説明

プラットホームドア装置

【課題】戸袋をコンパクトにするためドア開閉用のガイドレールを開閉ドア側に設けた場合にそのガイドレールをカバーした状態で開閉ドアの開閉を可能にする。
【解決手段】引戸式のドアパネル2と、このドアパネルを収納する戸袋パネル3と、各戸袋パネル間に設けられる仕切パネル4とがプラットホームの乗降側縁部に沿って一列に配置されているプラットホームドア装置において、ドアパネル2の開閉方向に沿ってそのパネル面に設けられたレール7と、このレール7をカバーするようにドアパネル2に設けられその内側にドアパネル開閉方向に連通する中空の通路19を有するカバー18と、戸袋パネル3に設けられレール7を摺動自在に案内するレールガイド8とを有し、ドアパネル2の開動作において戸袋パネル3に備えられたドア開閉駆動装置Aおよびレールガイド8が通路19を通過するように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホームから線路に転落したり或いは走行列車と接触するという危険から乗客を保護するためのプラットホームドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗客の安全を確保する目的でプラットホームの軌道側縁部にプラットホームドア装置の設置が行われている。
【0003】
図6に示すプラットホームドア装置は、停止した列車の乗降ドアの開閉動作に応じて引戸式のドア50を開閉させるように構成されており、列車が入線していない場合はドア50を閉状態に保持している。
【0004】
開かれたドア50は戸袋51内に収納されるようになっており、戸袋51の左側は戸袋51の同じ高さの仕切壁(図示しない)に接続されている。
【0005】
なお、図中、52はドア開閉制御盤、53はガイドレール、54はモータ、55はモータ54によって走行するベルト、56はハンガーであり、このハンガー56はベルト55と開閉ドア50とを接続した状態でガイドレール53上をドア開閉方向に移動するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、列車がプラットホームの定位置に停止しない場合やドアが故障した場合等の緊急時には、乗客がプラットホーム上に避難できるよう、プラットホームドア装置には複数箇所に非常脱出ドアが配設されている。
【特許文献1】特開2001−164833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図6に示す従来のものは、ガイドレールや駆動装置が、ドアパネルの上側空間を用いて配置されているので、ドアあるいは戸袋にガラス等の透明パネルを配置することはできなかった。
【0008】
本発明は以上のような従来のプラットホームドア装置における課題を考慮してなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、乗降通路を開閉する引戸式のドアパネルと、このドアパネルを収納する角筒状の戸袋パネルと、各戸袋パネル間に設けられる仕切パネルとがプラットホームの乗降側縁部に沿って一列に配置され、上記ドアパネルが戸袋パネルに支持されるように構成されるプラットホームドア装置において、ドアパネルの開閉方向に沿ってドアパネルに設けられたレール体と、戸袋パネルの内側に設けられレール体を摺動自在に案内するレール体案内手段と、ドアパネルを開閉動作するドア開閉駆動装置と、レール体およびレール案内手段をカバーするようにドアパネルに設けられるカバーとを有し、上記カバーは、ドアパネルの下部に位置するように配置され、上記ドア開閉駆動装置は、戸袋パネルの内側に設けられるモータと、ドアパネルの下部に設けられ、上記モータにより駆動される部材とを備えているプラットホームドア装置である。
【0010】
本発明において、ドア開閉駆動装置として、一方端がドアパネルの戸先側に、他方端がドアパネルの戸尻側に固定されるベルトを有する場合、このベルトの中間部分にモータの駆動プーリを係合することができる。
【0011】
また、上記ドアパネルが矩形パネルからなる場合、戸尻側の上部には上框から杆部が横方向に延設され、戸尻側の下部にはフレームが横方向に延設され、これら延設された杆部およびフレームにより、ドアパネルを戸袋パネルで支持する構成とすることができる。
