説明

プレキャストコンクリート桁による平版状物架構構造

【課題】現場における頂版支持部との連結固定作業が少ない工数で短時間に行われ、且つ頂版とその支持部との連結部の所要強度が現場作業に左右されることなく一定のものとすることができるプレキャストコンクリート桁による平版状物架構構造の提供。
【解決手段】互いに間隔を隔てて立設した支持構造物11間に、複数のプレキャストコンクリート桁25を平行配置に掛け渡して支持させ、そのプレキャストコンクリート桁25間を一体化させて平版状物12とし、支持構造物11の上端に、上向きに開口した多数のソケット20を、支持構造物11の水平長さ方向に並べて一体に備えるとともに、各プレキャストコンクリート桁25の両端下面にソケット20内にその内面との間に間隙を設けて挿入可能な下向きのソケット挿入用凸部25aを一体に備え、そのソケット挿入用凸部25aを支持構造物部11上の各ソケット20に挿入し、ソケット20とソケット挿入用凸部25a間の間隙に充填材36を充填して互いに一体化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として道路や鉄道のため地盤内を横切る道路や河川等の通路を構築するためのアンダーパスや橋梁床版その他の平版状物を、アンダーパスの土留側壁、橋梁の橋脚・橋台、或いは家屋における等の支持構造物間に複数のプレキャストコンクリート桁を掛け渡して構成させたプレキャストコンクリート桁による平版状物架構構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁の床版等のような平版状物を架設する方法として、プレキャストコンクリート桁を幅方向に並べて各両端を橋脚や橋台上に架設し、各プレキャストコンクリート桁間に目地コンクリートを打設するとともに、幅方向に跨らせて挿通した鋼棒等の連結材にて各桁間を幅方向に一体化させることにより平版状の床版を架設する方法が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、主として道路や鉄道のため地盤内を横切る道路や河川等の通路を構築するためのアンダーパスとしては、所謂ボックスカルバートがある。これには工場生産による角筒型をした一体型コンクリートブロック又はこれを複数分割した形状の分割型コンクリートブロックを現場に搬入し、地盤を横切る配置に埋設するものもあるが、ブロックによる構築にはその大きさに限界があり、頂版幅が一定以上となる場合には、場所打ちコンクリートによって土留め壁、頂版、底版を形成せざるを得ないものであり、その本体工の構築に先立って、ボックスカルバートの躯体より大きい作業空間を形成するために仮設土留めを行う必要があり、工期が長くなるという問題がある。
【0004】
この問題を解決するものとして、一対の側壁を構築し、その側壁の上端に頂版を掛け渡した構造のものが知られている。上記側壁は、場所打ちコンクリートによって構築する方法の他、コンクリート杭を多数並べて立設することによって構築する方法がある。また頂版は、場所打ちコンクリートによって構築するものの他、多数のプレキャストコンクリート桁を並べて架設し、その桁間の隙間に間詰めコンクリートを打設すると桁幅方向に貫通させたPC緊張材の緊張によってプレキャストコンクリート桁間を一体化する方法がある。
【0005】
この種の従来のアンダーパスの頂版等の平版状物の架設は、図12に示すように、上述した各種方法によって構築された側壁などの支持構造物1,1の上端に、段状に頂版支承部2,2を形成し、その支承部2,2上に頂版3の両端を載せ、その頂版3の両端部と支承部2,2とをボルト等の締結具によって一体化させている(例えば特許文献2)。
【0006】
また、
【特許文献1】特開2005−281969号公報
【特許文献2】特許第3896351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の平版状物架構構造は、土留側壁等の支持構造物の上端に、現場にて頂版支持部を段状配置に形成し、その頂版支持部に支持させて場所打ちコンクリートにより頂版を形成しているため、工期が長くなり、また現場によるコンクリート成型によるものであるため、活荷重が絶えず作用している頂版コンクリートを高強度・高品質のものとすることが困難であるという問題がある。また、アンダーパスの場合には、工期が長くなると交通規制の期間も長くなるという問題がある。
