説明

ベンゾ[4,5]チエノ[3,2b]ピラン−2−オンを含む芳香剤組成物

芳香化学物質として使用されるベンゾ[4,5]チエノ[3,2b]ピラン−2−オンの組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、香味剤及び芳香剤の分野に関連する。より具体的には、本発明は、天然化合物の安定性の限界及び/又はアレルギーの性質を克服する芳香化学物質に基づいた香料及び他の芳香性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの芳香化学物質が、香味剤及び芳香剤産業で使用されている。例えば、シトラールは、レモンの香りを有しているので、多くの製造品において香味及び/又は芳香剤として使用される。しかしながら、多くの芳香化学物質は、イソプレン単位及び/又はベンゼン環を含み、これらは潜在的に反応の影響を受けやすく、有用な寿命が限られかねない。さらに、多くのエッセンシャルオイル芳香剤は、近年アレルギー反応を引き起こすことが明らかとなっており、かかる化合物を市場に出すことはますます困難になっている。
【0003】
様々な芳香剤の形成の基盤となる多くの芳香化学物質は、アレルゲンリストに載せられており、多くの商業領域で禁止又は制限されている。禁止又は制限は、主として香料メーカーのパレットの減少が、ある特定のノート(note)の創出を実質的に不可能とするため、間違いなく様々な芳香剤の品質に対してかなりの影響を及ぼす。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,571,519号
【特許文献2】米国特許第5,892,092号
【特許文献3】国際公開第92/06154号
【特許文献4】米国特許第3,664,961号
【特許文献5】米国特許第3,308,067号
【特許文献6】米国特許第4,144,226号
【特許文献7】米国特許第4,246,495号
【特許文献8】米国特許第4,968,451号
【特許文献9】米国特許第4,711,730号
【特許文献10】米国特許第4,721,580号
【特許文献11】米国特許第4,702,857号
【特許文献12】米国特許第4,877,896号
【特許文献13】米国特許第5,415,807号
【特許文献14】米国特許第5,084,440号
【特許文献15】米国特許第5,332,725号
【特許文献16】米国特許第5,264,615号
【特許文献17】米国特許第4,055,634号
【特許文献18】米国特許第3,947,574号
【特許文献19】米国特許第3,779,932号
【特許文献20】米国特許第4,587,129号
【非特許文献1】S.Arctander, Perfume and Flabor chemicals,1969,Montclair,N.J.,USA
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
同じようにアレルギー反応をもたらさず、及び/又は向上した有用な寿命若しくは他の有益な特性を有する、ベンゼン環及び/又はイソプレン単位を含む芳香化学物質の誘導体を開発することが求められている。このようなさらに有益な特性としては、改良された香り強度及び安定性が挙げられる。本発明は、このような芳香剤及び香味剤を提供する。
【0006】
由来する親化合物に対して改良された物理的及び/又は化学的特性を有する、改良された芳香剤及び香味剤を開示する。特に、任意にアレルギー特性を低減しながら、芳香化学物質の芳香剤の特徴を維持又は強化し、また、由来する親化合物と比較して、より長い貯蔵寿命又は他の有益な特性(例えば、改良された香り強度)を任意に保有することができる芳香化学物質の誘導体を開示する。同様に、誘導体、及び誘導体を含む製造品を製造する方法も開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
親化合物は、1つ又は複数のイソプレン単位及び/又はベンゼン環を含み、誘導体は、少なくとも1つのイソプレン単位及び/又はベンゼン環の代わりにベンゾチオフェン環を含む。ベンゾチオフェン環の相対配向性は多様であり得る。ベンゾチオフェン部分は、非置換であってもよく、あるいは1つ又は2つの低級アルキル、好ましくはメチル基で置換されてもよい。アルキル基及びベンゾチオフェン環は、例えば電子供与基、電子求引基、親水性又は疎水性を増大する基等で任意に置換することができる。ベンゾチオフェンが1つ又は複数のC1〜5アルキル基を含む場合、これらの基が好ましくは、2位及び/又は3位に位置される。
【0008】
これらの親化合物がさらに1つ又は複数のアルデヒド基を含む場合、親分子中の少なくとも1つのアルデヒド基がニトリル、メチルエーテル又はアセタール基で置換られた誘導体を調製することができる。アセタールが徐々に加水分解して、親アルデヒド化合物を提供する場合に、アセタール基は、より長い持続性の香味又は芳香を化合物に提供することができる。幾つかの実施形態では、適切な分子は、イソプレン単位及び/又はベンゼン環のほかに、1つ又は複数のアルデヒド基を含む。これらの実施形態では、アルデヒド基はまた、本明細書中に記載するように誘導体化することができる。
【0009】
適切な製造品の例としては、ろうそく、室内用消臭剤、香水、消毒薬組成物、次亜塩素酸塩(漂白)組成物、飲料(例えば、ビール及びソーダ水)、例えば特許文献1(この内容は、その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されるような義歯クレンザー錠剤、及び香味付き経口で供給される製品(例えば、飴、キャンディ等)が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
