説明

プリント基板に付着した汚損物の分析方法及びプリント基板の洗浄方法

【課題】プリント基板に付着したイオン性汚損物中のイオン成分の種類と量を分析できる汚損物の分析方法及び、プリント基板の洗浄方法を提供する。
【解決手段】イオン性汚損物で汚損されたプリント基板から、該イオン性汚損物質中のイオン成分を純水中に抽出させ、得られた抽出液中のイオン成分をイオンクロマトグラフィー法で測定し、検出されたイオン成分の種類と量を分析する。該方法で、プリント基板に付着したイオン成分の種類と量を分析することにより、プリント基板に付着した各イオン成分の濃度を所定値以下とするのに必要な洗浄条件を求め、この洗浄条件に従って、同様な使用条件下で汚染されたプリント基板の洗浄を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に付着した汚損物の分析方法及びプリント基板の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品などを搭載したプリント基板には、フィールドでの使用により、塵埃や腐食性物質等の汚損物が付着する。これらの汚損物により、絶縁劣化、接触不良、金属の腐食等の劣化が進行し、やがて機器の故障へとつながる。このため、プリント基板に付着している汚損物を定期的に除去する必要がある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、汚損された通電部分を含む電子機器を、60重量%以下の第1のアルコール水溶液で非浸漬洗浄する第1の洗浄工程と、60重量%以下の第2のアルコール水溶液で前記第1の洗浄工程の残さを非浸漬洗浄する第2の洗浄工程と、前記第2の洗浄工程後の残さを除去するパージ工程と、前記パージ工程の後、前記電子機器を乾燥する乾燥工程とを備えた電子機器の洗浄方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−74397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリント基板に、イオン性汚損物質が残存していると、マイグレーションの発生の原因となる。特に塩素イオン、臭素イオン、硫酸イオン及びアンモニウムイオンが残存していると、マイグレーションが生じやすい。
【0006】
上記特許文献1では、アルコール溶液でプリント基板に付着した汚損物の除去を行っている。しかしながら、油分等のような固形物と異なり、イオン成分による汚染は視認出来ないことが多いため、汚染状態によってはイオン性汚染物質を完全に除去できないことがあった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、プリント基板に付着したイオン性汚損物中のイオン成分の種類と量を分析できる汚損物の分析方法及び、プリント基板の洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するにあたり、本発明のプリント基板に付着した汚損物の分析方法は、イオン性汚損物で汚損されたプリント基板から、該イオン性汚損物質中のイオン成分を純水中に抽出させ、得られた抽出液中のイオン成分をイオンクロマトグラフィー法で測定し、検出されたイオン成分の種類と量を分析することを特徴とする。
【0009】
本発明のプリント基板に付着した汚損物の分析方法によれば、イオン性汚損物質中のイオン成分を純水中に抽出させ、得られた抽出液中のイオン成分をイオンクロマトグラフィー法で測定するので、複数のイオン成分の微量分析が行え、短時間で精度よくプリント基板に付着したイオン成分の種類と量とを分析できる。
【0010】
本発明のプリント基板に付着した汚損物の分析方法は、前記抽出を、超音波洗浄によって行うことが好ましい。この態様によれば、プリント基板に付着しているイオン成分をより短時間で抽出できるので、より短時間での分析が可能となる。
【0011】
本発明のプリント基板に付着した汚損物の分析方法は、前記イオン成分が、フッ素イオン、塩素イオン、亜硝酸イオン、臭素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、りん酸イオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ギ酸イオン、酢酸イオンから選ばれた1種以上であることが好ましい。これらのイオン性成分は、主にプリント基板に付着しやすい成分であるので、これらのイオン成分を分析することが好ましい。
【0012】
