説明

ペースト塗布装置及びペースト塗布方法

【課題】ペースト塗布量のばらつきの発生を抑え、さらに、ペースト塗布時間を短縮する。
【解決手段】制御部9は、パターンの描画中、調整部8及び移動機構3,5に対し、ステージ2上の塗布対象物Kに対するノズル4bの対向位置が第1の直線部からコーナー部に進入する場合、ステージ2とノズル4bとの面方向の相対速度を低下させ、吐出圧力を下げるとともに、ステージ2上の塗布対象物Kとノズル4bとの離間距離を狭くする制御を行い、ステージ2上の塗布対象物Kに対するノズル4bの対向位置がコーナー部から第2の直線部へ出る場合、ステージ2とノズル4bとの面方向の相対速度を上昇させ、吐出圧力を上げるとともに、ステージ2上の塗布対象物Kとノズル4bとの離間距離を広げる制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布対象物にペーストを塗布するペースト塗布装置及びペースト塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト塗布装置は、液晶表示パネルなどの様々な装置を製造するために用いられている。このペースト塗布装置は、塗布対象物に対してペーストを吐出する塗布ヘッドを備えており、その塗布ヘッドと塗布対象物とを相対移動させながら、塗布対象物上にペーストを塗布し、所定の塗布パターン(ペーストパターン)を描画する。
【0003】
このとき、ペースト塗布装置は、均一なペースト塗布量を得るため、塗布対象物となる基板の表面高さを測定し、その測定値に基づいて塗布ヘッドのノズルを上下に移動させ、描画中における塗布ヘッドのノズル先端と基板の表面との距離を一定に維持する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、塗布パターンがコーナー部(曲がり部)を有する場合には、そのコーナー部での塗布速度を直線部の塗布速度に比べ低速とすることがある。このとき、ペースト塗布量を一定に保つため、コーナー部への進入時に塗布速度を低下(減速)させるのに合わせ、塗布ヘッドの吐出圧力を下げ、その後、コーナー部からの離脱時に塗布速度を上昇(加速)させるのに合わせ、塗布ヘッドの吐出圧力を上げる制御が行われ、塗布ヘッドのペースト吐出量が調整される。
【0005】
なお、塗布ヘッドは供給気体の圧力によりノズルからペーストを吐出するので、吐出圧力を変化させるためには、その供給気体の流量が電空レギュレータにより調整される。これに応じて、塗布ヘッドのペースト吐出量が変化することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−152261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のように、コーナー部での塗布速度の変化に合わせて塗布ヘッドの吐出圧力、すなわち供給気体の流量を変更する制御を行う場合には、気体の圧縮性のため、電空レギュレータによる調整圧力が吐出圧力としてペーストに作用するまでの応答性が低いため、ペースト塗布量を精度良く制御することは困難であり、ペースト塗布量のばらつきが発生してしまう。
【0008】
また、吐出圧力の応答性の低さに塗布速度の減速・加速を合わせた場合、コーナー部の入口前と出口後に加減速距離が余分に必要となり、この加減速距離は電空レギュレータの応答性や吐出圧力の応答性により決められるため、塗布速度が上がると、加減速距離が長くなり、その結果、ペースト塗布時間が長くなってしまう。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、ペースト塗布量のばらつきの発生を抑えることができ、さらに、ペースト塗布時間を短縮することができるペースト塗布装置及びペースト塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、ペースト塗布装置において、塗布対象物が載置されるステージと、ペーストを吐出するノズルと、ノズルからペーストを吐出させる吐出圧力を調整する調整部と、ステージとノズルとをステージの面方向及びその面方向に交差する方向に相対移動させる移動機構と