由来する親化合物と比較して、改良された物理的及び/又は化学的特性を示す、改良された芳香剤及び香味剤を開示する。本発明は、改良された化合物が、文字通り親化合物の化学的改質により親化合物「に由来する」かどうかにかかわらず、任意の方法により作製される、改良された芳香剤及び香味剤を包含する。改良は、例えば香り特性の変化なしで、より大きな強度及び/又はより高い化学的安定性の形態であり得る。より大きな強度が望ましい場合、香り特性を著しく変化することなく、例えば亜鉛結合能力を増大させることにより、香りの強度を増大するように着臭剤の構造を改質する。より高い安定性が望ましい場合、香り特性を著しく変化することなく、化学的不安定性を招く1つ又は複数の構造的特質を、本明細書中に記載するように変更させることができる。
【0011】
I.等香性(isodonic)分子
本明細書中に記載する誘導体は、誘導体が由来し得る化合物と等香性である。等香性とは、「本質的に同じ香りの特徴を有する」ことを意味する。しかしながら、化合物は、本質的に同じ香りの特徴を有してもよい一方で、改良された安定性、香り強度及び/又は他の改良された物理的及び/又は化学的特性を有する。
【0012】
誘導体が由来し得る化合物は、芳香化学物質、例えばエッセンシャルオイル中に存在する特定の着臭剤化合物である。誘導体は、芳香化学物質又は個々の化合物から調製することができるが、そうである必要はない。すなわち、化合物は、最終的な化合物が本明細書中に記載するようなオイル又は特定の着臭剤化合物の誘導体である限り、芳香化学物質の使用を包含しない合成方法から誘導され得る。必要とされるのは、化合物が「親」化合物と等香性であることだけである。
【0013】
本明細書中で定義するような等香性置換は、イソプレン部分又はベンゼン環(フェニル基)のベンゾチオフェン環による置換を包含する。ベンゾチオフェンは、a)その構成原子上のいずれか1つの遊離位置を経て分子の残部に連結させることにより、イソプレン又はベンゼン環を置換することができる(頂点)か、又はb)親化合物中のベンゼン環が別の環と融合する場合、ベンゾチオフェンは、その利用可能な結合の1つと融合することによりベンゼン環を置換することができる(側面)。
【0014】
幾つかの実施形態では、親化合物は、イソプレン又はフェニル基のほかに、アルデヒド基、ニトリル基、メチルエーテル基及び/又はエステル基を含む。これらの実施形態では、上述の置換のほかに、以下のさらなる置換をさらに行うことができる:アルデヒド−ニトリル置換、アルデヒド−メチルエーテル置換、アルデヒド−アセタール置換、アルデヒド−エステル置換、及びこれらの置換の逆(すなわち、メチルエーテル−アルデヒド等)。
【0015】
芳香化学物質の着臭剤強度及び/又は安定性は、実質的に手がつけられていない基本構造、したがって香り自体を残しながら、一般的な化学的特質を、化学的性質を変更するように設計された別の化学的特質で置換することにより改良することができる。置換することができる適切な化学的特質の例を以下により詳細に記載する。
【0016】
イソプレン単位/ベンゾチオフェン置換及び香りに対するそれらの影響
多くの芳香化学物質は、1つ又は複数のイソプレン単位を含む。これらの単位のベンゾチオフェンによる置換は、香り特性を顕著に変化させ〜かしながら、ベンゾチオフェン環中の硫黄上の電子の孤立電子対が、Znに容易に結合すると考えられ、それが香りタイプを著しく変更させることなく、香り強度を増大すると考えられる。着臭剤強度を測定する方法の1つは、亜鉛結合親和性によるものである。
【0017】
イソプレン単位(又は以下でさらに論述するように、ベンゼン環)をベンゾチオフェン環で置換する別の利点は、これがより大きな分子量を有する分子をもたらすことである。より大きな分子量は、分子の揮発性を低減することができ、それによりトップノート(top note)からミドルノート(middle note)へ、あるいはミドルノートからよりドライダウンノート(drydown note)へ潜在的に変化させる。
【0018】
着臭剤の性能を改良するための本明細書中に記載する手順は、例えばシトラールを用いて説明することができる。シトラールは、同じ構造特性、すなわちイソプレン単位を保有する任意の他の着臭剤に速やかに適用可能である。シトラールは、イソプレン単位をベンゾチオフェン環で置換することにより誘導体化することができる。ベンゾチオフェン環は、ハロ、アルキル(好ましくは、メチル)、ヒドロキシ、チオール、チオエーテル、アミン、カルボン酸、エステル、ニトロ、シアノ、スルホン酸、尿素及びチオ尿素から成る群から選択される1つ又は2つの官能基で置換することができる。
【0019】
これらの単純な手順により、芳香化学物質又は個々の「親」化合物自体に近い香りの特徴を有する誘導体が得られる。さらに、イソプレン単位を置換することにより、不安定な特質、すなわち二重結合が除去されるため、誘導体は、より大きな効力並びにはるかに大きな酸及び漂白安定性を有する場合が多い。ベンゼン環をベンゾチオフェン部分で置換することにより、効力は増大される場合が多い。
【0020】
本明細書中に記載する化学的作用は、シトラール単独から多数の考え得る分子を生成し、すべて当業界で既知のプロセスにより容易に得ることができる。シトラールの誘導体の例を以下に示す:
【0021】
【化1】

【0022】
この方法は、それらの効力を増大させるために、幾つか他の種類の着臭剤に速やかに適用可能である。それぞれの場合において、イソプレン単位をベンゾチオフェンで置換して、同様の香りの特徴を有する、より強力な着臭剤を得ることができる。ローズオキシドはフローラルであり、イオノンは紫壇であり、ダマシンはフルーティローズであり、サンダノールは白壇であり、リモネンはウッディシトラスであり、ベルビオンはジャコウであり、リナロールはフローラルウッディであり、エチルシトロネリルオキサレートはジャコウである。
【0023】
ベンゼン/ベンゾチオフェン置換
