説明

ヘルペスを処置するための医薬組成物

【課題】ヘルペスを、ウイルスの潜在さらに伝染および二次的細菌感染を無くし、処置するための医薬組成物を提供することが本発明の課題である。
【解決手段】第一構成成分として第四級アンモニウム化合物および/または第二構成成分として抗ウイルス剤および/または第三構成成分として植物抽出物を薬学的に許容される基剤に含み、該3構成成分は相互に和合している、ヘルペス単純ウイルス感染の処置のための医薬組成物により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘルペスを処置するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚のヘルペス単純感染は表面に痛みのある箇所および疱疹を生じ、これらは後に開口し、病巣となる。ヘルペスは、主にヘルペス単純ウイルス(HSV)1型により生じるが、性器ヘルペスを常に起こすHSV2型により生じることもある。逆に、性器ヘルペスの30%がHSV1型による。
【0003】
口部の感染は、口唇ヘルペスと名付けられ、またコールド・ソア(単純疱疹)とも呼ばれる。眼や鼻などの顔の他の箇所も感染を起こす。これは顔面単純ヘルペスと言われる。感染は体の他の部分にも現れることがある。
【0004】
人口の約70−90%はHSVに原発的に感染している。これらの者はウイルス保持者である。HSVに一度感染すると、その後ウイルスが体内に潜在している。潜在状態において、ウイルスは神経節の神経細胞体に存在している。一定の刺激、例えばインフルエンザ感染や他の呼吸器障害、消化器感染、ストレス、疲労、月経、妊娠、アレルギー、太陽光線および熱などにより、潜在ウイルスが活性化される。ウイルスは神経節からよく知られた神経経路を通り皮膚表面に達し、そこで増殖して、症状を起こす。この再発型ヘルペスは感染者の約40%で生じる。
【0005】
それ自体は無害のヘルペス単純感染が角膜炎および脳炎などの重篤な感染をもたらすことがある。従って、ウイルス巣を感染部位において効率よく破壊してしまうことが肝要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在のところ、最もよく用いられている治療法はアシクロビルであり、これは商標名ゾビラックスで市販されている。アシクロビルはグアニン同族体で、ウイルスのDNAポリメラーゼに干渉して、ウイルスのDNA複製を阻害する。ウイルスの増殖は阻止されるが、ウイルスそのものは殺されない。こうして、ウイルスは、神経節に引っ込み、再び潜在状態になる。
【0007】
HSV−1の伝染は、唾液や皮膚の感染箇所への直接接触により起きる。この伝染もアシクロビルで防止されない。
【0008】
他の問題は、ブドウ球菌および/または連鎖球菌による二次的細菌感染、たとえば膿痂疹が起きることである。
【0009】
ヘルペス感染のこれらの問題からして、それが付随しようが、しなかろうが、ウイルスの潜在さらに伝染および二次的細菌感染を無くし、あるいは防止し得る医薬品についての明白な必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により、第一構成成分として第四級アンモニウム化合物および/または第二構成成分として抗ウイルス剤および/または第三構成成分として植物抽出物からなる医薬組成物(3構成成分は薬学的に許容される基剤中で相互に和合している)が上記の問題を解決し得ることが分かった。
【0011】
ウイルスの潜在、再発、新たな潜在という悪循環を打破するために、ウイルス自体を殺すことが必要である。死んだウイルスは神経節に引っ込むということがないので、原発および再発感染において、潜在することが減少するし又は全くなくなる。従って、本発明の本組成物において最も重要な構成成分は、ウイルスを殺してしまう殺ウイルス物質である。
【0012】
抗ウイルス剤は、いくつかのカテゴリーに分けることができ(Colgate, S.M. & Molyneux,R.J.,Bio-active natural products,410,CRC Press, Inc.(1993))、グループIaからグループVbまでに分類される。本発明により、HSV感染に可能な限り完璧に対処するため、望ましくは、グループIVbからの1以上の物質をグループVaからの1以上の物質と組合わすべきであることが見いだされた。グループIVbからの物質は殺ウイルス作用を示し、グループVaからの物質は静ウイルスおよび抗ウイルス作用を発揮する。両タイプの物質を組み合わせることにより、ウイルスの複製が阻害され、そして更に既存在のウイルスが殺される。
【0013】
HSV感染病巣の細菌などの他の微生物による二次感染を防止するのを確実にするために、第一構成成分および/または第二構成成分が殺菌性を有していることが推奨される。
【0014】
疼痛および炎症の関連症状を緩和するために、植物抽出物も使用するのが望ましい。この抽出物は、望ましくは、炎症抑制作用に加えてなめらかにする効果も有している。
【0015】
殺菌活性も有し、そして本発明の医薬組成物に用いられるグループIVbの物質は、当業者に知られている方法で選択されうる。Colgate & Molyneux(supra.p.413)記載の終点滴定法(EPTT)を用いて、物質の殺ウイルス活性が調べられる。活性はウイルス力価の低下として表され、これは、試験する物質の希釈液と共にヘルペスウイルス懸濁液を37℃で5分間インキュベートしてインビトロで測定する。優れた物質は10の最小力価低下を与える。
【0016】
ヘルペス単純1型およびヘルペス単純2型(臨床分離株)に対する殺ウイルス作用について既知の殺菌剤を一般的なスクリーニングをしたところ、いくつかの物質が非常に高い活性を25℃においてすら発揮することが、本発明により明らかになった。このことは、皮膚の温度が一般に37℃以下、また34℃以下ですらあることから、大変有利な点である。第四級アンモニウム化合物、セトリミドおよび塩化ベンザルコニウムがそれぞれ濃度50−200μg/mlおよび100−200μg/mlで5分間25℃の試験期間、少なくとも10の力価低下を示すことが本発明により分かった。他の既知の殺菌剤、例えばアルコール類、フェノール類、過酸化物類、ビグアナイド類、アルデヒド類、塩素化合物などは、最小5倍以下の活性を示した。水銀化合物および一定の重金属化合物のみがより優れた活性を有する。しかし、これらの化合物は、毒性が高いので意図する使用には適していない。
【0017】
すべての第四級アンモニウム化合物は、原則的に下記の一般式を有するものが使用される。
【0018】
【化1】

