説明

ボロン酸塩および血栓症の治療におけるその使用

ペプチドボロン酸の塩の薬剤、例えば Cbz-(R)-Phe-(S)-Pro-(R)-Mpg-B(OH)2である。ボロネートに対する対イオンはアルカリ金属であり、または有機窒素含有化合物から誘導され得る。この塩は血栓症の処置に使用する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
本開示は、有機ボロン酸から得られる医薬的に有用な産物に関する。本開示はまた、上記類の産物のメンバーの使用、その製剤、その調製、その合成中間体および別の主題に関する。
本開示はさらに、上記産物を含有する経口医薬製剤に関する。
【0002】
ボロン酸化合物
ボロン酸化合物およびそのエステルなどの誘導体が生物活性、とりわけプロテアーゼの阻害剤または基質としての活性をもつことは、ここ何年かで知られてきた。例えば、Koehler et al. Biochemistry 10:2477, 1971 によると、2-フェニルエタンボロン酸はセリン・プロテアーゼ・キモトリプシンをミリモルのレベルで阻害する。キモトリプシンおよびスブチリシンのアリールボロン酸 (フェニルボロン酸、m-ニトロフェニルボロン酸、m-アミノフェニルボロン酸、m-ブロモフェニルボロン酸) による阻害は、Phillip et al, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 68:478-480, 1971. に報告されている。スブチリシン Carlsberg の種々のボロン酸による阻害、特にCl、Br、CH3、H2N、MeO などで置換されたフェニルボロン酸による阻害についての研究は Seufer-Wasserthal et al, Biorg. Med. Chem. 2(1):35-48, 1994 に記載されている。
【0003】
プロテアーゼの阻害剤または基質の記述において、P1、P2、P3 などは分割可能ペプチド結合に対するアミノ末端である基質または阻害剤の残基を意味し、S1、S2、S3 などは同起源のプロテアーゼの対応サブ部位を意味する。参照:Schechter, I. and Berger, A. On the Size of the Active site in Proteases, Biochem.Biophys.Res.Comm., 27:157-162, 1967。トロンビンにおいて、S1 結合部位すなわち “特異性ポケット” は酵素中のよく解明されたスリットであり、一方、S2 および S3 結合サブ部位 (それぞれ、近位および遠位の疎水性ポケットともいう) は疎水性であり、なかでも Pro および (R)-Phe とそれぞれ強く相互作用する。
【0004】
セリンプロテアーゼ阻害剤に関する医薬研究は、単純なアリールボロン酸からボロペプチド、すなわち α-アミノカルボン酸のボロン酸類似体を含有するペプチドへと移っている。ボロン酸は誘導されて、しばしばエステルを形成し得る。Shenvi (EP-A-145441 および US 4499082) は、中性の側鎖をもつ α-アミノボロン酸を含有するペプチドがエラスターゼの効果的な阻害剤であることを開示しており、それにつづいてセリンプロテアーゼのボロペプチド阻害剤に関する多くの特許公開がある。特異的で堅く結合するボロン酸阻害剤が、エラスターゼ (Ki, 0.25nM)、キモトリプシン (Ki, 0.25nM)、カテプシン G (Ki, 21nM)、α-溶原プロテアーゼ (Ki, 0.25nM)、ジペプチジルアミノペプチダーゼ型 IV (Ki, 16pM) およびさらに最近にトロンビン (Ac-D-Phe-Pro-boroArg-OH (DuP 714 initial Ki 1.2nM) について報告されている。
【0005】
Claeson et al (US 5574014 他) および Kakkar et al (WO 92/07869 および US 5648338 を含むファミリー) が、中性のC末端側鎖、例えば、アルキルまたはアルコキシアルキル側鎖を有するトロンビン阻害剤を開示している。
【0006】
Kakkar et al により記述された化合物の修飾は WO 96/25427 に含まれ、P2-P1 天然ペプチド結合が別の結合で置換されたペプチジルセリンプロテアーゼ阻害剤に関する。非天然のペプチド結合の例には -CH2-、-CH2O-、-NHCO-、-CHYCH2-、-CH=CH-、-CO(CH2)pCO-(p は 1、2 または 3)、-COCHY-、-CH2-CH2NH-、-CHY-NX-、-N(X)CH2-N(X)CO-、-CH=C(CN)CO-、-CH(OH)-NH-、-CH(CN)-NH-、-CH(OH)-CH2- または -NH-CHOH- があり、うち、X は H またはアミノ保護基であり、Y は H またはハロゲン、特に F である。特定の非天然ペプチド結合は -CH2- または -CH2O- である。
【0007】
Metternich (EP 471651 および US 5288707、後者は Trigen Limited に譲渡されている) は、Phe-Pro-BoroArg ボロペプチドの変種体を開示しており、そこでは P3 Phe が、トリメチルシリルアラニン、p-tert.ブチル-ジフェニルシリルオキシメチル-フェニルアラニンまたは p-ヒドロキシメチルフェニルアラニンなどの非天然疎水性アミノ酸により置換され、P1 側鎖が中性 (アルコキシアルキル、アルキルチオアルキルまたはトリメチルシリルアルキル)であり得る。
【0008】
ボロトリペプチドトロンビン阻害剤の P2 Pro 残基 の N-置換グリシンによる置換は、Fevig J M et al Bioorg. Med. Chem. 8: 301-306 および Rupin A et al Thromb. Haemost. 78(4):1221-1227, 1997 に記載されている。さらに参照、US 5,585,360 (de Nanteuil et al)。
【0009】
Amparo (WO 96/20698 および US 5698538 を含むファミリー) は、Boro(Aa) が非塩基性側鎖をもつアミノボロネート残基、例えば BoroMpgであり得る構造アリール-リンカー-Boro(Aa) のペプチドミメティックを開示する。リンカーは、式 −(CH2)mCONR- (m は 0 〜 8、R は H またはある種の有機基である) またはその類似体であり、うち、ペプチド結合 -CONR- は、-CSNR-、-SO2NR-、-CH2-、-C(S)O- または -SO2O- により置換される。アリールは、具体的な基から選択される1〜3の基により置換されているフェニル、ナフチルまたはビフェニルである。これらのうち最も典型的な化合物の構造はアリール-(CH2)n-CONH-CHR2-BY1Y2であり、うち、R2 は例えば上記の中性の側鎖であり、n は 0 または 1 である。
【0010】
非ペプチドボロネートは、洗剤組成におけるタンパク質分解酵素の阻害剤として提案されている。WO 92/19707 および WO 95/12655 によると、アリールボロネートは洗剤組成におけるタンパク質分解酵素の阻害剤として使用し得る。WO 92/19707 は、水素結合基、特にアセトアミド (-NHCOCH3)、スルホンアミド (-NHSO2CH3) およびアルキルアミノによりボロネート基に対してメタ置換された化合物を開示している。WO 95/12655 は、オルト置換化合物が優れることを教示する。
【0011】
ボロネート酵素阻害剤は、洗剤から細菌胞子形成阻害剤や医薬品に至る広い適用を有する。医薬分野において、特許文献が、セリンプロテアーゼ、例えばトロンビン、因子 Xa、カリクレイン、エラスターゼ、プラスミンならびにプロリルエンドペプチダーゼのような他のセリンプロテアーゼおよび Ig AI プロテアーゼのボロネート阻害剤について述べている。トロンビンは凝固経路における最後のプロテアーゼであって、フィブリノーゲンの各分子から4小ペプチドを加水分解するのに働き、もってその重合化部位を脱保護する。一旦形成されると、線状フィブリン・ポリマーは因子XIIIa により橋かけされ、因子自体がトロンビンにより活性化される。さらに、トロンビンは血小板の強力なアクチベーターであり、血小板上で特異的な受容体で作用する。トロンビンはまた、因子 V および VIII の活性化により自体の産生を強化する。
【0012】
セリンプロテアーゼの他のアミノボロネートまたはペプチドボロネート阻害剤または基質については、下記に記載されている:
US 4935493、EP 341661、WO 94/25049、WO 95/09859、WO 96/12499、WO 96/20689、Lee S-L et al, Biochemistry 36:13180-13186, 1997、Dominguez C et al, Bioorg. Med. Chem. Lett. 7:79-84, 1997、EP 471651、WO 94/20526、WO 95/20603、WO97/05161、US 4450105、US 5106948、US 5169841。
肝 C ウイルス・プロテアーゼのペプチドボロン酸阻害剤については、WO 01/02424 に記載されている。
【0013】
Matteson D S Chem. Rev. 89: 1535-1551, 1989 が、特にアミノボロン酸およびその誘導体の合成のための中間体としての α-ハロボロン酸エステルの使用について総説している。Matteson は、ピナコール・ボロン酸エステルの非キラル合成における使用およびピナンジオール・ボロン酸エステルのキラル・コントロールのための使用について述べており、これはアミノおよびアミドボロン酸エステルの合成を含む。
【0014】
Contreras et al J. Organomet. Chem. 246: 213-217, 1983 は、分子内 N→B 配位が、Me2CHCMe2-BH2 とジエタノールアミンとの反応により調製された環状ボロン酸エステルについての分光分析研究により、いかに表されるかを述べている。
【0015】
ボロン酸およびエステル化合物は、プロテアソーム、細胞内タンパク質代謝回転の大部分の因をなす多触媒プロテアーゼの阻害剤として有望である。Ciechanover, Cell, 79:13-21, 1994 によると、プロテアソームはユビキチン-プロテアソーム経路のタンパク質分解性成分であり、この経路においてタンパク質がユビキチンの多数分子への共役による減成について標的とされる。Ciechanover はまた、ユビキチン-プロテアソーム経路が様々な重要な生理過程において要の役割をもつことを教示する。
【0016】
Adams et al、米国特許 5780454 (1998)、米国特許 6066730 (2000)、米国特許 6083903 (2000)、その対応 WO 96/13266、米国特許 6297217 (2001) は、ペプチドボロン酸エステルおよびプロテアソーム阻害剤として有用な酸化合物について記述する。これらの文献はまた、ボロン酸エステルおよび酸化合物を用いて、筋タンパク質減成の割合を減じること、細胞内の NF−κB 活性を減じること、細胞内の p53 タンパク質減成の割合を減じること、細胞内のサイクリン減成を阻害すること、癌細胞の成長を阻害すること、細胞内の抗原提示を阻害すること、NF-κB依存性細胞付着を阻害すること、HIV 複製を阻害することについて述べる。Brand et al, WO 98/35691 は、ボロン酸化合物を含むプロテアソーム阻害剤が、卒中または心筋梗塞の際に起きるような梗塞を処置するのに有用であることを教示する。Elliott et al, WO 99/15183 は、プロテアソーム阻害剤が炎症性および自己免疫性疾患を処置するのに有用であると教示する。
【0017】
残念なことに、有機ボロン酸は分析的に純粋な形で得るのが比較的困難である。すなわち、アルキルボロン酸およびそのボロキシンはしばしば空気に敏感である。Korcek et al, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 2:242, 1972 は、ブチルボロン酸が空気により容易に酸化されて、1-ブタノールとホウ酸をつくることを教示する。
【0018】
ボロン酸の環状エステルとしての誘導が酸化に対する抵抗性を提供することが知られている。例えば、Martichonok V et al J. Am. Chem. Soc. 118: 950-958, 1996 によると、ジエタノールアミン誘導化は可能性あるボロン酸の酸化に対する保護を提供する。米国特許 5,681,978 (Matteson DS et al) は、1,2-ジオールおよび 1,3-ジオール、例えばピナコールが、容易に酸化されない安定な環状ボロン酸エステルを形成することを教示する。
【0019】
Wu et al, J. Pharm. Sci., 89:758-765, 2000 は、化合物 N-(2-ピラジン) カルボニル-フェニルアラニン-ロイシンボロン酸 (LDP-341、ボルテゾミブとしても知られる)、抗癌剤の安定性について論じている。これは、いかに “非経口投与のために [LDP-341] を製剤する努力の際に、この化合物が一定しない安定性挙動を示した” ことを記述する。減成経路が調べられ、減成が酸化性であり、最初の酸化がペルオキシドまたは分子酸素およびそのラジカルに起因すると結論している。
【0020】
WO 02/059131 は、安定とされるボロン酸産物を開示する。特に、この産物はある種のボロペプチドおよび/またはボロペプチドミメティックであり、ボロン酸基が糖で誘導化されている。この開示された糖誘導体は、疎水性アミノ酸側鎖をもち、下記式を有する:
【化1】

式中、
P は水素またはアミノ基保護部分であり;
R は水素またはアルキルであり;
A は 0、1 または 2 であり;
R1、R2 および R3 は独立的に水素、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは -CH2-R5 であり;
R5 は、各事例において、アリール、アラルキル、アルカリール、シクロアルキル、複素環、ヘテロアリールまたは -W-R6 のひとつであり、W はカルコゲンおよび R6 はアルキルであり;
R1、R2、R3 または R5 中の該アリール、アラルキル、アルカリール、シクロアルキル、複素環またはヘテロアリールの環部分は任意に置換されていることがあり;
Z1 および Z2 は一緒に糖から誘導される部分を形成し、うち、各事例においてホウ素に付着している原子は酸素原子である。
開示された化合物のいくつかは LDP-341 (上記参照) の糖誘導体である。
【0021】
多くの薬剤は、カルボン酸である活性部分を含む。カルボン酸とボロン酸とには多くの相違があり、薬剤の配送、安定性および移送(なかでも)に対するボロン酸の作用は研究されていない。3価のホウ素化合物のひとつの特徴は、ホウ素原子が sp2 交雑されており、ホウ素原子上に空の 2pz 軌道を残す。従って、BX3 型の分子が電子対受容体すなわちルイス酸として働く。空の 2pz 軌道を用いて、非結合電子対をルイス塩基から取得し、共有結合が形成し得る。従って、BX3 はNH3 などのルイス塩基と反応して、すべての原子が電子価の充足された殻を有する酸−塩基複合体を形成する。
【0022】
従って、ホウ酸はOH- を受容してルイス酸として働く:

B(OH)3 + H2O → B(OH)4- + H+
【0023】
さらに、RB(OH)2 型のボロン酸は2塩基性であり、2 pKa を有する。 ホウ素化合物について別の特質はホウ素との結合が通常と異なり短いことで、そのため下記の3事項の因となり得る:
1. pπ-pπ 結合の形成;
2. イオン性共有共鳴;
3. 非結合電子間の反発作用の減少。
【0024】
ボロン酸とカルボン酸の水性 KOH 中の平衡は、下記のように考えられる ( RBO22-の形成を除く):
【化2】

【0025】
血栓症
止血は、血液成分が動的な平衡で存在する血液の正常な生理状態である。平衡が破れると、例えば、血管の損傷に続いて、ある種の生化学的経路が起きて、この例では、血餅形成 (凝固) により出血が停止する。 凝固は動的で複雑なプロセスであり、そこではトロンビンなどのタンパク質分解酵素が要の役割を演じる。血液凝固は、チモーゲン活性化の2カスケード、凝固カスケードの外因性および内因性経路のいずれかを介して生じ得る。外因性経路における因子 VIIa および内因性経路における因子 IXa が因子 X の因子 Xa への活性化についての重要な決定因子であり、因子 Xa がプロトロンビンのトロンビンへの活性化を触媒し、ついでトロンビンがフィブリノーゲン・モノマーのフィブリン・ポリマーへの重合を触媒する。従って、各経路における最後のプロテアーゼはトロンビンであり、これが作用して、フィブリノーゲンの各分子から4小ペプチド (2 FpA および2 FpB) を加水分解し、重合化部位を脱保護する。一旦形成されると、線状フィブリン・ポリマーは因子 XIIIa により橋かけされる。この因子自体はトロンビンにより活性化される。さらに、トロンビンは血小板の強力なアクチベーターであり、血小板上の特異的な受容体で作用する。血小板のトロンビン活性化が細胞の凝集と止血栓の生成をさらに加速する追加の因子の分泌を促す。トロンビンはまた、因子 V および VIII の活性化により自体の産生を強化する (参照、Hemker and Beguin in: Jolles, et. al., “Biology and Pathology of Platelet Vessel Wall Interactions,” pp. 219-26 (1986), Crawford and Scrutton in: Bloom and Thomas, “Haemostasis and Thrombosis,” pp. 47-77, (1987), Bevers, et. al., Eur. J. Biochem. 122:429-36, 1982, Mann, Trends Biochem. Sci. 12:229-33, 1987).
【0026】
プロテアーゼは特異的なペプチド結合でタンパク質を分解する酵素である。Cuypers et al., J. Biol. Chem. 257:7086, 1982(引用文献とする)は、プロテアーゼを機構に基つき5クラスに分類している:セリン、システイニルまたはチオール、酸またはアスパルチル、トレオニンおよびメタロプロテアーゼ。各クラスのメンバーは、ペプチド結合の加水分解を類似のメカニズムで触媒し、類似の活性部位アミノ酸残基を有し、クラス特異的阻害剤に反応し得る。例えば、すべてのセリン・プロテアーゼは、特徴として活性部位セリン残基をもつ。
【0027】
凝固プロテアーゼ・トロンビン、因子 Xa、因子 VIIa および因子 IXa は、配列特異的Arg-Xxx ペプチド結合の解裂にトリプシン様特異性を有すセリンプロテアーゼである。他のセリンプロテアーゼと同様に、解裂は活性部位セリンの基質の分割可能結合に対する攻撃で始まり、四面体中間体の形成をもたらす。これに四面体中間体の崩壊が続き、アシル酵素が形成し、解裂された配列のアミノ末端を離す。ついで、アシル酵素の加水分解でカルボオキシ末端を離す。
【0028】
上記のように、血小板は、正常な止血において2つの重要な役割をはたす。第1に、凝集により、こわれた血管からの出血をすぐに抑制する最初の止血栓を構築する。第2に、血小板表面が活性となり、凝血、血小板凝固促進活性と呼ばれる性質を強化する。これは、トロンビナーゼ反応といわれる、因子 Va および Ca2+の存在で因子 Xa によるプロトロンビンの活性化の速度を増すことで認められる。通常、少数の (あるとしても) 凝血因子しか非刺激血小板の表面に存在しないが、血小板が活性化されると、膜の細胞質側に通常存在する負電荷のホスホリピド (ホスファチジルセリンおよびホスパチジルイノシトール) が利用可能となり、2工程の凝固配列が生じる表面を提供する。活性化された血小板の表面上のホスホリピドはトロンビンの形成をもたらす反応を非常に強化し、トロンビン が抗トロンビン III による中性化よりも速い速度でつくられ得る。血小板表面で起きるこの反応は、ヘパリンがあろうがなかろうが、抗トロンビン III などの血液中の天然の抗凝固剤により容易には阻害されない(参照、Kelton and Hirsch in : Bloom and Thomas, “Haemostasis and Thrombosis,”pp. 737-760, (1981); Mustard et al in : Bloom and Thomas, “Haemostasis and Thrombosis,” pp. 503526, (1981); Goodwin et al; Biochem. J. 308:15-21, 1995)。
【0029】
血栓は、正常なメカニズムの異常な産物と考えることができ、心臓や血管などの心循環系の表面の血液構成体から形成された塊または堆積物と定義できる。血栓症は、止血メカニズムの不適切な活性が管内の血栓形成をもたらす病理的状態であると言いうる。3つの基本的な型の血栓が知られる:
動脈に通常見られ、主に血小板からなる白い血栓;
静脈に見られ、特にフィブリンと赤い細胞から構成される赤い血栓;
白と赤の血栓の構成成分からなる混合血栓。
【0030】
血栓の組成は、その形成部位での血流の速度により影響を受ける。一般的に、白い血小板に富む血栓が高速系で形成し、一方、赤い凝固血栓が停止領域で形成する。動脈における高剪断率が循環の動脈側での凝固中間体の蓄積を防止する。血小板のみが、血栓の損傷領域への結合をvon Willebrand 因子で形成する能力をもつ。このような血小板のみから構成される血栓は安定でなく分散する。刺激が強いと、血栓が再び形成し、ついで刺激が無くなるまで継続的に分散する。血栓が安定するために、フィブリンが形成しなければならない。この点について、少量のトロンビンが血小板血栓内に蓄積して、因子 Va を活性化し、血小板凝固促進活性を刺激できる。これらの2事象は、300,000 倍の因子 Xa によるプロトロンビン活性化の全般的割合を増加せしめる。 フィブリン沈着が血小板血栓を安定にする。間接的トロンビン阻害剤、例えば、ヘパリンは、血小板凝固促進活性を阻害するのに臨床的に効果がない。従って、血小板凝固促進活性を阻害する医療物質は動脈の血栓状態を治療または予防するのに有用である。
【0031】
循環の静脈側において、血栓はフィブリンからなる。トロンビンが静脈側の遅い流れの故に蓄積でき、血小板が小さい役割のみを演じる。
【0032】
このように、血栓症は単独の適応と考えられないが、むしろ、異なる医療物質および/またはプロトコールが適当であるような明白なサブクラスを包含する1クラスの適応である。関係当局は、医薬として承認するために、明白な適応として、例えば、深静脈血栓症、脳循環動脈血栓症、肺塞栓症と取り扱う。血栓症の2大サブクラスは動脈血栓症と静脈血栓症である。動脈血栓症には、急性冠状症候群 [例えば、急性心筋梗塞 (冠状動脈の血栓症による心臓発作)]、脳循環動脈血栓症 (脳循環動脈系の血栓症による卒中) および末梢動脈血栓症がある。静脈血栓症によりおこされる症状の例は、 深静脈血栓症および肺塞栓症である。
【0033】
血栓症の管理には、通常、抗血小板薬剤 (血小板凝集の阻害剤) の使用による将来の血栓形成の制御と血栓溶解剤の使用による新たに形成した血餅の溶解があり、これらの薬剤のひとつまたは両方は抗凝固剤と配合してまたは組み合わせて使用される。抗凝固剤はまた、血栓症の起こりやすい患者の処置において防止的に (予防的に) 使用される。
【0034】
最近、抗凝固剤としての臨床使用で最も効果的なクラスの2薬剤は、ヘパリンとビタミン K アンタゴニストである。ヘパリンは、抗トロンビンIII に結合し、その作用を強化する硫酸ポリサッカライドの定義不十分の混合物である。抗トロンビン III は、活性凝血因子 IXa、Xa、XIa、トロンビンおよびおそらくXIIa の自然界にある阻害剤である (参照、Jaques, Pharmacol. Rev. 31:99-166, 1980)。ビタミン K アンタゴニストは、うちワルファリンが最も知られている例であるが、ビタミン K 依存性凝固因子 II、VII、IX および X のリボソームカルボキシル化後を阻害することにより間接的に作用する (参照、Hirsch, Semin. Thromb. Hemostasis 12:1-11, 1986)。血栓症の処置のための効果的な治療において、ヘパリンおよびビタミン K アンタゴニストは、出血の不都合な副作用、ヘパリン誘導血小板減少症 (ヘパリンの場合) および顕著な患者間相違があり、治療安全範囲は小さく予測しにくい。
【0035】
凝固系についてのトロンビンおよび他のセリンプロテアーゼ酵素の使用がこれらの問題を軽減すると期待される。そのために、広範なセリンプロテアーゼ阻害剤が試験されてきた。その中にボロペプチド、すなわち、α-アミノ酸のボロン酸類似体を含有するペプチドがある。直接作用のボロン酸トロンビン阻害剤は、この明細書の前の部分で説明してきたが、さらに下記の章で述べる。
【0036】
中性の P1 残基ボロペプチドトロンビン阻害剤
Claeson et al (US 5574014 など) および Kakkar et al (WO 92/07869 および US 5648338 を含むファミリーメンバー) は、中性の (非電荷) C末端 (P1) 側鎖、例えば、アルコキシアルキル側鎖を有する親油性トロンビン阻害剤を開示する。
【0037】
Claeson et al および Kakkar et al の特許ファミリーは、トロンビンの高度に特異的な阻害剤であるアミノ酸配列 D-Phe-Pro-BoroMpg [(R)-Phe-Pro-BoroMpg] を含有するボロン酸エステルを開示する。これらの化合物は、特に Cbz-(R)-Phe-Pro-BoroMpg-Oピナコール (TRI 50b としても知られる) である。 対応の遊離ボロン酸は、TRI 50c として知られる。TRI 50b および関連化合物についてのさらなる情報のために、下記の文献を参照できる。
Elgendy S et al., in The Design of Synthetic Inhibitors of Thrombin, Claeson G et al Eds, Advances in Experimental Medicine, 340:173-178, 1993.
Claeson G et al, Biochem J. 290:309-312, 1993
Tapparelli C et al, J Biol Chem, 268:4734-4741, 1993
Claeson G, in The Design of Synthetic Inhibitors of Thrombin, Claeson G et al Eds, Advances in Experimental Medicine, 340:83-91, 1993
Phillip et al, in The Design of Synthetic Inhibitors of Thrombin, Claeson G et al Eds, Advances in Experimental Medicine, 340:67-77, 1993
Tapparelli C et al, Trends Pharmacol. Sci. 14:366-376, 1993
Claeson G, Blood Coagulation and Fibrinolysis 5:411-436, 1994
Elgendy et al, Tetrahedron 50:3803-3812, 1994
Deadman J et al, J. Enzyme Inhibition 9:29-41, 1995
Deadman J et al, J. Medicinal Chemistry 38:1511-1522, 1995.
【0038】
TRI 50bのトリペプチド配列は3キラル中心をもつ。少なくとも、市販阻害剤の活性をもつ化合物において、Phe 残基は (R)- 配置、Pro 残基は天然の (S)-配置であるとおもわれる。Mpg 残基 は、市販阻害剤の活性をもつ異性体において、(R)-配置であると考えられる。すなわち、活性または最も活性の TRI 50b 立体異性体は、R、S、R 配置でありと考えられ、下記のように表示し得る:
【化3】