、ステージとノズルとを面方向に相対移動させ、ステージ上の塗布対象物に対して、第1の直線部とその第1の直線部に連続するコーナー部とそのコーナー部に連続する第2の直線部とを有するパターンにペーストを描画するように、調整部及び移動機構を制御する制御部とを備え、制御部は、パターンの描画中、調整部及び移動機構に対し、ステージ上の塗布対象物に対するノズルの対向位置が第1の直線部からコーナー部に進入する場合、ステージとノズルとの面方向の相対速度を低下させ、吐出圧力を下げるとともに、ステージ上の塗布対象物とノズルとの離間距離を狭くする制御を行い、ステージ上の塗布対象物に対するノズルの対向位置がコーナー部から第2の直線部へ出る場合、ステージとノズルとの面方向の相対速度を上昇させ、吐出圧力を上げるとともに、ステージ上の塗布対象物とノズルとの離間距離を広げる制御を行うことである。
【0011】
本発明の実施の形態に係る第2の特徴は、塗布対象物が載置されるステージと、ペーストを吐出するノズルと、ノズルからペーストを吐出させる吐出圧力を調整する調整部と、ステージとノズルとをステージの面方向及びその面方向に交差する方向に相対移動させる移動機構とを用いて、ステージとノズルとを面方向に相対移動させ、ステージ上の塗布対象物に対して、第1の直線部とその第1の直線部に連続するコーナー部とそのコーナー部に連続する第2の直線部とを有するパターンにペーストを描画するペースト塗布方法であって、パターンの描画中、調整部及び移動機構に対し、ステージ上の塗布対象物に対するノズルの対向位置が第1の直線部からコーナー部に進入する場合、ステージとノズルとの面方向の相対速度を低下させ、吐出圧力を下げるとともに、ステージ上の塗布対象物とノズルとの離間距離を狭くする制御を行い、ステージ上の塗布対象物に対するノズルの対向位置がコーナー部から第2の直線部へ出る場合、ステージとノズルとの面方向の相対速度を上昇させ、吐出圧力を上げるとともに、ステージ上の塗布対象物とノズルとの離間距離を広げる制御を行うことである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ペースト塗布量のばらつきの発生を抑えることができ、さらに、ペースト塗布時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の一形態に係るペースト塗布装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すペースト塗布装置が塗布するペーストの塗布パターンの一例を説明するための説明図である。
【図3】図2に示す塗布パターンを塗布する場合の塗布処理を説明するための説明図である。
【図4】図2に示す塗布パターンを塗布する場合の塗布経路を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るペースト塗布装置1は、塗布対象物である基板Kが水平状態(図1中、X軸方向とそれに直交するY軸方向に沿う状態)で載置されるステージ2と、そのステージ2を保持してX軸方向及びY軸方向に移動させるステージ移動機構3と、ステージ2上の基板Kにシール剤等のペースト(例えば、シール性及び接着性を有するペースト)を塗布する塗布ヘッド4と、その塗布ヘッド4をZ軸方向に移動させるヘッド移動機構5と、ステージ2上の基板Kとの距離を測定する距離測定器6と、塗布ヘッド4に気体を供給する気体供給部7と、気体の供給圧力(気体の流量)を調整する調整部8と、各部を制御する制御部9とを備えている。
【0016】
ステージ2は、ガラス基板などの基板Kが載置されるテーブルであり、ステージ移動機構3の上面に設けられている。このステージ2は、例えば基板Kを吸着する吸着機構を備えており、その吸着機構によりステージ2の載置面に基板Kを固定して保持する。なお、吸着機構としては、例えばエアー吸着機構などが用いられる。
【0017】
ステージ移動機構3は、X軸移動機構やY軸移動機構などを有しており、ステージ2をX軸方向及びY軸方向に案内して移動させる移動機構である。なお、X軸移動機構やY軸移動機構としては、例えば、モータを駆動源とする送りネジ移動機構やリニアモータを駆動源とするリニアモータ移動機構などが用いられる。
