説明

プリプレグシート

【課題】本発明は、製造に要する手間の増大を抑制しつつ自動車用駆動モータの絶縁信頼性を向上させることを課題としている。
【解決手段】自動車用駆動モータのステータコアまたはロータコアのスロット内壁面か、あるいは、該スロットに収容される導体コイルの表面かの少なくとも一方に接着されるべく、シート状基材の少なくとも片面に、エポキシ樹脂組成物が用いられてなる熱硬化性接着剤層が形成されており、前記エポキシ樹脂組成物は、70℃以上の軟化点を有するビスフェノール型エポキシ樹脂と、常温固体のノボラック型エポキシ樹脂とを30:70〜70:30のいずれかの重量割合で含み、さらに、イミダゾール系硬化剤を含んだ粉末状であり、該粉末状のエポキシ樹脂組成物が前記シート状基材に固着されて前記熱硬化性接着剤層が形成されていることを特徴とするプリプレグシートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状基材の少なくとも片面に、エポキシ樹脂組成物が用いられてなる熱硬化性接着剤層が形成されているプリプレグシートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気自動車やハイブリッド自動車などの普及により、このような自動車の動力源となる駆動モータの需要が拡大している。
通常、モータには、固定配置されたステータと、該ステータに対して回転可能に設けられたロータとが備えられており、このステータやロータには、エナメル線などの巻線で形成された導体コイルが設けられたりしている。
【0003】
この導体コイルは、通常、巻線が複数本巻き束ねられて形成されておりステータコアやロータコアに形成されたスロットと呼ばれる溝の内部にその一部が収容されて備えられている。
このスロットは、通常、モータやジェネレータの回転軸方向と平行な方向に沿って延在されており、前記回転軸周りに、略均等な間隔でステータコアやロータコアの表面に複数条形成されている。
そして、スロットは、ステータコアやロータコアの全長にわたる長さに形成されておりステータコアやロータコアの両端面には開口部が形成されている。
このステータコアやロータコアの形成には、モータやジェネレータの運転効率の観点から高い透磁率を有する鋼材などが用いられている。
そのため、例えば、巻線とコア端面のエッジ部との接触などで巻線の絶縁被膜に傷が発生することを防止すべく、巻線は、スロットライナやウェッジなどのシート状の部材で包囲された状態でスロット内に配設されている(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、近年、高電圧化の図られたモータを形成させる場合に、平角エナメル線によってU字状に形成されたセグメントを複数本スロット内に収容させた後に、該セグメントどうしを接続して導体コイルを形成させることが行われている(特許文献2参照)。
このような高電圧モータの製造においては、特許文献2にも示されているように、セグメントの脚部をスロットの一方の開口部側から挿入して、その先端部を他方の開口部から突出させ、この突出させた脚部先端部どうしを接続する方法が採用されている。
この場合にも、予めスロットの内壁面に沿わせてシート状の部材を配しておくことによってセグメントの絶縁被膜がコアによって傷付けられることが防止されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−111328号公報
【特許文献2】特開2005−341656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなコアとの接触による導体コイルの絶縁性信頼性の低下を抑制させることについては、モータの製造時のみならず使用時においても求められるものである。
すなわち、モータの回転による振動によって導体コイルを構成する巻線などの絶縁被膜がコアによって傷つけられるおそれがあることから前記シート状部材には、より確実に導体コイルとコアとの間に介在していることが求められる。
【0007】
しかし、これまでこのような問題点については殆ど着目がなされておらず、その対策も十分検討されていない。
このことに対して、シート状の部材を、導体コイル側か、コア内壁面側かの少なくとも一方に接着させるようにすれば、導体コイルとコアとの接触を、シート状部材がいずれにも接着されていない場合に比べて防止することができる。
【0008】
しかし、自動車用駆動モータは、通常、内部が高温になることからその接着剤にも優れた耐熱性が必要になる。通常、このような耐熱性と絶縁性とが求められる用途においては、エポキシ樹脂組成物などの熱硬化性接着剤が適しているが、エポキシ樹脂組成物は、一般的に硬化反応に時間を要し、短時間硬化させることが難しい。
例えば、反応性を向上させると、通常は、使用前の保管期間中に硬化反応が生じてしまい接着剤として有効に利用できる期間を短期化させてしまうことから実用上問題を生じさせてしまうこととなる。
【0009】
このように、従来、自動車用駆動モータの絶縁信頼性を向上させるべく導体コイルかスロットの内壁面かのいずれかに耐熱性に優れた熱硬化性の接着剤でシート状の部材を接着させようとすると硬化のための長い時間を要し自動車用駆動モータの製造に要する手間を増大させてしまうという問題を有している。
