説明

プリント配線板,プリント配線板とプレスフィット端子との接続体の製造方法,検査方法,機器

【課題】電気的に,スルーホールへのプレスフィット端子の挿入状態を詳細に検査できるプリント配線板,プリント配線板とプレスフィット端子との接続体の製造方法,検査方法,機器を提供すること。
【解決手段】本発明のプリント基板10は,複数の絶縁層P1〜P5と複数の回路層とを積層してなり,プレスフィット端子20が挿入されるスルーホール11が形成されているものであって,スルーホール11の壁面に設けられた壁面導体層Cと,複数の回路層の一部であるとともに,壁面導体層Cの外側に,壁面導体層Cに対して間隔を置いて設けられた配置検知用パターンA1〜A6,B1〜B6とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,スルーホールが設けられ,その中へプレスフィット端子が挿入されるプリント配線板と,プリント配線板のスルーホールにプレスフィット端子が挿入されて接続されている接続体の製造方法や検査方法,さらにはそのプリント配線板が搭載されている機器に関する。さらに詳細には,複数の絶縁層と複数の回路層とを積層してなるプリント配線板,プリント配線板とプレスフィット端子との接続体の製造方法,検査方法,機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,配線板に設けられたスルーホールにプレスフィット端子が圧入されることによって接続されるものがある。このようなものでは,圧入後に,プレスフィット端子とスルーホールとが確実に接続されているかどうかを検査する。そのために従来より,目視や画像によるもの,端子先端への接触によるもの等の種々の検査技術が提案されている。そのうち,例えば特許文献1,2には,電気的にその接続状態を検査する技術が開示されている。これらの技術によれば,目視によることなく,また,プレスフィット端子やスルーホールに触れることなく,検査を行うことができる。
【0003】
特許文献1には,スルーホールの内壁に接続する内層配線が設けられたプリント配線板を用いる検査技術が記載されている。これにより,圧入時にスルーホール内壁のめっきが破損した場合に検出できるとされている。また,特許文献2には,検査用プリント配線板をプレスフィットコネクタに接続して検査を行う技術が記載されている。検査用プリント配線板に形成された検査用パターン間の導通を検査することにより,すべての圧入不良モードを検出できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−356180号公報
【特許文献2】特開2002−237664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の技術はいずれも,導通しているかしていないかの2者択一の検査であり,各端子の圧入状態までを検出することはできない。そのため,不安定な接続状態であっても,導通してさえいれば正常と判定されてしまう。例えば,端子がスルーホールに対して傾いて挿入されているものや,端子の外径がスルーホールの内径に対して十分に大きくないため,スルーホールへの接触圧が小さいもの等である。これらでは,初期には正常な動作ができても,使用による振動等によってその不安定な箇所の状態が悪化するおそれがあった。その場合には,想定されている寿命より短い期間で接続状態が不良となるおそれがある。
【0006】
本発明は,前記した従来の検査方法が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,電気的に,スルーホールへのプレスフィット端子の挿入状態を詳細に検査できるプリント配線板,プリント配線板とプレスフィット端子との接続体の製造方法,検査方法,機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた本発明のプリント配線板は,複数の絶縁層と複数の回路層とを積層してなり,プレスフィット端子が挿入される挿入穴が形成されているプリント配線板であって,挿入穴の壁面に設けられた壁面導体層と,複数の回路層の一部であるとともに,壁面導体層の外側に,壁面導体層に対して間隔を置いて設けられた配置検知用パターンとを有するものである。
【0008】