【0018】
塗布ヘッド4は、ペーストを収容する容器であるシリンジ4aと、そのシリンジ4aに収容されたペーストを吐出するノズル4bとを有している。この塗布ヘッド4は、気体供給チューブなどの配管7aを介して気体供給部7に接続されており、シリンジ4a内に供給される気体により、そのシリンジ4a内のペーストをノズル4bの先端から吐出する。
【0019】
ヘッド移動機構5は、Z軸移動機構を有しており、塗布ヘッド4をZ軸方向に案内して移動させる移動機構である。このヘッド移動機構5は、支持部材(図示せず)により支持されており、塗布ヘッド4を基板Kの塗布面に直交するZ軸方向に移動可能に支持し、ステージ2上の基板Kに対してZ軸方向に接離させる。なお、ヘッド移動機構5としては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ機構やリニアモータを駆動源とする移動機構などが用いられる。
【0020】
距離測定器6は、塗布ヘッド4と一体的に設けられており、自身からステージ2上の基板Kの表面までの距離を測定する測定器である。この距離測定器6により測定された測定値は制御部9により用いられ、塗布ヘッド4のノズル4bの先端とステージ2上の基板Kとの離間距離(ギャップ)が求められる。なお、距離測定器6としては、例えば、レーザ変位計などが用いられる。
【0021】
気体供給部7は、クリーンドライエアー(CDA)や窒素(N2)などの気体(例えば、圧縮気体)を貯留する貯留部である。この気体供給部7は気体供給チューブなどの配管7aを介して塗布ヘッド4のシリンジ4aに接続されており、そのシリンジ4a内に気体を供給する。
【0022】
調整部8は、配管7aの経路途中に設けられおり、その配管7a内を流れる気体の流量を制御部9の制御に応じて変更し、塗布ヘッド4の吐出圧力を調整する調整部である。この調整部8としては、例えば、電空レギュレータなどが用いられる。なお、塗布ヘッド4の吐出圧力とは、塗布ヘッド4のノズル4bからペーストを吐出するための圧力である。
【0023】
制御部9は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータ、各種プログラムや各種情報などを記憶する記憶部、及び、操作者からの入力操作を受け付ける操作部などを備えている。この制御部9は各部に電気的に接続されており、記憶部に記憶された各種プログラムや各種情報などに基づいて各部の動作を制御する。
【0024】
記憶部には、塗布パターンや塗布条件などを含む塗布情報が記憶されている。塗布条件は、塗布速度や吐出圧力、ギャップなどの設定条件情報である。このような塗布情報は、操作部に対する入力操作やデータ通信、あるいは携帯可能な記憶装置の媒介により記憶部に予め記憶されている。なお、記憶部としては、メモリやハードディスクドライブ(HDD)などが用いられる。
【0025】
次に、前述のペースト塗布装置1が行う塗布動作について詳しく説明する。ここでは、ペーストの塗布パターン(ペーストパターン)の一例として、図2に示すように、矩形の閉ループに1つの塗布パターンPを描画する場合について説明する。
【0026】
ペースト塗布装置1は、ステージ2上の基板Kの周縁部に沿って例えば時計回りに線状にペーストを塗布し、矩形の閉ループの塗布パターンPを描画する。矩形の閉ループの塗布パターンPには、4つの直線部A及び4つのコーナー部Bが存在する。なお、基板Kにおける塗布位置の始点と終点は同一位置である。
【0027】
まず、制御部9は、ペースト塗布に先立って基板K上のアライメントマーク(不図示)をカメラなどにより撮像し、その位置を画像認識により検出し、その位置に基づいて、基板Kの表面においてペーストを塗布する位置(塗布位置)を特定する。
【0028】
その後、制御部9は、塗布情報や各種のプログラムに基づいてステージ移動機構3やヘッド移動機構5、調整部8を制御し、塗布ヘッド4のノズル4bとステージ2上の基板Kとを基板Kの面方向に上述によって特定した塗布位置に基づいて相対移動させながら、塗布ヘッド4のノズル4bの先端からペーストを吐出させることによって、ステージ2上の基板Kに矩形の閉ループの塗布パターンPを描画する。
