説明

プレート位置調整装置、分注装置、及び、バイオセンサー

【課題】 プレートのサイズに関わらず、適切なアクセス位置へプレートを保持することの可能なプレート位置調整装置、このプレート位置調整装置を備えた分注装置、及び、バイオセンサーを提供する。
【解決手段】 アナライト溶液プレート84を保持するプレート保持部材80は、アナライト溶液プレート84を載置する載置板81、第1調整部82A、第1付勢部82B、第2調整部83A、第2付勢部83B、及び、表示プレート高さ決め凸部80Hを備えている。第1調整部82Aは、第1受部82U、第1ねじ部82N、及び、第1固定部82Kを含んで構成され、第1ねじ部82Bをねじ溝に沿って回転させることにより、第1受部82UがY方向へ移動する。第1付勢部82Bはアナライト溶液プレート84に当接して、アナライト溶液プレート84を第1調整部82Aへ向かって付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペットによりアクセスされるプレートの位置を調整するプレート位置調整装置、このプレート位置調整装置を備えた分注装置、及び、バイオセンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンパク質やDNAなどの生化学物質間における相互作用の測定や、薬品のスクリーニングなどを行うための試料の供給を行う装置として、自動分注装置が知られている。自動分注装置では、通常、マトリクス状に多数の凹部が形成されたプレートがセットされ、ピペットにより凹部内の試料が吸入され、他の位置へ当該ピペットが移動して吸入した試料が吐出されて、分注操作が行われる(特許文献1参照)。
【0003】
この分注操作では、ピペットをプレートの凹部へアクセスさせるため、プレートの凹部がピペットのアクセス位置と一致するように、プレートを配置する必要がある。
【0004】
通常、この種のプレートの凹部、凹部間の間隔は同一サイズとされている。しかしながら、凹部の形成されている部分と外周端部との距離には、種々のサイズのものがあり、プレートの種類に応じて保持位置の異なる複数種類の保持部材を用意する必要があった。
【特許文献1】特開平11−223636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、プレートのサイズに関わらず、適切なアクセス位置へプレートを保持することの可能なプレート位置調整装置、このプレート位置調整装置を備えた分注装置、及び、バイオセンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様のプレート位置調整装置は、ピペットによりアクセスされるアクセス位置との関係が予め定められ、前記ピペットによりアクセスされる被アクセス部を有するプレートを保持する保持部材と、前記アクセス位置を示すと共に、前記保持部材に対する前記被アクセス部の配置位置を示す配置位置表示部材と、 前記保持部材に設けられ、前記配置位置へ前記被アクセス部が配置されるように、前記プレートの前記保持部材での保持位置を移動させて調整する調整手段と、を備えている。
【0007】
上記プレート位置調整装置の保持部材は、ピペットによりアクセスされるアクセス位置との関係が予め定められている。この保持部材に、ピペットからのアクセスを受ける被アクセス部を有したプレートが保持される。配置位置表示部材は、ピペットのアクセス位置を示すと共に、保持部材に対する被アクセス部の配置位置を示す。すなわち、示された配置位置に被アクセス部が配置されると、被アクセス部にピペットが正しくアクセスされることになる。そこで、本発明では、調整手段で前記配置位置へ被アクセス部が配置されるように、プレートの保持部材での保持位置を移動させて調整する。ここでの調整は、プレートと保持部材との相対位置を移動させることにより行われる。
【0008】
上記構成によれば、調整手段でプレートの配置位置が調整することにより、プレートのサイズに関わらず、適切なアクセス位置へプレートを保持することができる。
【0009】
なお、第1の態様のプレート位置調整装置の調整手段は、前記プレートの第1側面に当接すると共に前記第1側面と直交する方向に移動して前記第1側面の位置を移動させる第1調整部材と、前記プレートを前記第1調整部材に向かって付勢する第1付勢部材と、前記第1側面と平行でない第2側面に当接すると共に前記第2側面と直交する方向に移動して前記第2側面の位置を移動させる第2調整部材と、前記プレートを前記第2調整部材に向かって付勢する第2付勢部材と、を含んで構成することができる。