【0008】
また、このような問題を解決する方法として、前記特許文献1にあるようなプレキャストコンクリート桁を工場にて製造し、現場に搬入して架設する方法が考えられ、支持部間のスパンが大きい場合にはプレストレストコンクリート(以下PCと記す)桁の使用が考えられるが、プレキャストコンクリート桁を使用する場合においても、支持部のメンテナンスを軽減し、背面土の地下水を遮断できる剛構造とするために、鉄筋継手、PC鋼材の緊張定着・グラウト作業、モルタルの充填、コンクリート打設等多くの現場作業が必要となるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、アンダーパスの頂版、橋梁や建築物の床版等の平版状物として、工場にて高品質に製造できるプレキャストコンクリート製品を使用し、しかも現場における支持構造物との連結固定作業が少ない工数で短時間に行われ、且つ支持構造物と平版状物との連結部が、現場作業の優劣に左右されることなく所要強度の剛結合構造とすることができるプレキャストコンクリート桁による平版状物架構構造の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載する発明の特徴は、互いに間隔を隔てて立設した支持構造物間に、複数のプレキャストコンクリート桁を平行配置に掛け渡して支持させ、該プレキャストコンクリート桁間を一体化させて平版状物とするプレキャストコンクリート桁による平版状物架構構造において、前記支持構造物の上端に、上向きに開口した多数のソケットを、該支持構造物の水平長さ方向に並べて一体に備えるとともに、前記各プレキャストコンクリート桁の両端下面に前記ソケット内にその内面との間に間隙を設けて挿入可能な下向きのソケット挿入用凸部を一体に備え、該ソケット挿入用凸部を前記支持構造物部上の各ソケットに挿入し、該ソケットとソケット挿入用凸部間の間隙に充填材を充填して互いに一体化させたことにある。
【0011】
請求項2に記載する発明の特徴は、前記請求項1の構成に加え、前記平版状物が、アンダーパスを構成する頂版であり、前記支持構造物が、該アンダーパスを構成する土留側壁であることにある。
【0012】
請求項3に記載する発明の特徴は、前記請求項1の構成に加え、前記平版状物が、橋梁の床版であり、前記支持構造物か、前記床版を支持する橋脚又は橋台であることにある。
【0013】
請求項4に記載する発明の特徴は、前記請求項1〜3のいずれかに請求項の構成に加え、前記支持構造物は、地中に多数並べて打設したプレキャストコンクリート杭であり、各杭の上端にそれぞれ前記ソケットを一体に備えていることにある。
【0014】
請求項5に記載する発明の特徴は請求項4の構成に加え、前記ソケットは、前記プレキャストコンクリート杭の上端に設置した鋼製の筒状部材であることにある。
【0015】
請求項6に記載する発明の特徴は、請求項4又は3のいずれか1の請求項の構成に加え、前記プレキャストコンクリート杭は、断面がH型のプレキャストコンクリート杭であることにある。
【0016】
請求項7に記載する発明の特徴は、請求項6の請求項の構成に加え、断面H型のプレキャストコンクリート杭の上端部のウエブ部分を前記ソケットの深さ分だけ除去し、該ウエブ部除去部分の前後のフランジ部縁部間に鋼製の側面板を固定することによって、前記前後のフランジ部と両側面板に囲まれたソケットを杭上端に一体に備えたことにある。
【0017】
請求項8に記載する発明の特徴は、請求項6の請求項の構成に加え、断面H型のプレキャストコンクリート杭の上端部のウエブ部分と、一方のフランジ部とを前記ソケットの深さ分だけ除去し、他方のフランジ部の両縁部に断面がコ字状の鋼製金具の両縁を一体化させ、前記ウエブ部及び一方のフランジ部除去部分に他方のフランジ部と前記コ字状の鋼製金具に囲まれたソケットを杭上端に一体に備えたことにある。
【0018】
請求項9に記載する発明の特徴は、請求項6の請求項の構成に加え、断面がH型のプレキャストコンクリート杭の上端部の両フランジ部外面に鋼製のソケット前面側板及びソケット背面側板を設置し、互いに隣り合う前記プレキャストコンクリート杭の前記ソケット前面板間及びソケット背面板間を一体に連結させるとともに、該前面板と背面板との間を、仕切り用連結材にて連結することにより複数のソケットを形成したことにある。
【0019】