本発明は、製造に要する手間の増大を抑制しつつ自動車用駆動モータの絶縁信頼性を向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、粉末状のエポキシ樹脂組成物を用いることで熱硬化反応における反応性の向上と、保管期間における硬化反応の進行抑制とを両立させ得ることを見出し、本発明を完成させるに到ったのである。
【0011】
すなわち、本発明は、前記課題を解決すべく、自動車用駆動モータのステータコアまたはロータコアのスロット内壁面か、あるいは、該スロットに収容される導体コイルの表面かの少なくとも一方に接着されるべく、シート状基材の少なくとも片面に、エポキシ樹脂組成物が用いられてなる熱硬化性接着剤層が形成されており、前記エポキシ樹脂組成物は、70℃以上の軟化点を有するビスフェノール型エポキシ樹脂と、常温固体のノボラック型エポキシ樹脂とを30:70〜70:30のいずれかの重量割合で含み、さらに、イミダゾール系硬化剤を含んだ粉末状であり、該粉末状のエポキシ樹脂組成物が前記シート状基材に固着されて前記熱硬化性接着剤層が形成されていることを特徴とするプリプレグシートを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプリプレグシートによれば、シート状基材の少なくとも片面に、エポキシ樹脂組成物が用いられてなる熱硬化性接着剤層が形成されていることから、該接着剤層をステータコアまたはロータコアのスロット内壁面か、該スロットに収容される導体コイルの表面かの少なくとも一方に接着させることができ、自動車用駆動モータの絶縁信頼性の向上を図ることができる。
また、前記熱硬化性接着剤層の形成に用いられる前記エポキシ樹脂組成物は、70℃以上の軟化点を有するビスフェノール型エポキシ樹脂と、常温固体のノボラック型エポキシ樹脂とを30:70〜70:30のいずれかの重量割合で含み、さらに、イミダゾール系硬化剤を含んだ粉末状であることから、プリプレグシートとしてその接着性を有効に利用できる期間を確保しつつプリプレグシートを短時間で熱硬化可能なものとし得る。
したがって、導体コイルやコアに対する接着作業性を良好なものとすることができ、製造に要する手間の増大を抑制しつつ自動車用駆動モータの絶縁信頼性を向上させ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について(添付図面に基づき)説明する。
まず、本実施形態のプリプレグシートが用いられる自動車用駆動モータについて説明する。
図1は、回転軸を垂直方向に向けて配した駆動モータのステータとロータとを上面側から見た様子を示すものであり、回転軸に対して垂直となる平面でステータコアの上端面よりもわずかに上側を切断した様子を示すものである。
また、図2は、図1において記号「A」で示されている破線で囲まれた領域を拡大した拡大図であり、記号「B」で示されている破線で囲まれた領域を拡大した拡大図を併せて図中に示している。
【0014】
この図1、2に示されているようにこの駆動モータの中心部には、細長い円柱形状を有する回転軸10が配され、該回転軸10の外周側にはロータコアが周設されている。
該ロータコア20は、前記回転軸10を挿通させ得る貫通孔を上端側から下端側に貫通させた全体略円筒形状に形成されており、前記回転軸10とロータコア20とは、固定一体化されて前記回転軸10周りに回転可能な状態で駆動モータに備えられている。
【0015】
本実施形態の駆動モータには、この回転軸10周りに、前記ロータコアを包囲するステータコア30が備えられており、該ステータコア30は、本実施形態においては、4層型セグメント順次接合ステータコイル(図示せず)が導体コイルとして装着されて駆動モータ内に固定されている。
前記ステータコア30は、前記ロータコア20の外径よりも僅かに大きな内径を有する全体略円筒形状に形成されており、しかも、円筒形状の内側に形成されている中空領域をモータの回転軸が延在する方向に沿わせた状態で駆動モータ内に固定されて配設されている。
そして、ステータコア30は、その円筒形状の内周面とロータコア20の外周面との間に僅かに空隙を形成させて中空領域にロータコア20を収容させた状態で駆動モータに配設されている。
【0016】
前記ステータコア30の内周面側には、複数条のスロット31が形成されており、この複数条のスロット31は、前記回転軸10の延在方向(上下方向)に略平行して延在されており、しかも、隣接するスロット31どうしが互いに略平行して配設されている。
そして、ステータコア30の内周面側には、このスロット31によって、ステータコア30の上端側から下端側にいたる長さ(テータコア30の全長)を有する直線状の開口部31aが互いに略平行して複数形成されている。
また、スロット31は、ステータコア30を長さ方向(上下方向)に貫通する状態で形成されており、ステータコア30の上端面側には、スロット31の断面形状と同形状の開口部31bが形成されており、下端面側にも同形の開口部が形成されている。
さらに、ステータコア30の内周面から外周側に向けてのスロット31の深さは、全てのスロット31において略同一深さとされている。
【0017】
