説明

ベンゾジフラン化合物及び有機半導体デバイス

【課題】ベンゾジフラン化合物及び有機半導体材料を提供すること。
【解決手段】式(1)


(式中、環構造A、Bは、同一又は相異なり、ベンゼン環、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環又はピリダジン環を表し、ここで、これらの環は、他の環が縮環していてもよい;R,R,R,R,R,及びRは、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数4〜30の置換されていてもよいアルキル基又は炭素数1〜30の置換されていてもよいアルキル基を有する置換基を表し、R,R,R,R,R,Rのうち少なくとも一つは炭素数4〜30の置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい炭素数4〜30のアルキル基を有する置換基を表す。)
で表されるベンゾジフラン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体等の電子材料への展開が可能なフラン環縮環化合物、その用途に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コスト、及びフレキシブルなどの有機分子ならではの特徴を生かして、電子ペーパーや大画面フラットパネルディスプレイなどの次世代の技術への応用可能な素子として期待されている。有機薄膜トランジスタは有機半導体活性層、基板、絶縁層、電極等数種類の部材から構成されるが、特にキャリア輸送を担う有機半導体活性層はデバイスの中で重要な役割を有している。トランジスタの特性は、この有機半導体活性層を構成する有機材料のキャリア輸送能に大きく依存する。
【0003】
有機トランジスタに用いられる有機半導体材料としては、種々の有機化合物が提案されている。例えば、銅フタロシアニン及びペンタセンなどの低分子系材料、チオフェン6量体などの芳香族5員環や6員環を連結したオリゴマー材料、及びポリアルキルチオフェンなどのようなポリマー材料が報告されている。
【0004】
有機薄膜のトランジスタ特性はアモルファスシリコン程度の特性を目指して研究が行われている。その他の要求特性としては、安定駆動性、高寿命、塗布性などが挙げられる。
しかし、これまでのところ、全ての条件を満たす有機材料の開発には至ってはおらず、新規有機半導体材料の開発が望まれている。
【0005】
例えば、ペンタセンはアモルファスシリコン並みの高いキャリア移動度を有し、優れた半導体デバイス特性を発現することが報告されている(非特許文献1参照)。しかし、ペンタセンは凝集性が強く、難溶解性であり、また安定駆動性や寿命にも問題を抱えている。
【0006】
ペンタセンのような多環縮環化合物が高特性デバイスを示す活性層材料に成り得る、という分子設計が知られているがさらに、ペンタセンが有する問題点(低溶解性・空気酸化性)を克服した多環縮環化合物は限られている。
【0007】
一方、多環縮環化合物のπ共役系骨格内にヘテロ元素を組み込むことは、有機半導体材料の構造的、電子的、光学的、及び物理的性質を制御するための手法の一つとなっている。例えば、π共役系骨格内にセレン原子を組み込んだジフェニルベンゾジセレノフェン(非特許文献4)及び硫黄原子を組み込んだジナフトチエノチオフェン(非特許文献5)は、高いキャリア移動度及び高安定性のトランジスタであることが報告されている。これらの例にみられるように、多環縮環化合物にヘテロ元素を組み込むことは、有機半導体材料の分子設計において有効な手段であるといえるが、酸素原子を組み込んだ多環縮環化合物を有機半導体材料に適用した例はほとんど報告されていない。
【非特許文献1】「ジャーナル オブ アプライドフィジックス」 、2002年、92巻、5259−5263頁
【非特許文献2】「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー」、2004年、126巻、13859−13874頁
【非特許文献3】「サイエンス」 、1998年、280巻、1741−1744頁
【非特許文献4】「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー」、2007年、129巻、2224−2225頁
【非特許文献5】「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー」、2005年、127巻、614−618頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は上記の従来技術が有する問題点に鑑み、ベンゾジフランを基本骨格とする有機半導体材料並びに有機薄膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討の結果、ベンゾジフラン誘導体、該ベンゾジフラン誘導体からなる有機半導体材料及びその薄膜を見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、式(1)

(式中、環構造A、Bは、同一又は相異なり、ベンゼン環、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環又はピリダジン環を表し、ここで、これらの環は、他の環が縮環していてもよい;R,R,R,R,R,及びRは、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数4〜30の置換されていてもよいアルキル基又は炭素数1〜30の置換されていてもよいアルキル基を有する置換基を表し、R,R,R,R,R,Rのうち少なくとも一つは炭素数4〜30の置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい炭素数4〜30のアルキル基を有する置換基を表す。)
で表されるベンゾジフラン化合物;有機半導体材料及び有機薄膜を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
新規なベンゾジフラン化合物及びその用途を提供することができる。また、本発明によれば有機溶媒に可溶で塗布により成膜することができ、新規な有機半導体材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の式(1)で表されるベンゾジフラン化合物について詳細に説明する。
