説明

ベルト付クランプおよびワイヤハーネス

【課題】ベルトに対する被結束物の位置ずれを抑えるとともに、ベルトの締め付けによる力が被結束物の局所に集中して被結束物が損傷、又は局所的に変形することを抑えることのできるベルト付クランプおよびワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ベルト付クランプ101は、被結束物を結束するベルト20と、ベルト20の一端が接続されたベルト支持部10と、支持体に取り付けられるクランプ部30と、を備える。弾性体25が、ベルト20の被結束物に接する面に設けられている。ベルト20が被結束物に巻きつくことで、弾性体25の表面は被結束物の外周に押し付けられて、被結束物の外周は、弾性体25の表面にめり込んだ状態で保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線などの被結束物を車体などの支持体に固定する際に用いられるベルト付クランプおよびベルト付クランプを用いたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルト付クランプが、電線などの被結束物を車体などの支持体の所定の位置に保持するために用いられてきた。ベルト付クランプは、クランプ部と、ベルトと、ベルト支持部と、を備える。クランプ部は、被結束物を支持体に固定する役割を有する。ベルトは、被結束物を結束する役割を有する。ベルト支持部は、ベルトを支持する役割を有する。ベルトは、外側の面に複数の係止歯を有している。ベルト支持部が備える係止爪が、係止歯と噛み合うことによって、ベルトはベルト支持部に係止される。このようなベルト付クランプが、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−102147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたベルト付クランプにおいては、被結束物である電線と電線に接するベルトとが滑りやすく、保持された電線の長手方向又は周方向において、ベルト付クランプに対する電線の位置ずれが生じやすい。
【0005】
位置ずれの問題を解決するため、複数の突起が長手方向に沿ってベルトの内周に一体形成されたベルト付クランプが存在する。ベルトが電線を締め付けると、ベルトから被結束物への押圧力がこれらの突起の先端部分に集中して摩擦力が大きくなるため、長手方向及び周方向における電線の位置ずれは抑えられる。
【0006】
このとき、上述のベルト付クランプでは、ベルトを引き締めることによって被結束物に加わる力が、突起の先端部分において過度に集中し、被結束物の表層部分が損傷、又は被結束物の局所的な変形によって被結束物の性能が悪化するおそれがある。例えば、被結束物に光ファイバケーブルが含まれる場合、突起の先端に当接した光ファイバケーブルの一部が許容範囲を超えて変形すると、光ファイバケーブルにおける光信号の伝送性能が悪化する。
【0007】
本願発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ベルトに対する被結束物の位置ずれを抑えるとともに、ベルトの締め付けによる力が被結束物の局所に集中して被結束物が損傷、又は局所的に変形することを抑えることのできるベルト付クランプおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の発明は、ベルト付クランプであって、被結束物に巻き付けられたベルトと、前記ベルトの一端が固定され、前記ベルトの一部を係止することにより前記ベルトとともに前記被結束物を結束する環状部を形成するベルト支持部と、前記ベルト支持部に設けられ、支持体に固定されるクランプ部と、を備えたベルト付クランプであって、前記ベルト及び前記ベルト支持部の一方又は両方における前記環状部を形成する部分の一部又は全体に設けられ前記被結束物に接する弾性体を備える。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に係るベルト付クランプであって、前記弾性体は、前記ベルトにおける前記環状部を形成する部分の表面に接着された第1の弾性体を含んでいる。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明に係るベルト付クランプであって、前記弾性体は、前記ベルトに対し、前記環状部を形成する部分において二色成形により接合された第2の弾性体を含んでいる。
【0011】