本発明のプリント配線板によれば,挿入穴にプレスフィット端子が圧入される際に,挿入穴が押し広げられると,壁面導体層と配置検知用パターンとの距離が小さくなる。そこで,この距離に依存する電気信号値を検出することにより電気的に,スルーホールの変形の程度を判断することができる。さらに,複数の回路層に配置検知用パターンが設けられていれば,プレスフィット端子の挿入によって層方向にどこまで変形したかを,容易に把握することができる。従って,電気的に,スルーホールへのプレスフィット端子の挿入状態を詳細に検査できる。
【0009】
さらに本発明では,配置検知用パターンは,挿入穴に対して両側の位置にそれぞれ設けられていることが望ましい。
このようなものであれば,平板形状のプレスフィット端子を挿入穴に挿入する際に,その幅広側が配置検知用パターンに対向するような向きとすることができる。そして,両側の配置検知用パターンによる検出によって,端子の傾き等の端子の詳細な挿入状態を正確に把握することができる。
【0010】
さらに本発明では,配置検知用パターンは,回路層の回路部分とは別に設けられていることが望ましい。
このようなものであれば,プリント配線板の本来の機能に影響を与えることはない。
【0011】
さらに本発明は,複数の絶縁層と複数の回路層とを積層してなり,プレスフィット端子が挿入される挿入穴が形成されているプリント配線板と,その挿入穴に挿入されたプレスフィット端子と,の接続体を製造する,プリント配線板とプレスフィット端子との接続体の製造方法であって,プリント配線板として,挿入穴の壁面に設けられた壁面導体層と,複数の回路層の一部であるとともに,壁面導体層の外側に,壁面導体層に対して間隔を置いて設けられた配置検知用パターンとを有するものを準備する工程と,プレスフィット端子が挿入穴に挿入された後に,壁面導体層と配置検知用パターンとの間の距離に依存する電気信号を取得する工程と,取得された電気信号に基づいて,プレスフィット端子の挿入状態の良否を把握するとともに,不良品と判断されたものを排除する工程とを有するプリント配線板とプレスフィット端子との接続体の製造方法にも及ぶ。
【0012】
さらに本発明は,複数の絶縁層と複数の回路層とを積層してなり,プレスフィット端子が挿入される挿入穴が形成されているプリント配線板と,その挿入穴に挿入されたプレスフィット端子と,の接続状態を検査する検査方法であって,プリント配線板として,挿入穴の壁面に設けられた壁面導体層と,複数の回路層の一部であるとともに,壁面導体層の外側に,壁面導体層に対して間隔を置いて設けられた配置検知用パターンとを有するものを用い,プレスフィット端子が挿入穴に挿入された後に,壁面導体層と配置検知用パターンとの間の距離に依存する電気信号を取得する工程と,取得された電気信号に基づいて,プレスフィット端子の挿入状態の良否を把握する工程とを有する検査方法にも及ぶ。
【0013】
さらに本発明では,良否を把握する工程では,複数の回路層の配置検知用パターンのそれぞれの電気信号が,いずれも予め決めた範囲内の値である場合に良品であると判断し,いずれかでも予め決めた範囲内の値でないものがある場合に不良品であると判断することが望ましい。
【0014】
さらに本発明は,上記記載のプリント配線板を搭載する機器にも及ぶ。
なお,本発明の機器とは,車両や産業用ロボットをも含む。
【0015】
さらに本発明では,プレスフィット端子が挿入されている挿入穴について,壁面導体層と配置検知用パターンとの間の距離に依存する電気信号を取得する電気信号取得部と,取得された電気信号に基づいて,プレスフィット端子の挿入状態の良否を把握する状態監視部とを有することが望ましい。
このようにすれば,機器に搭載された後においても,プレスフィット端子の挿入状態を監視することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプリント配線板,プリント配線板とプレスフィット端子との接続体の製造方法,検査方法,機器によれば,電気的に,スルーホールへのプレスフィット端子の挿入状態を詳細に検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本形態に係るプリント配線板の断面図である。
【図2】本形態に係るプリント配線板の平面図である。