さらなる香向性(odotopic)置換は、ベンゾチオフェン環によるベンゼン環の置換である。例えば、リリアール、シクラメンアルデヒド及びボージュナール中のフェニル環がベンゾチオフェン環で置換されると、振動スペクトルが重複し、新規誘導体が同じ香り特性を有するだけでなく、親化合物と比較して、香りの強度もまた向上する。これらの化合物はそれぞれ、ニトリル、メチルエーテル又はアセタール官能価でさらに置換することができるアルデヒド基をさらに含む。分子中のフェニル環をベンゾチオフェン分子で置換する合成方法は、当業者に既知である。
【0024】
本明細書中に記載する方法を用いて、シンナムアルデヒド、シクラメンアルデヒド、リリアール及びクマリンのような化合物は、以下に示すように改質することができる:
【0025】
【化2】

【0026】
【化3】

【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
上述に示す置換のほかに、ベンゾチオフェン環はそれぞれ、例えば様々な位置でアルキル基により、本明細書中に記載するように誘導体化することができる。さらに、以下に示すように、アルデヒド基はまた、香向性置換に付することもできる。
【0030】
ニトリル、メチルエステル又はアセタール基によるアルデヒド置換
また、多くの芳香化学物質はアルデヒド基を含む。これらの芳香化学物質の香向性(odotope)は、アルデヒド基をニトリル、メチルエステル又はアセタール基で置換することにより調製することができる。アルデヒド基のニトリル基への変換は、当業界で既知であり、例えば特許文献2に記載されている。特許文献2は、アルデヒドからニトリルを形成する方法を教示している。アセタール形成は当業者に既知であり、一般的に酸触媒下でアルデヒドをアルコールとともに反応させることを包含する。アセタールは、水を失いながら形成される。使用時、アセタールが水性環境中に存在する場合、アセタールはアルデヒドへと戻ることができ、それにより着臭剤の徐放形態を提供する。1つ又は複数のイソプレン単位又はベンゼン環のほかにアルデヒドを含む芳香化学物質中のアルデヒド基は、アルデヒドを第一級アルコールに還元すること、及び適切な塩基の存在下で第一級アルコールをメチル化剤(例えば、臭化メチル又はヨウ化メチル)と反応させることにより、メチルエーテルに変換することができる。
【0031】
II.本明細書中に記載の化学的性質を使用して改質され得る芳香化学物質
本明細書に記載されている技術は、芳香化学物質、特にライラール、及びシトラール、ゲラニオール及びネロール等に関連するアルデヒド及びアルコールを含む芳香化学物質に対して特別に適用される。本明細書中に記載の化学的性質を使用して改質され得る芳香化学物質を以下に挙げる。
アミルシンナマル(2−ベンジリジンヘプタナール及びα−アミルシンナミックアルデヒドとしても知られている)
アミルシンナミルアルコール(2−ペンチル−3−フェニルプロパ−2−エン−1−オール及びα−アミルシンナミックアルコールとしても知られている)
シンナミルアルコール(シンナミックアルコールとしても知られている)
シンナマル(3−フェニル−2−プロペナール及びシンナミックアルデヒドとしても知られている)
シトラール(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−アール、シス及びトランスアイソマーの混合物としても知られている)
クマリン(1−ベンゾピラン−2−オン又はシス−0−クマリン酸ラクトンとしても知られている)
オイゲノール
ゲラニオール
ライラール(ヒドロキシメチル−ペンチルシクロ−ヘキセンカルボキサルデヒド及び4,(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)シクロへキサ−3−エンカルバルデヒド
イソオイゲノール
ケイ皮酸ベンゾイル(INCI)、(ベンジル−3−フェニル−2−プロペノエート又はシナメインとしても知られている)
シトロネロール(3,7−ジメチル−6−オクテノールとしても知られている)
ファルネソール(3,7,11−トリメチルドデカ−2,6,10−トリエノールとしても知られている)
ヘキシルシンナムアルデヒド(α−ヘキシルシンナムアルデヒドとしても知られている)
リリアール(リレストラール、2−(4−t−ブチルベンジル)プロプリオナルデヒド、4−(1,1−ジメチルエチル)−α−メチルベンゼンプロパナール及びp−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナムアルデヒドとしても知られている)
d−リモネン((R)−p−メンタ−1,8−ジエンとしても知られている)
リナロール、
ダマスコン、及び
γ−メチルイオノン((3−メチル−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オンとしても知られている)
【0032】
さらに、化合物は、アネトール、アニス油、キャラウェイ油、カルダモン油、カルボン、コリアンダー油、エリオディクティオン、エチルバニリン、フェンネル油、グリチリザ、ラベンダー油、レモン油、メントール、ナツメグ油、オレンジフラワー油、ペパーミント油、ローズマリー油、ローズ油、スペアミント油、タイム油、トルーバルサム及びバニリンから選ぶことができる。
【0033】
さらなる例としては、アンゲリカ、ベルガモテン、シクロラバンデュラル、シトラール、ファルネサール、イケマ、イソラウラナール、フェランドレンオキシム及びソルビナールオキシムが挙げられる。特に、シトラールオキシムはゲラノニトリルに転換することができる。
【0034】
これらの新規誘導体に対する親ケトンの例としては、α−イオノン、β−イオノン、γ−メチルイオノン、α−イロン、メチルジヒドロジャスモネート、シス−ジャスモン、メチルアミルケトン、カルボン、ダマスセノン、α−ダマスコン、β−ナフチルケトンメチル、カシオン及びメントンが挙げられる。
【0035】
III.芳香化学物質誘導体を含む製造品