第4の発明は、第3の発明に係るベルト付クランプであって、前記第2の弾性体の厚みは、前記ベルトの厚みよりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、第1の発明に係るベルト付クランプであって、前記弾性体は、前記ベルト支持部における前記環状部を形成する部分の表面に接着された第3の弾性体を含むことを特徴とする。
【0013】
第6の発明は、第5の発明に係るベルト付クランプであって、前記第3の弾性体における前記被結束物に接する面は、前記被結束物が嵌り込む溝状に湾曲して形成されていることを特徴とする。
【0014】
第7の発明は、第1ないし第6の発明に係るベルト付クランプであって、前記弾性体における前記被結束物に接する面に起伏が形成されていることを特徴とする。
【0015】
第8の発明は、電線を含む被結束物と、前記被結束物に巻き付けられたベルトと、前記ベルトの一端が固定され、前記ベルトの一部を係止することにより前記ベルトとともに前記被結束物を結束する環状部を形成するベルト支持部と、前記ベルト支持部に設けられ、支持体に固定されるクランプ部と、を有するベルト付クランプと、を備えたワイヤハーネスであって、前記ベルト及び前記ベルト支持部の一方又は両方における前記環状部を形成する部分の一部又は全体に設けられ前記被結束物に接する弾性体を備える。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明から第8の発明によれば、ベルト付クランプは、ベルト及びベルト支持部の一方又は両方における環状部を形成する部分の一部又は全体に設けられ被結束物に接する弾性体を備えている。この弾性体は、その弾性により被結束物の表面に沿って変形するため、被結束物に対して接する面積が従来のベルトよりも格段に大きくなる。そのため、ベルトの締め付けによる力が、広い接触面全体に渡って分散し、局所への押圧力の集中による被結束物の損傷及び被結束物の局所的な変形を抑えることができる。また、弾性体と被結束物との接触面積が大きく、また、一般にゴムなどの弾性体が物体に接触する場合の摩擦係数は大きいため、弾性体と被結束物との接触部分全体における摩擦力が大きくなり、ベルト付クランプに対する被結束物の位置ずれを抑えることができる。
【0017】
第4の発明によれば、第2の弾性体の厚みは、ベルトの厚みよりも大きく形成されている。このため、被結束物が接する面積は従来よりも大きくなるため、ベルトの締め付けによる力をより分散させることができる。また、弾性体と弾性体に接する被結束物との摩擦力が大きくなるため、ベルト付きクランプに対する被結束物の位置ずれを抑えることができる。
【0018】
第6の発明によれば、第3の弾性体における被結束物に接する面は、被結束物が嵌り込む溝状に湾曲している。このため、被結束物が弾性体の溝状の部分に安定的に保持された状態で、被結束物にベルトを巻き付ける作業を行うことができ、結束作業が容易となる。
【0019】
第7の発明によれば、弾性体は被結束物に接する面に起伏が形成されているため、被結束物と弾性体との接触面積はより大きくなる。このため、ベルトの締め付けによる力をより分散させることができる。また、弾性体と弾性体に接する被結束物との摩擦力をより大きくすることができるため、ベルト付きクランプに対する被結束物の位置ずれを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るベルト付クランプ101の背面図(a)、正面図(b)及び側面図(c)である。
【図2】ベルト付きクランプ101が用いられたワイヤハーネス51の断面図である。
【図3】ベルト付きクランプ101の第1応用例に係るベルト付きクランプ101bの正面図である。
【図4】ベルト付きクランプ101の第2応用例に係るベルト付きクランプ101cの正面図である。
【図5】ベルト付きクランプ101の第3応用例に係るベルト付クランプ101dの側面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るベルト付クランプ102の正面図(a)及び側面図(b)である。
【図7】ベルト付クランプ102が用いられたワイヤハーネス52の断面図である。
【図8】ベルト付クランプ102の第1応用例に係るベルト付クランプ102bの側面図である。
【図9】ベルト付クランプ102の第2応用例に係るベルト付クランプ102cの側面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るベルト付クランプ103の側面図である。
【図11】ベルト付クランプ103が用いられたワイヤハーネス53の断面図である。
【図12】ベルト付クランプ103の第1の応用例に係るベルト付クランプ103bの側面図である。
【図13】ベルト付クランプ103の第2の応用例に係るベルト付クランプ103cの側面図である。