【0010】
上記構成の調整手段では、第1調整部材がプレートの第1側面に当接して第1側面の位置を規定する。この第1調整部材は、第1側面と直交する方向に移動可能とされている。プレートは、第1付勢部材により第1調整部材に向かって付勢されるので、第1調整部材を移動させることにより第1側面の位置も移動させることができる。一方、第2調整部材もプレートの第2側面に当接して第2側面の位置を規定する。この第2調整部材は、第2側面と直交する方向に移動可能とされている。プレートは、第2付勢部材により第2調整部材に向かって付勢されるので、第2調整部材を移動させることにより第2側面の位置も移動させることができる。
【0011】
また、第1の態様のプレート位置調整装置の配置位置表示部材は、前記プレートの上側に被せられ前記被アクセス部を露出させる開口の形成された枠部材と、この枠部材の上面に表示されて前記配置位置を示す表示部、を備えていることを特徴とすることができる。
【0012】
このように、枠部材をプレート上に被せ、表示部を枠部材の上面に形成することにより、表示部と被アクセス部とが見やすくなり、位置合わせを行いやすくすることができる。
【0013】
本発明の第2の態様の分注装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプレート位置調整装置と、前記プレート位置調整装置の保持部材に保持されたプレートの被アクセス部にアクセスするピペットの取り付けられた分注ヘッドと、前記保持部材により保持された前記プレートを、搬送する搬送手段と、を含んで構成されている。
【0014】
上記構成の分注装置は、調整手段でプレートの配置位置が調整することにより、プレートのサイズに関わらず、適切なアクセス位置へプレートを保持することができるので、分注ヘッドの制御を簡単にすることができると共に、一定の形状の保持プレートを搬送手段で容易に搬送することができる。
【0015】
本発明の第3の態様のバイオセンサーは、光の全反射減衰を利用して試料の反応状態を測定するバイオセンサーであって、供給口及び排出口を有する流路と、前記流路中に露出され平坦な金属膜上にリガンドが固定されたセンサ面と、を有する測定ユニットと、前記測定ユニットの前記センサ面へ前記試料を送液する請求項4に記載の分注装置と、前記センサーチップの前記金属膜へ向かって光を出射する光学部材と、前記金属膜で反射された前記光を受光する受光部材と、を含んで構成されている。
【0016】
上記構成のバイオセンサーによれば、調整手段でプレートの配置位置が調整することにより、プレートのサイズに関わらず、適切なアクセス位置へプレートを保持することができるので、分注ヘッドの制御を簡単にすることができると共に、一定の形状の保持プレートを搬送手段で容易に搬送することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記構成としたので、プレートのサイズに関わらず、適切なアクセス位置へプレートを保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0019】
本発明のバイオセンサー10は、金属膜の表面に発生する表面プラズモン共鳴を利用して、リガンドDとアナライトAとの相互作用を測定する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。
【0020】
図1に示すように、バイオセンサー10は、トレイ保持部12、搬送部14、容器載置台16、液体吸排部20、光学測定部54、搬送アーム70、及び、制御部60を備えている。
【0021】
トレイ保持部12は、載置台12A、及び、ベルト12Bを含んで構成されている。載置台12Aは、矢印Y方向に架け渡されたベルト12Bに取り付けられており、ベルト12Bの回転により矢印Y方向に移動可能とされている。載置台12A上には、トレイTが載置される。トレイTには、センサースティック40が収納されている。センサースティック40は、リガンドDの固定されるチップであり、詳細については後述する。載置台12Aの下には、センサースティック40を後述するスティック保持部材14Cの位置まで押し上げる、押上機構12Dが配置されている。
【0022】
