説明

ヘッドアップディスプレイ装置

【課題】 表示器であるLCDを太陽光などの外光から保護することができ、かつ、コストが安く付くと共に、信頼性を高めることができるヘッドアップディスプレイ装置の提供。
【解決手段】 ヘッドアップディスプレイ装置の表示内容を画像表示する表示器2と、フロントウインドシールド12aの位置でドライバへ表示光を反射するコンバイナ13と、表示器2からの表示光をコンバイナ13に向けて反射する反射手段とを備え、反射手段を、エレクトロクロミック層Eへの電圧オフの際に透明状態となり、エレクトロクロミック層Eへの電圧オンの際に反射状態となるECミラー3とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インストルメントパネル内に埋め込んだ表示ユニットからの表示をインストルメントパネル上に配置した反射板またはウインドシールドに反射表示させるヘッドアップディスプレイ装置において、表示器であるLCDを太陽光などの外光から保護する為に、第一の反射鏡に波長選択性のフィルターを用いて太陽光などの外光の熱線は透過させ、表示器からの光は反射させている。
または、表示器の前面にシャッターを設けて、ヘッドアップディスプレイ装置を使わない(表示させない)時は、シャッターを閉じておくようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−11168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来例のヘッドアップディスプレイ装置にあっては、波長選択性のフィルターやシャッターの開閉機構はコストが高く、信頼性の低下にもつながるという問題点があった。
【0004】
本発明の解決しようとする課題は、表示器であるLCDを太陽光などの外光から保護することができ、かつ、コストが安く付くと共に、信頼性を高めることができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置は、 ヘッドアップディスプレイ装置の表示内容を画像表示する表示手段と、車両のフロントウインドシールド位置でドライバへ表示光を反射する表示光反射手段と、表示手段からの表示光を表示光反射手段に向けて反射する反射手段と、を備え、反射手段は、エレクトロクロミック層への出力停止の際に透明状態となり、エレクトロクロミック層への出力の際に反射状態となるエレクトロクロミックミラーであり、エレクトロクロミック層への出力を制御する出力制御手段を備えたことを特徴とする手段とした。
【0006】
請求項2記載のヘッドアップディスプレイ装置は、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、出力制御手段は、ヘッドアップディスプレイ装置の使用時にはエレクトロクロミックミラーを鏡状態とし、ヘッドアップディスプレイ装置の不使用時にはエレクトロクロミックミラーを透明状態とするように制御することを特徴とする手段とした。
【0007】
請求項3記載のヘッドアップディスプレイ装置は、請求項1または2に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、エレクトロクロミックミラーは、透明状態と反射状態で、光の反射率と透過率が逆転することを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置では、上述のように、反射手段は、エレクトロクロミック層への出力停止の際に透明状態となり、エレクトロクロミック層への出力の際に反射状態となるエレクトロクロミックミラーであり、エレクトロクロミック層への出力を制御する出力制御手段を備える。これにより、エレクトロクロミック層への出力を切り換え制御するだけで、反射手段の反射率と透過率を変更することができる。
従って、太陽光などの外光の強い光が表示器に直接反射しないようにする事もできるので、表示手段を太陽光などの外光から保護することができるようになるという効果が得られる。
また、反射状態と透明状態の切り換えにメカ的な駆動手段を必要としないため、コストが安く付くと共に、信頼性を高めることができるようになる。
【0009】
請求項2記載のヘッドアップディスプレイ装置では、上述のように、ヘッドアップディスプレイ装置の使用時にはエレクトロクロミックミラーを鏡状態とし、ヘッドアップディスプレイ装置の不使用時にはエレクトロクロミックミラーを透明状態とするようにしたことで、太陽光などの外光の強い光が表示手段に直接反射しないようにする事ができる。
【0010】
請求項3記載のヘッドアップディスプレイ装置では、上述のように、エレクトロクロミックミラーは、透明状態と反射状態で、光の反射率と透過率が逆転するようにしたことで、ヘッドアップディスプレイの使用時には、表示手段からの表示光を表示光表示手段に効率良く反射させることができ、ヘッドアップディスプレイの不使用時には太陽光などの外光の多くを透過させて表示手段を確実に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0012】
この実施例のヘッドアップディスプレイ装置は、請求項1〜3に記載の発明に対応する。
【0013】
まず、この実施例のヘッドアップディスプレイ装置を図面に基づいて説明する。
図1はこの実施例のヘッドアップディスプレイ装置が採用された車両を示すシステム断面図である。図2は実施例のヘッドアップディスプレイ装置を示すブロック図である。
【0014】
この実施例のヘッドアップディスプレイ装置は、図1、2に示すように、車両1のインストルメントパネル11内に内蔵された表示器2及び第1の反射ミラー3と、フロントウインドシールド12に配置された表示光反射手段を構成するコンバイナ13と、ヘッドアップディスプレイ制御回路部(以後、HUD制御回路部と略称する)4と、を備えている。
【0015】
さらに詳述すると、図2に示すように、表示器2は、ヘッドアップディスプレイ装置の表示内容を画像表示する表示手段を構成する表示部21と、表示内容を表示光として画像表示させる表示用光源部22と、を備えている。
【0016】
HUD制御回路部4は、信号処理回路41と、システム制御部42と、表示駆動回路43と、エレクトロクロミック駆動回路44と、を備えている。
【0017】
第1の反射ミラー(以後、ECミラーと称する)3は、表示部21からの表示光をフロントウインドシールド12に配置されたコンバイナ13に向けて反射する反射手段を構成するもので、受光面が凹面鏡状になっている。
このECミラー3は、透明機材31上にエレクトリッククロミック層(無機物)Eを蒸着し、化学反応(酸化還元反応)により着色するもので、図3(ECミラーの構造図)に示すように、透明機材31の上面に、透明導電膜32、イオン貯蔵層33、固体電解質層34、バッファ層35、触媒層36、調光ミラー層37の順で積層された構造となっている。
