説明

ホイールの摩滅量測定方法及びホイールの摩滅量測定装置

【課題】フレッチング摩耗によるホイールの車両ハブとの接触面の摩滅量を簡便にかつ精度良く測定する方法とその装置を提供する。
【解決手段】直方体状の当接部材11に、リニアゲージ12の測定子12cが上記当接部材11の当接面11aに垂直な方向に移動可能に取り付けられた摩滅量測定装置10を、測定子12cの先端が摩滅量が大きい領域である円環状の領域内に位置し、かつ、上記当接部材11の当接面11aが、ホイールに設けられたボルト挿入孔のホイール径方向の外側を結ぶ円とホイール径方向の内側を結ぶ円とに囲まれた略円環状の領域に接するように、測定するホイールの車両ハブ取付面に置き、上記測定子12cの上記当接面11aからの突出量を測定して表示させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールの車両ハブ取り付け面の摩滅量を測定する方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、ホイール1を車両ハブ2に取り付けた状態を示す模式図である。
車両ハブ2は、図示しないドライブシャフトが嵌合されるハブ本体2aと、このハブ本体2aから軸方向に突出するフランジ部2bとを備えている。このフランジ部2bには、ホイール1と車両ハブ2とを連結するための複数のボルト2cが、上記フランジ部2bに垂直な方向に、所定の間隔を隔てて円環状に突設されている。
ホイール1は、上記複数のボルト2cを挿入して固定するためのボルト挿入孔1hが所定の間隔を隔てて円環状に形成されたディスク部1aと、このディスク部1aの外縁側に形成されてタイヤ3を搭載するためのリム部1bとを備えており、上記ボルト2cを上記ボルト挿入孔1hに挿入しホイールナット1nに螺入して固定することにより、上記ホイール1と車両ハブ2とを締結する。
ところで、図7(a)に示すように、直進走行時におけるタイヤの荷重中心と、上記ホイール1と車両ハブ2との接続点との間にはオフセットがあるため、図7(b)に示すように、ホイール1のディスク部1aは、路面から上下方向に押し潰されるような力を受ける。その結果、路面に垂直な断面(同図のA−A断面)では、図7(c)に示すように、ディスク部1aが車両ハブ2側に倒れるように変形し、路面に平行な断面(図7(b)のB−B断面)では、図7(d)に示すように、上記ディスク部1aが車両ハブ2側とは反対側に倒れるように変形する。これに対して、ディスク部1aのボルト締結部であるボルト挿入孔1hが形成されている円環状の領域で変形はほとんどない。
車両の走行中には、上記変形による歪が繰り返し発生するため、ホイール1の裏面側の車両ハブ2に当接する面である車両ハブ取付面1Sが摩滅する。このような、上記車両ハブ取付面1Sにおいて、ボルト締結部を振れの中心として遠い部分が摩滅する現象は、一般に、フレッチング摩耗と呼ばれており、特に、トラックやバスなどの重荷重用のホイールにおいて顕著である。
図8は上記車両ハブ取付面1Sにおけるフレッチング摩耗の状態を模式的に示したものである。上記車両ハブ取付面1Sは上記フレッチング摩耗の状態により3つの領域に分けられる。同図の符号Rで示す、ディスク部1aのボルト挿入孔1hのホイール径方向の外側を結ぶ円とホイール径方向の内側を結ぶ円とに囲まれた略円環状の領域(白抜きの領域;以下、領域Rという)は、ほとんど変形しないので、摩滅していない。一方、上記領域Rのホイール径方向の外側の領域である領域Mとホイール径方向の内側の領域である領域Nとは摩滅し、特に、上記領域Rのホイール径方向の外側の領域Mでの摩滅量が大きい。
また、ホイール1の上記領域M,Nは車両ハブ2に密着して回転せず、接触したりしなかったりするので、上記摩滅は更に促進されるとともに、車両ハブ2の上記領域M,Nに対向する部分も摩滅する。長時間の走行により摩滅が進展して上記ディスク部1aの領域M,Nの深さが所定量(例えば、0.35mm)以上になるとホイール1の耐久性が悪化するので、ホイール1を交換する必要がある。