【図3】プリント配線板にプレスフィット端子を圧入した状態の断面斜視図である。
【図4】プレスフィット端子が正常に挿入された状態のスルーホールを示す説明図である。
【図5】検査回路を示す説明図である。
【図6】変位量の良好な範囲の例を示す説明図である。
【図7】プレスフィット端子が傾いて挿入された状態のスルーホールを示す説明図である。
【図8】傾いて挿入された場合の変位量の例を示す説明図である。
【図9】検査回路を示す説明図である。
【図10】車両を示す説明図である。
【図11】産業用ロボットを示す説明図である。
【図12】別の例のプリント配線板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,プレスフィット端子が挿入されるためのスルーホールが形成されているプリント配線板に本発明を適用したものである。
【0019】
本形態のプリント配線板10は,図1にその断面図を示すように,スルーホール11が形成されている多層構成の配線板である。本形態では,5層の樹脂層(P1〜P5)と,その両外面及び層間に計6層の回路層が設けられた多層配線板を使用している。5層の樹脂層P1〜P5は,電気的にはいずれも絶縁層である。また,この図に示しているのは,プレスフィット端子20がスルーホール11に挿入される前のプリント配線板10の状態である。
【0020】
プリント配線板10の各回路層には,スルーホール11の図1中の左右それぞれの近傍に検知用パターンが形成されている。すなわち,プリント配線板10は,スルーホール11の図中左側に検知用パターンA1〜A6,図中右側に検知用パターンB1〜B6を有するものである。また,スルーホール11の壁面には,メッキ等による壁面導体層Cが形成されている。この図に示す状態では,各検知用パターンA1〜A6,B1〜B6はいずれも,壁面導体層Cから僅かに離れており,接触していない。つまり,各検知用パターンA1〜A6,B1〜B6と壁面導体層Cとは,樹脂層P1〜P5によって互いに絶縁されている。
【0021】
また,各検知用パターンA1〜A6,B1〜B6はいずれも,壁面導体層Cからほぼ等距離にある。なお,樹脂層P1〜P5は,例えばガラス繊維入りのエポキシ樹脂板やプリプレグ等を用いて製造されているが,各検知用パターンA1〜A6,B1〜B6と壁面導体層Cとの間の部分(パターン間部P0)にはガラス繊維は入っていない。また,これらの検知用パターンA1〜A6,B1〜B6は,本来の回路パターンとは別に形成されている。
【0022】
この図1のプリント配線板10を上から見ると,図2に示すようになっている。プリント配線板10の表面には,壁面導体層Cから延設された略半円形のランドC1が,図中上下の2箇所に形成されている。この図2ではある程度の幅を持たせて示しているが,壁面導体層Cは,この視点ではメッキ層厚程度の厚さを有するのみである。また,図1中で1番上の検知用パターンA1,B1が,図2中でスルーホール11の左右にそれぞれ見えている。なお,下層の検知用パターンA2〜A6はすべて検知用パターンA1と,検知用パターンB2〜B6はすべて検知用パターンB1と,いずれも平面視でほぼ同じ位置及び形状に形成されている。
【0023】
本形態のプリント配線板10は,図1に矢印で示したように,スルーホール11にプレスフィット端子20が圧入されて使用されるものである。さらに本形態では,プレスフィット端子20として,図1のような平板状のものを用いる。すなわち,図中左右方向に比較して図中奥行き方向には薄い板状のものである。そして,このようなプレスフィット端子20を,図2で破線で示す向きとなるように挿入する。すなわち,挿入されるプレスフィット端子20の幅広の側が対向する位置に,各検知用パターンA1〜A6,B1〜B6が配置されている。
【0024】
本形態では,プレスフィット端子20として,プリント配線板10のパターン間部P0の樹脂より硬いものを用いる。そのため,プレスフィット端子20がスルーホール11に圧入されると,プレスフィット端子20によって壁面導体層Cの一部が各検知用パターンA1〜A6,B1〜B6に向けて押圧される。そして,その箇所のパターン間部P0が圧縮される。その結果,図3に示すように,パターン間部P0と壁面導体層Cとがやや変形する。そして,壁面導体層Cと変形した箇所の検知用パターンとの距離が図1の状態よりもやや近づいた配置となる。また,プレスフィット端子20と壁面導体層Cとが圧接され導通する。