センサースティック40は、図2及び図3に示すように、誘電体ブロック42、流路部材44、保持部材46、接着部材48、及び、蒸発防止部材49、で構成されている。
【0023】
誘電体ブロック42は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部42A、及び、プリズム部42Aの両端部にプリズム部42Aと一体的に形成された被保持部42Bを備えている。プリズム部42Aの互いに平行な2面の内の広い側の上面には、図4にも示すように金属膜50が形成されている。この金属膜50上に、バイオセンサー10で解析するリガンドDが固定される。誘電体ブロック42は、いわゆるプリズムとして機能し、バイオセンサー10での測定の際には、プリズム部42Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から金属膜50との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0024】
金属膜50の表面には、図4に示すように、リンカー層50Aが形成されている。リンカー層50Aは、リガンドDを金属膜50上に固定化するための層である。リンカー層50A上には、リガンドDが固定されアナライトAとリガンドDとの反応が生じる測定領域(E1)と、リガンドDが固定されず、前記測定領域E1の信号測定に際しての参照信号を得るための参照領域(E2)とが形成される。この参照領域E2は、上述したリンカー層50Aを製膜する際に形成される。形成方法としては、例えば、リンカー層50Aに対して表面処理を施して、リガンドDと結合する結合基を失活させる。これにより、リンカー層50Aの半分が測定領域E1となり、残りの半分が参照領域E2となる。このように、結合基を失活させるためには、上記、ブロッキングに用いたエタノールアミン−ヒドロクロライドを用いることができる。参照領域E2の別の構成方法としては、参照領域E2にカルボキシルメチルデキストランの代わりに、例えば、アルキルチオールを配するようにすれば、アルキル基を表面に配することが出来、アルキル基は、アミノカップリング法でリガンド結合させることは出来ないので、参照領域E2として使うことができる。
【0025】
図5にも示すように、液体流路45に露出されたリンカー層50Aの、参照領域E2以外の部分には、リガンドDが固定されている。参照領域E2にはリガンドDは固定されていない。参照領域E2、及び、参照領域E2よりも上流側に位置する測定領域E1には、各々光ビームL2、L1が入射される。参照領域E2は、リガンドDの固定された測定領域E1から得られるデータを補正するために設けられた領域である。
【0026】
プリズム部42Aの両側面には、上側の端辺に沿って保持部材52と係合される係合凸部42Cが、下側の端辺に沿ってプリズム部42Aの上面と垂直な仮想面の延長上に構成される垂直凸部42Dが、各々7箇所に形成されている。また、誘電体ブロック42の下面の長手方向に沿った中央部には、係合溝42Eが形成されている。
【0027】
流路部材44は、誘電体ブロック42よりもわずかに狭幅の直方体状とされ、図3に示すように、誘電体ブロック42の金属膜50上に6個並べて配置されている。各々の流路部材44の下面には流路溝44Aが形成されており、上面に形成された供給口45A及び排出口45Bと連通されて、金属膜50との間に、液体流路45が構成される。したがって、1本のセンサースティック40には、独立した6個の液体流路45が構成される。流路部材44の側壁には、保持部材46の内側の図示しない凹部に圧入されて保持部材46との密着性を確保するための凸部44Bが形成されている。
【0028】
なお、液体流路45には、蛋白質を含む液体が供給されることが想定されるので、流路部材44への蛋白質の固着を防止するため、流路部材44の材料としては、蛋白質に対する非特異吸着性を有しないことが好ましい。
【0029】
保持部材46は、長尺とされ、上面板46A及び2枚の側面板46Bで構成されている。側面板46Bには、誘電体ブロック42の係合凸部42Cと係合される係合孔46Cが形成されている。保持部材46は、6個の流路部材44を間に挟んで係合孔46Cと係合凸部42Cとが係合されて、誘電体ブロック42に取り付けられる。これにより、流路部材44は、誘電体ブロック42に取り付けられる。上面板46Aには、流路部材44の供給口45A及び排出口45Bと対向する位置に、流路部材44に向けて狭くなるテーパー状のピペット挿入孔46Dが形成されている。また、隣り合うピペット挿入孔46Dとピペット挿入孔46Dとの間には、位置決め用のボス46Eが形成されている。
