説明

プリント配線板及びプリント配線板の製造方法

【課題】 ループインダクタンスを低減できるプリント配線板及び該プリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】 プリント配線板10内にチップコンデンサ20を配置するため、ICチップ90とチップコンデンサ20との距離が短くなり、ループインダクタンスを低減することができる。また、厚いコア基板30内にチップコンデンサ20を収容するためプリント配線板を厚くすることがない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】ICチップなどの電子部品を載置するプリント配線板に関し、特にコンデンサを内蔵するプリント配線板に関するのもである。
【0002】
【従来の技術】通常、コンピュータ内部においては、電源とICチップ間の配線距離が長く、この配線部分のループインダクタンスは非常に大きいものとなっている。このため、高速動作時のIC駆動電圧の変動も大きくなり、ICの誤動作の原因となり得る。また、電源電圧を安定化させることも困難である。このため、電源供給の補助として、コンデンサをプリント配線板の表面に実装している。
【0003】即ち、電圧変動となるループインダクタンスは、図17(A)に示す電源からプリント配線板300内の電源線を介してICチップ270の電源端子272Pまでの配線長、及び、ICチップ270のアース端子272Eから電源からプリント配線板300内のアース線を介して電源までの配線長に依存する。また、逆方向の電流が流れる配線同志、例えば、電源線とアース線との間隔を狭くすることでループインダクタンスを低減できる。このため、図17(B)に示すように、プリント配線板300にチップコンデンサ298を表面実装することで、ICチップ270と電源供給源となるチップコンデンサ292とを結んでいるプリント配線板300内の電源線とアース線との配線長を短くするとともに、配線間隔を狭くすることで、ループインダクタンスを低減することが行われていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、IC駆動電圧変動の原因となる電圧降下の大きさは周波数に依存する。このため、ICチップの駆動周波数の増加に伴い、図17(B)を参照して上述したようにチップコンデンサを表面に実装させてもなおループインダクタンスを低減できず、IC駆動電圧の変動を十分に抑えることが難しくなった。
【0005】このため、本発明者は、プリント配線板内にチップコンデンサを収容するとの着想を持った。コンデンサを基板に埋め込む技術としては、特開平6−326472号、特開平7−263619号、特開平10−256429号、特開平11−45955号、特開平11−126978号、特開平11−312868号等がある。
【0006】特開平6−326472号には、ガラスエポキシからなる樹脂基板に、コンデンサを埋め込む技術が開示されている。この構成により、電源ノイズを低減し、かつ、チップコンデンサを実装するスペースが不要になり、絶縁性基板を小型化できる。また、特開平7−263619号には、セラミック、アルミナなどの基板にコンデンサを埋め込む技術が開示されている。この構成により、電源層及び接地層の間に接続することで、配線長を短くし、配線のインダクタンスを低減している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した技術は、ICチップからコンデンサの距離をあまり短くできず、ICチップの更なる高周波数領域においては、現在必要とされるようにインダクタンスを低減することができなかった。特に、樹脂製の多層ビルドアップ配線板においては、セラミックから成るコンデンサと、樹脂からなるコア基板及び層間樹脂絶縁層の熱膨張率の違いから、チップコンデンサの端子とバイアホールとの間に断線、チップコンデンサと層間樹脂絶縁層との間で剥離、層間樹脂絶縁層にクラックが発生し、長期に渡り高い信頼性を達成することができなかった。
【0008】本発明は上述した課題を解決するためなされたものであり、その目的とするところは、ループインダクタンスを低減できると共に高い信頼性を有するプリント配線板、及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するため、請求項1では、コア基板に樹脂絶縁層と導体回路とを積層してなるプリント配線板であって、前記コア基板は、少なくとも1層以上である絶縁樹脂層で形成された接続層とザグリ部にコンデンサを収納した収容層とからなることを技術的特徴とする。
【0010】コア基板上に層間樹脂絶縁層を設けて、該層間樹脂絶縁層にバイアホールもしくはスルーホールを施して、導電層である導体回路を形成するビルドアップ法によって形成する回路を意味している。それらには、セミアディティブ法、フルアディティブ法のいずれかを用いることができる。
【0011】請求項1では、プリント配線板内にコンデンサを配置するため、ICチップとコンデンサとの距離が短くなり、ループインダクタンスを低減することができる。また、コア基板は、少なくとも1層以上の接続層と、コンデンサを収容する収容層からなり、厚みの厚い収容層内にコンデンサを収容するため、コア基板が厚くならず、コア基板上に層間樹脂絶縁層と導体回路とを積層してもプリント配線板を厚くすることがない。
【0012】凹部内には、樹脂を充填させることが望ましい。コンデンサ、コア基板間の空隙をなくすことによって、内蔵されたコンデンサが、挙動することが小さくなるし、コンデンサを起点とする応力が発生したとしても、該充填された樹脂により緩和することができる。また、該樹脂には、コンデンサとコア基板との接着やマイグレーションの低下させるという効果も有する。
【0013】請求項2では、収容層は、心材に樹脂を含浸させた樹脂基板からなるため、コア基板に十分な強度を得ることができる。
【0014】請求項3では、接続層と収容層に収容されたコンデンサとは、導電性接着剤を介して接続される。これにより、コンデンサとの電気接続とコンデンサと接続層との密着性が確保される。導電性接着材には、半田(Sn/Pb、Sn/Ag、Sn/Sb、Sn/Ag/Cu)、導電性ペースト、あるいは樹脂に金属粒子が含浸されたもの等の導電性と接着性を兼ね備えるものを用いることができる。
【0015】導電接着剤とコンデンサとの空隙には、樹脂を充填させるのが望ましい。コンデンサを起因とする挙動を緩和し、導電接着剤のマイグレーションを防止することができるからである。
