プロジェクタ及びその検査装置、並びにその検査方法
【課題】 プロジェクタによる投写画像を正確に取得可能なプロジェクタの検査装置、及びその検査方法を提供する。
【解決手段】 プロジェクタPJの検査装置80は、制御装置81と受光装置82とを備えており、受光装置82は、フォトダイオード等からなる複数の受光素子PDがマトリクス状に配列された受光部85を備えている。受光部85は、投写光が照射される投写領域65よりも大きな面積を有しており、受光素子PDが、この受光部85内で互いに密接するように配置されているため、受光部85に投写される投写光のほとんどを漏れなく受光可能になっている。
【解決手段】 プロジェクタPJの検査装置80は、制御装置81と受光装置82とを備えており、受光装置82は、フォトダイオード等からなる複数の受光素子PDがマトリクス状に配列された受光部85を備えている。受光部85は、投写光が照射される投写領域65よりも大きな面積を有しており、受光素子PDが、この受光部85内で互いに密接するように配置されているため、受光部85に投写される投写光のほとんどを漏れなく受光可能になっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタの製造における検査工程において、投写画像の表示異常を検出可能な検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタによって表示された画像の表示異常(色むら、輝度むらや線欠陥等)を検出するために、スクリーン等に投写された投写画像をCCDカメラ等の撮像装置によって撮像する検査装置が知られている(例えば、特許文献1)。このような検査装置では、撮像装置によって得られた画像情報を画像処理することによって、表示異常の有無を検出することが可能となっている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−168103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、撮像装置によって画像の取得を行う検査装置においては、撮像装置の入力光学系とプロジェクタの投写光学系との光軸の不一致や、撮像装置の入力光学系の収差等の影響により、投写画像が歪んで入力されてしまううえ、スクリーンの反射特性による影響を受けてしまうため、プロジェクタによる投写画像を正確に取得することは困難であった。
【0005】
さらに、取得した投写画像が正確でないことにより、検出された表示異常の位置や異常の程度を正確に認識することができず、検出結果をプロジェクタにフィードバックして、表示異常を補正することが困難であるという問題を有していた。
【0006】
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、プロジェクタによる投写画像を正確に取得可能なプロジェクタの検査装置、及びその検査方法を提供することにある。本発明の第2の目的は、取得した投写画像の情報に基づいて、検出された表示異常を補正可能なプロジェクタ、及びその検査装置、並びにその検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプロジェクタの検査装置は、複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を、前記光変調装置によって前記画素毎に変調して投写するプロジェクタの検査装置であって、複数の受光素子が互いに密接するように配置され、前記プロジェクタからの投写光を前記受光素子によって受光可能な受光装置を備えたことを特徴とする。
【0008】
このプロジェクタの検査装置によれば、プロジェクタからの投写光を、複数の受光素子を備えた受光装置で受光するため、スクリーン等に投写した画像を撮像装置等で入力する必要がなくなる。この結果、撮像装置の入力光学系の光軸のずれや収差等の影響、或いは、スクリーン等の反射特性による影響を受けることがないため、プロジェクタによる投写画像を正確に取得することが可能となる。
【0009】
このプロジェクタの検査装置において、前記受光装置は、前記画素数以上の前記受光素子を備えていることが望ましい。
【0010】
このプロジェクタの検査装置によれば、光変調装置の画素数以上の受光素子で投写光を受光可能であるため、プロジェクタによる投写画像を、一度に高い解像度で取得することが可能となる。この結果、検査時間を短縮することが可能となるとともに、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも検出することが可能となる。
【0011】
このプロジェクタの検査装置において、前記受光素子は、前記各画素に少なくとも1つの前記受光素子が対応するように前記受光装置に配置され、前記各画素から出射された光を、対応する前記受光素子によって受光するようにしてもよい。
【0012】
このプロジェクタの検査装置によれば、各画素から出射される光を、対応する1つ以上の受光素子によって個別に受光するため、各画素の出射光量を、対応する受光素子による受光量に基づいて容易に導くことが可能となる。さらに、一度にすべての画素の出射光量を知ることが可能であるため、検査時間を短縮することが可能となる。
【0013】
このプロジェクタの検査装置において、さらに、前記光変調装置に備えられた複数の画素の中から、前記各受光素子に2つ以上の画素から出射した光が照射されることがないように、光を出射する画素を選択する画素選択手段を備えることが望ましい。
【0014】
このプロジェクタの検査装置によれば、1つの受光素子に複数の画素から出射した光が照射されることがないように、光を出射する画素を選択する画素選択手段を備えているため、プロジェクタと受光装置とが、1つの受光素子で複数の画素から出射した光を受光可能な位置関係にある場合でも、画素毎の出射光量を知ることが可能となる。このため、すべての画素から光を出射するまで、画素の選択を繰り返すことによって、すべての画素の出射光量を知ることが可能となり、表示異常を画素毎に検出することが可能となる。
【0015】
このプロジェクタの検査装置において、さらに、前記各受光素子による受光量に応じて、前記各画素からの出射光量を補正可能な補正情報を生成する補正情報生成部を備えることが望ましい。
【0016】
このプロジェクタの検査装置によれば、補正情報生成部が、受光装置によって正確に取得した投写画像に基づいて補正情報を生成するため、この補正情報を検査対象のプロジェクタにフィードバックすることにより、各画素からの出射光量を適正に補正することが可能となる。この結果、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも補正することが可能となる。
【0017】
本発明のプロジェクタの検査装置は、複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を、前記光変調装置によって前記画素毎に変調して投写するプロジェクタの検査装置であって、複数の受光素子が配置され、前記プロジェクタからの投写光の一部を前記受光素子によって受光可能な受光部と、前記受光部の位置を移動させる駆動部とを備えたことを特徴とする。
【0018】
このプロジェクタの検査装置によれば、プロジェクタからの投写光を、複数の受光素子を備えた受光装置で受光するため、スクリーン等に投写した画像を撮像装置等で入力する必要がなくなる。この結果、撮像装置の入力光学系の光軸のずれや収差等の影響、或いは、スクリーン等の反射特性による影響を受けることがないため、プロジェクタによる投写画像を正確に取得することが可能となる。
【0019】
さらに、投写光の一部を受光可能な受光部が移動可能であるため、受光部を移動させることにより投写光全体を受光することが可能となる。つまり、投写光全体を一度に受光可能な数の受光素子を備える場合に比べて、必要な受光素子が少数で済むため、検査装置のコストを低減することが可能となる。
【0020】
本発明のプロジェクタの検査方法は、複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を前記光変調装置によって前記画素毎に変調するとともに、前記各画素から出射した光を投写するプロジェクタの検査方法であって、前記プロジェクタの投写光が、複数の受光素子が互いに密接するように配置された受光装置に照射されるように、前記プロジェクタを設置する第1のステップと、前記各受光素子に2つ以上の前記画素から出射した光が照射されることがないように、前記光変調装置を駆動して、前記複数の画素のうちの一部の画素から光を出射させて、投写を行う第2のステップと、前記プロジェクタからの投写光を、前記受光装置によって受光し、前記受光素子毎に受光量を検出する第3のステップと、前記受光素子毎に検出された受光量から、光を出射した各画素の出射光量を導出する第4のステップと、前記第2〜第4のステップを繰り返すとともに、光を出射させる画素を都度変更することによってすべての画素からの出射光量を導出することを特徴とする。
【0021】
このプロジェクタの検査方法によれば、1つの受光素子に複数の画素から出射した光が照射されることがないように光変調装置を駆動している。このため、プロジェクタと受光装置とが、1つの受光素子で複数の画素から出射した光を受光可能な位置関係にある場合でも、画素毎の出射光量を知ることが可能となり、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも検出することが可能となる。
【0022】
このプロジェクタの検査方法において、さらに、前記第4のステップで導出した前記各画素からの出射光量に応じて、前記画素毎に出射光量を補正可能な補正情報を生成する第5のステップを有することが望ましい。
【0023】
このプロジェクタの検査方法によれば、画素毎の出射光量に基づいて補正情報を生成するため、この補正情報を検査対象のプロジェクタにフィードバックすることにより、各画素からの出射光量を適正に補正することが可能となる。この結果、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも補正することが可能となる。
【0024】
本発明のプロジェクタは、複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を、外部から入力される画像信号に応じて前記画素毎に変調するとともに、前記各画素から出射した光を投写するプロジェクタであって、複数の受光素子を備えた検査装置に投写光を照射することにより前記検査装置によって生成され、前記画素毎の出射光量を補正可能な補正テーブルを記憶し、前記補正テーブルに従って、前記画像信号を補正可能であることを特徴とする。
【0025】
このプロジェクタは、複数の受光素子を備えた検査装置に投写光を照射することによって生成された補正テーブルを記憶し、この補正テーブルに従って画像信号を補正可能になっている。前記検査装置は、スクリーン等に投写した画像を撮像装置等により入力する検査装置とは異なり、撮像装置の入力光学系の光軸のずれや収差等の影響、或いは、スクリーン等の反射特性による影響を受けずに投写画像を取得可能であるため、プロジェクタの投写画像をより正確に取得することが可能である。つまり、このプロジェクタによれば、前記検査装置によって生成された補正テーブルに従って画像信号を補正するため、各画素からの出射光量を適正に補正することが可能となり、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも補正することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るプロジェクタについて、図面を参照して説明する。 図1は、本実施形態に係るプロジェクタの光学系の概略構成を示す構成図であり、光源から出射された光が、スクリーンに至るまでの光路を示している。
【0027】
図1に示すように、プロジェクタPJは、照明光学系10と、色光分離光学系20と、リレー光学系30と、光変調装置としての3つの液晶ライトバルブ40R,40G,40Bと、クロスダイクロイックプリズム50と、投写レンズ60とを備えている。
【0028】
