説明

プロパンのプロピレンへの部分的酸化を含むアクリル酸の製造方法

本発明は、プロピレンと、次にアクロレインとを酸化することによるアクリル酸の製造方法であって、アクリル酸回収工程の終わりにプロパンの部分的酸化を実行し、次にアクリル酸回収カラム内を2回通過したプロパンとプロピレンに富んだ気体をプロピレン回収反応器に戻すことにより、未反応の気体を再循環することを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロパンからプロピレンへの酸化段階にガスを再循環させることを含むプロピレンからのアクリル酸の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸の生産は、一般に、2段階の酸化から成り、一つはプロピレンからアクロレインへの酸化という第1段階であり、もう一方はアクロレインのアクリル酸への酸化という第2段階である。
【0003】
しかしながら、プロピレン/空気/窒素/蒸気混合物の引火性および爆発危険性、反応器から生じた大量の熱の除去、ならびに高いプロピレンレベルに対する触媒の感度等の重大な制約により、生産性が制限されている。それゆえ、プロピレンを含むガス流へプロパンを導入し、これにより反応熱を部分的に除去でき、従ってプロピレン含有量の増加をできることは有利である。
【0004】
特許文献1は、プロピレンのアクリル酸への2段階の酸化を説明しており、詳細には、5〜70体積%の例えばプロパン等の飽和脂肪族炭化水素(炭素数1〜5)と、不活性ガスとして使用される3〜50体積%の二酸化炭素との存在下でのプロピレンからアクロレインへの酸化について記載している。実施される飽和脂肪族炭化水素は、約300℃の定圧比熱を有し、これは窒素または空気よりも高い。したがって、添加された気体は、酸化反応によって生じた熱を部分的に吸収することができる。したがって、反応ガス中のプロピレン含有量を増加させて、大量のアクリル酸を生産することが可能である。商業上、第1段階の反応後に回収されたガスを使用することにより、開始ガスの製造を想定することが可能である。しかしながら、導入されたプロパンの変換が実際に実現できるかどうかが特定できない。さらに、後の操作に悪影響を及ぼし得る多数の反応副産物の形成を回避しつつ工業規模でプロパンをプロピレンに変換することは容易ではなかった。
【0005】
特許文献2は、プロパンからプロピレンへ、次にアクロレインへ、そしてアクリル酸への変換について記載している。プロピレンのアクロレイン相への酸化におけるプロパンの存在は、この反応段階の効率を改善する。アクロレイン製造反応の最後に、プロパンをそのプロピレンへの酸化のために反応器に入れて再循環させることは有利であり、これは好ましくは低いプロパン変換率と高いプロピレン選択性を生じさせる。プロパンのプロピレンへの酸化は、モリブデン、バナジウム、テルルおよび例えばニオブ、タングステン、チタン等または必須元素としてアンチモンなどから選択された少なくとも1つの他の元素を含む混合金属酸化物等の触媒の存在下で実行される。プロパン酸化反応は、200と550℃の間で含まれた温度で一般に実行される。プロピレンのアクロレインへの変換反応は高温で触媒性媒体中にて行なわれる。反応過程の間に形成された多数の副産物は分離されなければならない。図2の教示によれば、アクリル酸回収ユニットからの出口において、プロパン、プロピレン、酸素、一酸化炭素および二酸化炭素(任意選択で窒素)を含む未反応ガスの流れが、再循環流へ向かって送られ(routed)、次に、圧縮されて、プロパン→プロピレン→アクロレイン→アクリル酸の変換方法に連続的に再導入される。しかしながら、プロパン−プロピレンへの変換のために使用される触媒(MoVNb酸化物)は、プロピレンに加えてアクリル酸の形成を引き起こすことが知られている。この段階で形成されたアクリル酸は、プロピレン−アクロレイン変換のために反応器に向かって送られるが、それは反応上負の効果を有する場合がある。
【0006】
プロパンの触媒酸化が、使用される操作条件に依存して、多数の反応生成物を生じさせ
得ることが知られている。非特許文献1は金属酸化物の存在下でプロパンを部分的に触媒酸化するための種々の経路について記載しており、それは3つの主な反応経路を含む以下の図により要約され得る。
【0007】
【化1】

【特許文献1】欧州特許出願第293 224号
【特許文献2】米国特許第6,492,548号
【非特許文献1】L. Luo, J.A. Labinger and M.E.Davis, J. of Catalysis, 200, 222-231(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ある酸化生成物または別の酸化生成物を、工業的パフォーマンスが得られるように特に指向させるには、その酸化を実行するためのパラメータが非常に正確に設定されることが必要である。多数の反応副産物が生ずる可能性があり、それは反応挙動における、あるいは所望の生成物の分離におけるハンディキャップとなり得ることが容易に理解される。
【0009】
