説明

プリント回路板取付構造

【課題】第1のプリント配線板が、第2のプリント配線板に対し、容易かつ強固に所定間隔を維持して平行に取付けられるプリント回路板取付構造を提供する。
【解決手段】第1のボス部材15,16及び第1のコネクタ17は、第1のプリント配線板11の底面に立設されている。ねじ部材12,13の軸部は、第1のプリント配線板11及び第1のボス部材12,13の貫通孔に脱落防止された状態で遊嵌されている。第2のボス部材22,23及び第2のコネクタ24は、第2のプリント配線板21の上面に立設されている。第1のコネクタ17が第2のコネクタ24と電気的に接続され、ねじ部材12,13の軸部が第1のボス部材15,16を介して第2のボス部材の孔22a,23aにねじ結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器のプリント回路板に他のプリント回路板を取付けるためのプリント回路板取付構造に関するものである。例えば、ユーザが電子機器のプリント回路板に、この電子機器の機能を拡張するプリント回路板を取付ける場合に適したものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器、例えば、電子鍵盤楽器において、ユーザが、その筐体の背面や底面のカバーを外し、拡張ボードや拡張メモリ等の拡張プリント回路板を追加するものがある(非特許文献1参照)。拡張ボードは、電子鍵盤楽器の本体プリント回路板のコネクタにフラットケーブルで接続され、ねじ部材で固定される。拡張メモリは、そのプリント回路板のエッジ端子が本体プリント回路板のコネクタに差し込まれた後、このコネクタの抜け止めフックで固定される。
しかし、フラットケーブルはその収容部が必要である。一方、エッジ端子は、プリント回路板の厚さがコネクタ端子の接触圧に影響を与える。また、プリント回路板は、本体プリント回路板に対して平行に重ねることができない。
【0003】
一般に、一方のプリント回路板の端子と、他方のプリント回路板の端子との両者をコネクタとした「ツーピース・コネクタ」が使用されている(特許文献1に記載の従来技術や特許文献2参照)。この「ツーピース・コネクタ」では、端子数が増えても安定な電気的接続が実現される。また、プリント回路板を平行に重ねることができる。
特許文献1に従来技術として記載の技術では、一方のプリント回路板を他方のプリント回路板に固定するのにねじ部材を用いる。しかし、別売りの拡張プリント回路板の取付けにねじ部材を用いる場合、ねじ部材を同梱する必要がある。また、ユーザが、拡張プリント回路板を取外した場合、ねじ部材を保管する必要がある。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術では、一方のコネクタに2個の係合突起が設けられ、他方のコネクタに2個のロック爪と、このロック爪に係合可能な2個の操作片が設けられ、プラグ用基板に操作開口部が設けられている。ユーザが、コネクタ同士を結合すれば、係合突起とロック爪とが係合する。ユーザは、操作開口部に指を挿入し操作片を操作することにより、係合を解除できる。
このようなコネクタを、拡張プリント回路板の取付構造に採用すれば、ねじ部材が不要で、拡張プリント回路板の取付け・取外しが容易である。しかし、係合突起やロック爪のない汎用のコネクタが使用できない。また、係合突起とロック爪との係合のみでは、拡張プリント回路板の取付強度が不足するおそれがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
MOTIF ES6/MOTIF ES7/MOTIF ES8取扱説明書、p.282-289[online]、インターネット、http://www2.yamaha.co.jp/manual/pdf/emi/japan/synth/MOTIFESJ1.pdf
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−126985号公報
