説明

ベルト式無段変速機の油圧制御装置

【課題】ベルト式無段変速機の油圧制御回路におけるプライマリ側及びセカンダリ側に必要とする各油圧を確保しながらもポンプロスを低減できる油圧制御装置を提供する。
【解決手段】ベルト式無段変速機の油圧制御回路200に、調圧バルブV1を有するライン圧制御用回路L2、プライマリ側減圧バルブV2を有するプライマリ側油圧制御用回路L3、セカンダリ側減圧バルブV3を有するセカンダリ側油圧制御用回路L4を備えさせる。変速比等に応じて設定されるプライマリ側目標油圧及びセカンダリ側目標油圧の設定値のうち高い側の設定値にライン圧PLを一致させ、このライン圧PLを減圧することなしに上記目標油圧が高い側に作用させる。これにより、ライン圧としては必要最低限の油圧が確保されておればよいことになり、オイルポンプ20の吐出圧力を低く設定することが可能になってポンプロスの低減が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用等として適用されるベルト式無段変速機の油圧制御装置に係る。特に、本発明は、駆動側プーリ(プライマリプーリ)や従動側プーリ(セカンダリプーリ)の作動油圧を得るための基圧となるライン圧を低く抑えることによってポンプロス(オイルポンプ損失)の低減を図るための対策に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば下記の特許文献1に開示されているように、自動車用エンジンの出力側に搭載される変速機としてベルト式無段変速機が知られている。
【0003】
このベルト式無段変速機は、互いに平行に配置された2つのシャフトと、各シャフトにそれぞれ個別に設けられたプライマリプーリ及びセカンダリプーリとを有している。これらプライマリプーリ及びセカンダリプーリは、共に、固定シーブと可動シーブとを組み合わせた構成となっていて、これらシーブ間にV字形状の溝が形成されている。また、可動シーブは固定シーブに対して接離可能な構成となっている。
【0004】
そして、プライマリプーリのV溝及びセカンダリプーリのV溝に渡ってベルトが巻き掛けられており、可動シーブに軸線方向の挟圧力を発生させるための油圧室が各プーリそれぞれに対応して別個に設けられている。これにより、各油圧室の油圧を個別に制御することで、各プーリの溝幅が変更されてベルトの巻き掛け半径が変化し、変速比が変更されるようになっている。
【0005】
また、この種のベルト式無段変速機に使用されている上記ベルトの構成としては、多数の金属製の駒(エレメントやブロックとも呼ばれる)が直列配置されるようにスチール製等のリング(フープやバンドとも呼ばれる)に相対移動可能に係止された構成となっている。そして、これら駒の両側面をプーリに当接させ、上記各油圧室の油圧を調整することによって固定シーブと可動シーブとの間で駒を挟持しながらベルトを走行させるようになっている。
【0006】
ところで、この種のベルト式無段変速機において上記各油圧室の油圧を個別に制御する油圧制御回路では、オイルポンプの吐出側の圧力であって上記プライマリ側の油圧及びセカンダリ側の油圧をそれぞれ得るための基圧となるライン圧を調整弁によって所定圧力に調整する。そして、このライン圧をプライマリ側の減圧弁等で所定圧だけ減圧してプライマリ側油圧を得ると共に、上記ライン圧をセカンダリ側の減圧弁等で所定圧だけ減圧してセカンダリ側油圧を得るようになっている。
【0007】
例えば、下記の特許文献2では、ベルト式無段変速機の変速比等に応じて設定されるプライマリ側の油圧(以下、プライマリ側必要油圧またはプライマリ側目標油圧と呼ぶ場合もある)及びセカンダリ側の油圧(以下、セカンダリ側必要油圧またはセカンダリ側目標油圧と呼ぶ場合もある)よりも高いライン圧が得られるようにオイルポンプを駆動している。より具体的には、変速比が「1」よりも高い状況ではプライマリ側の油圧をセカンダリ側の油圧よりも高く設定し、逆に、変速比が「1」よりも低い状況ではセカンダリ側の油圧をプライマリ側の油圧よりも高く設定している。そして、この場合のライン圧として、上記変速比が「1」よりも高い場合にはライン圧がプライマリ側の油圧よりも僅かに高く設定され、また、上記変速比が「1」よりも低い場合にはライン圧がセカンダリ側の油圧よりも僅かに高く設定されるようになっている。
【特許文献1】特開平9−217819号公報
【特許文献2】特公平6−6974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでのベルト式無段変速機における油圧制御回路では、上記各油圧室の必要油圧の推定値にバラツキが生じている場合であっても各プーリの可動シーブの動作の信頼性や変速動作の応答性を十分に確保するために、上述した如くライン圧を高めに設定していた。つまり、上記推定値にバラツキが生じても、実際に各油圧室に作用する油圧としては必要油圧が確保できるように、上記ライン圧を高めに設定しておき、このライン圧を減圧弁等で減圧することで上記所定のプライマリ側必要油圧及びセカンダリ側必要油圧を得るようにしていた。
【0009】
ところが、上述した如くライン圧を高めに設定しておく場合、オイルポンプの吐出圧力も高めに設定しておく必要がある。一般に、オイルポンプは、その吐出圧力が高い程、ポンプロス(オイルポンプ損失)は大きくなってしまう。このため、上述した従来の油圧制御回路にあっては、ベルト式無段変速機の変速動作の信頼性を確保しながらもポンプロスを低減させることは困難であり、特に、エンジンの駆動力でオイルポンプを駆動させる場合には大きな損失トルクが生じてしまっていた。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベルト式無段変速機の油圧制御回路におけるプライマリ側及びセカンダリ側において必要とする各油圧を確保しながらもポンプロスを低減できる油圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、ベルト式無段変速機における駆動側プーリ及び従動側プーリに対する作動油圧として、その必要油圧(目標油圧)が高い側のプーリに対しては、このプーリの目標油圧と略一致する油圧となるようにライン圧を制御すると共に、このライン圧を減圧することなくこのプーリの作動油圧室に直接作用させるようにしている。これにより、ライン圧としては必要最低限の油圧が確保されておればよいことになり、オイルポンプの吐出圧力を低く設定することが可能になってポンプロスの低減を図ることができる。