請求項10に記載する発明の特徴は、請求項1〜9のいずれか1の請求項の構成に加え、前記プレキャストコンクリート桁間を一体化させる締結具として、該各プレキャストコンクリート桁に跨らせて幅方向に挿通したPC緊張材を使用し、前記平版状物全体に幅方向のプレストレスを導入していることにある。
【発明の効果】
【0020】
上述の如き構成の本発明は、以下の如き効果がある。
【0021】
平版状部を、多数のプレキャストコンクリート桁を平行に並べ、各桁間の隙間に目地材を充填した状態でその各桁間を幅方向の締結具により平版状に一体化させて構成していることにより、各プレキャストコンクリート桁は、工場にて一定品質に製造することができることとなり、活荷重の影響の大きい頂版を高強度・高品質なものとすることが容易となる。
【0022】
支持構造物の上端に、上向きに開口した多数のソケットを一体に備えるとともに、頂版を構成させる各プレキャストコンクリート桁の両端下面に前記ソケット内にその内面との間に間隙を設けて挿入可能な下向きのソケット挿入用凸部を一体に備え、該ソケット挿入用凸部を前記支持構造物部上の各ソケットに挿入し、該ソケットとソケット挿入用凸部間の間隙に充填材を充填して互いに一体化させたことにより、プレキャストコンクリート桁の架設作業は、予め形成されている支持構造物のソケットにプレキャストコンクリート桁のソケット挿入用凸部を嵌め合せ、両者の隙間に無収縮性モルタル等からなる充填材を充填するだけで完了するため、現場での作業が熟練を要しない単純作業となるとともに作業工数が少なく、工期を短縮できる。
【0023】
支持構造物のソケットにプレキャストコンクリート桁のソケット挿入用凸部の製造誤差があっても、その誤差を想定して、両者の嵌合部分の隙間を設定しておくことにより問題なく両者間を固定することができる。
【0024】
前記支持構造物を、地中に多数並べて打設したプレキャストコンクリート杭をもって構成し、各プレキャストコンクリート杭の上端にそれぞれ前記ソケットを一体に備えるようにすることにより、プレキャストコンクリート杭の製造時にソケットを形成しておくことができ、現場における作業が少なくなると同時にソケットの品質を安定化することができる。
【0025】
前記ソケットを、杭の上端に設置された鋼製の筒状部材としたことにより、結合部は鋼管によって外周が被覆された鋼コンクリート合成構造となって高い曲げ及びせん断応力を有する構造とできる。
【0026】
前記プレキャストコンクリート杭を、断面がH型のプレキャストコンクリート杭とすることにより、土留側壁の構築に際し、隣り合うH型のプレキャストコンクリート杭のフランジ部間に形成される空間に間詰めコンクリートを打設することが可能となり、杭間の応力の伝達性が良くなるとともに止水性に優れた構造とすることができる。
【0027】
断面H型のプレキャストコンクリート杭の上端部のウエブ部分を前記ソケットの深さ分だけ除去し、該ウエブ部除去部分の前後のフランジ部縁部間に鋼製の側面板を固定することによって、前記前後のフランジ部と両側面板に囲まれたソケットを杭上端に一体に備えることにより、ソケットを構成する部材の殆どをプレキャストコンクリート杭構成部分にて構成させることとなり、経済的であるとともに、プレキャストコンクリート杭とソケットとの一体性が高くなり、安定した強度が得られる。
【0028】
断面H型のプレキャストコンクリート杭の上端部のウエブ部分と、一方のフランジ部とを前記ソケットの深さ分だけ除去し、他方のフランジ部の両縁部に断面がコ字状の鋼製金具の両縁を一体化させ、前記ウエブ部及び一方のフランジ部除去部分に他方のフランジ部と前記コ字状の鋼製金具に囲まれたソケットを杭上端に一体に備えたことにより、ソケットを構成する部材の一部をプレキャストコンクリート杭構成部分にて構成させることとなり、経済的であるとともに、プレキャストコンクリート杭とソケットとの一体性が高くなり、安定した強度が得られる。
【0029】
断面がH型のプレキャストコンクリート杭の上端部の両フランジ部外面に鋼製のソケット前面側板及びソケット背面側板を設置し、互いに隣り合う前記プレキャストコンクリート杭の前記ソケット前面板間及びソケット背面板間を一体に連結させるとともに、該前面板と背面板との間を、仕切り用連結材にて連結することにより複数のソケットを形成することにより、H型のプレキャストコンクリート杭と、プレキャストコンクリート桁の幅が、使用できるクレーンの幅や、道路輸送上の問題によってことなる場合、プレキャストコンクリートくいを並べて構成させた支持構造物上に、プレキャストコンクリート桁の幅に対応させた幅のソケットを簡単に設置することができる。
