説明

ホログラム記録材料用組成物、ホログラム記録媒体およびその製造方法

【課題】屈折率変調、波長選択性および耐久性に優れた体積型ホログラム記録材料用組成物、ホログラム記録媒体、体積型ホログラムの製造法を提供。
【解決手段】ガラス転移温度が40から200℃であり、数平均分子量が1万から100万である、式(I)で表されるバインダーポリマー(A)、ラジカル重合性物質(B)、ラジカル重合開始剤(C)を含む体積位相型ホログラム記録材料用のフォトポリマー組成物。式中のRkおよびRlは、H、飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素または複素芳香族炭化水素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積位相型ホログラム記録材料用のフォトポリマー組成物、同組成物を用いるホログラム記録媒体の製造方法および同方法で得られる記録媒体に関するものである。 本発明は、より詳しくは、バインダーポリマーとして高いガラス転移点を有するカルボン酸ビニルポリマーを含むホログラム記録材料用組成物に関するものである。本発明に係るホログラム記録材料用組成物は、高い耐久性および十分な記録性を持つホログラム記録材料を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
体積型ホログラムは、コヒーレンス性(可干渉性)の高い光によって形成される光の明暗の干渉パターンを屈折率変調によって感光材料等に記録するものである。
【0003】
体積型ホログラムは、物体を三次元で表現でき、高い回折効率、波長選択性を持つこと、高度な製造技術が必要であることから、意匠用途、セキュリティー用途、光学素子用途として幅広く利用されている。中でも湿式現像処理を必要としない乾式フォトポリマーは、同ポリマーを用いて簡単に乾式処理だけで体積型ホログラムを作製できるため、好んで用いられている。
【0004】
このような乾式処理タイプの体積型ホログラム記録材料が、特許文献1、特許文献2などで提案されている。しかし、これらの材料は、特に重要な性能である屈折率変調という点で湿式現像処理を必要とする感光材料には及ばなかった。その改良技術として、例えば、特許文献3や特許文献4が提案されているが、これらは、屈折率変調能を向上させるために非反応性の可塑剤などを使用するため、形成されたホログラムの皮膜強度に問題があった。
【0005】
その後、上記の問題を解決するため特許文献5が提案されているが、これは、カチオン重合性の可塑剤を硬化させるための酸発生剤が使用されており、作製されたホログラム中に酸が残るため耐久性に問題点を有しており、屈折率変調も十分でなかった。
【特許文献1】米国特許第3658526号明細書
【特許文献2】米国特許第3993485号明細書
【特許文献3】米国特許第4942102号明細書
【特許文献4】米国特許第4942112号号明細書
【特許文献5】特許2873126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の上記問題を解決すべく、屈折率変調、波長選択性および耐久性に優れた体積型ホログラムを作製することができるホログラム記録材料用組成物、ホログラム記録媒体、およびそれを用いた体積型ホログラムの製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、体積位相型ホログラム記録材料用のフォトポリマー組成物において、ガラス転移温度が40から200℃であり、数平均分子量が1万から100万である、下記一般式(I)で表されるバインダーポリマー(A)、ラジカル重合性物質(B)、ラジカル重合開始剤(C)を含むホログラム記録材料用組成物に関する。
【化1】

【0008】
式中のRkおよびRlは、同一または異なり、水素原子、飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素芳香族炭化水素基である。これらの基はハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、低級アルキルシリル基、アシル基またはエステル基を置換基として有していてもよい。mおよびnは自然数であり、繰り返しユニットの数を表し、バインダーポリマー(A)の数平均分子量が1万から100万の範囲に入るような値である。
【0009】
好ましいバインダーポリマー(A)は、ポリ(シクロヘキサノイルオキシエチレン)、ポリ(ピバロイルオキシエチレン)またはポリ(ベンゾイルオキシエチレン)であり、これらは上記のような置換基を有していてもよい。
【0010】
本発明は、また、上記のような構成のホログラム記録材料用組成物または同組成物を溶媒に溶かした溶液を基板上に塗布し、溶剤を蒸発させ、基板上に上記組成物からなる記録層を形成するホログラム記録媒体の製造方法にも関し、さらに上記製造方法で得られたホログラム記録媒体にも関する。
【発明の効果】
【0011】
上記のような体積型ホログラム記録用組成物を用いることにより、屈折率変調、波長選択性および耐久性に優れた体積型ホログラムを容易に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに本発明の好ましい実施形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0013】
まず、一般式(I)で表されるバインダーポリマー(A)は、ホログラム記録材料用組成物の成膜を可能にするため、およびホログラム記録により感光層内に形成された干渉縞を維持するために用いられる。したがって、これは作製されたホログラムの耐熱性や耐久性に密接に関係している。また、これはホログラムにおいて非常に重要な物性である屈折率変調にも大きな影響を与える。
【0014】
バインダーポリマー(A)は、ラジカル重合性物質(B)、およびラジカル重合開始剤(C)との相溶性が良く、感光層を失透させないものである。
【0015】