式中、R、R、RおよびRは、同じまたは異なっていてよく、脂肪族または芳香族基であり、R、R、RまたはRの少なくとも一つは8以上の脂肪族鎖であり、Xは低分子量の無機アニオンまたは高分子量の有機アニオンである。適当な第四級アンモニウム化合物についての概説は、例えばA.Dauphin & J.C.Darbord in “Hygieane hospitaliere pratique”,Editions medicales internationales,Paris(1988)に記載されている。セトリミドが強く推奨される。
【0019】
第四級アンモニウム化合物は、水およびアルコールによく溶けるが、必ずしも他の物質と組み合わせし得ない。従って、第二構成成分の重要な要件は第一構成成分と和合することである。アニオン性物質、石鹸類、硝酸塩、重金属、酸化物質、ゴム、タンパク質などは、第四級アンモニウム化合物と和合性でない。従って、これらの物質は、本発明の組成物に用いるのに適していない。第二構成成分は望ましくは、催奇性がなく、毒性なしに大量に与えうることである。更に望ましくは、第二構成成分は皮膚への浸透性がよいことである。
【0020】
第二構成成分として、既知の抗ウイルス剤、例えばアシクロビル、BVDU、3FT、イドクスウリジンなどが、第一構成成分と和合する限り、使用できる。また、抗ウイルス活性を有する非毒性の天然物質も使用できる。
【0021】
第二構成成分の適合性は、それ自体既知のEPTT法(Colgate & Molyneux,supra,p.414)に準じて調べることができる。ここではVERO細胞を用いる。本発明により、ガレート類がインビトロで優れた抗ウイルス活性を有することが分かった。プロピル・ガレートは濃度100μg/mlで力価低下因数が10である。濃度25μg/mlでVERO細胞中の低下因数は10である。エチル・ガレートは、濃度100μg/mlで10、および25μg/mlで10である。従って、エチル・ガレートはやや活性が弱い。
【0022】
第一構成成分と第二構成成分との和合性は、HSV−1に対する両構成成分の混合物を試験することにより決定される。プロピル・ガレートとセトリミド(2:1)の混合物は、濃度プロピル・ガレート250μg対セトリミド125μgで5分間25℃の試験期間後にも10の殺ウイルス作用を有することが分かった。エチル・ガレートおよびセトリミドについても同様に行われる。セトリミドとBVDUまたはアシクロビルとの混合物は、5μg/mlBVDUまたはアシクロビルおよび0.1μg/mlセトリミドにまで希釈してもインビトロで抗ウイルス活性を発揮し続ける。
【0023】
医薬組成物は望ましくは植物抽出物を含み、それにより疼痛および炎症反応を寛解する。抽出物が第一および第二の構成成分の活性に干渉しないことも重要である。
【0024】
この目的のため、種々の植物抽出物をセトリミドとプロピル・ガレートまたは塩化ベンザルコニウムとプロピル・ガレートと共に、殺ウイルス活性が保持されるか、各構成成分が和合し得るかどうかを知るべく、検査した。カミツレおよびキンセンカの抽出物がインビトロで利用し得ることが分かった。アロエ、エキナセア根、三色スミレ、センナ、メリサおよび/またはサンザシの抽出物も、殺ウイルス活性が保持されたままで、炎症反応または疼痛を寛解し得る。
【0025】
しかし、ある種の植物抽出物は、いくつかの第四級アンモニウム化合物の殺ウイルス活性を顕著に減少せしめる。例えば、10%ハマメリスは塩化ベンザルコニウム(0.5%)の殺ウイルスおよび抗菌活性を完全になくしてしまうことが判明した。ヘルペスおよび細菌に対する0.1%塩化ベンザルコニウムの活性は、サルビアおよびゴボウ類(great burdock)の抽出物により4−8倍減少する。しかし、セトリミドと第二構成成分およびカミツレ、キンセンカ、サルビア、ゴボウ類およびセンナの植物抽出物の組み合わせは、ヘルペス単純ウイルスおよび細菌に対する活性を保持することがインビトロで分かった。
【0026】
使用しようとする植物抽出物の和合性は前以て測定されるべきである。かかる測定は、平均的当業者のできる範囲内にある。
【0027】
適当な植物抽出物は、例えば Aesculus hippocastanum L; Aloe vera L; Anagallis arvensis L; Anthemis nobilis L; Arctium lappa L; Aristolochia clematitis L; Arnica montana L; Betonica officinalis L; Calendula officinalis L; Capsicum annuum (tetraqonum); Carica papaya L; Carlina acaulis L; Caryophyllus aromaticus L; Cynoglossum officinale L; Echinacea angustifolia; Echinacea purpurea L; Eupatorium cannabinum