前記ステータコア30には、スロット11どうしの間に板状のティース32が形成されており、該ティース32は、ステータコア30の内周面側に前記回転軸10方向に向けて突出した状態で複数形成されている。
該ティース32は、突出方向先端部に他部よりも広幅に形成された広幅部32aを有しており、スロット31の延在方向(回転軸10の延在方向)に垂直な平面による断面が略T字状となる形状を有している。
このロータコア20やステータコア30の形成には、特に限定されるものではないが、例えば、電磁鋼板を前記回転軸10の軸方向に積層させた積層体などを用いることができる。
【0018】
このステータコア30のスロット31には、U字状のセグメントの脚部40がそれぞれ4本ずつ収容されており、前記セグメントは、平角導体41と、その表面にエナメルワニスによって形成された絶縁被膜42とによって構成されている。
該U字状のセグメントは、そのU字状の頭部をステータコア30の上端側に位置させ、その脚部をステータコア30の上端側の開口部31bから挿入させて下端側の開口部から突出させており、本実施形態においては、この突出させた脚部先端を別のスロットから突出している脚部先端と連結させることによって、複数のティース32を上端側から下端側、下端側から上端側へと縫うようにして連続する導体が形成されている。
すなわち、このステータコア30と複数のセグメントによって形成されているステータは、セグメントの頭部によって形成されたコイルエンドが上端側に配され、脚部どうしの連結部によって形成されたコイルエンドが下端側に配された状態となっている。
また、各スロット31には、内側から外向きに一列に並んだ状態で計4本の脚部が収容されている。
【0019】
そして、この4本の脚部を全周取り巻いて束ねるようにしてスロットライナ51が配されており、該スロットライナ51には、本実施形態に係るプリプレグシートが用いられている。
このスロットライナ51は、スロット31の内壁面31cに沿って配されており、その外側面をスロット31の内壁面31cに接着させ、且つ内側面をセグメント脚部の外周面(絶縁被膜42)に接着させている。
すなわち、セグメントによって形成された導体コイルとステータコア30とが、このスロットライナ51によって接着固定されている。
【0020】
該スロットライナ51は、厚み方向中心となるシート状基材51aを挟んで両面に接着剤層51b1、51b2を有しており、内面側(導体コイル側)の接着剤層51b1(以下「第一接着剤層51b1」ともいう)、外面側(スロット内壁面側)の接着剤層51b2(以下「第二接着剤層51b2」ともいう)とは、いずれも、エポキシ樹脂組成物が用いられた熱硬化性接着剤で形成されたものである。
【0021】
すなわち、スロットライナ51が導体コイルとステータコア30とのいずれにも接着される前のプリプレグシートの状態にあった際には、シート状基材51aの両面にBステージ状態の熱硬化性接着剤層が備えられていたものである。
【0022】
このプリプレグシートにおける第一接着剤層51b1や第二接着剤層51b2の厚みは、用いられる自動車用駆動モータの大きさなどによって適宜変更されるものではあるが、通常、それぞれ、5μm〜500μmのいずれかの厚みとされる。
【0023】
本実施形態においては、このプリプレグシートにおける第一接着剤層51b1の形成に用いられる熱硬化性接着剤と、第二接着剤層51b2の形成に用いられる熱硬化性接着剤とは、いずれも、同一組成であっても良く、異なる組成であっても良い。
ただし、少なくとも一方は、70℃以上の軟化点を有するビスフェノール型エポキシ樹脂と、常温固体のノボラック型エポキシ樹脂とを30:70〜70:30のいずれかの重量割合で含み、さらに、イミダゾール系硬化剤を含んでいるエポキシ樹脂組成物であることが必要である。
【0024】
第一接着剤層51b1か、第二接着剤層51b2かのいずれかがこのようなエポキシ樹脂組成物によって形成されることで自動車用駆動モータの運転時における発熱や振動、油類の付着の影響によって劣化が生じにくく、接着耐久性に優れたスロットライナ51となる。
したがって、導体コイルとステータコア30とのいずれにも接着していない状態となって、これらの間から抜け落ちてしまったりするおそれが抑制され、セグメントの絶縁被膜42に対する傷つき防止効果を長期持続させることができる。
しかも、上記のような組成とされることで、接着時における熱硬化反応の反応性に優れた熱硬化性接着剤層を形成させることができ、導体コイルやステータコア(スロットの内壁面31c)に対する接着作業性を良好なものとさせ得る。
【0025】
また、この70℃以上の軟化点を有するビスフェノール型エポキシ樹脂と、常温固体のノボラック型エポキシ樹脂とを30:70〜70:30のいずれかの重量割合で含み、さらに、イミダゾール系硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物は、プリプレグシートの熱硬化性接着剤層の形成において粉末状であることが重要である。
【0026】
このようにエポキシ樹脂組成物を粉末状とすることで、プリプレグシートがスロットライナ51として使用されるまでの間に硬化反応が進行して接着性を低下させたり、あるいは、全く接着性が発揮されないような状態となったりするトラブルを防止することができる。