【0039】
間接的に作用するトロンビン阻害剤が静脈血栓症またはそのおそれのある患者の処置に有用であることが知られているが、 動脈血栓症については同じでない。なぜなら、動脈血栓症を治療(予防)するために、何倍も静脈血栓症に用いられた用量を上げる必要があるからである。このような用量の増加は、典型的に出血を起こし、これが, 動脈血栓症の処置に不適切であるか好ましくない間接的作用のトロンビン阻害剤をつくる。ヘパリンおよびその低分子誘導体は間接的トロンビン阻害剤であり、従って動脈血栓症の処置に不適切である。経口の直接的トロンビン阻害剤が、動脈適用について開発中であるが、治療係数が所望よりも低く、すなわち、治療用量において出血の望ましいレベルよりも高いことがある。
【0040】
多くの有機ボロン酸化合物は、親油性または疎水性に分類し得る。典型的には、該化合物は下記のものも含む:
・すべてまたは大部分のアミノ酸が疎水性であるボロペプチド、
・少なくとも半分のアミノ酸が疎水性であり、かつ疎水性N末端置換基 (アミノ 保護基)を有するボロペプチド、
・疎水性部分に基づく非ペプチド。
【0041】
経口吸収
消化管での吸収は能動または受動の経路による。輸送メカニズムによる能動吸収は、個体間および腸内容物で変わりやすい (Gustafsson et al, Thrombosis Research, 2001, 101, 171-181)。上方腸管が経口薬剤の吸収の主要な部位とされている。特に、十二指腸が、その広い面積からして、経口投与薬剤の吸収についての通常の標的部位である。腸管粘膜が、経細胞吸収を制御するバリアーとして働く: イオン種の吸収が阻止され、一方、親油性分子の経細胞吸収がおきる (Palm K et al., J. Pharmacol and Exp. Therapeutics, 1999, 291, 435-443)。
【0042】
経口投与された薬剤は、一貫して適切に吸収される必要がある。個体間および同一個体の異なる時点での吸収の相違は好ましくない。同様に、低レベルのバイオアベイラビリティをもつ薬剤 (投与された活性物質の小部分のみが吸収される) は一般的に受け入れ難い。
【0043】
非イオン化合物は、非変動の関連経路の受動吸収がよく、一貫した吸収に適する。親油性種は、受動吸収メカニズムが特によく、従って、非イオン性の親油性薬剤は、一貫した高い経口吸収に最も好ましいとされる。
【0044】
生理的標的をもつ薬剤の相互作用に必要の典型的官能性は、カルボン酸やスルホン酸などの官能基による。これらの基は、胃中でプロトン付加型として存在するが (pH 2-3 で)、腸管液の高 pH である程度イオン化される。カルボキシレートまたはスルホネートのイオン化を回避するのに用いられてきた方法は、エステル型として存在せしめることであり、エステルは血管腔に吸収されて分解される。
【0045】
例えば、直接的作用トロンビン阻害剤メラガトランは、半最適の消化管吸収をもち、末端カルボキシおよびアミジノ基を有し、カルボキシル基およびアミジノ基の両方が電荷を帯びると、pH 8-10 で純粋の双性イオンである。プロドラッグ H 376/95 は、カルボン酸およびアミジンについての保護基を有して開発され、メラガトランを超える親油性分子である。このプロドラッグは、培養上皮 Caco-2 細胞の透過係数がメラガトランの 80 倍であり、経口バイオアベイラビリティがメラガトランの 2.7-5.5 倍高く、そして薬剤血漿濃度 vs. 時間曲線下の面積の変動が非常に小さい(Gustafsson et al, Thrombosis Research, 2001, 101, 171-181).
【0046】
ボロペプチド、ボロペプチドミメティックおよび他の有機ボロネートの経口吸収
TRI 50b のボロン酸エステル基は血漿の状態ですぐに分解されて、対応のボロン酸基を形成する。このボロン酸基は、トロンビン の触媒部位を阻害する活性部分であると考えられる。
【0047】
ボロン酸は2価の官能基であり、カルボン酸およびスルホン酸における表面上匹敵する C-O および S-O 結合と異なり、ホウ素−酸素結合長 (1.6Å) 以上の典型的な単結合をもつ。従って、ボロン酸基は2つのイオン化可能性を有する。ボロン酸基は、十二指腸液の pH で部分的にイオン化され、望ましい受動的十二指腸摂取に適さない。このように、電荷ボロネート阻害剤 H-D-PheProBoroArg は顕著な活性輸送メカニズムにより吸収される (Saitoh, H. and Aungst, B.J., Pharm. Res., 1999, 16, 1786-1789)。
【0048】
TRI 50b のこのような分解により形成されたペプチドボロン酸 (酸は TRI 50c と言う) は、水に、特に酸性または中性の pH で比較的不溶性であり、胃および 十二指腸で吸収されにくい。この酸は構造 Cbz-Phe-Pro-BoroMpg-OH を有する。
【0049】
ペプチドボロン酸 Cbz-Phe-Pro-BoroMpg-OH は十二指腸の条件で、ある程度イオン化され受動的輸送に適しておらず、この酸のエステルが受動的 (すなわち一貫した) 輸送についての高速のために設計される。 トリペプチド配列 Phe-Pro-Mpg は、トリペプチドが3非極性アミノ酸からなるように、非塩基性 P1 側鎖 (具体的に、メトキシプロピル) を有する。ペプチドボロン酸のエステルは非イオン性であり、エステル形成種はさらに親油性を与え、高速の受動性輸送を促す。
【0050】
コンピューター技術での確認によると、TRI 50b および Cbz-Phe-Pro-BoroMpg-OH の他のジオールエステルがよいバイオアベイラビリティをもつと推定できる。 すなわち、極性表面積 (PSAd) は、バイオアベイラビリティの推測可能パラメーターであり、60Å より大きい PSAd 価が受動性の経細胞輸送および既知薬剤のバイオアベイラビリティとよく相関する (Kelder, J. Pharm. Res., 1999, 16, 1514-1519)。ピナコールエステルTRI 50b を含む上記のペプチドボロン酸のジオールエステルについての測定によると、ジオールエステルは、表1に示すように、60Å を十分上回る PSAd 価を有し、受動性輸送および優れたバイオアベイラビリティの予測可能である。
【0051】
【表1】

【0052】
対応するモノヒドロキシアルコール (例えば、アルカノール) エステルは、不安定過ぎて、自動的に解裂してインビトロで酸を遊離する。ピナンジオールやピナコールなどのジオールのエステルは、モノヒドロキシアルコールのエステルを超える反応速度安定性の増加を有し、モノエステル誘導体への部分的加水分解後に、これらは、容易な分子内反応により再結合する傾向にある。
【0053】
本開示の要約
これらのTRI 50b の高度に望ましい特性の平衡を得るために、TRI 50b が加水分解しやすいことを発見した。すなわち、HPLC アッセイの酸性条件で、TRI 50b は短い半減期をもつ酸形態に変換される。これは、十二指腸内および消化管の他の箇所での潜在的な加水分解で、受動性輸送に抵抗し、強いて言えば、可変性バイオアベイラビリティの最上の指標となる能動性輸送により吸収されるイオン種になることを含む。
【0054】
TRI 50b の加水分解に対する不安定性はまた、この化合物およびその製剤の調製、ならびにそれを含有する医薬製剤の保存における欠点をもたらす。
【0055】
TRI 50b が提供する別の解決の困難は、データが対象間のバイオアベイラビリティにおける有意の可変を示すことである。このような可変性は、候補薬剤を受け容れがたくし、従って、観測された変化を減少せしめることが望まれる。
【0056】
TRI 50b の不安定性に対する理想の解決は、加水分解に安定なジオールエステルの開発である。 かかるTRI 50b のようなジオールエステルが TRI 50c に比して酸化に抵抗性であると推定できる。この点につき、環の大きさがボロネートの安定性に影響を及ぼし得ることおよびグリコラトホウ素 がピナコールに比して高い水安定性を示すことが知られている (D.S.Matteson, Stereodirected Synthesis with Organoboranes, Springer-Verlag, 1995, ch.1)。同様に、ピナンジオールエステルはピナコールよりも安定である。これは、ピナンジオール基が高度に立体的に妨げられ、ホウ素に対する求核的攻撃を嫌うからだと考えられる。実際に、ピナコールからピナンジオールへのエステル交換反応が報告されている (Brosz, CS, Tet. Assym, 8:1435-1440, 1997)。一方、逆プロセスは好ましくない。しかし、ピナンジオールエステルは、血漿内での解裂が遅すぎると思われ、改善されたジオールエステルを提供する必要がある。
【0057】
TRI 50b の不安定性についての別の解決は、その代わりに TRI 50c を投与することである。しかし、TRI 50c のデータによると、TRI 50c はバイオアベイラビリティがあまりに変動する。
【0058】
TRI 50c は不安定性もあり、ボロペプチド部分自体が脱ホウ素化 (炭素-ホウ素結合解裂) を介して、文献 (例えば、Wu et al, 前出) が教示するような酸化と以前から思われている経路により減成する傾向が問題である。減成の程度はかなり高いことがある。
【0059】
TRI 50b および TRI 50c について上記で説明されている性質は、これらの化合物に限定されるものでなく、他のボロペプチドエステルおよび酸に、その性質が量的に異なるとしても、共通している。
本開示は、とりわけ、特定の有機ボロン酸産物が高められた安定性をもつことに根拠がある。
【0060】
本開示の利点は、ボロネートジオールエステルについての問題および特に TRI 50b の不安定性ついての解決を含む。すなわち、ここに開示された産物は、中でも加水分解に対する安定性の点で TRI 50b および他の匹敵するエステルよりも安定である薬理学的に活性の化合物を提供する。本開示はさらに有機ボロン酸の不安定性の問題についての解決を含む。すなわち、ここに開示された産物は、中でも脱ホウ素について TRI 50c よりも安定である薬理学的に活性の化合物を提供する。開示の枠内で提供される安定性は絶対でなく、比較化合物に比べての改善である。開示により提供される利点はさらに経口製剤に有用性を有する予測外の産物を提供することを含む。
【0061】
ここに、ピナコールエステルの欠点を回避するアミノボロン酸誘導体を開示する。この開示は、高められた安定性を示すペプチドボロン酸誘導体をさらに含む。特に、開示はとりわけ、アミノボロン酸誘導体を含み、十二指腸においてイオン性ボロペプチド種を、ピナコールエステルの欠点を回避しながら、提供でき、バイオアベイラビリティを提供できる医薬製剤を含む。さらに、加水分解および脱ホウ素に比較的安定であり、トロンビン を阻害するための経口製剤に有用であるボロン酸誘導体を開示する。
【0062】
開示は、特定の有機ボロン酸薬剤、特に疎水性ボロペプチド (例えば、ジ- またはトリ-ペプチド)、およびさらに特に、非塩基性 P1 基を有するトロンビン阻害剤の薬学的に許容される塩基付加塩に関する。1クラスとして、このような塩は、先行技術の方向に反しているだけでなく、既知の化学に基づいては説明や根拠付けされ得ない改善されたレベルの安定性も有する。
【0063】
ひとつの態様において、本開示は、トロンビン S2 および S3 サブ部位に結合可能な疎水性部分に、ペプチド結合を介して連結されるトロンビン S1 サブ部位に結合可能な中性のアミノボロン酸残基を有するボロン酸の薬理学的に許容される塩基付加塩に関する。第1の実施態様において、例えば、下記式 (I) のボロン酸の薬学的に許容される塩基付加塩を開示する。
【0064】
【化4】

式中、
Y は、アミノボロン酸残基 −NHCH(R9)-B(OH)2 とともに、トロンビンの基質結合部位への親和性を有する疎水性部分を含み;
R9 は、1 以上のエーテル結合(例えば 1 または 2)により遮られる直鎖アルキル基であり、そのうち酸素および炭素原子の全数が 3、4、5 または 6(例えば 5)であり、あるいは R9 は−(CH2)m-W であり、うち m が 2、3、4 または 5(例えば 4) であり、W が −OH またはハロゲン (F、Cl、Br または I)である。R9 は、1サブセットの化合物におけるアルコキシアルキル基、例えば、4 炭素原子を含有するアルコキシアルキルである。
【0065】
開示は、トロンビンの疎水性ボロン酸阻害剤の薬学的に許容される塩基付加塩を含み、従って生理的 pH および 25℃ で 1.0 より大きい 1-n-オクタノールと水との分配係数を有するペプチドボロン酸のかかる塩を含む。開示において有用ないくつかのペプチドボロン酸は少なくとも 1.5 の分配係数を有する。開示において有用な疎水性ペプチドボロン酸は 5 を超えない分配係数を有する。
【0066】
特定の実施例として、トロンビンの疎水性ボロン酸阻害剤の薬学的に許容される塩基付加塩を開示する。このような阻害剤は、疎水性アミノ酸を含有し得、このクラスのアミノ酸は、その側鎖が、ヒドロカルビル、鎖中酸素を含有するかおよび/または鎖中酸素もしくはヘテロアリールにより分子の残りに連結されているヒドロカルビル、またはヒドロキシ、ハロゲンもしくはトリフルオロメチルにより置換されたときに上記した基のいずれかであるものを含む。代表的な疎水性側鎖は、アルキル、アルコキシアルキル、なお、これらの基は少なくとも1のアリールまたはヘテロアリールで置換されていることがある、アリール、ヘテロアリール、少なくとも1のアルキルで置換されたアリール、および少なくとも1のアルキルで置換されたヘテロアリールを含む。上記した部分のひとつにより置換されているか、なんら置換されていないプロリンおよび他のイミノ酸も疎水性である。
【0067】
いくつかの 疎水性側鎖は、1 〜 20 炭素原子、例えば、1、2、3 または 4 炭素原子を有する非環状部分を含有する。典型的に環状基を含むが、必ずしも 5 〜 13 環メンバーを含有していない側鎖は、多くの場合、フェニルまたは1もしくは2のフェニルで置換されたアルキルである。
【0068】
疎水性の非ペプチドは、上記のように疎水性アミノ酸の側鎖を形成し得る部分に典型的に基づく。
疎水性化合物は、例えば、1アミノ基および/または1酸基 (例えば、 COOH, -B(OH)2)を含有し得る。一般的に、なんらの1つのタイプの複数の極性基を含有しない。
【0069】
疎水性有機ボロン酸のひとつのクラスは、1-n-オクタノールと水との分配係数が生理的 pH および 25℃ で 1 より大きい log P として表される。例えば、TRI 50c は分配係数約 2 を有する。
疎水性有機ボロン酸のいくつかのサブクラスは、下記の「実施例についての詳細な説明」において式 (I) および (III) で示されるものである。
【0070】
別の実施態様において、開示は、下記式 (II)のペプチドボロン酸の薬学的に許容される塩基付加塩である。
【化5】