【0016】請求項4では、接続層と収容層の間に、導電性接着剤と接続される回路が設けられているため、当該回路を介してコンデンサと確実に接続を取ることができる。また、接続層と収容層の間に、金属層からなる回路を配設することで、コア基板の反りを防ぐことができる。
【0017】請求項5では、プリント配線板の裏面側に接続される外部基板(ドータボード、マザーボード)とコンデンサの端子とは、接続層に設けられたバイアホール及びコア基板に形成されたスルーホールを介して接続される。即ち、心材を備え加工が困難な収容層に通孔を形成してコンデンサの端子と外部基板とを直接接続しないため、接続信頼性を高めることができる。
【0018】請求項6では、コンデンサ間にICチップと外部基板との接続用配線を配設し、コンデンサを信号線が通過しないため、高誘電体によるインピーダンス不連続による反射、及び、高誘電体通過による伝搬遅延が発生しない。電源用のコンデンサを備えることで、ICチップに大電力を容易に供給することが可能となる。また、プリント配線板の信号伝搬のノイズを低減することができる。
【0019】また、接続用配線を配設することにより、コンデンサの下部にも、配線を施すことが可能となる。そのために配線の自由度が増して、高密度化、小型化をすることが出来る。
【0020】請求項7では、基板内に収容したコンデンサに加えて表面にコンデンサを配設してある。プリント配線板内にコンデンサが収容してあるために、ICチップとコンデンサとの距離が短くなり、ループインダクタンスを低減し、瞬時に電源を供給することができ、一方、プリント配線板の表面にもコンデンサが配設してあるので、大容量のコンデンサを取り付けることができ、ICチップに大電力を容易に供給することが可能となる。
【0021】請求項8では、表面のコンデンサの静電容量は、内層のコンデンサの静電容量以上であるため、高周波領域における電源供給の不足がなく、所望のICチップの動作が確保される。
【0022】請求項9では、表面のコンデンサのインダクタンスは、内層のコンデンサのインダクタンス以上であるため、高周波領域における電源供給の不足がなく、所望のICチップの動作が確保される。
【0023】チップコンデンサの表面に粗化処理が施すことができる。これにより、セラミックから成るチップコンデンサと樹脂からなる接着層、層間樹脂絶縁層との密着性が高く、ヒートサイクル試験を実施しても界面での接着層、層間樹脂絶縁層の剥離が発生することがない。
【0024】請求項10では、チップコンデンサの周囲に銅が形成されていることにより、内蔵したコンデンサには、マイグレーションの発生することがなくなる。また、コンデンサを充填させる樹脂との剥離やクラックがなくなり、収容性が向上される。そのため、電気特性の低下もない。
【0025】請求項11では、コア基板のザグリ部とコンデンサとの間に、樹脂を充填し、樹脂の熱膨張率を、コア基板よりも小さく、即ち、セラミックからなるコンデンサに近いように設定してある。このため、ヒートサイクル試験において、コア基板とコンデンサとの間に熱膨張率差から内応力が発生しても、コア基板にクラック、剥離等が生じ難く、高い信頼性を達成できる。また、マイグレーションの発生を防止することも出来る。
【0026】請求項12では、外縁の内側に電極の形成されたチップコンデンサを用いるため、バイアホールを経て導通を取っても外部電極が大きく取れ、アライメントの許容範囲が広がるために、接続不良がなくなる。
【0027】請求項13では、マトリクス状に電極が形成されたコンデンサを用いるので、大判のチップコンデンサをコア基板に収容することが容易になる。そのため、静電容量を大きくできるので、電気的な問題を解決することができる。さらに、種々の熱履歴などを経てもプリント配線板に反りが発生し難くなる。
【0028】請求項14では、コンデンサに多数個取り用のチップコンデンサを複数連結させてもよい。それによって、静電容量を適宜調整することができ、適切にICチップを動作させることができる。
【0029】請求項15のプリント配線板の製造方法は、少なくとも以下(a)〜(c)の工程を備えることを技術的特徴とする:(a)片面あるいは両面に回路パターンを形成した樹脂板に、接着材料を介して前記回路パターンにコンデンサを接続する工程(b)前記樹脂板に、前記コンデンサを収容するキャビティを形成した樹脂基板を貼り付け、コア基板を形成する工程(c)前記樹脂板に前記コンデンサの電極へ至る開口を設けてバイアホールを形成する工程。
【0030】請求項15のプリント配線板の製造方法では、コア基板内にチップコンデンサを収容することが可能となり、ループインダクタンスを低減させたプリント配線板を提供できる。
【0031】請求項16のプリント配線板の製造方法では、コンデンサを収容した樹脂基板と樹脂板とを、両面に圧力を加えて張り合わせコア基板を形成するため、表面が平坦化され、高い信頼性を備える層間樹脂絶縁層及び導体回路を積層することができる。
【0032】請求項17のプリント配線板の製造方法では、コンデンサ間にICチップと外部基板とのスルーホールを配設し、コンデンサを信号線が通過しないため、高誘電体によるインピーダンス不連続による反射、及び、高誘電体通過による伝搬遅延が発生しない。電源用のコンデンサを備えることで、ICチップに大電力を容易に供給することが可能となる。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。先ず、本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の構成について図7、図8を参照して説明する。図7は、プリント配線板10の断面を示し、図8は、図7に示すプリント配線板10にICチップ90を搭載し、ドータボード94側へ取り付けた状態を示している。
【0034】図7に示すようにプリント配線板10は、チップコンデンサ20と、チップコンデンサ20を収容するコア基板30と、ビルドアップ層80A、80Bを構成する層間樹脂絶縁層60とからなる。コア基板30は、コンデンサ20を収容する収容層31と接続層40とからなる。接続層40には、バイアホール46及び導体回路48が形成され、層間樹脂絶縁層60には、バイアホール66及び導体回路68が形成されている。本実施形態では、ビルドアップ層が1層の層間樹脂絶縁層60からなるが、ビルドアップ層は、複数の層間樹脂絶縁層からなることができる。
【0035】図8に示すように上側のビルドアップ層80Aのバイアホール66には、ICチップ90のパッド92S1、92S2、92P1,92P2へ接続するためのバンプ76が形成されている。一方、下側のビルドアップ層80Bのバイアホール66には、ドータボード94のパッド96S1、96S2、96P1、96P2へ接続するためのバンプ76が配設されている。コア基板30にはスルーホール36が形成されている。