【0030】
保持部材46の上面には、蒸発防止部材49が接着部材48を介して接着されている。接着部材48のピペット挿入孔46Dと対向する位置にはピペット挿入用の孔48Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔48Eが形成されている。また、蒸発防止部材49のピペット挿入孔46Dと対向する位置には十字状の切り込みであるスリット49Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔49Eが形成されている。ボス46Eを孔48E及び49Eに挿通させて、蒸発防止部材49を保持部材52の上面に接着することにより、蒸発防止部材49のスリット49Dと流路部材44の供給口45A及び排出口45Bとが対向するように構成される。ピペットチップCPの非挿入時には、スリット49D部分が供給口45Aを覆い、液体流路45に供給されている液体の蒸発が防止される。
【0031】
図1に示すように、バイオセンサー10の搬送部14は、上部ガイドレール14A、下部ガイドレール14B、及び、スティック保持部材14C、を含んで構成されている。上部ガイドレール14A及び下部ガイドレール14Bは、トレイ保持部12及び光学測定部54の上部で、矢印Y方向と直交する矢印X方向に水平に配置されている。上部ガイドレール14Aには、スティック保持部材14Cが取り付けられている。スティック保持部材14Cは、センサースティック40の両端部の被保持部42Bを保持可能とされていると共に、上部ガイドレール14Aに沿って移動可能とされている。スティック保持部材14Cに保持されたセンサースティック40の係合溝42Eと下部ガイドレール14Bとが係合され、スティック保持部材14Cが矢印X方向に移動することにより、センサースティック40が光学測定部54上の測定部56に搬送される。また、測定部56には、測定時にセンサースティック40を押さえる押さえ部材58が備えられている。押さえ部材58は、図示しない駆動機構によりZ方向に移動可能とされ、測定部56に配置されたセンサースティック40を上側から押圧する。
【0032】
液体吸排部20は、ヘッド24、を含んで構成されている。ヘッド24は、図示しない搬送レールに沿って矢印Y方向に移動可能とされている。また、ヘッド24は、ヘッド24内部の図示しない駆動機構により、鉛直方向(矢印Z方向)にも移動可能とされている。ヘッド24は、図6に示すように、一対のピペット部24A、24Bを備えている。ピペット部24A、24Bには、先端部にピペットチップCPが取り付けられ、個々にZ方向の長さを調整可能とされている。
【0033】
図1に示すように、搬送アーム70は、対向配置された2本の挟持部70Aを備え、挟持部70Aの間でアナライト溶液プレート84、チップストッカー18を挟持可能とされている。搬送アーム70は、図示しない駆動機構と接続されており、X、Y、Z方向に移動可能とされている。
【0034】
容器載置台16には、アナライト溶液プレート84、チップストッカー18、バッファー液ストック容器19が載置されている。バッファー液ストック容器19は、容器19A〜19Eで構成されており、各種のバッファー液がストックされている。容器19A〜19Eには、後述するピペットチップCPを挿入可能な開口Kが形成されている。
【0035】
チップストッカー18は、チップストック部18Aに複数用意されており、搬送アーム70でチップストック部18Aから取り出されて容器載置台16上の所定位置に配置される。チップストッカー18上には、交換用のピペットチップCPがストックされている。
【0036】
アナライト溶液プレート84は、図7にも示すように、長方形板状とされ、マトリクス状に区画されて複数の凹部84Aが構成されている。凹部84Aには各種のアナライト溶液がストックされている。アナライト溶液プレート84の長手方向に沿った1の側面を以下「第1側面84B」とし、アナライト溶液プレート84の短手方向に沿った1の側面を以下「第2側面84C」とする。また、最も第1側面84B側に構成されている凹部84Aのラインを「第1凹部ライン84D」とし、最も第2側面84C側に構成されている凹部84Aのラインを「第2凹部ライン84E」とする。
【0037】