照明光学系10は、光源11と、第1のレンズアレイ12と、第2のレンズアレイ13と、偏光変換素子14と、重畳レンズ15とを備えており、光源11から出射された光線束は、微小なレンズ12aがマトリクス状に配置された第1のレンズアレイ12によって多数の微小な光線束に分割される。第2のレンズアレイ13及び重畳レンズ15は、分割された光線束のそれぞれが、照明対象である3つの液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの全体を照射するように備えられている。このため、各光線束が液晶ライトバルブ40R,40G,40Bで重畳され、液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの全体がほぼ均一に照明される。
【0029】
偏光変換素子14は、光源11からの非偏光な光を液晶ライトバルブ40R,40G,40Bで効率よく利用可能とするため、特定の偏光方向を有する偏光光に揃える機能を有している。照明光学系10を出射した偏光光は、色光分離光学系20に入射する。
【0030】
色光分離光学系20は、照明光学系10から出射された光を、波長域の異なる3色の光に分離する。第1のダイクロイックミラー21は、略赤色の光を透過させるとともに、透過する光よりも短波長の光を反射する。第1のダイクロイックミラー21を透過した赤色光Rは、反射ミラー22で反射されて赤色光用の液晶ライトバルブ40Rを照明する。
【0031】
第1のダイクロイックミラー21で反射された光のうち、緑色光Gは、第2のダイクロイックミラー23によって反射されて緑色光用の液晶ライトバルブ40Gを照明する。また、青色光Bは、第2のダイクロイックミラー23を透過し、リレー光学系30を通過して、青色光用の液晶ライトバルブ40Bを照明する。
【0032】
なお、青色光Bの経路は、他の色光の経路に比べて長くなってしまうことから、光線束の発散によって、液晶ライトバルブ40Bへの照明効率が低下するのを抑制するために、青色光Bの経路には、リレー光学系30が設けられている。
【0033】
リレー光学系30は、入射側レンズ31と、第1の反射ミラー32と、リレーレンズ33と、第2の反射ミラー34と、出射側レンズ35とを備えている。色光分離光学系20から出射した青色光Bは、入射側レンズ31によってリレーレンズ33の近傍で収束し、出射側レンズ35に向けて発散する。
【0034】
各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bは、複数の画素がマトリクス状に形成された液晶パネル41を備えている。液晶パネル41は、図示しない一対の透明基板間に液晶が封入されており、各透明基板の内面には、液晶に対して画素毎に駆動電圧を印加可能な透明電極が形成されている。
【0035】
図2は、本実施形態の液晶ライトバルブ40R,40G,40Bを、光入射側から見た平面図である。
図2に示すように、本実施形態の液晶ライトバルブ40R,40G,40Bには、1024×768個の画素DTが、X方向及びY方向にそれぞれ均一のピッチDx,Dyで形成されている。なお、以降の説明において、各画素DTを位置によって区別する必要がある際には、左上の画素DTを基準にして、X方向の位置をa,b,c,…、Y方向の位置を1,2,3,…で表し、例えば、左上の画素は、DTa1と表記する。
【0036】
図1に戻って、液晶パネル41の入射側表面及び出射側表面には、それぞれ入射側偏光板42及び出射側偏光板43が貼り付けられている。入射側偏光板42及び出射側偏光板43は、それぞれ特定の偏光方向の偏光光のみを透過可能であり、入射側偏光板42は、偏光変換素子14によって揃えられた偏光方向の偏光光を透過可能となっている。このため、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bに入射する各色光の大部分は入射側偏光板42を透過して、液晶パネル41に入射する。ここで、液晶パネル41の各画素DTに、画像データに応じた駆動電圧が印加されると、液晶パネル41に入射した光は、駆動電圧に応じて変調され、画素DT毎に異なる偏光方向を有した偏光光となる。この偏光光のうち、出射側偏光板43を透過可能な偏光成分のみが液晶ライトバルブ40R,40G,40Bから出射される。つまり、液晶ライトバルブ40R,40G,40Bが、画像データに応じて、画素DT毎に異なる透過率で入射光を透過させることによって、階調を有する光学像が色光毎に形成される。液晶ライトバルブ40R,40G,40Bから出射した各色光からなる光学像は、クロスダイクロイックプリズム50に入射する。
【0037】
クロスダイクロイックプリズム50は、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bから出射された各色の光学像を、画素DT毎に合成してカラー画像を表す光学像を形成する。クロスダイクロイックプリズム50によって合成された光学像は、投写レンズ60によって、スクリーンSC等に拡大投写されて、投写画像が表示される。
【0038】
図3は、本実施形態に係るプロジェクタPJの概略構成を示すブロック図である。
図3に示すように、プロジェクタPJは、制御部70によってその動作が制御され、制御部70には、記憶部71と、それぞれ液晶ライトバルブ40R,40G,40Bを駆動可能な3つの液晶ライトバルブ駆動部45R,45G,45Bとが接続されている。また、プロジェクタPJは、図示しない外部接続端子を備えており、外部の画像供給装置や制御装置から、画像信号や制御信号等の各種信号を受け取ることができる。
【0039】
画像信号としては、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの各画素DTの階調を表す8bit(256階調)のデジタルデータ(入力画素値)等が入力され、これを全画素分受信することで、1フレーム分の画像データが得られる。また、画像信号として、アナログデータが入力される場合には、制御部70が、このアナログデータをAD変換することで、8bitの入力画素値からなる画像データを生成する。なお、入力される画像信号と液晶ライトバルブ40R,40G,40Bとで解像度(画素数)が異なる場合には、液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの各画素DTに対応させるための解像度変換を行う。
【0040】
記憶部71は、制御部70が実行する制御プログラムを記憶するとともに、画像処理の際の一時記憶等に用いられ、少なくとも1フレーム分の画像データを記憶することが可能になっている。さらに、記憶部71には、補正情報としての補正テーブル71aが記憶されており、制御部70が受信又は生成した画像データに対して補正テーブル71aに従った補正を行うことができる。
【0041】
補正テーブル71aは、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの画素DT毎に備えられ、画素DT毎に個別の補正を行うことができるようになっている。ここで、補正テーブル71aは、各入力画素値に対応付けられた10bit(1024階調)の補正値(出力画素値)によって構成されている。つまり、補正の際に、8bitの入力画素値を10bitの出力画素値に変換することになるため、使用可能な階調数を減少させることなく、微妙な輝度の変化を表現可能になっている。補正テーブル71aは、液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの出力特性に応じたガンマ補正や、画素DT毎の輝度のばらつき等の補正等に用いられ、初期状態(プロジェクタPJの検査前の状態)では、ガンマ補正が可能な補正値が記憶されている。
【0042】
制御部70は、入力又は生成した8bitの入力画素値を、補正テーブル71aに従って10bitの出力画素値に置き換えて、液晶ライトバルブ駆動部45R,45G,45Bに出力する。液晶ライトバルブ駆動部45R,45G,45Bは、入力した出力画素値に基づいて、液晶ライトバルブ40R,40G,40Bを駆動する。
【0043】
次に、本実施形態に係るプロジェクタPJの検査装置について、図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係るプロジェクタPJの検査装置を説明する図であり、(a)は、検査装置の概略構成図、(b)は、受光装置のA視平面図である。また、図5(a)〜(c)は、検査装置が備えるフィルタホイールを説明する平面図である。
【0044】
図4(a)に示すように、本実施形態の検査装置80は、制御装置81と、受光装置82と、2つのフィルタホイール83,84とを備えている。制御装置81は、検査対象であるプロジェクタPJに対して画像信号や制御信号を供給可能になっており、受光装置82は、プロジェクタPJから投写される投写光を受光可能になっている。
【0045】
2つのフィルタホイール83,84のそれぞれには、図5(a)、(b)に示すように、各種フィルタを装着可能な4つの開口部が形成されている。フィルタホイール83の開口部には、透過率の異なる4つの減光フィルタ83A〜83Dが装着されており、フィルタホイール84の開口部には、赤色光のみを透過可能な赤色光透過フィルタ84Rと、緑色光のみを透過可能な緑色光透過フィルタ84Gと、青色光のみを透過可能な青色光透過フィルタ84Bとが装着され、1つの開口部84Vにはフィルタが装着されていない。各フィルタホイール83,84は、図4(a)及び図5(c)に示すように、投写レンズ60の出射側で互いに1つの開口部が交わるように備えられており、投写レンズ60から投写される投写光の減光と、特定色光のみの透過とを同時に作用させることが可能になっている。また、図4(a)に示すように、各フィルタホイール83,84の中心部には、それぞれ制御装置81に接続された回転駆動部83a,84aが備えられており、制御装置81が、各回転駆動部83a,84aを駆動することによって、透過する色光やその透過率を選択可能になっている。
【0046】
図4(b)に示すように、受光装置82は、フォトダイオード等からなる複数の受光素子PDがマトリクス状に配列された受光部85を備えている。受光部85は、投写光が照射される投写領域65よりも大きな面積を有しており、受光素子PDが、この受光部85内で互いに密接するように配置されているため、受光部85に投写される投写光のほとんどを漏れなく受光可能になっている。本実施形態の受光部85には、X方向、Y方向ともプロジェクタPJの液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの画素数(1024×768個)よりも多くの受光素子PDが、X方向及びY方向にそれぞれ均一のピッチPx,Pyで備えられており、X方向とY方向とのピッチの比Py/Pxは、画素DTのピッチの比Dy/Dxと等しくなっている。
【0047】
なお、以降の説明において、各受光素子PDを位置によって区別する必要がある際には、左上の受光素子PDを基準にして、X方向の位置をa,b,c,…、Y方向の位置を1,2,3,…で表し、例えば、左上の受光素子は、PDa1のように表記する。
【0048】
受光装置82にプロジェクタPJの投写光が照射されると、各受光素子PDは、それぞれの受光量に応じた電気信号を発生する。受光装置82は、この電気信号を図示しない信号処理部でA/D変換等の信号処理をした後、制御装置81に出力する。
【0049】
次に、検査装置80によるプロジェクタPJの検査方法について図面を用いて説明する。図6は、本実施形態に係るプロジェクタPJの検査方法の概略を示すフローチャートであり、図7(a)〜(e)は、受光部85に対する投写領域65の位置関係を示す説明図である。
【0050】
検査に先立って、受光装置82の各受光素子PDのキャリブレーションを行う。キャリブレーションは、完全拡散光を受光部85全体に照射したり、受光部85を部分的に照射可能な光源を受光部85に対して平行移動させたりすることにより、すべての受光素子PDに略同一条件の光を照射して行われる。また、制御装置81は、フィルタホイール83を回動させて、受光素子PDに投写される光量が受光素子PDの特性に適した光量となるような減光フィルタを選択するとともに、フィルタホイール84を回動させて、開口部84Vを選択する。
【0051】
図6に示すように、まず、ステップS101では、検査対象となるプロジェクタPJの投写光が、フィルタホイール83,84を通って受光部85に投写されるように、プロジェクタPJを設置する。このとき、プロジェクタPJの投写領域65が、受光部85内に収まるように、設置位置やズーム状態等を調整する。本実施形態では、各画素DTから出射する光が、受光素子PDの配置ピッチPx,Pyと同一のピッチで受光部85に到達するように、投写領域65の大きさを調整する。
