説明

プラント用計算機装置

【課題】画面上の操作器や制御器等のオブジェクトの位置が移動する場合であっても、イベントの発生過程を再現することができるプラント用計算機装置を得る。
【解決手段】表示デバイス15の画面に表示される第1のオブジェクトをタッチパネル16にタッチしてプラントの操作や制御を行うための第2のオブジェクトをポップアップ表示させる。第2のオブジェクトがポップアップ表示されたとき、他のオブジェクトと重なる場合、タッチアンドドラッグにより移動させる。第2のオブジェクトの位置を、移動されたときはその位置を記憶しておく。第2のオブジェクトが選択されことを判別して当該オブジェクトに対応するプラントの操作や制御などのイベントの内容と発生時刻とそのときの画面の種類を画面操作記録ファイル13aに記録し、必要に応じて読み出してイベントの発生過程を再現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば発電プラントの中央制御設備の中央計算機システムなどのプラント用計算機装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、例えばプラントの運転制御及び監視を行うプラント制御監視装置において、プラントの運転制御操作を表示装置の画面上のタッチ操作により実行する画面タッチ操作手段と、タッチ操作した画面の種類とその画面のタッチ座標とその時刻と操作内容とを保存する画面タッチ記録ファイルとを備え、この画面タッチ記録ファイルを読み出してタッチ操作を画面上に再現可能としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平08−202440号公報(段落番号0010及び図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプラント用計算機装置は以上のように構成され、タッチ操作した画面の種類とその画面のタッチ座標とにより、画面上のどのボタンが選択されたかを判断しており、画面上に操作器や制御器等のオブジェクトがポップアップされる画面がある場合でも、画面上のオブジェクトの位置が固定であることを前提としていた。ところが、オブジェクトがポップアップされる画面があり、かつ、タッチやマウスによるドラッグ操作にて、ポップアップされたオブジェクトが移動可能となっている場合、タッチ座標データと画面表示データだけでは、オブジェクトの位置を特定できないという問題点があった。また、プラントの運転制御等を行うプラント用計算機の性能の向上により、プラント用計算機1台で複数台の表示装置を動作させるものもあるが、従来の画面タッチ記録ファイルでは、タッチ座標データと画面表示データだけでは、オブジェクトの位置を特定できず、またどの表示装置の画面からの操作なのか分からないという問題点があった。
【0005】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、画面上のオブジェクトの位置が移動する場合であっても、プラントの操作や制御などのイベントの発生過程を再現することができるプラント用計算機装置を得ることを目的とする。また、複数台の表示装置を有する画面を有する場合においても、同様にプラントの操作や制御などのイベントの発生過程を再現することができるプラント用計算機装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るプラント用計算機装置においては、
表示装置とオブジェクト制御選択手段とイベント発生手段と画面操作記録ファイル記憶手段と再現手段とを有するプラント用計算機装置であって、
オブジェクト制御選択手段は、画面表示手段とオブジェクト表示手段と選択手段と移動手段と位置記憶手段とを有し、
画面表示手段は、第1のオブジェクトを含む画面を表示装置に表示するものであり、
オブジェクト表示手段は、第1のオブジェクトが選択手段により選択されたときプラントの操作や制御を行うための第2のオブジェクトを画面に表示するものであり、
移動手段は、第2のオブジェクトをドラッグ操作することにより画面上の別の位置へ移動させるものであり、
位置記憶手段は、第2のオブジェクトの位置を記憶するものであり、
イベント発生手段は、第2のオブジェクトが選択手段により選択されたとき第2のオブジェクトの位置に基づいて当該第2のオブジェクトを判別して対応するイベントを発生させるものであり、