【図14】ベルト付クランプ103の第3の応用例に係るベルト付クランプ103dの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0022】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るベルト付クランプ101である。ベルト付クランプ101は、車体に配設される被結束物を結束された状態に保持するとともに、車体の所定位置に取り付ける機能を有する。具体的に、ベルト付クランプ101は、クランプ部30と、ベルト支持部10と、ベルト20と、を備える。クランプ部30は、車体などの支持体に取り付けられている。ベルト支持部10は、ベルト20の一端が接続されている。ベルト20は、被結束物を結束する。ベルト付クランプ101は、後述する弾性体25の部分を除き、ポリプロピレンなどの樹脂によって構成されている。以下、クランプ部30、ベルト支持部10、ベルト20について順に説明する。
【0023】
クランプ部30は、一端がベルト支持部10に接続された軸部32と、軸部32の先端部分に設けられ、軸部32の先端側から根元側へ向けて末広がりに形成された1対の取付片33と、ベルト支持部10における軸部32の根元の周囲の部分に形成された皿状の受部31と、を備えている。そして、図示しない複数の段差部が、取付片33の外側に形成されている。クランプ部30の軸部32及び取付片33が、車体に設けられた図示しない取付穴に差し込まれることによって、取付片33は撓みつつ収縮し、取付片33の段差部が取付穴の縁部に引っ掛かる。これにより、取付片33と受部31とが、取付穴の周囲の支持体を表裏両側から挟み込む状態となり、クランプ部30は支持体に固定される。
【0024】
ベルト支持部10は、ベルト20がその先端23から挿通される保持孔15を有する部材であり、ベルト20を保持孔15に挿通された部分で保持することにより、ベルト20を環状に保持する。ベルト支持部10における保持孔15を形成する壁の内側面には、保持爪12が形成されている。保持爪12は、保持孔15を形成する壁のうちのクランプ部30側に位置する揺動可能な壁に突出して設けられている。ベルト20の先端23が、保持孔15に挿入され、さらにその挿入方向へ引っ張られることにより、ベルト20が被結束物の周囲に密着する状態で、保持孔15内において保持爪12がベルト20に設けられた保持歯21と噛み合う。
【0025】
ベルト20は、被結束物に巻き付いて結束することで、被結束物を一括して保持する役割を有する。上述した保持歯21は、被結束物に接するベルト20の面とは反対側の面において窪みと窪みとの間に形成された三角柱状の部分であり、複数の保持歯21が、ベルト20の長手方向に沿って設けられている。
【0026】
本実施の形態において、弾性体25が、ベルト20の被結束物に接する面に設けられている。図1において、弾性体25は薄板状であり、ベルト20の表面に接着されている。弾性体25は、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム又はアクリルゴムなどのゴムからなる部材である。また、弾性体25として、スポンジなどが採用されることも考えられる。つまり、弾性体25は、力が加えられることで変形し、力が除かれることで元の形状に戻ろうとする性質を有する物体であればよい。弾性体25とベルト20とは、二色成形によって接着させる形態が一般的である。二色成形とは、同じ金型内に2種類の材料を順次射出する成型方法である。なお、接着剤が、二種類の部材を接着させる形態であっても構わない。
【0027】
図2は、弾性体25を備えるベルト付クランプ101が、電線及び光ファイバケーブルなどを含む複数のケーブル材40からなる被結束物を保持したワイヤハーネス51の断面図である。ベルト20は、弾性体25が設けられた面を内側にして、一括りにされた複数のケーブル材40の外周に巻き付けられる。なお、ケーブル材40は予めテープなどで一括りに保持された状態にしてから、ベルト20が外周に巻き付く形態であってもよい。ワイヤハーネス51が長い場合は、事前にテープが巻かれることによって容易に保持を行うことができる。
【0028】