式中、
X はN末端アミノ基に結合する部分であり、NH2 を形成する H であり得る。X の同一性は重要でなく、上記の特定の X 部分であり得る。ある実施例において、ベンジルオキシカルボニルである。
【0071】
aa1 は、20 を超えない炭素原子 (例えば、15 まで、および任意に 13 C 原子まで) を含有するヒドロカルビル側鎖を有し、13 までの炭素原子を有する少なくとも1の環状基を含むアミノ酸である。特定の実施例において、aa1 の環状基は 5 または 6 員環を有する。例えば、aa1 の環状基はアリール基、特にフェニルであり得る。典型的には、aa1 側鎖中に1または2の環状基が存在する。ある種の側鎖は1または2の 5- または 6-員環で置換されたメチルを含むか、あるいはそのメチルからなる。
【0072】
さらに特に、aa1 は Phe、Dpa またはこれらの全般的または部分的水素化類似体である。全般的水素化類似体は Cha であり、従って開示は、中性の P1 (S1-結合) 部分を有するトロンビン阻害剤、特に選択性トロンビン阻害剤である有機ボロン酸の塩、例えば金属塩を含む薬剤を含む。トロンビンの S3、S2 および S1 部位に結合する部分についてのさらなる情報については下記を参照:例えば、Tapparelli C et al, Trends Pharmacol. Sci. 14: 366-376, 1993; Sanderson P et al, Current Medicinal Chemistry, 5: 289-304, 1998; Rewinkel J et al, Current Pharmaceutical Design, 5:1043-1075, 1999; Coburn C, Exp. Opin. Ther. Patents 11(5): 721-738, 2001。開示のトロンビン 阻害性塩は、前述に挙げられた公表に記載の S3、S2 および S1 親和性基を有するものに限定されない。
【0073】
aa2 は 4 〜 6 員環を有するイミノ酸である。あるいは、aa2 は、C3-C13 ヒドロカルビル基、例えばC3-C6 ヒドロカルビル環を含む C3-C8 ヒドロカルビル基により N-置換された Gly である。ヒドロカルビル基は飽和され得る、例えば、例示的 N-置換基はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルである。1以上の不飽和結合を含有するヒドロカルビル基としては、フェニル、およびフェニルで置換されたメチルやエチル、例えば、2-フェニルエチルおよび β,β-ジアルキルフェニルエチルであり得る。
【0074】
水溶液中のボロネートが ‘三方晶’ B(OH)2 または ‘四面体’ B(OH)3- ホウ素種を形成するかどうかについて文献上論議があるが、NMR の証拠からすると、ボロン酸の第1 pKa 以下の pH で主なホウ素種は中性の B(OH)2 のようである。十二指腸で pH は 6 と 7 の間にあるので、三方晶種がそこでは顕著とみられる。いずれにせよ、シンボル −B(OH)2 は四面体および三方晶のホウ素種を含み、本明細書を通じて、三方晶ホウ素種を示すシンボルは、四面体種を包含する。このシンボルはさらに無水形のボロン基も含む。
この塩は溶媒和物、特に水和物の形態であり得る。
【0075】
塩は、ボロン酸が単に脱プロトンされている酸塩を含むか、その酸塩から基本的になり得る。従って、本開示は、単一の負電荷を顕著に保持する(50 mol %を超える) 産物におけるボロネート基に一致する金属/ボロネート化学量を有する産物を含む。
【0076】
本発明は塩の経口製剤も提供する。特に、固体形態の塩、例えば圧縮錠やカプセルとして製剤される粉末の塩を含む経口製剤を提供する。
【0077】
本開示のさらなる態様により、抗トロンビン活性を必要とする状態を処置する方法を提供する。 この方法は、式 (I) ボロン酸の塩の医療上有効量を、かかる状態にある者またはそのおそれのある者に経口投与することを含む。
さらに下記するように、開示の塩を含む血液透析液も開示する。
【0078】
本明細書に記載の塩は、ボロン酸と強塩基との反応により得られうる産物 (反応により得られた産物の特性をもつ) を含み、用語 “塩” をそのように解すべきである。従って、開示された産物に関して用語 “塩” は、産物が個別的なカチオンおよびアニオンを含有することを必ずしも意味するのではなく、ボロン酸と塩基の反応により取得し得る産物を包含すると解すべきである。開示は、多かれ少なかれ配位化合物の形態にある産物を包含する。このように、本開示は、ボロン酸 (I) と強塩基との反応により得られうる産物 (反応により得られた産物の特性をもつ)、ならびにかかる産物の予防を含む治療的使用を提供する。
【0079】
本開示は、塩の調製方法に限定されない。ただし、塩はボロン酸 (I) および対イオンから誘導されるボロネート種を含有する。かかるボロネート種は、いかなる平衡形態にもあるボロネートアニオンであり得る。用語 “平衡形態” は、平衡反応式で表示され得る同じ化合物の異なる形態を意味する (例えば、ボロン酸無水物と平衡するボロン酸および異なるボロネートイオンと平衡するボロン酸)。ボロネートは固体相で無水物を形成でき、そして開示のボロネート塩は固体相でボロン酸平衡種としてボロネート無水物を含み得る。塩が、対イオンを含む塩基とボロン酸 (I) との反応により調製されなけばならないことはない。さらに、開示は、かかる酸/塩基反応により間接的に調製されるとみられ得る産物、ならびにかかる間接的調製により得られうる塩 (反応により得られた産物の特性をもつ) を含む。可能な間接的調製の例として、塩の最初の回収後、それを精製および/または処理して、その物理化学的性質を改変する、例えば、固体形態または水和物形態、あるいはその両方を改変する方法を挙げ得る。
【0080】
いくつかの実施態様において、塩のカチオンは1価である。
いくつかの実施態様において、塩は無水種を含む;あるいは無水種を基本的に含まない。
【0081】
塩は単離された形態であり得る。塩は、例えば、実施例28の方法で決定されるように、少なくとも約 90%、例えば約 95% であるか、それ以上の純度を有する。医薬製剤の場合、かかる形態の塩を薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体と配合し得る。
【0082】
開示は、中間体としての対応ボロン酸から塩を調製する方法ならびに式 (I) の中間体ボロン酸およびその調製方法を含む。
さらなる開示の態様および実施態様は下記の説明および請求項に記載する。
【0083】
本願の明細書および請求項を通して、“含む” および “含有する” ならびにその変形、例えば、“含んでいる” および “含み” は、“含むが、限定されない” を意味し、他の部分、付加物、成分、整数または工程を排除する(排除しない)意図ではない。
【0084】
本願は、有機ボロン酸の安定性 (脱ホウ素化に対する抵抗性) が塩の形態、例えば金属塩での有機ボロン酸の提供により増大され得ることを示すデータを含有する。単一の試験において、TRI 50c のアンモニウム塩は乾燥で分解されてアンモニアを産出するようであり、一方、コリン塩は脱ホウ素化の不純物への迅速な分解を示した。試験は繰り返した観測がなされたものではないが、アンモニウムおよびコリン塩を除外したサブクラスをここでは提供する。塩は酸塩であり得る。いずれの場合でも、この安定化技法は、開示の部分を形成し、中でも、“背景” に記載の有機ボロン酸および下記する公表文献に記載の有機ボロン酸に適用される。
【0085】
図面の簡単な説明
図1は、実施例32のプロットであり、TRI 50b または TRI 50c 経口投与後の経口相クレアランスおよび速度を示す。
図2は、実施例32の第2プロットであり、TRI 50b または TRI 50c 十二指腸内投与後の経口相クレアランスおよび速度を示す。
【0086】
いくつかの実施例についての詳細な説明
用語集
下記の用語および略号を本明細書で使用する。
【0087】
ボロン酸の塩に用いる表現 “酸塩” は、三方晶の酸基 -B(OH)2 の単一 OH 基が脱プロトン化されている塩を意味する。 すなわち、ボロネート基が単一の負電荷を保持し、-B(OH)(O-) または [-B(OH)3]- で表される塩は酸塩である。この表現は、ボロン酸のカチオンに対するモル比が 約 n 対 1 である価 n を有するカチオンの塩を包含する。実際上の用語において、観測される化学量は厳密に n:1 でないが、概要的に n:1 化学量に一致する。例えば、カチオン量は n:1 化学量について計算された量から変わり得るが、約 10% を超えることはなく、例えば、約 7.5% 未満であり、ある場合において、観測されるカチオン量は約 1% 未満までの計算量から変わり得る。計算される量は ボロネートの三方晶形に適切に基づく。(原子レベルで、酸塩に化学量論的に一致する塩は、平均が単一の脱プロトンとほぼなるプロトン付加状態の混合におけるボロネートを含有し得、かかる “混合された” 塩は用語 “酸塩” に含まれる)。酸塩の例はモノナトリウム塩およびヘミ亜鉛塩である。
【0088】
α-アミノボロン酸すなわちBoro(aa) は、CH2 基が BO2 で置換されたアミノ酸を意味する。
用語 “アミノ基保護部分” は、ペプチドまたはアミノ酸のアミノ基、特にN末端アミノ基を誘導するのに使用されるいかなる基をも意味する。かかる基は、限定でないが、アルキル、アシル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニルおよびスルホニル部分を含む。しかし、用語 “アミノ基保護部分” は、通常有機合成で使用されるこれらの特定の保護基に限定する意図でなく、また容易に解裂する基に限定する意図でもない。
【0089】
文言 “薬学的に許容される” は、正当な医学的判断の範囲内で、過剰の毒性、刺激、アレルギー反応などの問題または合併症なしに、ヒトまたは動物の組織との接触での使用に適し、合理的な利点/危険性比をもつ化合物、材料、組成物および/または容量形態を意味するものとして、本明細書で使用する。
【0090】
表現 “トロンビン阻害剤” は、正当な薬理学的判断の範囲内で、トロンビンの阻害剤として潜在的および顕在的に薬学上な有用な産物を意味し、薬学的に活性の種を含み、かつトロンビン阻害剤として記述され、促進され、または認められている物質を意味する。かかるトロンビン阻害剤は、選択的であり得、正当な薬理学的判断の範囲内で、他のプロテアーゼに比してトロンビンに選択的と見られるものである。用語 “選択的トロンビン阻害剤” は、薬学的に活性種を含み、かつトロンビン阻害剤として記述され、促進され、または認められている物質を意味する。
【0091】
用語 “ヘテロアリール” は、少なくとも1(例えば、1、2 または 3) の環内ヘテロ原子を有し、コンジュゲート環内二重結合をもつ環システムを意味する。用語 “ヘテロ原子” は、酸素、硫黄および窒素を含む。なお、硫黄は時にあまり好ましくない。
【0092】
“天然のアミノ酸” は、下記の中性の (疎水性または極性)、正電荷または負電荷アミノ酸から選択される L-アミノ酸 (またはその残基) を意味する。
疎水性 アミノ酸:
A = Ala = アラニン
V = Val = バリン
I = Ile = イソロイシン
L = Leu = ロイシン
M = Met = メチオン
F = Phe = フェニルアラニン
P = Pro = プロリン
W = Trp = トリプトファン
極性 (中性または非電荷の) アミノ酸
N = Asn = アスパラギン
C = Cys = システイン
Q = Gln = グルタミン
G = Gly = グリシン
S = Ser = セリン
T = Thr = トレオニン
Y = Tyr = チロシン
正電荷 (塩基性) アミノ酸
R = Arg = アルギニン
H = His = ヒスチジン
K = Lys = リシン
負電荷 アミノ酸
D = Asp = アスパラギン酸
E = Glu = グルタミン酸.
【0093】
ACN = アセトニトリル
アミノ酸 = α-アミノ酸
塩基付加塩 = 遊離の酸(この場合、ボロン酸) に無機または有機の塩基の付加から調製される塩
Cbz = ベンジルオキシカルボニル
Cha = シクロヘキシルアラニン (疎水性非天然型アミノ酸)
電荷される (薬剤または薬剤分子のフラグメント、例えばアミノ酸残基に用いられるように) = アミノ、アミジノまたはカルボキシ基の場合のように生理的 pH で電荷を保持すること
cha = ジシクロヘキシルアラニン (疎水性非天然型アミノ酸)
Dpa = ジフェニルアラニン (疎水性非天然型アミノ酸)
薬剤 = 薬学的に有用な物質、インビボで活性またはプロドラッグ
i.v. = 静脈内
Mpg = 3-メトキシプロピルグリシン (疎水性非天然型アミノ酸)
多価 = 少なくとも2価、例えば2または3価
中性の (薬剤または薬剤分子のフラグメント、例えばアミノ酸残基に用いられるように) = 非電荷 = 電荷を生理的 pH で保持しない
【0094】
Pinac = ピナコール = 2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール
ピナンジオール = 2,3-ピナンジオール = 2,6,6-トリメチルビシクロ [3.1.1] ヘプタン-2,3-ジオール
Pip = ピペコリン酸
p.o. = 経口 = 口を通って (すなわち、経口製剤は p.o. で投与される)
s.c. = 皮下
強塩基 = ボロン酸と反応するのに十分高い pKb をもつ塩基。この適当な塩基は pKb 7 以上、例えば 7.5 以上、例えば約 8 以上を持つ
THF = テトラヒドロフラン
Thr = トロンビン
【0095】
化合物
開示の産物は、トロンビン S2 および S3 サブ部位に結合可能な疎水性部分にペプチド結合を介して連結されたトロンビン S1 サブ部位に結合可能な中性のアミノボロン酸残基を有するボロン酸の塩を含む。開示は下記式 (I) の酸の塩を含む:
【化6】

式中、
Y は、アミノボロン酸残基 −NHCH(R9)-B(OH)2 とともに、トロンビンの基質結合部位への親和性を有する疎水性部分を含み;
R9 は、1 以上のエーテル結合(例えば 1 または 2)により遮られる直鎖アルキル基であり、そのうち酸素および炭素原子の全数が 3、4、5 または 6(例えば 5)であり、あるいは R9 は、-(CH2)m-W であり、うち m が 2、3、4 または 5(例えば 4)であり、W が −OH またはハロゲン (F、Cl、Br または I)である。1以上のエーテル結合 (-O-) により遮られている直鎖アルキルの例として、アルコキシアルキル (1の遮り) およびアルコキシアルコキシアルキル (2の遮り) がある。 R9 は、化合物の1サブセットにおけるアルコキシアルキル基、例えば、4 炭素原子を含有するアルコキシアルキルである。
【0096】
典型的には、YCO- は、トロンビンの S2 サブ部位に結合するアミノ酸残基 (天然または非天然の)、トロンビンの S3 サブ部位 に結合する部分にN末端結合するアミノ酸残基を含む。
【0097】
式 (I) 酸の1クラスにおいて、YCO- は、トロンビンの S3 および S2 結合部位に結合する任意にN末端保護されたジペプチド残基であり、酸中のペプチド結合は、鎖中および/または環中に窒素、 酸素または硫黄を任意に含有し、ハロ、ヒドロキシおよびトリフルオロメチルから選択された置換基で任意的に置換される C1-C13 ヒドロカルビル基により任意的におよび独立的に N-置換される。N末端保護基は、存在するとき、上記定義の基 X (水素以外の) であり得る。通常、酸は非 N-置換ペプチド結合を含む。N-置換ペプチド結合が存在するとき、置換基はしばしば 1C 〜 6C ヒドロカルビル、例えば飽和ヒドロカルビルであり; N-置換基はいくつかの実施態様においてシクロアルキルなどの環、例えばシクロペンチルであり得る。酸の1クラスはN末端保護基 (例えば、X 基) および非置換ペプチド結合を有する。
【0098】
YCO- がジペプチド残基 (N末端が保護され、または保護されない) であるとき、S3-結合アミノ酸残基は R 配置であり得、および/または S2-結合残基は S 配置であり得る。フラグメント−NHCH(R9)-B(OH) はR 配置であり得る。しかし、開示はこれらの配座のキラル中心に限定されない。
【0099】
化合物の1クラスにおいて、P3 (S3-結合) アミノ酸および/または P2 (S2-結合) アミノ酸の側鎖は、下記式 A または B の基から選択される水素以外の部分である。

-(CO)a-(CH2)b-Dc-(CH2)d-E (A)
-(CO)a-(CH2)b-Dc-Ce(E1)(E2)(E3) (B)

式中、
a は 0 または 1 であり;
e は 1 であり;
b および d は、独立的に 0 または (b+d) が 0 〜 4 もしくは (b+e) が 1 〜 4 であり得るような整数であり得;
c は 0 または 1 であり;
D は O または S であり;
E は、H、C1-C6 アルキル、または通常 14 員までを含有の環基であり、特に 5-6 員環 (例えば、フェニル) もしくは 8-14 員の縮合環系 (例えば、ナフチル) である飽和または不飽和の環基であり、このアルキルまたは環状基は、C1-C6 トリアルキルシリル、-CN、-R13、-R12OR13、-R12COR13、-R12CH2R13 および -R12O2CR13 から独立的に選択された 3 までの基 (例えば、1 つの基) により、なお、R12 は (CH2)f− であり、および R13 は -(CH2)gH であり、または非水素原子が炭素原子および環内ヘテロ原子からなり、数が 5 〜 14 であり、そして環系 (例えば、アリール基) および任意にアルキルおよび/またはアルキレン基を含有する部分により置換されており、うち、f および g はそれぞれ独立的に 0 〜 10 であり、特にg は少なくとも 1 である(なお、−OHも置換基と記述され得る)。ただし、(f+g) は 10 を超えない、さらに特に 6 をこえない、そして特に 1、2、3 または 4 である。およびただし、置換基が環系を含有する該部分であるか、E が C1-C6 トリアルキルシリルであるとき、単一の置換基のみが存在し、E1、E2 および E3 はそれぞれ独立的に -R15 および -J-R15 から選択され、J は 5-6 員環であり、R15 は C1-C6 トリアルキルシリル、-CN、-R13、-R12OR13、-R12COR13、-R12CH2R13、-R12O2CR13 および1または2のハロゲン(例えば、後者の場合、ジクロロフェニルである-J-R15 部分を形成する) から選択され、うち、R12 および R13 はそれぞれ上記で定義された R12 部分および R13 部分である (ある種の酸において、E1、E2 および E3 は R13 基を含有し、g は 0 または 1 である)。
【0100】
式 (A) または (B) の部分において、いずれの環も炭素環または芳香族、あるいはその両者であり、炭素原子に結合している1以上の水素原子が任意にハロゲン、特に F で置換されている。
ある例において、a は 0 である。a が 1 であると、c は 0 であり得る。特定の例において、(a+b+c+d) および (a+b+c+e) は 4 未満であり、特に 1、2 または 3 である。 (a+b+c+d) は0であり得る。
【0101】
E、E1、E2 および E3 は、例えば、フェニル、ナフチル、ピリジル、キノリニルおよびフラニルなどの芳香族環;シクロヘキセニルなどの非芳香族不飽和環;シクロヘキシルなどの飽和環を含む。E は芳香族および非芳香族の両方を含有する縮合環、例えばフルオレニルであり得る。E、E1、E2 および E3 基の1クラスは芳香族 (ヘテロ芳香族を含む) 環、特に 6-員芳香族環である。ある化合物において、E1 は H であり、一方、E2 および E3 は H でない。これらの化合物において、E2 および E3 基の例はフェニル (置換または非置換) および C1-C4 アルキル、例えばメチルである。
【0102】
実施態様の1クラスにおいて、E は、C1-C6 アルキル、(C1-C5 アルキル)カルボニル、カルボキシ C1-C5 アルキル、アリール (ヘテロアリールを含む)、特に 5-員または好ましくは 6-員のアリール (例えば、フェニルまたはピリジル) またはアリールアルキル (例えば、アリールがヘテロ環状で、好ましくは 6-員であるアリールメチルまたはアリールエチル) である置換基を含有する。
【0103】
実施態様の別のクラスにおいて、E は、OR13 であり、うち R13 は 6-員環であり得、芳香族 (例えば、フェニル) であるか、または 6-員環で置換されたアルキル (例えば、メチルまたはエチル) である置換基を含有する。
【0104】
式 A または B の部分の1クラスは、E が任意に置換、特に 2-位または 4-位で -R13 または -OR13により置換された6-員環芳香族環である。
開示は、P3 および/または P2 側鎖 が、1 または 2 水素がハロゲン、例えば、F または Cl で置換された環状基を含む塩を含む。
【0105】
開示は、式 (A) または (B) の側鎖が下記式 (C)、(D) または (E) である1クラスの塩を含む。
【化7】


式中、q は0 〜 5、例えば、0、1 または 2 であり、各 T は独立的に、水素、ハロゲン (例えば、F または Cl)、-SiMe3、-R13、-OR13、-COR13、-CH2R13 または -O2CR13 である。構造 (D) および (E) のいくつかの実施態様において、T は、フェニル基の 4-位にあり、-R13、-OR13、-COR13、-CH2R13 または O2CR13 であり、R13 は C1-C10 アルキルであり、特に C1-C6 アルキルである。1サブクラスにおいて、T は -R13 または -OR13 であり、例えば、f および g は各々独立的に 0、1、2 または 3 であり、このサブクラスのある側鎖基において T は -R12OR13 であり、R13 は H である。
【0106】
1クラスの部分において、側鎖は式 (C) であり、各 T は独立的に R13 または OR13 であり、R13 は C1-C4 アルキルである。これらの化合物のあるものにおいて、R13 は、分枝アルキルであり、他のものにおいて直鎖である。ある部分において、炭素原子数は 1 〜 4 である。
【0107】
多くのジペプチドフラグメントYCO- (ジペプチドはN末端が保護され、または保護されていない) において、P3 アミノ酸は上記の式 (A) または (B) の側鎖を有し、P2 残基がイミノ酸である。
【0108】
従って、開示は、中性の P1 (S1-結合) 部分を有するトロンビン阻害剤、特に選択性トロンビン阻害剤である有機ボロン酸の塩、例えば金属塩を含有する薬剤を含む。トロンビン の S3、S2 および S1 部位に結合する部分についてのさらなる情報は下記を参照:例えば Tapparelli C et al, Trends Pharmacol. Sci. 14: 366-376, 1993; Sanderson P et al, Current Medicinal Chemistry, 5: 289-304, 1998; Rewinkel J et al, Current Pharmaceutical Design, 5:1043-1075, 1999; and Coburn C Exp. Opin. Ther. Patents 11(5): 721-738, 2001。開示のトロンビン阻害性塩は、上記に挙げられた文献に記載される S3、S2 および S1 親和性基を有するものに限定されない。
ボロン酸はトロンビン についての Ki が約 100 nM 以下、例えば約 20 nM 以下であり得る。
【0109】
サブセットの式 (I) 酸は、下記式 (III) の酸を含む。
【化8】