すなわち、仮に、上記のようにポキシ樹脂とイミダゾール系硬化剤とが含まれていても、これらを、一旦有機溶媒などに分散させてワニス化し、シート状基材51aに塗布乾燥してプリプレグシートを作製した場合には、粉末状のエポキシ樹脂組成物を用いた場合に比べて、保管時における硬化反応の進行度合いが大きくなる。
したがって、そのような場合には、スロットライナ51として使用できる期間を短期化させることとなる。
【0027】
このプリプレグシートに用いられるシート状基材51aは、その材質や形態が特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリケトン、ポリテトラフロロエチレンなどの樹脂フィルムや、樹脂繊維が用いられてなるフィルム状、不織布状、または織布状のシートが採用されうる。
また、例えば、セルロース、綿、羊毛、ロックウール、ガラス繊維、カーボン繊維などが用いられた不織布状、または織布状のシートが採用されうる。
また、シート状基材51aは、その厚みが特に限定されるものではなく、通常、5μm〜500μmのいずれかの厚みとされ得る。
【0028】
前記エポキシ樹脂組成物に含有される70℃以上の軟化点を有するビスフェノール型エポキシ樹脂としては、70℃以上の軟化点を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂や、70℃以上の軟化点を有するビスフェノールF型エポキシ樹脂、さらには、例えば、これらをCTBN変性したものなどが挙げられる。
なかでも、熱硬化反応における反応性と、保管時における反応の抑制との両立をより確実なものとさせるためには、軟化点が95〜130℃のいずれかであることが好ましい。
また、同様にCTBN変性等の変性がなされていない、900〜2500g/eqのいずれかのエポキシ当量を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂が好適である。
なお、このエポキシ当量は、JIS K 7236に準拠して求められうる。また、前記軟化点は、JIS K 7234の環球法によって測定されうる。
【0029】
前記エポキシ樹脂組成物に含有される常温(23℃)において固体のノボラック型エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
なかでも、熱硬化反応における反応性と、保管時における反応の抑制との両立をより確実なものとさせるためには、70〜90℃のいずれかの軟化点を有するo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好適である。
【0030】
前記エポキシ樹脂組成物において、この70℃以上の軟化点を有するビスフェノール型エポキシ樹脂と、常温固体のノボラック型エポキシ樹脂との含有量が30:70〜70:30のいずれかの重量割合とされているのは、この範囲を外れた重量割合とされた場合には、自動車用駆動モータに用いるのに十分な耐熱性を有するものとならなかったり、熱硬化反応(接着)時の反応性と保管時の反応性とのバランスを保つことが困難となったりするためである。
【0031】
また、エポキシ樹脂組成物に含有されるイミダゾール系硬化剤としては、例えば、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のアルキルイミダゾール;1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のジアルキルイミダゾール;2−フェニルイミダゾール等のアリールイミダゾール;2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−ウンデシルイミダゾリル)−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール 、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール等を用いることができる。
【0032】
なかでも、前記イミダゾール系硬化剤としては、反応開始温度が110℃を超えるものが好ましく、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂、または、ノボラック型エポキシ樹脂の軟化点を超える反応開始温度を有しているものが好ましく、具体的には、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物か、または、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイトであることが好ましい。
【0033】
なお、この反応開始温度は、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えばジャパンエポキシレジン社製、商品名「エピコート828」等)100質量部に対して硬化剤20質量部を均一に混合したエポキシ樹脂組成物を、DSCで10℃/分の昇温速度条件にて硬化発熱量の変化を測定し、得られるチャートがベースラインから離れて発熱ピークを示し始める温度によって規定することができる。
【0034】