アクリル酸の存在が、プロピレン−アクロレイン変換の段階に著しく干渉し得ることが示されている。したがって、アクリル酸の工業的製造では、大量のアクリル酸がガス流から分離されることもなくプロピレン−アクロレイン変換中に存在するため、未反応ガスの再循環動作は現実には利点ではなく、重大な欠点であることが分かる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここで、本発明の主題である。プロピレンおよびその後のアクロレインの酸化によるアクリル酸の製造が、未反応ガスの再循環を用いて、より詳細にはプロパンの部分的酸化を用いて、アクリル酸回収段階の出口で並行してこの部分的酸化を行い、その後図1に示すようにアクリル酸回収カラムを2回通過したプロパンとプロピレンに富んだガスをプロピレン変換反応器に戻すことにより、実現できることが判明した。
【0011】
プロピレンからのアクリル酸の製造方法におけるこの改良は、プロパンの分圧を十分に高いレベルに維持しつつプロピレンの開始レベルを増加させるように、プロピレン−アクロレインの第1の酸化段階で不活性ガスとして使用されるプロパンのプロピレンへの部分的変換と、第2のアクリル酸への変換段階からの出口における回収とから成る。この方法
の重要な利点は、ガス流からアクリル酸を除去し、プロピレン−アクロレイン酸化反応器へのアクリル酸の導入を回避することである。別の利点は、アクリル酸収率(プロパンの部分的酸化反応の副産物の大部分を占める)を増加させることと、さらにはプロピオン酸またはアセトン等の第2の副産物の形成を抑制できることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明によれば、プロパンは、アクリル酸回収を目的とした吸着カラムと並行して配置された反応器でプロピレンへの部分的変換を受ける。この部分的変換は、酸化物の混合物により構成された触媒の存在下で、プロピオン酸およびアセトン等の副産物の生成が制限され、プロピレンが主生成物として得られるのを許容する特定の操作条件下で起こる。次に、アクリル酸の回収のために使用されるようガス流が吸着カラムへ再導入され、次に、プロピレン−アクロレイン変換のために反応器に向かって送られる。
【0013】
本発明によれば、プロパンのプロピレンへの部分的酸化の方法は、高温(300℃から500℃、好ましくは380より大きく450℃以下)で、かつおよび高い体積速度/時間(VVH、反応ガス流/触媒量)で実行される。有利には、この動作は10000h-1より大きいVVHで起こり、好ましくは10,000h-1よりも大きい値と20,000h-1との間で起こる。
【0014】
本発明によれば、プロパンのプロピレンへの部分的酸化に使用される触媒は、モリブデン、バナジウム、テルルまたはアンチモン、ニオブもしくはタンタル、およびシリコンから選択された元素を含み、以下の構造に対応する酸化物の混合物である:
Mo1a(TeまたはSb)b(NbまたはTa)cSidx(I)
式中、
−aは0.006と1の間の値(0.006および1を含む);
−bは0.006と1の間の値(0.006および1を含む);
−cは0.006と1の間の値(0.006および1を含む);
−dは0と3.5の間の値(0および3.5を含む);および
−xは他の元素と結合される酸素の数であり、それらの元素の酸化状態によって決まる。
【0015】
式(Ia)の触媒:
Mo1aSbbNbcSidx(Ia)
は、式中、a、b、c、dおよびxは上述に定義した通りであるが、特に好ましい。
【0016】
より好ましいのは、以下の触媒(I)または(Ia)である:
−aは0.01と0.06の間の値(0.01および0.06を含む);
−bは0.01と0.5の間の値(0.01および0.5を含む);
−cは0.006と0.3の間の値(0.006および0.3を含む);
−dは0と2の間の値(0および2を含む);および
xは他の元素と結合される酸素の数であり、それらの元素の酸化状態によって決まる。
【0017】
触媒は、当業者に周知の技術によれば、不活性支持体上に形成することができ、固定床型反応器に適用され得る。例えば、触媒は押し出し、ペレット化、コーティング、含浸により形成することができ、好ましくはコーティングにより形成される。
【0018】
式(I)の触媒の組成に含まれる種々の金属の酸化物を、この触媒の製造における原料として使用することができるが、原料は酸化物に制限されるわけではなく、使用可能な原料の中でも、以下の制限的でないものについて言及することができる:
−モリブデンの場合、モリブデン酸アンモニウム、パラモリブデン酸アンモニウム、ヘ
プタモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、MoCl5のようなハロゲン化またはオ
キシハロゲン化モリブデン、Mo(OC255等のモリブデンアルコキシドのようなモ
リブデンからなる有機金属化合物、モリブデニルアセチルアセトン;
−バナジウムの場合、メタバナジン酸アンモニウム、VCl4、VCl5またはVOCl3のようなハロゲン化またはオキシハロゲン化バナジウム、VO(OC253等のバナジウムアルコキシドのようなバナジウムからなる有機金属化合物;
−アンチモンの場合、例えば特に方安鉱(ほうあんこう)の種類では酸化アンチモン(三酸化アンチモン)、硫酸アンチモン(Sb2(SO43)または塩化アンチモン(三塩
化アンチモン、五塩化アンチモン);
−テルルの場合、テルル、テルル酸、TeO2
−ニオブの場合、ニオブ酸、酒石酸ニオブ、シュウ酸水素ニオブ、オキソトリシュウ酸アンモニウムニオブ{(NH43[NbO(C243]*1.5H2O}、シュウ酸ニオブおよびアンモニウム、シュウ酸および酒石酸ニオブ、NbCl3、NbCl5のようなハロゲン化またはオキシハロゲン化ニオブ、およびNb(OC255、Nb(On−Bu