X はN末端アミノ基に結合している部分であって、NH2 を形成するための H であり得る。X の同定は重要でなく、上記の特定の X 部分であり得る。一例として、ベンジルオキシカルボニルであり得る。
【0110】
ある例において、X は、R6-(CH2)p-C(O)-、R6-(CH2)p-S(O)2-、R6-(CH2)p-NH-C(O)- または R6-(CH2)p-O-C(O)- であり、うち、p は 0、1、2、3、4、5 または 6 であり (うち、0 および 1 が好ましい)、R6 は、H あるいはハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、C5-C6環状基、C1-C4 アルキル、および 5 〜 13-員環状基に結合するかおよび/またはこれに鎖中 O を介して連結するC1-C4 アルキルから選択された 1、2 または 3 の置換基により選択的に置換される 5 〜 13-員環状基である。上記アルキル基は、ハロゲン、アミノ、ニトロ, ヒドロキシおよび C5-C6環状基から選択される置換基により置換される。特に、X は R6-(CH2)p-C(O)- または R6-(CH2)p-O-C(O)- であり、p は 0 または 1 である。該 5 〜 13-員環状基は、しばしば芳香族またはヘテロ芳香族、例えば、6-員の芳香族またはヘテロ芳香族基である。多くの場合、基は置換されていない。
例示的な X 基は、 (2-ピラジン) カルボニル、(2-ピラジン) スルホニルおよび特にベンジルオキシカルボニルである。
【0111】
aa1 は、20 までの炭素原子 (例えば、15 まで、任意に 13 までのC 原子) を含有するヒドロカルビル側鎖を有し、13 までの炭素原子を有する少なくとも1の環状基を含むアミノ酸残基である。ある例において、aa1 の環状基は 5 または 6 員環である。例えば、aa1 の環状基はアリール、特にフェニルである。典型的には、aa1 側鎖中に1または2の環状基が存在する。ある種の側鎖は、1または2の 5- または 6- 員環で置換されたメチルを含むか、このメチルからなる。
【0112】
さらに特に、aa1 は、Phe、Dpa またはその全般的または部分的に水素化された類似体である。 全般的水素化類似体は Cha および Dcha である。
aa2 は 4 〜 6員環をもつイミノ酸残基である。
【0113】
例示的クラスの産物は、aa2 が下記式 (IV) のイミノ酸残基であるものを含む。
【化9】


式中、R11 は -CH2-、CH2-CH2-、-S-CH2- または −CH2-CH2-CH2-であり、環が 5 または 6-員のとき、これらの基は1以上の -CH2- 基で 1 〜 3 C1-C3 アルキル基により置換されており、例えば R11 基 -S-C(CH3)2- を形成する、これらのイミノ酸のうち、アゼチジン-2-カルボン酸、特に (s)-アゼチジン-2-カルボン酸およびさらに特にプロリンが例である。
【0114】
上記からわかるように、非常に好ましいクラスの産物は、aa1-aa2 が Phe-Pro であるものからなる。他の好ましいクラスにおいては aa1-aa2 が Dpa-Pro である。他の産物においては、aa1-aa2 が Cha-Pro または Dcha-Pro である。もちろん、Pro が (s)-アゼチジン-2-カルボン酸により置換されたクラスの対応産物も含まれる。
【0115】
R9 は上記に定義されたものであり、 式 −(CH2)s−Z の部分 R1 であり得る。整数sは 2、3 または 4 であり、W は −OH、−OMe、−OEt またはハロゲン (F、Cl、I または、好ましくは Br) である。 特に例示的な Z 基は −OMe および −OEt、特に −OMe である。ある例において s は全 Z 基について、実際開示の全化合物について 3 である。特定の R1 基は、2- ブロモエチル、2-クロロエチル、2-メトキシエチル、4-ブロモブチル、4-クロロブチル、4-メトキシブチルおよび、特に 3-ブロモプロピル、3-クロロプロピル および 3-メトキシプロピルである。さらに特に、R1 は 3-メトキシプロピルである。2-エトキシエチルが別の好ましい R1 基である。
【0116】
従って、非常に好ましいクラスの塩は、式 X-Phe-Pro-Mpg-B(OH)2、特に Cbz-Phe-Pro-Mpg-B(OH)2 の酸のものからなる。また好ましいものは、Mpg が、特に好ましい R1 基の他のものをもつ残基で置換されるか、および/または Phe が Dpa または他の aa1 残基で置換された、これらの化合物の類似体である。
【0117】
塩の aa1 部分は好ましくは R 配置である。aa2 部分は好ましくは (S)-配置である。特に好ましい塩は aa1 が (R)-配置で、aa2 が (S)-配置である。キラル中心 −NH-CH(R1)-B- は好ましくは (R)-配置である。市販製剤は (R,S,R) 配置に、例えば下記 Cbz-Phe-Pro-BoroMpg-OH の塩の場合、キラル中心を持つと思われる。
【化10】

【0118】
開示は、Cbz-(R)-Phe-(S)-Pro-(R)-boroMpg-OH (および他の化合物、式 X-(R)-Phe-(S)-Pro-(R)-boroMpg-OH) の塩を含み、これは少なくとも純度 90% 、例えば、少なくとも純度 95% である。
【0119】
広い用語において、本明細書に記載の塩は、上記の有機ボロン酸と強い塩基、例えば、塩基性金属化合物との反応産物に対応するものである。しかし、塩は、かかる反応の結果である産物に限定されず、別の経路で得られうる。
【0120】
従って、塩は、式 (I) の酸と強い塩基との接触により取得可能である。すなわち、開示は式 (I) の酸と強い塩基との反応産物の特徴をもつ産物 (事象の組成) を包含する。塩基は薬学的に許容され得るものである。
【0121】
適当な塩は下記のように言いうる:
1. 金属、とりわけ1価金属(アルカリ金属とも言いうる)の塩;
2. 強い有機窒素含有の化合物の塩、この化合物は下記を含む:
2A. グアニジンおよびその類似体の塩
2B. 例として (i) アミノ糖および (ii) 他のアミンを含む強い塩基性アミンの塩。
上記の塩について、特に例示はアルカリ金属、特に Na および Li である。また例示はアミノ糖である。
【0122】
具体的な塩は酸ボロネートであるが、実際のところ、酸塩は非常に少量の二重に脱プロトンされたボロネートを含有することがある。用語 “酸ボロネート” は、B-OH 基のひとつが脱プロトン化された三方晶 B(OH)2 基、およびそれと等価の対応四面体基を意味する。酸ボロネートは単一の脱プロトン化に一致する化学量を有する。
【0123】
従って、開示は、下記式 (V) で表される塩を含む産物(事象の組成物)を含む:
【化11】


式中、Yn+ は強い塩基から取得可能な薬学的に許容されるカチオンであり、aa1、aa2、X および R1 は上記に定義のとおりである。R1 が別の R9 基で置換された産物を含む。
【0124】
1クラスの塩は溶解度が約 10 mM 以上、例えば、少なくとも約 20mM であり、この溶解性は実施例に記載のように溶解 25mg/ml で測定しうる。さらに特に、溶解度が少なくとも約 50mM であり、この溶解性は実施例に記載のように溶解 50mg/ml で測定しうる。
【0125】
本発明は、式 “(ボロネート-)n カチオンn+”である(これにより表示されうる)塩に一致する観測化学量をもつボロン酸 (I) の塩を含む。1クラスの該塩は下記式により表示される:
[Cbz-(R)-Phe-(S)-Pro-(R)-Mpg-B(OH)(O-)]M+

式中、 M+ は1価カチオン、特にアルカリ金属カチオンを示す。すぐにわかるように、上記の表示は産物の概念的な表示であって、その観測される化学量は文言どおりでなく厳密には 1:1 でない。上記式において、三方晶的に表示のボロネートは、常に三方晶、四面体または混合の三方晶/四面体であるボロネートを表す。
【0126】
特に例として下記を含む産物がある:
(i) (a) 式 (VIII) の酸:X-(R)-Phe-(S)-Pro-(R)-Mpg-B(OH)2、うち X は H またはアミノ保護基、特に Cbz、の酸、および (b) そのボロネートアニオンから選択される種;ならびに
(ii) 該種と組み合わされて価 n を有するイオン、この種および該イオンは、概念的種:イオンの化学量が n:1 に一致する化学量を持つ。1クラスの塩において、V は 1 である。
【0127】
次に対イオンを考察する:
1. 1価金属、特にアルカリ金属の塩
適当なアルカリ金属には、リチウム、ナトリウムおよびカリウムがある。これらのすべてがかなり溶性である。リチウムおよびナトリウムはその高い溶解性からして例証的である。リチウムおよび特にナトリウムの塩はカリウムに比して驚くべき高い溶解性をもつ。ナトリウムが多くの場合最も使用される。アルカリ金属の混合物を含有する塩は本発明に包含される。
【0128】
本発明は、下記式 (VI) の塩を含む産物を含む:
【化12】


式中、M+ はアルカリ金属イオンであり、aa1、aa2、X および R1 は上記の定義のとおりであり、塩はボロネート基のヒドロキシ基が塩の形態 (好ましくは、他の同様の M+ 基と) およびかかる塩の混合物である。R1 が他の R9 基で置換されたものも含む。
【0129】
2. 強い塩基性有機窒素含有の化合物
本発明は、上記で定義のペプチドボロン酸と強い有機塩基との反応により(により取得される産物の特質をもつ)取得可能な産物を含む。有機塩基の好ましい2クラスについて下記のセクション 2A および 2B で述べる。特に好ましいのは酸塩 (2ボロン性 −OH 基が脱プロトン化されている) である。最も普通に、この塩は単一型の有機対イオンを含有するが (痕跡の汚染物を無視する)、本発明は、有機対イオンの混合物を含有する塩を包含する;1サブクラスにおいて、異なる対イオンがすべて、下記のセクション 2A ファミリーに入るか、または場合により下記のセクション 2B ファミリーになる。他のサブクラスにおいて、この塩は、同じファミリー (2A または 2B) にすべてが由来しない有機対イオンの混合物を含む。
【0130】
適当な有機塩基は、pKb が 7 以上、例えば、7.5 以上、例えば範囲 8 以上のものを含む。親油性でないもの [例えば、少なくとも1極性官能基 (例えば、1、2 または 3 などの基)、例えばヒドロキシを有する] が好ましい;アミノ糖がひとつの好ましいクラスの塩基である。
【0131】
2A. グアニジンおよびその類似体
グアニジノ化合物 (グアニジン) は、原則的にグアニジノもしくは置換グアニジノ基を有する溶性で薬学的に許容される化合物、または置換もしくは非置換のグアニジン類似体であり得る。適当な置換基には、アリール (例えば、フェニル)、アルキルまたはエーテルもしくはチオエーテル結合で遮断されたアルキルがあり、 これらのアルキルは、典型的には1 〜 6、特にメチルまたはエチルの場合のように 1、2、3 または 4 炭素原子を含有する。グアニジノ基は、例えば末端窒素上に1、2、3 または 4 の置換基をもち得るが、通常は 1 または 2 置換基をもつ。1クラスのグアニジンはモノアルキル化され、他のクラスはジアルキルされている。グアニジン類似体の例としてチオグアニジンおよび 2-アミノピリジンがある。非置換グアニジノ基を有する化合物、例えばグアニジンおよびアルギニンは1つの特定のクラスを形成する。
本発明は、グアニジン類の混合物を含有する塩を包含する。
【0132】
特定のグアニジノ化合物は、L-アルギニンもしくは L-アルギニン類似体、例えば、D-アルギニンまたはホモアルギニンの D-もしくは好ましくは L- 異性体、またはアグマチン[(4-アミノブチル)グアニジン] である。あまり好ましくないアルギニン類似体は、例えばNG-ニトロ-L-アルギニン・メチルエステルおよび拘束グアニジン類似体、特に 2-アミノピリミジン、例えば 5,6,7,8-テトラヒドロ-2,6-キナゾリンジアミンなどの2,6-キナゾリンジアミンである。グアニジノ化合物はペプチドでもあり得る。例えばアルギニンを含有するジペプチドである。このジペプチドのひとつは L-チロシル-L-アルギニンである。
【0133】
いくつかの特定のグアニジノ化合物は下記式 (VII) の化合物である:
【化13】


式中、n は 1 〜 6、例えば少なくとも 2、例えば 3 以上であり、多くの場合 5 を超えない。特に、n は 3、4 または 5 である。R2 は H または カルボキシラートもしくは誘導カルボキシラートであり、例えば、エステル (例えば、C1-C4 アルキルエステル) またはアミドを形成する。R3 は H、C1-C4 アルキルまたは天然もしくは非天然のアミノ酸 (例えばチロシン) の残基である。式 (IV) の化合物は通常 L-配置である。式 (IV) の化合物はアルギニン (n=3、R2=カルボキシル、R3=H) およびアルギニン誘導体または類似体である。
【0134】
本発明は、下記式 (IX) の塩を含む産物を含む:
【化14】


式中、aa1、aa2、X および R1 は上記の定義のとおりであり、G+ はグアニジノ基を含む薬学的に許容される有機化合物またはその類似体のプロトン化形態ならびに塩であり、うち、ボロネート基の両ヒドロキシ基は塩の形態 (好ましくは、他の類似の G+ 基と) およびかかる塩の混合物である。R1 が他の R9 基で置換された産物も含む。
【0135】
2B. 強い塩基性 アミン
本発明は、上記に定義されたペプチドボロン酸とアミンである強い有機塩基との反応により取得可能な産物 (反応により得られた産物の特質をもつ産物) を含む。このアミンは原則的に溶性で薬学的に許容されるアミンである。
【0136】
予測されるように、望ましいクラスのアミンは、単一アミン基に加えて極性官能基を有するものを含む。かかる化合物は他のものよりも親水性であり、より溶性である。ある種の塩において、ひとつまたは各追加の官能基はヒドロキシである。いくつかのアミンは 1、2、3、4、5 または 6 の追加の官能基、特にヒドロキシ基を有する。1例示的クラスのアミンにおいて、 (アミノ+ヒドロキシ基):炭素原子の比率は 1:2 〜 1:1 であり、後者の比率が好ましい。これらの1以上の追加の極性官能基をもつアミンは、炭化水素、特にアミノ基および追加の極性基により置換されたアルカンであり得る。アミノ基は置換または非置換であり、アミノ置換基を除き、極性塩基は、例えば、 10 までの炭素原子を含有し、通常、3以下の炭素原子でなく、例えば、4、5 または 6 である。アミノ糖はこのカテゴリーの極性塩基に含まれる。
【0137】
本発明は、下記式 (X) の塩を含む産物を含む:
【化15】


式中、aa1、aa2、X および R1 は上記の定義のとおりであり、A+ は薬学的に許容されるプロトン化形態ならびに塩であり、うち、ボロネート基の両ヒドロキシ基は塩の形態 (好ましくは、他の類似の G+ 基と) およびかかる塩の混合物である。1クラスのかかる産物において、A+ は下記のセクション 2B(i) に記載されるアミンのプロトン化形態であり、他のクラスにおいて、A+ は下記のセクション 2B(ii) に記載されるアミンのプロトン化形態である。R1 が他の R9 基で置換された産物も含む。
【0138】
アミン塩基の好ましい2クラスについて下記のセクション 2B(i) および 2B(ii) で述べる。特に好ましいのは酸塩 (2ボロン性 −OH 基が脱プロトン化されている) である。最も普通に、この塩は単一型のアミン対イオンを含有するが (痕跡の汚染物を無視する)、本発明は、アミン対イオンの混合物を含有する塩を包含する;1サブクラスにおいて、異なる対イオンがすべてセクション2B(i) ファミリーに入るか、または場合によりセクション 2B(ii) ファミリーになる。他のサブクラスにおいて、この塩は、同じファミリー (2B(i) または 2B(ii)) にすべてが由来しない有機対イオンの混合物を含む。
【0139】
2B(i) アミノ糖
アミノ糖の同定は本発明において重要でない。好ましいアミノ糖には、開環の糖、特にグルカミンがある。環状アミノ糖も有用である。1クラスのアミノ糖は N-非置換であり他のクラスは、好ましくは1または2の N-置換基 (例えば、1) により置換されている。適当な置換基は、例えば、限定でないが、1 〜 12 の炭素原子を含有するヒドロカルビル基である。この置換基はアルキルもしくはアリール部分または両者を含みうる。例示的置換基は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7 および C8 アルキル基、特にメチルおよびエチルであり、なかでもメチルが好ましい。データによると、アミノ糖、特に N-メチル-D-グルカミンが驚くべき高い溶解性である。
【0140】
最も好ましいアミノ糖は下記の N-メチル-D-グルカミンである:
【化16】

【0141】
2B(ii) 他のアミン類
他の適当なアミンには、側鎖がアミノ基で置換されたアミノ酸 (天然または非天然の)、特にリシンがある。
【0142】
いくつかのアミンは下記式 (XI) の化合物である:
【化17】