【0029】
このとき、制御部9は、ステージ移動機構3を制御し、ステージ2の移動速度である塗布速度(ステージ2と塗布ヘッド4間の相対速度)を調整し、さらに、調整部8を制御し、塗布ヘッド4の吐出圧力を調整する。また、制御部9は、ヘッド移動機構5を制御し、塗布ヘッド4のノズル4bの先端とステージ2上の基板Kとの離間距離(ギャップ)を調整する。
【0030】
この離間距離の調整の際、制御部9は、距離測定器6により測定された距離を用いて塗布ヘッド4のノズル4bの先端とステージ2上の基板Kとの離間距離を順次求め、求めた離間距離に基づいてヘッド移動機構5を制御し、塗布ヘッド4を上下させる。特に、塗布パターンPの直線部Aでは、基板Kに塗布されるペーストの塗布量を均一にするため、塗布ヘッド4のノズル4bの先端とステージ2上の基板Kとの離間距離を記憶部に記憶されたギャップの適正値に維持する。一方、塗布パターンPのコーナー部Bにおいては、塗布ヘッド4のノズル4bの先端とステージ2上の基板Kとの離間距離を一定にではなく意図的に変化させる。
【0031】
図3に示すように、塗布速度は、塗布パターンPの直線部Aにおいて、ペースト塗布量が均一となる適正値(第1の塗布速度v1)で一定とされ、塗布パターンPのコーナー部Bにおいて、コーナー部Bの入口b1(図4参照)から予め設定された減速度(負の加速度)で下げられ、所定時間t1後、所定値(第2の塗布速度v2)で一定とされ、コーナー部Bの出口b2(図4参照)から予め設定された加速度(正の加速度)で上げられ、所定時間t1後、前述の適正値(第1の塗布速度v1)に戻されて一定とされる。
【0032】
この塗布速度に関して、直線部Aの適正値(第1の塗布速度v1)は、ペースト塗布時間短縮のため、ステージ移動機構3が許容する最高の塗布速度である。また、コーナー部Bの所定値(第2の塗布速度v2)は、経験的あるいは実験的に得られた好ましい塗布速度(例えば、塗布パターンPの線幅や厚さなどが著しく変化しない速度)である。なお、ペースト塗布時間短縮のため、所定時間t1をできるだけ短くすることが好ましいが、その所定時間t1はステージ2の加減速度、すなわちステージ移動機構3のモータ性能に依存する。
【0033】
このような塗布速度の変化に応じて、調整部8に与えられる吐出圧力の制御値が調整される。この吐出圧力の制御値は、塗布パターンPの直線部Aにおいて、ペースト塗布量が均一となる適正値(第1の吐出圧力p1)で一定とされ、塗布パターンPのコーナー部Bにおいて、コーナー部Bの入口b1(図4参照)で所定値(第2の吐出圧力p2)に一気に下げられて一定とされ、コーナー部Bの出口b2(図4参照)で前述の適正値(第1の吐出圧力p1)に一気に上げられて一定とされる。
【0034】
この吐出圧力の制御値に関して、直線部Aの適正値(第1の吐出圧力p1)は、単位時間当たりのペースト吐出量が、基板Kに塗布すべき単位時間当たりのペースト塗布量及び前述の直線部Aの塗布速度(最高速度:第1の塗布速度v1)に基づいて決定され、そのペースト吐出量から求められた制御値である。また、コーナー部Bの所定値(第2の吐出圧力p2)は、前述のコーナー部Bの塗布速度(第2の塗布速度v2)に応じて理論的に得られたペースト吐出量(例えば、塗布パターンPの線幅や厚さなどが著しく変化しないペースト吐出量で、好ましくは、直線部Aとコーナー部Bとで塗布量が均一となる吐出量)から求められた制御値である。
【0035】
前述のようにして吐出圧力の制御値は変更されるが、吐出圧力の実際値(シリンジ4a内のペーストに作用する気体圧力)は、塗布パターンPのコーナー部Bの入口b1(図4参照)において吐出圧力の制御値が第1の吐出圧力p1から第2の吐出圧力p2に切換った時点からコーナー部Bの出口b2(図4参照)にかけて第1の吐出圧力p1から第2の吐出圧力p2まで徐々に下がっていく。次いで、コーナー部Bの出口b2において吐出圧力の制御値が第2の吐出圧力p2から第1の吐出圧力p1に切換った時点から第1の吐出圧力p1まで徐々に上がっていき、所定時間t1+t2後、適正値(第1の吐出圧力p1)に戻って一定となる。この実際値の変化は経験的あるいは実験的に得られる。なおここで、コーナー部Bの出口b2において吐出圧力の実際値が第2の吐出圧力p2に到達するものとしたが、吐出圧力の応答性の良し悪しで、このタイミングは前後する。すなわち、吐出圧力の応答性が良ければ、コーナー部Bの出口b2に到達する前に吐出圧力の実際値が第2の吐出圧力p2に到達するし、吐出圧力の応答性が悪ければ、コーナー部Bの出口b2に到達した時点でも吐出圧力の実際値が第2の吐出圧力p2に満たないこととなる。