一般式(I)におけるRkおよびRlとしての飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基すなわち、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル等のアルキル基、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間三重結合のような炭素−炭素間不飽和基を有する脂肪族炭化水素基、すなわちビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル等のアルケニル基、またはエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル等のアルキニル基であってよい。RkおよびRlとしての脂肪族炭化水素基の炭素数は特に制限はないが、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜20である。また、脂肪族炭化水素基は環状であってもよく、環の員数は好ましくは3〜10、より好ましくは5〜7である。
【0016】
一般式(I)におけるRkおよびRlとしての芳香族炭化水素基は、3〜8の員数からなる単環式芳香族炭化水素基またはそれらが2以上縮環した多環式芳香族炭化水素基であり、例として、フェニル、ナフチル、フェナンシル、アントラニルなどが挙げられる。
【0017】
一般式(I)におけるRkおよびRlとしての芳香族複素環基のヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、リン、セレンなどであってよい。また、複素環基は環内にカルボニル基を有してもよい。 芳香族複素環基の例としては、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアゾリルなどが挙げられる。
【0018】
飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素芳香族炭化水素基は、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、炭素数1〜6のモノ、ジもしくはトリアルキルシリル基、アセチル、トルオイルなどのアシル基(アルカノイル、アリールカルボニル)、プロピオニルオキシなどのエステル基(アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アシルオキシ)を置換基として有していてもよい。
【0019】
バインダーポリマー(A)は、ホモポリマーであってもよいし、異なる幾つかの繰り返しユニットから成るコポリマーであってもよく、さらには2種類以上のポリマーを組み合わせたポリマーブレンドでもよい。
【0020】
バインダーポリマー(A)の具体例としては、ポリ(ベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(4−ブロモベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(3−ブロモベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(4−t−ブチルベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(2−クロロベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(3−クロロベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(4−クロロベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(シクロヘキサノイルオキシエチレン)、ポリ(4−エトキシベンゾイルオキシエチレン)、ポリ[(2−エチル−2,3,3−トリメチルブチリルオキシ)エチレン]、ポリ(イソニコチノイルオキシエチレン)、ポリ(4−イソプロピルベンゾイルオキシエチレン)、ポリ[(2−イソプロピル−2,3−ジメチルブチリルオキシ)エチレン]、ポリ[(2−メトキシベンゾイルオキシ)エチレン]、ポリ[(4−メトキシベンゾイルオキシ)エチレン]、ポリ[(4−メチルベンゾイルオキシ)エチレン]、ポリ[(1−メチルシクロヘキサノイルオキシ)エチレン]、ポリ(ニコチノイルオキシエチレン)、ポリ[(3−ニトロベンゾイルオキシ)エチレン]、ポリ[(4−ニトロベンゾイルオキシ)エチレン]、ポリ[(4−フェニルベンゾイルオキシ)エチレン]、ポリ(ピバロイルオキシエチレン)、ポリ[(4−プロピオニルオキシベンゾイルオキシ)エチレン]、ポリ[(2,2,3,3−テトラメチルバレリルオキシ)エチレン]、ポリ[(トリフルオロアセトキシ)エチレン]、ポリ[(3−トリメチルシリルベンゾイルオキシ)エチレン]、ポリ[(4−トリメチルシリルベンゾイルオキシ)エチレン]、ポリ[(1−アセチルインダゾール-3−イルカルボニルオキシ)エチレン]、ポリ[(ペンタフルオロプロピオニルオキシ)エチレン]、ポリ[(4−p−トルオイルブチリルオキシ)エチレン]、ポリ[(ウンデカフルオロヘキサノイルオキシ)エチレン]などが挙げられ、これらを1種類以上使用して良い。
【0021】
特に好ましく用いることができるバインダーポリマー(A)としては、ポリ(シクロヘキサノイルオキシエチレン)、ポリ(ピバロイルオキシエチレン)、ポリ(ベンゾイルオキシ)エチレンが挙げられる。
【0022】
バインダーポリマー(A)の使用量は、バインダーポリマー(A)とラジカル重合性物質(B)とラジカル重合開始剤(C)の合計量に対して、好ましくは10〜85重量%、より好ましくは20〜70重量%である。
【0023】
つぎに、本発明で用いられるラジカル重合性物質(B)は、バインダーポリマー(A)やラジカル重合開始剤(C)と相溶性が良いものであればよく、エチレン性不飽和二重結合を有するアクリレートモノマー、メタクリルモノマー、ビニルモノマー、およびこれらの2以上の組み合わせからなる群より選ばれるものであってよい。
【0024】
(メタ)アクリルモノマーの例として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシ(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、9H−カルバゾール−9−エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ビス(4−(メタ)アクリロイルチオフェニル)スルフィド、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル等が挙げられる。また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよい。