【0012】
また、ドア開閉位置を検出するためのセンサおよびドア開閉動作を制御する制御盤が、上記戸袋パネル内の下部に位置していてもよい。
【0013】
また、上記ドアパネルには、透明パネルが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のプラットホームドア装置によれば、レール体およびレール案内手段をカバーするようにドアパネルにカバーが設けられ、該カバー、レール案内手段およびモータにより駆動される部材がドアパネルの下部に配置されているので、ドアパネルに、ガラスパネル等の透明パネルを取り付ける場合、当該透明パネルの面積を上下方向に拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係るプラットホームドア装置を軌道側から見た正面図である。
【0017】
同図において、プラットホームドア装置1は、一列に配置された引戸式のドアパネル2、戸袋パネル3および仕切パネルとして機能する非常脱出ドアパネル(非常脱出ドア)4から主として構成されている。
【0018】
ドアパネル2はプラットホームの乗降側縁部に沿って設けられ乗降通路を開閉するようになっている。
【0019】
戸袋パネル3は角筒状に形成されており、ドアパネル2の左右両側に設けられている。そのフレームとなる上框部3aおよび下框部3b(図2参照)の長さは、ドアパネル2の横幅よりも短い長さに形成されている。
【0020】
この戸袋パネル3の底部には台座3cが備えられ、この台座3cから複数の固定脚3dが垂下され、各固定脚3dはアンカーボルト3eを介しプラットホーム5に凹設されたピット5aに固定されている。
【0021】
非常脱出ドアパネル4は戸袋パネル3の戸尻3f側に連続して設けられ戸袋パネル3と連通する箱状部材からなり、ドアパネル2が開動作した時に戸袋パネル3の戸尻側から突出するドアパネル2の戸尻部2fを収納することができるようになっている。
【0022】
また、非常脱出ドアパネル4における戸袋側と反対側には支柱6が設けられており、この支柱6を中心(縦軸)として非常脱出ドアパネル4をホーム側に旋回させることができるようになっている。
【0023】
図中6aは支柱6を支持している台座であり、この台座6aはアンカーボルト6bを介してピット5bに固定されている。
【0024】
上記非常脱出ドアパネル4は、列車の乗降ドアがプラットホームドア装置1のドアパネル2に対応しない状態で列車が停止した場合やドアパネル2が故障した場合に、乗客をホームに誘導する避難路を開放するためのものであり、ロックを解除すればホーム内側に向けて略90°旋回させることができるようになっている。
【0025】
なお、図中2i,3iおよび4iは、ドアパネル2,戸袋パネル3および非常脱出ドアパネル4にそれぞれはめ込まれたガラスパネルである。
【0026】
次にドアパネル2および戸袋パネル3の構成について詳しく説明する。
【0027】
図2において、ドアパネル2は矩形パネルからなり長辺側を縦にして配置される。戸尻側の上部には上框2aから杆部2bが横方向に延設され、下部にはコ字状のフレーム2cが同じく横方向に延設されている。これら延設された杆部2bおよびフレーム2cは閉状態のドアパネル2を戸袋パネル3で支持するためのものである。
【0028】
なお、上框2aおよび杆部2bの上面には凹溝2b′(図3参照)が連続して形成されており、この凹溝2b′に対し、戸袋パネル3の上框部3aから鉤状に延設されたドアガイド3a′が係合されている。それによりドアパネル2の上側を支持した状態でガイドするようになっている。
【0029】
一方、ドアパネル2における軌道側パネル面の下部には横方向にリニアレール(レール
体)7が取り付けられており、このリニアレール7は、戸袋パネル3に設けられているレールガイド(レール体案内手段)8によって支持されている。
【0030】
詳しくは、図4の左側面図に示すように、リニアレール7には軌道側に向けて凸条7aが突出して設けられており、一方、レールガイド8にはホーム側に向けてその凸条7aに係合する係合溝8aが形成されている。
【0031】
従って、係合溝8aの横方向(紙面奥行き方向)端部から凸条7aを挿入して係合させることにより、リニアレール7はレールガイド8に支持された状態で横方向に摺動することができる。