そこで、図9に示すような、ホイール50の車両ハブ2との接触面側で車両ハブ2に設けられたボルト2cを挿入するためのボルト挿入孔50hの外周側に、フレッチング摩耗のインジケータとなる0.3mm〜0.5mmの深さを有する凹部51を形成したホイール50を作製し、上記凹部51の深さの変化からフレッチング摩耗の度合いを推定して当該ホイール50が使用限界に達したかどうかを判定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−91001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記ホイール50の車両ハブ2との接触面側に凹部51を形成する方法では、上記凹部51が摩滅の中心となってしまい、摩滅が早まる恐れがあった。
ホイール50の車両ハブ2との接触面を定盤などの表面が平滑な台上に載せ、検査員が上記接触面と定盤との隙間に隙間ゲージを挿入して、フレッチング摩耗の度合いを測定して評価する方法も考えられるが、上記隙間は0.3mm以下と狭いため、測定を正確に行うにはゲージ枚数の多い精度の高い隙間ゲージを使用しなければならないだけでなく、ある程度の熟練が必要であった。また、上記接触面がうねっている場合などは、摩滅の度合いを評価することができないといった欠点がある。
【0004】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、フレッチング摩耗によるホイールの車両ハブとの接触面の摩滅量を簡便にかつ精度良く測定する方法とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の請求項1に記載の発明は、ディスク面の車両ハブ取付部に所定の間隔を隔てて円環状に配置された複数のボルト挿入孔を備えたホイールにおける車両ハブ取付面の摩滅量を測定する方法であって、上記車両ハブ取付面の、複数のボルト挿入孔のホイール径方向の外側を結ぶ円と上記複数のボルト挿入孔のホイール径方向の内側を結ぶ円とに囲まれた略円環状の領域の作る平面と同一な平面と当該ホイールの上記略円環状の領域の外側に位置する測定点との距離を測定し、この測定された距離を当該ホイールの摩滅量とすることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のホイールの摩滅量測定方法であって、平面状の当接面を有する当接部材を上記略円環状の領域の少なくとも2箇所に当接させるとともに、上記略円環状の領域の外側の部位に、棒状の部材を上記当接面に垂直な方向から接触させて、上記棒状の部材の上記当接面からの突出量を測定することを特徴とする。
【0006】
また、請求項3に記載の発明は、ディスク面の車両ハブ取付部に所定の間隔を隔てて円環状に配置された複数のボルト挿入孔を備えたホイールの車両ハブ取付面の摩滅量を測定するホイールの摩滅量測定装置であって、上記車両ハブ取付面の、複数のボルト挿入孔のホイール径方向の外側を結ぶ円と上記複数のボルト挿入孔のホイール径方向の内側を結ぶ円とに囲まれた略円環状の領域の少なくとも2箇所に当接する当接面を有する当接部材と、この当接部材に搭載された摩滅量計測手段とを備えており、上記摩滅量計測手段は上記当接面に垂直な方向に延長する棒状の接触部材と、上記当接部材に取付けられ上記接触部材を上記当接面に垂直な方向に移動可能に支持する支持部材と、上記棒状の接触部材の移動量を計測する計測手段とを備えていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のホイールの摩滅量測定装置であって、上記当接部材が上記当接面と平行な取付面を備えたブロック状もしくは筒状の部材であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のホイールの摩滅量測定装置であって、上記当接部材が長方形状の当接面を有していることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のホイールの摩滅量測定装置であって、上記当接部材が円環状の当接面を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、平面状の当接面を有する当接部材の当接面のような、上記ボルト挿入孔のホイール径方向の外側を結ぶ円とホイール径方向の内側を結ぶ円とに囲まれた略円環状の領域を含む平面と上記略円環状の領域の外側の部位に位置する測定点との距離を、測定子となる棒状の部材を上記当接面に垂直な方向から上記測定点に接触させて、上記棒状の部材の上記平面からの突出量を測定し、この測定された距離を当該ホイールの摩滅量としたので、フレッチング摩耗によるホイールの車両ハブとの接触面の摩滅量を簡便にかつ精度良く測定することができる。