【0025】
ビニルモノマーの例として、ビニルアセテート、4−ビニルアニリン、9−ビニルアントラセン、9−ビニルカルバゾール、4−ビニルアニソール、ビニルベンズアルデヒド、ビニルベンゾエイト、ビニルベンジルクロライド、4−ビニルビフェニル、ビニルブロマイド、N−ビニルカプロラクタム、ビニルクロロホルメート、ビニルクロトネート、ビニルシクロヘキサン、4−ビニル−1−シクロヘキセンジエポキサイド、ビニルシクロペンタン、ビニルデカノエート、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビニルカルボネート、ビニルトリチオカルボネート、ビニル 2−エチルヘキサノエート、ビニルフェロセン、ビニリデンクロライド、ビニルホルメート、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルナフタレン、ビニルネオデカノエート、5−ビニル−2−ノルボルネン、4−(ビニルオキシ)ブチルベンゾエート、2−(ビニルオキシ)エタノール、4−ビニルフェニルアセテート、ビニルピバレート、ビニルプロピオネート、2−ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリジノン、ビニルスルホン、ビニルトリメチルシラン、ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド等が挙げられる。 また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよい。
(メタ)アリルモノマーの例として、(メタ)アリルフェニルスルホン、(メタ)アリルエトキシシラン、(メタ)アリルトリメトキシシラン、(メタ)アリル 2,4,6−トリブロモフェニルエーテル、2,2’−ジ(メタ)アリルビスフェノールA、ジ(メタ)アリルジメチルシラン、ジ(メタ)アリルジフェニルシラン、ジ(メタ)アリルフェニルフォスフィン、ジ(メタ)アリルフタレート、ジ(メタ)アリルジカルボネイト、ジ(メタ)アリルサクシネイト等が挙げられる。 また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよい。
【0026】
ラジカル重合性化合物(B)として好ましいのは、フェノキシエチルアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシ(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレートである。
【0027】
ラジカル重合性化合物(B)の使用量は、バインダーポリマー(A)とラジカル重合性物質(B)とラジカル重合開始剤(C)の合計量に対して、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは25〜60重量%である。
【0028】
つぎに、本発明で用いられるラジカル重合開始剤(C) としては、例えば、カルボニル化合物、有機錫化合物、アルキルアリールホウ素塩、オニウム塩類、鉄アレーン錯体、トリハロゲノメチル置換トリアジン化合物、有機過酸化物、ビスイミダゾール誘導体、チタノセン化合物等が使用される。
【0029】
上記化合物として、例えばベンジル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、トリブチルベンジル錫、テトラブチルアンモニウム・トリフェニルブチルボレート、トリフェニル−n−ブチルボレート、ジフェニルウヨードニウム塩、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)、トリス(トリクロロメチル)トリアジン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレイト、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾリル、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムが例示できる。これらは単独で用いても2以上の組み合わせで用いてもよい。
【0030】
ラジカル重合開始剤(C)の使用量は、バインダーポリマー(A)とラジカル重合性物質(B)とラジカル重合開始剤(C)の合計量に対して、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0031】
また、必要に応じてラジカル重合開始剤(C)に光増感色素を組み合わせて用いても良い。
【0032】
本発明で任意に用いられる光増感色素としては、ホログラム記録時に使用するレーザー:He−Ne(波長633nm)、Ar(波長515,488nm)、YAG(波長532nm)He−Cd(波長442nm)等のレーザー光を吸収するものが好ましく、中でもラジカル重合開始剤(C)に対して分光増感作用を示すものがより好ましい。
【0033】
このような光増感色素としては、例えば、ミヒラケトン、アクリジンイエロー、メロシアニン、メチレンブルー、カンファーキノン、エオシン、脱カルボキシル化ローズベンガル等が好適に使用される。光増感色素は、可視領域の光に吸収を示すものであればよく、上記以外に、例えば、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、フタロシアニン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、アクリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、キノロン誘導体、スチルベン誘導体、オキサジン誘導体、チアジン系色素等も使用可能であり、更には「色素ハンドブック」(大河原信他編、講談社、1986年)、「機能性色素の化学」(大河原信他編、シーエムシー、1983年)、「特殊機能材料」(池森忠三郎他編、シーエムシー、1986年)に記載される光増感色素も用いることができる。これらは単独で用いても2以上の組み合わせで用いてもよい。
【0034】
好ましく用いられる光増感色素としては、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、ケトクマリン誘導体、p−アミノフェニル不飽和ケトンが挙げられる。
【0035】