アナライト溶液プレート84を保持するプレート保持部材80は、アナライト溶液プレート84を載置する長方形板状の載置板81、第1調整部82A、第1付勢部82B、第2調整部83A、第2付勢部83B、及び、表示プレート高さ決め凸部80Hを備えている。
【0038】
第1調整部82Aは、載置板81上の長尺の端辺に沿って2カ所に取り付けられており、第1受部82U、第1ねじ部82N、及び、第1固定部82Kを含んで構成されている。第1固定部82Kは、載置板81上に固定され、第1ねじ部82Nと螺合するねじ溝が構成されている。第1ねじ部82Bは、第1固定部82Kのねじ溝に螺合されており、ねじ溝に沿って回転することにより、第1側面84Bと直交するY方向へ移動可能とされている。第1受部82Uは、アナライト溶液プレート84の第1側面84Bに当接され、第1側面84Bの位置を規定する。
【0039】
第1付勢部82Bは、第1調整部82Aと対向する載置板81の他端辺部の長手方向中央部に設けられている。第1付勢部82Bはコイルばねを含んで構成されており、アナライト溶液プレート84に当接して、アナライト溶液プレート84を第1調整部82Aへ向かって付勢する。
【0040】
第2調整部83Aは、載置板81上の短尺の端辺部の中央に取り付けられており、第2受部83U、第2ねじ部83N、及び、第2固定部83Kを含んで構成されている。第2固定部83Kは、載置板81上に固定され、第2ねじ部83Nと螺合するねじ溝が構成されている。第2ねじ部83Bは、第2固定部83Kのねじ溝に螺合されており、ねじ溝に沿って回転することにより、第2側面84Bと直交するX方向へ移動可能とされている。第2受部83Uは、アナライト溶液プレート84の第2側面84Cに当接され、第2側面84Cの位置を規定する。
【0041】
第2付勢部83Bは、第2調整部83Aと対向して載置板81の他端辺部に設けられている。第2付勢部83Bもコイルばねを含んで構成されており、アナライト溶液プレート84に当接して、アナライト溶液プレート84を第2調整部83Aへ向かって付勢する。
【0042】
表示プレート高さ決め凸部80Hは、載置板81の角部4カ所に立設されており、後述する差し込み孔85Bよりも大径の下部80Dと小径の上部80Uとで構成されている。下部80Dの高さは、取り付けられる配置位置表示部材85の下面がアナライト溶液プレート84に当接する高さとされている。
【0043】
配置位置表示部材85は、長方形板状部材の中央部にアナライト溶液プレート84の凹部84A部分が露出される開口85Aが構成された枠形状とされている。配置位置表示部材85には、ピペットチップCPの最も第1調整部82A側のアクセス位置の延長部分がライン状に表示されている(以下この表示を「第1アクセスライン85C」という)。また、配置位置表示部材85には、ピペットチップCPの最も第2調整部83A側のアクセス位置の延長部分がライン状に表示されている(以下この表示を「第2アクセスライン85D」という)。また、配置位置表示部材85の4つの角部には、表示プレート高さ決め凸部80Hの上部80Uが差し込まれる差し込み孔85Bが形成されている。
【0044】
アナライト溶液プレート84は、プレート保持部材80上に保持されると共に、配置位置表示部材85が取り付けられ、位置合わせが完了した状態で(図8参照)、アナライト溶液プレートストック部17にストックされている。この状態のアナライト溶液プレート84が、搬送アーム70によりアナライト溶液プレートストック部17から取り出されて、容器載置台16上の所定位置に配置される。ここでの所定位置は、ヘッド24のピペット部24A、24Bに取り付けられたピペットチップCPのアクセス位置との関係で、予め定められている。
【0045】
なお、位置合わせ後に配置位置表示部材85を取り外した状態でアナライト溶液プレートストック部17へストックしておき、そのまま容器載置台16の所定位置へ配置してもよい。
【0046】
上記構成のプレート保持部材80へのアナライト溶液プレート84の取り付けは、以下のようにして行われる。
【0047】
まず、アナライト溶液プレート84を、載置板81上に載置し、その上から配置位置表示部材85を被せ、差し込み孔85Bに表示プレート高さ決め凸部80Hの上部80Uを差し込む(図9(A)参照)。ユーザーは、第1アクセスライン85Cと第1凹部ライン84Dとが一直線状になるように、第1ねじ部82Nを回転させて第1受部82Uを移動させる。また、第2アクセスライン85Dと第2凹部ライン84Eとが一直線状になるように、第2ねじ部83Nを回転させて第2受部83Uを移動させる(図9(B)参照)。このようにして、プレート保持部材80上でのアナライト溶液プレート84の位置決めを行うことができる。