ベルト20は、ベルト20の先端23から保持孔15に挿入され、引き締められる。そして、保持孔15に設けられた保持爪12が、ベルト20に設けられた保持歯21と噛み合うことで、ベルト20は所定の位置で係止される。従って、ベルト20とベルト支持部10とによって、所定の大きさの環状部が形成される。ベルト20が引き締められることによって、ベルト20とベルト支持部10とによって形成された環状部の内側の面が、一括りにされた複数のケーブル材40の外周に接する。つまり、ベルト20に設けられた弾性体25が、一括りにされた複数のケーブル材40における外周の一部の面に接する。ベルト20が引き締められることによって、弾性体25の面は、ケーブル材40の外周に、より強く押し付けられる。そして、弾性体25の表面は、一括りにされた複数のケーブル材40の外周の形状に応じて変形して、複数のケーブル材40を保持する。即ち、複数のケーブル材40は、弾性体25の表面に、めり込むようにして保持されることとなる。従って、一括りに保持された複数のケーブル材40の外周は、従来よりも接触する面積が大きくなる。このため、ベルト20の引き締めによる力は、複数のケーブル材40が接する面全体を介して複数のケーブル材40に伝わる。即ち、ベルト20の引き締めによる力が、被結束物であるケーブル材40の外周に、局所的に集中して伝わることを、従来よりも抑えることができる。また、一般的にゴムなどの弾性体が被結束物に接触する場合の摩擦係数は大きく、さらに一括りに保持された複数のケーブル材40の外周が接する面積は、従来よりも大きいため、弾性体25とケーブル材40との摩擦力もより大きくなる。このため、ケーブル材40の長手方向、又はベルト付クランプ101が形作る環状部の周方向におけるベルト付クランプ101に対するケーブル材40の位置ずれを抑えることができる。
【0029】
このようなベルト付クランプ101は、一部に光ファイバケーブルを含む被結束物に対して、特に有効である。なぜなら、光ファイバケーブルは、局所的に力が作用することによって、伝送損失が増大しやすい。従って、従来使用されてきたベルト付クランプが、光ファイバケーブルの保持に用いられた場合、ベルト20の締め付けによる力が、光ファイバケーブルに局所的な変形を生じさせ、伝送損失が大きくなることが考えられる。本実施の形態におけるベルト付クランプ101は、ベルト20の引き締めによる力が、被結束物に対して局所的に集中することなく、被結束物の表面に沿って変形する弾性体25の面全体を介して、被結束物に伝わる。従って、ベルト20の引き締めによる力は、従来よりも分散して被結束物に伝わるため、局所的に光ファイバケーブルに及ぶことはない。このため、ベルト付クランプ101は、光ファイバケーブルを含む被結束物の保持に非常に有効である。
【0030】
なお、本実施の形態は、図1に示されるように弾性体25が設けられた構成に限られない。例えば、図3に示されたベルト付クランプ101bのように、ベルト20の長手方向に沿って延びた長尺な弾性体25bが、複数列分設けられた形態であっても構わない。本図に示される例は、2列分の長尺な弾性体25bが、ベルト20に接合された例であるが、3列分以上の長尺な弾性体25bがベルト20に接合された例も考えられる。また、図4に示されたベルト付クランプ101cのように、ベルト20の長手方向に直交する方向に、長手方向を有する複数の短尺な弾性体25cが、ベルト20の長手方向において複数配列された形態であっても構わない。本図に示される例は、ベルト20の長手方向に並ぶ15個の短尺な弾性体25cが、ベルト20に接合された例であるが、短尺な弾性体25cの数及び大きさはこれに限られない。弾性体25が、ベルト20の被結束物に接する面に設けられていれば、どのような形態であっても構わない。
【0031】
また、図5に示されたベルト付クランプ101dのように、弾性体25dが、被結束物に接する面に起伏が形成された構造を備えていれば好適である。このように、弾性体25dの表面が起伏を有することによって、被結束物に接する弾性体25dの面積はより大きくなる。このため、ベルト20の締め付けによる力は、被結束物に対してより分散して作用するとともに、ベルト付クランプに対する被結束物の位置ずれをより抑えることができる。
【0032】
また、弾性体25の厚みが、ベルト20の厚みよりも大きく形成されることによって、被結束物は、弾性体25に対してより深くめり込むこととなり、被結束物に対する弾性体25の接触面積は、より大きくなる。従って、ベルト20の締め付けによる力が、被結束物に対して、より分散して作用するとともに、ベルト付クランプに対する被結束物の位置ずれをより抑えることができる。
【0033】
以上のように、本実施の形態では、弾性体25が、ベルト付クランプ101,101b,101c,101dの有するベルト20の面であって、被結束物に接する面に接着されている。このため、ベルト20が引き締められると、弾性体25は、被結束物の外周に応じた形状に変形し、被結束物が、弾性体25の表面にめり込んだ状態で保持される。つまり、被結束物の外周における接触面積は、従来よりも大きくなる。従って、ベルト20による被結束物を締め付ける力が、局所的に集中して伝わることを、従来よりも抑えることができる。また、被結束物に対する弾性体25の接触面積は、従来よりも大きく、また、一般にゴムなどの弾性体が物体に接触する場合の摩擦係数は大きいため、弾性体25と被結束物との間に生じる摩擦力も大きくなる。このため、被結束物が、ベルト付クランプ101,101b,101c,101dに対して被結束物の長手方向及び周方向に位置ずれすることを抑えることができる。