画面操作記録ファイル記憶手段は、イベントが発生したときの時刻と画面の種類とイベントの内容とを記録した画面操作記録ファイルを保存するものであり、
再現手段は、画面操作記録ファイルを読み出してイベントの発生過程を再現するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、表示装置とオブジェクト制御選択手段とイベント発生手段と画面操作記録ファイル記憶手段と再現手段とを有するプラント用計算機装置であって、
オブジェクト制御選択手段は、画面表示手段とオブジェクト表示手段と選択手段と移動手段と位置記憶手段とを有し、
画面表示手段は、第1のオブジェクトを含む画面を表示装置に表示するものであり、
オブジェクト表示手段は、第1のオブジェクトが選択手段により選択されたときプラントの操作や制御を行うための第2のオブジェクトを画面に表示するものであり、
移動手段は、第2のオブジェクトをドラッグ操作することにより画面上の別の位置へ移動させるものであり、
位置記憶手段は、第2のオブジェクトの位置を記憶するものであり、
イベント発生手段は、第2のオブジェクトが選択手段により選択されたとき第2のオブジェクトの位置に基づいて当該第2のオブジェクトを判別して対応するイベントを発生させるものであり、
画面操作記録ファイル記憶手段は、イベントが発生したときの時刻と画面の種類とイベントの内容とを記録した画面操作記録ファイルを保存するものであり、
再現手段は、画面操作記録ファイルを読み出してイベントの発生過程を再現するものであるので、
画面上のオブジェクトの位置が移動する場合であっても、プラントの操作や制御などのイベントの発生過程を再現することができるプラント用計算機装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1〜図7は、この発明を実施するための実施の形態1を示すものであり、図1はプラント用計算機装置の構成を示す構成図、図2は画面リクエストボタンの位置が変化する場合の画面を示す説明図、図3は操作用の画面を示す説明図、図4は操作器ポップアップ画面の移動イメージを示す説明図である。図5は、制御器ポップアップ画面の移動イメージを示す説明図、図6は操作記録ファイルの構成を示す構成図、図7は図1のプラント用計算機装置の変形例の構成を示す構成図である。
【0009】
図1において、プラント用計算機10はCPU11、システム時計12、画面操作記録ファイル記憶手段としてのDISK装置13、表示装置としての表示デバイス15及びタッチパネル16を有する。DISK装置13には、画面操作記録ファイル13aが記録される。表示デバイス15とタッチパネル16とは一体化されている。
【0010】
プラント用計算機10が表示デバイス15にて表示する画面21には、図3に示すように、第1のオブジェクトとしての操作器リクエストボタン22、操作器24、制御器リクエストボタン25、制御器27が表示されている。操作器リクエストボタン22は、第2のオブジェクトとしての操作器23をポップアップするためのボタンである。第1のオブジェクトとしての制御器リクエストボタン25は、第2のオブジェクトとしての制御器26をポップアップするためのボタンである。操作器24、制御器27は画面上の固定位置である画面21の下方の左右両側部分に表示される操作器、制御器である。
【0011】
なお、CPU11及びタッチパネル16がこの発明におけるオブジェクト制御選択手段であり、CPU11が画面表示手段、オブジェクト表示手段、位置記憶手段として機能し、タッチパネル16がこの発明における選択手段及び移動手段である。また、CPU11は、イベント発生手段及び再現手段としても機能する。
【0012】
また、画面21には固有の番号である画面ID例えばA11、操作器23,24には操作器ID例えばB11,B12、制御器26,27には固有の番号である制御器ID例えばC11,C12が割り振られている。操作器23の操作ボタン23a,23b(入、切)及び制御器26の操作ボタン26a,26b(△,▽)に対しては、固有の番号である線番IDとしてD11,D12,D13,D14が割り振られている。なお、操作器24、制御器27の操作ボタンについても、図示していないが、同様に線番IDが割り振られている。
【0013】