【0048】
光学測定部54は、図10に示すように、光源54A、第1光学系54B、第2光学系54C、受光部54D、信号処理部54E、を含んで構成されている。光源54Aからは、発散状態の光ビームLが出射される。光ビームLは、第1光学系54Bを介して、2本の光ビームL1、L2となり、測定部56に配置された誘電体ブロック42の測定領域E1と参照領域E2に入射される。測定領域E1及び参照領域E2において、光ビームL1、L2は、金属膜50と誘電体ブロック42との界面に対して種々の入射角成分を含み、かつ全反射角以上の角度で入射される。光ビームL1、L2は、誘電体ブロック42と金属膜50との界面で全反射される。全反射された光ビームL1、L2も、種々の反射角成分をもって反射される。この全反射された光ビームL1、L2は、第2光学系54Cを経て受光部54Dで受光されて、各々光電変換され、光検出信号が信号処理部54Eへ出力される。信号処理部54Eでは、入力された光検出信号に基づいて所定の処理が行なわれ、測定領域E1及び参照領域E2の全反射減衰角のデータ(以下「全反射減衰角データ」という)が求められる。この全反射減衰角データが制御部60へ出力される。
【0049】
制御部60は、バイオセンサー10の全体を制御する機能を有し、図7に示すように、光源54A、信号処理部54E、及び、バイオセンサー10の図示しない駆動系と接続されている。制御部60は、図11示すように、バスBを介して互いに接続される、CPU60A、ROM60B、RAM60C、メモリ60D、及び、インターフェースI/F60E、を有し、各種の情報を表示する表示部62、各種の指示、情報を入力するための入力部64と接続されている。
【0050】
メモリ60Dには、バイオセンサー10を制御するための各種プログラムや、各種データが記録されている。
【0051】
次に、バイオセンサー10での、測定について説明する。
【0052】
バイオセンサー10の載置台12Aには、リガンドDが固定化され、液体流路45に保存液Cが充填されたセンサースティック40入りのトレイがセットされている。また、アナライト溶液プレート84には、所定のアナライト溶液がセットされている。
【0053】
まず、押上機構12Dにより、1のセンサースティック40がスティック保持部材14Cの位置まで押し上げられ、スティック保持部材14Cにより保持される。そして、スティック保持部材14Cは、センサースティック40を保持したまま下部ガイドレール14Bに沿って移動して、センサースティック40を測定部56へ搬送する。測定部56へ搬送されたセンサースティック40は、所定の測定位置に位置決めされて押さえ部材58により、上部から押圧され固定される。
【0054】
入力部64から測定開始の指示が入力されると、制御部60では、図12に示す測定処理が実行される。
【0055】
まず、ステップS12で、光源54Aへ光ビームLの出射指示信号を出力する。これにより、光源54Aから光ビームLが出射される。出射された光ビームLは、第1光学系54Bで2本の光ビームL1、L2となり、液体流路45の測定領域E1、参照領域E2へ各々入射される。また、ステップS14で、受光部54D及び信号処理部54Eへ、作動指示信号を出力する。これにより、測定領域E1、参照領域E2で全反射され第2光学系54Cを経た光ビームL1、L2は、受光部54Dで受光され、受光された光は、測定領域E1、参照領域E2毎に光電変換されて光検出信号が信号処理部54Eへ出力される。信号処理部54Eでは、光検出信号に所定の処理が加えられ、全反射減衰角データが生成され、制御部60へ出力される。
【0056】
制御部60では、ステップS16で、所定時間経過したかどうかを判断し、所定時間の経過後、ステップS18で、入力された全反射減衰角データをメモリ60Dへ記憶する。そして、ステップS20で、測定領域E1からの光検出信号により得られる全反射減衰角データを、参照領域E2からの光検出信号により得られる全反射減衰角データで補正して、リガンドDとアナライト溶液YA中のアナライトAとの結合状態を示す結合状態データを生成する。そして、ステップS22で、結合状態データを表示部62へ出力する。これにより、所定時間毎の結合状態データがメモリ60Dへ記憶されると共に、表示部62へ表示される。表示部62へは、時間毎の結合状態データがグラフ化されて出力される。この測定処理は、測定処理終了信号を受けるまで継続される。