【0036】
このような現象は、塗布ヘッド4の実際の吐出圧力が応答遅れにより徐々に変化するためである。すなわち、塗布ヘッド4の吐出圧力を下げる場合には、調整部8により供給気体の圧力(流量)を下げ、塗布ヘッド4のシリンジ4a内の気圧を下げる。また、塗布ヘッド4の吐出圧力を上げる場合には、調整部8により供給気体の圧力(流量)を上げ、塗布ヘッド4のシリンジ4a内の気圧を上げる。このとき、気体の圧縮性のため、応答遅れが生じることから、塗布速度に応じて吐出圧力だけを制御し、ペースト塗布量を一定に維持することは困難である。
【0037】
そこで、塗布ヘッド4のノズル4bの先端とステージ2上の基板Kとの離間距離(ギャップ)も塗布速度の変化と吐出圧力の変化に応じて調整される。このギャップは、塗布パターンPの直線部Aにおいて、ペースト塗布量が均一となる適正値(第1のギャップg1)で一定とされ、塗布パターンPのコーナー部Bにおいては、コーナー部Bの入口b1から所定時間t1を経過するまでの間に第2のギャップg2まで下げられ、所定時間t1経過後、さらに所定時間t2が経過するまでの間に第3のギャップg3まで徐々に上げられる。さらに、所定時間t2経過後のコーナー部Bの出口b2から所定時間t1を経過するまでの間に適正値(第1のギャップg1)よりも大きな第4のギャップg4まで上げられ、所定時間t1経過後、さらに所定時間t2が経過するまでの間に第1のギャップg1まで徐々に下げられ、所定時間t2が経過した以後は、適正値(第1のギャップg1)に戻されて一定とされる。
【0038】
このギャップに関して、直線部Aの適正値(第1のギャップg1)は、前述の直線部Aの塗布速度(最高速度:第1の塗布速度v1)及び第1の吐出圧力p1(第1の吐出圧力p1でのペースト吐出量)に応じて決定されたギャップ値である。また、コーナー部Bでのギャップ(第2から第4のギャップg2〜g4)は、前述のコーナー部Bでの塗布速度(第2の塗布速度v2)及び吐出圧力の実際値(実際のペースト吐出量)に応じて、コーナー部Bのペースト塗布量が直線部Aのペースト塗布量と同じとなるように調整される。
【0039】
具体的には、コーナー部Bの入口b1では、第1の塗布速度v1から第2の塗布速度v2への減速が開始され、吐出圧力の制御値が第1の吐出圧力p1から第2の吐出圧力p2に切換る。そして、所定時間t1経過後に塗布速度が第2の塗布速度v2に達するが、吐出圧力の実際値は未だ第2の吐出圧力p2に達しておらず第1の吐出圧力p1よりも若干低い吐出圧力にある。そのため、吐出圧力の実際値が第2の吐出圧力p2よりも高い分、ノズル4bからのペーストの吐出量が所望する吐出量よりも多く、このままでは、基板Kに塗布されるペーストの塗布量が目標とする塗布量よりも多くなってしまう。そこで、ギャップを第2のギャップg2まで小さくし、ノズル4bからのペーストの吐出抵抗を増加させ、吐出圧力の実際値が第2の吐出圧力p2よりも高いことによる吐出量の過剰分を相殺する。すなわち、吐出抵抗が増加するとノズル4bからのペーストの吐出量が減少するので、吐出圧力の実際値が第2の吐出圧力p2よりも高くても、ギャップを第2のギャップg2とすることで、ペーストの吐出量を所望する吐出量とすることができる。
【0040】
また、所定時間t1に達した時点から所定時間t2が経過する(出口b2)までは、塗布速度が第2の塗布速度v2に保たれる一方、吐出圧力の実際値が第2の吐出圧力p2に向けて徐々に減少する。そのため、ギャップを第2のギャップg2に保ったままでは、吐出圧力の実際値の減少に伴い、ノズル4bからのペーストの吐出量が時間の経過とともに減少し、基板Kに塗布されるペーストの塗布量が徐々に減少してしまう。そこで、この吐出圧力の実際値の減少に伴うペースト吐出量の減少を補うべく、ギャップを第2のギャップg2から第2のギャップg2よりも大きな第3のギャップg3まで徐々に増加させる。これにより、ノズル4bからのペーストの吐出抵抗が徐々に減少するので、その分だけペーストの吐出量が徐々に増加し、吐出圧力の実際値の減少に伴うペースト吐出量の減少が補われる。
