説明

ベルト式無段変速機用のプーリ

【課題】リングの脱落を防止できる外径寸法を確保しつつプーリの製造コストを低減する。
【解決手段】固定回転体14aおよび可動回転体14bの外周部に、別体に製作された脱落防止部材50、60が圧入等により一体的に固定されており、その脱落防止部材50、60によってリング22が凹溝30から脱落することを防止する。このため、脱落防止部材50、60を除いた本体部分、すなわち固定回転体14aおよび可動回転体14bの外径寸法が小さくなり、製造コストが低減される。すなわち、高強度が得られる高価な材料の使用量が少なくなるとともに、鍛造加工時の荷重が低下したり浸炭のために一度に炉内に投入できる数が増加したり研磨時間が短くなったりするなどして、固定回転体14aおよび可動回転体14bの製造コストが低減される。脱落防止部材50、60については高強度が要求されないため、比較的安価な材料を用いて安価に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベルト式無段変速機に係り、特に、プーリの製造コストを低減する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外周側に向かって開口するV溝を形成する一対の固定回転体および可動回転体を有するプーリを備えており、伝動ベルトを介して動力伝達を行うベルト式無段変速機が知られている(特許文献1参照)。そして、このようなベルト式無段変速機に用いられる伝動ベルトとして、(a) 上記V溝の壁面に密着させられる一対の接触面が両側部に設けられた多数のエレメントが無端環状のリングによって支持されているとともに、(b) そのリングは、エレメントの両側部であって前記接触面よりも外周側部分に開口する一対の凹溝内に収容されてそのエレメントを支持するようになっているものがある。一方、前記プーリの固定回転体および可動回転体は、上記エレメントの接触面が密着させられる部分よりも外周側部分に、前記リングが前記凹溝から脱落することを防止する脱落防止部を備えているのが普通である。すなわち、エレメントの接触面が密着させられる部位は変速比に応じて変化するが、その最大径部分から更に所定寸法だけ外周側へ延び出すように、上記固定回転体および可動回転体の外径寸法が定められ、リングが凹溝から脱落することを防止しているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−35211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなベルト式無段変速機用のプーリの固定回転体および可動回転体は、V溝の壁面に伝動ベルト(具体的にはエレメントの接触面)が高い面圧で押圧されるとともにトルクを伝達する必要があることから、高強度が要求される。このため、例えば浸炭焼入れ焼戻し等の熱処理を施した上でV溝の壁面を研磨仕上げするなどしているが、径寸法が大きくなると製造コストが大幅にアップし、プーリ高価格化の要因となっている。具体的には、例えばJISに規定のSCM(クロムモリブデン鋼)やSCR(クロム鋼)等の浸炭性に優れた高価な材料を用いる必要があるだけでなく、鍛造加工により基礎形状に成形したり所定の炉内で浸炭処理を行ったり面倒な研磨仕上げを行ったりするため、固定回転体および可動回転体の径寸法が大きくなると、使用する材料の量が増えたり、鍛造加工時の荷重が大きくなったり浸炭のために一度に炉内に投入できる数が減ったり研磨時間が長くなったりして、製造コストが大幅に高くなるのである。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、リングの脱落を防止できる外径寸法を確保しつつプーリの製造コストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 外周側に向かって開口するV溝を形成する一対の固定回転体および可動回転体を有し、そのV溝の壁面に密着させられる一対の接触面が両側部に設けられた多数のエレメントが無端環状のリングによって支持されている伝動ベルトを介して動力伝達を行うとともに、(b) 前記リングは、前記エレメントの両側部であって前記接触面よりも外周側部分に開口する一対の凹溝内に収容されてそのエレメントを支持するもので、前記固定回転体および前記可動回転体は、そのエレメントのその接触面が密着させられる部分よりも外周側部分に、前記リングが前記凹溝から脱落することを防止する脱落防止部を備えているベルト式無段変速機用のプーリにおいて、(c) 前記固定回転体および前記可動回転体の少なくとも一方は、前記脱落防止部が、別体に製作されて一体的に固定された脱落防止部材によって構成されていることを特徴とする。