【0034】
<第2の実施形態>
次に、図6〜図9を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るベルト付クランプ102について説明する。なお、本実施形態において、上記第1の実施形態に示された構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されており、上記第1の実施形態におけるベルト付クランプ101と異なる点についてのみ説明するものとする。
【0035】
本実施の形態におけるベルト付クランプ102は、ベルト20の根元側、つまりベルト支持部10に接続される側に、弾性体26が設けられている。つまり、弾性体26は、ベルト20の一部に設けられている。ベルト20は、弾性体26が設けられる箇所に所定の空間を有している。弾性体26は、ベルト20に形成された空間の領域に2色成形により射出され、これにより空間を構成する周囲の4辺でベルト20とつながって一体となる。
【0036】
図7は、ベルト付クランプ102が、被結束物であるケーブル材40を複数保持したワイヤハーネス52の断面図である。第1の実施形態と同様に、ベルト20が締め付けられることによって、ケーブル材40は、外周に応じた形状に弾性体26の表面を変形させながら、つまり、弾性体26にめり込みながら、弾性体26に保持される。従って、一括りに保持された複数のケーブル材40の外周が接する面積は、従来よりも大きくなる。このため、第1の実施形態と同様に、ベルト20の締め付けによる力は、被結束物が接する弾性体26の面全体を介して伝わる。つまり、ベルト20の締め付けによる力が、被結束物に局所的に集中して伝わることを抑えることができる。また、第1の実施形態と同様に、ベルト付クランプ102とケーブル材40との間に生じる摩擦力は従来よりも大きくなる。このため、ケーブル材40の長手方向、又はベルト付クランプ102が形作る環状部の周方向におけるベルト付クランプ102に対するケーブル材40の位置ずれを抑えることができる。
【0037】
本実施の形態では、弾性体26が、ベルト20の根元側、即ち、ベルト20におけるベルト支持部10に固定された端部に近い一部の領域に設けられており、ベルト20の先端23側は、従来のベルト20と同様の形態である。従って、弾性体26がベルト支持部10の保持孔15の縁部に引っ掛かることを回避でき、ベルト20をベルト支持部10に通しにくくなる不都合を回避できる。また、第1の実施形態と比較して弾性体26は少量ですむため、コストの面でも有効である。
【0038】
なお、本実施の形態は、上記実施の形態に限られるものではない。例えば、図8に示されるように、弾性体26cの厚みがベルト20の厚みよりも厚くなっていても構わない。弾性体26cは厚みを有するため、被結束物は、より弾性体26cの表面にめり込むことが可能となり、被結束物に接する弾性体26cの面積は大きくなる。従って、ベルト20の締め付けによる力は、局所的に集中することなく、より分散して被結束物に作用する。また、ベルト付クランプ102bに対する被結束物の位置ずれをより抑えることができる。
【0039】
また、図9に示されるベルト付クランプ102cは、ベルト付クランプ102bと同様に、弾性体26dの厚みがベルト20の厚みよりも厚くなっているとともに、弾性体26dの表面であって、被結束物に接する面に起伏が形成された構造を有している。このため、被結束物に接する弾性体26dの面積はより大きくなる。従って、ベルト20を締め付けることによる力は、被結束物に対してより分散して伝わることとなる。また、被結束物とベルト付クランプ102cとの間に生じる摩擦力も大きくなるため、ベルト付クランプ102cに対する被結束物の位置ずれをより抑えることができる。
【0040】
以上のように、第2の実施形態では、ベルト付クランプ102,102b,102cが用いられることによって、ベルト20の締め付けによる力が、被結束物に局所的に集中して作用することを防ぐことができる。また、ベルト付クランプ102,102b,102cに対する被結束物の位置ずれをより抑えることができる。
【0041】
<第3の実施形態>