【0025】
各検知用パターンA1〜A6,B1〜B6と壁面導体層Cとは,間にパターン間部P0をはさんで対面している。プレスフィット端子20の挿入により,図4に示すように,壁面導体層Cがやや変形する。そのため,変形した箇所では,検知用パターンA1〜A6,B1〜B6と壁面導体層Cとの間の距離D(DA1〜DA6,DB1〜DB6)は,挿入前よりやや小さくなっている。検知用パターンA1〜A6,B1〜B6と壁面導体層Cとの間のパターン間部P0は薄い絶縁層であるので,挿入前後で壁面導体層Cとその検知用パターンA1〜A6,B1〜B6との間の静電容量が変化している。よって,静電容量に依存する何らかの電気信号値を取得すれば,各検知用パターンの箇所での距離Dについての情報が得られる。
【0026】
そこで本形態では,このようにプレスフィット端子20が圧入されたプリント配線板10に対して,図5に示すように,検査装置30を接続して検査を行う。この検査装置30により,距離Dと1対1に対応する電気信号値を取得することにより,挿入状態の検査を行う。本形態の検査装置30は,各検知用パターンA1〜A6,B1〜B6と壁面導体層Cとに接続され,その検知用パターンと壁面導体層Cとの間に交流電圧を印加したときの電流値を測定するものである。なお,検査装置としては,このようなもの以外にも,検査回路としてコイルを含むものを構成しておき,交流電圧の周波数を測定するものであってもよい。またあるいは,直流電圧を印加して,そのオンオフ時の時定数を測定することによるものでもよい。
【0027】
本形態の検査装置30は,図5に示すように,切換部31,電圧印加部32,電流検知部33,電気信号処理部34,挿入状態判定部35,結果出力部36,記憶部37を有している。切換部31は,電圧印加部32と接続する検知用パターンを順次切り替えて検査対象とする。電圧印加部32は,検査対象の検知用パターンと壁面導体層Cとの間に交流電圧を印加する。流れた電流値を電流検知部33で検知する。
【0028】
さらに,電気信号処理部34において,電流検知部33で検知された電流値に基づいて,各検知用パターンの箇所における壁面導体層Cの距離DA1〜DA6,DB1〜DB6に1対1に対応する数値を取得する。また,記憶部37には,電気信号処理部34において得られる数値の良品範囲があらかじめ記憶されている。そして,挿入状態判定部35は,電気信号処理部34において取得された数値を,その良品範囲とそれぞれ比較し,そのプレスフィット端子20の挿入状態が良好であるか否かを判定する。判定結果は,結果出力部36に出力される。また,必要に応じて,取得した電気信号値や判定結果等のデータを記憶部37に保存するようにしてもよい。
【0029】
次に,挿入状態判定部35における判定方法について説明する。スルーホール11にプレスフィット端子20が良好に圧入されると,図4に示すように,距離DA1〜DA6,DB1〜DB6は左右でほぼ均等となる。また,プレスフィット端子20の挿入側(図中下側)から,スルーホール11の中ほどまでが距離が小さくなるように変位しており,それより前方(図中上側)は変位していないので距離が大きい。例えば,図4では,壁面導体層Cは,上層3層(検知用パターンA1〜A3,B1〜B3の位置)ではすべてほぼ等距離である。そして,下層3層(検知用パターンA4〜A6,B4〜B6の位置)は,ほぼ等距離であるとともに上層より小さい距離となっている。プレスフィット端子20の挿入状態が良好である場合には,各距離Dはおよそこのようになる。
【0030】
そこで,例えば図6に示すように,各距離DA1〜DA6,DB1〜DB6の良好と判断できる範囲を設定して記憶部37に記憶させておく。各検知用パターンの箇所において検出された各変位量が,すべて,図中に2本の破線で示す位置の間の範囲内にあれば,検査装置30は,その端子の挿入状態は良好なものであると判定する。さらに,挿入したすべての端子の挿入状態が良好であると判定された場合には,そのプリント配線板10は良品であると判定され,次工程へと供給される。しかし,良好でないと判定された端子がある場合には,次工程に供給せず排除する。本形態では,このようなものについて,その不具合の理由についてさらに詳しく判断することができる。
【0031】