【特許文献2】特開2008−251205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、第1のプリント回路板における第1のプリント配線板が、第2のプリント回路板における第2のプリント配線板に対し、容易かつ強固に所定間隔を維持して平行に取付けられるプリント回路板取付構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、請求項1に記載の発明においては、第1のプリント回路板における第1のプリント配線板が、第2のプリント回路板における第2のプリント配線板に対し、所定間隔を維持して平行に取付けられるプリント回路板取付構造において、第1のボス部材及び第1のコネクタが、前記第1のプリント配線板の、前記第2のプリント配線板に対向する面に立設され、前記第1のボス部材は貫通孔を有し、該貫通孔に、ねじ部材の軸部が挿通されており、第2のボス部材及び第2のコネクタが、前記第2のプリント配線板の、前記第1のプリント配線板に対向する面に立設され、前記第2のボス部材は、ねじが形成された孔を有しており、前記第1のプリント配線板の取付け前において、前記ねじ部材の軸部が前記第1のボス部材の貫通孔に脱落防止された状態で遊嵌され、前記第1のプリント配線板の取付け時において、前記第1のコネクタが前記第2のコネクタと電気的に接続され、前記ねじ部材の軸部が前記第1のボス部材を介して前記第2のボス部材の孔にねじ結合されるものである。
従って、ねじ部材により、第1のプリント配線板が第2のプリント配線板に容易かつ強固に取付けられる。また、第1のプリント配線板の取外しも容易である。
ねじ部材は、第1のプリント配線板の取付け前において、第1のプリント配線板からの脱落が防止される。その際、第2のボス部材とともに、第1のプリント配線板が第2のプリント配線板に対し、所定間隔を維持するための第1のボス部材が、ねじ部材の脱落防止部材を兼ねるので、少ない構成部品で脱落防止が実現される。
【0009】
上述した第1のボス部材、第2のボス部材、ねじ部材は、それぞれ、2個以上あることが好ましい。第1のプリント配線板において、2個の第1のボス部材の中心を結ぶ線上の位置に第1のコネクタを配置し、第2のプリント配線板において、2個の第2のボス部材の中心を結ぶ線上の位置に第2のコネクタを配置することが好ましい。このような配置であれば、2個のねじ部材の締結により、第1のコネクタと第2のコネクタとが確実に結合され、その電気的接続が安定する。
【0010】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載のプリント回路板取付構造において、前記ねじ部材の軸部は、首側に連結部を、ねじ先側にねじ部を有するものであり、前記第1のボス部材の貫通孔は、前記第1のプリント配線板の側に、前記ねじ部材のねじ部と結合するとともに、前記ねじ部材の連結部を遊嵌するねじ部を有し、前記第2のプリント配線板に対向する側に、前記ねじ部材の連結部及びねじ部を共に遊嵌する凹部を有するものであり、前記第1のプリント配線板の取付け前において、前記第1のボス部材のねじ部に前記ねじ部材のねじ部がねじ込まれた後に、前記第1のボス部材のねじ部に前記ねじ部材の連結部が遊嵌されることにより、前記ねじ部材の軸部が前記第1のボス部材の貫通孔に脱落防止された状態で遊嵌されるようにしたものである。
従って、簡単な構造の第1のボス部材により、ねじ部材の脱落防止が実現される。
【0011】
請求項3に記載の発明においては、請求項2に記載のプリント回路板取付構造において、前記第1のボス部材の凹部の深さは、前記ねじ部材のねじ部の長さ以上であることにより、前記第1のプリント配線板の取付け前において、前記ねじ部材のねじ部が前記第1のボス部材の凹部に収容可能な状態で遊嵌されるようにしたものである。
従って、第1のボス部材と第2のボス部材とが当接している状態において、ねじ部材が第2のボス部材にねじ込まれるから、締結作業が円滑に行われる。特に、第1のボス部材、第2のボス部材、ねじ部材が2個以上ある場合でも、ねじ部材は、一本ずつ、対応する第2のボス部材に円滑にねじ込まれる。