このとき、上記当接部材に上記当接面と平行な取付面を設け、この取付面に上記測定子を垂直な方向に移動可能に取り付けるようにすれば、上記棒状の部材を上記当接面に対して容易に垂直に配置することができる。
また、上記当接部材の当接面を長方形状とすれば、装置を軽量化できるとともに、装置の扱いや持ち運びが容易となる。
また、当接面の形状を円環状とすれば、当接部材に複数の測定子を取り付けることができるので、多数の箇所を一回で測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
図1は、本最良の形態に係るホイールの摩滅量測定装置10を示す図で、同図において、11は当接部材、12は摩滅量計測手段であるリニアゲージ、13はこのリニアゲージ12を支持する支持部材である。
当接部材11は直方体状の部材で、同図の11aで示す下側の面が当接面である。この当接面11aは、ホイール磨滅量の測定時において、ホイール1の裏面側にある車両ハブと当接する面(車両ハブ取付面)に当接する平滑な平面である。また、同図の11bで示す上側の面がリニアゲージ12を取り付けるための取付面で、上記当接面11aと上記取付面11bとは互いに平行な面である。上記当接部材11の一方の端部側には、上記当接面11aに垂直な貫通孔11pと上記当接面11aに垂直な穴部11qとが形成されている。上記貫通孔11pは後述するリニアゲージ12の測定子12cが移動するためのものであり、上記穴部11qは後述する支持部材13の支柱13aを嵌入するためのものである。
リニアゲージ12は、センサ部12Aと計測部12Bと表示部12Cとを備えている。図2(a)はセンサ部12Aの基本構成を示す図で、12aは箱状の収納体、12bはシリンダ、12cは棒状の測定子、12dはバネ部材である。上記測定子12cは上記シリンダ12b内を移動するピストン12eを備えており、上記ピストン12eと上記シリンダ12bの底面12kとの間には、上記ピストン12cをその突出方向に付勢するバネ部材12dが配置されている。また、上記シリンダ12bの上記底面とは反対側の端部は上記収納体12aから外部に突出しており、上記測定子12cの両端は上記シリンダ12bの底面12k及び上記底面とは反対側から上記シリンダ12bの外側に突出している。
上記測定子12cは、フリーな状態では、その一端が上記収納体12aから長さL0だけ突出した状態にある。上記リニアゲージ12は、図2(b)に示すように、通常は、後で説明する支持部材13に相当するスタンド13Dに、上記測定子12cの軸方向が上記スタンド13Dが置かれる基準面S0に垂直になるように取り付けられている。上記測定子12cの先端が上記基準面S0に接した時の上記測定子12cを突出量Ls(Ls<L0)とし、図2(c)に示すように、上記測定子12cの先端が測定面Sに接した時の上記測定子12cの突出量をLとすると、L−Lsが基準面S0と測定面Sとの段差となる。
上記測定子12cの他端側には基準位置を示すマーク12mが設けられている。計測部12Bでは、例えば、光学センサ等のセンサを用いて、上記測定子12cの突出量に応じて移動する上記マーク12mの位置を読み取って、上記Lと上記Lsとを計測するとともに、L−Lsを算出する。表示部12Cでは、上記算出された(L−Ls)の数値をLCDなどの表示器(図示せず)に表示する。
支持部材13は支柱13aと支持片13bとを備えている。上記支柱13aはその一端が上記当接面11aに垂直な穴部11qに挿入される上記当接面11aに垂直に延長する円柱状の部材で、上記支持片13bは上記リニアゲージ12のシリンダ12bが嵌入される第1の貫通孔13cと上記支柱13aが嵌入される第2の貫通孔13dとが形成されたブロック状の部材である。
【0009】
次に、上記構成の摩滅量測定装置10を用いてホイールの車両ハブ取付面の摩滅量を測定する方法について説明する。
図8に示すように、ホイール1の車両ハブとの接触面である車両ハブ取付面1Sは、ディスク部1aのボルト挿入孔1hのホイール径方向の外側を結ぶ円とホイール径方向の内側を結ぶ円とに囲まれた略円環状の領域Rでは摩滅量がほぼ0mmである。一方、上記領域Rのホイール径方向の外側の円環状の領域Mとホイール径方向の内側の円環状の領域Nとは摩滅している。本例では、摩滅量が大きい領域である、領域Rのホイール径方向の外側の円環状の領域Mの摩滅量を測定する場合について説明する。