次に、図10〜図14を参照しつつ、本発明の第3の実施形態に係るベルト付クランプ103について説明する。なお、以下の実施形態において、上記第1、及び第2の実施形態に示された構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されており、上記第1、及び第2の実施形態におけるベルト付クランプ101,102と異なる点についてのみ説明するものとする。
【0042】
第3の実施形態では、ベルト支持部10の背面、つまり、被結束物を結束する際に、ベルト20とベルト支持部10とで形作られる環状部を形成するベルト支持部10の面に弾性体27が接着されている。図10は、本実施の形態に係るベルト付クランプ103の一例を示している。図10に示されるベルト付クランプ103は、弾性体27が、ベルト支持部10の背面のうち、ベルト20が接続されている側とは反対の方向に伸び出た片持ち梁状に設けられている。
【0043】
図11は、このような弾性体27を備えるベルト付クランプ103が、被結束物であるケーブル材40を複数保持したワイヤハーネス53の断面図である。図11に示されるように、ベルト20は、弾性体27全体が環状部の内側に位置するように、一括りにされたケーブル材40に巻き付いて保持する。ベルト20が締め付けられることによって、弾性体27の面が、一括りにされた複数のケーブル材40の外周の一部に接する。
【0044】
上記実施形態と同様に、ベルト20が締め付けられることによって、弾性体27は、ケーブル材40の外周に応じた形状に変形しながら、ケーブル材40に面で接触することとなる。このため、ベルト20を締め付ける力は、一括りにされた複数のケーブル材40に接する弾性体27の面全体を介して作用することとなり、被結束物に局所的に集中することを防ぐことができる。また、ベルト付クランプ103とケーブル材40との間に生じる摩擦力が大きくなる。このため、ケーブル材40の長手方向、又はベルト付クランプ103が形作る環状部の周方向におけるベルト付クランプ103に対するケーブル材40の位置ずれを抑えることができる。
【0045】
なお、第3の実施形態におけるベルト付クランプ103は、図10に示されるものに限られない。図12に示されたベルト付クランプ103bは、片持ち梁状に設けられた弾性体27bが、被結束物に当接する面に起伏が形成された構造である。このように、弾性体27bは、起伏を有しているため、被結束物との接触面積は大きくすることができる。このため、ベルト20の締め付けによる力を、より分散させることが可能であり、ベルト付クランプ103bに対して被結束物が位置ずれすることをより抑えることができる。
【0046】
また、図13はベルト付クランプ103cであり、弾性体27cが、ベルト支持部10に接着された部分から隆起して、結束された被結束物の幅方向に広がっており、被結束物に当接する面は、被結束物が嵌り込む溝状の湾曲面271cを有している。このため、被結束物は、湾曲面271cに位置を合わせることができる。従って、被結束物は、弾性体27cの溝状の部分に安定的に保持された状態で、被結束物にベルト20を巻き付ける作業を行うことができ、結束作業が容易となる。特に、一部に光ファイバケーブルを有する被結束物は、テープなどで一括に保持された電線と、光ファイバケーブルとが、別々に弾性体27c上に配置されて、ベルト20による締め付けが行われる。このため、最初に光ファイバケーブルが、続いて一括に保持された複数の電線が、という順に弾性体27cの湾曲面271cに配置させることができる。弾性体27cは、湾曲面271cを有し、かつベルト支持部10において接着されているため、ベルト20による締め付けが行われても、被結束物の位置が大きくずれることはない。従って、光ファイバケーブルは確実に弾性体27cの所望の位置で保持されることとなる。つまり、光ファイバケーブルが弾性体27cに接する状態で、ベルト20の締め付けが行われれば、確実にその状態が保たれたワイヤハーネス53を得ることができる。光ファイバケーブルは弾性体27cに接しているため、ベルト20の締め付けによる局所的な力が、光ファイバケーブルに及ぶことを確実に抑えることができる。
【0047】
また、図14に示されるベルト付クランプ103dであっても構わない。図10に示されるように、環状部を構成するベルト支持部10bの面が、保持時における被結束物の長手方向に沿って延びた形状とし、弾性体27dが、ベルト支持部10の面全体に接合された形態であっても構わない。このように、ベルト支持部10bの面が大きくなることで、接続できる弾性体27dの面積も大きくすることができるため、被結束物を保持する力はより強めることができる。また、図14に示されているように、被結束物に接する弾性体27dの面に起伏を設けることによって、さらに被結束物との接触面積は大きくなる。従って、ベルト20の締め付けによる力は、より分散されるため、被結束物に対して局所的に集中して伝わることを抑えられる。また、被結束物とベルト付クランプ103dとの間の摩擦力は大きくなるため、ベルト付クランプ103dに対して被結束物が位置ずれすることをより抑えることができる。