そのために,本形態ではさらに別のパラメータをも使用する。すなわち,各同層の位置における距離Dの左右差と左右のストローク量である。左右差d1〜d6は,同じ層のA側とB側における距離Dの差である。すなわち,dk=|DAk−DBk|(k=1〜6)である。また,ストローク量SA,SBは,図4に示すように,プレスフィット端子20の挿入側から変位している最も前方の箇所(この図の例では検知用パターンA4と検知用パターンB4)までの距離である。すなわち,距離Dが小さい範囲である。
【0032】
そして,検査装置30は,左右差d1〜d6,ストローク量SA,SBのそれぞれについても,良好と判断できる範囲を予め決めて記憶している。これらのパラメータを用いて,検査装置30は,挿入状態判定部35で挿入状態が不良であると判断されたプレスフィット端子20について,どのような挿入状態であるかを把握することができる。これにより,修正可能であるか否かを判断できるとともに,以後の工程改善のために役立てることができる。
【0033】
例えば,左右のストローク量SAとSBとの差が大きいものは,プレスフィット端子20がスルーホール11に対して斜めに圧入されたものであると判断できる。プレスフィット端子20がスルーホール11に対して斜めに挿入された場合には,例えば図7に示すようになる。この例の場合には,図8に黒丸で示すように,各位置での距離Dが得られる。そして,B側のストローク量SBは0となっている。この場合には,たとえ,とりあえず導通していても,時間の経過とともに接触状態が悪化するおそれがあるので好ましくない。
【0034】
また,左右でのストローク量の差は小さいものの,距離Dの左右差d1〜d6が大きいものは,スルーホール11とプレスフィット端子20とのセンターがずれたまま圧入されたものであると判断できる。この場合にも,たとえ,とりあえず導通していても,時間の経過とともに接触状態が悪化するおそれがあるので好ましくない。そのため,挿入状態が良好でないと判断する。
【0035】
また,部品の精度のバラツキが原因となって,挿入状態の不具合が発生する場合もある。端子の幅が小さいまたはスルーホール11の径が大きい場合には,全体に距離Dが大きいものとなる。あるいは,端子の幅が大きいまたはスルーホール11の径が小さい場合には,全体に距離Dが小さいものとなる。これらが高頻度に発生する場合には,部品精度に問題がある可能性があるので,改善することが求められる。
【0036】
また,距離Dの左右差は小さいものの,左右のストローク量SA,SBがともに過大またはともに過小ということもあり得る。これは,圧入時の挿入圧が大きすぎたり,小さすぎたりすることが原因であるかもしれない。あるいは,プレスフィット端子20が折れ曲がり,スルーホール11の入口近くのごく下層の箇所にのみ当接している場合も,ストローク量SA,SBがともに小さいことから判断できる。またあるいは,プリント基板10のパターン間部P0とプレスフィット端子20との強度のバランスがよくないことによる可能性もある。
【0037】
なお,このプリント配線板10を使用している機器に,検査装置30を搭載してもよい。例えば,図9に示すように,プリント配線板10に集積回路40を搭載し,電気信号を検知できるようにするとよい。その結果を,機器の制御装置等に搭載された検査装置30に送信し,判定することができる。そのようにすれば,機器の使用開始後にも,プレスフィット端子20の挿入状態を監視することができる。
【0038】
例えば,車両や産業用ロボット等にプリント配線板10を搭載した場合には,走行や駆動による振動によって端子の接続状態が変化することがあり得る。そこで,検査装置30によって適宜検査を行うことが好ましい。電気的な接続については,導通検査により行うことができるが,検査装置30によれば,導通はしているもののその挿入状態が不安定となった場合にも把握できる。
【0039】
そのために,検査装置30の記憶部37には,各端子の距離Dやストローク量SA,SBを記憶させておく。距離Dが以前より小さくなったり,ストローク量SA,SBが以前より大きくなった場合には,その端子の挿入状態が悪化しているおそれがある。そこで,適宜この検査を行うことにより,プレスフィット端子の挿入状態の変化を検知できる。そして,挿入状態が悪化していると判定されたら,警告表示等を行うようにしてもよい。また,機器を使用しつつ並行して検査を行うようにしてもよい。例えば,車両に,走行中における異常検知機能をもたせるようにしてもよい。このようにすれば,端子の挿入状態を確認しつつ,機器を使用することができる。