次に動作について説明する。表示デバイス15において、図2に示す前画面31において画面番号21を呼び出すボタン31aにタッチパネル16を介してタッチすることにより画面21(画面ID:A11)を選択(リクエスト)すると、CPU11は画面21に対応する画面ID、及びそのときの時刻をシステム時計12より取得し、DISK13に時刻、画面ID、及びイベントしての操作内容(この場合は画面リクエスト)を画面操作記録ファイル13aに記録してDISK装置13に保存する。
【0014】
次に、画面21に第2のオブジェクトとしての操作器23をポップアップして表示する場合、図3において、第1のオブジェクトとしての操作器リクエストボタン22を押すと操作器23がポップアップして表示され、操作器リクエストボタン22を押した時点で、画面ID、操作器ID、及びそのときの時刻を画面操作記録ファイル13aに記録してDISK装置13に保存する。第2のオブジェクトである操作器23の操作ボタンの「入」、「切」を操作した場合、画面ID、該当する線番ID、そのときの時刻を画面操作記録ファイル13aに記録してDISK装置13に保存する。この画面操作記録ファイルは、図6(a)のファイル構成41に示すように構成されている。なお、操作器23の操作ボタンの「入」、「切」を操作した場合、当該操作ボタンに対応したイベントである例えば開閉器の「入」または「切」のイベントが発生する。
【0015】
制御器26においても同様であり、図3に示すように、画面21において第1のオブジェクトとしての制御器リクエストボタン25を押すと制御器26がポップアップして表示され、画面21の制御器リクエストボタン25を押した時点で、画面ID、制御器ID、及びそのときの時刻を画面操作記録ファイル13aに記録してDISK装置13に保存する。第2のオブジェクトであるポップアップされた制御器26の操作ボタン26a,26b(△,▽)を操作した場合、画面ID、該当する線番ID、そのときの時刻を画面操作記録ファイル13aに記録してDISK装置13に保存する。この画面操作記録ファイルは、図6(b)のファイル構成に示すように構成されている。なお、ポップアップされた制御器26の操作ボタン26a,26b(△,▽)を操作した場合、当該操作ボタンに対応したイベントであるプロセス量の「増」または「減」のイベントが発生する。また、別の画面をリクエストした場合は、図6(c)のファイル構成43に示すような構成の画面操作記録ファイルとなる。
【0016】
また、画面上に多数のオブジェクトが表示され、これらが重なって操作に不便を感じる場合などには、ポップアップされたオブジェクトを他の位置に移動させると好都合である。このような場合は、図4、図5に示すように表示デバイス15に表示された操作器22、制御器24をタッチパネル16にタッチしてドラッグすることによりその位置を移動する。この場合においても、同様に操作器22、制御器24などのオブジェクトの移動が終了した時点で、該当するオブジェクトの移動が終了した時刻、画面ID、オブジェクト(操作器、制御器)ID、移動した位置を画面操作記録ファイル13aに記録してDISK装置13に保存する。移動された操作器22や制御器26が奏された場合も、同様に画面ID、該当する線番ID、そのときの時刻を画面操作記録ファイル13aに記録してDISK装置13に保存する。
なお、CPU11により、必要に応じて画面操作記録ファイル13aを読み出して、画面の選択過程や、操作器や制御器の操作の過程すなわちイベントの発生過程を再現することができる。
【0017】
このように画面、操作器、制御器に固有のID番号を持たせておけば、ポップアップして表示されたオブジェクトのみならず、図4、図5に示すように画面上の当該オブジェクトの位置が移動する場合においても、操作の過程を確実に記録し、再現することができる。なお、図5に示すようにリクエストすべき画面番号のリクエストボタン31a,31b,31cの表示位置が図5(a)から図5(b)のように変化する場合でも、画面21〜23に対して固有のID番号A11〜A13を持たせているため、同様に再現することができる。
【0018】
図7は、図1の変形例であるプラント用計算機装置の構成を示すものであり、図1におけるタッチパネル16の代わりに、マウス17により画面を操作するようにしたものである。動作については、タッチ操作の代わりにマウスによるドラッグやクリック操作を行うだけであり、同様に操作の過程の記録及び再現を行うことができる。
【0019】
実施の形態2.