【0036】チップコンデンサ20は、図12に示すように第1電極21と第2電極22と、該第1、第2電極に挟まれた誘電体23とから成り、該誘電体23には、第1電極21側に接続された第1導電膜24と、第2電極22側に接続された第2導電膜25とが複数枚対向配置されている。第1電極21と第2電極22の表面には、銅めっき等の金属被覆を被せることが望ましい。導電性接着剤34との電気接続性を改善でき、また、マイグレーションの発生を防止できるからである。
【0037】図8中に示すICチップ90の信号用のパッド92S2は、バンプ76−導体回路68−バイアホール66−スルーホール36−バイアホール66−バンプ76を介して、ドータボード94の信号用のパッド96S2に接続されている。一方、ICチップ90の信号用のパッド92S1は、バンプ76−バイアホール66−スルーホール36−バイアホール66−バンプ76を介して、ドータボード94の信号用のパッド96S1に接続されている。
【0038】ICチップ90の電源用パッド92P1は、バンプ76−バイアホール66−導体回路48−バイアホール46を介してチップコンデンサ20の第1電極21へ接続されている。一方、ドータボード94の電源用パッド96P1は、バンプ76−バイアホール66−スルーホール36−導体回路48−バイアホール46を介してチップコンデンサ20の第1電極21へ接続されている。
【0039】ICチップ90の電源用パッド92P2は、バンプ76−バイアホール66−導体回路48−バイアホール46を介してチップコンデンサ20の第2電極22へ接続されている。一方、ドータボード94の電源用パッド96P2は、バンプ76−バイアホール66−スルーホール36−導体回路48−バイアホール46を介してチップコンデンサ20の第2電極22へ接続されている。
【0040】本実施形態のプリント配線板10では、ICチップ90の直下にチップコンデンサ20を配置するため、ICチップとコンデンサとの距離が短くなり、電力を瞬時的にICチップ側へ供給することが可能になる。即ち、ループインダクタンスを決定するループ長さを短縮することができる。
【0041】更に、チップコンデンサ20とチップコンデンサ20との間にスルーホール36を設け、チップコンデンサ20を信号線が通過しない。このため、コンデンサを通過させた際に発生する高誘電体によるインピーダンス不連続による反射、及び、高誘電体通過による伝搬遅延を防ぐことができる。
【0042】また、プリント配線板の裏面側に接続される外部基板(ドータボード)94とコンデンサ20の第1端子21,第2端子22とは、ICチップ側の接続層40に設けられたバイアホール46及びコア基板30に形成されたスルーホール36を介して接続される。即ち、心材を備え加工が困難な収容層31に通孔を形成してコンデンサの端子と外部基板とを直接接続しないため、接続信頼性を高めることができる。
【0043】本実施形態では、図12に示すようにチップコンデンサ20のセラミックから成る誘電体23の表面には粗化層23aが設けられている。このため、セラミックから成るチップコンデンサ20と樹脂からなる接着層40との密着性が高く、ヒートサイクル試験を実施しても界面での接着層40の剥離が発生することがない。この粗化層23aは、焼成後に、チップコンデンサ20の表面を研磨することにより、また、焼成前に、粗化処理を施すことにより形成できる。なお、本実施形態では、コンデンサの表面に粗化処理を施し、樹脂との密着性を高めたが、この代わりに、コンデンサの表面にシランカップリング処理を施すことも可能である。
【0044】また、本実施形態では、図7に示すようにコア基板30のキャビティ31aの側面とチップコンデンサ20との間に樹脂充填材32を介在させてある。ここで、樹脂充填材32の熱膨張率を、コア基板30及び接着層40よりも小さく、即ち、セラミックからなるチップコンデンサ20に近いように設定してある。このため、ヒートサイクル試験において、コア基板及び接着層40とチップコンデンサ20との間に熱膨張率差から内応力が発生しても、コア基板30及び接着層40にクラック、剥離等が生じ難く、高い信頼性を達成できる。また、マイグレーションの発生を防止することも出来る。
【0045】ひき続き、図7を参照して上述したプリント配線板の製造方法について、図1〜図6を参照して説明する。コア基板を形成する樹脂層である接続層を形成し、その片面に金属層からなる回路パターンを形成させる。このため、片面に金属膜41を積層した樹脂フィルム40αを用意する(図1(A))。この樹脂フィルム40αとしては、エポキシ、BT、ポリイミド、オレフィン等の熱硬化性樹脂、又は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物を用いることができる。ここでは、通孔の形成が容易なように心材を備えないフィルムが望ましい。この金属膜41をパターンエッチングして所定の回路パターン42を形成する(図1(B))。次に、樹脂フィルム40αの下面の回路パターン42にチップコンデンサ20を導電性接着材34を介して接着する(図1(C))。これにより、コンデンサ20との電気接続とコンデンサ20と回路パターン42との密着性が確保される。導電性接着材34は、半田(Sn/Pb、Sn/Sb、Sn/Ag、Sn/Ag/Cu)、導電性ペースト、あるいは樹脂に金属粒子が含浸されたもの等の導電性と接着性を兼ね備えるものを用いることができる。導電性接着剤とコンデンサで生じる空隙は、樹脂によって充填させたほうがよい。
【0046】一方、チップコンデンサを収容するキャビティ31aを穿設した収容層用積層板31αを用意する(図1(C))。キャビティ31aは、ザグリにより形成させる。ザグリ以外にも通孔を形成したプリプレグと通孔を形成していないプリプレグとの接合、又は、射出成形によりキャビティを有する積層板を形成できる。この収容層用積層板31αとしては、エポキシ樹脂をガラスクロス等の心材に含浸させたプリプレグを積層してなる積層板を用いることができる。エポキシ以外でも、BT、フェノール樹脂あるいはガラスクロスなどの強化材を含有しているもの等、一般的にプリント配線板で使用されるものを用い得る。なお、ガラスクロスなどの心材を有しない樹脂基板を用いることもできる。しかし、コア基板をセラミックやAINなどの基板を用いることはできなかった。該基板は外形加工性が悪く、コンデンサを収容することができないことがあり、樹脂で充填させても空隙が生じてしまうためである。樹脂基板は融点が300℃以下であるため、350℃を越える温度を加えると溶解、軟化もくしは炭化してしまう。