本明細書中に記載する誘導体は、芳香化学物質又は誘導体が由来する、他の「親化合物」を含むことができる、事実上任意の製造品中に含ませることができる。例としては、漂白剤、洗剤、香味剤及び芳香剤、飲料(アルコール飲料を含む)等が挙げられる。誘導体は、石鹸、シャンプー、ボディーデオドラント及び制汗剤、織物を処理するための固体又は液体洗剤、繊維用柔軟剤、皿若しくは様々な表面を洗浄するための洗剤組成物及び/又は汎用性洗浄剤(ともに、家庭用途及び産業用途用)のような用途で使用することができる。当然のことながら、化合物の使用は上述の製品に限定されず、化合物は香料製造、すなわち石鹸及びシャワー用ゲル、衛生又はヘアケア製品の香り付け、並びにボディーデオドラント、室内用消臭剤及び化粧品調合物の香り付けでの、さらには上質の香料製造での、すなわち香水及びオーデコロンでの他の現在の用途で使用される。これらの使用について、以下により詳細に記載する。
【0036】
香料組成物
化合物は、香り付け成分として、単一化合物として又はそれらの混合物として、好ましくは香料組成物の少なくとも約30重量%の範囲で、より好ましくは組成物の少なくとも約60重量%の範囲で使用することができる。化合物は、添加構成成分なしで、それらの純粋な状態でも又は混合物としてでも使用することができる。個々の化合物の嗅覚的特徴もまたそれらの混合物中に存在し、これらの化合物の混合物は、香り付け成分として使用することができる。これは、分離及び/又は精製工程で化合物の混合物を使用することで回避することをできる場合、特に有利であり得る。
【0037】
上述の用途すべてにおいて、誘導体は、単独で、あるいは当業界で現在使用されている他の香り付け成分、溶媒又は補助剤と混合して使用することができる。これらの共成分の性質及び種類は、本明細書中でより詳細な説明を必要とせず、さらに網羅する必要もない。当業者は、一般的知識により、また、香り付けされるべき製品の性質及び所望の嗅覚的影響への作用に応じて、種類を選択することが可能である。
【0038】
これらの香り付け成分は通常、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ナイトライト、テルペン炭化水素、硫黄及び窒素含有複素環化合物、並びに天然又は合成起源の芳香化学物質といった多様な化学的種類に属する。これらの成分の多くは、非特許文献1(この内容は、それらの全体が、又はそのより最新版が、又は同様の他の作品が参照により本明細書に援用される)のような参照テキストに記載されている。
【0039】
誘導体が様々な製品中に組み込まれ得る比率は、広範囲の値で様々である。これらの値は、香料に対して所望の物品又は製品の性質及び求められる香りの影響、並びに化合物が当業界で現在使用されている香り付け共成分、溶媒又は補助剤と混合して使用される場合に、所定の組成物中の共成分の性質によって変化する。
【0040】
例として、誘導体は通常、誘導体が組み込まれる香り付け組成物の重量に対して、これらの化合物の約0.1〜約10重量%、さらにはそれ以上の濃度で存在する。上述の濃度よりもはるかに低い濃度は、化合物が上述の様々な消費者製品を香り付けするのに直接適用される場合に使用することができる。
【0041】
化合物は、香料にとって通常刺激的な媒質中で比較的安定である。したがって、化合物は、漂白剤及び活性化剤(例えば、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、次亜ハロゲン酸塩(特に、次亜塩素酸塩)、過酸化漂白剤(例えば、過ホウ酸塩漂白剤等)等)を含有する洗剤中で使用することができる。化合物はまた、例えばアルミニウム塩を含有するボディーデオドラント及び制汗剤中で使用することができる。これらの実施形態を以下に詳細に説明する。
【0042】
従来の洗剤成分
本明細書中に記載する誘導体のほかに、本明細書中の組成物は、洗浄性界面活性剤、及び任意に1つ又は複数のさらなる洗剤成分(洗浄性能、洗浄される基材の処理を助長又は向上させるための、又は洗剤組成物の美観を改質させる材料を含む)(例えば、香料、着色剤、色素等)を含む。以下のものは、洗浄性界面活性剤及び他の洗剤成分の実例である。
【0043】
洗浄性界面活性剤。通常約0.5重量%〜約90重量%の濃度での本発明で有用な合成洗浄性界面剤の非限定的な例としては、従来のC11〜18アルキルベンゼンスルホン酸塩(「LAS」)並びに第一級分枝鎖及びランダムC10〜20アルキル硫酸塩(「AS」)、式CH(CH(CH(CH)OSO)及びCH(CH)y(CH(CHCH)OSO)(式中、x及びyは整数であり、x及び(y+1)はそれぞれ少なくとも約7、好ましくは少なくとも約9であり、Mは水可溶化陽イオン(特にナトリウム)である)を有するC10〜18第二級(2,3)アルキル硫酸塩、不飽和硫酸塩(例えば、オレイル硫酸塩)、C10〜18アルキルアルコキシ硫酸塩(「AExS」;特にEO1〜7エトキシ硫酸塩)、C10〜18アルキルアルコキシカルボン酸塩(特に、EO1〜5エトキシカルボン酸塩)、C10〜18グリセロールエーテル、C10〜18アルキルポリグリコシド及びそれらの相当する硫酸化ポリグリコシド、並びにC12〜18α−スルホン化脂肪酸エステルが挙げられる。所望により、従来の非イオン性及び両性界面活性剤(例えば、いわゆるナローピークのアルキルエトキシレートを含むC12〜18アルキルエトキシレート(「AE」)及びC6〜12アルキルフェノールアルコキシレート(特に、エトキシレート及び混合エトキシ/プロポキシレート))、C12〜18ベタイン及びスルホベタイン(「スルタイン」)、C10〜18アミンオキシド等もまた全体的な組成物中に含ませることができる。C10〜18N−アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミンもまた使用することができる。典型例としては、C12〜18N−メチルグルカミドが挙げられる。特許文献3を参照されたい。他の糖由来の界面活性剤としては、N−アルコキシポリヒドロキシ脂肪酸アミド、例えばC10〜18N−(3−メトキシプロピル)グルカミドが挙げられる。N−プロピル〜N−ヘキシルC12〜18グルカミドは、低い泡立ちに使用することができる。C10〜20の従来の石鹸もまた使用することができるが、合成洗剤が好ましい。高い泡立ちが所望の場合、分枝鎖C10〜16石鹸を使用してもよい。陰イオン性及び非イオン性界面活性剤の混合物が特に有用である。他の従来の有用な界面活性剤は、標準的なテキストに列挙されている。同様にノリス(Norris)に対する特許文献4も参照されたい。