このイミダゾール系硬化剤は、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂と前記ノボラック型エポキシ樹脂との合計量100重量部に対して、2〜5重量部のいずれかの割合で前記エポキシ樹脂組成物に含有させることが好ましい。
【0035】
また、エポキシ樹脂組成物は、粉末状で熱硬化性接着剤層の形成に用いられることから、例えば、エポキシ樹脂粉末どうしの凝集を防止するなどして、このエポキシ樹脂組成物自体を粉末状態に維持させるべく、無機物粒子をさらに含有させることができる。
この無機物粒子としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、アルミナ、シリカ、未焼成クレー、焼成クレー、硫酸バリウム等があげられる。
【0036】
さらに、エポキシ樹脂組成物には、顔料などの着色成分や、難燃剤などの機能薬剤等を適宜含有させることができる。
【0037】
本実施形態においては、第一接着剤層51b1と第二接着剤層51b2とがいずれもエポキシ樹脂組成物が用いられてなる熱硬化性接着剤層である場合を例にプリプレグシートを説明しているが、要すれば、一方に上記のようなエポキシ樹脂組成物を用い、他方をエポキシ樹脂組成物以外の接着性の樹脂組成物で形成させることも可能であり、その場合には、他方を形成させる樹脂組成物には、特に限定がなされるものではない。
【0038】
ただし、導体コイルとステータコア30との固着をより確実に実施させる上においては、第一接着剤層51b1と、第二接着剤層51b2との両方を上記エポキシ樹脂組成物によって形成させることが好ましい。
この場合において、両方が、70℃以上の軟化点を有するビスフェノール型エポキシ樹脂と、常温固体のノボラック型エポキシ樹脂とを30:70〜70:30のいずれかの重量割合で含み、さらに、イミダゾール系硬化剤を含んだ粉末状のエポキシ樹脂組成物で形成されていれば第一接着剤層51b1と第二接着剤層51b2とを同一組成とする必要はない。
また、第一接着剤層51b1か、第二接着剤層51b2かのいずれか、又は両方を多層構造とすることもできる。
例えば、第一接着剤層51b1を、異なる組成のエポキシ樹脂組成物によって形成された2層又は3層以上の積層構造とすることも可能である。
【0039】
なお、第一接着剤層51b1側、すなわち、導体コイルに接着される側には、表面粘着性が付与されることが好ましい。
一方で、第二接着剤層51b2側は、すなわち、ステータコア30(スロットの内壁面31c)に接着される側は、表面が非粘着性とされることが好ましい。
【0040】
このような構成とすることで、例えば、ステータコア30にセグメントを挿入する際に、この表面粘着性を有するプリプレグシートで個々のスロット31内に収容される4本の脚部をそれぞれ収容状態と同様に束ね、全てのU字状セグメントをスロット31に装着し終えた状態(脚部先端を連結させる前の導体コイルの形態)を予め作製しておいて、このセグメントの集合体を一度にステータコア30に装着させることができる。
したがって、個々のセグメントを順次スロットに挿入する場合に比べて作業を簡略化させることができ、このようなプリプレグシートを用いることで自動車用駆動モータの製造に要する手間を削減し得る。
なお、このとき第二接着剤層51b2側が非粘着性とされていることでスロット31の内壁面31cとの滑りも良好となって自動車用駆動モータの製造における作業性がより一層良好となる。
【0041】
この第一接着剤層51b1の側に表面粘着性を付与する方法としては、第一接着剤層51b1をエポキシ樹脂組成物で形成された熱硬化性接着剤層と、その表面側に設けられた粘着剤層との2層以上の構成とする方法や、第一接着剤層51b1は単層構成としつつも形成するエポキシ樹脂組成物に粘着性付与剤を配合して表面粘着性を発揮させる方法などが挙げられる。
なお、前者の場合には、熱硬化後に熱硬化性接着剤層とセグメントの表面(絶縁被膜42)との間に粘着剤が介在されると、熱硬化性接着剤層を形成しているエポキシ樹脂組成物の優れた耐熱性を駆動モータの信頼性向上に十分有効に作用させることが困難となるおそれを有することから、熱硬化時に熱硬化性接着剤層とセグメントの表面とがより確実に接着されるべく前記粘着剤層を薄く形成させておくことが好ましい。
【0042】
熱硬化性接着剤層の表面に形成させる前記粘着剤層は、粘着剤を用いて、例えば、10μm〜50μmのいずれかの厚みに形成され得る。
前記粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられる。
また、下地となる熱硬化性接着剤層を形成している熱硬化性接着剤とは異なるエポキシ樹脂組成物も粘着剤として用いられ得る。この場合には、粘着性付与剤等が配合されたエポキシ樹脂組成物などを用いることができる。
【0043】
なお、このような第一接着剤層51b1の表面の粘着性だけで全てのU字状セグメントをスロット31に装着し終えた状態に形状保持させることが困難であれば、4本の脚部をプリプレグシートで束ねた後に、該プリプレグシートを加熱して、セグメントの表面に熱硬化性接着剤層を接着させるようにすればよい。
【0044】
なお、この場合には、第二接着剤層51b2側も加熱されることになるため、第二接着剤層51b2には、第一接着剤層51b1よりも熱硬化反応の反応開始温度が高いエポキシ樹脂組成物が用いられることが好ましい。