式中、n、R2 および R3 は式 (IV) について定義されたものである。式 (VI) の化合物は通常 L-配置である。式 (VI) の化合物はリシン (n=4;R2=カルボキシル;R3=H) およびリシン誘導体または類似体である。最も好ましいアミンは L-リシンである。
【0143】
他の適当なアミンは窒素含有のヘテロ環である。少なくとも通常、かかるヘテロ環状化合物は脂環状である。1クラスのヘテロ環状化合物は N-置換であり、他のクラスは、好ましく、N-非置換である。ヘテロ環は、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンのように 6 環形成原子を含有しうる。1クラスのアミンは、極性置換基、特にヒドロキシで、例えば 1、2 または 3 置換されたN-含有のヘテロ環である。
【0144】
従って、本発明は、アミノ糖以外のアミンを含み、これは1以上の (例えば、1、2、3、4、5 または 6) 極性置換基、特にヒドロキシを1アミン基に加えて有する。かかる化合物は (アミノ+ヒドロキシ基):炭素原子の比率が 1:2 〜 1:1 であり、後者の比率が特に好ましい。
【0145】
本発明は、混合の塩、すなわちボロペプチド部分および/または対イオンの混合物を含有する塩を含むが、単一塩が好ましい。
固体状態の塩は溶媒、例えば水を含有しうる。1クラスの産物は塩が基本的に無水である。塩が水和物であるクラスも含まれる。
【0146】
開示の産物の使用
開示の塩はトロンビン阻害剤である。従って、トロンビンを阻害するのに有用である。従って、例えば、心筋梗塞の二次事象の治療および予防において、止血を制御するため、特に凝固を阻害するための能力を有する化合物が提供される。 化合物の医学的使用には、予防 (血栓症の処置および血栓症の発症を防ぐことを含む) および治療 (血栓症の再発症または二次的血栓性事象を防ぐことを含む) がある。
【0147】
これらの塩は、抗血栓形成が必要なときに、使用できる。さらに、式 (III) のボロン酸塩を含む塩が有益であり、このクラスは、治療または予防で動脈血栓症を処置するのに有用である。開示の塩は、ヒトを含む動物の血液および組織における血栓症および高凝固性の治療および予防に適用を有する。 用語 “血栓症” は、中でも 萎縮性血栓症、動脈血栓症、心臓血栓症、冠血栓症、クリ−プ血栓症、感染性血栓症、腸間膜血栓症、胎盤性血栓症、増殖性血栓症、外傷性血栓症および静脈血栓症を含む。
【0148】
高凝固性が血栓塞栓性疾患になり得ることが知られている。
開示の化合物で治療または予防しうる静脈血栓塞栓症の例として、静脈の閉塞、肺動脈の閉塞 (肺塞栓症)、深静脈血栓症、癌および癌化学療法に関連する血栓症、タンパク質 C 欠乏、タンパク質 S 欠乏、抗トロンビン III 欠乏および因子 V ライデンなどの親血栓性疾患をもつ血栓症、ならびに全身性紅斑性狼瘡 (炎症性複合組織疾患) などの獲得親血栓性障害からの血栓症がある。また、静脈血栓塞栓症について、開示の化合物は内在カテーテルの開通性を保持するのに有用である。
【0149】
開示の化合物で治療または予防しうる心原性血栓塞栓症の例として、血栓塞栓性卒中 (脳への血液供給の減少に関連する神経性障害を起こす特別の血栓)、動脈細動に関連する心原性血栓塞栓症 (上部の心室筋肉原線維の迅速で不規則なれん縮)、機械的心臓弁などの補てつ心臓弁に関連する心原性血栓塞栓症および心疾患に関連する心原性血栓塞栓症がある。
【0150】
動脈血栓症を含む状態の例として、不安定アンギナ (冠状原の胸部における激しい収縮性疼痛)、心筋梗塞 (不十分な血液供給からくる心筋細胞の死)、虚血性心疾患 (血液供給の閉鎖 (動脈狭窄などによる) 局所的虚血)、皮下経管の冠状血管形成の間または後の再狭窄、冠状動脈バイパスグラフトの閉塞および閉塞性脳血管疾患がある。また、動脈-静脈 (混合) 血栓症について、開示の化合物は動脈-静脈シャントの開通性を保持するのに有用である。
【0151】
高凝固性および血栓塞栓性疾患に関連する他の症状として、抗ホスホリピド抗体 (狼瘡抗凝固物) を循環するヘパリン補因子 II の遺伝性または獲得性不足、ホモシスチン血症、ヘパリン誘導の血小板減少症およびフィブリン溶解症を挙げることができる。
【0152】
挙げうる特定の使用として、静脈血栓症および肺塞栓症の治療的および/または予防的処置がある。開示の産物 (とりわけ TRI 50c の塩) についての好ましい適応は下記のものである:
【0153】
静脈血栓塞栓性事象 (例えば、深静脈血栓症および/または肺塞栓症) の予防。例として、股関節置換、膝関節置換、主要な股もしくは膝の手術などの整形外科的手術を受けた患者;癌について腹部または骨盤の手術など、血栓症のおそれが大きい全身的手術を受けた患者;3 日以上ベットから動けず、急性心臓不全、急性呼吸不全、感染のある患者。
【0154】
患者、特に末期腎疾患の患者における血液透析循環での血栓症の予防。
血液透析を要するか要しない末期腎疾患の患者における心臓血管事象 (死、心筋梗塞など) の予防。
内在のカテーテルを介して化学療法を受けている患者における静脈血栓塞栓性事象の予防。
【0155】
下肢動脈再生術(バイパス、動脈内容除去術、経管血管形成術など)を受けている患者における血栓塞栓性事象の予防。
静脈血栓塞栓性事象の予防。
【0156】
別の心臓血管剤、例えば、アスピリン (アセチルサリチル酸;アスピリンはドイツで登録商標である)、血栓溶解剤 (例えば下記参照)、抗血小板剤 (例えば下記参照) との併用における急性冠状症候(例えば、不安定なアンギナ、非Q波の心筋虚血/梗塞)における心循環系事象の予防。
アセチルサリチル酸、血栓溶解剤 (例えば下記参照) との併用における急性心筋梗塞の患者の処置。
【0157】
開示のトロンビン阻害剤は、このように、上記のすべての治療的および予防的処置に適応する。
ひとつの方法において、開示の産物は、血液透析の患者に、WO 00/41715 で他のトロンビン阻害剤について記載されているように、産物を透析液中に提供して使用する。従って、開示は、開示の産物を含む透析液および透析濃縮液、ならびに低分子量のトロンビン阻害剤を含有する透析液の使用を含む透析処置を必要とする患者の透析による処置方法を含む。また、開示の抗血栓性産物を透析液中に提供する、患者の透析による処置のための医薬の製造における開示の抗血栓性産物の使用を含む。
【0158】
他の方法において、開示の産物は、WO 01/41796 で他のトロンビン阻害剤について記載されているように、望ましくない細胞増殖に対抗するために使用する。望ましくない細胞増殖は、典型的には望ましくない過形成細胞増殖、例えば、平滑筋細胞、特に血管平滑筋細胞の増殖である。開示の産物は、特に動脈内膜過形成の処置に適用を有し、この過形成のひとつが平滑筋細胞の増殖である。再狭窄が新生動脈内膜過形成によると思われるので、開示の意味として再狭窄を含む。
【0159】
開示の産物は、虚血性障害の処置にも関する。特に、産物はWO 02/36157 で他のトロンビン阻害剤について記載されるように、非弁性動脈細動 (NVAF) またはそのおそれの患者のおける虚血性障害の処置(治療的または予防的)に使用し得る。虚血性障害は、一部の身体への血流が結果として制限される状態である。この用語は、血液、組織および/または臓器における血栓症および高凝固性を含むと理解される。挙げうる特定の使用には、虚血性心臓疾患、心筋梗塞、腎臓や脾臓などでの全身性栓塞事象があり、さらに、NVAF またはそのおそれの患者のおける脳血栓症、脳塞栓症および/または非脳血栓症もしくは塞栓症 (換言すると、血栓性もしくは虚血性卒中および一次的虚血性発作の処置 (治療的または予防的) ) を含む脳の虚血がある。
【0160】
開示の産物はまた、虚血性障害の処置にも関する。特に、産物はWO 03/007984 で他のトロンビン阻害剤について記載されるように、リウマチ性/関節炎性障害の処置に関する。すなわち、開示の産物は、慢性関節炎、リウマチ性関節炎、骨関節炎または硬直性脊椎炎の処置に使用できる。
【0161】
さらに、開示の産物は、血栓症、皮下経管血管形成 (PTA) および冠状バイパス手術の後の再閉塞 (すなわち、血栓症) の予防:微細外科および全般的な血管外科後の再血栓症の予防に使用できると期待される。さらなる適応として、細菌、多重骨折、中毒などのメカニズムによる広範な血管内凝固;血液が体内で、人造血管、血管ステント、血管カテーテル、機械的および生物学的補綴弁などの医療機器などの異物に接触するときの抗凝固処置;血液が心肺マシンや血液透析を用いる心循環系手術などの体外医療器具に接触するときの抗凝固処置がある。
【0162】
開示の産物は、高凝固性の症候のない望ましくない過剰のトロンビンが存在する症状、例えば、アルツハイマー病などの神経変性疾患の処置に適用を有する。凝固プロセスに対する作用に加えて、トロンビンは、多数の細胞 (好中球、繊維芽細胞、内皮細胞、平滑筋細胞など) を活性化することが知られている。従って、開示の化合物はまた、突発性および成人性呼吸困難徴候、放射線または化学療法後の肺繊維症、敗血病ショック、敗血病、炎症応答などの治療的および/または予防的処置に有用であり得る。これらの症状は、限定でないが、浮腫、冠状動脈疾患、脳動脈疾患、末梢動脈疾患などの急性もしくは慢性の動脈硬化症、再灌流障害および皮下経管血管形成術 (PTA) 後の再狭窄を含む。
【0163】
塩は膵臓炎の処置にも有用であり得る。
本明細書に記載の塩は、血小板凝固促進活性を阻害するのに有用であると考える。本発明は、動脈血栓症またはそのおそれのある哺乳動物、特にヒト患者に、本明細書に記載のボロン酸の塩を投与することにより血小板凝固促進活性を阻害する方法を提供する。また、血小板凝固促進活性を阻害するための医薬の製造における使用を提供する。
【0164】
産物の血小板凝固促進活性阻害剤としての使用は、本明細書に記載のボロン酸が動脈血栓症および静脈血栓症を阻害することが示されるとの観測から推定される。
【0165】
動脈血栓症を含む適応には、冠状症候 (特に、心筋梗塞および不安定アンギナ)、脳血管血栓、および動脈細動、心臓弁疾患、動脈−静脈シャント、内在のカテーテルまたは冠状ステントの結果として生じる末梢の動脈閉塞および動脈血栓症がある。従って、別の態様において、本発明は、開示の塩を哺乳動物、特にヒト患者に投与することを含み、適応のこの群から選ばれる疾患または状態を処置する方法を提供する。開示は、開示の塩を含む冠状ステントなどの動脈植え込み物などの動脈環境での使用のための産物を含む。
【0166】
開示の塩は、動脈血栓症のおそれのある個体または動脈血栓症を含む状態や疾患の個体を予防的または治療的に処置するのに使用できる (血栓症の再発または二次的血栓性事象を含む)。
従って、本発明は、上記の障害の処置のために予防的または治療的に記載された選択性トロンビン阻害剤 (有機ボロン酸塩) の使用ならびにその医薬製剤における使用および医薬製剤の製造を含む。
【0167】
投与および医薬製剤
塩は個体に投与して、例えば、薬剤が抗血栓形成活性を有する場合、抗血栓形成効果を得ることができる。ヒトなどの大動物の場合、化合物を単独で、あるいは薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体と併せて投与できる。用語 “薬学的に許容される” はヒトおよび動物を目的とする受容性を含み、とりわけヒト医薬的使用が好ましい。経口投与の場合、化合物を酸性胃酸と開示の塩が接触するのを防ぐ形態、開示の塩の放出が十二指腸に達するまで防止される腸溶製剤などの形態で投与するのが好ましい。
【0168】
腸溶皮膜は、炭水化物ポリマーまたはポリビニルポリマーなどから適切につくりうる。腸溶皮膜材には、限定でないが、セルロース・アセタート・フタラート、セルロース・アセタート・サクシナート、セルロース水素フタラート、セルロース・アセタート・トリメリタート、エチルセルロース、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース・フタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース・アセタート・サクシナート、カルボキシメチルエチルセルロース、アセタート・フタラート、アミロース・アセタート・フタラート、ポリビニルアセタート・フタラート、ポリビニルブチラート・フタラート、スチレン-マレイン酸コポリマー、メチルアクリラート-メタアクリル酸コポリマー (MPM-05)、メチルアクリラート-メタアクリル酸-メチルメタアクリラート・コポリマー (MPM-06) およびメチルメタアクリラート-メタアクリル・コポリマー (Eudragit(登録商標) L & S) がある。 任意に、腸溶皮膜は可塑剤を含有する。可塑剤の例として、限定でないが、トリエチルシトラート、トリアセチンおよびジエチルフタラートがある。
【0169】
開示の塩は、なんらかの心臓血管処置剤と組み合わせおよび/または共投与できる。多数の心臓血管処置剤が市販、臨床評価および前臨床評価の段階にある。これらを開示の産物との使用に、併用薬剤療法として心臓血管障害の予防のために選択できる。この薬剤は、限定でないが、下記の主要なカテゴリーから選択される1以上の薬剤であり得る。すなわち、IBAT (回腸の Na+/胆汁酸共輸送体) 阻害剤、フィブラート、ナイアシン、スタチン、CETP (コレステリルエステル転送タンパク質) 阻害および胆汁酸分離体を含む脂質低下剤、ビタミンEおよびプルブコールを含む抗酸化剤、 IIb/IIIa アンタゴニスト (例えば、アブシキシマブ、エプチフィバチド、トリロフィバン)、アルドステロン阻害剤 (例えば、スピロラクトンおよびエポキシメクスレノン)、アデノシン A2 受容体 アンタゴニスト (例えば、ロサルタン)、アデノシン A3 受容体アゴニスト、ベータブロッカー、アセチルサリチル酸、ループ利尿剤ならびに ACE (アンギオテンシン変換酵素) 阻害剤である。
【0170】
開示の塩はまた、異なるメカニズムをもつ抗血栓性剤、例えば、抗血小板剤、アセチルサリチル酸、チクロピジン、クロピドグレル、トロンボキサン受容体および/またはシンテターゼ阻害剤、プロスタシクリンミメティックおよびホスホジエステラーゼ阻害剤ならびに ADP-受容体 (P2 T) アンタゴニストと組合せおよび/または共投与し得る。
【0171】
開示の産物はまた、血栓性疾患、特に心筋梗塞において、組織プラスミノーゲン・アクチベーター (天然、組み換えまたは修飾の) などの血栓溶解剤、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、アニソイル化プラスミノーゲン-ストレプトキナーゼ・アクチベーター複合体 (APSAC)、動物唾液腺プラスミノーゲン・アクチベーターなどと組合せおよび/または共投与し得る。
【0172】
開示の塩は、心臓保護剤、例えば、アデノシン A1 または A3 受容体アゴニストと組合せおよび/または共投与し得る。
【0173】
本発明はまた、開示の産物と NSAID、例えば COX-2 阻害剤とで患者を処置することを含む患者における炎症疾患を処置する方法を提供する。かかる疾患には、限定でないが、腎炎、全身性狼瘡紅斑性狼瘡、リウマチ性関節炎、糸球体腎炎、脈管炎およびサルコイドーシスがある。従って、開示の抗血栓性塩は NSAID と組合せおよび/または共投与できる。
【0174】
典型的には、従って、本明細書に記載の塩は、宿主に投与して、トロンビン阻害効果または本明細書に記載の他のトロンビン阻害もしくは抗血栓性作用を得ることができる。
【0175】
本開示の医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、特定の患者、組成物および投与形態について所望の医療的応答が達成されるのに有効である活性化合物の量を得るように、変えることができる (本明細書では、"医療的有効量" という)。選択される用量レベルは、特定の化合物の活性処置しようとする状態の重篤度、ならびに処置しようとする患者の状態および医学的前歴に依存する。しかし、所望の医療効果を得るのに必要な量よりも低い量で化合物の用量を開始し、所望の効果を得るまで徐々に用量を増加することは、当技術分野の範囲内にある。
【0176】
例えば、TRI 50c の塩を経口投与する場合、TRI 50c で計算して1日2回 0.5 〜 2.5mg/Kg の量を投与できる。他の塩も当量モル量で投与できる。開示は、かかる量または療法での投与に限定されるものでなく、上記した範囲外の量や療法を含む。
【0177】
開示のさらなる態様において、本発明は、開示の産物を薬学的に許容される補助剤、希釈剤または担体とともに含む経口医薬組成物を提供する。
【0178】
経口投与についての固体投与形態には、カプセル、錠剤 (丸剤ともいう)、粉末および顆粒がある。かかる固体投与形態において、典型的には活性化合物を、クエン酸ナトリウムやリン酸ジカルシウムなどの少なくとも1の薬学的に許容される賦形剤または担体および/または1以上の下記のものと混合する:a) デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マニトールおよびケイ酸などの充填剤または伸張剤;b) カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシアなどの結合剤;c) グリセロールなどの湿剤;d) 寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカ・デンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;e) パラフィンなどの溶解妨害剤;f) 4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;g) セシルアルコールおよびグリセロールモノステアリン酸塩などの湿潤剤;h) カオリンおよびベントナイト・クレイなどの吸収剤;i) タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウロイル硫酸ナトリウムおよびこれらの混合物などの滑沢剤。カプセルおよび錠剤の場合、投与形態は緩衝剤も含むことがある。類似の形の固体組成物を充填剤として軟および硬カプセルで採用でき、例えば、ラクトースやミルク糖などの賦形剤および高分子量ポリエチレングリコールを使用できる。
【0179】
適切には、経口製剤は溶解補助剤を含有し得る。溶解補助剤は、薬学的に許容される限り、その種類が限定されない。例として、スクロース脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル (ソルビタン・トリオレアート)、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン水素化カスター油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、メトキシポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン・コポリマー、ポリオキシエチレン・グリセロール脂肪酸エステル、ペンタエリトロ脂肪酸エステル、プロピレングリコール・モノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール・モノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ソルビトール脂肪酸エステル、脂肪酸アルキルオラミドおよびアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤;胆汁酸およびその塩 (例えば、ケノデオキシコール酸、コール酸、デオキシコール酸、デヒドロコール酸およびその塩、ならびにそのグリシンまたはタウリンコンジュゲート);ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸石けん、アルキルスルホナート、アルキルホスファート、エーテルホスファート、塩基性アミノ酸の脂肪酸塩などのイオン性界面活性剤;トリエタノールアミン石けんおよびアルキル4級アンモニウム塩;ベタインおよびアミノカルボン酸 塩などの両性イオン性界面活性剤がある。
【0180】
活性化合物はまた、微小封入形態にもでき、適当に上記の1以上の賦形剤とともに封入する。
【0181】
経口投与の液体投与形態には、薬学的に許容されるエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルがある。活性化合物に加えて、液体投与形態は、水または他の溶媒などの当技術分野で通常使用される不活性の希釈剤、溶解剤および乳化剤を含有しうる。例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルボナート、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾアート、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油 (特に、綿実、地下ナッツ、コーン、胚種、オリーブ、カスターおよびゴマなどの油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルならびにこれらの混合物がある。不活性の希釈剤のほかに、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、芳香剤などの補助剤も含み得る。懸濁液は、活性化合物に加えて、エトキシルイソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、トラガントならびにこれらの混合物などの懸濁剤を含有しうる。
【0182】
開示の産物は、細かく砕かれた固体の形態、例えば微細の固体として提示しうる。粉末または細かく砕かれた固体をカプセルに封入し得る。
活性化合物は、単回用量、多回用量または持続放出製剤であり得る。
【0183】
上記から理解されるように、本発明は、式 (I) のボロン酸の金属塩、例えばアルカリ金属塩を投与に適する乾燥細粒子の形態で提供する。金属塩は経口投与に適する形態にあり得る。金属塩は適当な酸塩である。
【0184】
合成
1.ペプチド/ペプチドミメティックの合成
例えば、Cbz-D-Phe-Pro-BoroMpg-Oピナコールを含むボロペプチドの合成は、当技術分野で周知であり、Claeson et al (US 5574014 など) および Kakkar et al (WO 92/07869 および US 5648338 を含むファミリーメンバー) に記載されている。また、Elgendy et al Adv. Exp. Med. Biol. (USA) 340:173-178, 1993; Claeson, G. et al Biochem.J. 290:309-312, 1993; Deadman et al J. Enzyme Inhibition 9:29-41, 1995, および Deadman et al J. Med. Chem. 38:1511-1522, 1995 にも記載されている。
【0185】
B-末端炭素での S または R 配置の立体選択合成は、確立された技術 (Elgendy et al Tetrahedron. Lett. 33:4209-4212, 1992; WO 92/07869 および US 5648338 を含むファミリーメンバー) で、 (+) または (-) ピナンジオールをキラル・ディレクター (Matteson et al J. Am. Chem. Soc. 108:810-819, 1986; Matteson et al, Organometalics. 3:1284-1288, 1984) を用いて実施できる。他の方法は、必要なアミノボロネート中間体 (例えば、Mpg-BOピナコール) を溶融し、選択的に所望の (R)-異性体を得て、それを、分子の残基を形成するジペプチド部分 (例えば、Cbz-(R)-Phe-(S)-Pro、これはCbz-D-Phe-L-Pro と同じである)に結合せしめる。
【0186】
ボロペプチドは、最初にボロン酸エステルの形態、特にジオールをもつエステルで合成しうる。かかるジオールエステルを次に記載のペプチドボロン酸に変換しうる。
【0187】
2.エステルの酸への変換
Cbz-(R)-Phe-Pro-BoroMpg-Oピナコールなどのペプチドボロン酸エステルを加水分解して、対応する酸をつくり得る。
【0188】
式 (I) のペプチドボロン酸のジオールエステルを酸に変換する新しい技法は、ジオールエステルをエーテル、特にジアルキルエーテルに溶解し、溶解したジオールをジオールアミン、例えば、ジアルカノールアミンと反応せしめ、産物沈澱物をつくり、 沈殿物を回収し、それを極性有機溶媒に溶解し、溶解した産物を水性媒体、例えば水性酸を反応せしめて、ペプチドボロン酸をつくることを含む。このボロン酸は、反応から得られる混合物の有機層から回収でき、例えば、溶媒を減圧下蒸発または蒸留による。ジオールエステルとジオールアミンとの反応は、例えば、還流により実施できる。
【0189】
ジオールの同定は重要でない。適当なジオールとして、隣接炭素原子上または他の炭素により置換された炭素原子上で置換されたヒドロキシ基をもつ脂肪族および芳香族化合物を挙げ得る。すなわち、適当なジオールには、鎖または環において少なくとも2結合炭素原子により隔てられた少なくとも2ヒドロキシ基を有する化合物がある。そのジオールのひとつはピナコールであり、他のものはピナンジオールである。また、ネオペンチルグリコール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ジイソプロピルエタンジオール、5,6-デカンジオールおよび 1,2-ジシクロヘキシルエタンジオールを挙げうる。
【0190】
ジアルキルエーテルのアルキル基は、好ましくは 1、2、3 または 4 炭素原子を持ち、アルキル基が同一または相違であり得る。エーテルの1例はジエチルエーテルである。
ジアルカノールアミンのアルキル基は、好ましくは 1、2、3 または 4 炭素原子を持ち、アルキル基が同一または相違であり得る。ジアルカノールアミンの1例はジエタノールアミンである。ジエタノールアミン/ボロン酸の反応産物は水中室温で加水分解し、加水分解の速度は酸または塩基の添加で促進される。
【0191】
極性有機溶媒は好ましくは CHCl3 である。他の例は、一般的にポリハロゲン化アルカンおよび酢酸エチルである。原則として、いかなる極性有機溶媒もアルコール以外受け容れられる。
水性酸は、好ましくは pH 1 程度の強無機酸、例えば、塩酸である。
酸との反応後、反応混合物を適当に、例えば NH4Cl などの緩和な塩基で洗う。
【0192】
具体的な操作の例は下記のとおりである。
1. 選択されたペプチドボロン酸のピナコールまたはピナンジオールエステルをジエチルエーテルに溶解する。
2. ジエタノールアミンを加え、混合物を 40 ℃ で還流する。
3. 沈殿した産物をとり(ろ過)、ジエチルエーテルまたはアルコール以外の他の極性有機溶媒で (通常数回) 洗い、乾燥する (例えば、蒸発減圧下)。
4. 乾燥産物をアルコール以外の他の極性有機溶媒、例えば、CHCl3 に溶解する。水性の酸または塩基、例えば塩酸 (pH 1) を加え、混合物を、例えば 約 1 時間室温で攪拌する。
5. 有機層をとり、NH4Cl 液で洗う。
6. 有機溶媒を留去し、残渣の固体産物を乾燥する。
【0193】
上記の方法は、式 (I) のペプチドボロン酸について “ジオールアミン ・アダクツ” と便宜的に言いうるもの、特に例えば、ジエタノールアミンとのアダクツを形成する。かかるアダクツは開示にそれ自体含まれる。かかるアダクツの分子構造は既知でない。これは、ジオールアミンの2酸素および1窒素がすべてホウ素に配位されている化合物を含み得、イオンを含み得る。しかし、アダクツはエステルであると考える。この開示に含まれる特定の新規な産物は、式 VIII の化合物のピナコールもしくはピナンジオールエステル、特に (R,S,R)-TRI 50c とジエタノールアミンとの反応により得られうるものであり、すなわち新規な産物は (R,S,R)-TRI 50c/ジエタノールアミン “アダクツ” であり、うち、酸が (R,S,R)-TRI 50c である。
【0194】
開示のジオールアミン材は、下記を含む事象の組成物と定義しうる:
(i) 1種の式 (XII):
【化18】


式中、X は H またはアミノ保護基であり、ホウ素原子は任意に追加的に窒素原子で配位され、末端酸素の価はオープンであり (これらは第2共有結合につながり、−O- としてイオン化され、またはいくつかの他の中間体などの価を有し得る);そしてそれとの結合関係にある
【0195】
(ii) 1種の式 (XIII):
【化19】