【0012】
−解決手段−
具体的に、本発明は、駆動側プーリと従動側プーリとの間にベルトが動力伝達可能に掛け渡され、駆動側プーリのプーリ幅を変更するための駆動側プーリ油圧と従動側プーリのプーリ幅を変更するための従動側プーリ油圧とを、ライン圧を基圧としてそれぞれ独立して調整することで変速比を変更するベルト式無段変速機の油圧制御装置を前提とする。この油圧制御装置に対し、ライン圧制御手段と油圧切換手段とを備えさせる。ライン圧制御手段は、上記変速比に応じてそれぞれ設定される駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧の値に略一致するようにライン圧を制御する。また、油圧切換手段は、上記駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧が作用するプーリの作動油圧室に対して上記ライン圧を減圧することなく直接作用させる。
【0013】
この特定事項により、ベルト式無段変速機の変速動作時には、駆動側プーリの作動油圧室に作用する駆動側プーリ油圧によって駆動側プーリのプーリ幅が変更されると共に、従動側プーリの作動油圧室に作用する従動側プーリ油圧によって従動側プーリのプーリ幅が変更される。これにより、各プーリの半径方向におけるベルトの巻き掛け位置が変更されて所望の変速比で動力伝達が行われることになる。また、上記各作動油圧室に作用させるプーリ目標油圧(駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧)は、変速比等に応じてそれぞれ設定されるものであって、例えば、変速比(駆動側の回転数/従動側の回転数)が比較的高い減速側では従動側プーリ目標油圧が駆動側プーリ目標油圧よりも高く設定され、変速比が比較的低い増速側では駆動側プーリ目標油圧が従動側プーリ目標油圧よりも高く設定される。そして、本解決手段では、上記駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧の値に略一致するようにライン圧が制御される。そして、このライン圧は減圧されることなく、上記高く設定される側の目標油圧を作用させるべきプーリの作動油圧室に対して直接作用される。つまり、ライン圧としては、上記駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の油圧が確保されておればよいことになる。このため、従来のように予めライン圧を必要以上に高めに設定しておく必要がなくなり、オイルポンプの吐出圧力を低く設定することが可能になってポンプロスの低減を図ることが可能になる。
【0014】
より具体的な構成としては以下のものが挙げられる。先ず、駆動側プーリの作動油圧室に油圧を作用させるための駆動側油圧ライン及び従動側プーリの作動油圧室に油圧を作用させるための従動側油圧ラインに、導入されたライン圧の減圧が可能な減圧手段をそれぞれ備えさせる。また、上記駆動側プーリ油圧を検知可能な駆動側プーリ油圧検知手段と、従動側プーリ油圧を検知可能な従動側プーリ油圧検知手段とを備えさせる。そして、上記油圧切換手段により、上記駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧を作用させる作動油圧室に繋がる油圧ラインに備えられた減圧手段を非減圧状態とすることで、この作動油圧室に対してライン圧が直接作用されるようにする。一方、上記ライン圧制御手段により、上記駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側において上記プーリ油圧検知手段によって検知されたプーリ油圧の値が上記高く設定される側の目標油圧の値に略一致するようにライン圧をフィードバック制御する構成としている。
【0015】
この特定事項により、例えば、従動側プーリ目標油圧が駆動側プーリ目標油圧よりも高く設定される場合には、上記従動側油圧ラインに備えられた減圧手段を非減圧状態とする(減圧動作を行わせない)ことでライン圧を従動側プーリの作動油圧室に対して直接作用させる。そして、従動側プーリ油圧検知手段によって従動側プーリ油圧を検知しておき、この従動側プーリ油圧が上記従動側プーリ目標油圧に略一致するようにライン圧をフィードバック制御する。一方、駆動側プーリ目標油圧が従動側プーリ目標油圧よりも高く設定される場合には、上記駆動側油圧ラインに備えられた減圧手段を非減圧状態とすることでライン圧を駆動側プーリの作動油圧室に対して直接作用させる。そして、駆動側プーリ油圧検知手段によって駆動側プーリ油圧を検知しておき、この駆動側プーリ油圧が上記駆動側プーリ目標油圧に略一致するようにライン圧をフィードバック制御する。このように、本解決手段では、駆動側及び従動側においてそれぞれ必要とする各油圧を確保しながらもポンプロスを低減可能とする回路構成を具体化することができ、油圧制御装置の実用性を高めることができる。
【0016】
また、ライン圧制御手段によるライン圧の制御動作としては以下の2タイプが挙げられる。先ず、第1のタイプとして、駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧の値に常時一致するようライン圧制御手段がライン圧を制御するものである。
【0017】
この場合、ライン圧としては、常に必要最低限の油圧(駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧)に維持された状態となり、ポンプロスの低減効果を継続的に発揮することができる。
【0018】
また、第2のタイプとして、非変速動作時には、駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧の値に上記ライン圧を略一致させ、変速動作時には、駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧の値よりも上記ライン圧を一時的に高く設定するようにライン圧制御手段がライン圧を制御するものである。この場合、油圧切換手段が、上記非変速動作時には、駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧が作用する作動油圧室に対して上記ライン圧を減圧することなく直接作用させ、変速動作時には、駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧が作用する作動油圧室に対して上記一時的に高く設定されたライン圧を減圧して作用させるようにしている。