この第一接着剤層51b1と第二接着剤層51b2とを構成するエポキシ樹脂組成物における熱硬化反応の反応開始温度の差は、20℃以上に設定されていることが好ましく、30℃以上離れた反応開始温度とされていることがより好ましい。
【0045】
この第一接着剤層51b1のエポキシ樹脂組成物と第二接着剤層51b2のエポキシ樹脂組成物との反応開始温度の比較は、イミダゾール系硬化剤の反応温度の測定と同様に実施することができる。
すなわち、第一接着剤層51b1の形成に用いているエポキシ樹脂組成物をDSCで10℃/分の昇温速度条件にて硬化発熱量の変化を測定するとともに、第二接着剤層51b2の形成に用いているエポキシ樹脂組成物を同条件でDSC測定し、いずれのエポキシ樹脂組成物における測定においてチャートがベースラインから離れる温度が低く観察されるかをもって反応開始温度が低いエポキシ樹脂組成物を判定することができる。
【0046】
このように第二接着剤層51b2の形成に第一接着剤層51b1よりも反応開始温度の高いエポキシ樹脂組成物を採用することで、ステータコア30へのセグメント装着前に第一接着剤層51b1の側のみを熱硬化させることができ、該熱硬化によってプリプレグシートでのセグメントの結束をより強固に行うことができる。
したがって、セグメントの集合体の取り扱いが容易となって、この集合体をステータコア30に装着させる作業が容易となる。
すなわち、自動車用駆動モータの製造における作業性をより一層良好なものとさせ得る。
【0047】
なお、プリプレグシートにおける第二接着剤層51b2は、セグメントの脚部をステータコア30のスロット31内部に収容させた後に、該第二接着剤層51b2を形成するエポキシ樹脂組成物に十分な熱硬化反応を発生させるだけの温度に全体を加熱することで、その表面をスロット31の内壁面31cに接着させることができる。
【0048】
このようにして導体コイルとステータコア30とがプリプレグシートを用いて接着されることによって、セグメントの絶縁被膜42が製造時のみならず使用時においてもより確実に保護されることとなり駆動モータの信頼性を向上させることができる。
【0049】
次いで、上記のプリプレグシートの作製方法について説明する。
まず、70℃以上の軟化点を有するビスフェノール型エポキシ樹脂と、常温固体のノボラック型エポキシ樹脂とを30:70〜70:30のいずれかの重量割合で配合し、さらに、イミダゾール系硬化剤を加え、必要に応じて無機物粒子を適宜配合した配合物を粉砕混合して粉末状のエポキシ樹脂組成物を作製する。
なお、イミダゾール系硬化剤をのぞく配合剤を粉砕する第一の粉砕工程と、該第一粉砕工程で得られた樹脂粉末にイミダゾール系硬化剤を加えて第二の粉砕工程を行うような多段階の工程を経由させて粉末状のエポキシ樹脂組成物を作製することも可能である。
このような多段階の粉砕工程を実施することで、粉砕時に生じる摩擦熱などによってエポキシ樹脂の硬化反応が進行することを防止することができる。
【0050】
この時作製するエポキシ樹脂組成物粉末の平均粒径としては、通常、1000μm以下とする。好ましくは0.1μm〜500μmとし、0.1〜200μmとすることがさらに好ましい。
このようにして、エポキシ樹脂組成物粉末の平均粒径を微細化することで、表面積が小さくなり、無機物粒子などの比重の異なる粒子を配合しても均一分散が容易となり、しかも、エポキシ樹脂とイミダゾール系硬化剤との接触箇所を増大させることができ硬化反応時の反応性を高めることができる。
【0051】
このようなエポキシ樹脂組成物粉末は、例えば、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ボールミル、ジェットミル、ハンマーミルなどを用いて作製することができる。
また、得られたエポキシ樹脂組成物粉末を、メッシュなどを通過させて分級するようにしても良い。
【0052】
得られたエポキシ樹脂組成物粉末を、例えば、長尺帯状のシート状基材を水平方向に一定速度で走行させておき、その上面側に単位面積あたりの堆積量が一定となるようにして散布し、その後、この粉末状のエポキシ樹脂組成物をシート状基材に固着させることで熱硬化性接着剤層を形成させることができる。
【0053】
このシート状基材にエポキシ樹脂組成物粉末を、堆積させる方法としては、静電塗装法、スプレーコート法等が採用されうる。
【0054】
そして、このエポキシ樹脂組成物粉末が堆積された状態でシート状基材を、所定温度に保持された加熱炉内を通過させるか、あるいは、表面離型処理が施された加熱ロールで上方から加圧するなどしてエポキシ樹脂組成物粉末を軟化させてシート状基材に固着させることができる。
【0055】
その後、この一面側に熱硬化性接着剤層が形成されたものを用いて、他面側に同様に熱硬化性接着剤層を形成させることによってシート状基材の両面に熱硬化性接着剤層を有するプリプレグシートとすることができる。
【0056】
なお、本実施形態においては、本発明の効果がより顕著に発揮されうる点において平角エナメル線が用いられた4層型セグメント順次接合ステータコイルの脚部に巻回されてスロットライナとして用いられる場合を例にプリプレグシートを説明しているが、本発明は、上記例示に限定されるものではない。
例えば、ロータコアに導体コイルが装着される場合も本実施形態のプリプレグシートを用いることができる。