5等のニオブアルコキシドのようなニオブからなる有機金属化合物;
−タンタルの場合、シュウ酸タンタル;
そして、一般に、すべての化合物は焼成(calcination)により酸化物、すなわち、有
機酸の金属塩、無機酸の金属塩、金属複合化合物等を形成することができる。
【0019】
シリコン源は、コロイドシリカおよびポリシリカの少なくとも一方により一般に構成される。
例として、触媒支持体は、有利にはシリカ、アルミナ、アルミノシリケート、ステアタイト、セラミックまたは炭化ケイ素である。
【0020】
触媒の製造方法は、ニオブ酸かシュウ酸タンタル、シュウ酸、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、テルル酸または酸化アンチモンの水溶液を、撹拌下で混合すること、適切な場合にはコロイドシリカを添加すること、次に、約300−320℃で空気下で好ましくは予備焼成すること、および約600℃で窒素下で焼成することを含む。
【0021】
好ましい実施形態によれば、触媒の製造方法は、ニオブ酸とシュウ酸の溶液の調製または市販のシュウ酸タンタル溶液の使用と、次に、モリブデン、バナジウム、テルルまたはアンチモンの溶液の調製と、その後2つの溶液を混合し結果としてゲルを形成することと、得られたゲルを乾燥させることと、予備焼成および焼成することから成る。
【0022】
特に好ましい方法によれば、触媒は次の段階の実施により製造することができる:
1)撹拌下と、任意選択で加熱下での、バナジウム源(例えばメタバナジン酸アンモニウム)の水への溶解;
2)適切な場合、先に得られた溶液への、テルルあるいはアンチモン源、例えばテルル酸または酸化アンチモン(特に方安鉱の種類の場合)の添加;
3)モリブデン源(例えばヘプタモリブデンアンモニウム)の追加;
4)得られた溶液の還流下での反応;
5)適切な場合、酸化剤(アンチモン触媒の場合、過酸化水素)の追加;
6)適切な場合、加熱下で、ニオブ源(例えばニオブ酸)をシュウ酸と混合させることにより製造された溶液の追加;
7)還流下と、好ましくは不活性雰囲気下での、ゲルが得られるまでの反応混合物の反応;
8)得られたゲルの乾燥;
9)好ましくはゲルの予備焼成;および
10)触媒を得るための、任意選択で予備焼成されたゲルの焼成。
【0023】
シリコン源(コロイドシリカおよびポリシリカの少なくとも一方)は、有利には段階5の後に加えられる。また、シリコン源は乾燥段階か予備焼成段階の後で加えることも可能である。
【0024】
上記の方法の代わりに:
乾燥[例えば段階8で]は、霧化、凍結乾燥、ゼオライトを用いた乾燥法(Zeodration)、またはマイクロ波等により、オーブンの中の薄層の形で実行することができる;
予備焼成は、触媒の粒子が予備焼成の間にまたは焼成の間に互いに融合するのを防止すべく互いから分離されるように、流動床で280〜300℃の気流下で、または回転式オーブンの曝気した固定床で320℃の静止空気下で行なうことができる;
焼成は、例えば回転式オーブンまたは流動床で、非常に純粋な窒素下で、600℃に近い温度で、2時間であってよい時間の間、好ましくは行なわれる。
【0025】
予備焼成の好ましい実施形態によれば、操作は以下の条件で行われる:
−10ml/min/g以上の触媒の気流下で300℃未満の温度で、特に約50ml/min/gの気流下で約290℃で;または
−10ml/min/g未満の触媒の気流下で300℃から350℃までの温度で、特に約10ml/min/g未満の気流下で約320℃で。
【0026】
触媒の別の製造方法によれば、金属源を混合し、次に均質な混合物が得られるまで共に粉砕することにより、固体−固体反応が実行される。固体は減圧下で600℃に近い温度で加熱した後で得られる。
【0027】
有利には、金属酸化物または金属それ自身は金属源として使用される。より好ましくは、加熱は、長い期間(好ましくは3日〜1週間)実行される。
上述の方法に従って製造された触媒の各々は、通常20〜300μmの直径をした粒子の形で示すことができ、本発明の方法を行なう前に、組み合わされた触媒の各々の粒子は混合される。ゲルまたは懸濁物の霧化(atomization)により、成形(shaping)を実行することができる。固定床で使用するために、触媒は3〜10mm、好ましくは5〜8mmの直径を備え、有効成分で覆われたビーズまたはシリンダもしくは中空シリンダの形で示すことができる。
取付装置
図1は、並行状態のプロパンの部分的酸化を含む、未反応ガスの再循環によるアクリル酸の製造方法の実行を許容する取付装置について説明する。この取付装置は、本発明の範囲内に包含される。
【0028】
図1では、1〜7までの番号を付けられた要素は以下の意味を有する:
1:プロピレン/プロパンの新鮮な負荷
2:反応混合物(プロパン、プロピレン、蒸気、酸素)
3:プロピレンからアクロレインへの変換反応器。
【0029】
4:アクロレインからアクリル酸への変換反応器
5:吸着カラム
6:酸素添加口
7:プロパン変換反応器
本発明はさらに、アクリル酸製造のための装置であって、
a)プロピレンのアクロレインへの酸化用の第1反応器[3]
b)第1反応器[3]が連続的に原料を供給する、アクロレインのアクリル酸への酸化用の第2反応器[4]
c)第2反応器[4]と接続されたアクリル酸の回収のための吸着カラム[5]
d)未反応ガスが送られ、吸着カラム[5]の出口と並行に配置された、プロパンのプロピレンへの部分的酸化用の反応器[7]、該出口にあるガスはさらに吸着カラムまたは同様なカラムを通過して、