【0057】
一方、入力部64からアナライト供給開始の指示が入力されると、制御部60では、図13に示すアナライト供給処理が実行される。
【0058】
まず、ステップS30で、アナライト溶液YAをピペットチップCPAへ吸引することにより、アナライト溶液YAを取得する。すなわち、ヘッド24をアナライト溶液YAのセットされたアナライト溶液プレート84の上部に移動させ、ピペット部24Aを下側に下降させて、ピペット部24Aに取り付けられているピペットチップCPAの先端のみをアナライト溶液YAが貯留されたセルへ挿入する。ピペットチップCPA内にアナライト溶液YAを吸引する。
【0059】
このとき、アナライト溶液プレート84は、プレート保持部材80上で正確に位置決めされているので、ピペットチップCPを正確に所定の凹部84Aへアクセスさせることができる。
【0060】
次に、ステップS31で、ヘッド24をセンサースティック40上へ移動させ、ステップS32で、ピペットチップCPAを供給口45Aへ挿入し、ピペットチップCPBを排出口45Bへ挿入する。
【0061】
ステップS33で、ピペットチップCPAからアナライト溶液YAを吐出させると共に、ピペットチップCPBへ液体流路45に充填されていたバッファー液を吸引する。これにより、液体流路45内のバッファー液がアナライト溶液YAに置換される。
【0062】
ステップS34で、所定時間が経過するまで待機する。ここでの所定時間は、アナライトAとリガンドDとの反応のために十分な時間で設定される。所定時間経過後に、本処理を終了する。
【0063】
本実施形態によれば、プレート保持部材80上でアナライト溶液プレート84の位置を調整できるので、同一のプレート保持部材80を様々なサイズのアナライト溶液プレート84に対応させて使用することができる。したがって、複数種類のプレート保持部材を用意する必要がなく、コストダウンを図ることができる。
【0064】
なお、本実施形態では、アナライト溶液プレート84上に、配置位置表示部材85を被せて位置決めを行っているが、配置位置の表示は、図14に示すように、プレート保持部材80上に直接、第1アクセスライン85C及び第2アクセスライン85Dの位置に対応するリブ80J、80Kを設け、このリブと第1凹部ライン84D、第2凹部ライン84Eとを一致させるようにして位置決めを行ってもよい。
【0065】
また、本実施形態では、バイオセンサーとして、表面プラズモンセンサーを一例として説明したが、バイオセンサーとしては、表面プラズモンセンサーに限定されるものではない。その他の例えば、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した光学的測定技術など、あらゆるバイオセンサーを用いてのアナライトの回収に本発明は適用することができる。
【0066】
また、全反射減衰を利用する他のバイオセンサーとしては、漏洩モード検出器をあげることができる。漏洩モードセンサは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を透過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において、導波モードが励起されると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。導波モードが励起される入射角は、表面プラズモン共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射光の減衰を検出することにより、前記センサ面上の反応を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施形態のバイオセンサーの全体斜視図である。
【図2】本実施形態のセンサースティックの斜視図である。
【図3】本実施形態のセンサースティックの分解斜視図である。
【図4】本実施形態のセンサースティックの1の液体流路部分の断面図である。
【図5】本実施形態のセンサースティックの測定領域及び参照領域へ光ビームが入射している状態を示す図である。
【図6】本実施形態の液体吸排部の概略構成図である。
【図7】本実施形態のプレート保持部材、アナライト溶液プレート、配置位置表示部材の関係を示す分解斜視図である。