【0018】
そして、このECミラー3は、調光ミラー層37と透明導電膜32とに接続された直流電源電圧の電界時(電圧オン時)には、図3(イ)に示すように、鏡状態で、無電解時(電圧オフ時)には、図3(ロ)に示すように、略透明状態になるような特性を持っている。なお、反射率・透過率は、電圧により調整可能である。
【0019】
図4はECミラー3の鏡状態における光学特性図であり、この図に示すように、鏡状態では反射率が70〜80%で、透過率が数%になり、光の多くを反射させる。
図5はECミラーの透明状態における光学特性図であり、この図に示すように、透明状態では反射率が10〜20%で、透過率が数30〜60%になり、光の多くを透過させる。
【0020】
HUD制御回路部4は、車両1側に備えたヘッドアップディスプレイ装置のオン・オフを切り換えるスイッチからの信号により、ヘッドアップディスプレイ装置の制御を行う。
システム制御部42は、信号処理回路41で処理された信号に基づいて、表示器2及びECミラー3の制御を行う。
表示駆動回路43は、システム制御部42で処理された制御信号により、表示器2の制御を行う。
エレクトロクロミック駆動回路44は、システム制御部42で処理された制御信号によりECミラー3への印加電圧を切り換え駆動する。
なお、信号処理回路41と、システム制御部42と、エレクトロクロミック駆動回路44とで、エレクトロクロミック層への出力を制御する出力制御手段を構成している。
【0021】
次に、この実施例の作用を図6(実施例のヘッドアップディスプレイ装置の作用説明図)に基づいて説明する。
【0022】
[ヘッドアップディスプレイ装置の使用時]
ヘッドアップディスプレイ装置の使用時には、エレクトロクロミック駆動回路44からエレクトロクロミック層Eへの制御出力によって、ECミラー3への電圧がオンの状態となる。
この電圧オン状態では、図3(イ)に示すように、ECミラー3が鏡状態となっており、このため、図6(イ)に示すように、表示器2からの表示光をコンバイナ13に向けて反射させる。
これにより、コンバイナ13に反射させた表示をドライバが虚像として見ることができるヘッドアップディスプレイとして機能する。
【0023】
[ヘッドアップディスプレイ装置の不使用時]
ヘッドアップディスプレイ装置の不使用時には、エレクトロクロミック駆動回路44からエレクトロクロミック層Eへの制御出力によって、ECミラー3への直流電源電圧がオフの状態になる。
この電圧オフ状態では、図3(ロ)に示すように、ECミラー3が略透明状態となっており、このため、図6(ロ)に示すように、フロントウインドシールド13からECミラー3に向けて入射する太陽光などの外光の多くはECミラー3を透過し、表示器4方向への反射を大幅に軽減する。
これにより、表示器2であるLCDを太陽光などの外光から保護することができる。
【0024】
次に、この実施例の効果を説明する。
【0025】
この実施例のヘッドアップディスプレイ装置では、上述のように、表示2からの表示光をコンバイナ13に向けて反射する反射手段として、エレクトロクロミック層Eへの電圧オフの際に透明状態となり、エレクトロクロミック層Eへの電源オンの際に反射状態となるECミラー3を用いたことで、エレクトロクロミック層Eへの直流電源電圧を切り換え制御するだけで、太陽光などの外光の強い光が表示器2に直接反射しないようにする事ができる。
これにより、表示器2であるLCDを太陽光などの外光から保護することができるようになるという効果が得られる。
また、反射状態と透明状態の切り換えにメカ的な駆動手段を必要としないため、コストが安く付くと共に、信頼性を高めることができるようになる。
【0026】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例のヘッドアップディスプレイ装置が採用された車両を示すシステム断面図である。
【図2】実施例のヘッドアップディスプレイ装置を示すブロック図である。
【図3】ECミラーの構造図である。
【図4】ECミラーの鏡状態における光学特性図である。
【図5】ECミラーの透明状態における光学特性図である。
【図6】実施例のヘッドアップディスプレイ装置の作用説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 車両
11 インストルメントパネル
12 フロントウインドシールド
13 コンバイナ(表示光反射手段)
2 表示器
21 表示部(表示手段)
22 表示用光源部
3 第1の反射ミラー(反射手段)
31 透明機材
32 透明導電膜
33 イオン貯蔵層
34 固体電解質層
35 バッファ層
36 触媒層
37 調光ミラー層
4 ヘッドアップディスプレイ制御回路部
41 信号処理回路
42 システム制御部
43 表示駆動回路
44 エレクトロクロミック駆動回路
E エレクトロクロミック層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を虚像で車両前方に表示するヘッドアップディスプレイ装置において、
ヘッドアップディスプレイ装置の表示内容を画像表示する表示手段と、
車両のフロントウインドシールド位置でドライバへ表示光を反射する表示光反射手段と、
前記表示手段からの表示光を前記表示光反射手段に向けて反射する反射手段と、
を備え、
前記反射手段は、エレクトロクロミック層への出力停止の際に透明状態となり、エレクトロクロミック層への出力の際に反射状態となるエレクトロクロミックミラーであり、
前記エレクトロクロミック層への出力を制御する出力制御手段を備えた、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記出力制御手段は、ヘッドアップディスプレイ装置の使用時には前記エレクトロクロミックミラーを鏡状態とし、ヘッドアップディスプレイ装置の不使用時には前記エレクトロクロミックミラーを透明状態とするように制御する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記エレクトロクロミックミラーは、前記透明状態と前記反射状態で、光の反射率と透過率が逆転する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−251540(P2009−251540A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103000(P2008−103000)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】