【0044】
合成洗剤のみを組み込んでいる好ましい組成物は、約0.5%〜50%の洗剤濃度を有する。石鹸を含有する組成物は、好ましくは約10%〜約90%の石鹸を含む。
【0045】
本明細書中の洗剤組成物は、洗浄性界面活性剤及びプロ芳香剤(pro-fragrance)のみから構成することができるが、上記組成物は好ましくは、洗剤製品中で一般的に使用される他の成分を含有する。
【0046】
ビルダー
洗剤ビルダーは、鉱物硬度を制御するのを助長するために本明細書中の組成物中に任意に含ませることができる。有機ビルダーのほかに無機ビルダーも使用できる。ビルダーは通常、粒子状の汚れの除去を助長するために、繊維洗濯用組成物中で使用される。
【0047】
ビルダーの濃度は、組成物の最終用途及びその望ましい物理的形態に応じて広範囲に様々であり得る。存在する場合、組成物は、通常少なくとも約1%のビルダーを含む。液体配合物は通常、約5%重量%〜約50重量%、より典型的には約5重量%〜約30重量%の洗剤ビルダーを含む。顆粒状配合物は通常、約10重量%〜約80重量%、より典型的には約15重量%〜約50重量%の洗剤ビルダーを含む。しかしながら、より低濃度又は高濃度のビルダーを排除することを意味しない。
【0048】
無機又は洗剤ビルダーとしては、リン酸塩ビルダー(例えば、ポリリン酸塩(トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩及びガラス質高分子メタリン酸塩により例示される)のアルカリ金属、アンモニウム及びアラノールアンモニウム塩)、ホスホン酸塩及びフィチン酸、並びに非リン系ビルダー(例えば、ケイ酸塩、炭酸塩(重炭酸塩及びセスキ炭酸塩を含む)、硫酸塩及びアルミノケイ酸塩)が挙げられるが、これらに限定されない。非リン酸塩ビルダーは、場合によっては必要とされる。
【0049】
本発明で使用するのに適した有機ビルダーとしては、例えば特許文献5、特許文献6及び特許文献7(これらの内容は、参照により本明細書に援用される)に開示されるポリカルボン酸塩ビルダーが挙げられる。
【0050】
防汚剤
防汚剤は望ましくは、本発明の洗濯洗剤中で使用される。適切な防汚剤としては、特許文献8の防汚剤(そのようなエステルオリゴマーは、(a)アリルアルコールをエトキシル化すること、(b)2段階エステル交換/オリゴマー化手順で、(a)の生成物をジメチルテレフタレート(「DMT」)及び1,2−プロピレングリコール(「PG」)と反応させること、及び(c)水中で(b)の生成物を異性重亜硫酸ナトリウムと反応させることにより調製することができる)、特許文献9の非イオン性のエンドキャップされた1,2−プロピレン/ポリオキシエチレンテレフタレートポリエステル(例えば、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、DMT、PG及びポリ(エチレングリコール)(「PEG」)のエステル交換/オリゴマー化により生産されるもの)、特許文献10の部分的及び完全陰イオン性のエンドキャップされたオリゴマーエステル(例えば、エチレングリコール(「EG」)、PG、DMT及びNa−3,6−ジオキサ−8−ヒドロキシオクタンスルホネートからのオリゴマー)、特許文献11の非イオン性のキャップされたブロックポリエステルオリゴマー化合物(例えば、DMT、MeキャップされたPEG及びEG及び/又はPG、又はDMT、EG及び/又はPG、MeキャップされたPEG及びNa−ジメチル−5−スルホイソフタレートの組み合わせから生産される)、並びに特許文献12の陰イオン性(特に、スルホアロイル)のエンドキャップされたテレフタレートエステル(後者は、洗濯及び繊維コンディショニング製品で有用なSRAに特有であり、例は、m−スルホ安息香酸一ナトリウム塩、PG及びDMTから作製される(任意であるが、好ましくは添加PEG(例えば、PEG3400)をさらに含む)組成物である)が挙げられる。別の好ましい防汚剤は、特許文献13に記載されるスルホン化されたエンドキャップされたタイプである。
【0051】
他の任意の成分
本明細書中の組成物は、酵素、漂白剤、繊維用柔軟剤、転染阻害剤、気泡抑制剤及びキレート剤のようなすべて当業者に既知の他の成分を含有することができる。
【0052】
本発明の洗剤組成物を規定するために、洗剤組成物のpHは、蒸留水中で20℃で、洗剤組成物1%の濃度で測定されるpHである。本明細書中の洗剤組成物は、液体洗剤に関しては約7.1〜約13、より典型的には約7.5〜約9.5、及び顆粒状洗剤に関しては約8〜約12のpHを有する。
【0053】
従来の香料材料を伴った又は伴わない洗剤を用いた配合
本明細書中に記載する誘導体は、単独で使用することができ、また必須洗浄成分(とりわけ界面活性剤)と単に混合することができる一方で、誘導体はまた、望ましくは(a)1つ又は複数の合成洗剤を含む非芳香性洗剤基礎剤と、(b)本明細書中に記載する誘導体の1つ又は複数とを組み合わせる3部配合物へと組み合わせることができる。一実施形態では、アルデヒドが望ましいパッケージ内及び使用中(洗浄時間)の芳香剤を提供する一方で、アセタールが洗濯された織物へ長期間の芳香剤を提供するように、アルデヒド及びアセタールの両方が存在する。
【0054】