【実施例】
【0057】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
(プリプレグシートの作製)
(実施例1〜4、比較例1〜4)
下記配合剤を用いて、表1に示す組成となるように粉末状のエポキシ樹脂組成物作製した。
(配合剤)
(エポキシ樹脂成分)
A1:JER社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「1004」、
(軟化点:97℃、エポキシ当量:925g/eq)
A2:JER社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「1007」、
(軟化点:128℃、エポキシ当量:2000g/eq)
A3:プリンテック社製、CTBN変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、
商品名「SR35K」、(軟化点:98℃、エポキシ当量:975g/eq)
N1:東都化成社製、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、
商品名「YDCN703」、(軟化点:80℃、エポキシ当量:208g/eq)
B1:JER社製、ビフェニル型エポキシ樹脂、商品名「YX4000」、
(軟化点:105℃、エポキシ当量:186g/eq)
(硬化剤成分)
M1:四国化成社製、商品名「2MA−OK」(2,4−ジアミノ−6−[2’−メチル
イミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物)、
反応開始温度:120℃
M2:四国化成社製、商品名「2PZCNS−PW」(1−シアノエチル−2−フェニル
イミダゾリウムトリメリテイト)、反応開始温度:120℃
M3:四国化成社製、商品名「C11Z−CNS」(1−シアノエチル−2−ウンデシル
イミダゾリウムトリメリテイト)、反応開始温度:105℃
D1:4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、反応開始温度:110℃
(無機物粒子)
S1:日本アエロジル社製、ヒュームドシリカ、商品名「AEROSIL 300」
【0059】
【表1】

【0060】
(粉末状のエポキシ樹脂組成物の作製)
上記配合の内、樹脂成分のみをハンマーミル(回転数:3000rpm、フィルター径:φ1mm)で粉砕した後に、42メッシュで分級し、篩下分と硬化剤などとを上記表1の割合となるように配合し、配合物をスーパーミキサー(処理時間:90秒間、フィルター40メッシュ)でさらに混合粉砕させてエポキシ樹脂組成物粉末を作製した。
【0061】
(プリプレグシートの作製)
得られた粉末状のエポキシ樹脂組成物を、シート状基材(メタ系アラミド繊維シート、デュポン帝人アドバンスドペーパー社製、ノーメックスペーパー、厚み:50μm)の片面にグラビアローラーを用いて塗布した後に、150℃の加熱炉内を5m/分の速度で通過(炉内滞留時間:30秒)させて固着し、さらに、もう片面にも同様に粉末状のエポキシ樹脂組成物を固着させた。
得られたシートを、離型シートで挟んだ状態で160℃に加熱されたローラー間を、5m/分の速度で通過させ表面平滑化処理を実施し、50μm厚みのシート状基材の両面に、厚み25μmの熱硬化性接着剤層を形成させて、総厚み100μmのプリプレグシートを作製した。
ただし、比較例2のプリプレグシートについては、上記表1の配合を、メチルエチルケトンとトルエンとの混合溶媒中に分散させて液状のエポキシ樹脂組成物(エポキシ樹脂ワニス)を作製して、シート状基材(メタ系アラミド繊維シート、デュポン帝人アドバンスドペーパー社製、ノーメックスペーパー、厚み:50μm)の両面に、乾燥後の厚みが、25μmとなるように前記エポキシ樹脂ワニスを塗工乾燥して熱硬化性接着剤層を形成させた。
【0062】
(評価)
(プリプレグシートの保存性)
作製されたプリプレグシートを100mm×100mmに切断した試験片を2枚重ね、125℃×30分×5kg/cm2で熱プレス硬化させた際に初期の形状(100mm×100mm)から外側に流出した樹脂量を測定する。その結果が、初期値に対し室温(23℃)で30日間保存した後の値が50%以上保持したものを「○」、50%未満となったものを「×」として判定した。
結果を、表2に示す。
【0063】
(せん断接着強度)
まず、作製されたプリプレグシートを10mm×10mmに切断し正方形の試験片を作製した。
次いで、厚さ1.5mm、幅10mm、長さ100mmの鋼板を用意し、この鋼板の一端側の縁に正方形の三辺を揃えた状態で試験片を載置した。
さらに、別の鋼板(厚さ1.5mm、幅10mm、長さ100mm)を用意し、先の鋼板上に載置されている試験片の正方形の残りの辺にこの別の鋼板の端縁を揃えた状態で載置して、先の鋼板と、この別の鋼板とが一部を重なり合わせた略一直線の状態となるように配置した。
そして、この鋼板/試験片/鋼板の3層構造が形成された部分をクリップ(LION社製「No.54」)で挟んで固定し125℃×90分の加熱接着を実施して、全長約190mmの引張り試料を作製した。