【0019】
この場合、ベルト式無段変速機の非変速動作時には、ライン圧として、必要最低限の油圧に維持され、ポンプロスの低減効果を奏することができる。一方、ベルト式無段変速機の変速動作時には、ライン圧が一時的に高く設定され、このライン圧を減圧して作動油圧室に作用させる油圧を上記目標油圧に合わせ込むことになる。このため、この目標油圧確保の信頼性を高めることができ、各プーリの動作の信頼性や変速動作の応答性を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、ベルト式無段変速機における駆動側プーリ及び従動側プーリを作動させるための油圧として、その目標油圧が高い側のプーリに対しては、このプーリに必要な油圧(目標油圧)と略一致する油圧となるようにライン圧を制御すると共に、このライン圧を減圧することなくこのプーリの作動油圧室に直接作用させるようにしている。これにより、ライン圧としては必要最低限の油圧が確保されておればよいことになり、オイルポンプの吐出圧力を低く設定することが可能になってポンプロスの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車用のベルト式無段変速機(所謂CVT:Continuously Variable Transmission)に本発明を適用した場合について説明する。また、以下の実施形態では、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両に搭載されたベルト式無段変速機について説明する。
【0022】
−第1実施形態−
(トランスアクスルの全体構成)
先ず、ベルト式無段変速機が搭載されたトランスアクスルの全体構成について説明する。
【0023】
図1は、ベルト式無段変速機をFF車両に適用した場合のトランスアクスルのスケルトン図である。図1において、1は車両の駆動力源としてのエンジンであり、その種類は特に限定されないが、以下の説明においては、エンジン1として便宜上、ガソリンエンジンを用いた場合について説明する。
【0024】
エンジン1の出力側には、トランスアクスル3が設けられ、このトランスアクスル3は、エンジン1の出力側(車両の側方側)に取り付けられたトランスアクスルハウジング4と、このトランスアクスルハウジング4におけるエンジン1とは反対側の開口端に取り付けられたトランスアクスルケース5と、このトランスアクスルケース5におけるトランスアクスルハウジング4とは反対側の開口端に取り付けられたトランスアクスルリヤカバー6とを順に有している。トランスアクスルハウジング4の内部には、トルクコンバータ(T/C)7が設けられており、トランスアクスルケース5及びトランスアクスルリヤカバー6の内部には、前後進切り換え機構8、ベルト式無段変速機(CVT)9、差動機構を有する最終減速機10等が設けられている。
【0025】
上記トランスアクスルハウジング4の内部には、クランクシャフト2と同一軸線上にインプットシャフト11が設けられており、このインプットシャフト11におけるエンジン1側の端部にはタービンランナ13が取り付けられている。一方、クランクシャフト2の端部にはドライブプレート14を介してフロントカバー15が連結されており、このフロントカバー15にはポンプインペラ16が連結されている。上記タービンランナ13とポンプインペラ16とは互いに対向して配置され、これらタービンランナ13及びポンプインペラ16の内側にはステータ17が設けられている。また、上記トルクコンバータ7と前後進切り換え機構8との間には、オイルポンプ20が設けられている。
【0026】
上記トルクコンバータ7の動作としては、エンジン1の駆動によるクランクシャフト2の回転に伴い、ドライブプレート14及びフロントカバー15を介してポンプインペラ16が回転し、オイルポンプ20から供給される作動液の流れによりタービンランナ13が引きずられるようにして回転し始める。ポンプインペラ16とタービンランナ13との回転速度差が大きい時に、ステータ17が作動液の流れをポンプインペラ16の回転を助ける方向に変換する。
【0027】
そして、車両の発進後、車速が所定速度に達すると、ロックアップクラッチ18が作動し、エンジン1からフロントカバー15に伝えられた動力がインプットシャフト11に機械的且つ直接的に伝達されるようになる。また、フロントカバー15からインプットシャフト11に伝達されるトルクの変動は、ダンパ機構19によって吸収される。
【0028】
上記前後進切り換え機構8は、インプットシャフト11とベルト式無段変速機9との間の動力伝達経路に設けられている。この前後進切り換え機構8はダブルピニオン形式の遊星歯車機構24を有している。この遊星歯車機構24は、インプットシャフト11に設けられたサンギヤ25と、このサンギヤ25の外周側に、サンギヤ25と同心状に配置されたリングギヤ26と、サンギヤ25に噛み合わされた内側のピニオンギヤ27と、この内側のピニオンギヤ27及びリングギヤ26に噛み合わされた外側のピニオンギヤ28と、これらピニオンギヤ27,28を自転可能に支持し、且つピニオンギヤ27,28を、サンギヤ25の周囲で一体的に公転可能な状態で保持したキャリヤ29とを有している。そして、このキャリヤ29と、ベルト式無段変速機9の後述するプライマリシャフト(変速機入力軸)30とが連結されている。また、キャリヤ29とインプットシャフト11との間の動力伝達経路を接続・遮断するフォワードクラッチCL及びリングギヤ26の回転・固定を制御するリバースブレーキBRがそれぞれ設けられている。これらフォワードクラッチCL及びリバースブレーキBRを制御することにより動力伝達経路を変更して前進回転動力(正回転方向)や後進回転動力(逆回転方向)に切り換え可能な構成となっている。
【0029】
上記ベルト式無段変速機9は、インプットシャフト11と同一軸線上に配置されたプライマリシャフト(駆動側シャフト)30と、このプライマリシャフト30に平行に配置されたセカンダリシャフト(従動側シャフト)31とを有している。プライマリシャフト30は、軸受32,33により、また、セカンダリシャフト31は軸受34,35により、それぞれ回転自在に支持されている。