e)第1のプロピレン酸化反応器[3]へ再循環すること
を備えた装置に関する:
図1で、アクリル酸の回収を可能にする吸着カラム[5]と並列して配置された反応器[7]は、プロパンのプロピレンへの部分的酸化のためのものである。カラム[5]を離れたガス流は、酸化物混合物に基づく触媒床を含む反応器[7]に向けて送られる。このガス流は主にプロパン、未反応プロピレン、蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、残留酸素および任意選択で不活性ガス(アルゴン)、アクロレインおよびアセトンを含んでいる。蒸気/酸素分子/任意選択で不活性ガスの混合物を含むガス流れも、反応器[7]へ導入される。
【0030】
好ましくは、触媒床は固定床であり、詳細には同時供給される固定床である。別の代替例によれば、流動床または輸送床の使用も想定できる。
プロパン/酸素の分子比は1よりも大きく、好ましくは4以上である。プロパンの部分的酸化反応で実現される混合気では、プロパン含有量は少なくとも20%よりも大きくおよび90%より小さくなければならない。
【0031】
反応器[7]へ全体として導入される混合気中のプロパン/蒸気の体積比は重要ではなく、広い範囲内で変更可能である。大量に蒸気を導入することは必要ではなく、蒸気は混合気に存在しなくてもよい。
【0032】
同様に、不活性ガス(ヘリウム、クリプトン、これらの2つのガスの混合物、アルゴンまたは窒素、二酸化炭素等であり得る)の割合も重要ではなく、広い範囲内で変更可能である。
【0033】
最初の混合気の構成要素の割合は一般に(モル比で)以下の通りである:
プロパン/酸素/不活性ガス(Ar、N2、CO2)/H2O(蒸気)=1/0.05−
2/0−12/0.1−10。
【0034】
好ましくは、それらは1/0.1−1/0−11/0.3−6である。
反応器中の圧力は、1.01.104〜1.01.106Pa(0.1〜10大気圧)、好ましくは5.05.104〜5.05.105Pa(0.5−5大気圧)に一般に設定される。好ましくは、固定床の操作の場合、圧力は2.105Paに設定される。
【0035】
反応器[7]の出口では、プロパンとプロピレンに富んだガス流が、吸着カラム[5](任意選択で第2の同様な吸着カラムの中へ。この場合、第2のカラムの溶出液は第1のカラムに供給される)へ再導入される。アクリル酸吸着カラムでは、反応器[7]の酸化反応の副産物が回収される。したがって、プロピレンからアクロレインへの変換反応器[3]に再循環することにより送られたガス流は、残りのアクリル酸から分離される。
【0036】
プロピレン−アクロレインの変換反応器[3]は、新鮮なプロピレン/プロパン負荷物[1]と、再循環された反応混合物(プロピレン/プロパン/蒸気/酸素/任意選択で不活性ガスを含む)[2]との混合物と、酸素分子[6]の添加とを受け取る。基本的に、不活性ガスは窒素、二酸化炭素、アルゴンや、再循環ガスによって運ばれたメタン、エタン等の他のガスであり得る。
【0037】
プロピレンのアクロレインへの変換は促進するがプロパンの存在には感度が低い触媒を
選択することは重要である。一般に、反応は、モリブデン酸ビスマス等の触媒を、320℃に近い温度に2.105Paの圧力下で触媒することにより触媒される。触媒は、例え
ば、M. Tanimoto, Shokubai, 45(5), 360(2003)の刊行物の図2に記載されたモリブデン
酸塩から選択することができる。
【0038】
新鮮なプロピレン/プロパン負荷物[1]は蒸気分解装置由来のプロピレン留分であってよい。この場合、プロパン含有量は約5%である。また、精油所由来のプロピレン/プロパン留分を使用することも可能である。
【0039】
有利には、新鮮なプロピレン/プロパン負荷物中のプロパン含有量は少なくとも5%であるべきである。
反応器により受け取られるプロピレン/プロパン/蒸気/酸素/任意選択の不活性ガスの全体的な割合は、高いプロパン分圧が保証される割合でなければならない。この割合は、好ましくは5〜15/30〜50/0〜15/5〜20/0〜50の範囲に位置する。
【0040】
反応器[3]からのガス流の出力は、アクロレイン−アクリル酸変換用の反応器[4]に向かって送られる。
反応器[4]は、反応器[3]由来の混合気を受け取り、その後、混合気は、アクロレインのアクリル酸への変換を促進するがプロパンの存在に対する感度が低い触媒の存在下でアクリル酸に酸化される。一般に、反応は、2.105Paの圧力下で、250℃に近い温度にてモリブデンおよびバナジウムに基づく混合酸化物等の触媒により触媒される。触媒は、例えばM. Tanimoto, Shokubai, 45(5), 360(2003) の刊行物の表3に記載された混合酸化物から選択することができる。
【0041】
本発明は、プロピレンのアクロレインへの酸化のための反応器中の高いプロパン分圧と、酸化のこの最初の段階のレベルにおける非常に低割合のアクリル酸とを保証するガス再循環の結果、良好なアクリル酸選択性と、良好なプロピレン変換率とが組み合わされているという大きな利点を有する。さらに、プロパン部分変換反応路から吸着カラムへのガス流の通過は、アクリル酸が分離されることを可能にし、プロパンのプロピレンへの部分的変換中における主な反応副産物であるアクリル酸の収率の増加を保証する。
【0042】
本発明はまた、アクリル酸の製造のための、上述の方法の使用にも関する。