式中、1窒素原子および2酸素原子の価はオープンである。式 (IX) 種の末端酸素原子および式 (X) 種の酸素原子は同じ酸素原子であり得る。その場合、式 (X) 種は、式 (IX) とジオールエステルを形成する。
【0196】
上記の技法が有機ボロン酸産物を回収する方法の例を含むことがわかるように、その方法は、溶媒中に溶解した溶性形態の有機ボロン酸と2ヒドロキシ基およびアミノ基を有する化合物 (すなわち、ジオールアミン) とを溶媒中に溶解する混合物を準備し、有機ボロン酸とジオールアミンとを反応せしめると、沈殿物が形成し、この沈殿物を回収する。溶性形態の有機ボロン酸は、上記のようにジオールエステルであり得る。溶媒は上記のようにエーテルであり得る。有機ボロン酸は本明細書に挙げた有機ボロン酸のひとつであり得、例えば、式 (I)、(II) または (III) のものである。本章で記載の方法は新規であり開示の態様を形成する。回収方法はろ過である。
ジオールアミンと溶性形態の有機ボロン酸との反応は、高い温度、例えば還流下に適切に実施できる。
【0197】
開示の他の態様は、有機ホウ素種を回収する方法であって、下記を含む:
エーテル中での溶解形態で有機ボロン酸、例えば、式 (III) の化合物を準備し;
エーテル中で溶性形態の溶液が形成し;
この溶液をジアルカノールアミンと組み合わせて、ジアルカノールアミンを溶性形態の有機ボロン酸と反応せしめると、不溶性の沈殿物が形成し;
この沈殿物を回収する。
【0198】
上記における用語 “溶性” は、沈殿した産物よりも反応媒体中において実質的に溶性であるものを意味する。変法においては、エーテルをトルエンなどの他の芳香族溶媒に置き換える。
【0199】
上記のジエタノールアミン沈澱法は別の新規方法の例であって、エーテル溶液からペプチドボロン酸のピナコールまたはピナンジオールエステルを回収する方法であり、ジエタノールアミンを溶液中に溶解し、沈殿物を形成せしめ、この沈殿物を回収する。開示は、ピナコールまたはピナンジオール以外の他のジオールを用いる変法も含む。
【0200】
沈殿物、例えば “付加物” は、遊離の有機ボロン酸に、例えば、その酸との接触により変換できる。酸は、例えば、上記のような水性無機酸などの水性酸であり得る。酸との接触前に沈殿物を、例えば有機溶媒中に溶解しうる。
【0201】
従って、開示は、有機ボロン酸をつくる方法を提供し、この方法はそのジオールアミン反応産物を酸に変換することを含む。
上記の2章で記載した方法からの酸は、酸の塩に多価金属で変換し、ついでその塩を経口投与形態の医薬組成物に製剤できる。
【0202】
3.塩の合成
一般的に、塩の調製は、関連のペプチドボロン酸を所望の塩の形成に適当な強い塩基と接触せしめることによる。金属塩の場合、水酸化金属は適当な塩基であるが (あるいは、例えば、金属カルボナートを用いる)、しばしば酸と関連金属アルコキシド (例えば、メトキシド) との接触がさらに便利である。この目的に、対応のアルカノールが適当な溶媒である。有機塩基との塩の調製は、ペプチドボロン酸を有機塩基自体と接触せしめることによりなし得る。例示的な塩として酸塩 (1 BOH プロトン置換) があり、1価カチオンとの酸塩をつくるために、酸と塩基とを実質的に当量で適当に反応せしめる。一般的に、従って、通常の酸:塩基のモル比は実質的に n:1 であり、n は塩基のカチオン価である。
【0203】
ひとつの工程において、ペプチドボロン酸の水混和性有機溶媒、例えばアセトニトリルやアルコール (例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノールなどのプロパノールまたは他のアルカノール) の溶液を塩基の水溶液と組み合わす。酸と塩基とを反応せしめ、塩を回収する。反応は周囲の温度 (例えば、温度 15 〜 30℃、例えば 15 〜 25℃) で典型的に実施できるが、高い温度、例えば、反応混合物の沸点、よりふつうは低い温度 40 ℃または 50 ℃までを用いる。反応混合物は放置または振盪 (通常は攪拌) し得る。
【0204】
酸と塩基とを反応せしめる時間は重要でないが、反応混合物を少なくとも1時間置くのが好ましい。1〜2時間が通常適当であるが、より長い反応も用い得る。
【0205】
塩は反応混合物からなんらかの適当な方法、例えば蒸発や沈澱により回収できる。沈澱は、塩が限定的な溶解性をもつ混合可能な溶媒の過剰を加えることにより実施できる。ひとつの好ましい技法において、塩を反応混合物の乾燥により回収する。その後、塩を精製するのが好ましく、例えば、得られる液体をろ過し、蒸発乾固などにまで乾燥する前に塩を再溶解する。再溶解には、水、例えば蒸留水を用い得る。ついで残渣の水を適当な溶媒中でのさらなる再溶解するために、塩をさらに精製しうる。この溶媒は、蒸発乾固後の酢酸エチルまたは THF が好都合である。精製工程は、周囲の温度 (すなわち、15 〜 30 ℃、例えば 15 〜 25 ℃) または 40 ℃もしくは 50 ℃までの温度などのやや高い温度で実施しうる。例えば、塩を水および/または溶媒に、加温してまたはしないで、例えば 37 ℃で溶解しうる。
【0206】
また、開示の塩および他のペプチドボロン酸塩を乾燥する方法がある。これは、これらの塩を有機溶媒、例えば酢酸エチルまたは THF に溶解し、ついで蒸発乾固などすることを含む。
一般的に、塩の精製での使用に好ましい溶媒は酢酸エチルまたは THF、さらに他の有機溶媒である。
【0207】
Cbz-Phe-Pro-BoroMpg-OH の塩を合成する一般的な工程は下記の通りである:
Cbz-Phe-Pro-BoroMpg-OH (20.00g、38.1mM) をアセトニトリル (200ml) に室温で攪拌して溶解する。この液に必要な塩基を蒸留水 (190ml) 溶液中で加える。塩基は1価カチオンにつき 0.2M 液として加える。得られる澄明液を、例えば通常の時間、放置するか攪拌する。いずれの場合も1−2時間である。反応を典型的には周囲の温度 (例えば、15-30 ℃、例えば 15 〜 25 ℃) で実施しうるが、あるいは温度を上げることもできる (例えば、30 ℃、40 ℃または 50 ℃まで)。ついで反応混合物を 37 ℃を超えない温度で減圧下蒸発乾固すると、典型的には白色のもろい固体または油状/べたつく液体を得る。この油状/べたつく液体を必要な最少量の蒸留水 (200ml から 4L) に、典型的には加温し (例えば、30-40 ℃まで)、通常 2 時間までで再溶解する。溶液を適当な濾紙でろ過し再び 37 ℃を超えない溶液温度で蒸発乾固し、凍結乾燥する。得られた産物を一夜減圧で乾燥すると、通常白色のもろい固体を得る。もし、産物が油状またはべたつく固体であると、それを酢酸エチルに溶解し、蒸発乾固し、白色固体としての産物をつくる。白色固体は、典型的には粗い無定形の粉末である。
【0208】
上記の一般的操作の変形においては、アセトニトリルを他の水混合性有機溶媒、とりわけ、上記したようなアルコール、特にエタノール、メタノール、イソプロパノールなどのプロパノールで置換する。
【0209】
ボロン酸塩が塩形成のために選択された反応媒体にあまり溶けない場合、その対応する酸および塩基からの直接的調製が好都合でない場合、あまり溶けない塩を反応媒体により溶けうる塩から調製することができる。
【0210】
また、開示の塩をつくるためのボロン酸の使用を提供する。これは、例えば、式 (I)、(II) または (III) のボロン酸を、かかる塩をつくり得る塩基と反応せしめることである。
【0211】
医薬製剤の調製のために使用される式 (I) のペプチドボロン酸は、典型的には GLP または GMP 品質であり、または GLP (good laboratory practice) または GMP (good manufacturing practice) に適合する。かかる酸は本開示に含まれている。
同様に、酸は通常無菌でありおよび/または医薬用途に受容されるものである。開示のひとつの態様は、無菌でありおよび/または医薬用途に受容されるものの組成物にあり、式 (I) のペプチド ボロン酸を含む。かかる組成物は、粉末形態または溶液や分散液などの液体形態であり得る。
【0212】
中間体の酸は単離された形態であり得、かかる単離された酸は開示に含まれ、特に、単離された酸は下記式 (VIII) のペプチドボロン酸である:
X-(R)-Phe-(S)-Pro-(R)-Mpg-B(OH)2 (VIII)
式中、X は H (NH2 を形成) またはアミノ保護基である。
【0213】
中間体酸を提供する典型的な1方法は、主にかかるペプチドボロン酸からなる粉末の組成物についてであり、この組成物は本開示に含まれる。ペプチドボロン酸は、しばしば組成物重量の少なくとも 75%、典型的には少なくとも 85%、例えば少なくとも 95% を形成する。
【0214】
中間体酸を提供する典型的な他の方法は、式 (II) のペプチドボロン酸および液体ビヒクルからなるか、基本的になる液体組成物についてである。この液体中にペプチドボロン酸が溶解または懸濁する。液体ビヒクルは、水性媒体、例えば、水またはアルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのプロパノール、他のアルカノールまたはこれらの混合物である。
【0215】
中間体酸の組成物は一般的に無菌である。組成物はペプチドボロン酸を細粉砕の形態で含み、さらなる工程が容易になる。
【0216】
立体異性体の分離
ペプチドボロン酸エステルまたは合成中間体アミノボロネートの立体異性体は、例えば、既知の方法でも分割しうる。特に、ボロン酸エステルの立体異性体は HPLC で分割し得る。
【0217】
実施例
実施例1−3および33は前置き的な説明である。
装置
下記の実施例1−3および33の操作において、標準的な実験室用ガラス器具および空気に敏感な試薬を取り扱い移すのに適当な特殊な装置を用いた。
すべてのガラス器具を 140-160 ℃に少なくとも 4 時間暖めてから使用し、ついで乾燥器中で、または乾燥窒素気流で熱を追い出して冷やした。
【0218】
溶媒
実施例1−3および33の操作において使用される有機溶媒はすべて乾燥されている。適当に、使用の前にナトリウム線で乾燥する。
【0219】
乾燥
実施例1−3および33の操作の乾燥において、産物の乾燥 (有機溶媒についての乾燥を含む) を乾燥時の重量損失で試験する。下記の操作を行って乾燥時の損失を測定した。サンプルを減圧乾燥機に入れ、40 ℃、100 mbar で 2 時間乾燥した。乾燥時の重量低下が出発物質の全重量の 0.5% 未満になったときに、産物が乾燥されていると考える。
【0220】
実施例1−3は、下記の反応式および得られる TRI 50c のナトリウム塩への変換について述べる。
【化20】



LDA = リチウム・ジイソプロピルアミド
LiHMDS = リチウム・ヘキサメチルジシラザン、リチウム・ビス (トリメチルシリル) アミドともいう
【0221】
実施例1
TRI 50D の合成
工程1: Z-DIPIN B
操作 A
17.8 g (732.5 mmole) マグネシウム・ターニング、0.1 g (0.4 mmole) ヨウ素および 127 ml 乾燥 テトラヒドロフランを入れ加熱還流する。ついで、66 g (608 mmole) 1-クロロ-3-メトキシプロパンの 185 ml 乾燥テトラヒドロフランの溶液 15 ml を加え、激しい反応が始まるまで加熱還流する。最初の発熱が終わった後、1-クロロ-3-メトキシプロパン液を徐々に加え、すべてのマグネシウムが消費されるまで、緩やかな還流を維持する。反応の終了後に反応混合物を周囲温度にまで冷やし、徐々に 64.4 g (620 mmole) トリメチルボラートの 95 ml 乾燥テトラヒドロフランに加える;後者の液体を 0 ℃以下に冷やし、もし反応中に熱くなると、それに反応混合物を十分徐々に加えて、この液体の温度を- 65 ℃以下に保持する。完全な添加で、反応混合物を約 0 ℃まで暖め、さらに 60 分間攪拌する。22.4 ml 硫酸の 400 ml 水溶液を温度 20 ℃以下に保つように徐々に加える。放置し、層を分ける。水層を3回 200 ml tert.-ブチルメチルエーテルで洗う。合わせた有機層を放置し、この液体から分離した水を除く。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、蒸発乾固する。蒸発残渣を沈殿固体からろ過し、濾液を 175 ml トルエンに溶解する。34.8 g (292 mmole) ピナコールをこの液体に入れ、周囲温度で 10 時間以上攪拌する。液体を蒸発乾固し、475 ml n-ヘプタンに溶解し、3回 290 ml 炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で洗う。n-ヘプタン液を蒸発乾固し、蒸発残基を蒸留し、Bp 40-50 ℃、0.1-0.5 mbar のフラクションを回収する。
沸点:40-50 ℃/ 0.1-0.5 mbar
収量:40.9 g (70%) Z-DIPIN B (油状)
【0222】
操作 B
17.8 g (732.5 mmole) マグネシウム・ターニング、0.1 g (0.4 mmole) ヨウ素および 127 ml 乾燥 テトラヒドロフランを入れ加熱還流する。ついで、66 g (608 mmole) 1-クロロ-3-メトキシプロパンの 185 ml 乾燥テトラヒドロフランの溶液 15 ml を加え、激しい反応が始まるまで加熱還流する。最初の発熱が終わった後、1-クロロ-3-メトキシプロパン液を徐々に加え、緩やかな還流を維持する。反応の終了後に反応混合物を周囲温度にまで冷やし、徐々に 64.4 g (620 mmole) トリメチルボラート の 95 ml 乾燥テトラヒドロフランに加え、この液体の温度をマイナス65 ℃以下に保持する。完全な添加で、反応混合物を約 0 ℃まで暖め、さらに 60 分間攪拌する。22.4 ml 硫酸の 400 ml 水溶液を温度 20 ℃以下に保つように徐々に加える。有機溶媒を減圧蒸留で除去し、蒸発残渣の水溶液に 300 ml n-ヘプタンを入れ、34.8 g (292 mmole) ピナコールを加える。2層混合物を周囲温度で 2 時間以上攪拌する。層を放置した後、水層を分離する。300 ml n-ヘプタンを水溶液に入れ、2層混合物を周囲温度で 2 時間以上攪拌する。層を放置した後、水層を分離する。有機層を合わし、1回 200 ml 水で洗い、200 ml 炭酸水素ナトリウムの飽和液で、 200 ml 水でさらに2回洗う。ついで n-ヘプタン液を蒸発乾固し、蒸発残渣を蒸留し、Bp 40-50 ℃、0.1-0.5 mbar でフラクションを回収する。
沸点:40-50 ℃/ 0.1-0.5 mbar
収量:40.9 g (70-85%) Z-DIPIN B (油状)
【0223】
工程2: Z-DIPIN C
16.6 g (164 mmole) ジイソプロピルアミンおよび 220 ml テトラヒドロフランを入れ、−30 〜 −40 ℃に冷やした。この溶液に41.8 g (163 mmole) n-ブチルリチウムの 25% n-ヘプタンを加え、0 〜 −5 ℃で1時間攪拌する。この新鮮なリチウムジイソプロピルアミドを −30 ℃に冷やし、27.9 g (139 mmole) Z-DIPIN B の120 ml テトラヒドロフランおよび 35.5 g (418 mmole) ジクロロメタンの液に温度 −60〜−75 ℃で加えた。液をこの温度で半時間攪拌し、480 ml (240 mmole) 0.5N 無水塩化亜鉛(II) のテトラヒドロフラン液または32.5 g (240 mmole) 無水固体の塩化亜鉛(II) を加える。 −65 ℃で1時間攪拌した後、反応混合物を周囲温度にまで暖め、さらに 16-18 時間攪拌する。反応混合物を蒸発乾固し (すなわち、溶媒が除去されるまで)、385 ml n-ヘプタンを加える。反応混合物を 150 ml 5% 硫酸、190 ml 飽和炭酸水素ナトリウムおよび 180 ml 飽和塩酸で洗う。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、蒸発乾固する (すなわち、溶媒が除去されるまで)。油状残渣を次ぎの工程に精製することなしに移す。
収量:19 g (55%) Z-DIPIN C
【0224】
工程3:Z-DIPIN D
23.8 g (148 mmole) ヘキサメチルジシラザンの 400 ml テトラヒドロフラン液に -15 ℃で 34.7 g (136 mmole) n-ブチルリチウムの 25% n-ヘプタンを加え、1時間攪拌した。液を −55 ℃まで冷やし、30.6 g (123 mmole) Z-DIPIN C の 290 ml テトラヒドロフラン溶液および新たに調製したLiHMDS の 35 ml テトラヒドロフランを加えた。溶液を周囲温度まで暖め、12 時間攪拌した。反応混合物を蒸発乾固し、蒸発残渣を174 ml n-ヘプタンに溶解し、170 ml 水および 75 ml 飽和塩化ナトリウム液で洗った。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、完全に蒸発乾固した (すなわち、溶媒が除去されるまで)。油状残渣を 100 g n-ヘプタンに溶解した。この溶液を、さらなる乾燥なしに次の工程に用いる。
収量:32.2 g (70%) Z-DIPIN D
【0225】
工程4:Z-DIPIN (TRI50b、粗製)
26.6 g (71 mmole) Z-DIPIN D の 82.6 g n-ヘプタン液を 60 ml n-ヘプタンで希釈し、 −60 ℃まで冷やし、10.5 g (285 mmole) 塩酸を入れる。ついで、反応混合物を蒸発せしめ、窒素を導入する。その間に温度が約20 ℃の増加で周囲温度となる。溶媒を油状沈殿物から除き、数回 60 ml 新鮮な n-ヘプタンで置き換える。油状残渣を 60 ml テトラヒドロフランに溶解する (溶液 A)。
【0226】
別のフラスコに 130 ml テトラヒドロフラン、24.5 g (61.5 mmole) Z-D-Phe-Pro-OH および 6.22 g (61.5 mmole) N-メチルモルホリンを入れ、−20 ℃に冷やす。この溶液に 8.4 g (61.5 mmole) イソブチルクロロホルマートの20 ml テトラヒドロフラン液を加え、30 分間攪拌する。ついで溶液 A を−25 ℃で加える。完全な添加後、16 ml (115 mmole) までトリエチルアミンを加え、pH 片で測定して pH を 9-10 に調整する。反応混合物を周囲温度まで暖め、3 時間、窒素下で攪拌する。溶媒を蒸発乾固し、蒸発残渣を 340 ml tert.-ブチルメチルエーテル (t-BME) に溶解する。Z-DIPIN の t-BME 液を2回 175 ml 1.5% 塩酸で洗う。合わせた酸性洗液を 175 ml t-BME で再洗浄する。あわせた有機層を 175 ml 水、175 ml 飽和炭酸水素ナトリウム、175 ml 25% 塩化ナトリウムで洗い、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過する。この溶液をさらなる精製なしに次の工程に用いる。
収量: 29.9 g (80%) Z-DIPIN
【0227】
実施例2
TRI 50D の合成 (TRI 50C のジエタノールアミン・アダクツ)
本実施例で使用する出発材料は、実施例1で得られた TRI 50b (“Z-DIPIN”) の溶液である。この溶液をさらに精製することなしに TRI 50d の合成に供する。Z-DIPIN の t-BME 液 (7.0 g (11.5 mmole) (R,S,R) TRI50b を含有、Z-DIPIN のHPLC に基づき計算) を蒸発乾固し、蒸発残渣を 80 ml ジエチルエーテルに溶解する。1.51 g (14.4 mmole) ジエタノールアミンを加え、混合物を少なくとも10 時間加熱還流すると、その間に産物が沈殿する。懸濁液を 5-10 ℃まで冷やし、ろ過し、ろ過残渣をジエチルエーテルで洗う。
【0228】
キラルおよび化学的純度を改善するために、湿ったろ過物 (7 g) を 7 ml ジクロロメタンに溶解し、0-5 ℃に冷やし、42 ml ジエチルエーテルの添加で産物を沈澱せしめ、ろ過する。分離された湿った産物を 35 ℃、減圧で少なくとも 4 時間から1日乾燥する。
収量: 5.5 g (80%) Tri50d
融点: 140-145℃
【0229】
実施例3
TRI50C のナトリウム塩の調製
実施例2の1.5 kg (2.5 mole) TRI50d を 10.5 L ジクロロメタンに溶解する。11 L 2% 塩酸を加え、混合物を最大 30 分間 (任意的に約 20 分間) 室温で攪拌する。沈殿物が有機層に形成する。攪拌後、その層を放置し、分離する。水層を2回 2.2 L ジクロロメタンで洗う。合わせた有機層を625 g 塩化アンモニウムの 2.25 L 水溶液で洗う。(塩化アンモニウムは水性抽出物のpHを約 pH 1-2 から約 pH 4-5 の範囲内に緩衝する。強い酸性状態がペプチド結合を開裂するかもしれないので)。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、濾液を蒸発乾固する。遊離ボロン酸のアッセイを行い (実施例28の RP HPLC 法を最大 30 分間 (任意に約 20 分間) 室温で)、酸から塩への変換のための溶媒および塩基の量を計算する。2.5 mol の遊離酸を得ると、蒸発残渣を 5 L アセトニトリルに溶解し、100 g (2.5 mole) 水酸化ナトリウム液を 5% の 2.2 L 水溶液として加える。溶液を2時間、周囲温度 (すなわち 15-30 ℃、最適は室温) 攪拌し、ついで 35℃を超えない温度で減圧(約 10 mmHg) 蒸発せしめる。蒸発残渣を繰り返し 3.5 L 新鮮なアセトニトリルに溶解し、蒸発乾固し、痕跡の水を除く。蒸発残渣が乾燥されると、それを 3 L アセトニトリル (あるいは 6 L THF) に溶解し、徐々に 32 L n-ヘプタンと 32 L ジエチルエーテルの混合物に加える。添加は、産物が塊になったり、固着するのを避けるのに十分ゆっくりと行い、30 分間以上をかけて実施する。沈殿した産物を濾取し、n-ヘプタンで洗い、減圧下で最初の温度約 10 ℃、ついで約 35 ℃まで温度を上げて乾燥まで処理する。
収量: 1.0 kg (70%) Tri50c ナトリウム塩
【0230】
実施例1−3の操作はスケールアップでき、注意深く操作すると、高純度の塩を得る。ジエタノールアミン沈澱工程において、(R,S,R) TRI 50b 当量に対し 1.25 当量のジエタノールアミンを使用することが重要である。ジエタノールアミンエステルの加水分解において、水性酸との過度に長い接触を避けることが重要である。同様に、TRI 50b は Grignard 反応を経て Z-DIPIN A に合成される。
【0231】
実施例4
TRI 50B の TRI 50C への別の変換法
ここで記載の合成操作および続く合成例は、一般的に窒素下でなされ、市販の乾燥溶媒を使用する。
【0232】
1. ラセミTRI 50bの HPLC 精製により得られた約 300 g の TRI 50b を約 2.5 L ジエチルエーテルに溶解した。異なるバッチの TRI 50b が 85% R、S、R から 95% R、S、R を超える範囲の異性体純度を有すると評価される。
2. 約 54 ml ジエタノールアミンを加え (1:1 全TRI 50b 含量を有する化学量)、混合物を 40 ℃で還流した。
3. 沈殿した産物を取り出し、数回ジエチルエーテルで洗い、乾燥した。
4. 乾燥した産物を CHCl3 に溶解し、塩酸 (pH 1) を加え、混合物を約1時間室温で攪拌した。
5. 有機層を取り出し、NH4Cl 液で洗った。
6. 有機溶媒を留去し、残渣固体の産物を乾燥した。
典型的収量:約 230 g
【0233】
実施例5
TRI50C のリチウム塩の調製
実施例4の方法で得られたCbz-Phe-Pro-BoroMpg-OH (20.00g、38.1mM) を室温で攪拌しながらアセトニトリル (200ml) に溶解する。この溶液に LiOH を 0.2M 蒸留水液 (190ml)として加える。得られる澄明の溶液を 2 時間室温で攪拌し、37 ℃を超えない温度で蒸発乾固する。得られる油状/べたつく液を、20 分間緩やかに加熱して必要な 500ml 蒸留水に再び溶解する。溶液を濾紙でろ過し、再び37 ℃を超えない溶液温度で蒸発乾固する。 得られた産物を一夜減圧下乾燥すると、通常白色 もろい 固体を得る。
塩を一定重量までシリカで減圧下乾燥した (72 h)。
収量 17.89g
【0234】
ミクロ分析
【表2】