特に好ましく用いられる光増感色素としては、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、2,5−ビス〔(4−ジエチルアミノ)−2−メチルベンジリデン〕シクロペンタノンが挙げられる。
【0036】
光増感色素の使用量は、バインダーポリマー(A)とラジカル重合性物質(B)とラジカル重合開始剤(C)の合計量に対して、好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0037】
本発明によるホログラム記録材料組成物は、必要に応じて、可塑剤、増粘剤、熱重合禁止剤、連鎖移動剤等の添加剤や、溶剤等を含むことができる。
可塑剤は、バインダーポリマー(A)、ラジカル重合性物質(B)、およびラジカル重合開始剤(C)と非反応性の化合物であり、相溶性の良いものを用いる。可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジオクチルフタレートに代表されるフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジメチルセバケート、ジエチルセバケート、ジブチルセバケート、ジエチルサクシネートに代表される脂肪族二塩基酸エステル類;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートに代表される正リン酸エステル類;グリセリルトリアセテート、2−エチルヘキシルアセテートに代表される酢酸エステル類;トリフェニルホスファイト、ジブチルハイドロジエンホスファイトに代表される亜リン酸エステル類等の不活性化合物が例示される。可塑剤は上記例示物を単独で用いても2以上の組み合わせで用いてもよい。
増粘剤は、バインダーポリマー(A)、ラジカル重合性物質(B)、ラジカル重合開始剤(C)、およびその他の添加剤と相溶性が良いものを用い、膜の強度などの物性の改良目的でも使用する。
【0038】
増粘剤としてはシリカゲルのような無機微粒子(例えばダイソー社製の「ダイソーゲルSPシリーズ」、富士シリシア化学社製の「サイリシア」や「フジシリカゲル」、シオノギ製薬社製の「カープレックス」、日本アエロジル社製の「アエロジル」、扶桑化学工業社製の「超高純度コロイダルシリカ」、「高純度オルガノゾル」、トクヤマ社製の「レオロシール」、「トクシール」、「ファインシール」等)や、有機微粒子(例えば特開平10−72510、特開平10−310684各公報に記載の方法で作製され得るジアリルフタレート系ポリマー、若しくは「新材料シリーズ『超微粒子ポリマーの最先端技術』」(シーエムシー、室井宗一監修、1991年)に記載のある花王社製「PB,200シリーズ」、鐘紡社製「ベルパールシリーズ」、積水化成品社製「テクポリマーシリーズ」、積水ファインケミカル社製「ミクロパールシリーズ」、綜研化学社製「MRシリーズ」「MPシリーズ」等)が好ましい。
【0039】
ラジカル重合開始剤(C)によっては貯蔵安定性、特に暗所貯蔵安定性のよくないものがあるので、その場合には熱重合禁止剤を貯蔵安定剤として使用してもよい。
【0040】
熱重合禁止剤の例としては、生成した重合活性種を消去する働きのある、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、ナフチルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0041】
連鎖移動剤は、ラジカル重合開始剤(C)より生じたラジカルをより重合活性の高いラジカルへと変換するために用いられる場合がある。
【0042】
連鎖移動剤の例としては、α−メチルスチレンダイマー、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアゾリルジスルフィド、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0043】
可塑剤、増粘剤、熱重合禁止剤、連鎖移動剤等の添加剤の使用量は、目的とするホログラムに応じて適宜選定される。
【0044】
溶媒は、粘度調整、相溶性調節の外、製膜性等を向上させるために有効であり、例えば、アセトン、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、等の有機溶剤がよく用いられる。しかしながら、水は、粘度調整、相溶性調節、成膜性等を阻害するので使用できない。水はエマルジョン形態でも媒質として使用できない。
【0045】
溶剤の使用量は、バインダーポリマー(A)、ラジカル重合性物質(B) 、ラジカル重合開始剤(C)、および任意に含まれる添加剤の合計100重量部に対して好ましくは1〜1500重量部程度である。
【0046】
ホログラム記録材料組成物を調製するには、例えば、バインダーポリマー(A)、ラジカル重合性物質(B)、ラジカル重合開始剤(C)を、ガラスビーカー等の耐有機溶剤性容器に入れて、全体を撹拌する。この場合、固体成分の溶解を促進するために、組成物の変性が生じない範囲で、これを例えば40〜90℃程度に加熱してもよい。
【0047】
本発明によるホログラム記録材料用フォトポリマー組成物を用いてホログラム記録媒体を作製するには、同記録材料組成物を基板の片面に塗布し、生じた塗膜すなわち記録層と基板とからなる2層構造の記録媒体を得る。また、必要に応じて、基板上の記録層の上にフィルム状、シート状ないしは板状の保護材を被せて3層構造体を得る。組成物の調製工程で有機溶媒を用いることが好ましい。この場合、バインダーポリマー(A)、ラジカル重合性物質(B)、ラジカル重合開始剤(C)を溶剤に溶解させ、得られた溶液を基板上に塗布し、その後、溶剤を蒸発させて記録層を形成する。記録層に保護材を被せる場合は、保護材被覆の前に溶媒を風乾や減圧蒸発等によって除去しておくのがよい。基板は光学的に透明な材料、例えばガラス板やポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板のようなプラスチック板もしくはフィルム等からなる。基板の厚みは好ましくは0.02〜10mmである。基板は平面である必要はなく屈曲や湾曲あるいは表面に凹凸構造のあるものでもよい。保護材も基板と同じく光学的に透明な材料からなる。保護材の厚みは好ましくは0.02〜10mmである。塗布方法はグラビア塗布、ロールコーティング塗布、バーコート塗布、スピンコート塗布等である。溶媒除去後の記録層の厚みは、1〜500μm、好ましくは1〜100μmになるように塗布する。
【0048】