L; Geranium robertianum; Geum urbanum L; Glechoma hederacea L; Hamamelis virginiana L; Hypericum perforatum L; Inula helenium L; Juglans regia L; Juniperus oxycedrus L; Lavandula officinalis; Lawsonia alba L; Lysimachia nummeralia L; Lythrum salicaria L; Malva sylvestris; Marrubium vulgare L; Matricaria chamomilla L; Mentha piperita L; Myroxylon balsamum L; Myrtus communis L; Olea europaea L; Prunus amygdalus; Pyrus cydonia L; Quercus robur L; Quillaja saponaria; Rubus idaeus L; Salvia officinalis L; Saponaria officinalis L; Smilax officinalis; Solanum dulcamara L; Solidago virga aurea L; Styrax tonkinensis; Styrax benzoides; Styrax benzoin; Symphytum officinale L; Trigonella foenum-graecum L; Tropaeolum majus L; Urtica urens L; Urtica dioica L; Viola tricolor L.からつくられる。
【0028】
本発明の医薬組成物は、殺ウイルスおよび抗菌活性を有する1以上の第四級アンモニウム化合物および/または第四級アンモニウム化合物に和合し、ウイルス複製を阻止する抗ウイルス剤および/または上記両物質に同様に和合し、ヘルペス感染の関連症状、例えば、疼痛、かゆみ、腫れ、打診痛などを軽減する植物抽出物の組み合わせからなり、ヘルペス感染の全般的処置法を提供する。組成物の殺ウイルス活性によりウイルスは殺され、潜伏状態がほとんど、またはまったく無くなる。抗ウイルス活性は、ウイルスの複製およびそれによるウイルスの増殖を阻害する。抗菌活性は二次的細菌感染を防止する。最後に、炎症阻止活性は炎症を防止し、疼痛およびかゆみを和らげる。
【0029】
本発明の組成物の構成成分は、薬学的に許容される基剤に含有されるのが望ましい。3構成成分の活性に影響を与えない基剤が用いられる。適当な基剤であるかどうかを調べるために、第一構成成分の殺ウイルス活性および殺菌活性が測定される。殺菌活性は、例えば当業者に知られているような方法で、5分間25℃でグラム陰性菌、例えばPseudomonas aeruginosaまたはEscherichia coliについて調べられる。
【0030】
適当な基剤の例としては、種々の分子量のポリエチレングリコールまたはその混合物、脂肪酸エステルまたはその混合物があり、乳化剤および/または皮膚手入剤と混合し、またはしない。また、適当な基剤にポリエチレングリコールおよび/または脂肪酸エステルの混合物もあり、乳化剤および/または皮膚手入剤と混合し、またはしない。
【0031】
本発明の医薬組成物は、粉末、懸濁液、溶液、噴霧剤、乳濁液、軟膏またはクリームの形態をとることができ、局所適用され得る。該組成物は、遊離酸または塩の形態の活性構成成分を活性のない薬学的に許容される賦形剤(水性または非水性溶媒、安定剤、乳化剤、浄化剤、添加剤など)および更に必要に応じて色素、芳香物質および/または香味剤を組み合わせる(すなわち、混合する、溶解する、など)ことにより、調製される。活性構成成分の濃度は、処置の性質および使用方法に応じて、0.001%−100%の間にある。軟膏が推奨される。
【0032】
本発明の組成物は、例えば、非水性基剤を10−90%、アルコールを1−20%、1以上の第四級アンモニウム化合物を0.1−5%および/または1以上の抗ウイルス剤を0.01−2%および/または1以上の植物抽出物を0.5−10%含む。用いられる植物抽出物の量は、その活性および抽出物中の活性構成成分の濃度に密接に関連している。
【0033】
望ましい本発明の組成物は、PEG400を20−60%、望ましくは52%、PEG4000を10−40%、望ましくは26%、グリセロールを2−20%、望ましくは9%、セトリミドを0.5−1.8%、望ましくは1%、セチルアルコールを0.2−3%,望ましくは1%、カミツレ抽出物を5−15%、望ましくは8%およびプロピル・ガレートを0.2−1%、望ましくは0.25%含有する。
【0034】
本発明は、添付の実施例により更に明らかになるであろう。しかし実施例は、いかなる場合でも発明を限定する意図を有しない。
【実施例】
【0035】
実施例1
I.以下の成分を用いた抗ヘルペス製剤の調製
【表1】