【0030】
プライマリシャフト30側にはプライマリプーリ(駆動側プーリ)36が設けられており、セカンダリシャフト31側にはセカンダリプーリ(従動側プーリ)37が設けられている。
【0031】
プライマリプーリ36は、プライマリシャフト30に一体的に形成された固定シーブ38と、プライマリシャフト30の軸線方向に移動可能に構成された可動シーブ39とを有している。そして、固定シーブ38と可動シーブ39との対向面間にV字形状の溝40が形成されている。
【0032】
また、上記可動シーブ39をプライマリシャフト30の軸線方向に動作させることにより、可動シーブ39と固定シーブ38とを接近・離隔させる油圧アクチュエータ41が設けられている。つまり、この油圧アクチュエータ41内に形成された作動油圧室に所定油圧を作用させることで可動シーブ39を固定シーブ38に対して進退移動させる構成となっている。
【0033】
一方、セカンダリプーリ37も、同様に、セカンダリシャフト31に一体的に形成された固定シーブ42と、セカンダリシャフト31の軸線方向に移動可能に構成された可動シーブ43とを有し、固定シーブ42と可動シーブ43との対向面間にV字形状の溝44が形成されている。更に、上記可動シーブ43をセカンダリシャフト31の軸線方向に動作させることにより、可動シーブ43と固定シーブ42とを接近・離隔させる油圧アクチュエータ45が設けられている。つまり、この油圧アクチュエータ45内に形成された作動油圧室に所定油圧を作用させることで可動シーブ43を固定シーブ42に対して進退移動させる構成となっている。
【0034】
そして、プライマリプーリ36の溝40及びセカンダリプーリ37の溝44に対し、ベルト46が巻き掛けられている。このベルト46は、多数の金属製の駒(エレメントやブロックとも称されている)及び複数本のスチール製等のリング(フープやバンドとも称されている)を有する、いわゆる押し式金属ベルトとして構成されている(例えば、特開2000−220697号公報、特開2002−257200号公報等を参照)。
【0035】
そして、このベルト46が、可動シーブ39,43の進退移動に従ってプーリ36,37に対する巻き掛け位置が変更されて、所定の変速比を得ながら動力伝達(トルク伝達)が行われる構成となっている。
【0036】
上記セカンダリシャフト31には、カウンタドライブギヤ47が固定されており、軸受48,49により支持されている。更に、上記軸受35はトランスアクスルリヤカバー6側に設けられており、この軸受35とセカンダリプーリ37との間には、パーキングギヤPGが設けられている。
【0037】
更に、ベルト式無段変速機9のカウンタドライブギヤ47と最終減速機10との間の動力伝達経路には、上記セカンダリシャフト31に平行なインターミディエイトシャフト50が軸受51,52により支持された状態で配設されている。インターミディエイトシャフト50には、カウンタドライブギヤ47に噛み合うカウンタドリブンギヤ53と、ファイナルドライブギヤ54とが設けられている。
【0038】
一方、最終減速機10は、軸受56,57により回転自在に支持された中空のデフケース55を有し、このデフケース55の外周にはファイナルドライブギヤ54と噛み合うファイナルリングギヤ58が設けられている。そして、デフケース55の内部には2つのピニオンギヤ60,60が取り付けられたピニオンシャフト59が配置されている。このピニオンギヤ60には2つのサイドギヤ61,61が噛み合わされ、それぞれ、左右のドライブシャフト62,62を介して車輪63に連結されている。
【0039】
更に、符号71及び72はそれぞれプライマリプーリ36及びセカンダリプーリ37の回転数を検出するための回転数センサである。
【0040】
また、プライマリプーリ36の油圧アクチュエータ41及びセカンダリプーリ37の油圧アクチュエータ45には、油圧制御回路200を介して、上記オイルポンプ20で発生された油圧がそれぞれ制御されて供給される。ここで、符号73及び74はプライマリプーリ36の油圧アクチュエータ41及びセカンダリプーリ37の油圧アクチュエータ45にそれぞれ供給される制御油圧Ppri及びPsecを検出する油圧センサである。
【0041】
より詳しくは、オイルパンから吸引されオイルポンプ20から吐出された作動油は、デューティ制御される調圧バルブにより調圧され、ライン圧PLとして制御される。ライン圧PLを有する作動油は、デューティ制御されるプライマリ側減圧バルブにより上述の制御油圧Ppriとされ、プライマリ側の油圧アクチュエータ41に供給される。更に、ライン圧PLを有する作動油は、同じくデューティ制御され、セカンダリ側減圧バルブにより制御されて制御油圧Psecとされ、セカンダリ側の油圧アクチュエータ45に供給される。これら油圧調整のための回路構成については後述する。
【0042】
尚、符号300はトランスアクスル3を制御するCVT電子制御ユニット(以下、CVT・ECUと称す)、符号400はエンジン1を制御するエンジン電子制御ユニット(以下、E/G・ECUと称す)であり、それぞれ、演算処理装置(CPUまたはMPU)及び記憶装置(RAM及びROM)並びに入出力インターフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
【0043】
このCVT・ECU300に対しては、上記回転数センサ71,72及び油圧センサ73,74からの信号の他に、トランスアクスル3の状態を表す種々のパラメータ、例えば、トルクコンバータ7のトルク比や車速V等の情報が入力される。一方、E/G・ECU400には、エンジン1の運転状態を表す種々のパラメータ、例えば、エンジン回転速度、アクセル開度、スロットル開度センサの信号等が入力され、その演算結果の情報が必要に応じてCVT・ECU300に入力される。このようにして、CVT・ECU300には、上記回転数センサ71,72によるプライマリシャフト30の回転数Np及びセカンダリシャフト31の回転数Ns等、更には車速V等の情報が各種センサや演算結果の信号として入力され、予め実験等により求められているマップ等に基づいて、所要の変速比γ(=Np/Ns)やベルト挟圧力を得るべく、上述の制御油圧Ppri及び制御油圧Psecが形成される。
【0044】
(油圧制御回路200)