【発明の効果】
【0012】
上述した本発明によれば、第1のプリント配線板が、第2のプリント配線板に容易かつ強固に取付けられ、かつ、第1のコネクタと第2のコネクタとの結合が不用意に外れないという効果がある。
ねじ部材を紛失することなく、第1のプリント回路板を供給、保管できるという効果がある。第1のプリント配線板のねじ部材以外の箇所に、なるべく手を触れないで取付作業ができるという効果がある。
特に、ユーザが、拡張プリント回路板を、電子機器の本体プリント回路板に追加取付けする場合に適する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本願発明に使用する拡張プリント回路板及び本体プリント回路板の実施の一形態の説明図である。
【図2】図1(c)に示された、ねじ結合状態を説明する模式図である。
【図3】図1に示された第1のプリント配線板を第2のプリント配線板に取付ける方法の説明図である。
【図4】本願発明を適用する電子鍵盤楽器の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本願発明に使用される拡張プリント回路板1及び本体プリント回路板2の実施の一形態の説明図である。
図1(a)は拡張プリント回路板1の平面図、図1(b)はその底面図、図1(c)は、拡張プリント回路板1と本体プリント回路板2との結合状態を示す正面図、図1(d)は本体プリント回路板2の部分平面図である。
【0015】
この実施の形態は、拡張プリント回路板(第1のプリント回路板)1における第1のプリント配線板11が、本体プリント回路板(第2のプリント回路板)2における第2のプリント配線板21に対し、所定間隔を維持して平行に取付けられるプリント回路板取付構造である。
図1(a),図1(b)に示されるように、第1のプリント配線板11には、2個の第1のボス部材15,16、第1のコネクタ17、半導体集積回路等の電子回路部品14(1つの電子回路部品にのみ符号14を付した)、その他が実装されている。第1のボス部材15,16及び第1のコネクタ17は、第2のプリント配線板21に対向する、第1のプリント配線板11の底面に立設されている。
【0016】
図示の例では、第1のプリント配線板11の底面に、ボス部材設置用導電パターン11b,11cが形成され、この上に、第1のボス部材15,16が、半田付けにより実装されている。しかし、立設の方法は半田付けに限らない。例えば、第1のプリント配線板11に取付孔が形成され、この取付孔に第1のボス部材15,16が圧入嵌合されることにより立設されてもよい。
第1のコネクタ17は、第1のプリント配線板11の底面において、2個の第1のボス部材15,16の中心を通る線上の位置に半田付けにより実装されている。配線パターンの図示は省略する。
【0017】
図2を参照して詳述するが、第1のボス部材15,16は、貫通孔として、ねじ部15a,16a、凹部15b,16bを有する。この貫通孔に、2個のねじ部材12,13の軸部が挿通されている。
第1のボス部材15,16が、第1のプリント配線板11の底面上に実装されている場合、第1のプリント配線板11にも、上述した貫通孔と同一軸心上に貫通孔11d,11eが形成され、ここに、ねじ部材12,13の軸部が挿通される。
第1のプリント配線板11の第2のプリント配線板21への取付け前において、ねじ部材12,13の軸部は、第1のプリント配線板の貫通孔11d,11e及び第1のボス部材の上述した貫通孔(ねじ部15a,16a、凹部15b,16b)に脱落防止された状態で遊嵌されている。
【0018】
図1(b)に示される第1のコネクタ17は、ソケット(レセプタクル)型のコネクタである。17aはそのソケット部であり、その内部に開口部17bが設けられ、開口部17bに面するソケット部17aの内壁面には、その長手方向に、図示しない複数本の接触片が設けられている。17c,17dは、接触片の他端部が直角に曲げられて形成された複数本の端子片であり、第1のプリント配線板11の配線パターンに半田付けされている。