この利点は以下の試験で詳しく観察することができる。
実施例
以下の実施例は、本発明の範囲を制限することなく、本発明を例証する。
【0043】
プロパンのプロピレンへの部分的酸化のための触媒の製造
実施例A:触媒Aの製造:Mo10.33Nb0.11Te0.22Si0.95x
ニオブ溶液の製造:
以下のものが5リットルのビーカーに入れられる:
640g 蒸留水;
51.2g ニオブ酸(すなわちnNb=0.304モル);
最後に、103.2g シュウ酸二水和物(すなわちnoxalate=0.816モル)。
【0044】
シュウ酸/Nbのモル比はこの場合2.69である。
混合物を、攪拌下、2時間、60℃にて加熱する(蒸発を防ぐためにビーカーの上にビーカーカバーを配置する)。白色の懸濁液が得られる。混合物を、攪拌下、30℃まで冷却させる(約2時間冷却)。
【0045】
並行して、Mo、V、Teの溶液を以下の方法で製造する:
以下のものが5リットルのビーカーに入れられる:
2120g 蒸留水;
次に、488.0g ヘプタモリブデン酸アンモニウム(すなわちnMo=2.768モル);
次に、106.4g メタバナジン酸アンモニウム(すなわちnv=0.912モル)

最後に、139.2g テルル酸(すなわちnTe=0.608モル)。
【0046】
混合物を、1時間20分、60℃にて加熱する(蒸発を防ぐためにビーカーの上にビーカーカバーを配置する)。透明な赤色溶液が得られる。混合物を、攪拌しながら、30℃まで冷却させる(2時間冷却)。
【0047】
シリカの導入:
393.6gのLudoxシリカ(40重量%のシリカAS40)を、攪拌下、上述のよう
に調製されたMo、V、Teの溶液へ入れる。溶液は透明かつ赤色のままであるが、若干薄くなった。ニオブ溶液を(Mo、V、Te、Si)溶液に入れ、数分間攪拌した後、蛍光オレンジ色のゲルが得られる。その後、この溶液を霧化(実験用アトマイザ− Sodeva社のATSELAB)により乾燥させる。霧化は窒素雰囲気下で起こる。
【0048】
作業パラメータは全部で以下の通りである:
−窒素流量 約45Nm3/h;
−スラリー流量 約500g/h;
−ガスの入口温度 155℃と170℃の間;
−ガスの出口温度 92℃と100℃の間。
【0049】
サイクロンで回収された粒径40ミクロン(355.2g)未満の生成物を、130℃のオーブン内のテフロン(登録商標)で覆われたプレートに一晩入れる。331gの乾燥生成物が回収される。
【0050】
予備焼成および焼成:
331gの前駆物質を、空気流(47.9ml/分/g)の下、300℃で4時間予備焼成して、固形物を生じさせ、これを窒素流(12.8ml/分/g)の下、600℃で2時間焼成する。触媒Aはこのようにして得られる。
【0051】
この焼成は、スチール製コンデンサにおいて空気流および窒素流の下で行なわれる。これらのコンデンサは、マッフル炉に直接接地され、大気は煙突から供給される。内部温度計によって温度の正確なモニタリングが可能である。空気が触媒に向かって戻るのを防ぐため、窒素下での焼結の場合にはカバーが有用である。
【0052】
実施例B:式Mo10.30Sb0.15Nb0.10Si1xの触媒Bおよび式Mo10.30Sb0.15Nb0.10(シュウ酸塩)0.30Si1(H220.15(NH41.16x
によって表された前駆物質の製造:
前駆物質の合成:約100gの乾燥前駆物質をこのように製造する。
【0053】
段階1:溶解−沈降
溶液A
12.3g(0.1052モルV)のメタバナジン酸アンモニウム(AMV)(製造業者GfE)、7.7g(0.0528モルSb)のSb23(製造業者CAMPINE)、61.8gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(AHM、0.3501モルMo)(製造業者Starck)、1リットルのSVL(登録商標)ガラス製反応器内で、攪拌下、
に130mlの脱塩水溶液に入れ、128℃でサーモスタットで制御した油浴中で加熱する。漏斗をリンスするのに水を20mlでゆっくり添加することが必要である。AHMの添加後、反応器を窒素洗浄(flushing)下に置き、反応を4時間還流下に置いて攪拌下で維持する。濃い藍色に次第に変化する黄色の懸濁液が得られる。
【0054】
溶液B
その後、50gの水に溶解した6g(0.0530mol)の30重量%H22水溶液を、ゆっくり(約1〜2分かけて)添加する。透明でオレンジ色の溶液を得るために、純粋な過酸化水素の滴を8滴加える。
【0055】
溶液C
52.6gのLudox(登録商標)シリカAS40(nsi=0.350モル)を一度に加
える。溶液はわずかに曇る。形成された溶液を溶液Cと呼ぶ。
【0056】
溶液D
溶液Dを溶液Aと同様に調製する。100gの蒸留水、5.9gのブラジル国のCBMM社から入荷したニオブ酸を、500mlのビーカーに入れる(つまりnNb=0.035モル、13.2gのProlab社のシュウ酸(つまりnoxalates=0.105モル))。混合物を攪拌下で2時間70℃にて加熱し、次に、30℃に冷却する。その後、溶液を透明溶液を得るために6200rpmで12分間遠心する。
【0057】
溶液Dを溶液Cに一度トに加える。流動性のオレンジ色、次に黄色のゲルが得られる。攪拌を還流下で窒素流の下で30分間維持する。
段階2:乾燥
その後、ゲルを、130℃の換気されたオーブン内のテフロン(登録商標)で覆われたプレートに一晩入れて乾燥させる。111.4gの乾燥した前駆物質が回収される。前駆物質は葉の形で示され、上部が黒色で、下側に薄い緑色のフィルムがある。したがって、主成分を示し、次の式により表された前駆物質が得られる。