図8〜10は、この発明の実施の形態2を示すものであり、図8はプラント用計算機装置の構成を示す構成図、図9は変形例であるプラント用計算機装置の構成を示す構成図、図10は操作記録ファイルの構成を示す構成図である。実施の形態1に対し、タッチ操作ならば図8に示すように一つのプラント用計算機10に対し表示デバイス18及びタッチパネル19を追加し、マウス操作ならば図9に示すように表示デバイス20、マウス21を追加したものである。なお、図8において、CPU11は表示デイバス15,18に対して表示デバイス15,18固有の番号であるデバイスID例えばE11,E12を割り振る仕組みを備えている。図9におけるCPU11においても、同様である。
【0020】
次に動作について説明する。図8のプラント用計算機装置において、実施の形態1と同様の操作した場合、CPU11では、どのタッチパネル16,19からの信号であるかを認識し、当該タッチパネルのデイバスIDを画面操作記録ファイル13aに記録してDISK装置13に保存する。また、時刻、画面/操作器/制御器/線番の各ID、及び操作内容が、実施の形態1と同様に保存される。図10に、この場合の操作記録ファイルの構成を示す。これにより、2つ以上の表示デバイスで同時に操作したとしても、どのタッチパネルで操作したものかが分かるため、それぞれのタッチパネルに対して再現可能となる。図9に示したプラント用計算機装置においても同様である。以上のように、複数台の表示装置を有する場合においても、同様に操作の過程が再現可能なプラント用計算機装置を得ることができる。
【0021】
なお、上記では、選択手段あるいは移動手段として、タッチパネル16,19やマウス17,21を用いるものを示したが、この両者を併用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施の形態1であるプラント用計算機装置の構成を示す構成図である。
【図2】画面リクエストボタンの位置が変化する場合の画面を示す説明図である。
【図3】操作用の画面を示す説明図である。
【図4】操作器ポップアップ画面の移動イメージを示す説明図である。
【図5】制御器ポップアップ画面の移動イメージを示す説明図である。
【図6】操作記録ファイルの構成を示す構成図である。
【図7】図1のプラント用計算機装置の変形例であるプラント用計算機装置の構成を示す構成図である。
【図8】実施の形態2であるプラント用計算機装置の構成を示す構成図である。
【図9】図8のプラント用計算機装置の変形例であるプラント用計算機装置の構成を示す構成図である。
【図10】操作記録ファイルの構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0023】
10 プラント用計算機、11 CPU、12 システム時計、13 DISK装置、
15,18,20 表示デバイス、16,19 タッチパネル、17,21 マウス、
21 画面,操作器リクエストボタン、22,23 操作器,制御器リクエストボタン、
26 制御器、31a〜31c ボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置とオブジェクト制御選択手段とイベント発生手段と画面操作記録ファイル記憶手段と再現手段とを有するプラント用計算機装置であって、
上記オブジェクト制御選択手段は、画面表示手段とオブジェクト表示手段と選択手段と移動手段と位置記憶手段とを有し、
上記画面表示手段は、第1のオブジェクトを含む画面を上記表示装置に表示するものであり、
上記オブジェクト表示手段は、上記第1のオブジェクトが上記選択手段により選択されたとき上記プラントの操作や制御を行うための第2のオブジェクトを上記画面に表示するものであり、
上記移動手段は、上記第2のオブジェクトをドラッグ操作することにより上記画面上の別の位置へ移動させるものであり、
上記位置記憶手段は、上記第2のオブジェクトの位置を記憶するものであり、
上記イベント発生手段は、上記第2のオブジェクトが上記選択手段により選択されたとき上記第2のオブジェクトの位置に基づいて当該第2のオブジェクトを判別して対応するイベントを発生させるものであり、
上記画面操作記録ファイル記憶手段は、上記イベントが発生したときの時刻と上記画面の種類と上記イベントの内容とを記録した画面操作記録ファイルを保存するものであり、
上記再現手段は、上記画面操作記録ファイルを読み出して上記イベントの発生過程を再現するものである
プラント用計算機装置。
【請求項2】
上記選択手段及び上記移動手段は、タッチパネルあるいはマウスであることを特徴とする請求項1に記載のプラント用計算機装置。
【請求項3】
上記第2のオブジェクトは、操作器及び制御器のうちの少なくとも一方を含むものであることを特徴とする請求項1に記載のプラント用計算機装置。
【請求項4】
プラント用計算機が設けられたものであって、上記表示装置は1台の上記プラント用計算機に対して複数設けられたものであることを特徴とする請求項1に記載のプラント用計算機装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−295020(P2009−295020A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149492(P2008−149492)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】