【0047】そして、チップコンデンサ20を取り付けた樹脂フィルム40α、コンデンサ収容部を有するコア基板用樹脂積層板30α、更に、もう1枚の樹脂フィルム40αを積層して、両面からプレスして表面を平坦にする(図1(D))。本実施形態では、コンデンサ20を収容した収容層31と接続層40とを、両面に圧力を加えて張り合わせコア基板30を形成するため、表面が平坦化される。これにより、後述する工程で、高い信頼性を備えるように層間樹脂絶縁層60及び導体回路68を積層することができる。なお、この際に、コンデンサ20と樹脂フィルム40αとの間の隙間は、樹脂フィルム40αからしみ出る樹脂により充填される。ここで、この隙間が十分に充填し得ない際には、図2(A)に示すように樹脂フィルム40α側の回路パターン42間に、コア基板よりも熱膨張率の小さな充填材32αを配設し、図2(D)に示すように充填することも、また、図2(C)に示すように、コンデンサ20側に充填材32αを配置し、図2(D)に示すように充填することも可能である。
【0048】その後、加熱して硬化させることで、チップコンデンサ20を収容する収容層31と接続層40とからなるコア基板30を形成する(図3(A))。なお、コア基板のキャビティ31a内に、コア基板よりも熱膨張率の小さな樹脂充填剤32を充填して、気密性を高めることが好適である。また、ここでは、樹脂フィルム40αには、金属層のないものを用いて積層させているが、片面に金属層を配設した樹脂フィルム(RCC)を用いてもよい。即ち、両面板、片面板、金属膜を有しない樹脂板、樹脂フィルムを用いることができる。
【0049】本実施形態では、コア基板30を形成する接続層40と収容層31との間に、導電性接着剤34と接続される回路パターン42を設けてあるため、当該回路パターン42を介してコンデンサ20へ確実に接続を取ることができる。また、接続層40と収容層31との間に、金属層からなる回路パターン42を配設することで、コア基板30の反りを防ぐことができる。
【0050】次に、CO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザあるいはUVレーザにより上面側の接続層40にバイアホールとなる非貫通孔43を穿設する(図3(B))。場合によっては、非貫通孔の位置に対応させて通孔の穿設されたエリアマスクを載置してレーザでエリア加工を行ってもよい。更に、バイアホールの大きさや径が異なる物を形成する場合には、混合のレーザによって形成させてもよい。
【0051】また、必要に応じて、バイアホール内のスミアを酸素、窒素などの気体プラズマ処理、コロナ処理などのドライ処理によって、あるいは、過マンガン酸などの酸化剤による浸積による処理によって行ってもよい。引き続き、接続層40、収容層31及び接続層40からなるコア基板30に対して、ドリル、又は、レーザでスルーホール用の通孔33を50〜500μmで穿設する(図3(C))。
【0052】コア基板30の接続層40の表層、バイアホール用非貫通孔43及びスルーホール用貫通孔33内に金属膜を形成させる。このために、接続層40の表面にパラジウム触媒を付与してから、無電解めっき液にコア基板30を浸漬し、均一に無電解銅めっき膜44を析出させる(図4(A))。ここでは、無電解めっきを用いているが、スパッタにより、銅、ニッケル等の金属層を形成することも可能である。スパッタはコスト的には不利であるが、樹脂層との密着性を改善できる利点がある。また、場合によってはスパッタで形成した後に、無電解めっき膜を形成させてもよい。樹脂によっては、触媒付与が安定しないものには有効であるし、無電解めっき膜と形成させた方が電解めっきの析出性が安定するからである。金属膜44は、0.1〜3mmの範囲で形成することが望ましい。
【0053】その後、金属膜44の表面に感光性ドライフィルムを張り付け、マスクを載置して、露光・現像処理し、所定パターンのレジスト51を形成する。そして、電解めっき液にコア基板30を浸漬し、無電解めっき膜44を介して電流を流し電解銅めっき膜45を析出させる(図4(B))。レジスト50及びレジスト51を5%のKOH で剥離した後、レジスト51下の無電解めっき膜44を硫酸と過酸化水素混合液でエッチングして除去し、接続層40にバイアホール46及び導体回路48を、一方、コア基板30の通孔33にスルーホール36を形成する(図4(C))。
【0054】導体回路48、バイアホール46及びスルーホール36の導体層の表面に粗化層を設ける。酸化(黒化)−還元処理、Cu−Ni−Pからなる合金などの無電解めっき膜、あるいは、第二銅錯体と有機酸塩からなるエッチング液などのエッチング処理によって粗化層を施す。粗化層はRa(平均粗度高さ)=0.01〜5μmである。特に望ましいのは、0.5〜3μmの範囲である。なお、ここでは粗化層を形成しているが、粗化層を形成せず後述するように直接樹脂を充填、樹脂フィルムを貼り付けることも可能である。
【0055】引き続き、スルーホール36内に樹脂層38を充填させる。樹脂層としては、エポキシ樹脂等の樹脂を主成分として導電性のない樹脂、銅などの金属ペーストを含有させた導電性樹脂のどちらでもよい。この場合は、熱硬化性エポキシ樹脂に、シリカなどの熱膨張率を整合させるために含有させたものを樹脂充填材として充填させる。スルーホール36への樹脂38の充填後、樹脂フィルム60αを貼り付ける(図5(A))。なお、樹脂フィルムを貼り付ける代わりに、樹脂を塗布することも可能である。樹脂フィルム60αを貼り付けた後、フォト、レーザにより、絶縁層60αに開口径20〜250μmであるバイアホール63を形成してから熱硬化させる(図5(B))。その後、コア基板に触媒付与し、無電解めっきへ浸積して、層間樹脂絶縁層60の表面に均一に厚さ0.9μmの無電解めっき膜64を析出させ、その後、所定のパターンをレジスト70で形成させる(図5(C))。
【0056】電解めっき液に浸漬し、無電解めっき膜64を介して電流を流してレジスト70の非形成部に電解銅めっき膜65を形成する(図6(A))。レジスト70を剥離除去した後、めっきレジスト下の無電解めっき膜64を溶解除去し、無電解めっき膜64及び電解銅めっき膜65からなるの導体回路68及びバイアホール66を得る(図6(B))。
【0057】第2銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液により、導体回路68及びバイアホール66の表面に粗化面(図示せず)を形成した。さらにその表面にSn置換を行ってもよい。