【0019】
図1(d)に示されるように、第2のプリント配線板21には、2個の第2のボス部材22,23、第2のコネクタ24、半導体集積回路等の電子回路部品25(1つの電子回路部品にのみ符号25を付した)、その他が実装されている。第2のボス部材22,23及び第2のコネクタ24は、第1のプリント配線板11に対向する、第2のプリント配線板21の上面に立設されている。
図2を参照して説明するように、第2のボス部材22,23は、ねじ部22a,23aのある孔(ねじが形成された孔)を有している。
【0020】
図示の例では、第2のプリント配線板21の上面に、ボス部材設置用導電パターン21a,21bが形成され、この上に、第2のボス部材22,23が、半田付けにより立設されている。しかし、先に説明した第1のボス部材15,16と同様に、立設の手段は半田付けに限らず、圧入嵌合等の方法によってもよい。
第2のコネクタ24は、第2のプリント配線板21の上面において、2個の第2のボス部材22,23の中心を結ぶ線上の位置に半田付けにより実装されている。配線パターンの図示は省略する。
【0021】
21c,21dは、それぞれ、第2のプリント配線板21の上面に印刷された面状マーク、線状マークである。面状マーク21cの図示上端は、第1のプリント配線板の一端辺11aの配置を指示するものである。線状マーク21dは、第1のプリント配線板11の外形状の配置を指示するものである。
【0022】
図示の第2のコネクタ24はプラグ型のコネクタである。24aはそのハウジングであり、ハウジング24aの内部には、僅かな間隙をあけて、プラグ部24bが設けられ、その間隙に面するプラグ部24bの、図示上下両側面には、その長手方向に沿って、図示しない複数本の接触片が設けられている。24c,24dは、複数本の接触片の他端部が直角に曲げられて形成された複数本の端子片であり、配線パターンの端子部に半田付けされる。
なお、第1のコネクタ17をプラグ型とし、第2のコネクタ24をソケット型としてもよい。
【0023】
図1(c)に戻って説明を続ける。3aは電子鍵盤楽器3の底板、3bは拡張プリント回路板1を収容する収容部、4は蓋である。
第1のプリント配線板11の第2のプリント配線板21への取付け時において、第1のコネクタ17が第2のコネクタ24と電気的に接続され、ねじ部材12,13の軸部が第1のボス部材15,16を介して第2のボス部材22,23にねじ結合される。
【0024】
図1(b)に示される、第1のコネクタのソケット部17aは、図1(d)に示される、第2のコネクタのハウジング24aとプラグ部24bとの間の間隙に挿入され、第1のコネクタのソケット部17aに、第2のコネクタのプラグ部24bとが嵌合し、第1のコネクタ17の複数本の接触片と第2のコネクタ24の複数本の接触片とが接触する。その結果、第1のコネクタ17が第2のコネクタ24に電気的に接続される。第1のコネクタのソケット部17aの先端領域は、第2のコネクタのハウジング24aの中に収容される。
【0025】
図2は、図1(c)に示したねじ結合状態を説明する模式図である。図2(a)はねじ結合される前のものであり、図2(b)はねじ結合状態におけるものである。
いずれも、図1に示した第1のボス部材15,16、第2のボス部材22,23の軸心を通る垂直断面の拡大図であるが、寸法は正確でない。図中、図1と同じ部分には同じ符号を付している。
ねじ部材12,13は、拡張プリント回路板1から脱落しないようにされている。12a,13aは頭部、12b,13bは軸部の首側にある連結部、12c,13cは軸部のねじ先側にある、ねじ部、12d,13dはねじ先部である。
【0026】
図示の頭部12a,13aは、外径がd0の平頭であり、その円周面にローレット目が加工され、ユーザが摘んだり把持したりしやすく、先に図1(a)に示したように、その頭頂部に十字穴が形成され、ドライバーも使用できる。
図示の連結部12b,13bは、ねじが形成されていない円筒部であって、外径がd1、軸心方向の長さがAである。図示のねじ部12c,13cは、外径がd3、軸心方向の長さがBであって、ねじが形成されている。