次に、上記油圧制御回路200について具体的に説明する。図2は、上記オイルポンプ20、油圧制御回路200、プライマリ側の油圧アクチュエータ41、セカンダリ側の油圧アクチュエータ45の接続状態の概略を示す油圧回路図である。
【0045】
この図2に示すように、油圧制御回路200は、オイルパン21から吸引されオイルポンプ20から吐出されたオイル(作動油)を、プライマリプーリ36の制御動作(可動シーブ39の進退移動動作)及びセカンダリプーリ37の制御動作(可動シーブ43の進退移動動作)に適した油圧とするべく上記プライマリ側の油圧アクチュエータ41への供給油圧及びセカンダリ側の油圧アクチュエータ45への供給油圧をそれぞれ独立して制御する構成となっている。
【0046】
具体的に、油圧制御回路200は、オイルポンプ20から吐出されるオイルが流れる吐出ラインL1を備えており、この吐出ラインL1に対して、ライン圧制御用回路L2、プライマリ側油圧制御用回路L3、セカンダリ側油圧制御用回路L4がそれぞれ接続された構成となっている。
【0047】
上記ライン圧制御用回路L2には、デューティソレノイドSOL1によりデューティ制御されるリリーフバルブで成る調圧バルブV1が設けられている。この調圧バルブV1による調圧動作により、上記吐出ラインL1の圧力であるライン圧PLが調整可能な構成となっている。
【0048】
上記プライマリ側油圧制御用回路L3には、上記吐出ラインL1の圧力であるライン圧PLを直接または減圧してプライマリ側の油圧アクチュエータ41に供給するプライマリ側減圧バルブV2が設けられている。このプライマリ側減圧バルブV2は、デューティソレノイドSOL2によりデューティ制御され、上記ライン圧PLをプライマリ側の油圧アクチュエータ41への必要油圧(変速比などに応じた目標油圧)に調整するようになっている。尚、このプライマリ側の油圧アクチュエータ41の油圧は、上記変速比を所望の値に設定するために調整されるものであり、これにより増速スピードや減速スピードが制御されることになる。
【0049】
同様に、上記セカンダリ側油圧制御用回路L4には、上記吐出ラインL1の圧力であるライン圧PLを直接または減圧してセカンダリ側の油圧アクチュエータ45に供給するセカンダリ側減圧バルブV3が設けられている。このセカンダリ側減圧バルブV3も、デューティソレノイドSOL3によりデューティ制御され、上記ライン圧PLをセカンダリ側の油圧アクチュエータ45への必要油圧(変速比などに応じた目標油圧)に調整するようになっている。尚、このセカンダリ側の油圧アクチュエータ45の油圧は、ベルト挟圧を調整するためのものであり、ベルト46やプーリ36,37に損傷を招くことなく且つベルト46の滑り(スリップ)が発生することのない圧力に制御される。
【0050】
そして、本実施形態では、上記プライマリ側の油圧センサ73は、上記プライマリ側油圧制御用回路L3におけるプライマリ側減圧バルブV2の下流側(プライマリ側の油圧アクチュエータ41側)に配設されており、上記セカンダリ側の油圧センサ74は、上記セカンダリ側油圧制御用回路L4におけるセカンダリ側減圧バルブV3の下流側(セカンダリ側の油圧アクチュエータ45側)に配設されている。つまり、プライマリ側油圧センサ73は、プライマリ側減圧バルブV2を経てプライマリ側の油圧アクチュエータ41に供給されるオイルの油圧を検知する一方、セカンダリ側油圧センサ74は、セカンダリ側減圧バルブV3を経てセカンダリ側の油圧アクチュエータ45に供給されるオイルの油圧を検知し、それぞれの油圧検知情報をCVT・ECU300に送信するようになっている。
【0051】
そして、本実施形態の特徴としては、ベルト式無段変速機9の作動状況に応じて、上記調圧バルブV1の調圧動作を制御(つまり、ライン圧PLを制御)すると共に、プライマリ側減圧バルブV2及びセカンダリ側減圧バルブV3の減圧動作を制御するようになっている点にある。以下、具体的に説明する。
【0052】
尚、以下の説明では、プライマリプーリ36のプーリ幅が小さく(ベルト46の巻き掛け半径が大きく)セカンダリプーリ37のプーリ幅が大きい(ベルト46の巻き掛け半径が小さい)状態であって、セカンダリプーリ37の回転数がプライマリプーリ36の回転数よりも高くなる場合を「増速」と呼ぶ。一方、プライマリプーリ36のプーリ幅が大きく(ベルト46の巻き掛け半径が小さく)セカンダリプーリ37のプーリ幅が小さい(ベルト46の巻き掛け半径が大きい)状態であって、セカンダリプーリ37の回転数がプライマリプーリ36の回転数よりも低くなる場合を「減速」と呼ぶこととする。
【0053】
図3(a)は、入力回転数及び入力トルクを一定とした条件下で、ベルト式無段変速機9の変速比に応じて必要とされるプライマリ側目標油圧及びセカンダリ側目標油圧の設定値の変化の一例を示している。図中の破線はプライマリ側目標油圧の変化を示し、一点鎖線はセカンダリ側目標油圧の変化を示している。
【0054】
この図3(a)からも判るように、変速比がγよりも低い増速側(図中左側)ではプライマリ側目標油圧がセカンダリ側目標油圧よりも高く設定され、その差は増速度が高くなるほど大きくなる。一方、変速比がγよりも高い減速側(図中右側)ではセカンダリ側目標油圧がプライマリ側目標油圧よりも高く設定され、その差は減速度が高くなるほど大きくなる。つまり、プライマリ側目標油圧及びセカンダリ側目標油圧の設定値は変速比の変化に伴って(上記変速比γを切り換え点として)逆転する。尚、この変速比γの具体的な値としては変速比「1」が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0055】
そして、上記変速比が増速側にあり、プライマリ側目標油圧がセカンダリ側目標油圧よりも高く設定される状況では、上記プライマリ側油圧制御用回路L3に備えられたプライマリ側減圧バルブV2を非減圧状態(全開状態)とすることでライン圧PLを減圧することなくプライマリ側の油圧アクチュエータ41に対して直接作用させる(油圧切換手段によるライン圧の直接作用動作)。そして、プライマリ側油圧センサ73によって油圧アクチュエータ41に作用する油圧を検知しておき、この油圧が上記プライマリ側目標油圧に略一致するように上記デューティソレノイドSOL1によるデューティ制御によって調圧バルブV1の調圧動作が行われて上記吐出ラインL1の圧力であるライン圧PLがフィードバック制御される(ライン圧制御手段によるライン圧の制御動作)。
【0056】