はじめに、図3(a)に示すように、摩滅量測定装置10を表面が平滑に仕上げられた定盤20の基準面20a上に置いて、原点だし(ゼロセット)を行う。当接部材11の当接面11aも平滑な平面であるので、上記基準面20aと上記当接面11aとの間には隙間がない。したがって、上記定盤20の基準面20aに当接するリニアゲージ12の測定子12cは先端の位置は上記当接面11aの位置となるので、このときの測定子12cの先端位置を基準位置とする。すなわち、表示器12Cには、測定子12cの先端が上記位置にあるときに、深さが「0mm」であると表示される。
また、図3(b)に示すように、摩滅量を計測するホイール1を、車両ハブ取付面1Sが上側にくるように、計測台30上に置き、上記車両ハブ取付面1Sのさびや汚れを除去する。なお、上記車両ハブ取付面1Sのさびや汚れは、ホイール1を計測台30上に置く前に予め除去しておいてもよい。
次に、図3(c),(d)に示すように、上記ホイール1の車両ハブ取付面1Sに摩滅量測定装置10を載せる。なお、上記図3(d)では、摩滅した箇所を明確にするため、領域Rと領域Mとの段差、及び、領域Rと領域Nとの段差を拡大して表示している。
摩滅量測定装置10を上記ホイール1の車両ハブ取付面1Sに載せる際には、リニアゲージ12の測定子12cを、上記摩滅量が大きい領域である円環状の領域M内に位置するようにするとともに、図3(d)の符号12pで示す、上記当接部材11の当接面11aの上記測定子12cよりも長さ方向中央側に位置する部分と、図3(d)の符号12qで示す、上記当接部材11の上記測定子12cとは反対側の端部近傍とが、上記摩滅量が0である円環状の領域R内に位置するようにすればよい。このとき、当接部材11の側面11cに、上記測定子12cの取付け位置を示す「ケガキ線」11Lを予めつけておけば、上記測定子12cの先端を確実に上記円環状の領域M内に位置させることができる。
これにより、上記当接部材11の当接面11aは、円環状の領域Rの作る平面上に位置し、かつ、上記測定子12cの先端は上記当接面11aからホイール1の車両ハブ取付面1S側に突出して、上記円環状の領域Mの表面に当接する。このとき、上記測定子12cの突出量はその表示部12C(図1参照)に表示される。この突出量はホイール1の車両ハブ取付面1Sの摩滅量そのものである。したがって、ホイール1の車両ハブ取付面1Sに摩滅量測定装置10を載せるという簡単な操作だけで、ホイール1の車両ハブ取付面1Sの摩滅量を測定することができる。
摩滅の度合いの判定は、上記摩滅量測定装置10を載せる位置を適宜ずらして、上記円環状の領域Mの複数点の摩滅量を計測し、その最大摩擦量を検出し、この検出された最大摩擦量が所定の値(例えば、0.35mm)以上である場合、ホイール1が限界摩滅量を超えていると判定する。
【0010】
このように、本最良の形態によれば、直方体状の当接部材11に、リニアゲージ12の測定子12cが上記当接部材11の当接面11aに垂直な方向に移動可能に取り付けられた摩滅量測定装置10を、測定子12cの先端が摩滅量が大きい領域である円環状の領域M内に位置し、かつ、上記当接部材11の当接面11aが、ホイール1のボルト挿入孔1hのホイール径方向の外側を結ぶ円とホイール径方向の内側を結ぶ円とに囲まれた略円環状の領域Rに接するように、測定するホイール1の車両ハブ取付面1Sに置き、上記測定子12cの上記当接面11aからの突出量を測定して表示させるようにしたので、簡単な操作で、ホイール1の車両ハブ取付面1Sの摩滅量を精度良く測定することができる。
【0011】
なお、上記最良の形態では、リニアゲージ12の測定子12cを、ディスク部1aのボルト挿入孔1hのホイール径方向の外側を結ぶ円とホイール径方向の内側を結ぶ円とに囲まれた略円環状の領域Rの外側の、摩滅量が大きい領域である円環状の領域M内に位置するように、摩滅量測定装置10を置いた場合について説明したが、上記測定子12cを上記円環状の領域Rの内側の摩滅量が比較的小さな円環状の領域N内に位置させて測定すれば、ディスク部1aのボルト挿入孔1hのホイール径方向の内側の摩滅量についても測定することができる。なお、この場合には、上記当接部材11の当接面11aの両端面近傍が上記領域Rに当接する。