【0012】
先ず、本発明の式(1)における置換基について、説明する。
〜Rにおけるハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
【0013】
〜Rにおける炭素数4〜30の置換されていてもよいアルキル基及び「炭素数1〜30の置換されていてもよいアルキル基を有する置換基」のアルキル基としては、直鎖、分枝鎖、環状のいずれでもよく、例えば、炭素数4〜30の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル又は環状のアルキルがあげられる。炭素原子数1〜30のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基、n−ペンタコシル基、n−ヘキサコシル基、n−ヘプタコシル基、n−オクタコシル基、n−ノナコシル基、及びn−トリアコンチル基が例示され、有機溶媒への可溶性を付与するという観点から炭素数6〜30のアルキル基が好ましく、また、ベンゾジフラン骨格の分子間パッキングを密にできるという観点から直鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基が挙げられ、より好ましくはn−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、及びn−ヘキサデシル基が挙げられる。
【0014】
〜Rにおける「炭素数4〜30の置換されていてもよいアルキル基を有する置換基」としては、例えばアルコキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基で置換されたアリール基、アルコキシ基で置換されたアリール基、アルキル基で置換されたヘテロアリール基などが挙げられ、好ましくはアルコキシ基、アルキル基で置換されたアリール基、アルコキシ基で置換されたアリール基、アルキル基で置換されたヘテロアリール基が挙げられる。
【0015】
上記アリールとしては、例えばフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナンスレニルなどが例示される。
【0016】
上記ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環基などがあげられる。ヘテロ原子以外の構成原子である炭素原子に着目すれば、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリール、好ましくは、炭素数2〜25のヘテロアリール、さらに好ましくは、炭素数2〜20のヘテロアリールがあげられる。例えば、フリル、チエニル、セレネニル、テルレニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ベンゾピロリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、チエノチエニルなどがあげられ、好ましくはフリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリルなどが好ましい。
【0017】
本発明のベンゾジフラン化合物は、式(1)で示される。具体的には、以下に例示する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。

【0018】

【0019】
式(1)で示されるベンゾジフラン化合物の製造法として、例えば、下記非引用文献6,7,8に記載の方法が挙げられ、1,4−ジヒドロキシ−2,5−ジエチニルアリールベンゼン或いは1,4−ジアルコキシ−2,5−ジエチニルアリールベンゼンをハロゲン或いは金属触媒存在下反応させることにより得られる。
[非特許文献6]:「シンレット」 、1999年、1432−1434頁
[非特許文献7]:「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー」、2005年、127巻、15022−15023頁
[非特許文献8]:「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー」、2007年、129巻、11902−11903頁
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0021】
[実施例1]<化合物1の合成>
2−[2,5−ジブロモ−4−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニロキシ)フェノキシ]テトラヒドロ−2H−ピラン(13.08g、30.0mmol)、4−エチニルオクチルベンゼン(12.86g、60.0mmol)、Pd(PPh(1.73g、1.5mmol)、及びCuI(0.57g,3.0mmol)のTHF(300mL)混合液にトリエチルアミン(41.8mL,300.0mmol)を加えた後、加熱還流下6時間反応させた。室温まで放冷した後、反応混合液を濃縮した。得られた混合物からクロロホルムを展開溶媒としてシリカゲルカラムにより触媒残渣を除去し、再結晶することにより2−{2,5−ビス[2−(4−オクチルフェニル)−1−エチニル]−4−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニロキシ)フェノキシ}テトラヒドロ−2H−ピランを淡黄色粉末として得た(11.12g,収率52.7%)。上記反応で得られた2−{2,5−ビス[2−(4−オクチルフェニル)−1−エチニル]−4−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニロキシ)フェノキシ}テトラヒドロ−2H−ピラン(10.55g,15mmol)をクロロホルム100mL及びメタノール100mLに溶解し、パラトルエンスルホン酸一水和物(0.29g,1.5mmol)を加え、室温にて4時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、アセトン/ヘキサン混合溶媒から再結晶することにより2,5−ビス[2−(4−オクチルフェニル)−1−エチニル]−1,4−ベンゼンジオールを白色板状結晶として得た(6.34g,収率79.0%)。上記反応で得られた2,5−ビス[2−(4−オクチルフェニル)−1−エチニル]−1,4−ベンゼンジオール(0.53g,1.0mmol)をTHF(2.0mL)に溶解し、0℃にてn−BuLiの1.60Mヘキサン溶液(1.25mL,2.0mmol)を滴下後、室温にて30分間攪拌した。減圧下溶媒を留去し、トルエン2.0mL及びZnClの1.0MTHF溶液(2.0mL)加えた。反応混合物を加熱還流下3時間攪拌した後、室温まで冷却、1N塩酸を加えた。有機層を抽出、硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮することにより固体を得た。THFから再結晶することにより白色固体として標題化合物1を得た(375mg,収率60.6%)