本発明におけるホログラム組成物を用いて、例えば以下のような記録方法でホログラムを作製することができる。
【0049】
本発明によるホログラム記録媒体に被記録物をホログラムとして記録するには、通常の記録方法が採用できる。すなわち、波長が300〜800nmの範囲にある光を2つに分け、そのうち一方の光線(参照光)と、他方の光線を記録すべき物体に照射して得られる物体からの反射光(物体光)を、該記録物体に対してそれぞれ同一平面より、あるいは表裏面より入射させて、干渉させることにより得られる干渉縞を捕らえることができる位置に、該ホログラム記録材料用媒体を配置し、同媒体に上記物体を記録する。
【0050】
より詳しくは、レーザー光をビームスプリッターなどで2つの光線に分割し、ミラーなどの使用により両者を再度合わせることで干渉縞を得る(二光束露光法)。あるいは1つのレーザー光をミラーにより反射させ、入射光と反射光の両者を再度合わせることにより干渉縞を得る(一光束露光法)。このように形成した干渉縞パターンの明暗の強度分布を捕らえることのできる位置に記録媒体を設置する。この状態で、通常、数秒から数分間レーザー光照射を行うと、ホログラムとなる干渉縞が記録媒体上に記録される。用いるレーザー光の光量は、光強度と照射時間との積で表して、好ましくは0.1〜10,000mJ/cm程度、より好ましくは1〜1,000mJ/cm程度である。
【0051】
本発明で用いられる光源は、ラジカル重合開始剤(C)、およびラジカル重合開始剤(C)と任意に添加してもよい光増感色素の組み合わせからなる光重合開始系に該光源から発する光を照射した際に、ラジカル重合性物質(B)の重合を誘発させるものであればよい。代表的な光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ等が例示できる。これらは該記録媒体にマスターホログラムの情報をコピーする時などに使用できる。また、これらは、干渉縞を記録したホログラムの定着処理を行う際の光源としても利用できる。ホログラム記録に好ましい光源としては、レーザーが挙げられる。レーザーは単一波長であり、コヒーレンス性を有しているため、ホログラム記録に適した光源である。より好ましい光源は更にコヒーレンス性に優れた光源、例えば、上記レーザーにエタロン等の光学素子を装着したものであり、これは該単一波長の周波数を単一周波数にしたものである。代表的なレーザーとしては、発振波長300〜800nmのもの、具体的にKr(波長647nm)、He−Ne(波長633nm)、Ar(波長515nm 488nm)、YAG(波長532nm)、He-Cd(波長442nm)等が例示できる。これら光源は単独で用いても、2個以上組み合わせて使用しても良い。また、該光源は連続光でも、ある一定または任意間隔にてパルス発振しても良い。該光源より得られる光は記録材料に対し、記録時以外に記録前後にも照射して良い。
【0052】
ホログラム形成後においては、全面光照射行い、残存している未反応のラジカル重合性物質(B)を後重合させることが好ましい。 全面光照射に用いる光源としては、先に示した高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ等が例示できる。照射する光量は、通常0.1〜10J/cm程度である。 また、必要に応じて重合を促進させるために加熱処理を行ってもよい。これにより回折効率、回折光のピーク波長、半値幅などを変化させることができる。加熱処理の方法としては、40〜150℃程度のオーブンに0.5〜500分程度入れると良い。これらの後処理は、形成された像の安定化、記録したホログラムの耐候性をよくする上でも重要である。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例を幾つか挙げ、本発明を具体的に説明する。ただし、これら実施例は本発明を限定するものではない。
【0054】
実施例1
1)バインダーポリマー(A)として、ポリ(ピバロイルオキシエチレン)を以下の手順で得た。
【0055】
かき混ぜ機、コンデンサー、温度計を備えた300mLの三つ口フラスコにピバロイルオキシエチレンモノマー32g(0.25mol)とメタノール13.3gを入れ、攪拌下に湯浴の温度を60〜63℃に上げた。沸騰が始まり還流が認められてから、予めアゾビスイソブチロニトリル0.16g(1.00mmol)をメタノール2.0gに溶解した開始剤溶液を加えた。直ちに重合が始まるので、そのまま5時間重合を行った。
【0056】
ついで少量のジニトロベンゼンを加えて重合を停止させ、メタノールを滴下しながら加熱を続け、未反応のピバロイルオキシエチレンモノマーをメタノールと共に留出させた。留出液の温度がメタノールの沸点64.5℃に達したとき、追い出しを終了した。モノマー追い出し後に残った、主としてポリマーが含まれる反応液を大量の水中に注いで沈殿させ、さらに加熱して微量の残存モノマーを除いた後に乾燥した。こうして単離した生成ポリマーをメタノール-水系より再沈殿させ、精製した。
【0057】
2)バインダーポリマー(A)としてポリ(ピバロイルオキシエチレン)(数平均分子量=約5万)5.0g、ラジカル重合性物質(B)としてフェノキシエチルアクリレート(共栄化学社製、ライトアクリレートPO−A)2.5g、ラジカル重合開始剤(C)として3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(日本油脂社製、BTTB25からトルエンを留去し、ジエチルエーテルで洗浄したもの)0.30g、光増感色素として2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン0.030g、および溶媒としてアセトン20gを常温で混合し、ホログラム記録材料組成物を調製した。
【0058】
3)この組成物を60mm×60mmのガラス基板(厚さ約1.3mm)の片面に乾燥後の厚みがおよそ15μmになるようにスピンコートにより塗布し、加熱処理を施すことにより塗布層から溶媒を除去し、基板と、基板上に形成された上記組成物からなる記録層からなる2層構造の記録媒体を作製した。
【0059】
4)この記録媒体の記録層に厚み50μmのPETフィルムを被せて3層構造のホログラム記録用感光板を作製した。
【0060】
5)つぎに515nmのArイオンレーザーをビームスプリッターで分岐し、各分岐光の角度をミラーにより変えて、両者を再び合成して干渉させ干渉縞を得た。この干渉縞を捉えることができる位置に上記感光板をガラス面から光が入射するように設置した。