【0007】
第2発明は、第1発明のベルト式無段変速機用のプーリにおいて、前記脱落防止部材には、回転数センサによる回転数検出を可能にする多数の歯が一体に設けられていることを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第1発明または第2発明のベルト式無段変速機用のプーリにおいて、前記脱落防止部材は、前記可動回転体に一体的に固定されるもので、その可動回転体を軸方向へ移動させる油圧シリンダのシリンダボディに一体に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このようなベルト式無段変速機用のプーリにおいては、固定回転体および可動回転体の少なくとも一方の脱落防止部が、別体に製作されて一体的に固定された脱落防止部材によって構成されているため、その脱落防止部材を除いた本体部分の外径寸法が小さくなって製造コストが低減される。すなわち、高価な材料の使用量が少なくなるとともに、例えば鍛造加工時の荷重が低下したり浸炭のために一度に炉内に投入できる数が増加したり研磨時間が短くなったりするなどして、本体部分の製造コストが低減される。また、脱落防止部材については、単にエレメントの凹溝からリングが脱落することを防止できれば良いため、本体部分のような高強度は必要なく、例えばJISに規定のSPH(熱間プレス材)やSPC(冷間プレス材)等の比較的安価な材料を用いることが可能で、且つ浸炭等の熱処理や研磨等も必ずしも必要でないため、安価に製造できる。したがって、この脱落防止部材の製造コストを含めても、本体部分の製造コストが低減されることにより、プーリ全体の製造コストを低減することができるのである。
【0010】
第2発明では、回転数センサによる回転数検出を可能にする多数の歯が脱落防止部材に一体に設けられているため、その回転数検出用の歯を別個に設ける場合に比較して部品点数が少なくなり、安価に構成できる。回転数検出用の歯を固定回転体や可動回転体に切削加工等により直接設けることもできるが、脱落防止部材の場合は、例えばプレスによる打ち抜き加工によって設けることが可能で、簡単で且つ低コストである。
【0011】
第3発明は、脱落防止部材が可動回転体に一体的に固定される場合で、その可動回転体を軸方向へ移動させる油圧シリンダのシリンダボディに一体に設けられているため、シリンダボディと別個に設ける場合に比較して部品点数が少なくなり、安価に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明が好適に適用されるベルト式無段変速機の基本構成を説明する斜視図である。
【図2】図1の一方のプーリおよび伝動ベルトを説明する図で、(a) は図1におけるIIA 矢視部断面の拡大図、(b) は(a) におけるエレメントの右側面拡大図である。
【図3】本発明の他の実施例を説明する図で、図2の(a) に相当する断面図である。
【図4】本発明の更に別の実施例を説明する図で、(a) は図2の(a) に相当する断面図、(b) は一方の脱落防止部材に設けられた回転数検出用の多数の歯を示す図で、(a) における左方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、車両用のベルト式無段変速機に用いられるプーリに好適に適用されるが、車両用以外のベルト式無段変速機のプーリにも適用され得る。ベルト式無段変速機は一対のプーリを備えており、両方のプーリに適用することが望ましいが、何れか一方のプーリに適用するだけでも良い。
【0014】
プーリは、一対の固定回転体および可動回転体を有して構成され、何れの回転体も脱落防止部を備えており、その両方の回転体の脱落防止部を共に別体に製作された脱落防止部材によって構成することが望ましいが、何れか一方の回転体の脱落防止部のみが別体に製作された脱落防止部材によって構成されるだけでも良い。
【0015】
固定回転体および可動回転体は、例えば鍛造加工により基礎形状に成形した後に機械加工により目的形状とする一方、浸炭焼入れ焼戻し処理等の熱処理を施した上でV溝の壁面を研磨仕上げすることによって製造され、例えばJISに規定のSCM(クロムモリブデン鋼)やSCR(クロム鋼)等の浸炭性に優れた材料が好適に用いられる。脱落防止部材は、浸炭等の熱処理や研磨は必ずしも必要でなく、例えば押出成形等により円筒形状に加工して固定回転体や可動回転体の外周部に圧入等により一体的に固定すれば良く、JISに規定のSPH(熱間プレス材)やSPC(冷間プレス材)等の比較的安価な材料が好適に用いられる。鋼板を円筒状に巻いて溶接接合することにより、円筒形状の脱落防止部材を製作することもできる。
