説明

プリント基板

【課題】 基板上に取り付けられたシールドケースの内部と外部の信号線を接続するのに、作業量及び部品コストを低減する構造のプリント基板を提供する。
【解決手段】 プリント基板16を多層構造にし、シールドケース1が取り付けられると共に当該シールドケース1の内部及び外部に信号パターン17、23が形成された最上層(1/4層)に、シールドケースの内部及び外部に形成された信号パターンにそれぞれ接続されるコンデンサ18,19を設けると共に、下層に、スルーホール24,25を介して最上層に設けられたコンデンサと接続されてフィルタ回路を構成するプリントコイル20,21を形成し、フィルタ回路を介してシールドケースの内部及び外部に形成された信号パターン17,23を接続する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属でシールドされた基板上の回路に外部からの信号線を接続するためのプリント基板の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図5は従来のプリント基板における信号線接続構造を説明する第1例を示すもので、プリント基板7上に取り付けられた金属でなるシールドケース1に貫通コンデンサ6を実装して、シールドケース1の外部からの信号パターン2を貫通コンデンサ6を経由してシールドケース1の内部の信号パターン3に接続した例を示す。
【0003】このように金属でシールドされた基板上の回路に外部からの信号線を接続する従来の構成は、シールドケース1、シールドケース1の外部に位置する信号パターン2とシールドケース1内部に位置する信号パターン3を有するプリント基板7、リード4及びリード5を有する貫通コンデンサ6で構成される。なお、貫通コンデンサ6のリード4は信号パターン2に半田付け接続され、リード5は信号パターン3に半田付け接続される。
【0004】ところで、上述したプリント基板において、貫通コンデンサ6を使用した場合、シールドケース1に貫通コンデンサ6の取り付け用の穴あけ加工が発生する。また、組み立て時に、貫通コンデンサ6の取り付け作業、貫通コンデンサ6のリード4とシールドケース1外部からの信号パターン2への半田付け作業、貫通コンデンサ6のリード4とシールドケース1外部からの信号パターン2への半田付け作業、貫通コンデンサ6のリード5とシールドケース1内部からの信号パターン3への半田付け作業が発生するため、加工、組立工数が多くなる。
【0005】また、図6は従来の信号線接続構造を説明する第2例を示すもので、貫通コンデンサを使用せずにコンデンサ及びコイルで構成されるローパスフィルタを使用した例(回路図)である。図6に示す回路は、コイルL1、コンデンサC1,C2を有するローパスフィルタ8と、コイルL2、コンデンサC3,C4を有するローパスフィルタ9とで構成される。ローパスフィルタ8はシールドケースの外部に実装され、ローパスフィルタ9はシールドケースの内部に実装される。
【0006】ここで、図6のA点とB点の接続は、例えば図7のように接続される。すなわち、ローパスフィルタ8とローパスフィルタ9との接続構造は、プリント基板15上のシールドケース1の外部に形成された信号パターン10、スルーホール13、信号パターン11、スルーホール14、プリント基板15上のシールドケース1の内部に形成された信号パターン12を経由して接続される。この接続構造では、シールドケース1の内部と外部にローパスフィルタ8,9を有するため、信号線が複数の場合、部品点数が多くなり、部品コストが高くなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、図5に示す従来例では、貫通コンデンサ6を使用するために、シールドケース1の穴あけ加工、取り付け作業、半田付け作業が発生し、加工、組立工数が多くなるという問題点があった。また、図6及び図7に示す従来例では、シールドケース1の内部と外部にローパスフィルタ8,9を有するため、信号線が複数の場合、部品点数が多くなり、部品コストが高くなるという問題点があった。
【0008】本発明は上述した問題点を解消するためになされたもので、基板上に取り付けられたシールドケースの内部と外部の信号線を接続するのに、貫通コンデンサ使用によるシールドケースの穴あけ加工工数及び配線、取り付け等の組立工数の増加を防ぎ、部品コストを低減することができる構造のプリント基板を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に係るプリント基板は、プリント基板を多層構造にし、シールドケースが取り付けられると共に当該シールドケースの内部及び外部に信号パターンが形成された最上層に、上記シールドケースの内部及び外部に形成された信号パターンにそれぞれ接続されるコンデンサを設けると共に、下層に、スルーホールを介して最上層に設けられたコンデンサと接続されてフィルタ回路を構成するプリントコイルを形成し、上記フィルタ回路を介してシールドケースの内部及び外部に形成された信号パターンを接続することを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のプリント基板では、従来のような貫通コンデンサを使用することなく、また、シールドケース内部と外部にそれぞれフィルタ回路を設けず、コンデンサ及びプリントコイルを使用してフィルタ回路を構成して、外部からの信号線をシールドケース内の回路に接続することができる信号線接続構造を有する。
【0011】実施の形態1.図1は本実施の形態1に係るプリント基板の信号線接続構造を示す部分断面図である。図1に示すプリント基板では、4層プリント基板16を使用し、最上層の1/4層にシールドケース1を取り付け、図2のL3,C5,C6で構成されるローパスフィルタと同等のローパスフィルタを構成し、信号線を接続した場合を示す。
【0012】すなわち、本実施の形態1によるプリント基板は、4層(1/4層、2/4層、3/4層、4/4層)からなるプリント基板16,最上層に設けられたシールドケース1、シールドケース1外部からの信号パターン17、コンデンサ18及び19、下層に形成されたプリントコイル20,21、最上層に形成されたシールドケース1内部からの信号パターン23,層間を貫通するスルーホール24,25,26,27で構成される。