【0061】
6)透過型ホログラムの光学系の例を図1に示す。
【0062】
7)この状態で感光板を露光し、ホログラムとなる干渉縞を感光板上に記録した。ビーム強度比はおよそ1:1に保ち、感光板上での1つの光強度を1.0mW/cmとして、5秒間から60秒間、露光量として10mJ/cmから120mJ/cm露光した。
【0063】
8)ホログラム潜像の定着のため、高圧水銀灯(ウシオ電気社製、UM−102)を用いて全体を露光強度10 mW/cmで露光量3J/cmでPETフィルム側から照射した。
【0064】
実施例2
1) 実施例1と同様にして、ポリ(ピバロイルオキシエチレン)を得た。
【0065】
2)バインダーポリマー(A)としてポリ(ピバロイルオキシエチレン)(数平均分子量=約5万)5.0g、ラジカル重合性物質(B)としてフェノキシエチルアクリレート(共栄化学社製、ライトアクリレートPO−A)2.0g、トリブロモフェニルアクリレート(第一工業製薬社製、ニューフロンティアBR−30)、ラジカル重合開始剤(C)として3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(日本油脂社製、BTTB25からトルエンを留去し、ジエチルエーテルで洗浄したもの)0.30g、光増感色素として2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン0.030g、および溶媒としてアセトン20gを常温で混合し、ホログラム記録材料組成物を調製した。
【0066】
工程3)〜8)の操作は、実施例1と同様に行った。
【0067】
実施例3
1)バインダーポリマー(A)としてポリ(シクロヘキサノイルオキシエチレン)を実施例1の(1)と同様の方法で得た。但し、シクロヘキサノイルオキシエチレンモノマーの量は、39g(0.25mol)とした。
【0068】
2)バインダーポリマー(A)としてポリ(シクロヘキサノイルオキシエチレン)(数平均分子量=約4万)5.0g、ラジカル重合性物質(B)としてパラクミルフェノキシエチレングリコールアクリレート(東亞合成社製、アロニックスM−110)3.5g、ラジカル重合開始剤(C)として3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(日本油脂社製、BTTB25からトルエンを留去し、ジエチルエーテルで洗浄したもの)0.30g、光増感色素としてメロシアニン色素(林原生物化学研究所製、NK−1538)0.030g、および溶媒としてアセトン20gを常温で混合し、ホログラム記録材料組成物を調製した。
【0069】
工程3)〜8)の操作は、実施例1と同様に行った。
【0070】
実施例4
1)バインダーポリマー(A)としてポリ(ベンゾイルオキシエチレン)を実施例1の(1)と同様の方法で得た。但し、ベンゾイルオキシエチレンの量は、37g(0.25mol)とした。
【0071】
2)バインダーポリマー(A)としてポリ(ベンゾイルオキシエチレン)(数平均分子量=約5万)5.0g、ラジカル重合性物質(B)としてトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製、NKエステルA−TMPT)2.5g、ラジカル重合開始剤(C)として3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(日本油脂社製、BTTB25からトルエンを留去し、ジエチルエーテルで洗浄したもの)0.30g、光増感色素としてメロシアニン色素(林原生物化学研究所製、NK−1538)0.030g、および溶媒としてアセトン20gを常温で混合し、ホログラム記録材料組成物を調製した。
【0072】
工程3)〜8)の操作は、実施例1と同様に行った。
【0073】
実施例5
実施例1と同様の操作でホログラム記録媒体を作製し、図2に示す光学系で反射型ホログラムを記録した。
【0074】
実施例6
実施例2と同様の操作でホログラム記録媒体を作製し、図2に示す光学系で反射型ホログラムを記録した。
【0075】
実施例7
実施例3と同様の操作でホログラム記録媒体を作製し、図2に示す光学系で反射型ホログラムを記録した。
【0076】
実施例8
実施例4と同様の操作でホログラム記録媒体を作製し、図2に示す光学系で反射型ホログラムを記録した。
【0077】
比較例1
2)バインダーポリマー(A)を用いず、カチオン重合性化合物として3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ユニオンカーバイド社製、UVR−6110)900mg、ラジカル重合性化合物としてビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)メタン900mg、バインダーポリマーとしてメチルメタクリレート/エチルアクリレート/2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの共重合体(共重合比88/2/10、Mw=約5万)500mg、光ラジカル重合開始剤、兼光カチオン重合開始剤としてジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート60mg、光増感色素として3,9−ジエチル−3’−カルボキシメチル−2,2’−チアカルボシアニン、ヨウ素塩5mg、溶媒として光ラジカル重合開始剤、兼光カチオン重合開始剤を溶かすためにエタノール1.5g、その他の組成物を溶解させるためにメチルエチルケトン0.7gを常温で混合し、ホログラム記録材料組成物を調製した。
【0078】
工程3)〜8)の操作は、実施例1と同様に行った。
【0079】
比較例2
2)バインダーポリマー(A)を用いず、カチオン重合性化合物としてセロキサイド2081(ダイセル化学工業社製)900mg、ラジカル重合性化合物としてビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)メタン900mg、バインダーポリマーとしてメチルメタクリレート/エチルアクリレート/2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの共重合体(共重合比88/2/10、Mw=約5万)500mg、光ラジカル重合開始剤、兼光カチオン重合開始剤としてジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート60mg、光増感色素として3,9−ジエチル−3’−カルボキシメチル−2,2’−チアカルボシアニン、ヨウ素塩5mg、溶媒として光ラジカル重合開始剤、兼光カチオン重合開始剤を溶かすためにエタノール1.5g、その他の組成物を溶解させるためにメチルエチルケトン0.7gを常温で混合し、ホログラム記録材料組成物を調製した。