【0058】上述したプリント配線板にはんだバンプを形成する。基板の両面に、ソルダーレジスト組成物を塗布し、乾燥処理を行った後、円パターン(マスクパターン)が描画されたフォトマスクフィルム(図示せず)を密着させて載置し、紫外線で露光し、現像処理する。そしてさらに、加熱処理し、はんだパッド部分(バイアホールとそのランド部分を含む)の開口部72aを有するソルダーレジスト層(厚み20μm)72を形成する(図6(C))。
【0059】そして、ソルダーレジスト層72の開口部72aに、半田ペーストを充填する(図示せず)。その後、開口部72aに充填された半田を 200℃でリフローすることにより、半田バンプ(半田体)76を形成する(図7参照)。なお、耐食性を向上させるため、開口部72aにNi、Au、Ag、Pdなどの金属層をめっき、スパッタにより形成することも可能である。
【0060】次に、該プリント配線板へのICチップの載置及び、ドータボードへの取り付けについて、図8を参照して説明する。完成したプリント配線板10の半田バンプ76にICチップ90の半田パッド92S1、92S2、92P1、92P2が対応するように、ICチップ90を載置し、リフローを行うことで、ICチップ90の取り付けを行う。同様に、プリント配線板10の半田バンプ76にドータボード94のパッド96S1、96S2、96P1、96P2をリフローすることで、ドータボード94へプリント配線板10を取り付ける。
【0061】上述した樹脂フィルムには、難溶性樹脂、可溶性粒子、硬化剤、その他の成分が含有されている。それぞれについて以下に説明する。
【0062】本発明の製造方法において使用する樹脂フィルムは、酸または酸化剤に可溶性の粒子(以下、可溶性粒子という)が酸または酸化剤に難溶性の樹脂(以下、難溶性樹脂という)中に分散したものである。なお、本発明で使用する「難溶性」「可溶性」という語は、同一の酸または酸化剤からなる溶液に同一時間浸漬した場合に、相対的に溶解速度の早いものを便宜上「可溶性」と呼び、相対的に溶解速度の遅いものを便宜上「難溶性」と呼ぶ。
【0063】上記可溶性粒子としては、例えば、酸または酸化剤に可溶性の樹脂粒子(以下、可溶性樹脂粒子)、酸または酸化剤に可溶性の無機粒子(以下、可溶性無機粒子)、酸または酸化剤に可溶性の金属粒子(以下、可溶性金属粒子)等が挙げられる。これらの可溶性粒子は、単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。
【0064】上記可溶性粒子の形状は特に限定されず、球状、破砕状等が挙げられる。また、上記可溶性粒子の形状は、一様な形状であることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができるからである。
【0065】上記可溶性粒子の平均粒径としては、0.1〜10μmが望ましい。この粒径の範囲であれば、2種類以上の異なる粒径のものを含有してもよい。すなわち、平均粒径が0.1〜0.5μmの可溶性粒子と平均粒径が1〜3μmの可溶性粒子とを含有する等である。これにより、より複雑な粗化面を形成することができ、導体回路との密着性にも優れる。なお、本発明において、可溶性粒子の粒径とは、可溶性粒子の一番長い部分の長さである。
【0066】上記可溶性樹脂粒子としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等からなるものが挙げられ、酸あるいは酸化剤からなる溶液に浸漬した場合に、上記難溶性樹脂よりも溶解速度が速いものであれば特に限定されない。上記可溶性樹脂粒子の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等からなるものが挙げられ、これらの樹脂の一種からなるものであってもよいし、2種以上の樹脂の混合物からなるものであってもよい。
【0067】また、上記可溶性樹脂粒子としては、ゴムからなる樹脂粒子を用いることもできる。上記ゴムとしては、例えば、ポリブタジエンゴム、エポキシ変性、ウレタン変性、(メタ)アクリロニトリル変性等の各種変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基を含有した(メタ)アクリロニトリル・ブタジエンゴム等が挙げられる。これらのゴムを使用することにより、可溶性樹脂粒子が酸あるいは酸化剤に溶解しやすくなる。つまり、酸を用いて可溶性樹脂粒子を溶解する際には、強酸以外の酸でも溶解することができ、酸化剤を用いて可溶性樹脂粒子を溶解する際には、比較的酸化力の弱い過マンガン酸塩でも溶解することができる。また、クロム酸を用いた場合でも、低濃度で溶解することができる。そのため、酸や酸化剤が樹脂表面に残留することがなく、後述するように、粗化面形成後、塩化パラジウム等の触媒を付与する際に、触媒が付与されなたかったり、触媒が酸化されたりすることがない。
【0068】上記可溶性無機粒子としては、例えば、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、カリウム化合物、マグネシウム化合物およびケイ素化合物からなる群より選択される少なくとも一種からなる粒子等が挙げられる。
【0069】上記アルミニウム化合物としては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム等が挙げられ、上記カルシウム化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、上記カリウム化合物としては、炭酸カリウム等が挙げられ、上記マグネシウム化合物としては、マグネシア、ドロマイト、塩基性炭酸マグネシウム等が挙げられ、上記ケイ素化合物としては、シリカ、ゼオライト等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。
【0070】上記可溶性金属粒子としては、例えば、銅、ニッケル、鉄、亜鉛、鉛、金、銀、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムおよびケイ素からなる群より選択される少なくとも一種からなる粒子等が挙げられる。また、これらの可溶性金属粒子は、絶縁性を確保するために、表層が樹脂等により被覆されていてもよい。
【0071】上記可溶性粒子を、2種以上混合して用いる場合、混合する2種の可溶性粒子の組み合わせとしては、樹脂粒子と無機粒子との組み合わせが望ましい。両者とも導電性が低くいため樹脂フィルムの絶縁性を確保することができるとともに、難溶性樹脂との間で熱膨張の調整が図りやすく、樹脂フィルムからなる層間樹脂絶縁層にクラックが発生せず、層間樹脂絶縁層と導体回路との間で剥離が発生しないからである。