H−NMR(CDCl、δppm):7.79(d,J=8.1Hz,4H)、7.61(s,2H)、7.27(d,J=8.1Hz,4H)、7.05(s,2H)、2.65(t、J=7.3Hz,4H)、1.72−1.58(m,4H)、1.40−1.21(m,16H)、0.93−0.83(m,6H)
【0022】
[実施例2]<化合物21の製造>
2−[2,5−ジブロモ−4−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニロキシ)フェノキシ]テトラヒドロ−2H−ピラン(21.81g、50.0mmol)、4−エチニルヘキシルベンゼン(25.72g、120.0mmol)、Pd(PPh(1.16g、1.0mmol)、及びCuI(0.38g,2.0mmol)の混合物にトリエチルアミン(250.0mL)及びピペリジン(87.5mL)を加えた後、80℃にて6時間反応させた。室温まで放冷した後、反応混合液を濃縮した。得られた混合物にクロロホルム150mL、メタノール150mL及びパラトルエンスルホン酸一水和物(0.29g,1.5mmol)を加え、室温にて4時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、アセトン/ヘキサン混合溶媒から再結晶することにより2,5−ビス[2−(4−ヘキシルフェニル)−1−エチニル]−1,4−ベンゼンジオールを白色板状結晶として得た(19.11g,収率79.8%)。上記反応で得られた2,5−ビス[2−(4−ヘキシルフェニル)−1−エチニル]−1,4−ベンゼンジオール(2.39g,5.0mmol)にアセトニリル(50.0mL)及び炭酸水素ナトリウム(2.10g,25.0mmol)を加えた。混合物を攪拌しながら室温にてヨウ素(6.35g,25.0mmol)を加え、2時間攪拌した。反応混合物にチオ硫酸ナトリウム水溶液及び酢酸エチルを加え、有機相を飽和食塩水にて洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。トルエンから再結晶することにより標題化合物21を淡黄色結晶として得た(3.05g,83.6%)。
H−NMR(CDCl、δppm):8.13(d,J=8.4Hz,4H)、7.51(s,2H)、7.32(d,J=8.4Hz,4H)、2.68(t、J=7.8Hz,4H)、1.73−1.60(m,4H)、1.43−1.25(m,12H)、0.93−0.85(m,6H)
MS−FD 730(M+),365(M−I2)
【0023】
[実施例3]<化合物25の製造>
2,5−ジブロモヒドロキノン(5.36g,20.0mmol)のトルエン(25.0mL)溶液にトリエチルアミン(11.2mL,80.0mmol)及びジメチルアミノピリジン0.05g,0.4mmol)を加え、続いて室温にて2−(トリメチルシリル)エトキシメチル クロライド(10.6mL,60mmol)を滴下した。エーテルを加え可溶分をろ別、濃縮することにより白色固体を得た。得られた固体にPd(PPh)4(0.24g,0.21mmol)、PPh(0.11g,0.42mmol)、CuI(0.08g,0.42mmol)を加え、つづいてトリエチルアミン(52.5mL)、ピペリジン(18.3mL)及び4−エチニルヘキシルベンゼン(5.40g,25.2mmol)を加え80℃にて6時間攪拌した。反応物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトにて精製することにより無色結晶として1,4−ビス(2−トリメチルシリルエトキシメトキシ)−2,5−ビス(4−ヘキシルフェニルエチニル)ベンゼンを得た(4.65g,収率60.0%)。1,4−ビス(2−トリメチルシリルエトキシメトキシ)−2,5−ビス(4−ヘキシルフェニルエチニル)ベンゼン(3.92g,5.3mmol)、PtCl(0.14g,0.53mmol)、シクロオクタジエン(0.26mL,2.1mmol)、トルエン(53.0mL)の混合物を30℃にて2日間攪拌した。混合物をセライトろ過後、濃縮、トルエンから再結晶することにより淡黄色針状結晶として標題化合物25を得た(1.22g,収率31.1%)。
H−NMR(CDCl、δppm):7.80(d,J=8.4Hz,4H)、7.72(s、2H)、7.32(d,J=8.4Hz,4H)、4.80(s,4H)、3.74−3.67(m,4H)、2.68(t,J=7.3Hz,4H)、1.73−1.55(m、4H)、1.40−1.20(m、12H)、1.09−1.03(m,4H)、0.91−0.86(m,6H)、0.20(s、18H)
【0024】
[実施例4]
[化合物1からなる有機半導体層を有する有機トランジスタの製造]
ヘキサメチルジシラザン処理を行ったSiO熱酸化膜付きnドープシリコンウエハー上に合成した化合物1の0.5mg/mLオルトジクロロベンゼン溶液を100℃に保温し、スピンコート法により化合物1からなる有機半導体層を形成した。
【0025】
さらに金属マスクを用いてC60続いて金の層を真空蒸着法で上記有機半導体層上に成膜して、ソース電極及びドレイン電極を形成した。ここで、ソース電極及びドレイン電極を形成することによって得られた有機T F T のチャネル幅及びチャネル長は、それぞれ、2mm及び20μmであった。
【0026】
このようにして、図1に示すような化合物1からなる有機半導体層を有する有機TFTを製造することができた。
【0027】
[実施例5]
化合物1からなる有機半導体層を有する有機トランジスタに関する測定
【0028】