このようにして、ライン圧PLは、プライマリ側目標油圧に略一致し(PL=Ppri)、且つ減圧されることなしにプライマリ側の油圧アクチュエータ41に直接作用することになる。
【0057】
尚、セカンダリ側の油圧アクチュエータ45に対しては、上記セカンダリ側油圧制御用回路L4に備えられたセカンダリ側減圧バルブV3をデューティソレノイドSOL3によりデューティ制御することにより上記セカンダリ側目標油圧まで減圧された油圧が作用することになる。
【0058】
一方、上記変速比が減速側にあり、セカンダリ側目標油圧がプライマリ側目標油圧よりも高く設定される状況では、上記セカンダリ側油圧制御用回路L4に備えられたセカンダリ側減圧バルブV3を非減圧状態(全開状態)とすることでライン圧PLを減圧することなくセカンダリ側の油圧アクチュエータ45に対して直接作用させる(油圧切換手段によるライン圧の直接作用動作)。そして、セカンダリ側油圧センサ74によって油圧アクチュエータ45に作用する油圧を検知しておき、この油圧が上記セカンダリ側目標油圧に略一致するように上記デューティソレノイドSOL1によるデューティ制御によって調圧バルブV1の調圧動作が行われて上記吐出ラインL1の圧力であるライン圧PLがフィードバック制御される(ライン圧制御手段によるライン圧の制御動作)。
【0059】
このようにして、ライン圧PLは、セカンダリ側目標油圧に略一致し(PL=Psec)、且つ減圧されることなしにセカンダリ側の油圧アクチュエータ45に直接作用することになる。
【0060】
尚、プライマリ側の油圧アクチュエータ41に対しては、上記プライマリ側油圧制御用回路L3に備えられたプライマリ側減圧バルブV2をデューティソレノイドSOL2によりデューティ制御することにより上記プライマリ側目標油圧まで減圧された油圧が作用することになる。
【0061】
このように、本実施形態の動作によれば、ライン圧PLとしては、上記プライマリ側目標油圧及びセカンダリ側目標油圧のうち高く設定される側の油圧が確保されておればよいことになる。図3(b)では、各変速比において設定されるライン圧PLの変化を実線で示している。この実線で示すライン圧PLは、変速比が増速側にある状況ではプライマリ側目標油圧に略一致し、変速比が減速側にある状況ではセカンダリ側目標油圧に略一致することになる。また、この図3(b)の破線は変速比が減速側にある状況でのプライマリ側目標油圧の変化を示し、一点鎖線は変速比が増速側にある状況でのセカンダリ側目標油圧の変化を示している。
【0062】
以上のような油圧の制御により、本実施形態では、従来のように予めライン圧PLを必要以上に高めに設定しておくといった必要がなくなり、オイルポンプ20の吐出圧力を低く設定することが可能になってポンプロスの低減を図ることが可能になる。特に、本実施形態の如くエンジン1の駆動力(クランクシャフトの回転力)でオイルポンプ20を駆動させるものにあっては損失トルクの大幅な削減を図ることができる。
【0063】
−第2実施形態−
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、上記油圧制御回路200におけるプライマリ側油圧制御用回路L3の構成が上記第1実施形態のものと異なっており、その他の構成及び制御動作は第1実施形態と同様である。従って、ここではプライマリ側油圧制御用回路L3の構成についてのみ説明する。
【0064】
図4は、このプライマリ側油圧制御用回路L3を示す油圧回路図である。この図4に示すように、本実施形態では、プライマリ側油圧制御用回路L3に、上記プライマリ側減圧バルブV2に代えて流量制御バルブV4を備えさせている。この流量制御バルブV4は、ソレノイドSOL4により制御され、プライマリ側の油圧アクチュエータ41へのオイルの供給量を調整することで、プライマリプーリ36の制御動作(可動シーブ39の進退移動動作)を行うようになっている。
【0065】
この流量制御バルブV4の具体的な動作として、上記変速比が増速側にあり、プライマリ側目標油圧がセカンダリ側目標油圧よりも高く設定される状況では、図4に示す状態が維持されて非減圧状態(全開状態)となって、ライン圧PLをプライマリ側の油圧アクチュエータ41に対して直接作用させることになる。この場合にも、上記第1実施形態の場合と同様に、プライマリ側油圧センサ73によって油圧アクチュエータ41に作用する油圧を検知しておき、この油圧が上記プライマリ側目標油圧に略一致するように上記デューティソレノイドSOL1によるデューティ制御によって調圧バルブV1の調圧動作が行われて上記吐出ラインL1の圧力であるライン圧PLがフィードバック制御されることになる。このようにして、ライン圧PLはプライマリ側目標油圧に略一致し、且つ減圧されることなしにプライマリ側の油圧アクチュエータ41に直接作用することになる。
【0066】
一方、上記変速比が上記減速側にあり、セカンダリ側目標油圧がプライマリ側目標油圧よりも高く設定される状況では、流量制御バルブV4の切り換え動作が行われて、プライマリ側の油圧アクチュエータ41に対して、上記プライマリ側目標油圧まで減圧された油圧が作用することになる。この場合、上記セカンダリ側油圧制御用回路L4に備えられたセカンダリ側減圧バルブV3が非減圧状態(全開状態)となることでライン圧PLをセカンダリ側の油圧アクチュエータ45に対して直接作用させる。そして、セカンダリ側油圧センサ74によって油圧アクチュエータ45に作用する油圧を検知しておき、この油圧が上記セカンダリ側目標油圧に略一致するように上記デューティソレノイドSOL1によるデューティ制御によって調圧バルブV1の調圧動作が行われて上記吐出ラインL1の圧力であるライン圧PLがフィードバック制御される。このようにして、ライン圧PLはセカンダリ側目標油圧に略一致し、且つ減圧されることなしにセカンダリ側の油圧アクチュエータ45に直接作用することになる。
【0067】
本実施形態においても上述した第1実施形態の場合と同様に、ライン圧PLとしては、上記プライマリ側目標油圧及びセカンダリ側目標油圧のうち高く設定される側の油圧が確保されておればよいことになる。このため、従来のように予めライン圧PLを必要以上に高めに設定しておく必要がなくなり、オイルポンプ20の吐出圧力を低く設定することが可能になってポンプロスの低減を図ることが可能になる。
【0068】
−第3実施形態−