図示のねじ先部12d,13dは、軸心方向の長さがCである「とがり先」であるが、異なる形状でもよい。
図示の頭部12a,13aの外径d0は、ねじ部12c,13cの外径d3よりも大きく、連結部12b,13bの外径d1は、ねじ部12c,13cの外径d3よりも小さい。
【0027】
図示の第1のボス部材15,16は、貫通孔として、第1のプリント配線板11の側に、ねじ部15a,16aを有し、第2のプリント配線板21に対向する側に、内径がd4、深さがh2の凹部15b,16bを有する。
図示の例では、第1のプリント配線板11にも、内径d2の貫通孔11d,11eが形成されている。
図示の第1のプリント配線板11の厚みと第1のボス部材15,16の高さとの和は、h1である。第1のプリント配線板11に第1のボス部材15,16が圧入嵌合されているような場合は、第1のボス部材15,16の高さをh1とする。
【0028】
第1のプリント配線板の貫通孔11d,11eの内径d2は、ねじ部材のねじ部12c,13cの外径d3よりも大きい。従って、ねじ部材12,13の軸部(連結部12b,13b、ねじ部12c,13c、及び、ねじ先部12d,13d)は、第1のプリント配線板の貫通孔11d,11eを自由に挿通できる。
なお、本明細書においては、「ねじ部」と「ねじ先部」とを区別している。軸部の先端側における、その外径が「ねじ部」の外径よりも細くされた部分を「ねじ先部」という。
ねじ部材のねじ部12c,13cは、第1のボス部材のねじ部15a,16aと結合する。従って、ねじ部15a,16aの谷径は、ねじ部12c,13cの外径d3より僅かに大きい。また、凹部15b,16bの内径d4は、ねじ部材のねじ部12c,13cの外径d3よりも大きい。
【0029】
従って、第1のプリント配線板11の第2のプリント配線板21への取付け前において、ねじ部材のねじ部12c,13cが、第1のボス部材のねじ部15a,16aに、ねじ込まれ、さらにねじ込まれると、ねじ結合が外れて、ねじ部材の連結部12b,13bが、第1のボス部材のねじ部15a,16aに遊嵌されるとともに、ねじ部材のねじ部12c,13cが、第1のボス部材の凹部15b,16bに遊嵌される。
その結果、ねじ部材12,13の軸部である、連結部12b,13b及びねじ部12c,13cが共に、第1のプリント配線板11及び第1のボス部材15,16の貫通孔に脱落防止された状態で遊嵌される。
ここで、連結部12b,13bがねじ部15a,16aに脱落防止された状態で遊嵌されるのであれば、連結部12b,13bは、必ずしも円筒形状である必要はない。
【0030】
一方、本体プリント回路板2の側において、第2のボス部材22は、ねじ部22a,23aを有する孔を有する。第2のボス部材22の高さはh3である。
ねじ部材のねじ部12c,13cは、このねじ部22a,23aとねじ結合する。従って、ねじ部22a,23aの谷径は、ねじ部材のねじ部12c,13cの外径d3よりも僅かに大きい。
図示の第2のボス部材22は、貫通孔を有する筒状体であり、この筒状体は、その貫通孔の全長にわたってねじ部22a,23aを有する。しかし、貫通孔の一部がねじ部であってもよい。例えば、ねじ部材12,13が挿入される側の内径を、ねじ部22a,23aの外径よりも大きくし、ねじ部材12,13が自由に挿通されるようにすればよい。
第2のボス部材22は、また、有底の筒状体でもよい。この筒状体は、その孔の全長にわたってねじ部を有する。あるいは、筒状体の孔の一部にねじ部を有し、例えば、ねじ部材12,13が挿入される側の内径を、ねじ部22a,23aの外径よりも大きくすればよい。
【0031】
図2(b)に示されるように、第1のプリント配線板11の取付け時において、ねじ部材の軸部におけるねじ部12c,13cが、第1のボス部材15,16を介して第2のボス部材のねじ部22a,23aにねじ結合される。