また、上記例では、摩滅量計測手段としてリニアゲージ12を用いたが、例えば、ダイヤルゲージなどのように、測定子を移動もしくは伸縮させてその移動量もしくは伸縮量を測定する構成のゲージであれば他のゲージを用いてもよい。あるいは、マイクロメータヘッドのような計測器を当接部材11に搭載し、上記マイクロメータヘッドのスピンドルを上記当接面11aから突出させ、上記スピンドルの先端部が上記摩滅量が大きい領域である円環状の領域Mの表面に当たった時の突出量を測定してもよい。
また、上記例では、当接部材11の形状を当接面11aが長方形である直方体状としたが、図4(a),(b)に示すように、当接面11aを円環状もしくは三角形などの多角形状としてもよい。要は、当接部材11の当接面11aが平滑な平面であって、かつ、測定子12cが上記当接面11aに垂直に配置されるような構成であればよい。なお、測定は、当接面11aが長方形であるものの方が軽量で扱い易くまた持ち運びも便利である。一方、当接面11aの形状を円環状、もしくは、多角形状とすれば、装置自体は大きくなるが、当接部材11を安定して車両ハブ取付面1Sに設置できるだけでなく、当該当接部材11にリニアゲージ12を複数個取り付けることができるので、多数の箇所を一回で測定することができるという利点がある。なお、当接面11aの形状を円環状、もしくは、多角形状の当接部材11に取り付けるリニアゲージ12を1個とし、この当接部材11を回転させながら測定するように構成することも可能である。
また、当接部材11に代えて、円環状の領域Rの3点でそれぞれ接触する支持点を有するブロックを用い、このブロックに、測定子12cが上記3つの支持点を構成する面と垂直に配置されるようにリニアゲージ12を取り付けた構成としてもよい。
また、上記例では、リニアゲージ12を当接部材11に固定したが、リニアゲージ12を当接部材11に、上記当接面11aに垂直な方向と平行な回転軸回りに回転可能に取り付けてもよい。これにより、当接部材11を動かすことなく、複数の箇所の摩滅量を測定することができる。
また、当接部材11と支持部材13とを省略するとともに、リニアゲージ12をスタンドに固定するとともに、スタンドの椀部の長さを可変にして、上記円環状の領域R内の点の高さと上記円環状の領域M内の点の高さまたは上記円環状の領域N内の点の高さを測定し、その差からホイール1の車両ハブ取付面1Sの摩滅量を測定してもよい。
【0012】
また、上記例では、摩滅量測定装置10によりホイール1の車両ハブ取付面1Sの摩滅量を測定する場合について説明したが、本発明の摩滅量測定装置10は、車両ハブ2のホイール接触面の摩滅量についても測定可能である。
すなわち、車両ハブ2のフランジ部2bでも、ホイール1と同様に、ホイール1と車両ハブ2とを連結ボルト2cの外側が摩滅する。このとき、図5(a)に示すように、上記連結ボルト2cの外側には、ホイール1のボルト挿入孔1hに相当する三日月状の部分2Rが摩滅せずに残る。したがって、この三日月状の部分2Rとその周囲との段差とを摩滅量測定装置10を用いて測定すれば、車両ハブ2のホイール接触面の摩滅量がわかる。
上記連結ボルト2cの延長方向は摩滅前のフランジ部2bの面に垂直であるので、図5(b),(c)に示すように、摩滅量測定装置10の当接部材11の側面11cを隣接する2つの連結ボルト2cに沿わせて配置すれば、上記当接部材11の当接面11aは上記三日月状の部分2Rの作る平面と平行になる。したがって、測定子12cを上記三日月状の部分2Rの外側の摩滅が大きい部分に位置させるとともに、上記当接面11aを上記三日月状の部分2Rに当接させれば、上記測定子12cは上記三日月状の部分2Rの作る平面と上記摩滅が大きい部分との距離に相当するだけ上記当接面11aから突出する。この突出量は摩滅量測定装置10の表示部12C(図1参照)に表示される。したがって、簡単な操作で、車両ハブ2の摩滅量を測定することができる。
なお、摩滅の度合いの判定は、連結ボルト2c毎に摩滅量を計測し、その最大摩擦量を検出し、この検出された最大摩擦量が所定の値以上である場合は、取り付けるホイールが新品であってもホイールの耐久強度が低下するので、ハブ点検を行う必要があると判定する。
【産業上の利用可能性】
【0013】