【0030】
前記プレキャストコンクリート桁間を一体化させる締結具として、該各プレキャストコンクリート桁に跨らせて幅方向に挿通したPC緊張材を使用し、前記平版状物全体に幅方向のプレストレスを導入することにより、1のプレキャストコンクリート桁に掛かる活荷重が、他のプレキャストコンクリート桁分散されることとなり、桁1本あたりの負担を小さいものとできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に本発明の好適な実施形態を図面に基づいて具体的に説明する。
【0032】
図1本発明をアンダーパスに応用した実施例を示しており、図において符号10はアンダーパスが設けられる道路等の地盤であり、11は本発明における支持構造物であって、地盤10を横切る配置に形成した一対の土留側壁、12は、本発明における平版状物であって、両土留側壁11の頂部間に掛け渡して一体に連結した頂版、13は側壁11間に、これと一体的に形成した底版である。
【0033】
土留側壁11は、図2に示すように、断面がH型をした多数のプレキャストPC杭14,14……を幅方向に並べて土中に打設することによって構成されている。即ち、この土留側壁11は、それぞれH形断面を有するプレキャストPC杭14を、そのH型のフランジ部14b,14cを連接させて地盤10中に沈設することによって構成されている。尚、この沈設は、フランジ部14b,14c間にオーガスクリュー式の削孔機(図示せず)を挿入し、この削孔機によって排土させながら沈設することができる。
【0034】
プレキャストPC杭14の下端側は地盤底部の地中に沈設されており、底版13から上側が、アンダーパスの土留側壁を構成している。土留側壁11,11の形成は、地盤10上から各杭14,14……を土中に沈設して所定の深さの土留側壁11,11を形成し、しかる後互いに対向する杭14,14間に切り梁を仮設し、両土留側壁11,11間の土砂を掘削し、所望のアンダーパス空間15を形成する。
【0035】
アンダーパス空間15を形成した後、底版13を場所打ちコンクリートによって形成する。底版の形成に際しては、例えば、土留側壁を構成するプレキャストPC杭14に予め設置しておいた底版連結用の鉄筋を底版13内に埋め込むことにより土留側壁と一体化させる。
【0036】
また、各土留側壁11,11において、土留側壁の所定幅毎にPC緊張材17を挿通するとともに、互いに隣り合うプレキャストPC杭14,14のフランジ部14b,14cとウエブ部14aに囲まれる空間18内に間詰めコンクリート19を打設し、前記PC緊張材17を緊張することによって杭間が埋められて互いに一体化された土留側壁となす。
【0037】
各プレキャストPC杭14は、その上端に鋼製のソケット20が予め一体に設置されている。このソケット20は、図3に示すように、角筒状に形成され、その下端側の略半分がプレキャストPC杭14の上端外に嵌め込まれ、残りの上端側部分が杭14の上端延長方向に突出している。
【0038】
このようにしてプレキャストPC杭14を並べて沈設することによって土留側壁11,11を形成することにより、図6に示すように各土留側壁11,11の上端に、杭14の数だけのソケット20が土留側水平長さ方向に並べて設置させる。
【0039】
頂版12は、図4〜図8に示すように多数のプレキャストPC桁25をアンダーパスの軸方向に並べ、それぞれの両端を土留側壁11,11上端間に掛け渡し、互いに隣り合うプレキャストPC桁25,25間の隙間に後述する間詰め材及び目地材であるモルタル33を介在させて平版状に形成されている。また該プレキャストPC桁25,25……の幅方向に跨らせて後述するPC緊張材35,35……が挿通され、これを緊張して平版状の頂版全体に、プレキャストPC桁25の幅方向、即ちアンダーパスのトンネル軸方向に向けたプレストレスを導入することにより全体が一体化されている。
【0040】
尚、図4〜図6は、間詰め材及び目地材であるモルタル33を充填する前の状態を示しており、図7、図8は同充填後の状態を示している。
【0041】