【0041】
また、コーナー部Bの出口b2では、塗布速度が第2の塗布速度v2から第1の塗布速度v1への加速が開始され、吐出圧力の制御値が第2の吐出圧力p2から第1の吐出圧力p1に切換る。そして、所定時間t1経過後に塗布速度が第1の塗布速度v1に達するが、吐出圧力の実際値が未だ第1の吐出圧力p1に達しておらず第2の吐出圧力p2よりも若干高い吐出圧力にある。そのため、吐出圧力の実際値が第1の吐出圧力p1よりも低い分、ノズル4bからのペーストの吐出量が所望する吐出量よりも少なく、このままでは、基板Kに塗布されるペーストの塗布量が目標とする塗布量よりも少なくなってしまう。そこで、ギャップを第1のギャップg1よりも大きな第4のギャップg4まで増加させ、ノズル4bからのペーストの吐出抵抗を減少させて、吐出圧力の実際値が第1の吐出圧力p1よりも低いことによる吐出量の不足分を相殺することで、所望する吐出量を得る。
【0042】
所定時間t1に達した時点からは、塗布速度が第1の塗布速度v1に保たれる一方で、さらに所定時間t2が経過するまで、吐出圧力の実際値が第1の吐出圧力p1に向けて徐々に増加する。そのため、ギャップを第4のギャップg4に保ったままでは、吐出圧力の実際値の増加に伴い、ノズル4bからのペーストの吐出量が時間の経過とともに増加し、基板Kに塗布されるペーストの塗布量が徐々に増加してしまう。そこで、この吐出圧力の実際値の増加に伴うペースト吐出量の増加を相殺すべく、ギャップを第4のギャップg4から第1のギャップg1まで徐々に減少させる。これにより、ノズル4bからのペーストの吐出抵抗が徐々に増加するので、その分だけペーストの吐出量が徐々に減少し、吐出圧力の実際値の増加に伴うペースト吐出量の増加が相殺される。
【0043】
これにより、ペースト塗布量が直線部A及びコーナー部Bにわたって均一に維持される(図3参照)。ここで、1つのコーナー部Bに着目すると、第1の直線部Aと、その第1の直線部Aに連続するコーナー部Bと、そのコーナー部Bに連続する第2の直線部Aというようなパターンにおいて、ペースト塗布量が均一に維持される。なお、他の直線部A及びコーナー部Bでも前述と同様な制御が行われる。
【0044】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、ステージ2上の基板Kに対する塗布ヘッド4のノズル4bの対向位置がコーナー部Bに進入する場合、塗布速度を低下させ、塗布ヘッド4がペーストを吐出する吐出圧力を下げるとともに、ステージ2上の基板Kと塗布ヘッド4のノズル4bとの離間距離(ギャップ)を狭くし、ステージ2上の基板Kに対する塗布ヘッド4のノズル4bの対向位置がコーナー部Bから出る場合、塗布速度を上昇させ、塗布ヘッド4がペーストを吐出する吐出圧力を上げるとともに、ステージ2上の基板Kと塗布ヘッド4のノズル4bとの離間距離を広げることによって、コーナー部Bの塗布速度に応じて吐出圧力が変更されるとともに、ステージ2上の基板Kと塗布ヘッド4のノズル4bとの離間距離も変更される。
【0045】
このように、ペースト塗布量を一定に保つため、コーナー部Bの塗布速度に合わせて塗布ヘッド4の吐出圧力を下げる制御に加え、ギャップ制御が行われるので、ペースト塗布量を制御することが容易となり、吐出圧力の応答性が低いことによるペースト塗布量のばらつきが抑えられので、ペースト塗布量のばらつきの発生を確実に防止することができる。また、吐出圧力の応答性の低さからコーナー部Bの入口b1前と出口b2後に必要となっていた加減速距離を不要あるいは短くすることが可能となり、塗布速度が上がった場合でも、その加減速距離が長くなることが抑えられるので、ペースト塗布時間を短縮することができる。
【0046】