【0080】
工程3)〜8)の操作は、実施例1と同様に行った。
【0081】
比較例3
2)バインダーポリマー(A)を用いず、カチオン重合性化合物として3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ユニオンカーバイド社製、UVR−6110)900mg、ラジカル重合性化合物として2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン450mg、ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)メタン450mg、バインダーポリマーとしてメチルメタクリレート/エチルアクリレート/2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの共重合体(共重合比88/2/10、Mw=約5万)500mg、光ラジカル重合開始剤、兼光カチオン重合開始剤としてジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートを60mg、光増感色素として3,9−ジエチル−3’−カルボキシメチル−2,2’−チアカルボシアニン、ヨウ素塩5mg、溶媒として光ラジカル重合開始剤、兼光カチオン重合開始剤を溶かすためにエタノール1.5g、その他の組成物を溶解させるためにメチルエチルケトン0.7gを常温で混合し、ホログラム記録材料組成物を調製した。
【0082】
工程3)〜8)の操作は、実施例1と同様に行った。
【0083】
比較例4
2)バインダーポリマー(A)を用いず、カチオン重合性化合物として3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ユニオンカーバイド社製、UVR−6110)900mg、ラジカル重合性化合物としてビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)メタン900mg、バインダーポリマーとしてメチルメタクリレート/エチルアクリレート/2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの共重合体(共重合比88/2/10、Mw=約5万)500mg、光ラジカル重合開始剤として3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(日本油脂社製、BTTB25からトルエンを留去し、ジエチルエーテルで洗浄したもの)30mg、光カチオン重合開始剤としてトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート30mg、光増感色素として3,9−ジエチル−3’−カルボキシメチル−2,2’−チアカルボシアニン、ヨウ素塩5mg、溶媒として光ラジカル重合開始剤、および光カチオン重合開始剤を溶かすためにエタノール1.5g、その他の組成物を溶解させるためにメチルエチルケトン0.7gを常温で混合し、ホログラム記録材料組成物を調製した。
【0084】
工程3)〜8)の操作は、実施例1と同様に行った。
【0085】
比較例5
比較例1と同様の操作でホログラム記録媒体を作製し、図2に示す光学系で反射型ホログラムを記録した。
【0086】
比較例6
比較例2と同様の操作でホログラム記録媒体を作製し、図2に示す光学系で反射型ホログラムを記録した。
【0087】
比較例7
比較例3と同様の操作でホログラム記録媒体を作製し、図2に示す光学系で反射型ホログラムを記録した。
【0088】
比較例8
比較例1と同様の操作でホログラム記録媒体を作製し、図2に示す光学系で反射型ホログラムを記録した。
【0089】
ホログラム性能評価
実施例1〜4で得られた透過型ホログラムに対して、回折効率、回折入射角、透過色度を測定し、性能評価を行った。それぞれの測定方法は以下の通りとする。
【0090】
また、屈折率変調(干渉縞の屈折率変化の半分の値)を計算により求めた。計算式は「カップルド・ウエーブ・セオリー・フォー・シック・ホログラム・グレーティングス」(Coupled Wave Theory for Thick Hologram Gratings)[H.コゲルニック(H. Kogelnik),ベル・シスト・テク・J.(Bell Syst. Tech. J.)第48巻、第2909−2947頁(1969)]に記載されているものを用いた。
【0091】
A)回折効率
光パワーメーター(PHOTODYNE社製、OPTICAL POWER/ENERGY METER,MODEL 66XLA)により入射光と回折光の値の比をとり、次式より、透過型ホログラムの回折効率を算出した。
【0092】
回折効率(%)=(回折光強度/入射光強度)×100
B)回折入射角
回折入射角は、回折効率が最大となるときの再生光の入射角度とした。
【0093】
C)透過色度
ホログラムの透過色度を色彩色差計(日本電色工業社製、Z−Σ90 COLOR MEASURING SYSTEM)により、CIE1976L表色系のa、bの測定より透過色度を求めた。
【0094】
透過色度c=(a*2+b*21/2
得られた結果を表1に示す。
【表1】

【0095】
いずれの透過型ホログラムも、十分実用可能な範囲にある屈折率変調を示している。また、透過色度の値もいずれも小さく、無着色高透明である。
【0096】
実施例5〜8で得られた反射型ホログラムに対して、紫外可視分光光度計(日本分光社製、「V−550」)による透過率測定を行い、回折効率、再生波長、および可視光線透過率を求め、性能評価を行った。それぞれの算出方法を図3に従って説明する。
【0097】
得られた反射型ホログラムに対して、紫外可視分光光度計を用いて透過率測定を行うと、図3に示すようなチャートが得られる。図中(T)は可視光線透過率、(R)は回折光の強度、回折光強度が最大の(R)となる(λ)が再生波長である。反射型ホログラムの回折効率は、次式に示すように、再生波長以外の可視光線透過率に対する回折光の強度の比より算出した。
【0098】
回折効率(%)=回折光の強度(P)/可視光線透過率(T)×100