図示の例では、第1のボス部材の凹部15b,16bの深さh2が、ねじ部材のねじ部12c,13cの長さB以上であるから、第1のプリント配線板11の取付け前において、ねじ部材のねじ部12c,13cが第1のボス部材の凹部15b,16bに収容された状態で遊嵌される。
その結果、第1のプリント配線板11を第2のプリント配線板21に取付ける際に、第1のボス部材の下端面15c,16cを第2のボス部材の上端面22b,23bに重ね合わせた後に、ねじ部材のねじ部12c,13cを1個ずつ、第2のボス部材のねじ部22a,23aに、ねじ込むことができる。
【0032】
仮に、第1のボス部材の下端面15c,16cが第2のボス部材の上端面22b,23bに当接しない状態で、ねじ部12c,13cを、ねじ部22a,23aに結合させるとする。そうすると、プリント配線板11を第2のプリント配線板21に対して平行に保てなかったり、ねじ部12c,13cの軸心とねじ部22a,23cの軸心とがずれた状態でねじ結合されようとしたりする等の問題が生じる。
【0033】
図2(a)において、ねじ部材のねじ先部12d,13dは「とがり先」である。そのため、第1のボス部材の下端面15c,16cを第2のボス部材の上端面22b,23bに重ね合わせたときに、ねじ部12c,13cの軸心とねじ部22a,23cの軸心とが多少ずれた状態であっても、ねじ部材のねじ部12c,13cが第2のボス部材のねじ部22a,23aに案内されやすい。
また、ねじ部材12,13のねじ部12c,13cとねじ先部12d,13dとを合わせた軸心方向の長さ(B+C)を、第1のボス部材の凹部15c,16cの軸心方向の深さh2以下にすれば、ねじ先部12d,13dも、第1のボス部材の凹部15c,16cに収容可能となる。
その結果、第1のプリント配線板11を、その底面を下にしてテーブル等に載置したときに、ねじ先部12d,13dがテーブル等を傷付けにくくなる。
【0034】
ねじ部材の頭部12a,13aの座面が第1のプリント配線板11の上面に当接するまで、ユーザが、頭部12a,13aを回すことにより、第1のプリント配線板11と第2のプリント配線板21とが、第1のボス部材15,16、第2のボス部材22,23を間に挟んで、所定の間隔をあけて水平に結合され、図2(b)に示したねじ結合状態となる。
図示の例では、ねじ部材の連結部12b,13bの長さAが、第1のプリント配線板11の板厚と第1のボス部材15,16の長さの和h1よりも長いため、ねじ部材のねじ部12c,13cの全てが、第2のボス部材のねじ部22a,23aにねじ結合される。
【0035】
ここで、ねじ部材の軸部の長さ、すなわち、連結部12b,13b、ねじ部12c,13c、ねじ先部12d,13dの長さの和(A+B+C)は、第1のプリント配線板11の厚みと第1のボス部材15,16の高さとの和h1と第2のボス部材22,23の高さh2との和(h1+h3)よりも短い。
図2に示される第1のボス部材15,16と第2のボス部材22,23とは、外形状が同一である。そのため、第2のボス部材22,23と同形状の筒状体におけるねじ部22a,23aに、ドリルで穴をあけて凹部15b,16bを形成することにより、第1のボス部材15,16を製造することができる。
【0036】
図3は、図1に示されたプリント配線板11を第2のプリント配線板21に取付ける方法の一例を示す説明図である。
図3(a)に示されるように、第1のプリント配線板11を第2のプリント配線板21の上面に対して位置決めする。
ユーザは、親指と人差し指にて2個のねじ部材の頭部12a,13aを摘み、指で頭部12a,13aを互いに押し付けることにより、第1のプリント配線板11を安定した状態で持つことができる。
【0037】
従って、ユーザは、第1のプリント配線板11や実装された電子部品に触ることをなるべく避けることができる。その結果、電子部品が静電気により破壊されるおそれを少なくすることができる。
さらに、図2に示した、ボス部材設置用導電パターン11b,11c、21a,21bを、第1のプリント配線板11,第2のプリント配線板21の配線パターンから切り離し、孤立パターンとすることにより、ボス部材15,16、22,23が、電子部品と電気的に接続されないようにしておくとよい。