【0036】
A成分を75℃で溶融し、次いでB成分を溶解して、軟膏を調製した。混合後に得たA成分の混合物を緩やかに冷やしながら、均質に混合し、Aの混合物が固まる前にBの混合物を加えた。次いで、全混合物が完全に冷えるまで、混合を続けた。混合物を93J12と名づけた。
【0037】
ポリエチレングリコール400および4000は、商標名マクロゴール400−Purnaおよびマクロゴール4000として市販されているものを購入した。グリセロールは1年ごとの品質で、Merck社から入手し、セトリミドA11936はPharmachemicNVから、塩化コリンはSigma社から供給された。セチルアルコールは、Lanette16なる商標名でHenkel KGaAから市販されている。液体カミツレ抽出物はConforma社およびプロピル・ガレートP3130はSigma社から入手した。
【0038】
II.以下の成分を用いたM−VDB培地の組成物およびその調製
【表2】

【0039】
すべてを蒸留水960mlに溶解し、NaOH(10N)でpHを7.4に調整し、0.2μ膜フィルターで無菌濾過して細胞培養物のための保持培地を調製した。2%新生子牛血清(VERO細胞のために)または胎児牛血清(他の細胞のために)を加えた。
【0040】
実施例2 抗ウイルス活性
1.構成成分の抗ウイルス活性
この実施例ではAmerican Type Culture Collection(受付番号CCL26)からのVERO細胞を用いた。VERO細胞は、Earle’s塩および5%子牛血清と共に培地199(Gibco)中で培養した。ウイルス源としてヘルペス単純ウイルス1(HSV−1、臨床分離株)を用い、100μg/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび2%子牛血清と共に培養した。
【0041】
マイクロタイター・プレート(96ウエル、平板)中に培養したVERO細胞の単層上にM−VDB中のHSV−1の10−1−10−6の希釈液100μlを入れた。ウイルスは60−90分間で細胞に吸収された。M−VDB中の試験物質の希釈液を感染細胞に加えた。物質の細胞毒性を調べるために、同様に物質の希釈液を非感染細胞に加えた。5日間、湿室で37℃でインキュベートした後、細胞病理学的効果を顕微鏡で調べた。
【0042】
抗ウイルス活性は、サンプルの最も高い非毒性濃度の低下因数(RF)として表す。低下因数(RF)は、物質希釈液における生きているウイルス濃度に比した対照中のウイルス濃度の比である。≧10のRFは有意とみる。プロピル・ガレートでの結果を表1に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
上表からHSV−1に対する抗ウイルス活性は濃度25μg/mlまで有意であることが分かる。
【0045】
殺ウイルス活性は、10cfuHSV−1含有のウイルス懸濁液を同量の種々の濃度の試験物質溶液と混合することにより測定した。この混合物を、定めた時間、管理した温度でインキュベートした。各混合物の10−1−10−6の段階希釈液をVERO細胞の単層上に入れた。37℃で5日間インキュベートした後、CPEを測定した。結果はRFで表す。再度、≧10の力価低下を有意とする。
【0046】
15分間34℃でのHSVについての殺ウイルス活性の結果を表2に示す。
【表4】