本洗剤を処方する際に、天然又は合成起源の、数々の既知の匂い物質成分を用いて、完全に処方された芳香剤を調製することができる。天然原料物質の範囲は、容易に揮発する構成成分のみならず、穏やかに揮発する成分やわずかに揮発する成分にまで及び、化学合成物質のそれらは、以下の実例的な記載から明らかであるように、事実上すべての種類における芳香性物質の代表的なものを包含することができる:ツリーモスアブソリュート、メボウキ油、柑橘類果実油(ベルガモット油、マンダリン油等)、マスティクスアブソリュート、ミルテ油、パルマローザ油、パチョリ油、プチグレン油パラグアイ、ワームウッド油等の天然産物、ファルネソール、ゲラニオール、リナロール、ネロール、フェニルエチルアルコール、ロジノール、シンナミックアルコール等のアルコール、シトラール、Helional(登録商標)、α−ヘキシル−シンナムアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、Lilial(登録商標)(p−t−ブチル−α−メチルジヒドロシンナムアルデヒド)、メチラオニルアセトアルデヒド等のアルデヒド、アリルイオノン、α−イオノン、β−イオノン、イソラルデイン(イソメチル−α−イオノン)、メチルイオノン等のケトン、フェノキシ酢酸アリル、サリチル酸ベンジル、プロピオン酸シンナミル、酢酸シトロネリル、シトロネリルエトキシレート、酢酸デシル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酪酸ジメチルベンジルカルビニル、アセト酢酸エチル、アセチル酢酸エチル、イソ酪酸ヘキセニル、酢酸リナリル、ジヒドロジャスモン酸メチル、酢酸スチラリル、酢酸ベチベリル等のケトン、γ−ウンデカラクトン等のラクトン、ムスクケトン、インドール、p−メタン−8−チオール−3−オン及びメチルオイゲノール等の香料製造によく使用される種々の構成成分。同様にして、従来の処方された香料の任意の構成成分(c)として、当該技術において既知の、任意の従来の芳香性アセタール又は芳香性ケタールを本構成に加えることができる。このような従来の芳香性アセタール又は芳香性ケタールは、フェニルエチル部位から成る、又は「オキソ−テトラリン及びオキソ−インダンのアセタール及びケタール」と題する特許文献14に記載されているような、より最近明らかにされた新型品から成る、ベンズアルデヒドに基づくアセタール又はケタールに加えて、既知のメチルアセタール及びエチルアセタール、メチルケタール及びエチルケタールを含む。もちろん、完全に処方された洗剤の香料の組成物として、他の最近の合成新型品も含むことができる。これらの例として、特許文献15に記載されているようなアルキル置換オキソテトラリン若しくはアルキル置換オキソインダンのエノールエーテル、又は特許文献16に記載されているようなシッフ塩基などが挙げられる。プロ芳香性材料は、従来の香料から本発明の洗剤組成物に別々に添加されることが好ましい。
【0055】
他の特殊目的の芳香剤供給化合物を用いた配合
本明細書中に記載の誘導体を含む洗剤は、さらに所望により、芳香剤の持続性を向上させる能力を有する他の既知の化合物を含有する。かかる化合物としては、アルミニウムアルコキシド(例えば、特許文献17に開示されるようなイソブチルアルミニウムジフェラニレート)、又は既知の芳香性材料のチタネート及びジルコネートエステル又はオリゴエステル(例えば、特許文献18及び特許文献19(これらの内容はそれぞれ、参照により本明細書中に援用される)に開示されるもの)が挙げられるが、これらに限定されない。かかるオルガノアルミニウム、オルガノチタン又はオルガノ亜鉛誘導体を用いる場合、それらは、それらの当業界で既知の濃度で本発明の配合物に組み込まれ得る。
【0056】
飲料組成物
本明細書中に記載される改良された香味剤は、飲料に組み込ませることができ、飲料に様々な香味を付与することができる。好ましい香味はレモンであるが、さらなる香味としては、バラ、シナモン、ライム等が挙げられる。飲料組成物は、コーラ飲料組成物であってもよく、またコーヒー、紅茶、乳飲料、果汁ドリンク、オレンジドリンク、レモンライムドリンク、ビール、モルト飲料又は他の香味付き飲料であり得る。上記飲料は液状又は粉末状であってもよい。
【0057】
飲料組成物はまた、1つ又は複数の香味付け剤、人工着色剤、ビタミン添加物、防腐剤、カフェイン添加物、水、酸味料、増粘剤、緩衝剤、乳化剤及び/又は果汁濃縮物を含むことができる。
【0058】
使用され得る人工着色剤としては、カラメル色、黄色6号及び黄色5号が挙げられる。有用なビタミン添加物としては、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC(アスコルビン酸)、ナイアシン、パンテトン酸、ビオチン及び葉酸が挙げられる。適切な防腐剤としては、安息香酸ナトリウム又は安息香酸カリウムが挙げられる。使用され得る塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化マグネシウムが挙げられる。例示的な乳化剤は、アラビアゴム及び純正ゴムであり、有用な増粘剤は、ペクチンである。適切な酸味料としては、クエン酸、リン酸及びリンゴ酸が挙げられ、潜在的な緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム及びクエン酸カリウムが挙げられる。
【0059】
一実施形態では、飲料は、炭酸コーラ飲料である。pHは概して、約2.8であり、以下の成分を用いて、これらの組成物に関するシロップを作製することができる:本明細書中に記載する誘導体の1つ又は複数を含む香味濃縮物(22.22ml)、80%リン酸(5.55g)、クエン酸(0.267g)、カフェイン(1.24g)、人工甘味料、砂糖又はコーンシロップ(好みの分量で、実際の甘味料による)及びクエン酸カリウム(4.07g)。飲料組成物は、例えば、上述のシロップを炭酸水と、炭酸水250mlに対してシロップ50mlの比率で混合することにより調製することができる。
【0060】