【0052】
プロジェクタPJの投写領域65は、例えば、図7(a)に示すような位置関係で、受光部85内に投写される。ここで、投写領域65を細分する複数の領域65aのそれぞれは、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの1つの画素DTから出射した光による投写領域を示しており、例えば、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの左上(図2参照)の画素DTa1から出射した光は、4つの受光素子PDa1,PDa2,PDb1,PDb2にまたがるように投写されている。各画素DTから出射した光は、受光素子PDの配置ピッチPx,Pyと同一のピッチで受光部85に到達するため、他の画素DTから出射した光も、それぞれ4つの受光素子PDで受光される。
【0053】
ステップS102では、赤色光用の液晶ライトバルブ40Rの画素DT毎の輝度(出射光量)分布を全階調で測定する。図8は、その測定方法の詳細を説明するフローチャートである。
【0054】
図8に示すように、ステップS201では、制御装置81がプロジェクタPJに制御信号を送信し、液晶ライトバルブ駆動部45R,45G,45Bを制御して、緑色光及び青色光用の液晶ライトバルブ40B,40Gのすべての画素DTの透過率を最小(出力画素値を0)とする。さらに、赤色光用液晶ライトバルブ40Rのすべての画素DTのうち、辺又は角で隣接する画素DT同士が光を出射することがないように、4(2×2)画素に1つの割合で画素DTの透過率を最大(出力画素値を1023)にするとともに、他の画素DTの透過率を最小とする。この結果、図7(b)に示すように、受光部85には最大透過率の画素DTから出射された光が疎らに投写されるため、1つの受光素子PDが、複数の画素DTから出射された光を受光することはない。つまり、制御装置81は、各受光素子PDに2つ以上の画素DTから出射した光が照射されることがないように、光を出射する画素DTを選択する画素選択手段として機能する。
【0055】
ステップS202では、各受光素子PDが、それぞれの受光量に応じたアナログの電気信号を発生し、受光装置82がこの電気信号にAD変換等の信号処理を施した後に制御装置81に送信する。
【0056】
ステップS203では、制御装置81が、受信した電気信号、つまり、各受光素子PDが受光した受光量に基づいて画素DT毎の出射光量を導出する。具体的には、例えば、画素DTa1から出射した光量を、4つの受光素子PDa1,PDa2,PDb1,PDb2による受光量に基づいて導出し、これを光を出射したすべての画素DTについて行う。
【0057】
以降、光を出射する画素DTを、図7(c)、(d)、(e)の順に都度変えながら、ステップS202,S203を繰り返し(ステップS204,S205)、液晶ライトバルブ40Rのすべての画素DTの出射光量を導く。
【0058】
さらに、光を出射する画素DTの透過率を1段階ずつ低下させながら、ステップS202〜S205を繰り返し(ステップS206,S207)、すべての階調(出力画素値)で、液晶ライトバルブ40Rの各画素DTの出射光量を導く。
【0059】
図6に戻って、ステップS103及びステップS104では、ステップS102と同様の手順で、それぞれ緑色光及び青色光用の液晶ライトバルブ40G,40Bの各画素DTの輝度分布を全階調で測定する。以上、ステップS102〜S104により、すべての液晶ライトバルブ40R,40G,40Bについて、各画素DTから出射する光の輝度分布が階調(出力画素値)毎に取得される。
【0060】
ステップS105では、制御装置81が、ステップS102〜S104で取得された輝度分布から、輝度ムラ(出射光量のばらつき)等の表示異常の検出を行う。表示異常が検出された場合には、ステップS106に移行し、表示異常が検出されなかった場合には、ステップS111に移行する。
【0061】
表示異常が検出され、ステップS106に移行した場合には、検出された表示異常が輝度調整によって補正可能なレベルか否かを、各画素DTの出射光量によって判断し、補正可能である場合には、ステップS107に移行し、補正が不可能なレベルであれば、当該プロジェクタPJを不良品として判定して、検査を終了する。
【0062】
ステップS107では、制御装置81が、表示異常を補正するために、各入力画素値(0〜255)に対して、各画素DTから略均一の光量が出射されるような出力画素値を対応付け、これを各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの画素DT毎に行って、既存の補正テーブルを、表示異常を補正可能な補正テーブルに変更する。つまり、制御装置81は、各画素DTからの出射光量を補正可能な補正テーブル(補正情報)を生成する補正情報生成部として機能する。
【0063】
ステップS108では、制御装置81が、変更した補正テーブルをプロジェクタPJの記憶部71に書き込む。この結果、プロジェクタPJの制御部70は、色光(液晶ライトバルブ)、画素DT、及びその入力画素値に基づいて補正テーブル71aを参照することにより、輝度ムラのない出射光量を得るための出力画素値を取得することが可能となる。
【0064】
ステップS111以降においては、プロジェクタPJから略白色の投写光を投写させ、この投写光量を測定するとともに、この投写光に含まれるR,G,Bの各色光の光量を測定し、これらの測定結果から、各色光が適正な色バランスで出射されるような補正テーブルを生成する。なお、ステップS102〜S108において、画素DT毎の輝度ムラが補正済みであるため、ステップS111以降においては、必ずしも画素DT毎の補正は必要ない。本実施形態では、投写領域65を複数のブロックに分割し、各ブロックにつき1つの受光素子PDで光量の測定を行い、ブロック毎に均一の補正を行う。
【0065】
ステップS111では、制御装置81が、8bitの入力画素値からなる画像信号をプロジェクタPJに送信し、プロジェクタPJから略白色の投写光を出射させる。具体的には、制御装置81は、全液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの全画素DTに対する入力画素値として、その最大値255をプロジェクタPJに出力する。プロジェクタPJの制御部70は、補正テーブル71aに従って、最大入力画素値255に対応する出力画素値を液晶ライトバルブ駆動部45R,45G,45Gに出力することにより、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bから略均一の白色光が出射する。受光装置82は、各受光素子PDが受光した略白色の光量に応じた電気信号を制御装置81に出力する。
【0066】
次いで、入力画素値を1つ下げて254として、同様に光量の測定を行い、さらに、すべての入力画素値で上記動作を繰り返す。
【0067】
ステップS112では、投写光が赤色光透過フィルタ84Rを通過して受光装置82に投写されるよう、制御装置81がフィルタホイール84を回動する。これにより、受光装置82には、略白色の投写光に含まれる赤色光成分のみが投写される。この状態で、前記ステップS111と同様、投写光に含まれる赤色光量を入力画素値毎に測定する。
【0068】
ステップS113及びステップS114では、投写光がそれぞれ緑色光透過フィルタ84G及び青色光透過フィルタ84Bを通過するようにフィルタホイール84を回動して、ステップS112と同様の動作を行い、投写光に含まれる緑色光量及び青色光量を入力画素値毎に測定する。
【0069】
ステップS115では、ステップS111〜S114で入力画素値毎に取得した略白色光量、及びこの略白色光に含まれる赤色光量、緑色光量、及び青色光量に基づいて、各色光が適正な色バランスで出射されているか否かを判断する。適正であれば、当該プロジェクタを良品として判定して検査を終了し、適正でない場合には、ステップS116に移行する。
【0070】
ステップS116では、各色光が適正な色バランスで出射されるように、既存の補正テーブルを変更する。
【0071】
ステップS117では、変更した補正テーブルを、プロジェクタPJの記憶部71に書き込む。
【0072】
以上により、プロジェクタPJの制御部70は、色光(液晶ライトバルブ)、画素DT、及びその入力画素値に基づいて補正テーブル71aを参照することにより、入力画素値に応じて適正な出射光量を得るための出力画素値を生成することが可能となり、プロジェクタPJは、輝度ムラがなく、色バランスが整った投写光を投写することが可能となる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクタPJ、及びその検査装置80、並びにその検査方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0074】
(1)本実施形態のプロジェクタの検査装置80によれば、プロジェクタPJからの投写光を複数の受光素子PDを備えた受光装置82で受光するため、スクリーンSC等に投写した画像を撮像装置等で入力する必要がなくなる。この結果、撮像装置の入力光学系の光軸のずれや収差等の影響、或いは、スクリーンSC等の反射特性による影響を受けることがないため、プロジェクタPJによる投写画像(各画素DTの出射光量)を正確に取得することが可能となる。
【0075】
(2)本実施形態のプロジェクタの検査装置80によれば、液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの画素数以上の受光素子PDで投写光を受光可能であるため、プロジェクタPJによる投写画像を、一度に高い解像度で取得することが可能となる。この結果、検査時間を短縮することが可能となるとともに、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも検出することが可能となる。
【0076】
(3)本実施形態のプロジェクタの検査装置80及び検査方法によれば、制御装置81が、1つの受光素子PDに複数の画素DTから出射した光が照射されることがないように液晶ライトバルブ40R,40G,40Bを駆動している。このため、本実施形態のように、プロジェクタPJと受光装置82とが、1つの受光素子PDで複数の画素DTから出射した光を受光可能な位置関係にある場合でも、画素DT毎の出射光量を知ることが可能となり、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも検出することが可能となる。
【0077】
(4)本実施形態のプロジェクタの検査装置80及び検査方法によれば、制御装置81が、受光素子PDによって正確に取得した投写画像に基づいて、画素毎に出射光量を補正可能な補正テーブルを生成し、この補正テーブルを検査対象のプロジェクタPJにフィードバックしているため、各画素DTからの出射光量を適正に補正することが可能となる。この結果、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも補正することが可能となる。
【0078】
(5)本実施形態のプロジェクタPJによれば、複数の受光素子PDを備えた受光装置82に投写光を照射することによって生成された補正テーブル71aを記憶し、この補正テーブル71aに従って画像信号を補正可能になっている。検査装置80は、スクリーンSC等に投写した画像を撮像装置等により入力する検査装置とは異なり、撮像装置の入力光学系の光軸のずれや収差等の影響、或いは、スクリーンSC等の反射特性による影響を受けずに投写画像を取得可能であるため、プロジェクタPJの投写画像をより正確に取得することが可能である。つまり、このプロジェクタPJによれば、検査装置80によって生成された補正テーブル71aに従って画像信号を補正するため、各画素DTからの出射光量を適正に補正することが可能となる。
【0079】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係るプロジェクタの検査装置について、図面を参照して説明する。図9は、本実施形態に係るプロジェクタPJの検査装置を説明する図であり、(a)は、検査装置の概略構成図、(b)は、受光装置のA視平面図である。
【0080】