【0047】
上表からプロピル・ガレートが殺ウイルス活性を発揮しないことおよびセトリミドが濃度100μg/mlまでで殺ウイルス活性を有することが分かる。プロピル・ガレートおよびセトリミドの混合物はプロピル・ガレートの過剰(2/1)でもその殺ウイルス活性を保持する。
【0048】
2.試験混合物の抗ウイルス性
同様に、実施例1で調製した試験混合物の抗ウイルス活性を測定した。15分間25℃における軟膏の殺ウイルス活性の結果を表3に示す。
表3から、軟膏は25℃で希釈1/100までHSVについての殺ウイルス活性を発揮することが分かる。セトリミドも25℃ですら完全な活性を保持する。
【0049】
【表5】

【0050】
実施例3
抗菌活性
個々の構成成分および最終産物の抗菌活性を試験微生物Candida albicans(ATTC 10231)、Escherichia coli(ATTC 8739),Pseudomonas aeruginosa(ATTC 15442)およびStaphylococcus aureus(ATTC 6538)で測定した。用いた培地はトリプチカーゼ醤油肉汁(TSB)、トリプチカーゼ醤油寒天(TSA)および無菌リン酸緩衝液(PBS)である。
【0051】
I.構成成分および混合物の抗菌活性
最小阻止濃度(MIC)を測定するために、一夜培養物を37℃でTSB中各微生物について調製した。使用する試験物質のTSBにおいて1/2希釈系を同様につくった。各希釈100μlをミクロタイター・プレートに入れた。一夜培養物をTSB中1/1000に希釈した。同様に細菌懸濁液100μlを物質に加えた。無菌性の対照として、細菌を加えない物質希釈液および物質希釈液を加えない細菌希釈液を用いた。ミクロタイター・プレートを湿室内で24時間37℃でインキュベートした。細菌生育を懸濁液の混濁性をもとに調べた。MIC価は、微生物の正常な生育を阻止し得る、すなわちいかなる懸濁をももたらさない最小の物質濃度である。
【0052】
結果を表4に示す。
【表6】

【0053】
上表により、カミツレ抽出物が、ある種の微生物について、そして高濃度でのみ非常に限定された抗菌活性を有することが分かる。他方、プロピル・ガレートおよびセトリミドは顕著な抗菌活性を有す。混合物において、セトリミドはその抗菌活性を保持することが分かる。
【0054】
II.試験軟膏の抗菌活性
実施例1に記載したように、別々の3軟膏を調製した。そのロット番号は94A12、94D21および94E05である。プラセボとしてセトリミドを除外した同じ組成物を調製した。このプラセボは94D27と呼ぶ。対照として無菌蒸留水中の1%セトリミドを用いた。すべての試験サンプルは室温で保存した。
【0055】
IIa.最小阻止濃度(MIC)の測定
最小阻止濃度は、細菌がもはや生育しない試験物質の濃度である。用いた最も高い濃度(1/10希釈)は、無菌蒸留水9ml中に軟膏1gを懸濁することにより調製した。希釈液を細菌に加え、24時間培養した。用いた微生物は、容量10Candida albicans(Ca)、10Escherichia coli(Ec)、10Pseudomonas aeruginosa(Pa)および10Staphylococcus aureus(Sa)であった。
表5は、細菌の生育が阻止される希釈度を示す。
【0056】
【表7】