この試料を引張り試験機にかけて二枚の鋼板を分離させるのに必要な引張り応力の最大値を測定してそのプリプレグシートのせん断接着力とした。そして、そのせん断接着力が340N以上の場合を「○」、340N未満の場合を「×」として判定した。
結果を、表2に示す。
【0064】
(耐熱性評価)
自動車用駆動モータに求められる耐熱性を模擬評価すべく、各実施例、比較例のプリプレグシートを用いた絶縁破壊電圧とせん断接着強度の評価を実施した。
(耐油性絶縁破壊電圧の評価)
各実施例、比較例のプリプレグシートを125℃×90分の硬化条件で熱硬化して得られた評価試料に対して絶縁破壊試験を実施して絶縁破壊電圧を測定した。
また、評価試料を、150℃に熱したオートマフールド(ATF)中に、1000時間浸漬させた後に同様の測定を行い、初期の絶縁破壊電圧に対して、ATF浸漬後の絶縁破壊電圧が50%以上の値を示したものを「○」、50%未満のものを「×」として判定した。
結果を表2に示す。
【0065】
(耐油性接着強度)
また、評価試料を、150℃に熱したオートマフールド(ATF)中に、1000時間浸漬させた後に同様の測定を行い、初期のせん断接着強度に対して、ATF浸漬後のせん断接着強度が50%以上の値を示したものを「○」、50%未満のものを「×」として判定した。
結果を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
この表からも、本発明においては、耐熱性に優れたエポキシ樹脂組成物がプリプレグシートにおける熱硬化性接着剤層の形成に用いられていることがわかる。
また、このエポキシ樹脂組成物を粉末状で熱硬化性接着剤層の形成に用いることでプリプレグシートの使用可能な期間の長期化を図りつつもプリプレグシートを接着作業性に優れたものとし得ることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】駆動モータのステータとロータとを上面側から見た概略断面図。
【図2】図1の記号「A」で示されている領域を拡大した拡大図、及び、その一部拡大図。
【符号の説明】
【0069】
10:回転軸、20:ロータコア、30:ステータコア、31:スロット、31a:開口部、31b:開口部、31c:内壁面、32:ティース、32a:広幅部、40:セグメントの脚部、41:平角導体、42:絶縁被覆、51:スロットライナ、51a:シート状基材、51b1、51b2:接着剤層(熱硬化性接着剤層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用駆動モータのステータコアまたはロータコアのスロット内壁面か、あるいは、該スロットに収容される導体コイルの表面かの少なくとも一方に接着されるべく、シート状基材の少なくとも片面に、エポキシ樹脂組成物が用いられてなる熱硬化性接着剤層が形成されており、前記エポキシ樹脂組成物は、70℃以上の軟化点を有するビスフェノール型エポキシ樹脂と、常温固体のノボラック型エポキシ樹脂とを30:70〜70:30のいずれかの重量割合で含み、さらに、イミダゾール系硬化剤を含んだ粉末状であり、該粉末状のエポキシ樹脂組成物が前記シート状基材に固着されて前記熱硬化性接着剤層が形成されていることを特徴とするプリプレグシート。
【請求項2】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂が、900〜2500g/eqのいずれかのエポキシ当量を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項1記載のプリプレグシート。
【請求項3】
前記イミダゾール系硬化剤として、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物か、または、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイトかのいずれかが用いられている請求項1又は2記載のプリプレグシート。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂組成物には、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂と前記ノボラック型エポキシ樹脂との合計量100重量部に対して、前記イミダゾール系硬化剤が2〜5重量部のいずれかの割合で含有されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプリプレグシート。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂組成物には、無機物粒子がさらに含有されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプリプレグシート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−126684(P2010−126684A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304863(P2008−304863)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000190611)日東シンコー株式会社 (104)
【Fターム(参考)】