各プレキャストPC桁25は、工場にて形成されたものを使用し、その長さ方向には予めプレストレスが導入されている。このプレキャストPC桁25の両端下面には、それぞれ前述したソケット20内に間隙を持たせて嵌まり合う大きさのソケット嵌合用凸部25a,25aが一体成型されているとともに、プレキャストPC桁25の両側面には、互いに対称な位置に、上縁から下縁近くにまで達する間詰め材充填用凹部30が一定間隔毎に形成されており、上縁には両端に亘って浅い目地用凹部31が形成されている。更に、各プレキャストPC桁25には、両側面の前記間詰め材充填用凹部30,30に連通開口させたPC緊張材挿通孔32が形成されている。
【0042】
頂版12の構築は、施工現場へプレキャストPC桁25を搬入し、先に構築した土留側壁11,11の上端のソケット20,20にプレキャストPC桁25の両端のソケット嵌合凸部25a,25aを挿入することにより、幅方向に隣り合わせた多数のプレキャストPC桁25,25……を架設する。
【0043】
しかる後、各プレキャストPC桁25,25間にて互いに向かい合う間詰め材充填用凹部30,30によって構成される間詰め部空間に、隣り合うプレキャストPC桁25,25間において互いに向かい合うPC緊張材挿通孔32,32に跨らせてシース(図示せず)を設置して該間詰め分空間内に充填材であるモルタル33を充填する。これと同時に目地用凹部31,31によって構成される目地溝内に目地材であるモルタル33を充填する。
【0044】
このようにして多数のプレキャストPC桁25を並べて架設して平版状となした後、水平方向に属したPC緊張材挿通孔32,32……にPC緊張材35を挿通し、これを緊張して頂版12全体に桁幅方向のプレストレスを付与することにより、各プレキャストPC桁25を力学的に一体化させた頂版12となす。次いで、ソケット20の内面と凸部25aの外周面との間隙に無収縮モルタルからなる充填材36を充填する。
【0045】
上述の実施例では、断面H型のプレキャストPC杭14の上端に筒状をした構成の金具を一体に突設することによってソケット20を構成させているが、この他、図11(a)〜(c)に示すように、断面H型のプレキャストPC杭14の上端部のウエブ部14a部分を、ソケットの深さ分だけ除去し、そのウエブ部除去部分の前後のフランジ部14b,14cの縁部間に鋼製の側面板50,50を固定することによって、前後のフランジ部14b,14cと両側面板50,50に囲まれたソケット51を杭上端に一体に備えることができる。
【0046】
このように構成することによりソケットを構成する部材の殆どをプレキャストPC杭構成部分にて構成させることとなり、経済的であるとともに、プレキャストPC杭とソケットとの一体性が高くなり、安定した強度が得られる。
【0047】
またこの他、図12(a)〜(c)に示すように、断面H型のプレキャストPC杭14の上端部のウエブ部14a部分と、一方のフランジ部14b部分とをソケットの深さ分だけ除去し、他方のフランジ部14cの両縁部に断面がコ字状の鋼製金具52の両縁を一体化させ、前記ウエブ部及び一方のフランジ部除去部分に他方のフランジ部14cと前記コ字状の鋼製金具52に囲まれたソケット53を杭上端に一体に備えることができる。
【0048】
このように構成することにより、ソケットを構成する部材の一部をプレキャストPC杭構成部分にて構成させることとなり、経済的であるとともに、プレキャストPC杭とソケットとの一体性が高くなり、安定した強度が得られる。
【0049】
更に、図13(a)〜(c)に示すように、断面がH型のプレキャストPC杭14の上端部の両フランジ部14b,14cの外面に鋼製板状をしたソケット前面側板54a及びソケット背面側板54bを設置し、その両板54a,54bの両縁間に仮止め板55,55をボルトにより仮止めしておく。
【0050】
この各プレキャストPC杭14,14……を並べて打設することによって支持構造物とした後、図14に示すように、各仮止め板55,55……を取り外し、互いに隣り合うプレキャストPC杭14,14間におけるソケット前面板54a,54a間及びソケット背面板54b,54b間を溶接またはボルト止めなどの連結手段によって連結する。
【0051】
しかる後、互いに複数枚ずつ連結されたソケット前面板54aとソケット背面板54bとの間に、複数の仕切り用連結板56,56……を一定間隔毎に溶接またはネジ止めによって連結する。このようにしてソケツト前面板54a、ソケット背面板54b及び一対の仕切り用連結板56,56によって囲まれて構成された任意数のソケット57を形成することができる。