別の実施形態では、飲料は、ビール又はモルト飲料である。ビール及びモルト飲料用の好ましい香味剤としては、レモン、ライム及びレモンライムが挙げられる。好適には、香味剤は、二重結合の一方又は両方がシクロプロパン基で置換られたシトラール誘導体を含み、ここでシクロプロパン基は、独立して非置換であり得るか、あるいは1つ若しくは2つのアルキル又は置換アルキル基、好ましくはメチル基を含み得る。香味剤の量は、お好みに応じた分量で調節することができる。
【0061】
経口供給製品
本明細書中に記載する誘導体の1つ又は複数を含む香味食品及び薬学的組成物もまた調製することができる。誘導体は、当業者に既知の技法を用いて、従来の食料品に添加することができる。又は、誘導体は、高分子粒子内に取り込ませることができ、それは言い換えると、通常固形又は半固形基材である経口で供給可能なマトリックス材料内及び/又はその表面上に分散させることができる。咀嚼が可能な組成物で使用する場合、組成物が咀嚼され、口の中に保持されると、経口で供給可能な高分子マトリックス材料へ誘導体を放出することができるので組成物の香味が持続する。乾燥パウダー及びミックスの場合、香味は、製品が消費される場合に利用可能となり得るか、又は組成物がさらに加工される場合にマトリックス材料中に放出され得る。2つの香味を高分子粒子と組み合わせる場合、添加物の相対量は、化合物の同時放出及び消耗を提供するように選択することができる。
【0062】
一実施形態では、香味付き組成物は、経口で供給可能なマトリックス材料、経口で供給可能なマトリックス材料中に分散される複数の水不溶性高分子粒子(ここで、高分子粒子は個々に、内部孔のネットワークを規定し、消化管では分解不可能である)、及び内部孔ネットワーク内に捕捉される本明細書中に記載する1つ又は複数の誘導体を含む。マトリックスが咀嚼され、口の中で溶解するか、又は液体添加、ドライブレンディング、攪拌、混合、加熱、ベーキング及び調理から成る群から選択されるさらなる加工を受ける場合に、誘導体は放出される。経口で供給可能なマトリックス材料は、ガム、ラテックス材料、結晶砂糖、非晶質砂糖、フォンダン、ヌガー、ジャム、ゼリー、ペースト、パウダー、ドライブレンド、脱水食品ミックス、焼き菓子、バター、パン生地、タブレット及びロゼンジから成る群から選択することができる。
【0063】
チューインガム
香味のないガムベースを、所望の香味濃度になるまで、シトラール又は本明細書中に記載する他の適切な誘導体と組み合わせることができる。通常、ブレードミキサーを約110°F(43.3℃)まで加熱して、ガムベースを柔らかくなるように予熱した後、ガムベースをミキサーに添加して、約30秒間混合させる。続いて、香味付き誘導体をミキサーに添加して、適切な期間混合する。次に、ガムをミキサーから取り出して、加温しながらパラフィン紙上に1枚の厚さへとローラーで延ばすことができる。
【0064】
徐放性配合物
一実施形態では、本明細書中に記載する誘導体は、コントロールされた方法で芳香剤を放出することができる系に組み込まれる。これらは、室内消臭剤、洗濯洗剤、繊維用柔軟剤、デオドラント剤、ローション及び他の家庭用アイテムといった基材を含む。芳香剤は一般的に、それぞれ異なる量で存在する本明細書中に記載するような芳香化学物質の1つ又は複数の誘導体である。特許文献20(この内容は、その全体が参照により本明細書に援用される)は、最大90重量%の芳香剤又は香油を含有するゲル物品を調製する方法を記載している。ゲルは、ヒドロキシ(低級アルコキシ)2−アルケノエート、ヒドロキシ(低級アルコキシ)低級アルキル2−アルケノエート、又はヒドロキシポリ(低級アルコキシ)低級アルキル2−アルケノエートを有するポリマー及びポリエチレン性不飽和架橋剤から調製される。これらの材料は、連続的な遅い徐放特性を有する。すなわち、これらの材料は、長期間にわたって連続的に芳香成分を放出する。好適には、アルデヒド基を含むこれらの誘導体のすべて又は一部は、アセタール基を含むように改質することができ、アセタール基が加水分解して、アルデヒド化合物を形成する場合に、配合物は長期間にわたって芳香剤を放出させることができる。
【0065】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することで、より良好に理解されるであろう。
【実施例】
【0066】
実施例1:ベンゾ[4,5]チエノ[3,2b]ピラン−2−オンの合成
スキーム1で以下に示すように、2−メルカプト安息香酸を、触媒量の硫酸の存在下でトランスグルタコン酸と反応させて、ベンゾ[4,5]チエノ[3,2b]ピラン−2−オンを形成した。この化学的作用は、他の合成化合物に適用可能であり、ここでメルカプト安息香酸は、環化化学的作用を妨害しない官能基(例えば、アルキル基)でさらに置換される。さもなければ環化化学的作用を妨害し得る官能基は、もしそれらが保護されているならば存在することができる。かかる官能基(すなわち、ヒドロキシ、アミン、チオール等)用の保護基は、当業界で既知であり、本明細書中で説明する必要はない。
【0067】
【化6】

【0068】
本発明の主題を本明細書中に開示してきたが、それらを鑑みて本発明の多くの改変、置換及び変更が可能であることが明らかであるはずである。本発明は、具体的に記載されている以外に実施することができることが理解されよう。かかる改変、置換及び変更は、本発明の範囲内であることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのイソプレン単位又はベンゼン環を含む芳香化学物質の誘導体であって、該芳香化学物質中の少なくとも1つのイソプレン単位又はベンゼン環は、ベンゾチオフェン環で置換られ、該ベンゾチオフェン環は、ハロ、アルキル、ヒドロキシ、チオール、チオエーテル、アミン、カルボン酸、エステル、ニトロ、シアノ、スルホン酸、尿素及びチオ尿素から成る群から選択される1つ又は複数の置換基で任意に改質されることを特徴とする誘導体。
【請求項2】
前記芳香化学物質が、少なくとも1つのイソプレン単位を含む請求項1記載の誘導体。
【請求項3】
前記芳香化学物質が、少なくとも1つのフェニル環を含む請求項1記載の誘導体。