【0016】
回転数センサによる回転数検出を可能にする多数の歯は、内周側へ向かって突き出す内歯でも、外周側へ向かって突き出す外歯でも良く、例えばプレスによる打ち抜き加工によって簡単に設けられるが、圧印加工や転造加工等によって設けられる凹凸形状の歯でも良い。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が好適に適用される車両用ベルト式無段変速機8の基本構成を示す斜視図で、図2の(a) は図1におけるIIA 矢視部断面の拡大図、図2の(b) は(a) における一つのエレメント26の右側面拡大図である。ベルト式無段変速機8は、それぞれ外周側に向かって開口しているとともに溝幅が可変であるV溝12を有して互いに平行な軸心まわりに回転可能に設けられた一対のプーリ14、16を備えており、それ等のプーリ14、16に跨がって伝動ベルト10が巻き掛けられている。プーリ14、16は、それぞれ回転軸18、19に固定された固定回転体14a、16aと、回転軸18、19に対して軸方向に相対移動可能に設けられた可動回転体14b、16bとを備えている。これら固定回転体14aおよび可動回転体14bの相対向する面、および固定回転体16aおよび可動回転体16bの相対向する面には、径方向外側に向かうに従って軸方向の相対距離が大きくなる円錐状のシーブ面20がそれぞれ設けられている。上記V溝12は、これら一対の相対向するシーブ面20により形成されており、このシーブ面20はV溝12の壁面に相当する。
【0018】
上記可動回転体14bには、図2の(a) に示すように油圧シリンダ40のシリンダボディ42が一体的に取り付けられている。すなわち、有底円筒形状を成すシリンダボディ42の開口端部44が、可動回転体14bの外周部に嵌合されるとともに、かしめローラ等によるかしめ加工によって環状のかしめ用溝38内にかしめられることにより、その可動回転体14bに離脱不能に一体的に固定されている。そして、このシリンダボディ42の内部には、ピストン46が軸方向の移動不能に位置決めして配設されており、そのピストン46と可動回転体14bとの間に形成される油圧室48内の油圧が制御されることにより、可動回転体14bがシリンダボディ42と一体的に軸方向へ移動させられ、プーリ14のV溝12の溝幅が変更されるとともに伝動ベルト10の掛かり径が変化させられて、ベルト式無段変速機8の変速比が調整される。シリンダボディ42と可動回転体14bとの嵌合部分には、必要に応じてOリング等のシール部材が設けられる。他方のプーリ16側も図2の(a) に示すプーリ14と同様に構成されており、可動回転体16bには油圧シリンダが配設されて伝動ベルト10を挟圧するようになっている。
【0019】
伝動ベルト10は、可撓性を有する薄板帯状の金属製のリング22が複数重ね合わされた無端環状の一対のフープ24と、それら一対のフープ24によって支持されるとともにそれら一対のフープ24に沿って厚さ方向に環状に連ねられた板状の金属から成る多数のエレメント26とを備えている。リング22は、例えば厚さ0.2mm程度の高張力鋼板が輪状とされたもので、内から外へ例えば9層程度層状に重ねられている。エレメント26は、例えば厚さ1.8mm程度の鋼板が打ち抜かれて成形された厚肉板状片で、本実施例では例えば400個程度備えられている。エレメント26は、図2の(a) に示すように一対のシーブ面20にそれぞれ対向しつつ接触する一対の接触面28を両側部に備えているとともに、その接触面28よりも外周側にはそれぞれ側方に開口するように対称的に一対の凹溝30が設けられており、その凹溝30内にそれぞれ上記フープ24が収容されることにより、その一対のフープ24によって多数のエレメント26が環状に連ねられた状態で支持されている。
【0020】
そして、この伝動ベルト10が一対のプーリ14および16に巻き掛けられて周方向へ回転させられることにより、それ等のプーリ14と16との間で動力を伝達する。その場合に、それ等のプーリ14、16に巻き掛けられた部分では、エレメント26の接触面28がシーブ面20に押圧されるとともに、張力によってフープ24が凹溝30の内周側の壁面であるサドル面32に押圧される。このようにシーブ面20には伝動ベルト10(具体的にはエレメント26の接触面28)が高い面圧で押圧されるとともにトルクを伝達する必要があることから、固定回転体14a、16a、および可動回転体14b、16bには高強度が要求される。このため、本実施例では固定回転体14a、16a、および可動回転体14b、16bとして、例えばJISに規定のSCM(クロムモリブデン鋼)やSCR(クロム鋼)等の浸炭性に優れた材料が用いられ、鍛造加工により所定の基礎形状に成形した後に機械加工により目的形状とする一方、浸炭焼入れ焼戻し処理を施した上でV溝12の壁面であるシーブ面20を研磨仕上げしている。