【0057】
表によると、すべての試験軟膏が抗菌活性を保持している。これらの軟膏のMICは、1%セトリミド水のMIC価に匹敵する。試験濃度においてプラセボは抗菌活性がない。
【0058】
IIb.抗菌および抗真菌活性の測定
抗菌活性をCandida albicans(10)、Escherichia coli(10)、Pseudomonas aeruginosa(10)およびStaphylococcus aureus(10)で調べる。抗菌活性は、ヨーロッパ薬局方の記載に従って測定する。試験する物質を微生物と混じ、ある時間インキュベートし、この混合物を希釈し、どの希釈度でなお微生物の生育が起きるかを測定する。
【0059】
希釈は、最終濃度10−10cfuまで各微生物について調製した。軟膏は、希釈なし、無菌蒸留水での1/2および1/10希釈として調べた。軟膏またはその希釈液1gに対し、希釈接種物100μlを加えて、混合した。25℃15分間のインキュベーション後、1/10希釈系をこの混合物100mgからTSB(トリプチカーゼ醤油肉汁)中で調製した。各希釈液をTSA(トリプチカーゼ醤油寒天)上に接種した。プレートを37℃で24時間インキュベートした。対照として、微生物の非処置培養物および蒸留水中の1%セトリミドを用いた。インキュベーション後、すべてのプレートを生長について検査した。低下因数(Rf)中に表される試験は3回実施された。その結果を表6に示す。
【0060】
【表8】

【0061】
上表から、すべての試験軟膏が希釈においてその抗菌活性を保持することが分かる。すべての細菌が殺された。プラセボは非常に限定された抗菌活性を有する。
【0062】
IIc.抗真菌活性
抗真菌活性を測定するために、試験微生物Epidermophyton floccosum(RV 69635)およびTrichophyton rubrum(RV58124)を用いた。抗真菌活性は抗菌活性と同じ方法で測定した。
【0063】
この目的のために、希釈液は、最終濃度10−10cfuまで各微生物につき調製した。軟膏は、希釈なし、無菌蒸留水での1/2および1/10希釈として調べた。軟膏またはその希釈液1gに対し、希釈接種物100μlを加えて、混合した。25℃15分間のインキュベーション後、1/10希釈系をこの混合物100mgからSAB(サブロー肉汁(Gibco))中で調製した。各希釈液をSABA(サブロー寒天(Gibco))上に接種した。プレートを37℃で24時間インキュベートした。対照として、微生物の非処置培養物および蒸留水中の1%セトリミドを用いた。インキュベーション後、すべてのプレートを生長について検査した。低下因数(Rf)中に表される試験は3回実施された。その結果を表7に示す。
【0064】
【表9】

【0065】
上表から、すべての試験軟膏が希釈においてその抗真菌活性を保持し、これは蒸留水中1%セトリミドに匹敵することが分かる。プラセボは非常に限定された抗真菌活性を有する。
【0066】
IId.殺ウイルス活性
殺ウイルス活性をD.Vanden Berghe et al.in “Methods in Plant Biochemistry”,Vol.6“Assays for Bioactivity”,p.49-67,Academic Press Limited 1991記載のミクロ方法に従って測定した。物質希釈液300μlに非希釈ウイルス懸濁液300μlを加えた。混合物を34℃で15秒間インキュベートした。希釈チューブにウイルス用の冷却培養培地0.9mlを加え、氷浴に入れた。インキュベート混合物100μlを希釈チューブに入れた。それから1/10希釈系を調製した。これらの希釈液200μlをVERO細胞上に入れた。対照は非処置ウイルス(ウイルス対照)および非処置細胞(細胞対照)である。プレートを37℃で湿培養器中5−7日間インキュベートした。細胞毒性および細胞病理学的効果について顕微鏡で細胞を調べた。結果は低下因数(Rf)で表す。低下因数は、最初のウイルス濃度に対する残留ウイルス濃度の比である。この試験は3回実施された。Rfで表された結果を表8に示す。
【0067】
【表10】

【0068】
上表から試験軟膏が1/50希釈まで殺ウイルス活性を有することが分かる。殺ウイルス活性は1%セトリミドの活性に匹敵する。プラセボは殺ウイルス活性がない。
【0069】
実施例4
インビボ活性試験
試験群は、口唇にコールド・ソアがある15人の患者からなる。彼等は以下の組成を有する軟膏で処置された。
【0070】
【表11】