【0072】上記難溶性樹脂としては、層間樹脂絶縁層に酸または酸化剤を用いて粗化面を形成する際に、粗化面の形状を保持できるものであれば特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、これらの複合体等が挙げられる。また、これらの樹脂に感光性を付与した感光性樹脂であってもよい。感光性樹脂を用いることにより、層間樹脂絶縁層に露光、現像処理を用いてバイアホール用開口を形成することできる。これらのなかでは、熱硬化性樹脂を含有しているものが望ましい。それにより、めっき液あるいは種々の加熱処理によっても粗化面の形状を保持することができるからである。
【0073】上記難溶性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらには、1分子中に、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂がより望ましい。前述の粗化面を形成することができるばかりでなく、耐熱性等にも優れてるため、ヒートサイクル条件下においても、金属層に応力の集中が発生せず、金属層の剥離などが起きにくいからである。
【0074】上記エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
【0075】本発明で用いる樹脂フィルムにおいて、上記可溶性粒子は、上記難溶性樹脂中にほぼ均一に分散されていることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができ、樹脂フィルムにバイアホールやスルーホールを形成しても、その上に形成する導体回路の金属層の密着性を確保することができるからである。また、粗化面を形成する表層部だけに可溶性粒子を含有する樹脂フィルムを用いてもよい。それによって、樹脂フィルムの表層部以外は酸または酸化剤にさらされることがないため、層間樹脂絶縁層を介した導体回路間の絶縁性が確実に保たれる。
【0076】上記樹脂フィルムにおいて、難溶性樹脂中に分散している可溶性粒子の配合量は、樹脂フィルムに対して、3〜40重量%が望ましい。可溶性粒子の配合量が3重量%未満では、所望の凹凸を有する粗化面を形成することができない場合があり、40重量%を超えると、酸または酸化剤を用いて可溶性粒子を溶解した際に、樹脂フィルムの深部まで溶解してしまい、樹脂フィルムからなる層間樹脂絶縁層を介した導体回路間の絶縁性を維持できず、短絡の原因となる場合がある。
【0077】上記樹脂フィルムは、上記可溶性粒子、上記難溶性樹脂以外に、硬化剤、その他の成分等を含有していることが望ましい。上記硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、これらの硬化剤のエポキシアダクトやこれらの硬化剤をマイクロカプセル化したもの、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物等が挙げられる。
【0078】上記硬化剤の含有量は、樹脂フィルムに対して0.05〜10重量%であることが望ましい。0.05重量%未満では、樹脂フィルムの硬化が不十分であるため、酸や酸化剤が樹脂フィルムに侵入する度合いが大きくなり、樹脂フィルムの絶縁性が損なわれることがある。一方、10重量%を超えると、過剰な硬化剤成分が樹脂の組成を変性させることがあり、信頼性の低下を招いたりしてしまうことがある。
【0079】上記その他の成分としては、例えば、粗化面の形成に影響しない無機化合物あるいは樹脂等のフィラーが挙げられる。上記無機化合物としては、例えば、シリカ、アルミナ、ドロマイト等が挙げられ、上記樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、メラニン樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。これらのフィラーを含有させることによって、熱膨脹係数の整合や耐熱性、耐薬品性の向上などを図りプリント配線板の性能を向上させることができる。
【0080】また、上記樹脂フィルムは、溶剤を含有していてもよい。上記溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートやトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0081】引き続き、本発明の第1実施形態の第1改変例に係るプリント配線板について、図9を参照して説明する。第1改変例のプリント配線板は、上述した第1実施形態とほぼ同様である。但し、この第1改変例のプリント配線板では、導電性ピン84が配設され、該導電性ピン84を介してドータボードとの接続を取るように形成されている。また、図1(A)を参照して上述した実施形態では、片面に金属膜41を積層した樹脂フィルム40αいたが、この第1改変例では、両面に金属膜を積層した樹脂フィルムを用いてICチップ90側の層間樹脂絶縁層60を製造してある。即ち、上面の金属膜をパターンエッチングして回路パターン42を形成してある。更に、該回路パターン42の開口42aをコンフォマルマスクとして用い、レーザにより非貫通孔43を穿設しバイアホール46を形成してある。
【0082】また、上述した第1実施形態では、コア基板30に収容されるチップコンデンサ20のみを備えていたが、第1改変例では、表面及び裏面に大容量のチップコンデンサ86が実装されている。
【0083】ICチップは、瞬時的に大電力を消費して複雑な演算処理を行う。ここで、ICチップ側に大電力を供給するために、本実施形態では、プリント配線板に電源用のチップコンデンサ20及びチップコンデンサ86を備えてある。このチップコンデンサによる効果について、図13を参照して説明する。
【0084】図13は、縦軸にICチップへ供給される電圧を、横軸に時間を取ってある。ここで、二点鎖線Cは、電源用コンデンサを備えないプリント配線板の電圧変動を示している。電源用コンデンサを備えない場合には、大きく電圧が減衰する。破線Aは、表面にチップコンデンサを実装したプリント配線板の電圧変動を示している。上記二点鎖線Cと比較して電圧は大きく落ち込まないが、ループ長さが長くなるので、律速の電源供給が十分に行えていない。即ち、電力の供給開始時に電圧が降下している。また、二点鎖線Bは、図7を参照して上述したチップコンデンサを内蔵するプリント配線板の電圧降下を示している。ループ長さは短縮できているが、コア基板30に容量の大きなチップコンデンサを収容することができないため、電圧が変動している。ここで、実線Eは、図9を参照して上述したコア基板内のチップコンデンサ20を、また表面に大容量のチップコンデンサ86を実装する第1改変例のプリント配線板の電圧変動を示している。ICチップの近傍にチップコンデンサ20を、また、大容量(及び相対的に大きなインダクタンス)のチップコンデンサ86を備えることで、電圧変動を最小に押さえている。