【0021】
一方、上記固定回転体14a、16a、および可動回転体14b、16bの外周側、すなわちエレメント26の接触面28が密着させられる部位よりも外側には、リング22が凹溝30から側方へ抜け出して脱落することを防止する脱落防止部材50、60が設けられている。エレメント26の接触面28が密着させられる部位は、変速比すなわち伝動ベルト10の掛かり径に応じて変化するが、固定回転体14a、16a、および可動回転体14b、16bの外径寸法は、その密着部位の最大径よりも所定の余裕寸法だけ大きく、エレメント26の接触面28は確実にそれ等の固定回転体14a、16a、および可動回転体14b、16bのシーブ面20に接触させられるようになっており、円筒形状の脱落防止部材50、60はその外周側に圧入等により一体的に固定されている。図2の(a) は、伝動ベルト10の掛かり径が最大径とされた状態であり、脱落防止部材50、60にはそれぞれシーブ面20に滑らかに連続するように傾斜するテーパ形状の拘束面52、62が設けられており、その拘束面52、62によりリング22の移動範囲が規制されることによって凹溝30からの脱落が防止される。なお、拘束面52、62は必ずしもシーブ面20に滑らかに連続するテーパ形状である必要はなく、例えば軸心に対して略垂直な面などであっても良い。
【0022】
上記脱落防止部材50、60は、単にエレメント26の凹溝30からリング22が脱落することを防止できれば良いため、エレメント26の接触面28が押圧される固定回転体14a、16a、および可動回転体14b、16bのような高強度は必要ない。このため、例えばJISに規定のSPH(熱間プレス材)やSPC(冷間プレス材)等の比較的安価な材料を用いることが可能で、且つ浸炭等の熱処理や研磨も必ずしも必要でなく、例えば押出成形等により円筒形状に加工して所定寸法に切断するとともに、必要に応じて切削加工などで拘束面52、62を設けるだけで良い。なお、ベルト式無段変速機8の基本構成を示す図1では、上記脱落防止部材50、60や前記油圧シリンダ40などが省略されている。
【0023】
このように本実施例のプーリ14、16は、固定回転体14a、16a、および可動回転体14b、16bの外周部に、別体に製作された脱落防止部材50、60が圧入等により一体的に固定されており、その脱落防止部材50、60によってリング22が凹溝30から脱落することを防止するようになっている。このため、その脱落防止部材50、60を除いた本体部分、すなわち固定回転体14a、16a、および可動回転体14b、16bの外径寸法が、その脱落防止部材50、60の分だけ小さくて済み、製造コストが低減される。すなわち、高強度が得られる高価な材料の使用量が少なくなるとともに、鍛造加工時の荷重が低下したり浸炭のために一度に炉内に投入できる数が増加したり研磨時間が短くなったりするなどして、固定回転体14a、16a、および可動回転体14b、16bの製造コストが低減される。また、脱落防止部材50、60については、エレメント26の凹溝30からリング22が脱落することを防止できれば良く、高強度が要求されないため、JISに規定のSPH(熱間プレス材)やSPC(冷間プレス材)等の比較的安価な材料を用いることが可能で、且つ浸炭等の熱処理や研磨等も必ずしも必要でないため、安価に製造できる。したがって、この脱落防止部材50、60の製造コストを含めても、固定回転体14a、16a、および可動回転体14b、16bの製造コストが低減されることにより、プーリ14、16全体の製造コストを低減することができるのである。
【実施例2】
【0024】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0025】