図9に示すように、本実施形態の受光装置82は、プロジェクタPJの投写光の一部を受光可能な受光部85と、制御装置81からの制御信号に応じて、受光部85をX方向に移動させることが可能な駆動部86とを備えている。本実施形態の受光部85には、フォトダイオード等からなる複数の受光素子PDが、第1実施形態と同一のピッチPx,Pyでマトリクス状に配置されており、Y方向には、プロジェクタPJの液晶ライトバルブ40R,40G,40BのY方向の画素数(768個)よりも多くの受光素子PDが備えられる一方、X方向には、X方向の画素数(1024個)よりも少ない受光素子PDが備えられている。
【0081】
本実施形態の受光装置82で検査を行う際には、まず、ステップS101(図6参照)において、プロジェクタPJの投写領域65が、Y方向には、受光部85に収まるようにするとともに、X方向には、受光部85が移動可能な範囲となるように、プロジェクタPJの設置位置やズーム状態を調整する。さらに、ステップS102〜S104及びステップS111〜S114において、制御装置81が受光部85をX方向に移動させながら投写光を受光することによって、投写領域65全体の投写光量を測定する。
【0082】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクタの検査装置80によれば、前記第1実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0083】
本実施形態のプロジェクタの検査装置80によれば、投写光の一部を受光可能な受光部85が移動可能であり、受光部85を移動させることにより投写光全体を受光することが可能になっている。このため、投写光全体を一度に受光可能な数の受光素子PDを備える場合に比べて、必要な受光素子PDが少数で済むため、検査装置80のコストを低減することが可能となる。
【0084】
(変形例)
なお、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0085】
・前記第1及び第2実施形態において、ステップS102〜S104では、すべての出力画素値で輝度分布の測定を行い、ステップS111〜S114では、すべての入力画素値で受光量の測定を行っているが、これらの測定を複数階調おきに実施して、測定されない階調の補正については、線形補間等により補うようにしてもよい。
【0086】
また、補正テーブル71aにおいても、すべての入力画素値に対応付けられた出力画素値を記憶する必要はなく、複数の入力画素値おきに対応する出力画素値を記憶するようにして、記憶されていない入力画素値に対応する出力画素値は、線形補間等により補うようにしてもよい。
【0087】
・前記第1及び第2実施形態において、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの各画素DTと受光素子PDとが1対N(Nは1以上の自然数)で対応するように受光素子PDを配置するとともに、ステップS101でプロジェクタPJを設置する際に、1つの画素DTから出射した光のほとんどが、前記N個の受光素子PDに照射されるように、プロジェクタPJの設置位置やズーム状態を調整するようにしてもよい。
【0088】
このプロジェクタの検査装置によれば、各画素DTから出射される光を、対応するN個受光素子PDによって個別に受光するため、各画素DTの出射光量を、対応するN個の受光素子PDによる受光量に基づいて容易に導くことが可能となる。さらに、一度にすべての画素DTの出射光量を知ることが可能であるため、検査時間を短縮することが可能となる。
【0089】
・前記第1実施形態において、受光素子PDの数は、画素DTよりも多い必要はない。図10は、1つの受光素子PDが、4(2×2)個の画素DTから出射した光を受光可能な大きさである例を示す説明図である。図10に示すように、9(3×3)画素に1つの割合で画素DTから光を出射させれば、1つの受光素子PDに複数の画素DTから出射した光が照射されることがなく、光を出射する画素DTを9回切り替えることにより、すべての画素DTから出射した光を受光することが可能となる。
【0090】
なお、受光装置PDの数が多いほど、すべての画素DTから出射した光を、少ない回数で受光することが可能となるため、検査時間を短縮するためには、受光素子PDの数が多いほうが望ましい。
【0091】
・前記第1及び第2実施形態において、フィルタホイール83の回動によって、減光フィルタを切り替える構成にしているが、印加する電圧に応じて透過率を変更可能なエレクトロクロミックガラスを用いるようにしてもよい。
【0092】
・前記第1及び第2実施形態において、減光フィルタや各色光透過フィルタは、必須の構成ではなく、投写光の光量が受光素子PDの特性に対して適性であれば、減光フィルタ、つまり、フィルタホイール83は不要である。また、輝度分布の測定や輝度ムラの補正のみを行う場合には、各色光透過フィルタ、つまり、フィルタホイール84は不要である。
【0093】
・前記第1及び第2実施形態において、ステップS108又はステップS117において補正テーブル71aを書き込んだ後に、再度、輝度分布の測定や色バランスの調整を行い、その結果に応じて補正テーブル71aを再変更し、これを何度か繰り返すことによって、より適正な補正テーブル71aを生成するようにしてもよい。
【0094】
・前記第1及び第2実施形態において、検査装置80の制御装置81は、プロジェクタPJの内部に備えるようにしてもよい。例えば、プロジェクタPJの制御部70が制御装置81を兼用するとともに、制御部70が、受光装置82の接続等により検査モードであることを判断し、検査可能な状態とすることが可能である。
【0095】
・前記第1及び第2実施形態では、光変調装置として、透過型の液晶ライトバルブ40R,40G,40Bを用いているが、反射型の液晶型光変調装置であるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)を用いることも可能である。また、入射した光の出射方向を、画素としてのマイクロミラー毎に制御することにより、光源から出射した光を変調するミラーデバイス等を用いたプロジェクタにも適用可能である。
【0096】
・前記第2実施形態において、図11に示すように、受光部85をX方向及びY方向に駆動可能な駆動部86x、86yを備え、X方向のみならずY方向の受光素子PDの数も減少させるようにしてもよい。この受光装置82で検査を行う際には、まず、ステップS101(図6参照)において、プロジェクタPJの投写領域65を、受光部85が移動可能な範囲となるように、プロジェクタPJの設置位置やズーム状態を調整した後、ステップS102〜S104及びステップS111〜S114において、制御装置81が受光部85をX方向又はY方向に移動させながら投写光を受光することによって、投写領域65全体の投写光量を測定する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】第1実施形態に係るプロジェクタの光学系の概略構成を示す構成図。
【図2】液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの平面図。
【図3】第1実施形態に係るプロジェクタの概略構成を示すブロック図。
【図4】第1実施形態に係るプロジェクタの検査装置を説明する図であり、(a)は、検査装置の概略構成図、(b)は、受光装置のA視平面図。
【図5】(a)〜(c)は、フィルタホイールを説明する平面図。
【図6】第1実施形態に係るプロジェクタの検査方法の概略を示すフローチャート。
【図7】(a)〜(e)は、第1実施形態に係る受光部に対する投写領域の位置関係を示す説明図。
【図8】測定方法の詳細を説明するフローチャート。
【図9】第2実施形態に係るプロジェクタの検査装置を説明する図であり、(a)は、検査装置の概略構成図、(b)は、受光装置のA視平面図。
【図10】変形例に係る受光部に対する投写領域の位置関係を示す説明図。
【図11】変形例に係る受光装置の平面図。
【符号の説明】
【0098】
PJ…プロジェクタ、DT…画素、PD…受光素子、10…照明光学系、11…光源、20…色光分離光学系、30…リレー光学系、40R,40G,40B…液晶ライトバルブ、41…液晶パネル、45R,45G,45B…液晶ライトバルブ駆動部、50…クロスダイクロイックプリズム、60…投写レンズ、65…投写領域、70…制御部、71…記憶部、71a…補正情報としての補正テーブル、80…検査装置、81…画素選択手段及び補正情報生成部として機能する制御装置、82…受光装置、83,84…フィルタホイール、83a,84a…回転駆動部、85…受光部、86,86x,86y…駆動部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタの製造における検査工程において、投写画像の表示異常を検出可能な検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタによって表示された画像の表示異常(色むら、輝度むらや線欠陥等)を検出するために、スクリーン等に投写された投写画像をCCDカメラ等の撮像装置によって撮像する検査装置が知られている(例えば、特許文献1)。このような検査装置では、撮像装置によって得られた画像情報を画像処理することによって、表示異常の有無を検出することが可能となっている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−168103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、撮像装置によって画像の取得を行う検査装置においては、撮像装置の入力光学系とプロジェクタの投写光学系との光軸の不一致や、撮像装置の入力光学系の収差等の影響により、投写画像が歪んで入力されてしまううえ、スクリーンの反射特性による影響を受けてしまうため、プロジェクタによる投写画像を正確に取得することは困難であった。
【0005】
さらに、取得した投写画像が正確でないことにより、検出された表示異常の位置や異常の程度を正確に認識することができず、検出結果をプロジェクタにフィードバックして、表示異常を補正することが困難であるという問題を有していた。
【0006】
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、プロジェクタによる投写画像を正確に取得可能なプロジェクタの検査装置、及びその検査方法を提供することにある。本発明の第2の目的は、取得した投写画像の情報に基づいて、検出された表示異常を補正可能なプロジェクタ、及びその検査装置、並びにその検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプロジェクタの検査装置は、複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を、前記光変調装置によって前記画素毎に変調して投写するプロジェクタの検査装置であって、複数の受光素子が互いに密接するように配置され、前記プロジェクタからの投写光を前記受光素子によって受光可能な受光装置を備えたことを特徴とする。
【0008】
このプロジェクタの検査装置によれば、プロジェクタからの投写光を、複数の受光素子を備えた受光装置で受光するため、スクリーン等に投写した画像を撮像装置等で入力する必要がなくなる。この結果、撮像装置の入力光学系の光軸のずれや収差等の影響、或いは、スクリーン等の反射特性による影響を受けることがないため、プロジェクタによる投写画像を正確に取得することが可能となる。
【0009】
このプロジェクタの検査装置において、前記受光装置は、前記画素数以上の前記受光素子を備えていることが望ましい。
【0010】
このプロジェクタの検査装置によれば、光変調装置の画素数以上の受光素子で投写光を受光可能であるため、プロジェクタによる投写画像を、一度に高い解像度で取得することが可能となる。この結果、検査時間を短縮することが可能となるとともに、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも検出することが可能となる。
【0011】
このプロジェクタの検査装置において、前記受光素子は、前記各画素に少なくとも1つの前記受光素子が対応するように前記受光装置に配置され、前記各画素から出射された光を、対応する前記受光素子によって受光するようにしてもよい。
【0012】