次に、本発明の第3実施形態について説明する。上述した各実施形態では、プライマリ側目標油圧及びセカンダリ側目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧の値に上記ライン圧PLを常時一致させるようにライン圧PLを制御するものであった。本実施形態は、これに変えて、変速機9の作動状況に応じ、プライマリ側目標油圧及びセカンダリ側目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧の値よりも上記ライン圧PLを一時的に高く設定するようにしたものである。その他の構成及び制御動作は上記各実施形態のものと同様であるので、ここではライン圧PLの制御動作について主に説明する。
【0069】
本実施形態では、上記ライン圧PLとして、ベルト式無段変速機9の非変速動作時(車両の定常走行時)には、プライマリ側目標油圧及びセカンダリ側目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧の値に上記ライン圧PLを略一致させ、このプライマリ側目標油圧及びセカンダリ側目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧が作用する油圧アクチュエータ41(45)に対して上記ライン圧PLを減圧することなく直接作用させる。
【0070】
例えば、上述した如く、上記変速比が増速側にあり、プライマリ側目標油圧がセカンダリ側目標油圧よりも高く設定される状況では、上記プライマリ側油圧制御用回路L3に備えられたプライマリ側減圧バルブV2を非減圧状態(全開状態)とすることでライン圧PLを減圧することなくプライマリ側の油圧アクチュエータ41に対して直接作用させる。そして、プライマリ側油圧センサ73によって油圧アクチュエータ41に作用する油圧を検知しておき、この油圧が上記プライマリ側目標油圧に略一致するように上記デューティソレノイドSOL1によるデューティ制御によって調圧バルブV1の調圧動作を行って上記吐出ラインL1の圧力であるライン圧PLをフィードバック制御する。
【0071】
一方、上記変速比が減速側にあり、セカンダリ側目標油圧がプライマリ側目標油圧よりも高く設定される状況では、上記セカンダリ側油圧制御用回路L4に備えられたセカンダリ側減圧バルブV3を非減圧状態(全開状態)とすることでライン圧PLを減圧することなくセカンダリ側の油圧アクチュエータ45に対して直接作用させる。そして、セカンダリ側油圧センサ74によって油圧アクチュエータ45に作用する油圧を検知しておき、この油圧が上記セカンダリ側目標油圧に略一致するように上記デューティソレノイドSOL1によるデューティ制御によって調圧バルブV1の調圧動作を行って上記吐出ラインL1の圧力であるライン圧PLをフィードバック制御する。この点では、上記各実施形態のものと同様である。
【0072】
そして、ベルト式無段変速機9の変速動作時または変速要求信号がCVT・ECU300に送信された場合には、プライマリ側目標油圧及びセカンダリ側目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧の値よりも上記ライン圧PLを一時的に高く設定するようにライン圧PLを変更する。
【0073】
例えば図5において、変速比が減速側にあり、この変速比が図中γ1からγ2に変更される際(変速比を低くする変速動作が行われる際)には、この変速比がγ1からγ2に変更される時間帯だけ所定量だけライン圧PLを高く(図中P1だけ高く:例えば10%程度高く)設定する。そして、この変速動作が終了すると、再び、ライン圧PLを元の値(プライマリ側目標油圧及びセカンダリ側目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧の値)に戻す。
【0074】
この場合、一時的に高く設定されたライン圧PLを減圧して各油圧アクチュエータ41,45に作用させることになる。図5に示した動作では、変速比が減速側にあるので、ライン圧PLはセカンダリ側目標油圧よりも僅かに高い値に設定され、セカンダリ側では、上記セカンダリ側油圧制御用回路L4に備えられたセカンダリ側減圧バルブV3に減圧動作を行わせることでセカンダリ側の油圧アクチュエータ45に作用させる油圧を上記セカンダリ側目標油圧に合わせ込むことになる。また、プライマリ側におけるプライマリ側減圧バルブV2の減圧量も上記ライン圧PLが高く設定された分だけ大きくされて、プライマリ側の油圧アクチュエータ41に作用させる油圧を上記プライマリ側目標油圧に合わせ込むことになる。
【0075】
尚、上記説明では、変速比が減速側にあってこの変速比を低くする変速動作が行われる場合を例に挙げて説明したが、変速比が減速側にあってこの変速比を高くする変速動作、変速比が増速側にあってこの変速比を低くする変速動作、変速比が増速側にあってこの変速比を高くする変速動作においても上記ライン圧PLを一時的に高く設定するようにしてもよい。また、変速比が減速側から増速側に移行する変速動作、変速比が増速側から減速側に移行する変速動作においても上記ライン圧PLを一時的に高く設定するようにしてもよい。
【0076】
本実施形態のようにライン圧PLの変更動作を行うようにした場合、ベルト式無段変速機9の非変速動作時には、上記各実施形態の場合と同様に、ライン圧PLとして、必要最低限の油圧に維持され、ポンプロスの低減効果を奏することができる。一方、ベルト式無段変速機9の変速動作時には、ライン圧PLが一時的に高く設定され、このライン圧PLを減圧して油圧アクチュエータに作用させる油圧を上記目標油圧に設定することになる。このため、この目標油圧をより確実に確保することができ、各プーリの動作の信頼性や変速動作の応答性を十分に確保することができる。
【0077】
尚、本実施形態では、ベルト式無段変速機9の変速動作時においてのみライン圧PLを一時的に高く設定するようにしたが、これに限らず、比較的短時間の間に変速動作が繰り返される状況(例えば車両の発進後の加速時)にあっては、車両が定常走行状態に達するまで継続的にライン圧PLを高く設定するようにしてもよい。これによれば、ライン圧PLが頻繁に変動するといった状況を回避することができる。
【0078】
−その他の実施形態−
以上説明した各実施形態は、自動車用のベルト式無段変速機9に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、自動車用以外の用途で使用されるベルト式無段変速機に対しても適用可能である。また、ガソリンエンジンを駆動源とする自動車に限らず、ディーゼルエンジンを駆動源とする自動車やハイブリッド自動車にも本発明は適用可能である。