【0052】
このようにしてソケット57を構成させることにより、H型のプレキャストPC杭14と、プレキャストPC桁25の幅が、使用できるクレーンの幅や、道路輸送上の問題によってことなる場合、プレキャストPC杭を並べて構成させた支持構造物上に、プレキャストコンクリート桁の幅に対応させた幅のソケットを簡単に設置することができる。
【0053】
尚、上述の実施例では、H型のプレキャストPC杭を使用して土留側壁を構築した場合を示しているが、H型の他、連続地中壁を構築するための各種のプレキャストコンクリート杭や鋼管杭、場所打ちコンクリート杭を用いて土留側壁を構築しても良い。
【0054】
また、土留側壁上端のソケットは上述した鋼製の筒状部材のものの他、図13、図14に示すように、土留側壁11の上端に凹部40を一体成型してソケット20としたものであっても良い。尚、前述した実施例と同一部分には同一符号を付している。
【0055】
更に、土留側壁はプレキャストコンクリート杭の他、底版と一体成型した又は底版に一体化される縦(鉛直)壁状のコンクリートブロックを設置すること、或いは場所打ちコンクリートのコンクリートによって構築されたものであっても良い。これらの場合においてその上端のソケットは、鋼管を埋設することによって設置しても良く、周壁がコンクリート製の凹部であっても良い。
【0056】
更に、本発明は、上述したアンダーパスの頂版架構構造の他、図15に示すように橋梁に実施しても良く、この例では、河川の対岸に、支持構造物である橋台(又は橋脚)45,45を構築し、その橋台(又は橋脚)45,45の上端間に平版状物である床版46を剛結合構造で架設する場合にも同様に実施することができる。この場合の橋台(又は橋脚)45は前述と同様のコンクリートPC杭を使用したもの、場所打ちコンクリートによるもの等、各種構造であっても良い。
【0057】
更に図には示してないが、本発明は適宜の建築物の壁と床との結合にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明を実施したアンダーパスの一例を示す断面図である。
【図2】同上の土留側壁を示す横断面図である。
【図3】同上の土留側壁を構成するH型プレキャストPC杭のソケット部分を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図である。
【図4】図1に示す実施例の頂版を構成するプレキャストPC桁の架設状態を示す部分縦断正面図である。
【図5】同平面図である。
【図6】図4中のA−A線断面図である。
【図7】図4におけるB−B線位置の、間詰め材及び目地材充填後の状態を示す断面図である。
【図8】図4におけるC−C線位置の、間詰め材及び目地材充填後の状態を示す断面図である。
【図9】本発明の他の実施例におけるプレキャストPC桁と土留側壁との結合部分を示す断面図である。
【図10】図9中のD−D線断面図である。
【図11】本発明におけるH型プレキャストPC杭の上端に形成するソケットの他の例を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図である。
【図12】本発明におけるH型プレキャストPC杭の上端に形成したソケットの更に他の例を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図である。
【図13】本発明におけるソケットを構成するために使用するH型プレキャストPC杭の更に他の例を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図である。
【図14】同上のH型プレキャストPC杭を使用して構成したソケットを示す平面図である。
【図15】本発明を橋梁の床版架構構造に実施した例を示す断面図である。
【図16】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 地盤
11 土留側壁
12 頂版
13 底版
14 プレキャストPC杭
14a ウエブ部
14b,14c フランジ部
15 アンダーパス空間
16 底版連結用の鉄筋
17 PC緊張材
18 空間
19 間詰めコンクリート
20 ソケット
21 開口
25 プレキャストPC桁
25a ソケット嵌合用凸部