試験結果を次の表9に示す。
【0071】
【表12】

2人の男性による第2試験において軟膏の予防的作用を調べた。その終了時まで軟膏を、1日1回6カ月間、通常病変が生じたとされる部位に適用した。この処置の結果、かぜの場合でも症状の繰り返しは起きなかった。この処置の前は、2人の患者の1人は少なくとも月に1回コールド・ソアが起きており、両者ともかぜに症状が伴っていた。
【0072】
本発明は、ヘルペス感染、特にHSV−1または−2による顔面または口唇ヘルペスの処置のための新しい医薬組成物を提供する。他の療法との大きい相違は、治療的または予防的にこの薬剤を使用する患者では、同じ部位に症状の繰り返しが起きないことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一構成成分として第四級アンモニウム化合物および/または第二構成成分として抗ウイルス剤および/または第三構成成分として植物抽出物を薬学的に許容される基剤に含み、該3構成成分は相互に和合している、ヘルペス単純ウイルス感染の処置のための医薬組成物。
【請求項2】
第一構成成分がセトリミド、塩化ベンザルコニウムからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1の医薬組成物。
【請求項3】
第二構成成分がアシクロビル、ブロモビニルデソクスウリジン(BVDU)、3−フルオロチミジン(3FT)、イドクスウリジン、プロピル・ガレート、エチル・ガレート、プロアントシアニド、グルコサミンからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1または2の医薬組成物。
【請求項4】
第三構成成分が Aesculus hippocastanum L; Aloe vera L; Anagallis arvensis L; Anthemis nobilis L; Arctium lappa L; Aristolochia clematitis L; Arnica montana L; Betonica officinalis L; Calendula officinalis L; Capsicum annuum (tetraqonum); Carica papaya L; Carlina acaulis L; Caryophyllus aromaticus L; Cynoglossum officinale L; Echinacea angustifolia; Echinacea purpurea L; Eupatorium cannabinum L; Geranium robertianum; Geum urbanum L; Glechoma hederacea L; Hamamelis virginiana L; Hypericum perforatum L; Inula helenium L; Juglans regia L; Juniperus oxycedrus L; Lavandula officinalis; Lawsonia alba L; Lysimachia nummeralia L; Lythrum salicaria L; Malva sylvestris; Marrubium vulgare L; Matricaria chamomilla L; Mentha piperita L; Myroxylon balsamum L; Myrtus communis L; Olea europaea L; Prunus amygdalus; Pyrus cydonia L; Quercus robur L; Quillaja saponaria; Rubus idaeus L; Salvia officinalis L; Saponaria officinalis L; Smilax officinalis; Solanum dulcamara L; Solidago virga aurea L; Styrax tonkinensis; Styrax benzoides; Styrax benzoin; Symphytum officinale L; Trigonella foenum-graecum L; Tropaeolum majus L; Urtica urens L; Urtica dioica L; Viola tricolor L.の抽出物からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1、2または3の医薬組成物。
【請求項5】
第一構成成分がセトリミドの場合に第三構成成分がカミツレ、キンセンカ、サルビア、ゴボウ類およびセンナの植物抽出物からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1、2または3の医薬組成物。
【請求項6】
第一構成成分が塩化ベンザルコニウムの場合に第三構成成分がカミツレ、キレセンカ、センナの抽出物からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1、2または3の医薬組成物。
【請求項7】
第四級アンモニウム塩0.1−5%、抗ウイルス剤0.01−3%および植物抽出物1−20%を薬学的に許容される担体中に含む、請求項1−6のいずれかの医薬組成物。
【請求項8】
【表1】

を含む、請求項7の医薬組成物。
【請求項9】
HSV−1感染の処置のための請求項1−8のいずれかの医薬組成物の使用。
【請求項10】
HSV−2感染の処置のための請求項1−8のいずれかの医薬組成物の使用。

【公開番号】特開2008−74872(P2008−74872A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319836(P2007−319836)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【分割の表示】特願平8−524159の分割
【原出願日】平成8年1月23日(1996.1.23)
【出願人】(507374480)バイオ・ファルマ・サイエンシーズ・ベスローテン・フエンノートシャップ (1)
【氏名又は名称原語表記】Bio Pharma Sciences B.V.
【Fターム(参考)】