【0013】プリントコイル20,21は、4層プリント基板16の2/4層、3/4層に形成されており、コンデンサ18とプリントコイル20,プリントコイル20と21は各々スルーホール24,25を経由して接続される。プリントコイル21は、スルーホール26,信号パターン22,スルーホール27を経由して最上層に設けられたコンデンサ19に接続される。
【0014】ここで、プリントコイルは、図3に示す如く、スパイラル状に正方形の辺が連続する形状でなるプリントパターンを有し、この場合のインダクタンスは、式(1)で求められる。
L=0.141×a×n5/3 ×log(8×a/c)[μH] (1)
なお、a=(Di+Do)/4,c=(Do−Di)/2,n:巻数、Do,Di:最外辺と最内辺の長さ(単位はインチ)
【0015】式(1)において、Di=3mm,Do=15mm,n=7とすると、プリントコイル1個当たりのインダクタンスは0.497[μH]となるため、プリントコイル2個分を合計すると、0.994[μH]となる。よって、図1に示す構造の場合、コンデンサ2個とプリントコイルでローパスフィルタを構成したことにより、シールドケース1の外部回路とシールドケース1内の回路との接続が可能になる。インダクタンスの変更は、プリントコイルの形状変更(式(1)におけるDi,Do,nの変更)、または複数のプリントコイルを組み合わせることにより実現できる。
【0016】実施の形態2.図4は実施の形態2に係るプリント基板の信号線接続構造を示すもので、4層プリント基板28を使用し、最上層の1/4層にシールドケース1を取り付け、さらにシールド効果を高めるために、4/4層にシールドケース30を取り付け、図2のL3,C5,C6で構成されるローパスフィルタと同等のローパスフィルタを構成し、信号線を接続した場合を示す。
【0017】本実施の形態2は、4層(1/4層、2/4層、3/4層、4/4層)からなるプリント基板28、シールドケース1、シールドケース30、シールドケース1外部からの信号パターン17、コンデンサ18及び19、プリントコイル20,21、シールドケース内部への信号パターン23、スルーホール24,25,29で構成される。
【0018】プリントコイル20,21は、4層プリント基板の2/4層、3/4層にあり、コンデンサ18とプリントコイル20、プリントコイル20とプリントコイル21は各々スルーホール24,25を経由して接続される。プリントコイル21は、スルーホール29を経由してコンデンサ19に接続される。また、コンデンサ18にはシールドケース1外部からの信号パターン17が接続され、コンデンサ19にはシールドケース内部への信号パターン23が接続される。
【0019】このように、プリントコイルを使用したローパスフィルタを使用すれば、シールドケース外部の信号とシールドケース内部の信号を容易に接続することができる。
【0020】従って、上記各実施の形態によれば、プリントコイルを使用するため、コイル自体の部品コストは零である。よって、ローパスフィルタの使用部品がコンデンサ2個のみで実現でき、部品コストを低減することができる。また、貫通コンデンサを実現するためのシールドケースの穴あけ加工や、貫通コンデンサの実装作業及び信号線の接続作業がなく、加工工数及び組立工数を低減することができる。
【0021】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、プリント基板を多層構造にし、シールドケースが取り付けられると共に当該シールドケースの内部及び外部に信号パターンが形成された最上層に、上記シールドケースの内部及び外部に形成された信号パターンにそれぞれ接続されるコンデンサを設けると共に、下層に、スルーホールを介して最上層に設けられたコンデンサと接続されてフィルタ回路を構成するプリントコイルを形成したので、貫通コンデンサを使用することなく、従って、シールドケースの穴あけ加工や、貫通コンデンサの実装作業及び信号線の接続作業を必要とすることなく、上記フィルタ回路を介してシールドケースの内部及び外部に形成された信号パターンを容易に接続することができ、また、部品コストを低減することができる構造のプリント基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係るプリント基板の信号線接続構造を示す部分断面図である。
【図2】図1のフィルタ回路を示す等価回路図である。
【図3】図1のプリントコイルのパターンを示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係るプリント基板の信号線接続構造を示す部分断面図である。
【図5】従来例に係るプリント基板の信号線接続構造を示す説明図である。
【図6】他の従来例に係るプリント基板の信号線接続構造を示す説明図である。
【図7】図6のA点とB点の接続構造を示す説明図である。
【符号の説明】
1,30 シールドケース
16,28 プリント基板
17 信号パターン
18,19 コンデンサ
20,21 プリントコイル
22,23 信号パターン
24,25,26,27 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】 プリント基板を多層構造にし、シールドケースが取り付けられると共に当該シールドケースの内部及び外部に信号パターンが形成された最上層に、上記シールドケースの内部及び外部に形成された信号パターンにそれぞれ接続されるコンデンサを設けると共に、下層に、スルーホールを介して最上層に設けられたコンデンサと接続されてフィルタ回路を構成するプリントコイルを形成し、上記フィルタ回路を介してシールドケースの内部及び外部に形成された信号パターンを接続することを特徴とするプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2000−286512(P2000−286512A)
【公開日】平成12年10月13日(2000.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−86757
【出願日】平成11年3月29日(1999.3.29)
【出願人】(000001122)国際電気株式会社 (5,007)
【Fターム(参考)】