【0085】引き続き、本発明の第1実施形態の第2改変例に係るプリント配線板について、図10を参照して説明する。第2改変例のプリント配線板は、上述した第1実施形態とほぼ同様である。但し、この第2改変例のプリント配線板では、チップコンデンサ20の第1電極21と第2電極22とが、ICチップ90の電源用パッド92P1、92P2とバンプ76を介して直接接続されている。この第2改変例では、ICチップとチップコンデンサとの距離を更に短縮させることができる。
【0086】次に、本発明の第1実施形態の第3改変例に係るプリント配線板について、図11を参照して説明する。第3改変例のプリント配線板は、上述した第1実施形態とほぼ同様である。但し、この第3改変例のプリント配線板では、収容層31と接続層40との間に設けられた回路パターン42により、コンデンサ20の第1電極21及び第2電極22とスルーホール36とが直接接続されている。この第3改変例では、コンデンサ20の第1電極21及び第2電極22と、ドータボードとの配線長を短縮させることができる。
【0087】引き続き、本発明の第2実施形態に係るプリント配線板の構成について図14を参照して説明する。この第2実施形態のプリント配線板の構成は、上述した第1実施形態とほぼ同様である。但し、コア基板30への収容されるチップコンデンサ20が異なる。図14は、チップコンデンサの平面図を示している。図14(A)は、多数個取り用の裁断前のチップコンデンサを示し、図中で一点鎖線は、裁断線を示している。上述した第1実施形態のプリント配線板では、図14(B)に平面図を示すようにチップコンデンサの側縁に第1電極21及び第2電極22を配設してある。図14(C)は、第2実施形態の多数個取り用の裁断前のチップコンデンサを示し、図中で一点鎖線は、裁断線を示している。第2実施形態のプリント配線板では、図14(D)に平面図を示すようにチップコンデンサの側縁の内側に第1電極21及び第2電極22を配設してある。
【0088】この第2実施形態のプリント配線板では、外縁の内側に電極の形成されたチップコンデンサ20を用いるため、容量の大きなチップコンデンサを用いることができる。
【0089】引き続き、第2実施形態の第1改変例に係るプリント配線板図15を参照して説明する。図15は、第1改変例に係るプリント配線板のコア基板に収容されるチップコンデンサ20の平面図を示している。上述した第1実施形態では、複数個の小容量のチップコンデンサをコア基板に収容したが、第1改変例では、大容量の大判のチップコンデンサ20をコア基板に収容してある。ここで、チップコンデンサ20は、第1電極21と第2電極22と、誘電体23と、第1電極21へ接続された第1導電膜24と、第2電極22側に接続された第2導電膜25と、第1導電膜24及び第2導電膜25へ接続されていないチップコンデンサの上下面の接続用の電極27とから成る。この電極27を介してICチップ側とドータボード側とが接続されている。
【0090】この第1改変例のプリント配線板では、大判のチップコンデンサ20を用いるため、容量の大きなチップコンデンサを用いることができる。また、大判のチップコンデンサ20を用いるため、ヒートサイクルを繰り返してもプリント配線板に反りが発生することがない。
【0091】図16を参照して第2改変例に係るプリント配線板について説明する。図16(A)は、多数個取り用の裁断前のチップコンデンサを示し、図中で一点鎖線は、通常の裁断線を示し、図16(B)は、チップコンデンサの平面図を示している。図16(B)に示すように、この第2改変例では、多数個取り用のチップコンデンサを複数個(図中の例では3枚)連結させて大判で用いている。
【0092】この第2改変例では、大判のチップコンデンサ20を用いるため、容量の大きなチップコンデンサを用いることができる。また、大判のチップコンデンサ20を用いるため、ヒートサイクルを繰り返してもプリント配線板に反りが発生することがない。
【0093】上述した第2実施形態では、チップコンデンサをプリント配線板に内蔵させたが、チップコンデンサの代わりに、セラミック板に導電体膜を設けてなる板状のコンデンサを用いることも可能である。
【0094】ここで、第1実施形態のプリント配線板について、コア基板内に埋め込んだチップコンデンサ20のインダクタンスと、プリント配線板の裏面(ドータボード側の面)に実装したチップコンデンサのインダクタンスとを測定した値を示す。
コンデンサ単体の場合埋め込み形 137pH裏面実装形 287pHコンデンサを8個並列に接続した場合埋め込み形 60pH裏面実装形 72pH以上のように、コンデンサを単体で用いても、容量を増大させるため並列に接続した場合にも、チップコンデンサを内蔵することでインダクタンスを低減できる。
【0095】次に、信頼性試験を行った結果について説明する。ここでは、第1実施形態のプリント配線板において、1個のチップコンデンサの静電容量の変化率を測定した。
静電容量変化率 (測定周波数100Hz) (測定周波数1kHz)
Steam 168時間: 0.3% 0.4%HAST 100時間: -0.9% -0.9%TS 1000cycles: 1.1% 1.3%
【0096】Steam試験は、蒸気に当て湿度100%に保った。また、HAST試験では、相対湿度100%、印加電圧1.3V、温度121℃で100時間放置した。TS試験では、−125℃で30分、55℃で30分放置する試験を1000回線り返した。
【0097】上記信頼性試験において、チップコンデンサを内蔵するプリント配線板においても、既存のコンデンサ表面実装形と同等の信頼性が達成できていることが分かった。また、上述したように、TS試験において、セラミックから成るコンデンサ20と、樹脂からなるコア基板30及び接着層40との熱膨張率の違いから、内部応力が発生しても、チップコンデンサ20と接着層40との間で剥離、コア基板30及び接着層40にクラックが発生せず、長期に渡り高い信頼性を達成できることが判明した。
【0098】