【0235】
実施例6
TRI50C リチウム塩の UV/可視スペクトル
実施例5の操作から得られた塩のUV/可視スペクトルを蒸留水中で 20 ℃で 190nm から 400nm で記録した。塩は λmax が 210 および 258nm であった。乾燥塩の重量を、吸光係数の計算のために測定した。λmax 258nm を使用した。
【0236】
吸光係数を式で計算した:
A = εcl、A は吸光度
C は濃度
l は UV 細胞の経路長
ε は吸光係数
吸光係数:451
【0237】
実施例7
TRI50C リチウム塩の水溶性
本実施例に使用する塩は、実施例5に記載の改変法を用いてつくった。改変法は出発物質として 100mg の TRI 50c を使用することが異なり、水に再溶解した産物を凍結乾燥し、0.2μm ろ過を行った。塩は約 85% の R、S、R 異性体を含有する。
【0238】
最大水溶性を調べるために、25mg の乾燥塩を水中で 37 ℃で振盪し、サンプルをろ過し、UV スペクトルを測定した。塩は不溶性の白色残渣となる。リチウム塩は比較的溶性であり、上記と同様に 50mg/ml で再溶解した。
25mg/ml で溶解したときの溶解性:43mM (23 mg/ml)
50mg/mlで溶解したときの溶解性:81mM (43 mg/ml)
【0239】
実施例8
TRI50C ナトリウム塩 (TGN 255) の調製
実施例4の方法により得られたCbz-Phe-Pro-BoroMpg-OH (20.00g、38.1mM) を室温で攪拌しながらアセトニトリル (200ml) に溶解する。この溶液に NaOH を 0.2M 蒸留水液 (190ml)として加える。得られる澄明の溶液を 2 時間室温で攪拌し、37 ℃を超えない温度で蒸発乾固する。得られる油状/べたつく液を、15-20分間緩やかに加熱して必要な 500ml 蒸留水に再び溶解する。溶液を濾紙でろ過し、再び37 ℃を超えない溶液温度で蒸発乾固する。 得られた産物を一夜減圧下乾燥すると、通常、白色もろい固体を得る。産物は、残渣の水のために油状またはべたつく固体として存在し、これを酢酸エチルに溶解し、蒸発乾固すると、産物を白色固体として得る。
塩を一定重量までシリカで減圧下乾燥した (72 h)。
収量:50% 以上
【0240】
ミクロ分析:
【表3】

【0241】
実施例9
TRI50C ナトリウム塩の UV/可視スペクトル
実施例8の操作から得られた塩のUV/可視スペクトルを蒸留水中で 20 ℃で 190nm から 400nm で記録した。TRI50C および塩は λmax が 210 および 258nm であった。乾燥塩の重量を、吸光係数の計算のために測定した。λmax 258nm を使用した。
【0242】
吸光係数を式で計算した:
A = εcl、A は吸光度
C は濃度
l は UV 細胞の経路長
ε は吸光係数
吸光係数:415
【0243】
実施例10
TRI50C ナトリウム塩の水溶性
本実施例に使用する塩は、実施例8に記載の改変法を用いてつくった。改変法は出発物質として 100mg の TRI 50c を使用することが異なり、水に再溶解した産物を凍結乾燥し、0.2μm ろ過を行った。塩は約 85% の R、S、R 異性体を含有する。
【0244】
最大水溶性を調べるために、25mg の乾燥塩を水中で 37 ℃で振盪し、サンプルをろ過し、UV スペクトルを測定した。塩は不溶性の白色残渣となる。ナトリウム塩は比較的溶性であり、上記と同様に 50mg/ml で再溶解した。
25mg/ml で溶解したときの溶解性:44mM (25 mg/ml)
50mg/mlで溶解したときの溶解性:90mM (50 mg/ml)
【0245】
実施例11
TRI50C カリウム塩の調製
実施例4の方法により得られたCbz-Phe-Pro-BoroMpg-OH (20.00g、38.1mM) を室温で攪拌しながらアセトニトリル (200ml) に溶解する。この溶液に KOH を 0.2M 蒸留水液 (190ml)として加える。得られる澄明の溶液を 2 時間室温で攪拌し、37 ℃を超えない温度で蒸発乾固する。得られる油状/べたつく液を、1L 蒸留水に 37 ℃まで約 2 時間加熱し再び溶解する。溶液を濾紙でろ過し、再び37 ℃を超えない溶液温度で蒸発乾固する。 得られた産物を一夜減圧下乾燥すると、通常白色もろい固体を得る。
収量:14.45 mg
塩を一定重量までシリカで減圧下乾燥した (72 h)。
【0246】
ミクロ分析:
【表4】

【0247】
実施例12
TRI50C カリウム塩の UV/可視スペクトル
実施例11の操作から得られた塩のUV/可視スペクトルを蒸留水中で 20 ℃で 190nm から 400nm で記録した。TRI50C および塩は λmax が 210 および 258nm であった。乾燥塩の重量を、吸光係数の計算のために測定した。λmax 258nm を使用した。
【0248】
吸光係数を式で計算した:
A = εcl、A は吸光度
C は濃度
l は UV 細胞の経路長
ε は吸光係数
吸光係数:438
【0249】
実施例13
TRI50C カリウム塩の水溶性
本実施例に使用する塩は、実施例11に記載の改変法を用いてつくった。改変法は出発物質として 100mg の TRI 50c を使用することが異なり、水に再溶解した産物を凍結乾燥し、0.2μm ろ過を行った。塩は約 85% の R、S、R 異性体を含有する。
【0250】
最大水溶性を調べるために、25mg の乾燥塩を水中で 37 ℃で振盪し、サンプルをろ過し、UV スペクトルを測定した。塩は不溶性の白色残渣となる。
25mg/ml で溶解したときの溶解性:29mM (16 mg/ml)
【0251】
実施例14
TRI50C 亜鉛塩の調製
水酸化亜鉛の相対的溶解性は、実施例5の操作を用いる対応の TRI 50c 塩をつくるのにその水酸化物を用いると、均質の塩を形成しなかった。従って、新しい方法を開発して、本実施例および次の実施例に記載のように、亜鉛塩をつくった。
【0252】
TRI 50c ナトリウム塩 (2.24g、4.10mM) を蒸留水 (100ml) に室温で溶解し、塩化亜鉛の THF 液(4.27ml、0.5M) を攪拌しながら注意深く加えた。すぐに形成する白色沈殿物を濾取し、蒸留水で洗った。この固体を酢酸エチルに溶解し、蒸留水 (2 x 50ml) で洗った。有機溶液を蒸発乾固し、形成する白色固体を乾燥器中シリカで 3 日間、ミクロ分析の前に乾燥した。収量 1.20g。
【0253】
1H NMR 400MHz, δH(CD3OD) 7.23-7.33 (20H, m, ArH), 5.14 (4H, m, PhCH2O), 4.52 (4H, m, αCH), 3.65 (2H, m), 3.31 (12H, m), 3.23 (6H, s, OCH3), 2.96 (4H, d, J 7.8Hz), 2.78 (2H, m), 2.58 (2H, m), 1.86 (6H, m), 1.40 (10H, m).
【0254】
13C NMR 75MHz δC(CD3OD) 178.50, 159.00, 138.05, 137.66, 130.54, 129.62, 129.50, 129.07, 128.79, 128.22, 73.90, 67.90, 58.64, 58.18, 56.02, 38.81, 30.06, 28.57, 28.36, 25.29.
FTIR (KBr disc) νmax (cm-1) 3291.1, 3062.7, 3031.1, 2932.9, 2875.7, 2346.0, 1956.2, 1711.8, 1647.6, 1536.0, 1498.2, 1452.1, 1392.4, 1343.1, 1253.8, 1116.8, 1084.3, 1027.7, 916.0, 887.6, 748.6, 699.4, 595.5, 506.5.
【0255】
実施例15
TRI50C アルギニン塩の調製
実施例4の方法により得られたCbz-Phe-Pro-BoroMpg-OH (20.00g、38.1mM) を室温で攪拌しながらアセトニトリル (200ml) に溶解する。この溶液にアルギニンを 0.2M 蒸留水液 (190ml)として加える。得られる澄明の溶液を 2 時間室温で攪拌し、37 ℃を超えない温度で蒸発乾固する。得られる油状/べたつく液を、2L 蒸留水に 37 ℃まで約 2 時間加熱し再び溶解する。溶液を濾紙でろ過し、再び37 ℃を超えない溶液温度で蒸発乾固する。 得られた産物を一夜減圧下乾燥すると、通常白色もろい固体を得る。
塩を一定重量までシリカで減圧下乾燥した (72 h)。
収量:10.54 mg
【0256】
ミクロ分析
【表5】

【0257】
実施例16
TRI50C アルギニン塩の UV/可視スペクトル
実施例15の操作から得られた塩のUV/可視スペクトルを蒸留水中で 20 ℃で 190nm から 400nm で記録した。TRI50C および塩は λmax が 210 および 258nm であった。乾燥塩の重量を、吸光係数の計算のために測定した。λmax 258nm を使用した。
【0258】
吸光係数を式で計算した:
A = εcl、A は吸光度
C は濃度
l は UV 細胞の経路長
ε は吸光係数
吸光係数:406
【0259】
実施例17
TRI50C アルギニン塩の水溶性
本実施例に使用する塩は、実施例15に記載の改変法を用いてつくった。改変法は出発物質として 100mg の TRI 50c を使用することが異なり、水に再溶解した産物を凍結乾燥し、0.2μm ろ過を行った。塩は約 85% の R、S、R 異性体を含有する。
【0260】
最大水溶性を調べるために、25mg の乾燥塩を水中で 37 ℃で振盪し、サンプルをろ過し、UV スペクトルを測定した。塩は不溶性の白色残渣となる。
25mg/ml で溶解したときの溶解性:14mM (10 mg/ml)
【0261】
実施例18
TRI50C リシン塩の調製
実施例4の方法により得られたCbz-Phe-Pro-BoroMpg-OH (20.00g、38.1mM) を室温で攪拌しながらアセトニトリル (200ml) に溶解する。この溶液にL-リシンを 0.2M 蒸留水液 (190ml)として加える。得られる澄明の溶液を 2 時間室温で攪拌し、37 ℃を超えない温度で蒸発乾固する。得られる油状/べたつく液を、3L 蒸留水に 37 ℃まで約 2 時間加熱し再び溶解する。溶液を濾紙でろ過し、再び37 ℃を超えない溶液温度で蒸発乾固する。 得られた産物を一夜減圧下乾燥すると、通常白色もろい固体を得る。産物は油状/べたつく固体として存在することがある(残渣の水による)。その場合、酢酸エチルに溶解し、蒸発乾固して、白色固体として産物を得る。
塩を一定重量までシリカで減圧下乾燥した (72 h)。
収量:17.89 mg
【0262】
ミクロ分析
【表6】

【0263】
実施例19
TRI50C リシン塩の UV/可視スペクトル
実施例18の操作から得られた塩のUV/可視スペクトルを蒸留水中で 20 ℃で 190nm から 400nm で記録した。TRI50C および塩は λmax が 210 および 258nm であった。乾燥塩の重量を、吸光係数の計算のために測定した。λmax 258nm を使用した。
【0264】
吸光係数を式で計算した:
A = εcl、A は吸光度
C は濃度
l は UV 細胞の経路長
ε は吸光係数
吸光係数:437
【0265】
実施例20
TRI50C リシン塩の水溶性
本実施例に使用する塩は、実施例18に記載の改変法を用いてつくった。改変法は出発物質として 100mg の TRI 50c を使用することが異なり、水に再溶解した産物を凍結乾燥し、0.2μm ろ過を行った。塩は約 85% の R、S、R 異性体を含有する。.
【0266】
最大水溶性を調べるために、25mg の乾燥塩を水中で 37 ℃で振盪し、サンプルをろ過し、UV スペクトルを測定した。塩は不溶性の白色残渣となる。
25mg/ml で溶解したときの溶解性:13mM (8.6 mg/ml)
【0267】
実施例21
TRI50C の N-メチル-D-グルカミン塩の調製
実施例4の方法により得られたCbz-Phe-Pro-BoroMpg-OH (20.00g、38.1mM) を室温で攪拌しながらアセトニトリル (200ml) に溶解する。この溶液にN-メチル-D-グルカミンを 0.2M 蒸留水液 (190ml)として加える。得られる澄明の溶液を 2 時間室温で攪拌し、37 ℃を超えない温度で蒸発乾固する。得られる油状/べたつく液を、500ml蒸留水に 37 ℃まで約 20 分間加熱し再び溶解する。溶液を濾紙でろ過し、再び37 ℃を超えない溶液温度で蒸発乾固する。 得られた産物を一夜減圧下乾燥すると、通常白色もろい固体を得る。
塩を一定重量までシリカで減圧下乾燥した (72 h)。
収量:21.31 mg
【0268】
ミクロ分析
【表7】

【0269】
実施例22
TRI50C のN-メチル-D-グルカミン塩の UV/可視スペクトル
実施例21の操作から得られた塩のUV/可視スペクトルを蒸留水中で 20 ℃で 190nm から 400nm で記録した。TRI50C および塩は λmax が 210 および 258nm であった。乾燥塩の重量を、吸光係数の計算のために測定した。λmax 258nm を使用した。
【0270】
吸光係数を式で計算した:
A = εcl、A は吸光度
C は濃度
l は UV 細胞の経路長
ε は吸光係数
吸光係数:433
【0271】
実施例23
TRI50C の N-メチル-D-グルカミン塩の水溶性
本実施例に使用する塩は、実施例21に記載の改変法を用いてつくった。改変法は出発物質として 100mg の TRI 50c を使用することが異なり、水に再溶解した産物を凍結乾燥し、0.2μm ろ過を行った。塩は約 85% の R、S、R 異性体を含有する。
【0272】
最大水溶性を調べるために、25mg の乾燥塩を水中で 37 ℃で振盪し、サンプルをろ過し、UV スペクトルを測定した。塩は完全に溶解を観測した。塩は比較的溶性であり、上記と同様に 50mg/ml で再溶解する。
25mg/ml で溶解したときの溶解性:35mM (25 mg/ml)
50mg/mlで溶解したときの溶解性:70mM (50 mg/ml)
【0273】
実施例24
TRI50Cのアルギニン塩の別法による調製
ややモル過剰の L-アルギニンを 0.2-0.3mmol TRI50c の酢酸エチル液に加えると、アルギニン塩が簡単に形成する。溶媒を1時間後に蒸発せしめ、残渣を2回ヘキサンで洗って、過剰のアルギニンを除去する。
【0274】
実施例25
TRI50Cの溶解性
実施例5の操作で得られた TRI 50c のUV/可視スペクトルおよび溶解性を、塩について上記のようにして得た。TRI50c の溶解性は、50mg/ml で溶解したとき、8mM (4mg/ml)であった。
【0275】
13C NMR 75MHz δC(CD3C(O)CD3) 206.56, 138.30, 130.76, 129.64, 129.31, 129.19, 129.09, 128.20, 128.04, 74.23, 73.55, 67.78, 58.76, 56.37, 56.03, 48.38, 47.87, 39.00, 25.42, 25.29.
FTIR (KBr disc) νmax (cm-1) 3331.3, 3031.4, 2935.3, 2876.9, 2341.9, 1956.1, 1711.6, 1639.9, 1534.3, 1498.1, 1453.0, 1255.3, 1115.3, 1084.6, 1027.6, 917.3, 748.9, 699.6, 594.9, 504.5, 467.8.
【0276】
実施例26
(R,S,R) TRI 50Cのナトリウム塩および亜鉛塩についての分析
下記の塩を、ボロネート:金属の化学量 n:1、うち n は金属の価、を用い、実施例10に記載の塩の調製に用いたものより高いキラル純度の (R,S,R) TRI 50c を使用して調製した。
【0277】
【表8】

【0278】
【表9】


注:三方晶形の酸ボロネートをミクロ分析の計算に使用する。実施例11で試験された塩が低いキラル純度を持つので、低いナトリウム塩の溶解性が実施例11で報告されると思われる。
【0279】
結論
ナトリウム塩および亜鉛塩は、それぞれ1金属イオン対1分子の TRI 50c および1金属イオン対2分子のTRI 50c の化学量でもって調製した。ナトリウム塩にみられる価は、この 1:1 化学量で計算したものに近く適合する。亜鉛塩については、過剰の亜鉛が見られた。しかし、亜鉛塩は有意の割合の酸ボロネートを含む。
【0280】
実施例27
安定性
乾燥の前後における TRI 50c ならびにそのナトリウムおよびリシン塩についてのアッセイ
方法
TRI 50c ならびにその Na、Ca および Lys 塩を HPLC バイアルに秤量し、乾燥器中でリン酸ぺントオキシドとともに 1 週間保存した。サンプルの分析のために、5 mg の乾燥および非乾燥材料を秤量し 5 mL 量のフラスコにとり、1 mL アセトニトリルに溶解し、水を 5 mL まで注いだ。
【0281】
化合物をHPLC で調べた。不純プロファイルについて HPLC ピーク範囲%を計算した。結果を表1に示す。
【表10】

【0282】
酸の純度は乾燥で低下するが、塩の純度はあまり影響を受けなかった。ナトリウム塩の純度は有意に低下しなかった。しかし、対応因子の大きい相違は実際の不純レベルを低下する。
この例によると、開示の塩、特にアルカリ金属塩などの金属塩は酸、特に TRI 50c よりも安定である。
【0283】
実施例28
安定性
この実施例は、TRI 50c および TRI 50c リシン塩の安定性について、腸溶性硬ゼラチンカプセルに充填して比較する。
【0284】
1.結果の表
【表11】