このように、本発明によれば、フレッチング摩耗によるホイールの車両ハブとの接触面の摩滅量を簡便にかつ精度良く測定することができるので、ホイールの摩滅検査の効率を向上させることができる。また、ホイールの交換時期を容易にかつ精度良く判定することができるので、車両の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の最良の形態に係るホイールの摩滅量測定装置を示す図である。
【図2】センサ部の基本構成を示す図である。
【図3】本最良の形態に係るホイールの摩滅量の測定方法を示す図である。
【図4】本最良の形態に係るホイールの摩滅量測定装置の他の例を示す図である。
【図5】車両ハブの摩滅量の測定方法の一例を示す図である。
【図6】ホイールを車両ハブに取り付けた状態を示す模式図である。
【図7】走行時におけるホイールの変形状態を示す図である。
【図8】ホイールの車両ハブ取付面におけるフレッチング摩耗の状態を模式的に示した図である。
【図9】従来のホイールの摩滅量の判定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0015】
1 ホイール、2 車両ハブ、1S 車両ハブ取付面、1a ディスク部、
1b リム部、1h ボルト挿入孔、10 ホイールの摩滅量測定装置、
11 当接部材、11a 当接面、11b 取付面、11c 側面、11p 貫通孔、
11q 穴部、11L ケガキ線、12 リニアゲージ、12A センサ部、
12B 計測部、12C 表示部、12a 収納体、12b シリンダ、
12c 測定子、12d バネ部材、12m マーク、13 支持部材、
13D スタンド、13a 支柱、13b 支持片、13c 第1の貫通孔、
13d 第2の貫通孔、20 定盤、20a 定盤の基準面、30 計測台。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク面の車両ハブ取付部に所定の間隔を隔てて円環状に配置された複数のボルト挿入孔を備えたホイールにおける車両ハブ取付面の摩滅量を測定する方法であって、上記複数のボルト挿入孔のホイール径方向の外側を結ぶ円と上記複数のボルト挿入孔のホイール径方向の内側を結ぶ円とに囲まれた略円環状の領域の作る平面と同一な平面と当該ホイールの上記略円環状の領域の外側に位置する測定点との距離を測定し、この測定された距離を当該ホイールの摩滅量とすることを特徴とするホイールの摩滅量測定方法。
【請求項2】
平面状の当接面を有する当接部材を上記略円環状の領域の少なくとも2箇所に当接させるとともに、上記略円環状の領域の外側の部位に、棒状の部材を上記当接面に垂直な方向から接触させて、上記棒状の部材の上記当接面からの突出量を測定することを特徴とする請求項1に記載のホイールの摩滅量測定方法。
【請求項3】
ディスク面の車両ハブ取付部に所定の間隔を隔てて円環状に配置された複数のボルト挿入孔を備えたホイールにおける車両ハブ取付面の摩滅量を測定する装置であって、上記車両ハブ取付面の、ボルト挿入孔のホイール径方向の外側を結ぶ円と上記ボルト挿入孔のホイール径方向の内側を結ぶ円とに囲まれた略円環状の領域の少なくとも2箇所に当接する当接面を有する当接部材と、この当接部材に搭載された摩滅量計測手段とを備えており、上記摩滅量計測手段は上記当接面に垂直な方向に延長する棒状の接触部材と、上記当接部材に取付けられ上記接触部材を上記当接面に垂直な方向に移動可能に支持する支持部材と、上記棒状の接触部材の移動量を計測する計測手段とを備えていることを特徴とするホイールの摩滅量測定装置。
【請求項4】
上記当接部材は上記当接面と平行な取付面を備えたブロック状もしくは筒状の部材であることを特徴とする請求項3に記載のホイールの摩滅量測定装置。
【請求項5】
上記当接部材は長方形状の当接面を有していることを特徴とする請求項4に記載のホイールの摩滅量測定装置。
【請求項6】
上記当接部材は円環状当接面を有していることを特徴とする請求項4に記載のホイールの摩滅量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−143443(P2009−143443A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323661(P2007−323661)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】