【図8】本実施形態のプレート保持部材にアナライト溶液プレート、配置位置表示部材が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図9】(A)は位置合わせ前のアナライト溶液プレート、(B)は位置合わせ後のアナライト溶液プレートがプレート保持部材に取り付けられた状態を示す上面図である。本
【図10】本実施形態のバイオセンサーの光学測定部付近の概略図である。
【図11】本実施形態の制御部とその周辺の概略ブロック図である。
【図12】本実施形態の測定処理のフローチャートである。
【図13】本実施形態のアナライト供給処理のフローチャートである。
【図14】本実施形態のプレート保持部材の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
10 バイオセンサー
16 容器載置台
17 アナライト溶液プレートストック部
24A ピペット部
24B ピペット部
24 ヘッド
40 センサースティック
50 金属膜
54 光学測定部
54A 光源
54D 受光部
54E 信号処理部
70 搬送アーム
80 プレート保持部材
80J リブ
80K リブ
81 載置板
82A 第1調整部
82B 第1付勢部
83A 第2調整部
83B 第2付勢部
84 アナライト溶液プレート
84A 凹部
84B 第1側面
84C 第2側面
85C 第1アクセスライン
85D 第2アクセスライン
85 配置位置表示部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットによりアクセスされるアクセス位置との関係が予め定められ、前記ピペットによりアクセスされる被アクセス部を有するプレートを保持する保持部材と、
前記アクセス位置を示すと共に、前記保持部材に対する前記被アクセス部の配置位置を示す配置位置表示部材と、
前記保持部材に設けられ、前記配置位置へ前記被アクセス部が配置されるように、前記プレートの前記保持部材での保持位置を移動させて調整する調整手段と、
を備えたプレート位置調整装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記プレートの第1側面に当接すると共に前記第1側面と直交する方向に移動して前記第1側面の位置を移動させる第1調整部材と、前記プレートを前記第1調整部材に向かって付勢する第1付勢部材と、前記第1側面と平行でない第2側面に当接すると共に前記第2側面と直交する方向に移動して前記第2側面の位置を移動させる第2調整部材と、前記プレートを前記第2調整部材に向かって付勢する第2付勢部材と、を含んで構成されていること、を特徴とする請求項1に記載のプレート位置調整装置。
【請求項3】
前記配置位置表示部材は、前記プレートの上側に被せられ前記被アクセス部を露出させる開口の形成された枠部材と、この枠部材の上面に表示されて前記配置位置を示す表示部、を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプレート位置調整装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプレート位置調整装置と、
前記プレート位置調整装置の保持部材に保持されたプレートの被アクセス部にアクセスするピペットの取り付けられた分注ヘッドと、
前記保持部材により保持された前記プレートを、搬送する搬送手段と、
を備えた分注装置。
【請求項5】
光の全反射減衰を利用して試料の反応状態を測定するバイオセンサーであって、
供給口及び排出口を有する流路と、前記流路中に露出され平坦な金属膜上にリガンドが固定されたセンサ面と、を有する測定ユニットと、
前記測定ユニットの前記センサ面へ前記試料を送液する請求項4に記載の分注装置と、
前記センサーチップの前記金属膜へ向かって光を出射する光学部材と、
前記金属膜で反射された前記光を受光する受光部材と、
を備えた、バイオセンサー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2007−93443(P2007−93443A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284528(P2005−284528)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】