【0048】
以上のように、第3の実施形態に係るベルト付クランプ103,103b,103c,103dが用いられることによって、上記実施形態と同様に、ベルト20の締め付けによる力が被結束物に対して局所的に集中して伝わることを抑えることができる。また、ベルト付クランプ103,103b,103c,103dに対する被結束物の位置ずれをより抑えることができる。
【0049】
<変形例>
なお、本願発明は上記実施形態に限られるものではない。上記実施形態においては、弾性体25,26,27は、ベルト20、またはベルト支持部10に設けられた構造であったが、このような形態には限られない。弾性体(図示せず)が、ベルト20とベルト支持部10との両方に設けられた構造、つまりベルト20とベルト支持部10とで構成される環状部の全体に設けられた構造であっても構わない。このような構造であるため、上述のベルト20の締め付けによる力をより分散させるとともに、ベルト付クランプ(図示せず)と被結束物との摩擦力をより大きくすることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 ベルト支持部
12 保持爪
15 保持孔
20 ベルト
25,26,27 弾性体
30 クランプ部
31 受部
32 軸部
33 取付片
51,52,53 ワイヤハーネス
101,102,103 ベルト付クランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被結束物に巻き付けられたベルトと、
前記ベルトの一端が固定され、前記ベルトの一部を係止することにより前記ベルトとともに前記被結束物を結束する環状部を形成するベルト支持部と、
前記ベルト支持部に設けられ、支持体に固定されるクランプ部と、を備えたベルト付クランプであって、
前記ベルト及び前記ベルト支持部の一方又は両方における前記環状部を形成する部分の一部又は全体に設けられ前記被結束物に接する弾性体を備えるベルト付クランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のベルト付クランプであって、
前記弾性体は、前記ベルトにおける前記環状部を形成する部分の表面に接着された第1の弾性体を含むベルト付クランプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のベルト付クランプであって、
前記弾性体は、前記ベルトに対し、前記環状部を形成する部分において二色成形により接合された第2の弾性体を含むベルト付クランプ。
【請求項4】
請求項3に記載のベルト付クランプであって、
前記第2の弾性体の厚みは、前記ベルトの厚みよりも大きく形成されていることを特徴とするベルト付クランプ。
【請求項5】
請求項1に記載のベルト付クランプであって、
前記弾性体は、前記ベルト支持部における前記環状部を形成する部分の表面に接着された第3の弾性体を含むことを特徴とするベルト付クランプ。
【請求項6】
請求項5に記載のベルト付クランプであって、
前記第3の弾性体における前記被結束物に接する面は、前記被結束物が嵌り込む溝状に湾曲して形成されていることを特徴とするベルト付クランプ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のベルト付クランプであって、
前記弾性体における前記被結束物に接する面に起伏が形成されていることを特徴とするベルト付クランプ。
【請求項8】
電線を含む被結束物と、
前記被結束物に巻き付けられたベルトと、前記ベルトの一端が固定され、前記ベルトの一部を係止することにより前記ベルトとともに前記被結束物を結束する環状部を形成するベルト支持部と、前記ベルト支持部に設けられ、支持体に固定されるクランプ部と、を有するベルト付クランプと、
を備えたワイヤハーネスであって、
前記ベルト及び前記ベルト支持部の一方又は両方における前記環状部を形成する部分の一部又は全体に設けられ前記被結束物に接する弾性体を備えるワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−60706(P2012−60706A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198862(P2010−198862)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】