【0038】
第1のプリント配線板11を位置決めする際に、ユーザは、第1のコネクタ17が見えない。しかし、ねじ部材12,13を第2のボス部材22,23に位置合わせすれば、第1のコネクタ17の位置を第2のコネクタ24の位置に合わせることができる。
また、先に、図1(d)に示したように、第2のプリント配線板21の上面に印刷された面状マーク21c、及び又は、線状マーク21dを、第1のプリント配線板11の位置決めの目安とすることもできる。
【0039】
次に、第1のコネクタ17を第2のコネクタ24に対して正確に当接させ、押し込むことにより両者を結合させる。第1のコネクタ17と第2のコネクタ24とは、嵌合構造であるため、第1のプリント配線板11は、第2のプリント配線板21に対し、水平面上の位置決めがほぼ正確になされるから、第1のボス部材15,16と第2のボス部材22,23とは、ほぼ位置ずれしない。
【0040】
2個の第1のボス部材15,16は、水平面内のこれらの中心点を結ぶ線上に第1のコネクタ17が配置されている。従って、第1のコネクタ17の位置を第2のコネクタ24の位置に合わせやすく、かつ、2個のねじ部材12,13の締結力が、第1のコネクタ17と第2のコネクタ24との結合を確実にするので、第1のコネクタ17と第2のコネクタ24とによる電気的接続が安定する。
【0041】
図3(b)に示されるように、ユーザは、第1のボス部材15,16と第2のボス部材22,23とを正確に当接させ、ねじ部材12,13の軸心を傾斜状態から垂直に立て、ねじ部材のねじ部12c,13cを第2のボス部材のねじ部22a,23aに係合させる。ユーザは、頭部12a,13aを回すことにより、ねじ部材のねじ部12c,13cを第2のボス部材のねじ部22a,23aに締結する。その結果、第2のプリント配線板21は、第1のプリント配線板11に堅固に固定される。
【0042】
なお、上述した説明において、ねじ部材、第1のボス部材、第2のボス部材を各1個としてもよい。この場合、拡張用プリント回路板1における第1のプリント配線板11は、コネクタ(第1のコネクタ17、第2のコネクタ24)と、他の1箇所(第1のボス部材、第2のボス部材)とにおいて、本体プリント回路板2における第2のプリント配線板21に対し、所定間隔を維持して平行に取付けられる。
【0043】
図4は、本願発明を適用する電子鍵盤楽器3の外観図である。図4(a)はその平面図、図4(b)はその底面図、図4(c)は蓋4を外した状態の収容部3bを簡略化して示す部分拡大図である。図中、図1と同じ部分には同じ符号を付している。
図4(a)において、3cは操作パネル、3d,3eは左右のスピーカグリルである。31は鍵盤部、32は複数の設定操作子、33は液晶表示パネルである。
拡張プリント回路板1を本体プリント回路板2に取付ける際には、電子鍵盤楽器3を裏返し、電子鍵盤楽器の底板3aを上にして、蓋4を取外して行う。収容部3bは、底板3aにおいて、液晶表示パネル33の下方にある。
【0044】
図4(b)において、蓋4は、収容部3bの開口部よりも僅かに大きく、ねじ挿入孔4aがある。蓋4の取付状態においては、蓋4が収容部3bの開口部を塞ぐ。挿入孔4aから、ねじ孔3fに、ねじ部材(図示しない)がねじ込まれることにより、蓋4が底板3aに取付固定されている。
図4(c)に示されるように、収容部3bには、2枚の拡張プリント回路板1が収容可能である。この図では、左側にのみ拡張プリント回路板1を収容した状態を図示している。拡張プリント回路板1が取付けられていない右側には、第2のボス部材22,23、第2のコネクタ24等が見える。
【産業上の利用可能性】
【0045】