このプロジェクタの検査装置によれば、各画素から出射される光を、対応する1つ以上の受光素子によって個別に受光するため、各画素の出射光量を、対応する受光素子による受光量に基づいて容易に導くことが可能となる。さらに、一度にすべての画素の出射光量を知ることが可能であるため、検査時間を短縮することが可能となる。
【0013】
このプロジェクタの検査装置において、さらに、前記光変調装置に備えられた複数の画素の中から、前記各受光素子に2つ以上の画素から出射した光が照射されることがないように、光を出射する画素を選択する画素選択手段を備えることが望ましい。
【0014】
このプロジェクタの検査装置によれば、1つの受光素子に複数の画素から出射した光が照射されることがないように、光を出射する画素を選択する画素選択手段を備えているため、プロジェクタと受光装置とが、1つの受光素子で複数の画素から出射した光を受光可能な位置関係にある場合でも、画素毎の出射光量を知ることが可能となる。このため、すべての画素から光を出射するまで、画素の選択を繰り返すことによって、すべての画素の出射光量を知ることが可能となり、表示異常を画素毎に検出することが可能となる。
【0015】
このプロジェクタの検査装置において、さらに、前記各受光素子による受光量に応じて、前記各画素からの出射光量を補正可能な補正情報を生成する補正情報生成部を備えることが望ましい。
【0016】
このプロジェクタの検査装置によれば、補正情報生成部が、受光装置によって正確に取得した投写画像に基づいて補正情報を生成するため、この補正情報を検査対象のプロジェクタにフィードバックすることにより、各画素からの出射光量を適正に補正することが可能となる。この結果、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも補正することが可能となる。
【0017】
本発明のプロジェクタの検査装置は、複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を、前記光変調装置によって前記画素毎に変調して投写するプロジェクタの検査装置であって、複数の受光素子が配置され、前記プロジェクタからの投写光の一部を前記受光素子によって受光可能な受光部と、前記受光部の位置を移動させる駆動部とを備えたことを特徴とする。
【0018】
このプロジェクタの検査装置によれば、プロジェクタからの投写光を、複数の受光素子を備えた受光装置で受光するため、スクリーン等に投写した画像を撮像装置等で入力する必要がなくなる。この結果、撮像装置の入力光学系の光軸のずれや収差等の影響、或いは、スクリーン等の反射特性による影響を受けることがないため、プロジェクタによる投写画像を正確に取得することが可能となる。
【0019】
さらに、投写光の一部を受光可能な受光部が移動可能であるため、受光部を移動させることにより投写光全体を受光することが可能となる。つまり、投写光全体を一度に受光可能な数の受光素子を備える場合に比べて、必要な受光素子が少数で済むため、検査装置のコストを低減することが可能となる。
【0020】
本発明のプロジェクタの検査方法は、複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を前記光変調装置によって前記画素毎に変調するとともに、前記各画素から出射した光を投写するプロジェクタの検査方法であって、前記プロジェクタの投写光が、複数の受光素子が互いに密接するように配置された受光装置に照射されるように、前記プロジェクタを設置する第1のステップと、前記各受光素子に2つ以上の前記画素から出射した光が照射されることがないように、前記光変調装置を駆動して、前記複数の画素のうちの一部の画素から光を出射させて、投写を行う第2のステップと、前記プロジェクタからの投写光を、前記受光装置によって受光し、前記受光素子毎に受光量を検出する第3のステップと、前記受光素子毎に検出された受光量から、光を出射した各画素の出射光量を導出する第4のステップと、前記第2〜第4のステップを繰り返すとともに、光を出射させる画素を都度変更することによってすべての画素からの出射光量を導出することを特徴とする。
【0021】
このプロジェクタの検査方法によれば、1つの受光素子に複数の画素から出射した光が照射されることがないように光変調装置を駆動している。このため、プロジェクタと受光装置とが、1つの受光素子で複数の画素から出射した光を受光可能な位置関係にある場合でも、画素毎の出射光量を知ることが可能となり、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも検出することが可能となる。
【0022】
このプロジェクタの検査方法において、さらに、前記第4のステップで導出した前記各画素からの出射光量に応じて、前記画素毎に出射光量を補正可能な補正情報を生成する第5のステップを有することが望ましい。
【0023】
このプロジェクタの検査方法によれば、画素毎の出射光量に基づいて補正情報を生成するため、この補正情報を検査対象のプロジェクタにフィードバックすることにより、各画素からの出射光量を適正に補正することが可能となる。この結果、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも補正することが可能となる。
【0024】
本発明のプロジェクタは、複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を、外部から入力される画像信号に応じて前記画素毎に変調するとともに、前記各画素から出射した光を投写するプロジェクタであって、複数の受光素子を備えた検査装置に投写光を照射することにより前記検査装置によって生成され、前記画素毎の出射光量を補正可能な補正テーブルを記憶し、前記補正テーブルに従って、前記画像信号を補正可能であることを特徴とする。
【0025】
このプロジェクタは、複数の受光素子を備えた検査装置に投写光を照射することによって生成された補正テーブルを記憶し、この補正テーブルに従って画像信号を補正可能になっている。前記検査装置は、スクリーン等に投写した画像を撮像装置等により入力する検査装置とは異なり、撮像装置の入力光学系の光軸のずれや収差等の影響、或いは、スクリーン等の反射特性による影響を受けずに投写画像を取得可能であるため、プロジェクタの投写画像をより正確に取得することが可能である。つまり、このプロジェクタによれば、前記検査装置によって生成された補正テーブルに従って画像信号を補正するため、各画素からの出射光量を適正に補正することが可能となり、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも補正することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るプロジェクタについて、図面を参照して説明する。 図1は、本実施形態に係るプロジェクタの光学系の概略構成を示す構成図であり、光源から出射された光が、スクリーンに至るまでの光路を示している。
【0027】
図1に示すように、プロジェクタPJは、照明光学系10と、色光分離光学系20と、リレー光学系30と、光変調装置としての3つの液晶ライトバルブ40R,40G,40Bと、クロスダイクロイックプリズム50と、投写レンズ60とを備えている。
【0028】
照明光学系10は、光源11と、第1のレンズアレイ12と、第2のレンズアレイ13と、偏光変換素子14と、重畳レンズ15とを備えており、光源11から出射された光線束は、微小なレンズ12aがマトリクス状に配置された第1のレンズアレイ12によって多数の微小な光線束に分割される。第2のレンズアレイ13及び重畳レンズ15は、分割された光線束のそれぞれが、照明対象である3つの液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの全体を照射するように備えられている。このため、各光線束が液晶ライトバルブ40R,40G,40Bで重畳され、液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの全体がほぼ均一に照明される。
【0029】
偏光変換素子14は、光源11からの非偏光な光を液晶ライトバルブ40R,40G,40Bで効率よく利用可能とするため、特定の偏光方向を有する偏光光に揃える機能を有している。照明光学系10を出射した偏光光は、色光分離光学系20に入射する。
【0030】
色光分離光学系20は、照明光学系10から出射された光を、波長域の異なる3色の光に分離する。第1のダイクロイックミラー21は、略赤色の光を透過させるとともに、透過する光よりも短波長の光を反射する。第1のダイクロイックミラー21を透過した赤色光Rは、反射ミラー22で反射されて赤色光用の液晶ライトバルブ40Rを照明する。
【0031】
第1のダイクロイックミラー21で反射された光のうち、緑色光Gは、第2のダイクロイックミラー23によって反射されて緑色光用の液晶ライトバルブ40Gを照明する。また、青色光Bは、第2のダイクロイックミラー23を透過し、リレー光学系30を通過して、青色光用の液晶ライトバルブ40Bを照明する。
【0032】
なお、青色光Bの経路は、他の色光の経路に比べて長くなってしまうことから、光線束の発散によって、液晶ライトバルブ40Bへの照明効率が低下するのを抑制するために、青色光Bの経路には、リレー光学系30が設けられている。
【0033】
リレー光学系30は、入射側レンズ31と、第1の反射ミラー32と、リレーレンズ33と、第2の反射ミラー34と、出射側レンズ35とを備えている。色光分離光学系20から出射した青色光Bは、入射側レンズ31によってリレーレンズ33の近傍で収束し、出射側レンズ35に向けて発散する。
【0034】
各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bは、複数の画素がマトリクス状に形成された液晶パネル41を備えている。液晶パネル41は、図示しない一対の透明基板間に液晶が封入されており、各透明基板の内面には、液晶に対して画素毎に駆動電圧を印加可能な透明電極が形成されている。
【0035】
図2は、本実施形態の液晶ライトバルブ40R,40G,40Bを、光入射側から見た平面図である。
図2に示すように、本実施形態の液晶ライトバルブ40R,40G,40Bには、1024×768個の画素DTが、X方向及びY方向にそれぞれ均一のピッチDx,Dyで形成されている。なお、以降の説明において、各画素DTを位置によって区別する必要がある際には、左上の画素DTを基準にして、X方向の位置をa,b,c,…、Y方向の位置を1,2,3,…で表し、例えば、左上の画素は、DTa1と表記する。
【0036】
図1に戻って、液晶パネル41の入射側表面及び出射側表面には、それぞれ入射側偏光板42及び出射側偏光板43が貼り付けられている。入射側偏光板42及び出射側偏光板43は、それぞれ特定の偏光方向の偏光光のみを透過可能であり、入射側偏光板42は、偏光変換素子14によって揃えられた偏光方向の偏光光を透過可能となっている。このため、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bに入射する各色光の大部分は入射側偏光板42を透過して、液晶パネル41に入射する。ここで、液晶パネル41の各画素DTに、画像データに応じた駆動電圧が印加されると、液晶パネル41に入射した光は、駆動電圧に応じて変調され、画素DT毎に異なる偏光方向を有した偏光光となる。この偏光光のうち、出射側偏光板43を透過可能な偏光成分のみが液晶ライトバルブ40R,40G,40Bから出射される。つまり、液晶ライトバルブ40R,40G,40Bが、画像データに応じて、画素DT毎に異なる透過率で入射光を透過させることによって、階調を有する光学像が色光毎に形成される。液晶ライトバルブ40R,40G,40Bから出射した各色光からなる光学像は、クロスダイクロイックプリズム50に入射する。
【0037】
クロスダイクロイックプリズム50は、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bから出射された各色の光学像を、画素DT毎に合成してカラー画像を表す光学像を形成する。クロスダイクロイックプリズム50によって合成された光学像は、投写レンズ60によって、スクリーンSC等に拡大投写されて、投写画像が表示される。
【0038】
図3は、本実施形態に係るプロジェクタPJの概略構成を示すブロック図である。