また、屈折率変調(干渉縞の屈折率変化の半分の値)を計算により求めた。計算式は「カップルド・ウエーブ・セオリー・フォー・シック・ホログラム・グレーティングス」(Coupled Wave Theory for Thick Hologram Gratings)[H.コゲルニック(H. Kogelnik),ベル・シスト・テク・J.(Bell Syst. Tech. J.)第48巻、第2909−2947頁(1969)]に記載されているものを用いた。
【0099】
得られた結果を表2に示す。
【表2】

【0100】
いずれの反射型ホログラムも、十分実用可能な範囲にある屈折率変調を示している。また、可視光線透過率もいずれも十分に高く、加えて、記録波長である515nmをほぼ忠実に記録できている。
【0101】
比較例1〜4で得られた透過型ホログラムに対しても、回折効率、回折入射角、透過色度を測定し、性能評価を行った。その結果を表3に示す。
【表3】

【0102】
実施例1〜4の透過型ホログラムと比較すると、屈折率変調が小さいことがわかる。また、透過色度の数値が高い傾向にある。
【0103】
比較例5〜8で得られた反射型ホログラムに対しても、透過率測定を行い、回折効率、再生波長、および可視光線透過率を求め、性能評価を行った。その結果を表4に示す。
【表4】

【0104】
実施例5〜6の反射型ホログラムと比較すると、屈折率変調が小さいことがわかる。可視光線透過度についてはほぼ同じである。再生波長については、比較例5でやや長波長にシフトしていることが分かる。
【0105】
耐久性評価
本発明によるホログラムと従来技術によるそれとの耐久性を比較するために、下記の方法で耐熱試験および耐候試験を行った。
【0106】
A)耐熱試験
実施例および比較例の各工程4で得られた3層構造体[ガラス基板/ホログラム層/保護層(PET)]を85℃の循環式オーブンに500時間置いた。透過型ホログラムでは回折効率と透過色度の変化を、反射型ホログラムでは回折効率と再生波長の変化を調べた。
【0107】
試験結果を以下の表5、表6に示す。
【0108】
B)耐候試験
実施例および比較例の各工程4で得られた3層構造体[ガラス基板/ホログラム層/保護層(PET)]を、保護層側からキセノンランプ(ウシオ電機社製、UI−501C、300W)を用いて、強度10mW/cm、露光量500J/cmで照射した。透過型ホログラムでは回折効率と透過色度の変化を、反射型ホログラムでは回折効率と再生波長の変化を調べた。
【表5】

【0109】
実施例のホログラムは比較例のものに比べ透過色度の値、およびその変化量も小さい。これに対して比較例のホログラムは、耐熱試験、耐候試験ともに透過色度の変化が大きく、ホログラムは随分と黄色みを帯びていた。これは、ホログラム層中に酸が存在することに起因すると考えられる。
【表6】

【0110】
実施例のホログラムは、回折効率、再生波長の変化共に小さい。これに対して比較例のホログラムは、耐熱試験における再生波長の変化が大きいことが分かる。これは定着処理後もホログラム中に未反応の反応性成分が多く残るため、記録媒体中に形成された干渉縞を維持できないためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明では、一般式(I)で表され、ガラス転移点が40℃以上、数平均分子量が1万以上のバインダーポリマー(A)と、ラジカル重合性物質(B)と、ラジカル重合開始剤(C)を含む体積型ホログラム記録用組成物を用いることにより、屈折率変調、波長選択性および耐久性に優れたホログラムを容易に作製することができる。
【0112】
したがって、これにより、ホログラムを意匠用途、セキュリティー用途、光学素子用途などのあらゆる用途で使用することできる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】透過型ホログラム記録のための光学系の例を示した概略図である。
【図2】反射型ホログラム記録のための光学系の例を示した概略図である。
【図3】反射型ホログラムの回折効率の算出方法を示した概念図である。
【符号の説明】
【0114】
(LASER)はレーザー発生装置、
(BS)はビームスプリッター、
(M)はミラー、
(S)は感光材料、
(T)は可視光線透過率、
(R)は回折光の強度、
(λ)は再生波長で、回折光強度(R)が最大となる波長である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積位相型ホログラム記録材料用のフォトポリマー組成物において、ガラス転移温度が40から200℃であり、数平均分子量が1万から100万である、下記一般式(I)で表されるバインダーポリマー(A)、ラジカル重合性物質(B)、ラジカル重合開始剤(C)を含むホログラム記録材料用組成物。
【化1】

式中のRkおよびRlは、同一または異なり、水素原子、飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素芳香族炭化水素基である。これらの基はハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、低級アルキルシリル基、アシル基またはエステル基を有していてもよい。mおよびnは自然数であり、繰り返しユニットの数を表す。
【請求項2】
バインダーポリマー(A)がポリ(シクロヘキサノイルオキシエチレン)、ポリ(ピバロイルオキシエチレン)またはポリ(ベンゾイルオキシエチレン)である請求項1記載のホログラム記録材料用組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載のホログラム記録材料用組成物または同組成物を溶媒に溶かした溶液を基板上に塗布し、溶剤を蒸発させ、基板上に上記組成物からなる記録層を形成するホログラム記録媒体の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の製造方法で得られたホログラム記録媒体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−139843(P2007−139843A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329711(P2005−329711)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】