本発明のプリント基板に付着した汚損物の分析方法は、各イオン成分に起因するピーク強度又はピーク面積を求め、このピーク強度又はピーク面積と、イオン濃度との関係を検量線化しておき、この検量線に基づいて、各イオン成分の濃度を算出することが好ましい。この態様によれば、各イオン成分の濃度をより精度よく定量分析できる。
【0013】
また、本発明のプリント基板の洗浄方法は、上記方法で、プリント基板に付着したイオン成分の種類と量を分析することにより、プリント基板に付着した各イオン成分の濃度を所定値以下とするのに必要な洗浄条件を求め、この洗浄条件に従って、同様な使用条件下で汚染されたプリント基板の洗浄を行うことを特徴とする。
【0014】
本発明のプリント基板の洗浄方法によれば、同様な使用条件下で使用されたプリント基板は、汚染の程度がほぼ同程度であるので、あらかじめ求めておいた洗浄条件に従って、同様な使用条件下で汚染されたプリント基板の洗浄を行うことで、プリント基板に付着した各イオン成分の濃度を所定値以下にすることができ、洗浄不良の発生を抑制できる。また、洗浄条件を最適化できるので、洗浄時間をより短縮化でき、更には、排水の排出量を低減できる。
【0015】
本発明のプリント基板の洗浄方法は、前記洗浄条件として、プリント基板の単位面積当たりの塩素イオン、臭素イオン、硫酸イオン及びアンモニウムイオンのそれぞれの付着量が0.01μg/cm以下になる条件を設定することが好ましい。これらのイオン成分は、主にマイグレーションの原因となるので、これらのイオン成分の付着量を0.01μg/cm以下となるように洗浄条件を設定することで、マイグレーションの発生を効率よく抑えることができる。
【0016】
本発明のプリント基板の洗浄方法は、前記プリント基板を純水で超音波洗浄し、その後、純水で水洗して前記洗浄を行うことが好ましい。
【0017】
本発明のプリント基板の洗浄方法は、前記洗浄の後、エアブローによって前記プリント基板を乾燥させることが好ましい。
【0018】
本発明のプリント基板の洗浄方法は、前記プリント基板の洗浄後、必要により前記乾燥を行った後、前記プリント基板にコーティング剤を塗布することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、イオン性汚損物質中のイオン成分を純水中に抽出させ、得られた抽出液中のイオン成分をイオンクロマトグラフィー法で測定するので、複数のイオン成分の微量分析が行え、短時間で精度よくプリント基板に付着しているイオン成分の種類と量とを分析できる。そして、該方法で、プリント基板に付着したイオン成分の種類と量を分析することにより、プリント基板に付着した各イオン成分の濃度を所定値以下とするのに必要な洗浄条件を求め、この洗浄条件に従って、同様な使用条件下で汚染されたプリント基板の洗浄を行うことで、プリント基板に付着した各イオン成分の濃度を所定値以下にすることができ、洗浄不良の発生を抑制できる。また、洗浄条件を最適化できるので、洗浄時間をより短縮化でき、更には、排水の排出量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】陰イオンクロマトグラムの分析結果の一例である。
【図2】陽イオンクロマトグラムの分析結果の一例である。
【図3】塩素イオンのピーク面積と塩素イオン濃度との関係を示す検量線の一例である。
【図4】臭素イオンのピーク面積と臭素イオン濃度との関係を示す検量線の一例である。
【図5】硫酸イオンのピーク面積と硫酸イオン濃度との関係を示す検量線の一例である。
【図6】アンモニウムイオンのピーク面積とアンモニウムイオン濃度との関係を示す検量線の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明において、プリント基板とは、集積回路、抵抗器、コンデンサー等の各種電子部品が基板表面に実装され、その部品間を配線で接続することで電子部品を構成する板状またはフィルム状の電子回路基板である。
【0022】
かかるプリント基板は、フィールドでの使用により、大気中の塩化水素、NOx,SOx等を吸着した粉塵や油分等がプリント基板上に付着していく。また、はんだフラックスや絶縁接着層等に使用されている各種添加剤成分などがブリードアウトすることがある。このため、プリント基板は、経時的にイオン性汚染物質で汚染される傾向にある。プリント基板がイオン性汚損物質で汚染されることにより、マイグレーションが発生しやすくなり、劣化が進行する。
【0023】