図3に示すように、プロジェクタPJは、制御部70によってその動作が制御され、制御部70には、記憶部71と、それぞれ液晶ライトバルブ40R,40G,40Bを駆動可能な3つの液晶ライトバルブ駆動部45R,45G,45Bとが接続されている。また、プロジェクタPJは、図示しない外部接続端子を備えており、外部の画像供給装置や制御装置から、画像信号や制御信号等の各種信号を受け取ることができる。
【0039】
画像信号としては、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの各画素DTの階調を表す8bit(256階調)のデジタルデータ(入力画素値)等が入力され、これを全画素分受信することで、1フレーム分の画像データが得られる。また、画像信号として、アナログデータが入力される場合には、制御部70が、このアナログデータをAD変換することで、8bitの入力画素値からなる画像データを生成する。なお、入力される画像信号と液晶ライトバルブ40R,40G,40Bとで解像度(画素数)が異なる場合には、液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの各画素DTに対応させるための解像度変換を行う。
【0040】
記憶部71は、制御部70が実行する制御プログラムを記憶するとともに、画像処理の際の一時記憶等に用いられ、少なくとも1フレーム分の画像データを記憶することが可能になっている。さらに、記憶部71には、補正情報としての補正テーブル71aが記憶されており、制御部70が受信又は生成した画像データに対して補正テーブル71aに従った補正を行うことができる。
【0041】
補正テーブル71aは、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの画素DT毎に備えられ、画素DT毎に個別の補正を行うことができるようになっている。ここで、補正テーブル71aは、各入力画素値に対応付けられた10bit(1024階調)の補正値(出力画素値)によって構成されている。つまり、補正の際に、8bitの入力画素値を10bitの出力画素値に変換することになるため、使用可能な階調数を減少させることなく、微妙な輝度の変化を表現可能になっている。補正テーブル71aは、液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの出力特性に応じたガンマ補正や、画素DT毎の輝度のばらつき等の補正等に用いられ、初期状態(プロジェクタPJの検査前の状態)では、ガンマ補正が可能な補正値が記憶されている。
【0042】
制御部70は、入力又は生成した8bitの入力画素値を、補正テーブル71aに従って10bitの出力画素値に置き換えて、液晶ライトバルブ駆動部45R,45G,45Bに出力する。液晶ライトバルブ駆動部45R,45G,45Bは、入力した出力画素値に基づいて、液晶ライトバルブ40R,40G,40Bを駆動する。
【0043】
次に、本実施形態に係るプロジェクタPJの検査装置について、図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係るプロジェクタPJの検査装置を説明する図であり、(a)は、検査装置の概略構成図、(b)は、受光装置のA視平面図である。また、図5(a)〜(c)は、検査装置が備えるフィルタホイールを説明する平面図である。
【0044】
図4(a)に示すように、本実施形態の検査装置80は、制御装置81と、受光装置82と、2つのフィルタホイール83,84とを備えている。制御装置81は、検査対象であるプロジェクタPJに対して画像信号や制御信号を供給可能になっており、受光装置82は、プロジェクタPJから投写される投写光を受光可能になっている。
【0045】
2つのフィルタホイール83,84のそれぞれには、図5(a)、(b)に示すように、各種フィルタを装着可能な4つの開口部が形成されている。フィルタホイール83の開口部には、透過率の異なる4つの減光フィルタ83A〜83Dが装着されており、フィルタホイール84の開口部には、赤色光のみを透過可能な赤色光透過フィルタ84Rと、緑色光のみを透過可能な緑色光透過フィルタ84Gと、青色光のみを透過可能な青色光透過フィルタ84Bとが装着され、1つの開口部84Vにはフィルタが装着されていない。各フィルタホイール83,84は、図4(a)及び図5(c)に示すように、投写レンズ60の出射側で互いに1つの開口部が交わるように備えられており、投写レンズ60から投写される投写光の減光と、特定色光のみの透過とを同時に作用させることが可能になっている。また、図4(a)に示すように、各フィルタホイール83,84の中心部には、それぞれ制御装置81に接続された回転駆動部83a,84aが備えられており、制御装置81が、各回転駆動部83a,84aを駆動することによって、透過する色光やその透過率を選択可能になっている。
【0046】
図4(b)に示すように、受光装置82は、フォトダイオード等からなる複数の受光素子PDがマトリクス状に配列された受光部85を備えている。受光部85は、投写光が照射される投写領域65よりも大きな面積を有しており、受光素子PDが、この受光部85内で互いに密接するように配置されているため、受光部85に投写される投写光のほとんどを漏れなく受光可能になっている。本実施形態の受光部85には、X方向、Y方向ともプロジェクタPJの液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの画素数(1024×768個)よりも多くの受光素子PDが、X方向及びY方向にそれぞれ均一のピッチPx,Pyで備えられており、X方向とY方向とのピッチの比Py/Pxは、画素DTのピッチの比Dy/Dxと等しくなっている。
【0047】
なお、以降の説明において、各受光素子PDを位置によって区別する必要がある際には、左上の受光素子PDを基準にして、X方向の位置をa,b,c,…、Y方向の位置を1,2,3,…で表し、例えば、左上の受光素子は、PDa1のように表記する。
【0048】
受光装置82にプロジェクタPJの投写光が照射されると、各受光素子PDは、それぞれの受光量に応じた電気信号を発生する。受光装置82は、この電気信号を図示しない信号処理部でA/D変換等の信号処理をした後、制御装置81に出力する。
【0049】
次に、検査装置80によるプロジェクタPJの検査方法について図面を用いて説明する。図6は、本実施形態に係るプロジェクタPJの検査方法の概略を示すフローチャートであり、図7(a)〜(e)は、受光部85に対する投写領域65の位置関係を示す説明図である。
【0050】
検査に先立って、受光装置82の各受光素子PDのキャリブレーションを行う。キャリブレーションは、完全拡散光を受光部85全体に照射したり、受光部85を部分的に照射可能な光源を受光部85に対して平行移動させたりすることにより、すべての受光素子PDに略同一条件の光を照射して行われる。また、制御装置81は、フィルタホイール83を回動させて、受光素子PDに投写される光量が受光素子PDの特性に適した光量となるような減光フィルタを選択するとともに、フィルタホイール84を回動させて、開口部84Vを選択する。
【0051】
図6に示すように、まず、ステップS101では、検査対象となるプロジェクタPJの投写光が、フィルタホイール83,84を通って受光部85に投写されるように、プロジェクタPJを設置する。このとき、プロジェクタPJの投写領域65が、受光部85内に収まるように、設置位置やズーム状態等を調整する。本実施形態では、各画素DTから出射する光が、受光素子PDの配置ピッチPx,Pyと同一のピッチで受光部85に到達するように、投写領域65の大きさを調整する。
【0052】
プロジェクタPJの投写領域65は、例えば、図7(a)に示すような位置関係で、受光部85内に投写される。ここで、投写領域65を細分する複数の領域65aのそれぞれは、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの1つの画素DTから出射した光による投写領域を示しており、例えば、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの左上(図2参照)の画素DTa1から出射した光は、4つの受光素子PDa1,PDa2,PDb1,PDb2にまたがるように投写されている。各画素DTから出射した光は、受光素子PDの配置ピッチPx,Pyと同一のピッチで受光部85に到達するため、他の画素DTから出射した光も、それぞれ4つの受光素子PDで受光される。
【0053】
ステップS102では、赤色光用の液晶ライトバルブ40Rの画素DT毎の輝度(出射光量)分布を全階調で測定する。図8は、その測定方法の詳細を説明するフローチャートである。
【0054】
図8に示すように、ステップS201では、制御装置81がプロジェクタPJに制御信号を送信し、液晶ライトバルブ駆動部45R,45G,45Bを制御して、緑色光及び青色光用の液晶ライトバルブ40B,40Gのすべての画素DTの透過率を最小(出力画素値を0)とする。さらに、赤色光用液晶ライトバルブ40Rのすべての画素DTのうち、辺又は角で隣接する画素DT同士が光を出射することがないように、4(2×2)画素に1つの割合で画素DTの透過率を最大(出力画素値を1023)にするとともに、他の画素DTの透過率を最小とする。この結果、図7(b)に示すように、受光部85には最大透過率の画素DTから出射された光が疎らに投写されるため、1つの受光素子PDが、複数の画素DTから出射された光を受光することはない。つまり、制御装置81は、各受光素子PDに2つ以上の画素DTから出射した光が照射されることがないように、光を出射する画素DTを選択する画素選択手段として機能する。
【0055】
ステップS202では、各受光素子PDが、それぞれの受光量に応じたアナログの電気信号を発生し、受光装置82がこの電気信号にAD変換等の信号処理を施した後に制御装置81に送信する。
【0056】
ステップS203では、制御装置81が、受信した電気信号、つまり、各受光素子PDが受光した受光量に基づいて画素DT毎の出射光量を導出する。具体的には、例えば、画素DTa1から出射した光量を、4つの受光素子PDa1,PDa2,PDb1,PDb2による受光量に基づいて導出し、これを光を出射したすべての画素DTについて行う。
【0057】
以降、光を出射する画素DTを、図7(c)、(d)、(e)の順に都度変えながら、ステップS202,S203を繰り返し(ステップS204,S205)、液晶ライトバルブ40Rのすべての画素DTの出射光量を導く。
【0058】
さらに、光を出射する画素DTの透過率を1段階ずつ低下させながら、ステップS202〜S205を繰り返し(ステップS206,S207)、すべての階調(出力画素値)で、液晶ライトバルブ40Rの各画素DTの出射光量を導く。
【0059】
図6に戻って、ステップS103及びステップS104では、ステップS102と同様の手順で、それぞれ緑色光及び青色光用の液晶ライトバルブ40G,40Bの各画素DTの輝度分布を全階調で測定する。以上、ステップS102〜S104により、すべての液晶ライトバルブ40R,40G,40Bについて、各画素DTから出射する光の輝度分布が階調(出力画素値)毎に取得される。
【0060】
ステップS105では、制御装置81が、ステップS102〜S104で取得された輝度分布から、輝度ムラ(出射光量のばらつき)等の表示異常の検出を行う。表示異常が検出された場合には、ステップS106に移行し、表示異常が検出されなかった場合には、ステップS111に移行する。
【0061】
表示異常が検出され、ステップS106に移行した場合には、検出された表示異常が輝度調整によって補正可能なレベルか否かを、各画素DTの出射光量によって判断し、補正可能である場合には、ステップS107に移行し、補正が不可能なレベルであれば、当該プロジェクタPJを不良品として判定して、検査を終了する。
【0062】
ステップS107では、制御装置81が、表示異常を補正するために、各入力画素値(0〜255)に対して、各画素DTから略均一の光量が出射されるような出力画素値を対応付け、これを各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの画素DT毎に行って、既存の補正テーブルを、表示異常を補正可能な補正テーブルに変更する。つまり、制御装置81は、各画素DTからの出射光量を補正可能な補正テーブル(補正情報)を生成する補正情報生成部として機能する。