【0058】
Mo10.30Sb0.15Nb0.10(シュウ酸)0.30Si1(H220.15(NH41.16x
段階3:熱処理
30gの先に得られた前駆物質を静止空気下で317℃にて予備焼結する。
【0059】
49.8ml/分/gの窒素流下での594℃での焼成後に、24.4gの固体の焼結質量体が得られる。この触媒はCATALYST Bと呼ばれる。
プロパンの部分的酸化
以下の実施例では、プロパンの収率、選択性および変換率は以下のように定義される:
アクリル酸の収率(TTU)(%)=形成されたアクリル酸のモル数/導入されたプロパンのモル数×100。
【0060】
(収率は、個々の生成物における炭素のモル数を考慮し、実際、反応したプロパンの等価なモル数に相当する)。
プロパン変換率(%)=TTG(プロパン)=反応したプロパンのモル数/導入されたプロパンのモル数×100
アクリル酸選択性(%)=形成されたアクリル酸のモル数/反応したプロパンのモル数×100
他の化合物に関する選択性は、同様の方法で計算される。
【0061】
炭素収支(プロパンを含む分析により検出されたすべての生成物の収率の合計)が95
〜105%からなる場合、および炭酸ナトリウム滴定法により測定された酸のモル数が、クロマトグラフィによって決定された酸のモル数、すなわち10%に最も近い値に相当する場合、分析は有効である。
【0062】
反応器の装填
実験用反応器はすべて同様のプロトコルにより装填され、その例をここで詳細に示す。触媒は10mlの炭化ケイ素0.125mmで希釈した。
【0063】
反応器[7]の装填例(試験3および4の場合)を図2に示す。
装置(試験1に従う反応器の装填例)
試験は固定床型反応器で行なわれる。
【0064】
Pyrex社製の円筒形垂直反応器を、底部から上部まで負荷し、反応器は以下のものを含
む:
−直径0.125mmの粒子の形をした2ml 炭化ケイ素の第1の高さ、
−直径0.062mmの粒子の形をした2ml 炭化ケイ素の第2の高さ、
−直径0.125mmの粒子の形をした10ml 炭化ケイ素で希釈された直径0.02〜1mmの粒子の形をした1.00gの触媒の第3の高さ、
−直径0.062mmの粒子の形をした2ml 炭化ケイ素の第4の高さ、
−直径0.125mmの粒子の形をした2ml 炭化ケイ素の第5の高さ、および
−反応器の全体を満たす、直径1.19mmの粒子の形をした炭化ケイ素の第6の高さ。
【0065】
【表1】

【0066】
試験の説明
触媒AおよびBの性能を調べるために、本願発明者らは同時供給試験を使用した。これらの試験の主要な特性および収集された情報は以下の通りである:
・標準状態下での同時供給バランス:同時供給モードにおける触媒の迅速な比較に対する基本試験;試験条件(種々のガス流量):
プロパン/酸素/ヘリウム−クリプトン/水=0.829/0.877/4.267/4.234(単位NL/h)。試験温度は380℃、400および420℃である。この種の試験に関して、触媒に対するガスの接触時間は触媒の密度に従って約0.35sであ
る。
【0067】
・ヘリウム流2倍の同時供給バランス:試験条件:
プロパン/酸素/ヘリウム−クリプトン/水=0.829/0.877/8.44/4.234(単位NL/h)。試験温度は、0.5g触媒で380℃および1g触媒で420℃。この種の試験に関して、触媒に対するガスの触媒時間は0.5gの触媒で約0.13sおよび1gの触媒で約0.25sである。
【0068】
・ヘリウム流がなく、プロパンが6倍よりも大きい同時供給バランス:試験条件:
プロパン/酸素/ヘリウム−クリプトン/水=5.108/0.877/0/4.234(単位NL/h)。試験温度は0.5g触媒で420および440℃。この種の試験に関して、触媒に対するガスの触媒時間は0.5gの触媒で約0.18sである。
【0069】
触媒の試験
1)手順
触媒を含む反応器を、反応温度が課されることを可能にする垂直式等温オーブンに入れる、反応器の上部はガスおよび蒸気の共通供給線と接続される。
【0070】
不活性ガスHe/Neのフロー下で、以下を加熱する:
−反応器 250℃、
−気化器 200℃、
− 送水ポンプの電気的始動。
【0071】
気化器と反応器が正確な温度にあるときに、送水ポンプを始動する。温度が到達し、水が反応器の出口に存在するときに、プロパンと酸素をそれらの公称値で添加する。反応器の温度は触媒により所望の温度に調節される。反応器の温度およびホットスポットの温度は、最小30分で安定化される。
【0072】
凝縮可能な生成物を捕獲するために氷中に保存されたガス洗浄びんを、凝縮不能な流出物インライン分析のためにマイクロ−GCに接続された反応機の出口に接続することにより、バランスが実行される。回収された凝縮可能な流出物は、HP 6890クロマトグラフィで分析されると共に、形成された酸のモル数の炭酸ナトリウム滴定により分析される。
【0073】
試験の結果
さらなる計算および定義:
VVHは体積速度/時で、h-1で表わされる。これは入口のガス流量と触媒量との間の比を表わす。触媒量は試験片で測定される。入口のガス流は、毎時、標準のリットル(0℃および1気圧で測定されたガスのリットル)で表わされる。
【0074】
触媒時間はVVHの逆数をとることにより計算される。現実性の理由で、それは秒で表わされる。
