説明

プリプレグの製造方法及びプリプレグの製造装置

【課題】平坦で含浸性に優れたプリプレグの製造方法等を提供する。
【解決手段】繊維布からなる基材を、溶剤又は樹脂ワニスを収容した含浸槽に浸漬し、含浸槽上空に設置された2本のスクイズロール又はカットバーの間を通過、乾燥後、基材搬送路の両側に対向して配置した一対のダイにより、樹脂ワニスを両面に塗布し、乾燥することを特徴とするプリプレグの製造方法等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板等に使用されるプリプレグの製造方法及びプリプレグの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板用積層板に使用される熱硬化性樹脂含浸塗工布としてのプリプレグは、通常以下のように製造されている。すなわち、図2に示すように繊維からなる基材1を連続的に巻き出し、熱硬化性樹脂を有機溶剤で希釈した樹脂ワニスを蓄えた含浸槽4に浸漬したのち、スクイズロール3又はカットバーなどにより樹脂量を調整し、乾燥炉6で溶剤を揮発させ、熱硬化性樹脂を半硬化状態とし、冷却し、連続したプリプレグを製造し、巻取り機8で巻き取り又は切断機9で切断して製造する。このとき、スクイズロール又はカットバーで掻き落とされた樹脂は、含浸槽4に戻る。
【0003】
従来のプリプレグの製造装置は、特許文献1、2に記載されたものがある。このうち特許文献1に記載されたダイを用いた両面塗工では、含浸性に劣るという問題点がある。また特許文献2に記載された予備含浸した後にコンマコータで塗布する方法では、平坦性に劣るという問題点がある。
【0004】
これらの問題点を解決する為、塗工角度を調整したダイ塗工が、特許文献3で提案されているが、塗工する樹脂ワニスの種類、ガラスクロスの厚み等によっては、気泡の除去が不十分で含浸性に劣るという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−314647号公報
【特許文献2】特開2001−122992号公報
【特許文献3】特開2004−290771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、平坦で含浸性に優れたプリプレグの製造方法及び製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、繊維布からなる基材を、溶剤又は樹脂ワニスに浸漬させ、乾燥後に、ダイによる両面塗工を行うことで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、繊維布からなる基材を、溶剤又は樹脂ワニスを収容した含浸槽に浸漬し、含浸槽上空に設置された2本のスクイズロール又はカットバーの間を通過後若しくは乾燥後に、基材搬送路の両側に対向して配置した一対のダイにより、樹脂ワニスを両面に塗布し、乾燥することを特徴とするプリプレグの製造方法に関する。
【0009】
また、本発明は、含浸槽、含浸槽の上空に設置されたスクイズロール又はカットバー、少なくとも2つの乾燥手段、基材搬送路の両側に対向して設置されたダイを有するプリプレグの製造装置に関する。
【0010】
さらに、本発明は、乾燥手段が、第1の乾燥手段及び第2の乾燥手段を有し、このうち第1乾燥手段が、スクイズロール又はカットバーと、ダイとの間の基材搬送路に設置され、第2の乾燥手段が、ダイの後方の基材搬送路に設置された上記のプリプレグの製造装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プリプレグの気泡率、表裏差バラツキを低減させ、平坦で含浸性に優れたプリプレグの製造方法及び製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例になるプリプレグの製造装置を示す全体概略図である。
【図2】従来のプリプレグの製造装置を示す全体概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための最良の形態について図1を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例になる製造装置の一例を示す全体概略図である。装置の主な構成としては、縦方向に搬送経路をもち、基材1を連続的に巻き出す巻き出し7、含浸槽4、樹脂量を調整するスクイズロール3又はカットバーを備え、乾燥炉6を2つ有し、基材搬送路の両側に対向して設置された左側ダイA10及び右側ダイB11で塗布され、巻取り機8で巻き取り又は切断機9で切断して製造する装置である。
【0014】
また、基材搬送路の両側に設置された左側ダイA10及び右側ダイB11は、通常、上型、下型間に塗布液を留めるマニホールド部と流路であるランド部、吐出口となるリップ部を有し、内圧を測定するための内圧測定手段、塗布液を供給するための液供給手段が各々に接続されている。
【0015】
図1において塗布液は、液供給手段により各ダイ内部に供給されると、内部に形成されたマニホールド部に留まる。塗布液はこのマニホールド部にて幅方向に圧力分布を均等化されてランド部を通過し、リップ部から吐出され、基材の表面に塗布される。
【0016】
基材搬送路の両側に対向して設置されたダイの間に搬入される基材は、繊維間の空間に空気を挟み込んでいる。対向するダイ塗工方式においては、基材に対向したダイからワニスを直接塗布する場合は、基材に樹脂ワニスが浸透する力が小さく、基材内部の空気は内部に残留する可能性がある。
【0017】
以下に、本発明のプリプレグ製造方法について、図2の製造装置を用いた場合を一例として記述する。繊維布からなる基材1を巻き出し7から連続的に巻き出し、樹脂を溶剤で希釈した樹脂ワニス又は溶剤を蓄えた含浸槽4に浸漬した後、スクイズロール3又はカットバーのいずれかで余分な樹脂ワニス又は溶剤をそぎ落として、平坦化する。
【0018】