【0063】
ステップS108では、制御装置81が、変更した補正テーブルをプロジェクタPJの記憶部71に書き込む。この結果、プロジェクタPJの制御部70は、色光(液晶ライトバルブ)、画素DT、及びその入力画素値に基づいて補正テーブル71aを参照することにより、輝度ムラのない出射光量を得るための出力画素値を取得することが可能となる。
【0064】
ステップS111以降においては、プロジェクタPJから略白色の投写光を投写させ、この投写光量を測定するとともに、この投写光に含まれるR,G,Bの各色光の光量を測定し、これらの測定結果から、各色光が適正な色バランスで出射されるような補正テーブルを生成する。なお、ステップS102〜S108において、画素DT毎の輝度ムラが補正済みであるため、ステップS111以降においては、必ずしも画素DT毎の補正は必要ない。本実施形態では、投写領域65を複数のブロックに分割し、各ブロックにつき1つの受光素子PDで光量の測定を行い、ブロック毎に均一の補正を行う。
【0065】
ステップS111では、制御装置81が、8bitの入力画素値からなる画像信号をプロジェクタPJに送信し、プロジェクタPJから略白色の投写光を出射させる。具体的には、制御装置81は、全液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの全画素DTに対する入力画素値として、その最大値255をプロジェクタPJに出力する。プロジェクタPJの制御部70は、補正テーブル71aに従って、最大入力画素値255に対応する出力画素値を液晶ライトバルブ駆動部45R,45G,45Gに出力することにより、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bから略均一の白色光が出射する。受光装置82は、各受光素子PDが受光した略白色の光量に応じた電気信号を制御装置81に出力する。
【0066】
次いで、入力画素値を1つ下げて254として、同様に光量の測定を行い、さらに、すべての入力画素値で上記動作を繰り返す。
【0067】
ステップS112では、投写光が赤色光透過フィルタ84Rを通過して受光装置82に投写されるよう、制御装置81がフィルタホイール84を回動する。これにより、受光装置82には、略白色の投写光に含まれる赤色光成分のみが投写される。この状態で、前記ステップS111と同様、投写光に含まれる赤色光量を入力画素値毎に測定する。
【0068】
ステップS113及びステップS114では、投写光がそれぞれ緑色光透過フィルタ84G及び青色光透過フィルタ84Bを通過するようにフィルタホイール84を回動して、ステップS112と同様の動作を行い、投写光に含まれる緑色光量及び青色光量を入力画素値毎に測定する。
【0069】
ステップS115では、ステップS111〜S114で入力画素値毎に取得した略白色光量、及びこの略白色光に含まれる赤色光量、緑色光量、及び青色光量に基づいて、各色光が適正な色バランスで出射されているか否かを判断する。適正であれば、当該プロジェクタを良品として判定して検査を終了し、適正でない場合には、ステップS116に移行する。
【0070】
ステップS116では、各色光が適正な色バランスで出射されるように、既存の補正テーブルを変更する。
【0071】
ステップS117では、変更した補正テーブルを、プロジェクタPJの記憶部71に書き込む。
【0072】
以上により、プロジェクタPJの制御部70は、色光(液晶ライトバルブ)、画素DT、及びその入力画素値に基づいて補正テーブル71aを参照することにより、入力画素値に応じて適正な出射光量を得るための出力画素値を生成することが可能となり、プロジェクタPJは、輝度ムラがなく、色バランスが整った投写光を投写することが可能となる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクタPJ、及びその検査装置80、並びにその検査方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0074】
(1)本実施形態のプロジェクタの検査装置80によれば、プロジェクタPJからの投写光を複数の受光素子PDを備えた受光装置82で受光するため、スクリーンSC等に投写した画像を撮像装置等で入力する必要がなくなる。この結果、撮像装置の入力光学系の光軸のずれや収差等の影響、或いは、スクリーンSC等の反射特性による影響を受けることがないため、プロジェクタPJによる投写画像(各画素DTの出射光量)を正確に取得することが可能となる。
【0075】
(2)本実施形態のプロジェクタの検査装置80によれば、液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの画素数以上の受光素子PDで投写光を受光可能であるため、プロジェクタPJによる投写画像を、一度に高い解像度で取得することが可能となる。この結果、検査時間を短縮することが可能となるとともに、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも検出することが可能となる。
【0076】
(3)本実施形態のプロジェクタの検査装置80及び検査方法によれば、制御装置81が、1つの受光素子PDに複数の画素DTから出射した光が照射されることがないように液晶ライトバルブ40R,40G,40Bを駆動している。このため、本実施形態のように、プロジェクタPJと受光装置82とが、1つの受光素子PDで複数の画素DTから出射した光を受光可能な位置関係にある場合でも、画素DT毎の出射光量を知ることが可能となり、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも検出することが可能となる。
【0077】
(4)本実施形態のプロジェクタの検査装置80及び検査方法によれば、制御装置81が、受光素子PDによって正確に取得した投写画像に基づいて、画素毎に出射光量を補正可能な補正テーブルを生成し、この補正テーブルを検査対象のプロジェクタPJにフィードバックしているため、各画素DTからの出射光量を適正に補正することが可能となる。この結果、ラビングに起因する線状の輝度ムラ等、微小な表示欠陥をも補正することが可能となる。
【0078】
(5)本実施形態のプロジェクタPJによれば、複数の受光素子PDを備えた受光装置82に投写光を照射することによって生成された補正テーブル71aを記憶し、この補正テーブル71aに従って画像信号を補正可能になっている。検査装置80は、スクリーンSC等に投写した画像を撮像装置等により入力する検査装置とは異なり、撮像装置の入力光学系の光軸のずれや収差等の影響、或いは、スクリーンSC等の反射特性による影響を受けずに投写画像を取得可能であるため、プロジェクタPJの投写画像をより正確に取得することが可能である。つまり、このプロジェクタPJによれば、検査装置80によって生成された補正テーブル71aに従って画像信号を補正するため、各画素DTからの出射光量を適正に補正することが可能となる。
【0079】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係るプロジェクタの検査装置について、図面を参照して説明する。図9は、本実施形態に係るプロジェクタPJの検査装置を説明する図であり、(a)は、検査装置の概略構成図、(b)は、受光装置のA視平面図である。
【0080】
図9に示すように、本実施形態の受光装置82は、プロジェクタPJの投写光の一部を受光可能な受光部85と、制御装置81からの制御信号に応じて、受光部85をX方向に移動させることが可能な駆動部86とを備えている。本実施形態の受光部85には、フォトダイオード等からなる複数の受光素子PDが、第1実施形態と同一のピッチPx,Pyでマトリクス状に配置されており、Y方向には、プロジェクタPJの液晶ライトバルブ40R,40G,40BのY方向の画素数(768個)よりも多くの受光素子PDが備えられる一方、X方向には、X方向の画素数(1024個)よりも少ない受光素子PDが備えられている。
【0081】
本実施形態の受光装置82で検査を行う際には、まず、ステップS101(図6参照)において、プロジェクタPJの投写領域65が、Y方向には、受光部85に収まるようにするとともに、X方向には、受光部85が移動可能な範囲となるように、プロジェクタPJの設置位置やズーム状態を調整する。さらに、ステップS102〜S104及びステップS111〜S114において、制御装置81が受光部85をX方向に移動させながら投写光を受光することによって、投写領域65全体の投写光量を測定する。
【0082】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクタの検査装置80によれば、前記第1実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0083】
本実施形態のプロジェクタの検査装置80によれば、投写光の一部を受光可能な受光部85が移動可能であり、受光部85を移動させることにより投写光全体を受光することが可能になっている。このため、投写光全体を一度に受光可能な数の受光素子PDを備える場合に比べて、必要な受光素子PDが少数で済むため、検査装置80のコストを低減することが可能となる。
【0084】
(変形例)
なお、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0085】
・前記第1及び第2実施形態において、ステップS102〜S104では、すべての出力画素値で輝度分布の測定を行い、ステップS111〜S114では、すべての入力画素値で受光量の測定を行っているが、これらの測定を複数階調おきに実施して、測定されない階調の補正については、線形補間等により補うようにしてもよい。
【0086】
また、補正テーブル71aにおいても、すべての入力画素値に対応付けられた出力画素値を記憶する必要はなく、複数の入力画素値おきに対応する出力画素値を記憶するようにして、記憶されていない入力画素値に対応する出力画素値は、線形補間等により補うようにしてもよい。
【0087】
・前記第1及び第2実施形態において、各液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの各画素DTと受光素子PDとが1対N(Nは1以上の自然数)で対応するように受光素子PDを配置するとともに、ステップS101でプロジェクタPJを設置する際に、1つの画素DTから出射した光のほとんどが、前記N個の受光素子PDに照射されるように、プロジェクタPJの設置位置やズーム状態を調整するようにしてもよい。
【0088】
このプロジェクタの検査装置によれば、各画素DTから出射される光を、対応するN個受光素子PDによって個別に受光するため、各画素DTの出射光量を、対応するN個の受光素子PDによる受光量に基づいて容易に導くことが可能となる。さらに、一度にすべての画素DTの出射光量を知ることが可能であるため、検査時間を短縮することが可能となる。
【0089】
・前記第1実施形態において、受光素子PDの数は、画素DTよりも多い必要はない。図10は、1つの受光素子PDが、4(2×2)個の画素DTから出射した光を受光可能な大きさである例を示す説明図である。図10に示すように、9(3×3)画素に1つの割合で画素DTから光を出射させれば、1つの受光素子PDに複数の画素DTから出射した光が照射されることがなく、光を出射する画素DTを9回切り替えることにより、すべての画素DTから出射した光を受光することが可能となる。
【0090】
なお、受光装置PDの数が多いほど、すべての画素DTから出射した光を、少ない回数で受光することが可能となるため、検査時間を短縮するためには、受光素子PDの数が多いほうが望ましい。
【0091】
・前記第1及び第2実施形態において、フィルタホイール83の回動によって、減光フィルタを切り替える構成にしているが、印加する電圧に応じて透過率を変更可能なエレクトロクロミックガラスを用いるようにしてもよい。
【0092】
・前記第1及び第2実施形態において、減光フィルタや各色光透過フィルタは、必須の構成ではなく、投写光の光量が受光素子PDの特性に対して適性であれば、減光フィルタ、つまり、フィルタホイール83は不要である。また、輝度分布の測定や輝度ムラの補正のみを行う場合には、各色光透過フィルタ、つまり、フィルタホイール84は不要である。
【0093】