反応器を流れるガス流を増加させることにより高いVVHを得ることは可能であるが、この場合、触媒ベッドに対して生じる圧力損失が増加する。しかしながら、反応器の生産性もそのために増加される。
【0075】
一般に、それは触媒の質量は低減されることが好ましく、それは、反応器の流体力学を妨害せず、圧力損失の増加を生じさせない。
生成物Pの生産性は、触媒1kg当たりおよび毎秒当たりのこの生成物Pのモル数として計算される。本例では、本願発明者らは、触媒1kg当たりおよび毎秒当たりの、等価
物C3の生産性すなわち生成物Pのマイクロモル数を生産するために反応したプロパンのマイクロモル数)を計算した。3つの炭素を備えた生成物の場合、いずれの生産性も同一である。結果は、生成物Pの収率にプロパン流入流量を乗算し、触媒の質量でその全体を除算することにより直接得られる。
【0076】
試験1 1gの触媒Aについて
4つのバランスを以下の条件で実行した。
バランス1〜3
ガス供給流量はプロパン/酸素/ヘリウム−クリプトン/蒸気:0.829/0.877/4.267/4.234(NL/h)である。反応器の温度は380℃、400および420℃である。
【0077】
バランス4:このバランスについては、ヘリウム−クリプトンの流量を2倍にした−プロパン/酸素/ヘリウム−クリプトン/水=0.829/0.877/8.44/4.234(NL/h)。反応器の温度は420℃で維持された。
【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
試験2 0.5gの触媒Aについて
5つのバランスを以下の条件で実行した。
バランス1および3
ガス供給流量はプロパン/酸素/ヘリウムクリプトン/蒸気:0.829/0.877/4.267/4.234(NL/h)である。反応器の温度は380℃および420℃である。
【0081】
バランス2:このバランスについては、ヘリウム−クリプトンの流量を2倍にした−プロパン/酸素/ヘリウム−クリプトン/水=0.829/0.877/8.44/4.234(NL/h)。反応器の温度は380℃で維持された。
【0082】
バランス4および5:これらのバランスについては、ヘリウム−クリプトンの流量を0まで減少させると共にプロパンの流量を著しく増加させ、以下の条件とした:プロパン/酸素/ヘリウム−クリプトン/蒸気:5.108/0.877/0/4.234(NL/h)。反応器の温度は420℃および440℃である。大きなプロパン流量を与えられると、種々の生成物の生産性が非常に向上することが判明した。
【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
試験1ではバランス1〜4および試験2ではバランス1〜3のすべての試験で、接触時間が減少すると、プロパン選択性(生成物の大部分)が増加し、アクリル酸+プロピレンの選択性の合計が増加することに留意する。このように、触媒Aは、低い変換率で、高いプロピレン選択性およびアクリル酸+プロピレンの全体の高い選択性を備えた操作を可能にする。
【0086】
試験2のバランス4および5の結果は、プロパンの分圧が約50%である場合、低い変換率でプロピレンとアクリル酸の高い生産力を有することが可能であることを示す。またこの場合、有用な生成物の選択性は特に高いままである。
【0087】
試験3 1gの触媒Bについて − 試験1と同様に行ったが、テルル触媒ではなくアンチモンを用いた。
4つのバランスを以下の条件で実行した:
バランス1〜3
ガス供給流量はプロパン/酸素/ヘリウム−クリプトン/蒸気:0.829/0.877/4.267/4.234(NL/h)である。反応器の温度は380、400および420℃である。
【0088】
バランス4:このバランスについては、ヘリウム−クリプトンの流量を2倍にした−プロパン/酸素/ヘリウム−クリプトン/水=0.829/0.877/8.44/4.234(NL/h)。反応器の温度は420℃で維持された。
【0089】
【表6】

【0090】
【表7】

【0091】
試験4 0.5gの触媒Bについて − 試験2と同様に行ったが、アンチモン触媒を用いた。
5つのバランスを以下の条件で実行した。
【0092】
バランス1および3
ガス供給流量はプロパン/酸素/ヘリウムクリプトン/蒸気:0.829/0.877/4.267/4.234(NL/h)である。反応器の温度は380および420℃である。
【0093】
バランス2:このバランスについては、ヘリウム−クリプトンの流量を2倍にした−プロパン/酸素/ヘリウム−クリプトン/水=0.829/0.877/8.44/4.234(NL/h)。反応器の温度は380℃で維持された。
【0094】
バランス4および5:これらのバランスについては、ヘリウム−クリプトンの流量を0まで減少させると共にプロパンの流量を著しく増加させ、以下の条件とした:プロパン/酸素/ヘリウム−クリプトン/蒸気:5.108/0.877/0/4.234(NL/h)。反応器の温度は420および440℃である。大きなプロパン流量を与えられると、種々の生成物の生産性が非常に向上することが判明した。
【0095】
【表8】

【0096】
【表9】

【0097】
試験3ではバランス1〜4および試験4ではバランス1〜3のすべての試験で、接触時間が減少すると、プロパン選択性(生成物の大部分)が増加し、アクリル酸+プロピレンの選択性の合計が増加することに留意する。このように、触媒Bは、低い変換率で、高いプロピレン選択性およびアクリル酸+プロピレンの全体の高い選択性を備えた操作を可能にする。