【0032】
なお、レールガイド8は戸袋パネル3の底板3gから立設されたスタンド9の上部に固定されている。また、3hは底板3gと固定脚3dとを接続するための接続金具であり、3jはその接続金具3hを介して上記台座3cと底板3gを接続するボルトである。
【0033】
上記スタンド9の上面にはさらに箱形のブラケット10が固定され、このブラケット10にドア開閉駆動装置が取り付けられている。また、11はドア開位置を検出するためのセンサ、12はドア閉位置を検出するためのセンサ、13はドア開閉動作を制御する制御盤である。
【0034】
図2に戻って説明する。
【0035】
ドア開閉駆動装置Aは、減速機付きのモータ14と、そのモータ14の出力軸に設けられた駆動プーリ15と、この駆動プーリ15の左下側に配置された従動プーリ16と、各プーリ15,16に架け渡されるタイミングベルト17とから主として構成されている。
【0036】
このタイミングベルト17の一方端はドアパネル2の戸先部2dに止め金具2eを介して固定されており、他方端はZ状に配索され、具体的には駆動プーリ15を折り返して従動プーリ16に向かい、この従動プーリ16をさらに折り返して配索され、ドアパネル2の戸尻部2fに止め金具2gを介し固定されている。
【0037】
タイミングベルト17と上記したリニアレール7は上下に配置されており、ドアパネル2の横幅と略同じ長さを有するカバー18内に収納されている。
【0038】
カバー18は、図4に示すように、ガラスパネル2iの下縁部分から軌道側に向けて先下がりに傾斜する上板部18aとこの上板部18aの先端から垂下される縦板部18bとを有し、この縦板部18bの戸先側下端は、ドアパネル2の下端から軌道側に向けて延設された下フレーム部2hの先端と接続されている。
【0039】
それにより、カバー18は、下方に開放されてドア開閉駆動装置Aとレールガイド8を上方および側方から覆うようになっている。
【0040】
このような形状を有するカバー18に対応して、戸袋パネル3にも上板部3kおよび縦板部3lを有する膨出部3mが形成されており、この膨出部3m内に上記カバー18が収納されるようになっている。
【0041】
また、カバー18内にはドア閉状態で略その上半分が横方向(紙面奥行き方向)に連通する中空の通路19が設けられている。
【0042】
この通路19は、ドアパネル2を開動作させた場合に、その通路19内をドア開閉駆動
装置Aおよびそれを支持するスタンド9が通過できるように構成されている。
【0043】
戸袋パネル3と隣接する非常脱出ドアパネル4も上述したように箱状に形成されており、戸袋パネル3の膨出部3mと同じ形状の膨出部(図示しない)を備えているため、ドアパネル2が開動作すると、そのカバー18は、戸袋パネル3の膨出部3mと非常脱出ドアパネル4の膨出部とに跨って格納されるようになっている。
【0044】
次に、図5を参照しながら上記構成を有するプラットホームドア装置1の動作について説明する。
【0045】
図5(a)はドア閉状態、同図(b)はドア開動作中の状態、同図(c)はドア開状態を示している。
【0046】
まず、図5(a)に示すドア閉状態は、駆動プーリ15が反時計方向に回転しドアパネル2戸尻側のフレーム2cがベルト17によって矢印B(ドア閉)方向に引張られ、ドアパネル2がレールガイド8(図2参照)に支持された状態で引き出されることにより、ドア閉状態となっている。
【0047】
図5(b)に示すドア開動作中では、駆動プーリ15が時計方向に回転しドアパネル2の戸先部2dが矢印D(ドア開)方向に引張られることにより、ドアパネル2がレールガイド8に支持された状態で矢印D方向に移動している。
【0048】
このとき、ドアパネル2の杆部2b′およびフレーム2cは戸袋パネル3を通過してその戸尻側から突出するが、その突出部分は非常脱出ドアパネル4内に進入する。
【0049】
図5(c)に示すドア開状態では、ドアパネル2が戸袋パネル3と非常脱出ドアパネル4に跨って格納されている。すなわち、本実施形態のプラットホームドア装置1では、非常脱出ドアパネル4の開口幅を大きくするために戸袋パネル3の横幅を小さくした結果、ドアパネル2全体を戸袋パネル3内に収納することができないが、平常時にはその戸袋パネル3から突出するドアパネル2を非常脱出ドアパネル4内に格納している。