また、コーナー部Bにおいて塗布速度が低下して一定(第2の塗布速度v2)になった場合、ステージ2上の基板Kと塗布ヘッド4のノズル4bとの離間距離(ギャップ)を徐々に広げ、コーナー部Bを離脱した後の直線部Aにおいて塗布速度が上がって一定(第1の塗布速度v1)になった場合、ステージ2上の基板Kと塗布ヘッド4のノズル4bとの離間距離を徐々に狭くすることによって、より細かい吐出量の制御が行われるので、ペースト塗布量を精度良く調整することが可能となるので、ペースト塗布量のばらつきの発生をより確実に防止することができる。
【0047】
なお、本発明は、前述の実施の形態に限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、前述の実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0048】
前述の実施の形態においては、塗布ヘッド4のシリンジ4a内の気圧を上昇あるいは下降させることによって、その塗布ヘッド4のノズル4bからのペースト吐出を行っているが、これに限るものではなく、シリンジ4a内に機構、例えばスクリュー状の機構を設け、その機構を稼動させることによってノズル4bにペーストを押し出してそのノズル4bから吐出させるようにしてもよい。この場合にも、機構によって吐出圧力の応答性が高くないものがあるため、前述の実施の形態のような制御を行うことが好ましい。なお、スクリュー状の機構の回転量が制御部9により制御されてペースト吐出量が調整されるので、スクリュー状の機構が調整部8として機能する。
【0049】
また、前述の実施の形態においては、塗布パターンPのコーナー部Bにおいて塗布速度の変化に応じてギャップを直線的に低下あるいは上昇させているが、これに限るものではなく、例えば、塗布速度の変化に応じてギャップを段階的に低下あるいは増加させるようにしてもよい。
【0050】
また、所定時間t2において、吐出圧力の実際値の変化に応じてギャップを直線的に低下あるいは上昇させているが、これに限るものではなく、例えば、吐出圧力の実際値の変化に応じてギャップを段階的に低下あるいは増加させるようにしてもよい。要は、吐出圧力の実際値の変化による吐出量の増加あるいは減少分を相殺するように、ギャップを低下あるいは増加させるようにすれば良い。
【0051】
また、前述の実施の形態においては、ステージ2を移動させてステージ2上の基板Kと塗布ヘッド4のノズル4bとを相対移動させるものとして説明しているが、これに限るものではなく、例えば、ノズル4bを水平方向(X方向及びY方向)に沿って移動させるようにしてもよく、また、ノズル4bをX方向及びY方向のいずれか一方向に移動させ、ステージ2をX方向及びY方向の他方向に移動させるようにしてもよい。
【0052】
また、前述の実施の形態においては、閉ループ状のパターン内でペーストを均一の塗布量で塗布するもので説明しているが、これに限るものではなく、設計などの必要に応じて、パターンの途中で塗布量を増減させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 ペースト塗布装置
2 ステージ
3,5 移動機構(ステージ移動機構,ヘッド移動機構)
4b ノズル
8 調整部
9 制御部
K 塗布対象物(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象物が載置されるステージと、
ペーストを吐出するノズルと、
前記ノズルから前記ペーストを吐出させる吐出圧力を調整する調整部と、
前記ステージと前記ノズルとを前記ステージの面方向及びその面方向に交差する方向に相対移動させる移動機構と、
前記ステージと前記ノズルとを前記面方向に相対移動させ、前記ステージ上の前記塗布対象物に対して、第1の直線部とその第1の直線部に連続するコーナー部とそのコーナー部に連続する第2の直線部とを有するパターンに前記ペーストを描画するように、前記調整部及び前記移動機構を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記パターンの描画中、
前記調整部及び前記移動機構に対し、
前記ステージ上の前記塗布対象物に対する前記ノズルの対向位置が前記第1の直線部から前記コーナー部に進入する場合、前記ステージと前記ノズルとの前記面方向の相対速度を低下させ、前記吐出圧力を下げるとともに、前記ステージ上の前記塗布対象物と前記ノズルとの離間距離を狭くする制御を行い、