【0098】
試験4のバランス4および5の結果は、プロパンの分圧が約50%である場合、低い変換率でプロピレンとアクリル酸の高い生産力を有することが可能であることを示す。またこの場合、有用な生成物の選択性は特に高いままである。
【0099】
プロピオン酸とアセトンの選択性が温度の増加とともに減少することにも留意する。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】並行状態のプロパンの部分的酸化を含む、未反応ガスの再循環によるアクリル酸の製造方法の実行を許容する取付装置。
【図2】反応器[7]の装填例。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンと、その後のアクロレインの酸化によるアクリル酸の製造方法であって、
アクリル酸回収段階の出口にて並列に、プロパンの部分的酸化を実行し、
その後、アクリル酸回収カラムを2回通過したプロパンとプロピレンに富んだガスをプロピレン変換反応器に戻すことにより、未反応ガスの再循環が実行されることを特徴とする方法。
【請求項2】
プロパンが、アクリル酸の回収のための吸着カラムと並行して配置された反応器中で、プロピレンへの部分的変換を受け、その後、ガス流はアクリル酸の回収のために使用される吸着カラムへ再導入されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
酸化物の混合物により構成された触媒の存在下で、プロパンがプロピレンへの部分的変換を受けることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
プロパンのプロピレンへの部分的酸化の方法が、300℃〜450℃の温度、好ましくは380℃よりも高い温度で実行されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
プロパンのプロピレンへの部分的酸化の方法が、10 000 h1よりも大きい高い体積速度/時間VVHで、好ましくは10 000h4よりも大きい値と20000 h1との間で実行されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
プロパンのプロピレンへの部分的酸化の方法が、触媒の存在下で実行され、該触媒はモリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、タンタル、シリコン、およびアンチモンの少なくとも一つから選択された元素を含む酸化物の混合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記触媒が
Mo1a(TeまたはSb)b(NbまたはTa)cSidx(I)
の構造を有し、式中、
aは0.006と1の間の値(0.006および1を含む)からなり;
bは0.006と1の間の値(0.006および1を含む)からなり;
cは0.006と1の間の値(0.006および1を含む)からなり;
dは0と3.5の間の値(0および3.5を含む)からなり;
xは他の元素と結合される酸素の数であり、それらの元素の酸化状態によって決まる;ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記触媒が
Mo1aSbbNbcSidx (Ia)
の構造を有し、式中、
a、b、c、dおよびxは請求項7に定義された値であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記触媒が(I)または(Ia)の構造を有し、
aは0.01と0.06の間の値(0.01および0.06を含む)からなり;
bは0.01と0.5の間の値(0.01および0.06を含む)からなり;
cは0.006と0.3の間の値(0.006および0.3を含む)からなり;
dは0と2の間の値(0.01および0.06を含む)からなり;
xは他の元素と結合される酸素の数であり、それらの元素の酸化状態によって決まる;
ことを特徴とする請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
アクリル酸を製造するための装置であって、
a)プロピレンのアクロレインへの酸化用の第1反応器[3];
b)第1反応器[3]が連続的に原料を供給する、アクロレインのアクリル酸への酸化用の第2反応器[4];
c)第2反応器[4]と接続されたアクリル酸の回収のための吸着カラム[5];
d)未反応ガスが送られ、吸着カラム[5]の出口と並行に配置された、プロパンのプロピレンへの部分的酸化用の反応器[7]、該出口にあるガスはさらに吸着カラムまたは同様なカラムを通過して;
e)第1のプロピレン酸化反応器[3]へ再循環すること
を備えた装置。
【請求項11】
アクリル酸の製造のための請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−528461(P2008−528461A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551701(P2007−551701)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000111
【国際公開番号】WO2006/077316
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】