【発明の効果】本願発明の構造により、インダクタンスを起因とする電気特性の低下することはない。また、コア基板とコンデンサの間に樹脂が充填されているので、コンデンサなどが起因する応力が発生しても緩和されるし、マイグレーションの発生がない。そのために、コンデンサの電極とバイアホールの接続部への剥離や溶解などの影響がない。そのために、信頼性試験を実施しても所望の性能を保つことができるのである。また、コンデンサを銅によって被覆されている場合にも、マイグレーションの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図7】第1実施形態に係るプリント配線板の断面図である。
【図8】第1実施形態に係るプリント配線板の断面図である。
【図9】第1実施形態の第1改変例に係るプリント配線板の断面図である。
【図10】第1実施形態の第2改変例に係るプリント配線板の断面図である。
【図11】第1実施形態の第3改変例に係るプリント配線板の断面図である。
【図12】チップコンデンサの断面図である。
【図13】ICチップへの供給電圧と時間との変化を示すグラフである。
【図14】(A)、(B)、(C)、(D)は、第2実施形態のプリント配線板のチップコンデンサの平面図である。
【図15】第2実施形態に係るプリント配線板のチップコンデンサの平面図である。
【図16】第2実施形態の改変例に係るプリント配線板のチップコンデンサの平面図である。
【図17】(A)及び(B)は、従来技術に係るプリント配線板のループインダクタンスの説明図である。
【符号の説明】
10 プリント配線板
20 チップコンデンサ
21 第1電極
22 第2電極
25 収容層
30 コア基板
31 収容層
31a キャビティ
34 導電性接着剤
36 スルーホール
40 接続層
42 回路パターン
43 非貫通孔
46 バイアホール
60 層間樹脂絶縁層
66 バイアホール
68 導体回路
84 導電性ピン
90 ICチップ
94 ドータボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】 コア基板に樹脂絶縁層と導体回路とを積層してなるプリント配線板であって、前記コア基板は、少なくとも1層以上である絶縁樹脂層で形成された接続層とザグリ部にコンデンサを収納した収容層とからなることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】 前記収容層は、心材に樹脂を含浸させた樹脂基板からなり、前記接続層は心材を有しない樹脂基板からなることを特徴とする請求項1のプリント配線板。
【請求項3】 前記接続層と前記コンデンサとは、導電性接着剤を介して接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント配線板。
【請求項4】 前記コア基板において、接続層と収容層の間に、前記導電性接着剤へ接続される回路が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のプリント配線板。
【請求項5】 プリント配線板の表面側に配設されるICチップと前記コンデンサの端子とは、前記接続層に設けられたバイアホールを介して接続され、プリント配線板の裏面側に配設される外部基板と前記コンデンサの端子とは、前記バイアホール及びコア基板に形成されたスルーホールを介して接続されることを特徴とする請求項2に記載のプリント配線板。
【請求項6】 前記コンデンサを複数個収容し、コンデンサ間にICチップと外部基板との接続用配線を配設したことを特徴とする請求項1〜5の内1に記載のプリント配線板。
【請求項7】 前記プリント配線板の表面にコンデンサを実装したことを特徴とする請求項1〜6の内1に記載のプリント配線板。
【請求項8】 前記表面のチップコンデンサの静電容量は、内層のチップコンデンサの静電容量以上であることを特徴とする請求項7に記載のプリント配線板。
【請求項9】 前記表面のチップコンデンサのインダクタンスは、内層のチップコンデンサのインダクタンス以上であることを特徴とする請求項7に記載のプリント配線板。
【請求項10】 前記チップコンデンサの電極に、銅を主とするめっき膜で金属膜を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載のプリント配線板。
【請求項11】 前記コア基板のザグリ部と前記チップコンデンサとの間に、コア基板よりも熱膨張率の小さい樹脂を充填したことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1に記載のプリント配線板。
【請求項12】 前記コンデンサとして、外縁の内側に電極が形成されたチップコンデンサを用いたことを特徴とする請求項1〜請求項11の内1に記載のプリント配線板。
【請求項13】 前記コンデンサとして、マトリクス状に電極を形成されたチップコンデンサを用いたことを特徴とする請求項1〜請求項12の内1に記載のプリント配線板
【請求項14】 前記コンデンサとして、多数個取り用のチップコンデンサを複数個連結させて用いたことを特徴とする請求項1〜請求項13の内1に記載のプリント配線板。
【請求項15】 少なくとも以下(a)〜(c)の工程を備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法:(a)片面あるいは両面に回路パターンを形成した樹脂板に、接着材料を介して前記回路パターンにコンデンサを接続する工程;
(b)前記樹脂板に、前記コンデンサを収容するキャビティを形成した樹脂基板を貼り付け、コア基板を形成する工程;
(c)前記樹脂板に前記コンデンサの電極へ至る開口を設けてバイアホールを形成する工程。
【請求項16】 前記(c)工程の貼り付けの際、基板の両面から圧力をかけることを特徴とする請求項15に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項17】 前記(c)工程の前後に、前記樹脂板に前記樹脂基板を貼り付けてなる前記コア基板に、通孔を穿設してスルーホールとする工程を経ることを特徴とする請求項15または13に記載のプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2002−100872(P2002−100872A)
【公開日】平成14年4月5日(2002.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−266284(P2000−266284)
【出願日】平成12年9月1日(2000.9.1)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】