【0050】
一方、非常時には元々ドアパネル2が開動作しないため、戸袋パネル3の横幅が短くともドアパネル2はその戸袋パネル3の戸尻側から突出することがない。従って、非常脱出ドアパネル4を開くことができる。
【0051】
また、上述した実施形態によれば、例えば車両の種類が異なることによってドアパネル2の横幅を変更しなければならないような場合であってもそのドアパネル2に取り付けられるリニアレール7の長さおよびタイミングベルト17の長さを変えるだけで対応することができ、戸袋パネル3の構成については何ら変更する必要がないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係るプラットホームドア装置の正面図である。
【図2】図1に示すドアパネルおよび戸袋パネルの拡大図である。
【図3】ドアパネル上部のガイド構造を示す左側面断面図である。
【図4】図2の左側面図である。
【図5】(a)はドアパネル閉状態、(b)は開動作中、(c)は開状態を示す動作説明図である。
【図6】従来のプラットホームドア装置の構成を示す一部切欠きを有する正面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 プラットホームドア装置
2 ドアパネル
2a 上框
2b 杆部
2c フレーム
2d 戸先部
2f 戸尻部
3 戸袋パネル
3f 戸尻
3k 上板部
3l 縦板部
3m 膨出部
4 非常脱出ドアパネル
5 プラットホーム
6 支柱
7 レール
8 レールガイド
9 スタンド
10 ブラケット
11,12 センサ
13 制御盤
14 モータ
15 駆動プーリ
16 従動プーリ
17 タイミングベルト
18 カバー
19 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降通路を開閉する引戸式のドアパネルと、このドアパネルを収納する角筒状の戸袋パネルと、各戸袋パネル間に設けられる仕切パネルとがプラットホームの乗降側縁部に沿って一列に配置され、上記ドアパネルが上記戸袋パネルに支持されるように構成されるプラットホームドア装置において、
上記ドアパネルの開閉方向に沿って上記ドアパネルに設けられたレール体と、
上記戸袋パネルの内側に設けられ上記レール体を摺動自在に案内するレール体案内手段と、
上記ドアパネルを開閉動作するドア開閉駆動装置と、
上記レール体および上記レール案内手段をカバーするように上記ドアパネルに設けられるカバーとを有し、
上記カバーは、上記ドアパネルの下部に位置するように配置され、
上記ドア開閉駆動装置は、上記戸袋パネルの内側に設けられるモータと、上記ドアパネルの下部に設けられ、上記モータにより駆動される部材とを備えていることを特徴とするプラットホームドア装置。
【請求項2】
上記ドア開閉駆動装置として、一方端が上記ドアパネルの戸先側に、他方端が上記ドアパネルの戸尻側に固定されるベルトを有し、このベルトの中間部分にモータの駆動プーリが係合されている請求項1のプラットホームドア装置。
【請求項3】
上記ドアパネルは矩形パネルからなり、戸尻側の上部には上框から杆部が横方向に延設され、戸尻側の下部にはフレームが横方向に延設され、これら延設された杆部およびフレームにより、ドアパネルを戸袋パネルで支持する構成である、請求項1のプラットホームドア装置。
【請求項4】
ドア開閉位置を検出するためのセンサおよびドア開閉動作を制御する制御盤が、上記戸袋パネル内の下部に位置している請求項1記載のプラットホームドア装置。
【請求項5】
上記ドアパネルには、透明パネルが設けられている請求項1のプラットホームドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−132386(P2009−132386A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323711(P2008−323711)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【分割の表示】特願2003−377940(P2003−377940)の分割
【原出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】