30 間詰め材充填用凹部
31 目地用凹部
32 PC緊張材挿通孔
33 モルタル
35 PC緊張材
36 充填材
40 凹部
45 橋台
46 床版
50 側面板
51 ソケット
52 鋼製金具
53 ソケット
54a ソケット前面側板
54b ソケット背面側板
55 仮止め板
56 仕切り用連結板
57 ソケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔を隔てて立設した支持構造物間に、複数のプレキャストコンクリート桁を平行配置に掛け渡して支持させ、該プレキャストコンクリート桁間を一体化させて平版状物とするプレキャストコンクリート桁による平版状物架構構造において、
前記支持構造物の上端に、上向きに開口した多数のソケットを、該支持構造物の水平長さ方向に並べて一体に備えるとともに、
前記各プレキャストコンクリート桁の両端下面に前記ソケット内にその内面との間に間隙を設けて挿入可能な下向きのソケット挿入用凸部を一体に備え、
該ソケット挿入用凸部を前記支持構造物部上の各ソケットに挿入し、該ソケットとソケット挿入用凸部間の間隙に充填材を充填して互いに一体化させたことを特徴としてなるプレキャストコンクリート桁による平版状物架構構造。
【請求項2】
前記平版状物が、アンダーパスを構成する頂版であり、前記支持構造物が、該アンダーパスを構成する土留側壁である請求項1に記載のプレキャストコンクリート桁による平版状物架構構造。
【請求項3】
前記平版状物が、橋梁の床版であり、前記支持構造物か、前記床版を支持する橋脚又は橋台である請求項1に記載のプレキャストコンクリート桁による平版状物架構構造。
【請求項4】
前記支持構造物は、地中に多数並べて打設したプレキャストコンクリート杭であり、各杭の上端にそれぞれ前記ソケットを一体に備えている請求項1〜3のいずれかの請求項に記載のプレキャストコンクリート桁による平版状物架構構造。
【請求項5】
前記ソケットは、前記プレキャストコンクリート杭の上端に設置した鋼製の筒状部材である請求項4に記載のアンダーパスにおける頂版架構構造。
【請求項6】
前記プレキャストコンクリート杭は、断面がH型のプレキャストコンクリート杭である請求項4又は3のいずれか1の請求項に記載のプレキャストコンクリート桁による平版状物架構構造。
【請求項7】
断面H型のプレキャストコンクリート杭の上端部のウエブ部分を前記ソケットの深さ分だけ除去し、該ウエブ部除去部分の前後のフランジ部縁部間に鋼製の側面板を固定することによって、前記前後のフランジ部と両側面板に囲まれたソケットを杭上端に一体に備えてなる請求項6に記載のプレキャストコンクリート桁による平版状物架構構造。
【請求項8】
断面H型のプレキャストコンクリート杭の上端部のウエブ部分と、一方のフランジ部とを前記ソケットの深さ分だけ除去し、他方のフランジ部の両縁部に断面がコ字状の鋼製金具の両縁を一体化させ、前記ウエブ部及び一方のフランジ部除去部分に他方のフランジ部と前記コ字状の鋼製金具に囲まれたソケットを杭上端に一体に備えてなる請求項6に記載のプレキャストコンクリート桁による平版状物架構構造。
【請求項9】
断面がH型のプレキャストコンクリート杭の上端部の上端部の両フランジ部外面に鋼製のソケット前面側板及びソケット背面側板を設置し、互いに隣り合う前記プレキャストコンクリート杭の前記ソケット前面板間及びソケット背面板間を一体に連結させるとともに、該前面板と背面板との間を、仕切り用連結材にて連結することにより複数のソケットを形成してなる請求項6に記載のプレキャストコンクリート桁による平版状物架構構造
【請求項10】
前記プレキャストコンクリート桁間を一体化させる締結具として、該各プレキャストコンクリート桁に跨らせて幅方向に挿通したPC緊張材を使用し、前記平版状物全体に幅方向のプレストレスを導入している請求項1〜6のいずれか1の請求項に記載のプレキャストコンクリート桁による平版状物架構構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−161932(P2009−161932A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339808(P2007−339808)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】