図3は、前記図2の(a) に相当する断面図で、前記実施例に比較して油圧シリンダ40のシリンダボディ70が相違する。すなわち、本実施例のシリンダボディ70の開口端部72は可動回転体14bのシーブ面20と略面一になる位置に達しており、その開口端部72の近傍部分がかしめローラ等によるかしめ加工によって内周側へかしめられ、そのかしめ部76が前記かしめ用溝38内へ押し込まれることにより、シリンダボディ70が可動回転体14bに対して離脱不能に一体的に固定されている。開口端部72の先端には、シーブ面20に滑らかに連続するように傾斜するテーパ形状の拘束面74が設けられており、その拘束面74によりリング22の移動範囲が規制されることによって凹溝30からの脱落が防止される。本実施例では、シリンダボディ70の開口端部72が脱落防止部材として機能し、前記実施例1のように脱落防止部材60をシリンダボディ42と別個に設ける場合に比較して部品点数が少なくなり、一層安価に構成できる。
【実施例3】
【0026】
図4の(a) は、前記図2の(a) に相当する断面図で、前記実施例に比較して固定回転体14a側の脱落防止部材80が相違する。すなわち、この脱落防止部材80は円筒形状を成しており、前記実施例1の脱落防止部材50と同様に固定回転体14aの外周側に圧入等により一体的に固定されているとともに、V溝12側の一端部には、シーブ面20に滑らかに連続するように傾斜するテーパ形状の拘束面82が設けられており、その拘束面82によりリング22の移動範囲が規制されることによって凹溝30からの脱落が防止される。拘束面82と反対側の端部は、固定回転体14aよりも外側へ突き出しているとともに、(a) における左方向から見た(b) の側面図から明らかなように、内周側へ向かって突き出す多数の歯84が等角度間隔で全周に設けられており、回転数センサ86による回転数検出が可能とされている。
【0027】
本実施例では、回転数センサ86による回転数検出を可能にする多数の歯84が脱落防止部材80に一体に設けられているため、その回転数検出用の歯84を別個に設ける場合に比較して部品点数が少なくなり、安価に構成できる。回転数検出用の歯84を固定回転体14aや可動回転体14bに切削加工等により直接設けることもできるが、脱落防止部材80の場合は、例えばプレスによる打ち抜き加工によって設けることが可能で、簡単で且つ低コストである。
【0028】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0029】
8:車両用ベルト式無段変速機 10:伝動ベルト 12:V溝 14、16:プーリ 14a、16a:固定回転体 14b、16b:可動回転体 20:シーブ面(壁面) 22:リング 26:エレメント 28:接触面 30:凹溝 40:油圧シリンダ 50、60、80:脱落防止部材 70:シリンダボディ 72:開口端部(脱落防止部材) 84:歯 86:回転数センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側に向かって開口するV溝を形成する一対の固定回転体および可動回転体を有し、該V溝の壁面に密着させられる一対の接触面が両側部に設けられた多数のエレメントが無端環状のリングによって支持されている伝動ベルトを介して動力伝達を行うとともに、
前記リングは、前記エレメントの両側部であって前記接触面よりも外周側部分に開口する一対の凹溝内に収容されて該エレメントを支持するもので、前記固定回転体および前記可動回転体は、該エレメントの該接触面が密着させられる部分よりも外周側部分に、前記リングが前記凹溝から脱落することを防止する脱落防止部を備えているベルト式無段変速機用のプーリにおいて、
前記固定回転体および前記可動回転体の少なくとも一方は、前記脱落防止部が、別体に製作されて一体的に固定された脱落防止部材によって構成されている
ことを特徴とするベルト式無段変速機用のプーリ。
【請求項2】
前記脱落防止部材には、回転数センサによる回転数検出を可能にする多数の歯が一体に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機用のプーリ。
【請求項3】
前記脱落防止部材は、前記可動回転体に一体的に固定されるもので、該可動回転体を軸方向へ移動させる油圧シリンダのシリンダボディに一体に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のベルト式無段変速機用のプーリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−163511(P2011−163511A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29366(P2010−29366)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】