【0079】
また、上記各実施形態では、ライン圧PLを調整する手段としてリリーフバルブで成る調圧バルブV1を備えた油圧制御回路200について説明したが、本発明はこれに限らず、リニアソレノイドバルブを備えたパイロットバルブ方式の油圧回路にも適用することが可能である。
【0080】
また、オイルポンプ20としては、エンジン1の駆動力(クランクシャフト2の回転力等)を受けて駆動するものには限定されず、電動モータにより駆動される電動ポンプを備えた油圧回路に対しても本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】ベルト式無段変速機を備えたトランスアクスルを示すスケルトン図である。
【図2】第1実施形態におけるオイルポンプ、油圧制御回路、プライマリ側の油圧アクチュエータ、セカンダリ側の油圧アクチュエータの接続状態の概略を示す油圧回路図である。
【図3】ベルト式無段変速機の変速比に応じたプライマリ側目標油圧及びセカンダリ側目標油圧の設定値の変化を示す図である。
【図4】第2実施形態におけるプライマリ側油圧制御用回路を示す図である。
【図5】第3実施形態における図3相当図である。
【符号の説明】
【0082】
9 ベルト式無段変速機
36 プライマリプーリ(駆動側プーリ)
37 セカンダリプーリ(従動側プーリ)
41 プライマリ側の油圧アクチュエータ
45 セカンダリ側の油圧アクチュエータ
46 ベルト
73 プライマリ側の油圧センサ(駆動側プーリ油圧検知手段)
74 セカンダリ側の油圧センサ(従動側プーリ油圧検知手段)
L3 プライマリ側油圧制御用回路(駆動側油圧ライン)
L4 セカンダリ側油圧制御用回路(従動側油圧ライン)
V2 プライマリ側減圧バルブ(駆動側減圧手段)
V3 セカンダリ側減圧バルブ(従動側減圧手段)
PL ライン圧
Ppri プライマリ側制御油圧(駆動側プーリ油圧)
Psec セカンダリ側制御油圧(従動側プーリ油圧)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動側プーリと従動側プーリとの間にベルトが動力伝達可能に掛け渡され、駆動側プーリのプーリ幅を変更するための駆動側プーリ油圧と従動側プーリのプーリ幅を変更するための従動側プーリ油圧とを、ライン圧を基圧としてそれぞれ独立して調整することで変速比を変更するベルト式無段変速機の油圧制御装置において、
上記変速比に応じてそれぞれ設定される駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧の値に略一致するようにライン圧を制御するライン圧制御手段と、
上記駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧が作用するプーリの作動油圧室に対して上記ライン圧を減圧することなく直接作用させる油圧切換手段とを備えていることを特徴とするベルト式無段変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
上記請求項1記載のベルト式無段変速機の油圧制御装置において、
駆動側プーリの作動油圧室に油圧を作用させるための駆動側油圧ライン及び従動側プーリの作動油圧室に油圧を作用させるための従動側油圧ラインには、導入されたライン圧の減圧が可能な減圧手段がそれぞれ備えられていると共に、
上記駆動側プーリ油圧を検知可能な駆動側プーリ油圧検知手段と、従動側プーリ油圧を検知可能な従動側プーリ油圧検知手段とが備えられ、
油圧切換手段は、上記駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧を作用させる作動油圧室に繋がる油圧ラインに備えられた減圧手段を非減圧状態とすることで、この作動油圧室に対してライン圧が直接作用されるようにする一方、
ライン圧制御手段は、上記駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側において上記プーリ油圧検知手段によって検知されたプーリ油圧の値が上記高く設定される側の目標油圧の値に略一致するようにライン圧をフィードバック制御する構成となっていることを特徴とするベルト式無段変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
上記請求項1または2記載のベルト式無段変速機の油圧制御装置において、
ライン圧制御手段は、駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧の値に常時一致するようライン圧を制御する構成とされていることを特徴とするベルト式無段変速機の油圧制御装置。
【請求項4】
上記請求項1または2記載のベルト式無段変速機の油圧制御装置において、
ライン圧制御手段は、非変速動作時には、駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧の値に上記ライン圧を略一致させ、変速動作時には、駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧の値よりも上記ライン圧を一時的に高く設定するようにライン圧を制御する構成とされている一方、
油圧切換手段は、上記非変速動作時には、駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧が作用する作動油圧室に対して上記ライン圧を減圧することなく直接作用させ、変速動作時には、駆動側プーリ目標油圧及び従動側プーリ目標油圧のうち高く設定される側の目標油圧が作用する作動油圧室に対して上記一時的に高く設定されたライン圧を減圧して作用させる構成とされていることを特徴とするベルト式無段変速機の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−138820(P2008−138820A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327790(P2006−327790)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】