【0040】
このプリント配線板10および検査装置30は,例えば,図10に示すように,車両200に搭載して使用することができる。この車両200は,エンジン240,フロントモータ220及びリアモータ230を併用して駆動するハイブリッド自動車である。この車両200は,車体290,エンジン240,これに取り付けられたフロントモータ220,リアモータ230,ケーブル250,ECU(Electronic Control Unit)260及び電池パック100を有している。ECU260は,プリント配線板10や,検査装置30,インバータ等を内蔵しているものである。
【0041】
この例では,ECU260が状態監視部に相当する。なお,車両としては,ECUを使用している車両であれば良く,例えば,電気自動車,ハイブリッド自動車,プラグインハイブリッド自動車,ハイブリッド鉄道車両,フォークリフト,電気車椅子,電動アシスト自転車,電動スクータ等が挙げられる。
【0042】
あるいは,例えば,図11に示すように,プリント配線板10および検査装置30を産業用の台車ロボット300に搭載することもできる。この台車ロボット300は,同軸の2つの車輪302,303と,その車軸304に回転可能に支持された本体305とを有している。本体305は,頭部311,胴部312,右腕部314,左腕部315をそれぞれ有している。頭部311には,CCDカメラ等が搭載され,周囲の環境を検出できる。胴部312の上端左右位置(肩部)に各腕部314,315の基端部が取りつけられている。さらに,胴部312の内部には,各モータドライバ等を制御するための制御コンピュータ325が設けられている。制御コンピュータ325は,プリント配線板10や,検査装置30等を内蔵しているものである。
【0043】
この例では,制御コンピュータ325が状態監視部に相当する。なお,産業用ロボットとしては,制御コンピュータを内蔵しているものであれば良く,台車ロボットに限らない。例えば,直立歩行ロボット,キャタピラ移動ロボット,多輪ロボット,アームロボット等が挙げられる。
【0044】
以上詳細に説明したように本形態の接続検査方法によれば,プリント配線板10として,多層板であり,スルーホール11の壁面に壁面導体層Cが形成されているものを用いる。さらに,スルーホール11の近傍において,プリント配線板10の回路層の一部に複数の検知用パターンが形成されているものを用いる。そして,そのスルーホール11に対して,検知用パターンの形成されている側に幅広の向きを合わせて,プレスフィット端子20を挿入する。すると,プレスフィット端子20による押圧により,壁面導体層Cと検知用パターンとの間の距離Dが小さくなる。そこで,この距離Dに依存する電気信号値を検出することにより,各位置における距離Dに対応する数値を得ることができる。従って,この数値に基づいて,端子の挿入状態を把握できる。これにより,電気的に,スルーホールへのプレスフィット端子の挿入状態を詳細に検査できる。
【0045】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,プリント配線板10の層数は,これに限らない。また例えば,プレスフィット端子の先端形状も図示のものに限らない。また,上記の形態では,圧入によって配線板側のみが変形するように説明したが,配線板と端子との両方が変形するものであってもよい。
【0046】
また,スルーホール11の壁面導体層CのランドC1は,図12に示すように,検知用パターンに対向する向きにも形成されていてもよい。また例えば,上記の形態では,壁面導体層と検知用パターンとの距離Dを用いて判断するとしたが,挿入前の距離と挿入後の距離とを比較することにより,その変形量を取得するようにしてもよい。この変形量に基づいて,挿入状態の判断を行うこともできるからである。本発明は,この変形量に基づいて良否を把握するものを含む。すなわち,予め決めた範囲とは,挿入後の距離を測定する時点までに決定されていればよい。
【符号の説明】
【0047】
10 プリント配線板
11 スルーホール
20 プレスフィット端子