上述した説明では、電子鍵盤楽器3の本体プリント回路板2に、拡張プリント回路板1を取付固定する取付構造を説明した。しかし、本体プリント回路板2は、電子鍵盤楽器3のものに限られないし、拡張プリント回路板1は本体の機能拡張をするものに限られない。本願発明は、第1のプリント回路板を、第2のプリント回路板に対して所定間隔を維持して平行状態で結合する電子機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…拡張プリント回路板(第1のプリント回路板)、2…本体プリント回路板(第2のプリント回路板)、3…電子鍵盤楽器、3a…底板、3b…収容部、3c…操作パネル、3d,3e…スピーカグリル、3f…ねじ孔、4…蓋、4a…挿入孔、
11…第1のプリント配線板、11a…一端辺、11b,11c…ボス部材設置用導電パターン、11d,11e…貫通孔、
12,13…ねじ部材、12a,13a…頭部、12b,13b…連結部、12c,13c…ねじ部、12d,13d…ねじ先部、14…電子回路部品、
15,16…第1のボス部材、15a,16a…ねじ部(貫通孔)、15b,16b…凹部(貫通孔)、15c,16c…下端面、
17…第1のコネクタ、17a…ソケット部、17b…開口部、17c,17d…端子片、
21…第2のプリント配線板、21a,21b…ボス部材設置用導電パターン、21c…面状マーク、21d…線状マーク、
22,23…第2のボス部材、22a,23a…ねじ部(ねじが形成された孔)、22b,23b…上端面、
24…第2のコネクタ、24a…ハウジング、24b…プラグ部、24c,24d…端子片、25…電子回路部品、
31…鍵盤部、32…設定操作子、33…液晶表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプリント回路板における第1のプリント配線板が、第2のプリント回路板における第2のプリント配線板に対し、所定間隔を維持して平行に取付けられるプリント回路板取付構造において、
第1のボス部材及び第1のコネクタが、前記第1のプリント配線板の、前記第2のプリント配線板に対向する面に立設され、前記第1のボス部材は貫通孔を有し、該貫通孔に、ねじ部材の軸部が挿通されており、
第2のボス部材及び第2のコネクタが、前記第2のプリント配線板の、前記第1のプリント配線板に対向する面に立設され、前記第2のボス部材は、ねじが形成された孔を有しており、
前記第1のプリント配線板の取付け前において、前記ねじ部材の軸部が前記第1のボス部材の貫通孔に脱落防止された状態で遊嵌され、
前記第1のプリント配線板の取付け時において、前記第1のコネクタが前記第2のコネクタと電気的に接続され、前記ねじ部材の軸部が前記第1のボス部材を介して前記第2のボス部材の孔にねじ結合される、
ことを特徴とするプリント回路板取付構造。
【請求項2】
前記ねじ部材の軸部は、首側に連結部を、ねじ先側にねじ部を有するものであり、
前記第1のボス部材の貫通孔は、前記第1のプリント配線板の側に、前記ねじ部材のねじ部と結合するとともに、前記ねじ部材の連結部を遊嵌するねじ部を有し、前記第2のプリント配線板に対向する側に、前記ねじ部材の連結部及びねじ部を共に遊嵌する凹部を有するものであり、
前記第1のプリント配線板の取付け前において、前記第1のボス部材のねじ部に前記ねじ部材のねじ部がねじ込まれた後に、前記第1のボス部材のねじ部に前記ねじ部材の連結部が遊嵌されることにより、前記ねじ部材の軸部が前記第1のボス部材の貫通孔に脱落防止された状態で遊嵌されるようにした、
ことを特徴とする請求項1に記載のプリント回路板取付構造。
【請求項3】
前記第1のボス部材の凹部の深さは、前記ねじ部材のねじ部の長さ以上であることにより、前記第1のプリント配線板の取付け前において、前記ねじ部材のねじ部が前記第1のボス部材の凹部に収容可能な状態で遊嵌されるようにした、
ことを特徴とする請求項2に記載のプリント回路板取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−134868(P2011−134868A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292545(P2009−292545)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】