前記ステージ上の前記塗布対象物に対する前記ノズルの対向位置が前記コーナー部から前記第2の直線部へ出る場合、前記ステージと前記ノズルとの前記面方向の相対速度を上昇させ、前記吐出圧力を上げるとともに、前記ステージ上の前記塗布対象物と前記ノズルとの離間距離を広げる制御を行うことを特徴とするペースト塗布装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記調整部及び前記移動機構に対し、
前記コーナー部において、前記ステージと前記ノズルとの前記面方向の相対速度を低下させた速度で一定とする制御を行うとともに、この制御中に、前記吐出圧力の減少に対する実際の吐出圧力の応答遅れに応じて前記ステージ上の前記塗布対象物と前記ノズルとの離間距離を徐々に広げる制御を行うことを特徴とする請求項1記載のペースト塗布装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記調整部及び前記移動機構に対し、
前記ノズルの対向位置が前記コーナー部から前記第2の直線部へ出た場合、前記ステージと前記塗布ヘッドとの前記面方向の相対速度を上昇させた速度で一定とする制御を行うとともに、この制御中に、前記吐出圧力の上昇に対する実際の吐出圧力の応答遅れに応じて前記ステージ上の前記塗布対象物と前記ノズルとの離間距離を徐々に狭くする制御をさらに行うことを特徴とする請求項2記載のペースト塗布装置。
【請求項4】
塗布対象物が載置されるステージと、ペーストを吐出するノズルと、前記ノズルから前記ペーストを吐出させる吐出圧力を調整する調整部と、前記ステージと前記ノズルとを前記ステージの面方向及びその面方向に交差する方向に相対移動させる移動機構とを用いて、前記ステージと前記ノズルとを前記面方向に相対移動させ、前記ステージ上の前記塗布対象物に対して、第1の直線部とその第1の直線部に連続するコーナー部とそのコーナー部に連続する第2の直線部とを有するパターンに前記ペーストを描画するペースト塗布方法であって、
前記パターンの描画中、前記調整部及び前記移動機構に対し、
前記ステージ上の前記塗布対象物に対する前記ノズルの対向位置が前記第1の直線部から前記コーナー部に進入する場合、前記ステージと前記ノズルとの前記面方向の相対速度を低下させ、前記吐出圧力を下げるとともに、前記ステージ上の前記塗布対象物と前記ノズルとの離間距離を狭くする制御を行い、
前記ステージ上の前記塗布対象物に対する前記ノズルの対向位置が前記コーナー部から前記第2の直線部へ出る場合、前記ステージと前記ノズルとの前記面方向の相対速度を上昇させ、前記吐出圧力を上げるとともに、前記ステージ上の前記塗布対象物と前記ノズルとの離間距離を広げる制御を行うことを特徴とするペースト塗布方法。
【請求項5】
前記調整部及び前記移動機構に対し、
前記コーナー部において、前記ステージと前記ノズルとの前記面方向の相対速度を低下させた速度で一定とする制御を行うとともに、この制御中に、前記吐出圧力の減少に対する実際の吐出圧力の応答遅れに応じて前記ステージ上の前記塗布対象物と前記ノズルとの離間距離を徐々に広げる制御を行うことを特徴とする請求項4記載のペースト塗布方法。
【請求項6】
前記調整部及び前記移動機構に対し、
前記ノズルの対向位置が前記コーナー部から前記第2の直線部へ出た場合、前記ステージと前記塗布ヘッドとの前記面方向の相対速度を上昇させた速度で一定とする制御を行うとともに、この制御中に、前記吐出圧力の上昇に対する実際の吐出圧力の応答遅れに応じて前記ステージ上の前記塗布対象物と前記ノズルとの離間距離を徐々に狭くする制御をさらに行うことを特徴とする請求項5記載のペースト塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−25229(P2011−25229A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137915(P2010−137915)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】