【請求項4】
前記芳香化学物質が少なくとも1つのアルデヒド基を含み、さらに前記芳香化学物質中の少なくとも1つのアルデヒド基は、ニトリル、メチルエーテル、エステル又はアセタール基で置換される請求項1〜3のいずれかに記載の誘導体。
【請求項5】
香料製造で使用するのに適した、少なくとも1つの他の香り付け成分、溶媒又は補助剤と共に、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物を含む組成物。
【請求項6】
前記化合物が、前記組成物の少なくとも30重量パーセントの量で存在する請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記化合物が、前記組成物の少なくとも60重量パーセントの量で存在する請求項5記載の組成物。
【請求項8】
香り付け成分として、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物又は化合物の混合物を含有する香り付け組成物又は香り付けされた物品。
【請求項9】
前記化合物又は化合物の混合物が、香料製造で使用するのに適した少なくとも1つの他の香り付け成分、溶媒又は補助剤と混合した状態で存在する、請求項8記載の香り付け組成物。
【請求項10】
香水又はオーデコロン、石鹸、バス用若しくはシャワー用ゲル、シャンプー又は他のヘアケア製品、化粧品調合物、ボディーデオドラント又は制汗剤、室内用消臭剤、繊維用洗剤若しくは柔軟剤あるいは汎用性家庭用洗浄剤の形態にある、請求項8記載の香り付け組成物又は香り付けされた物品。
【請求項11】
香り付け成分として、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物又は化合物の混合物を含有するボディーデオドラント又は制汗剤。
【請求項12】
前記化合物又は化合物の混合物が、香料製造で使用するのに適した少なくとも1つの他の香り付け成分、溶媒又は補助剤と混合した状態で存在する、請求項11記載のボディーデオドラント又は制汗剤。
【請求項13】
香り付け成分として、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物又は化合物の混合物を含有する洗剤。
【請求項14】
前記化合物又は化合物の混合物が、当業界で現在使用されている少なくとも1つの他の香り付け成分、溶媒又は補助剤と混合した状態で存在する、請求項13記載の洗剤。
【請求項15】
請求項1〜4のいずれかに記載の芳香化学物質誘導体を含む漂白剤組成物。
【請求項16】
請求項1〜4のいずれかに記載の芳香化学物質誘導体を含む飲料。
【請求項17】
前記飲料が、ビール、モルトリカー、レモネード及びコーラから成る群から選択される請求項16記載の飲料。
【請求項18】
請求項1記載の芳香化学物質誘導体を含む香味付き経口で供給される製品。
【請求項19】
香り付け組成物又は香り付けされた物品の香りを改良、向上又は改質する方法であって、前記組成物又は前記物品に、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物又は化合物の混合物を有効量添加することを含む方法。
【請求項20】
前記化合物又は化合物の混合物が、香味剤及び/又は芳香剤で使用するのに適した少なくとも1つの他の香り付け成分、溶媒又は補助剤と混合した状態で存在する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
香料製造で使用するのに適した少なくとも1つの他の香り付け成分、溶媒又は補助剤と共に、ベンゾ[4,5]チエノ[3,2b]ピラン−2−オンを含む組成物。
【請求項22】
前記ベンゾ[4,5]チエノ[3,2b]ピラン−2−オンが、前記組成物の少なくとも30重量パーセントの量で存在する、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
前記ベンゾ[4,5]チエノ[3,2b]ピラン−2−オンが、前記組成物の少なくとも60重量パーセントの量で存在する、請求項21記載の組成物。
【請求項24】
香り付け成分として、化合物ベンゾ[4,5]チエノ[3,2b]ピラン−2−オンを含む香り付け組成物又は香り付けされた物品。
【請求項25】
前記ベンゾ[4,5]チエノ[3,2b]ピラン−2−オンが、香料製造で使用するのに適した少なくとも1つの他の香り付け成分、溶媒又は補助剤と混合した状態で存在する、請求項24記載の香り付け組成物。
【請求項26】
香水又はオーデコロン、石鹸、バス用若しくはシャワー用ゲル、シャンプー又は他のヘアケア製品、化粧品調合物、ボディーデオドラント又は制汗剤、室内用消臭剤、繊維用洗剤若しくは柔軟剤あるいは汎用性家庭用洗浄剤の形態にある、請求項24記載の香り付け組成物又は香り付けされた物品。
【請求項27】
香り付け成分として、ベンゾ[4,5]チエノ[3,2b]ピラン−2−オンを含むボディーデオドラント又は制汗剤。
【請求項28】
前記ベンゾ[4,5]チエノ[3,2b]ピラン−2−オンが、香料製造で使用するのに適した少なくとも1つの他の香り付け成分、溶媒又は補助剤と混合した状態で存在する、請求項27記載のボディーデオドラント又は制汗剤。

【公表番号】特表2006−526623(P2006−526623A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509812(P2006−509812)
【出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/010829
【国際公開番号】WO2004/092182
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(505377234)フレキシトラル,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】