本発明では、このような環境下で使用されることによって、イオン性汚損物質で汚損されたプリント基板から、該イオン性汚損物質中のイオン成分を純水中に抽出させ、その後、得られた抽出液中のイオン成分をイオンクロマトグラフィー法で測定することにより、プリント基板に付着しているイオン成分の種類と量を分析する。
【0024】
イオン性汚損物質中のイオン成分の抽出方法としては、特に限定はない。超音波洗浄、純水浸漬方法の接触方法である回分接触方法等が挙げられる。なかでも、超音波洗浄では、より短時間で純水中にイオン成分を抽出させることができるので、分析に要する時間を短縮できる。超音波洗浄による抽出は、プリント基板を純水中に浸漬して、20〜30kHzの超音波を照射して行うことが好ましい。洗浄時間は、汚染状況により異なるが、10〜30分が好ましい。
【0025】
そして、得られた抽出液中のイオン成分をイオンクロマトグラフィー法で測定する。イオンクロマトグラフィー法による分析では、複数のイオン成分を同時、かつ、高精度で分析することができる。プリント基板に付着しているイオン成分は、複数種であることが多く、また、その付着量は極めて微量であるため、イオン成分の種類と量を短時間で分析することができる。
【0026】
イオンクロマトグラフィー法による分析は、弱電解質の溶離液とともに試料溶液(イオン成分を含む抽出液)を導入し、イオン交換樹脂が充填された分離カラムを流通させることで、分離カラム内において、水和半径の大小、Van der Waals力の相互作用によってイオン種の相互分離が行われる。そして、サプレッサーを通すことによりバックグラウンドの電導度を下げることができ、目的とするイオン種を高感度でクロマトグラムとして得ることができる。また、陰イオン交換樹脂を充填した分離カラムと、陽イオン交換樹脂を充填した分離カラムとを備えた装置を用いることで、陰イオン種、陽イオン種を同時に分析できる。そして、フッ素イオン、塩素イオン、亜硝酸イオン、臭素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、りん酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン等の陰イオンや、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等の陽イオンを、およそ1ppb以下まで検出することができる。図1は、陰イオンクロマトグラムの分析結果の一例であり、図2は、陽イオンクロマトグラムの一例である。
【0027】
また、各イオン成分に起因するピーク強度又はピーク面積と、イオン濃度との関係をあらかじめ検量線化しておくことで、この検量線に基づいて、各イオン成分に起因するイオンクロマトグラムのピーク強度又はピーク面積から、目的とするイオン成分の濃度を、速やかに求めることができる。図3は塩素イオンのピーク面積と塩素イオン濃度との関係を示す検量線の一例であり、図4は臭素イオンのピーク面積と臭素イオン濃度との関係を示す検量線の一例であり、図5は硫酸イオンのピーク面積と硫酸イオン濃度との関係を示す検量線の一例であり、図6はアンモニウムイオンのピーク面積とアンモニウムイオン濃度との関係を示す検量線の一例である。
【0028】
次に、本発明のプリント基板の洗浄方法について説明する。
【0029】
上記方法により、プリント基板に付着したイオン成分の種類と量をあらかじめ分析する。そして、分析結果に基づき、プリント基板に付着した各イオン成分の濃度を所定値以下とするのに必要な洗浄条件を求め、この洗浄条件に従って、同様な使用条件下で汚染されたプリント基板の洗浄を行う。
【0030】
同様な使用条件下で使用されたプリント基板は、汚染の程度がほぼ同程度であるので、分析結果に基づいてあらかじめ設定しておいた洗浄条件に従って、同様な使用条件下で汚染されたプリント基板の洗浄を行うことで、プリント基板に付着した各イオン成分の濃度を所定値以下にすることができ、洗浄不良の発生を抑制できる。また、洗浄条件を最適化できるので、洗浄時間をより短縮化でき、更には、排水の排出量を低減できる。また、超音波洗浄を行う前に、油分などをイソプロピルアルコールなどの溶剤を用いて洗浄除去してもよい。
【0031】
洗浄条件は、プリント基板の単位面積当たりの塩素イオン、臭素イオン、硫酸イオン及びアンモニウムイオンのそれぞれの付着量が0.01μg/cm以下になる条件を設定することが好ましい。これらのイオン成分は、主にマイグレーションの原因となるので、これらのイオン成分の付着量を0.01μg/cm以下となるように洗浄条件を設定することで、マイグレーションの発生を効率よく抑えることができる。これらのイオン成分の付着量を0.01μg/cm以下にするには、洗浄液中の塩素イオン、臭素イオン、硫酸イオン及びアンモニウムイオンが、それぞれ1ppb以下となるように洗浄すればよい。