乾燥炉6で溶剤を揮発させ、樹脂を半硬化状態とし、冷却し、樹脂を溶剤で希釈した樹脂ワニスを液供給手段からダイA10及びダイB11に供給し、ダイA10及びダイB11により基材両面に樹脂ワニスを同時塗布する。それ以降は従来と同じく、乾燥炉6で溶剤を揮発させ、樹脂を半硬化状態とし、冷却し、連続したプリプレグを製造し、巻取り機8で巻き取り又は切断機9で切断して製造する。
【0019】
本発明に用いる繊維布からなる基材には、ガラス布基材、紙基材等があり、樹脂ワニスに用いられる樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイド−トリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂やフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂等を用いることができる。
【0020】
また、樹脂ワニスの希釈液として又は含浸槽での含浸液として用いられる溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド等を用いることができる。
【実施例】
【0021】
以下に、図2に示すプリプレグ製造装置を使用してプリプレグを製造する方法の実施例を詳細に説明する。
実施例1
基材には、厚さ96μmのガラスクロスを使用した。該ガラスクロスにダイから塗布させる樹脂ワニスとしては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂を100重量部、クレゾールノボラック樹脂60重量部、エチルメチルイミタゾール0.5重量部及び水酸化アルミニウムなどの充填材90重量部からなる樹脂組成物をメチルエチルケトン溶剤で希釈した樹脂分70重量%の樹脂ワニスを用いた。
【0022】
また、含浸槽に満たされた樹脂ワニスは、上記の樹脂組成物をメチルエチルケトン溶剤で希釈し、樹脂分30重量%の樹脂ワニスを用いた。また、同様に溶剤で希釈して各種樹脂分の樹脂ワニスを得た。
【0023】
上記ガラスクロス基材の供給速度は4m/分とし、樹脂分30重量%の樹脂ワニスを蓄えた含浸槽4で浸漬した後、カットバーで余分な樹脂ワニスをそぎ落として、乾燥炉7で溶剤を揮発させ、熱硬化性樹脂を半硬化状態とし、ダイA10及びダイB11により基材両面に樹脂分70重量%の樹脂ワニスを同時塗布した。ダイ塗布後の基材は乾燥炉で溶剤を揮発させ、半硬化状態のプリプレグを作製した。
【0024】
得られたプリプレグは良好な外観が得られた。プリプレグの断面を顕微鏡観察したところ、ガラスクロス上の表裏樹脂層は共に25μmと表裏の厚みも均一である。
また、内部に存在する気泡の確認は、プリプレグの断面を顕微鏡観察し、横糸と縦糸の重なる部分で気泡の有無をカウントし、その比率を気泡率とした。その結果、気泡率は60%であった。
【0025】
実施例2
基材に、厚さ96μmのガラスクロスに替えて厚み20μmのガラスクロスを使用した以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。ガラスクロス上の表裏樹脂層はともに10μmと表裏の厚みも均一で、気泡率は1%であった。
【0026】
実施例3
含浸槽に満たされた樹脂ワニスを、樹脂分30重量%の樹脂ワニスに替えて、樹脂分45重量%ワニスを用いた以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを作製した結果、ガラスクロス上の表裏樹脂層はともに厚み均一で、気泡率は70%であった。
【0027】
実施例4
含浸槽に満たされた樹脂ワニスを、樹脂分30重量%の樹脂ワニスに替えて、樹脂分約45重量%ワニスを用いた以外は、実施例2と同様にしてプリプレグを作製した結果、ガラスクロス上の表裏樹脂層はともに厚み均一で、気泡率は1%であった。
【0028】
比較例1
含浸槽での浸漬、カットバーでの平坦化、乾燥を行わずに、巻き出し7からダイへ基材を搬送し、ダイ塗工及びその後の工程のみ実施例1と同様にしてプリプレグを製造した。その結果、得られたプリプレグの気泡率は80%であった。
【0029】
比較例2
基材に、厚さ96μmのガラスクロスに替えて厚み20μmのガラスクロスを使用した以外は、比較例1と同様にしてプリプレグを作製した結果、得られたプリプレグの気泡率は2%であった。
【符号の説明】
【0030】
1 基材
2 樹脂ワニス
3 スクイズロール
4 含浸槽
5 ガイドロール
6 乾燥炉
7 巻き出し
8 巻取り機
9 切断機、
10 ダイA
11 ダイB
12 定量ポンプA
13 定量ポンプB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維布からなる基材を、溶剤又は樹脂ワニスを収容した含浸槽に浸漬し、含浸槽上空に設置された2本のスクイズロール又はカットバーの間を通過、乾燥後、基材搬送路の両側に対向して配置した一対のダイにより、樹脂ワニスを両面に塗布し、乾燥することを特徴とするプリプレグの製造方法。
【請求項2】
含浸槽、含浸槽の上空に設置されたスクイズロール又はカットバー、少なくとも2つの乾燥手段、基材搬送路の両側に対向して設置されたダイを有し、前記少なくとも2つの乾燥手段のうちの1つが第1の乾燥手段であり、他の1つが第2の乾燥手段であり、このうち第1の乾燥手段が、前記スクイズロール又はカットバーと、前記ダイとの間の基材搬送路に設置され、第2の乾燥手段が、前記ダイの後方の基材搬送路に設置されたプリプレグの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−67817(P2013−67817A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−8764(P2013−8764)
【出願日】平成25年1月21日(2013.1.21)
【分割の表示】特願2008−53318(P2008−53318)の分割
【原出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】