30 検査装置
200 車両
260 ECU
300 産業用ロボット
325 制御コンピュータ
A−1〜A−6,B−1〜B−6 検知用パターン
C 壁面導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層と複数の回路層とを積層してなり,プレスフィット端子が挿入される挿入穴が形成されているプリント配線板において,
前記挿入穴の壁面に設けられた壁面導体層と,
前記複数の回路層の一部であるとともに,前記壁面導体層の外側に,前記壁面導体層に対して間隔を置いて設けられた配置検知用パターンとを有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板において,
前記配置検知用パターンは,前記挿入穴に対して両側の位置にそれぞれ設けられていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプリント配線板において,
前記配置検知用パターンは,前記回路層の回路部分とは別に設けられていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】
複数の絶縁層と複数の回路層とを積層してなり,プレスフィット端子が挿入される挿入穴が形成されているプリント配線板と,その挿入穴に挿入されたプレスフィット端子と,の接続体を製造する,プリント配線板とプレスフィット端子との接続体の製造方法において,
プリント配線板として,
前記挿入穴の壁面に設けられた壁面導体層と,
前記複数の回路層の一部であるとともに,前記壁面導体層の外側に,前記壁面導体層に対して間隔を置いて設けられた配置検知用パターンとを有するものを準備する工程と,
プレスフィット端子が挿入穴に挿入された後に,前記壁面導体層と前記配置検知用パターンとの間の距離に依存する電気信号を取得する工程と,
取得された前記電気信号に基づいて,前記プレスフィット端子の挿入状態の良否を把握するとともに,不良品と判断されたものを排除する工程とを有することを特徴とするプリント配線板とプレスフィット端子との接続体の製造方法。
【請求項5】
複数の絶縁層と複数の回路層とを積層してなり,プレスフィット端子が挿入される挿入穴が形成されているプリント配線板と,その挿入穴に挿入されたプレスフィット端子と,の接続状態を検査する検査方法において,
プリント配線板として,
前記挿入穴の壁面に設けられた壁面導体層と,
前記複数の回路層の一部であるとともに,前記壁面導体層の外側に,前記壁面導体層に対して間隔を置いて設けられた配置検知用パターンとを有するものを用い,
プレスフィット端子が挿入穴に挿入された後に,前記壁面導体層と前記配置検知用パターンとの間の距離に依存する電気信号を取得する工程と,
取得された前記電気信号に基づいて,前記プレスフィット端子の挿入状態の良否を把握する工程とを有することを特徴とする検査方法。
【請求項6】
請求項4に記載のプリント配線板とプレスフィット端子との接続体の製造方法または請求項5に記載の検査方法において,
前記良否を把握する工程では,前記複数の回路層の前記配置検知用パターンのそれぞれの前記電気信号が,いずれも予め決めた範囲内の値である場合に良品であると判断し,いずれかでも予め決めた範囲内の値でないものがある場合に不良品であると判断することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載のプリント配線板を搭載することを特徴とする機器。
【請求項8】
請求項7に記載の機器において,
プレスフィット端子が挿入されている前記挿入穴について,前記壁面導体層と前記配置検知用パターンとの間の距離に依存する電気信号を取得する電気信号取得部と,
取得された前記電気信号に基づいて,前記プレスフィット端子の挿入状態の良否を把握する状態監視部とを有することを特徴とする機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−182899(P2010−182899A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25525(P2009−25525)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】