【0032】
洗浄方法は、特に限定はない。例えば、プリント基板を純水で超音波洗浄し、その後、純水で水洗する方法が好ましい一例として挙げられる。超音波洗浄により上記イオン成分の濃度を1ppb以下とするには、プリント基板を浸漬させる純水量、照射する超音波の周波数、超音波の照射時間等を適宜設定すればよい。
【0033】
なお、プリント基板に付着しているイオン成分の分析は、必要に応じて全数実施してもよい。プリント基板毎に、各プリント基板に付着しているイオン成分の分析を行いながら洗浄することで、洗浄不良の発生を確実に防止できる。
【0034】
そして、このようにして洗浄したのち、エアブローを行いプリント基板に付着している水分を除去して乾燥させ、コーティング剤を塗布してもよい。洗浄後のプリント基板にコーティング剤を塗布することで、プリント基板の洗浄度を良好に維持することができる。
【実施例】
【0035】
[測定機器及び測定条件]
〈イオンクロマトグラフィー〉
・装置:「DX−320」(DIONEX社製)
・分離カラム:陰イオン交換樹脂(商品名:「Ion Pac AS17C」、DIONEX社製)、陽イオン交換樹脂(商品名:「Ion Pac CS14」、DIONEX社製)
・溶離液:陰イオン用(水酸化カリウム)、陽イオン用(メタスルホン酸)、(商品名:「EG40溶離液ジェネレータ」、DIONEX社製)
〈超音波洗浄〉
・装置:超音波発信器
・発信周波数:26KHz
・洗浄水:純水(25℃)
・水量:12.24〜33.6l
・洗浄時間:10〜30分
【0036】
(試験例1)
塩素イオン濃度500ppb、臭素イオン濃度10ppb、硫酸イオン濃度1000ppb、アンモニウムイオン濃度500ppbの標準液を用い、同一試料を6回繰り返して測定を行い、得られたイオンクロマトグラムから各イオン成分に起因するピーク面積を求め、図3〜6の検量線を用いてイオン濃度を求め、イオンクロマトグラフ法による分析精度を評価した。結果を表1に記す。なお、変動係数(CV%)は、下記式(1)から算出した。
変動係数(CV%)=(標準偏差/平均値)×100 ・・・(1)
【0037】
【表1】

【0038】
上記結果より、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、硫酸イオン(SO2−)、アンモニウムイオン(NH)の変動係数(CV%)は、いずれも1%以下であった。元素分析のJIS法での分析精度は、一般に変動係数で2%〜10%とされている。これに比べてイオンクロマトグラフ法による分析は、分析精度は良好であり高精度であった。
【0039】
(試験例2)
製鉄所に設置された電子機器に使用されているプリント基板(表面積=1657cm)を、33.6lの純水(25℃)に浸漬させ、26kHzの超音波を20分照射して超音波洗浄し、プリント基板に付着しているイオン成分の抽出を行った。抽出液をイオンクロマトグラフ法で分析し、プリント基板に付着しているイオン成分の種類と、プリント基板の単位面積当たりのイオン成分の付着量と量を分析した。次に、超音波洗浄後のプリント基板を装置から取り出し、25℃の純水33.6lでシャワー洗浄し、シャワー洗浄後の洗浄水をイオンクロマトグラフ法で分析して、超音波洗浄後のプリント基板に付着しているイオン成分の種類と、プリント基板の単位面積当たりのイオン成分の付着量と量を分析した。結果を表2にまとめて記す。
なお、プリント基板の単位面積当たりの付着量は、下記式(2)から算出した。
プリント基板の単位面積当たりの付着量=検出されたイオン成分の量×抽出液の総量÷プリント基板の表面積 ・・・(2)
【0040】
【表2】

【0041】
上記結果より、このプリント基板には、特に塩素イオン(Cl)、硝酸イオン(NO)、硫酸イオン(SO2−)が多く付着していた。これは、使用環境下における大気中ガス由来の塩化水素、NOx、SOxガス成分が付着し、蓄積したためであると推測される。そして、シャワー洗浄後の洗浄水からはイオン成分がほとんど検出されず、洗浄は十分行われていたことが確認できた。
そして、同様の条件で使用されていた他のプリント基板に対し、同様の条件で超音波洗浄することで、プリント基板からイオン成分を除去することができた。
【0042】
(試験例3)