実施例4で製造した有機TFTの電気特性を測定した。その結果、あるゲート電圧(Vg)において、ドレイン電圧(Vd)に対するドレイン電流(Id)の変化曲線は、良好であり、低いドレイン電圧における線形領域(電圧比例領域)及び高いドレイン電圧における飽和領域を有していた。また、ゲート電極に印加する負のゲート電圧を増加させると、負のドレイン電流も増加することから、製造した化合物1からなる有機半導体層を有する有機トランジスタは、p 型の有機TFTであることを確認することができた。さらに、有機トランジスタのキャリアの電界効果移動度μ は、有機トランジスタの電気的特性の飽和領域におけるドレイン電流I d を表す式
I d = ( W / 2 L ) μ C i ( V g − V t ) ・・・(a)
を用いて算出することができる。ここで、L 及びW は、それぞれ、有機トランジスタのゲート長及びゲート幅であり、C i は、ゲート絶縁膜の単位面積当たりの容量であり、V g は、ゲ
ート電圧であり、V t は、ゲート電圧のしきい値電圧である。式(a)を用いて、製造した化合物1からなる有機半導体層を有する有機トランジスタのキャリアの電界効果移動度μ を計算した結果、キャリアの電界効果移動度及びオン/オフ比は、0.0145cm/Vs及び10であった。
【0029】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を具体的に説明してきたが、本発明は、これらの実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、これら本発明の実施の形態及び実施例を、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、変更又は変形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、より高いキャリア移動度を有する有機薄膜トランジスタ、該有機薄膜トランジスタの製造方法、及び該有機薄膜トランジスタを含む有機薄膜デバイスに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明における有機薄膜トランジスタの一つの態様を説明する断面図である。
【図2】実施例4における化合物1からなる有機半導体層を有する有機トランジスタの電気特性を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
11 基板
12 ゲート電極
13 ゲート絶縁膜
14 ソース電極
15 ドレイン電極
16 有機半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、環構造A、Bは、同一又は相異なり、ベンゼン環、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環又はピリダジン環を表し、ここで、これらの環は、他の環が縮環していてもよい;R,R,R,R,R,及びRは、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数4〜30の置換されていてもよいアルキル基又は炭素数1〜30の置換されていてもよいアルキル基を有する置換基を表し、R,R,R,R,R,Rのうち少なくとも一つは炭素数4〜30の置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい炭素数4〜30のアルキル基を有する置換基を表す。)
で表されるベンゾジフラン化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の式(1)における、環構造A、Bが同一又は相異なり、ベンゼン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、チアゾール環又はオキサゾール環を表す(ここで、これらの環は、他の環が縮環していてもよい)請求項1に記載のベンゾジフラン化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の式(1)におけるR,R,R,R,R,Rが置換されていてもよい炭素数4〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜30のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数4〜30のアルキル基が置換したアリール基、置換されていてもよい炭素数4〜30のアルコキシ基が置換したアリール基、置換されていてもよい炭素数4〜30のアルキル基が置換したヘテロアリール基である請求項1又は2に記載のベンゾジフラン化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の式(1)におけるR,R,R,R,R,Rが炭素数4〜30の直鎖状アルキル基又は炭素数1〜30の直鎖状アルキル基を有する基である請求項1又は2に記載のベンゾジフラン化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の式(1)におけるR及びRが水素原子である請求項1〜3のいずれかに記載のベンゾジフラン化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の式(1)におけるR及びRが水素原子である請求項1〜4のいずれかに記載のベンゾジフラン化合物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物を用いることを特徴とする有機半導体デバイス。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物を含有する有機半導体薄膜。
【請求項9】
キャリア移動度が10−2cm/Vs以上であることを特徴とする請求項7記載の有機半導体薄膜。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の有機半導体薄膜を有することを特徴とする有機トランジスタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−18529(P2010−18529A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178834(P2008−178834)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】