・前記第1及び第2実施形態において、ステップS108又はステップS117において補正テーブル71aを書き込んだ後に、再度、輝度分布の測定や色バランスの調整を行い、その結果に応じて補正テーブル71aを再変更し、これを何度か繰り返すことによって、より適正な補正テーブル71aを生成するようにしてもよい。
【0094】
・前記第1及び第2実施形態において、検査装置80の制御装置81は、プロジェクタPJの内部に備えるようにしてもよい。例えば、プロジェクタPJの制御部70が制御装置81を兼用するとともに、制御部70が、受光装置82の接続等により検査モードであることを判断し、検査可能な状態とすることが可能である。
【0095】
・前記第1及び第2実施形態では、光変調装置として、透過型の液晶ライトバルブ40R,40G,40Bを用いているが、反射型の液晶型光変調装置であるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)を用いることも可能である。また、入射した光の出射方向を、画素としてのマイクロミラー毎に制御することにより、光源から出射した光を変調するミラーデバイス等を用いたプロジェクタにも適用可能である。
【0096】
・前記第2実施形態において、図11に示すように、受光部85をX方向及びY方向に駆動可能な駆動部86x、86yを備え、X方向のみならずY方向の受光素子PDの数も減少させるようにしてもよい。この受光装置82で検査を行う際には、まず、ステップS101(図6参照)において、プロジェクタPJの投写領域65を、受光部85が移動可能な範囲となるように、プロジェクタPJの設置位置やズーム状態を調整した後、ステップS102〜S104及びステップS111〜S114において、制御装置81が受光部85をX方向又はY方向に移動させながら投写光を受光することによって、投写領域65全体の投写光量を測定する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】第1実施形態に係るプロジェクタの光学系の概略構成を示す構成図。
【図2】液晶ライトバルブ40R,40G,40Bの平面図。
【図3】第1実施形態に係るプロジェクタの概略構成を示すブロック図。
【図4】第1実施形態に係るプロジェクタの検査装置を説明する図であり、(a)は、検査装置の概略構成図、(b)は、受光装置のA視平面図。
【図5】(a)〜(c)は、フィルタホイールを説明する平面図。
【図6】第1実施形態に係るプロジェクタの検査方法の概略を示すフローチャート。
【図7】(a)〜(e)は、第1実施形態に係る受光部に対する投写領域の位置関係を示す説明図。
【図8】測定方法の詳細を説明するフローチャート。
【図9】第2実施形態に係るプロジェクタの検査装置を説明する図であり、(a)は、検査装置の概略構成図、(b)は、受光装置のA視平面図。
【図10】変形例に係る受光部に対する投写領域の位置関係を示す説明図。
【図11】変形例に係る受光装置の平面図。
【符号の説明】
【0098】
PJ…プロジェクタ、DT…画素、PD…受光素子、10…照明光学系、11…光源、20…色光分離光学系、30…リレー光学系、40R,40G,40B…液晶ライトバルブ、41…液晶パネル、45R,45G,45B…液晶ライトバルブ駆動部、50…クロスダイクロイックプリズム、60…投写レンズ、65…投写領域、70…制御部、71…記憶部、71a…補正情報としての補正テーブル、80…検査装置、81…画素選択手段及び補正情報生成部として機能する制御装置、82…受光装置、83,84…フィルタホイール、83a,84a…回転駆動部、85…受光部、86,86x,86y…駆動部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を、前記光変調装置によって前記画素毎に変調して投写するプロジェクタの検査装置であって、
複数の受光素子が互いに密接するように配置され、前記プロジェクタからの投写光を前記受光素子によって受光可能な受光装置を備えたことを特徴とするプロジェクタの検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタの検査装置において、前記受光装置は、前記画素数以上の前記受光素子を備えていることを特徴とするプロジェクタの検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプロジェクタの検査装置において、前記受光素子は、前記各画素に少なくとも1つの前記受光素子が対応するように前記受光装置に配置され、前記各画素から出射された光を、対応する前記受光素子によって受光することを特徴とするプロジェクタの検査装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のプロジェクタの検査装置において、さらに、前記光変調装置に備えられた複数の画素の中から、前記各受光素子に2つ以上の画素から出射した光が照射されることがないように、光を出射する画素を選択する画素選択手段を備えたことを特徴とするプロジェクタの検査装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロジェクタの検査装置において、さらに、前記各受光素子による受光量に応じて、前記各画素からの出射光量を補正可能な補正情報を生成する補正情報生成部を備えたことを特徴とするプロジェクタの検査装置。
【請求項6】
複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を、前記光変調装置によって前記画素毎に変調して投写するプロジェクタの検査装置であって、
複数の受光素子が配置され、前記プロジェクタからの投写光の一部を前記受光素子によって受光可能な受光部と、前記受光部の位置を移動させる駆動部とを備えたことを特徴とするプロジェクタの検査装置。
【請求項7】
複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を前記光変調装置によって前記画素毎に変調するとともに、前記各画素から出射した光を投写するプロジェクタの検査方法であって、
前記プロジェクタの投写光が、複数の受光素子が互いに密接するように配置された受光装置に照射されるように、前記プロジェクタを設置する第1のステップと、
前記各受光素子に2つ以上の前記画素から出射した光が照射されることがないように、前記光変調装置を駆動して、前記複数の画素のうちの一部の画素から光を出射させて、投写を行う第2のステップと、
前記プロジェクタからの投写光を、前記受光装置によって受光し、前記受光素子毎に受光量を検出する第3のステップと、
前記受光素子毎に検出された受光量から、光を出射した各画素の出射光量を導出する第4のステップと、
前記第2〜第4のステップを繰り返すとともに、光を出射させる画素を都度変更することによってすべての画素からの出射光量を導出することを特徴とするプロジェクタの検査方法。
【請求項8】
請求項7に記載のプロジェクタの検査方法において、さらに、前記第4のステップで導出した前記各画素からの出射光量に応じて、前記画素毎に出射光量を補正可能な補正情報を生成する第5のステップを有することを特徴とするプロジェクタの検査方法。
【請求項9】
複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を、外部から入力される画像信号に応じて前記画素毎に変調するとともに、前記各画素から出射した光を投写するプロジェクタであって、
複数の受光素子を備えた検査装置に投写光を照射することにより前記検査装置によって生成され、前記画素毎の出射光量を補正可能な補正テーブルを記憶し、
前記補正テーブルに従って、前記画像信号を補正可能であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項1】
複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を、前記光変調装置によって前記画素毎に変調して投写するプロジェクタの検査装置であって、
複数の受光素子が互いに密接するように配置され、前記プロジェクタからの投写光を前記受光素子によって受光可能な受光装置を備えたことを特徴とするプロジェクタの検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタの検査装置において、前記受光装置は、前記画素数以上の前記受光素子を備えていることを特徴とするプロジェクタの検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプロジェクタの検査装置において、前記受光素子は、前記各画素に少なくとも1つの前記受光素子が対応するように前記受光装置に配置され、前記各画素から出射された光を、対応する前記受光素子によって受光することを特徴とするプロジェクタの検査装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のプロジェクタの検査装置において、さらに、前記光変調装置に備えられた複数の画素の中から、前記各受光素子に2つ以上の画素から出射した光が照射されることがないように、光を出射する画素を選択する画素選択手段を備えたことを特徴とするプロジェクタの検査装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロジェクタの検査装置において、さらに、前記各受光素子による受光量に応じて、前記各画素からの出射光量を補正可能な補正情報を生成する補正情報生成部を備えたことを特徴とするプロジェクタの検査装置。
【請求項6】
複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を、前記光変調装置によって前記画素毎に変調して投写するプロジェクタの検査装置であって、
複数の受光素子が配置され、前記プロジェクタからの投写光の一部を前記受光素子によって受光可能な受光部と、前記受光部の位置を移動させる駆動部とを備えたことを特徴とするプロジェクタの検査装置。
【請求項7】
複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を前記光変調装置によって前記画素毎に変調するとともに、前記各画素から出射した光を投写するプロジェクタの検査方法であって、
前記プロジェクタの投写光が、複数の受光素子が互いに密接するように配置された受光装置に照射されるように、前記プロジェクタを設置する第1のステップと、
前記各受光素子に2つ以上の前記画素から出射した光が照射されることがないように、前記光変調装置を駆動して、前記複数の画素のうちの一部の画素から光を出射させて、投写を行う第2のステップと、
前記プロジェクタからの投写光を、前記受光装置によって受光し、前記受光素子毎に受光量を検出する第3のステップと、
前記受光素子毎に検出された受光量から、光を出射した各画素の出射光量を導出する第4のステップと、
前記第2〜第4のステップを繰り返すとともに、光を出射させる画素を都度変更することによってすべての画素からの出射光量を導出することを特徴とするプロジェクタの検査方法。
【請求項8】
請求項7に記載のプロジェクタの検査方法において、さらに、前記第4のステップで導出した前記各画素からの出射光量に応じて、前記画素毎に出射光量を補正可能な補正情報を生成する第5のステップを有することを特徴とするプロジェクタの検査方法。
【請求項9】
複数の画素が形成された光変調装置を有し、光源から出射した光を、外部から入力される画像信号に応じて前記画素毎に変調するとともに、前記各画素から出射した光を投写するプロジェクタであって、
複数の受光素子を備えた検査装置に投写光を照射することにより前記検査装置によって生成され、前記画素毎の出射光量を補正可能な補正テーブルを記憶し、
前記補正テーブルに従って、前記画像信号を補正可能であることを特徴とするプロジェクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−106382(P2006−106382A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293316(P2004−293316)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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