製鉄所の汚水処理室に設置された電子機器に使用されているプリント基板(表面積=599cm)、製鉄所の車両管制室に設置された電子機器に使用されているプリント基板(表面積=599cm)、製鉄所の電子計算室に設置された電子機器に使用されているプリント基板(表面積=752cm)を、それぞれ12.24lの純水(25℃)に浸漬させ、26kHzの超音波を25分照射して超音波洗浄し、各プリント基板に付着しているイオン成分の抽出を行った。抽出液をイオンクロマトグラフ法で分析し、プリント基板に付着しているイオン成分の種類と、プリント基板の単位面積当たりのイオン成分の付着量と量を分析した。次に、超音波洗浄後のプリント基板を装置から取り出し、25℃の純水12.24lでシャワー洗浄し、シャワー洗浄後の洗浄水をイオンクロマトグラフ法で分析して、超音波洗浄後のプリント基板に付着しているイオン成分の種類と、プリント基板の単位面積当たりのイオン成分の付着量と量を分析した。結果を表3にまとめて記す。
【0043】
【表3】

【0044】
上記結果より、このプリント基板には、硫酸イオン(SO2−)が多く付着していた。これは、使用環境下における大気中ガス由来のSOxガス成分や、硫化水素の成分が付着し、蓄積したためであると推測される。そして、シャワー洗浄後の洗浄水からはイオン成分がほとんど検出されず、洗浄は十分行われていたことが確認できた。
そして、同様の条件で使用されていた他のプリント基板に対し、同様の条件で超音波洗浄することで、プリント基板からイオン成分を除去することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性汚損物で汚損されたプリント基板から、該イオン性汚損物質中のイオン成分を純水中に抽出させ、得られた抽出液中のイオン成分をイオンクロマトグラフィー法で測定し、検出されたイオン成分の種類と量を分析することを特徴とするプリント基板に付着した汚損物の分析方法。
【請求項2】
前記抽出を、超音波洗浄によって行う請求項1に記載のプリント基板に付着した汚損物の分析方法。
【請求項3】
前記イオン成分が、フッ素イオン、塩素イオン、亜硝酸イオン、臭素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、りん酸イオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ギ酸イオン、酢酸イオンから選ばれた1種以上である、請求項1又は請求項2に記載のプリント基板に付着した汚損物の分析方法。
【請求項4】
各イオン成分に起因するピーク強度又はピーク面積を求め、このピーク強度又はピーク面積と、イオン濃度との関係を検量線化しておき、この検量線に基づいて、各イオン成分の濃度を算出する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプリント基板に付着した汚損物の分析方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された方法で、プリント基板に付着したイオン成分の種類と量を分析することにより、プリント基板に付着した各イオン成分の濃度を所定値以下とするのに必要な洗浄条件を求め、この洗浄条件に従って、同様な使用条件下で汚染されたプリント基板の洗浄を行うことを特徴とするプリント基板の洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄条件は、プリント基板の単位面積当たりの塩素イオン、臭素イオン、硫酸イオン及びアンモニウムイオンのそれぞれの付着量が0.01μg/cm以下になる条件を設定する、請求項5記載のプリント基板の洗浄方法。
【請求項7】
前記プリント基板を純水で超音波洗浄し、その後、純水で水洗して前記洗浄を行う、請求項5又は請求項6に記載のプリント基板の洗浄方法。
【請求項8】
前記洗浄の後、エアブローによって前記プリント基板を乾燥させる、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のプリント基板の洗浄方法。
【請求項9】
前記プリント基板の洗浄後、必要により前記乾燥を行った後、前記プリント基板にコーティング剤を塗布する、請求項5から請求項8のいずれか1項に記載のプリント基板の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−27563(P2011−27563A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173981(P2009−173981)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】