する窒化シリコン薄膜形成工程とを有することを特徴とするプラズマCVD成膜方法。
【請求項4】
平行平板電極にて放電を行い、基板の表面に窒化シリコン薄膜を成膜するプラズマCVD装置において、
前記基板表面へ屈折率2.3未満の窒化シリコン薄膜を形成する薄膜形成手段と、
前記基板表面へ一定量の窒化シリコン薄膜を形成した後に、前記基板が無い状態で、アモルファスシリコン(a−Si)または屈折率2.3以上の窒化シリコン膜を前記平行平板電極の表面に生成する窒化シリコン薄膜形成手段とを備えたことを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項5】
平行平板電極にて放電を行い、基板に絶縁性薄膜を成膜するプラズマCVD装置を用いる絶縁性薄膜の成膜方法であって、
前記基板に絶縁膜を成膜する絶縁膜成膜工程と、
前記平行平板電極の表面のメンテナンスが必要であるか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程において前記メンテナンスが必要であると判断された場合に、前記基板が無い状態で前記平行平板電極の表面に導電膜を成膜する導電膜成膜工程とを備える絶縁性薄膜成膜方法。
【請求項6】
請求項5に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、
さらに、異常放電の発生を検出する異常放電発生検出工程を備え、
前記判断工程における前記メンテナンスが必要であるか否かの判断を、前記異常放電の発生の有無に基づいて行うことを特徴とする絶縁性薄膜成膜方法。
【請求項7】
請求項5に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、
さらに、あらかじめ連続して行われる成膜処理の回数を設定する限界成膜回数設定工程を備え、
前記判断工程における前記メンテナンスが必要であるか否かの判断を、前記限界成膜回数設定工程において設定された限界成膜回数の到達により行うことを特徴とする絶縁性薄膜成膜方法。
【請求項8】
請求項5に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、
さらに、絶縁膜の膜厚検査工程を備え、
前記判断工程における前記メンテナンスが必要であるか否かの判断を、前記膜厚検査工程において設定された膜厚の到達により行うことを特徴とする絶縁性薄膜成膜方法。
【請求項9】
請求項6に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、
前記絶縁膜成膜工程と、前記異常放電発生検出工程と、前記導電膜成膜工程とを繰り返すことを特徴とする絶縁性薄膜成膜方法。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか一項に記載の絶縁性薄膜成膜方法において、
前記絶縁性薄膜は屈折率2.3未満のSiN膜であり、前記導電膜はa−Si膜または屈折率2.3以上のSiN膜であることを特徴とする絶縁性薄膜成膜方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−127168(P2011−127168A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285599(P2009−285599)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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