注:
0) 与えられた条件での1.5 月保存、ついで分析までサンプルを室温で保存した。
1) カプセルをそれぞれの気象的条件でブリスターなしに保存。
2) 保存前のバッチの純度。
3) 保存されたバッチの純度 (カプセルから出し、ついでカプセル内容物を分析した)。
4) r.h. = 相対湿度。
【0285】
結論
リシン塩の純度に T0 および T1で有意差はなかった。
【0286】
2.分析操作
2.1. サンプルの調製
2.1.1. TRI 50c および塩
TRI 50c-標準物 (遊離酸) を乾燥器中でリン酸ぺントオキシドとともに2日間乾燥のために保存した。ついで参照の標準物をフラスコに秤量しアセトニトリルと水の混合物 (25/75 v/v %) に溶解した。得られた溶液 (ST 1A) のアリコートを表4の希釈シームに示すように水で希釈できた。
【0287】
【表12】

【0288】
2.1.2. 保存されたカプセルの不純プロファイル
対応の気象的条件での各バッチの保存カプセルを取り、10 mg の内容物を 10 ml 容量のフラスコに秤量し、10 ml のアセトニトリル/水の混合物 (25/75 v/v%) に溶解した。これらの溶液を不純プロファイル分析および定量に供した。
【0289】
3.データの評価
定量および不純プロファイル分析を HPLC-PDA 法で行った。プロセス波長を 258 nm とした。
【0290】
4. 分析パラメーター
4.1. 装置およびソフトウエアー
オートサンプラー Waters Alliance 2795
ポンプ Waters Alliance 2795
カラムオーブン Waters Alliance 2795
指示 Waters 996 ダイオード・アレイ、抽出波長 258 nm
ソフトウエアー・バージョン Waters Millennium Release 4.0
【0291】
4.2. 静止相
分析カラム ID S71
材料 X-Terra(商標) MS C18、5μm
サプライアー Waters, Eschborn, ドイツ
大きさ 150 mm x 2.1 mm (長さ、内直径)
【0292】
4.3. 動相
水相:A: 0.1% HCOOH 水
有機相:C: ACN
勾配条件:
【表13】


【0293】
実施例29
血小板凝固促進活性の TRI 50B 阻害
血小板凝固促進活性の増加が、プロトロンビンの活性の割合で、因子 Va の存在での因子 Xa により、トロンビンにより予め処理された血小板の追加において、トロンビン単独、コラーゲン単独またはトロンビンとコラーゲンの混合物により起きるのが観測できる。この性質は、表面からのミクロベシクルの同時的な放出とともに血小板の表面のアニオン性ホスホリピドが増加することによる。これは、基本的な生理反応であり、血小板の凝固促進活性生成能が低下している者 (Scott 徴候) で出血傾向が増加する。
【0294】
方法
洗った血小板を 1.15nM トロンビン、23μg/ml コラーゲンまたは同じ濃度の両者の混合物で 37℃で処理した。TRI 50b をアクチベーターの添加の 1 分前か、アクチベーターとのインキュベーション後直ちに加えた。血小板凝固促進活性を上記 (Goodwin C A et al, Biochem J. 1995 8, 308: 15-21) のように測定した。
【0295】
TRI 50b が次に概記するような IC50 をもち血小板凝固促進活性の強力な阻害剤であることが分かった:
表2:種々のアゴニストによる血小板凝固促進活性の誘発に対する TRI 50b の影響
【表14】

【0296】
表2によると、例えば、血小板をトロンビンで処理すると、対照の血小板に比してプロトロンビン活性割合の 30-倍促進を起こした。TRI 50 での処理が、この促進を所定の種々の TRI 50 濃度レベルの半分に低下した。この TRI 50 の有意な強さは、IC50 価がナノモル範囲であることから証明される。
TRI 50b は、洗浄血小板の ADP、コラーゲンまたはエピネフィリン誘発の凝集に対して作用を有さない。
【0297】
実施例30
ウサギの体外シャントモデル
説明
この方法は、血小板に富む血栓がつくられた動物モデルについて記載する。TRI 50b およびヘパリンの活性を比較する。
【0298】
麻酔ウサギの頸動脈および頸静脈を用いて、付属する異物表面 (絹糸) を含有する体外循環をつくった。血栓生成を、高薄ストレスの激しい動脈血流の形成、血小板活性化により開始し、血栓形成の存在における凝固が続く。組織病理的検査で血栓が血小板に富むことがわかる。
【0299】
材料および方法
動物
NZW ウサギ (雄、2.5-3.5 kg) を用いた。動物に麻酔導入まで食餌と水を与えた。
【0300】
麻酔
動物に筋肉注射でフォンタン/フルアニソン (Hypnorm) 全0.15 ml で前処理した。全身麻酔をメトヘキシトン (10 mg/ml) で行い、気管内挿管を行った。麻酔を酸素/酸化窒素による導入のイソフルラン (1-2.0 %) で保持した。
【0301】
外科的処置:
動物を背面横に置き、外科処置のために腹部頸管領域をつくった。左頸動脈および右頸静脈を露出した。動脈に大 Portex(登録商標)カテーテル (黄ゲージ) を挿入し、適当な長さに切断した。静脈に Silastic(登録商標)カテーテルを挿入した。シャントは長さ 5 cm の '自動分析機' ラインc (紫/白色ゲージ) を含む。動脈側でのシャントへの連結を中程度のSilastic(登録商標)管でおこなった。循環に供する前に、シャントに塩類液で満たした。右大腿動脈に血圧測定のためにカテーテルを導入した。
【0302】
糸の調製および挿入
シャントの中心セクションは長さ 3 cmの糸を含有する。これは 000 ゲージ Gutterman 縫絹からなり、末端に単一結び目をもつ4糸をもたらす (結び目セクションはシャントの外側)。
【0303】
血流
血流速を 'Doppler' プローブ (Crystal Biotech) で測定した。シラスティックのプローブを動脈カテーテル挿入箇所の頸動脈に設置した。血流を熱感紙でチャートに記録した。
【0304】
表3 結果
【表15】

【0305】
考察
表3によると、高度の動脈切断条件で TRI 50b は用量 3mg/kg から 10mg/kg iv で出血なしに血栓形成を有意に阻害する。一方、ヘパリンは、静脈血栓症を処置するのに通常の臨床用量で (100u/kg iv ヘパリン) 効果がなかった。高用量のヘパリンは、活性であるが、激しい出血を起こす。これらの結果によって、TRI 50b の出血を起こさない血栓形成の阻害が、TRI 50b による阻害の血小板凝固促進活性に適合することがわかる。他方、トロンビン阻害剤ヘパリンは、約同等の有効量 (動脈血栓症の阻害と言う意味) で投与されたとき、トロンビン阻害剤が動脈血栓症の処置に用いられたときに通常の激しい出血を起こした。
【0306】
実施例31
出血時間の比較
この試験の目的は、ヘパリンと TRI 50b との出血時間を適当なモデルで比較することである。ヘパリンは血小板凝固促進活性の弱い阻害剤とされている (J. Biol. Chem. 1978 Oct 10; 253(19):6908-16; Miletich JP, Jackson CM, Majerus PW1: J. Clin. Invest. 1983 May; 71(5):1383-91)。
【0307】
出血時間をラット尾出血モデルで測定した。ヘパリンおよび TRI 50b は静脈内投与した。用量はラット Wessler およびダイナミックモデルでの効力を基に選択した。下記にそれを示す:
TRI 50b: 5 および 10 mg/kg
ヘパリン:100 単位/kg
【0308】
材料および方法
麻酔
ラットをペントバルビトン・ナトリウム 60 mg/kg (2.0 ml/kg、30 mg/ml 液を腹腔内投与)で麻酔した。追加の麻酔は必要に応じ腹腔内投与した。
【0309】
外科的処置
頸静脈に試験化合物の投与のためにカテーテルを導入した。気管にも適当な管を挿入し、動物が自動的に室内空気を吸えるようにした。
【0310】
化合物の投与
化合物を適当なビヒクルで 1.0 ml/kg 静脈内投与した。ヘパリンは塩類溶液で投与し、TRI 50b はエタノールに溶解し、得られた溶液を注射用水に加えた (1 部エタノールに対し 5 部の水)。
【0311】
化合物投与の2分後に、動物の尾の遠位 2mm を解剖刀で切断し、標準ユニバーサル容器に含有された塩類液 (37℃) に浸すと、血流がはっきりと見える。出血時間の記録を切断後すぐに始め、尾の切片からの血流の停止まで行う。尾からの血流が停止してから 30 秒で、出血が再度起きないことを確認した。出血が再度起きると、記録時間を最大 45 分まで続けた。
【0312】
結果
表4は、出血結果の要約であり、出発点よりの増加がわかる。
【表16】

【0313】
考察
結果によると、TRI 50b はヘパリン (少ない出血をなす) にすべての用量で優れた。注意すべきは、100 u/kg ヘパリンと 5 mg/kg TRI 50b を比較すると、ヘパリン処理動物の出血が TRI 50b を受けた動物よりも大きい。ヘパリンの用量 100 u/kg が TRI 50b の用量 3.0 mg/kg よりも動脈血栓症の阻害剤として劣る(実施例25)。ヘパリンは一義的にトロンビン阻害剤であり、血小板凝固促進活性の劣る阻害剤である:従って、この結果は、トロンビン阻害活性に加えて血小板凝固活性の阻害による TRI 50b 発揮の抗凝固活性に適合する。
【0314】
実施例32
TRI 50C のプロドラッグとしての TRI 50B:薬物動態および吸収
材料および方法
動物
体重約 250-300g のラットを使用した。動物を iv 段階に使用の日のみ絶食した。経口および十二指腸内試験の前夜絶食し、麻酔時まで水を与えた。
【0315】
【表17】

【0316】
【表18】

【0317】
用量
製剤 (TRI 50b/TRI 50c)
下記のように製剤を調製した:48 mg/ml の TRI 50b をエタノール:PEG 300 (2:3 vol: vol) に溶解した。投与直前に、この溶液の 5 容量を 3 容量の 5% コリドン 17 8Fと混合する。
1) 両化合物を経口または直接十二指腸内に 20mg/kg投与した。
化合物を PEG/エタノール/コリドン製剤で投与した。これらは「用量」の章の直後に記載のように調製した。保存液 15.0mg/ml。これを 1.33ml/kg (30mg/kgに匹敵) 与えた。
【0318】
方法
経口投与
ラットに 20mg/kg 投与した。投与約 30 分後にラットを麻酔した。
十二指腸内投与
麻酔および外科的処置の完了後に直接、十二指腸内に投与した。
【0319】
血液採取
経口相
血液 (0.81ml) を麻酔および外科処置後に頸動脈カテーテルから (0.09ml) の 3.8% w/v クエン酸トリナトリウム液に採取した。最初のサンプルは投与1時間後に、続いて 1.5、2、4 時間後に採取した。
十二指腸内相
血液を次のように採取した:投与前、投与後 0.25、0.5、0.75、1.0、2、3、4 時間。
血漿
遠心分離 (3000 RPM、10 分間) で血漿を得て、分析まで -20 ℃で保存した。
【0320】
結果
薬物動態的分析
図1:TRI 50b またはその遊離酸 (TRI 50c) の投与後の経口相クリアランスおよび速度
図2:TRI 50b またはその遊離酸 (TRI 50c) の十二指腸内投与後の経口相クリアランスおよび速度
【0321】
結論
十二指腸内経路で TRI 50b を与えると、遊離酸よりも高いバイオアベイラビリティを達成した (ピーク血漿濃度)。このデータは TRI 50b が血漿内で迅速に加水分解されて TRI 50c になること、および TRI 50c が活性本体であることと一致する。
実施例29−32の結果は、塩としての TRI 50c の投与が動脈血栓症および/または静脈血栓症の処置に道を開くことを示す。
【0322】
実施例34
ヒト臨床試験
ヒト臨床ボランティア試験を 2.5mg/kg i.v. (トロンビン凝血時間を有意に延長する用量) で行った。TRI 50b はSimplate 出血時間 (すなわち Simplate(登録商標)出血時間デバイスで測定した出血時間) に対して効果がなかった。
【0323】
上記のことから、開示のものは医薬目的に有用なボロン酸塩を提供し、その特性は下記の1以上による:(1) 経口バイオアベイラビリティ量の改善、(2) 経口バイオアベイラビリティの非矛盾性の改善、(3) 安定性の改善、および (4) 先行技術で示唆されていないなんらかの事象。
【0324】
医薬組成物の活性成分の選択は複合的な仕事であり、生物学的性質 (バイオアベイラビリティを含む) のみでなく製造、製剤、保存に望ましい物理化学的性質をも考慮する必要がある。バイオアベイラビリティ自体は種々の因子に依存し、それにはしばしばインビボ安定性、溶媒和および吸収性があり、各々が潜在的に複数の物理、化学および生物学的挙動に依存する。
【0325】
都合のよいことに、開示の少なくとも好ましい産物は適切な吸収およびバイオアベイラビリティを有する。商業的な利用性において、溶解性のよくない産物も優れた全体的な性質の組合せの故に選択しうる。
【0326】
本開示は、下記項の主題を含む:
1. 下記式 (I) のボロン酸の薬学的に許容される塩基付加塩:
【化21】


式中、
Y は、アミノボロン酸残基NHCH(R9)-B(OH)2 とともに、トロンビンの基質結合部位への親和性を有する疎水性部分を含み;
R9 は1以上のエーテル結合に遮られる直鎖アルキル基であり、そのうち酸素および炭素原子の全数が 3、4、5 または 6 であり、あるいは R9 が -(CH2)m-W であり、うち m が 2、3、4 または 5 であり、W が-OH またはハロゲン (F、Cl、Br または I)である。
【0327】
2. R9 がアルコキシアルキル基である、項1の塩。
【0328】
3. YCO- がトロンビンの S2 サブ部位に結合するアミノ酸を含み、そのアミノ酸がトロンビンの S3 サブ部位を結合する部分に N-末端で結合している、項1または項2の塩。
【0329】
4. Y がトロンビンの S3 および S2 結合部位に結合する任意的に N-末端保護されたジペプチドであり、酸中のペプチド結合は、鎖中または環中に窒素、酸素または硫黄を任意的に含有し、ハロ、ヒドロキシおよびトリフルオロメチルから選択される置換基で任意に置換されるC1-C13ヒドロカルビルで任意的にかつ独立的にN-置換される、項1または項2の塩。
【0330】
5. 該ジペプチドが N-末端保護されている、項4の塩。
【0331】
6. 酸中のすべてのペプチド結合が非置換である、項4または項5の塩。
【0332】
7. S3-結合アミノ酸残基が R 配置であり、S2-結合残基が S 配置であり、フラグメント -NHCH(R9)-B(OH) が R 配置である、項1−6のいずれかの塩。
【0333】
8. ボロン酸がトロンビンについて Ki 約 100 nM 以下を有する、項1−7のいずれかの塩。
【0334】
9. ボロン酸がトロンビンについて Ki 約 20 nM 以下を有する、項8の塩。
【0335】
10. 下記式 (II) のボロン酸の薬学的に許容される塩基付加塩:
【化22】


式中、
X は H (NH2 を形成する) またはアミノ-保護基であり;
aa1 は、20 を超えない炭素原子を含有するヒドロカルビル側鎖を有し、13 までの炭素原子を有する少なくとも1の環状基を含むアミノ酸であり;
aa2 は 4 〜 6 員環を有し;
R1 は式-(CH2)s-Z の基であり、うち s が 2、3 または 4 であり、Z が-OH、-OMe、-OEt またはハロゲン (F、Cl、Br または I)である。
【0336】
11. aa1 は Phe、Dpa およびこれらの全般的または部分的水素化類似体から選択される、項10の塩。
【0337】
12. aa1 は Dpa、Phe、Dcha および Cha から選択される、項10の塩。
【0338】
13. aa1 が R-配置である、項10−12のいずれかの塩。
【0339】
14. aa1 が (R)-Phe または (R)-Dpaである、項10の塩。
【0340】
15. aa1 が (R)-Pheである、項10の塩。
【0341】
16. aa2 が下記式 (IV) のイミノ酸:
【化23】


式中、R11 は -CH2-、-CH2-CH2-、-S-CH2-、-S-C(CH3)2- または -CH2-CH2-CH2- であり、うち、環が 5- または 6- 員であるとき、基が1以上の -CH2- 基で 1 〜 3 C1-C3 アルキル基により任意に置換されている、
の残基である、項10−15のいずれかの塩。
【0342】
17. aa2 が S-配置である、項16の塩。
【0343】
18. aa2 が (S)-プロリン残基である、項16の塩。
【0344】
19. aa1-aa2 が (R)-Phe-(S)-Proである、項10の塩。
【0345】
20. フラグメント-NH-CH(R1)-B(OH)2 が R 配置である、項10−19のいずれかの塩。
【0346】
21. R1 が 2-ブロモエチル、2-クロロエチル、2-メトキシエチル、3-ブロモプロピル、3-クロロプロピルまたは 3-メトキシプロピルである、項10−20のいずれかの塩。
【0347】
22. R1 が 3-メトキシプロピルである、項10−20のいずれかの塩。
【0348】
23. 下記式 (VIII):
X-(R)-Phe-(S)-Pro-(R)-Mpg-B(OH)2
の化合物の塩である、項10の塩。
【0349】
24. X は R6-(CH2)p-C(O)-、R6-(CH2)p-S(O)2-、R6-(CH2)p-NH-C(O)- または R6-(CH2)p-O-C(O)- であり、うち p は 0、1、2、3、4、5 または 6 であり、R6 は H あるいはハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、C5-C6環状基、C1-C4 アルキル、および 5 〜 13-員環状基に結合するかおよび/またはこれに鎖中の O を介して連結する C1-C4 アルキルから選択された 1、2 または 3 の置換基に選択的に置換される 5 〜 13-員環状基であり、上記アルキル基はハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシおよび C5-C6環状基から選択される置換基により置換される、項10−23の塩。
【0350】
25. 該 5 〜 13-員環状基が芳香族またはヘテロ芳香族である、項24の塩。
【0351】
26. 該 5 〜 13-員環状基がフェニルまたは 6-員ヘテロ芳香族基である、項25の塩。
【0352】
27. X が R6-(CH2)p-C(O)- または R6-(CH2)p-O-C(O)- であり、p が 0 または 1 である、項24−26のいずれかの塩。
【0353】
28. X がベンジルオキシカルボニルである、項10−24のいずれかの塩。
【0354】
29. コリンまたはアンモニウム塩を含まない、項1−28の塩
【0355】
30. ボロン酸および1価の対イオンから誘導されるボロネート・イオンを含む、項1−29のいずれかの塩。
【0356】
31. ペプチドボロン酸とアルカリ金属または強い塩基性有機窒素含有の化合物との塩である、項1−29のいずれかの塩。
【0357】
32. 強い塩基性有機窒素化合物が pKb 約 7 以上、例えば、約 7.5 以上をもつ、項21の塩。
【0358】
33. 強い塩基性有機窒素含有の化合物がグアニジン、グアニジン類似体またはアミンである、項31または項32の塩。
【0359】
34. ボロン酸と金属との塩である、項1−33のいずれかの塩。
【0360】
35. ボロン酸とアルカリ金属、アミノ糖、グアニジンまたは下記式 (XI) のアミン:
【化24】


式中、n は 1 〜 6 であり、R2 は H、カルボキシラートまたは誘導カルボキシラートであり、R3 は H、C1-C4 アルキルまたは天然もしくは非天然のアミノ酸の残基である、
との塩である、項1−28の塩。
【0361】
36. ボロン酸とグアニジンまたは下記式 (IX) のアミン:
【化25】


式中、n は 1 〜 6 であり、R2 は H、カルボキシラートまたは誘導カルボキシラートであり、R3 は H、C1-C4 アルキルまたは天然もしくは非天然のアミノ酸の残基である、
との塩である、項1−28の塩。
【0362】
37. ボロン酸のグアニジン塩である、項36の塩。
【0363】
38. ボロン酸と L-アルギニンまたは L-アルギニン類似体との塩である、項37の塩。
【0364】
39. L-アルギニン類似体が D-アルギニンあるいはホモアルギニン、アグマチン [(4-アミノブチル)グアニジン]、NG-ニトロ-L-アルギニンメチルエステルまたは 2-アミノピリミジンの D-もしくは L-異性体である、項38の塩。
【0365】
40. ボロン酸と下記式 (VII) のグアニジン:
【化26】


式中、n は 1 〜 6 であり、R2 は H、カルボキシラートまたは誘導カルボキシラートであり、R3 は H、C1-C4 アルキルまたは天然もしくは非天然のアミノ酸の残基である、
との塩である、項37の塩。
【0366】
41. 誘導カルボキシラートが C1-C4 アルキルエステルまたはアミドを形成する、項40の塩。
【0367】
42. 式 (VII) の化合物が L-配置である、項37の塩。
【0368】
43. ペプチドボロン酸の L-アルギニン塩である、項37の塩。
【0369】
44. ボロン酸と式 (IX) のアミンとの塩である、項36の塩。
【0370】
45. 誘導カルボキシラートが C1-C4 アルキルエステルまたはアミドを形成する、項41の塩。
【0371】
46. 式 (IX) のアミンが L-配置である、項44または項45の塩。
【0372】
47. ボロン酸の L-リシン塩である、項44の塩
【0373】
48. カリウム塩である、項1−28のいずれかの塩。
【0374】
49. ナトリウム塩である、項1−28のいずれかの塩。
【0375】
50. リチウム塩である、項1−28のいずれかの塩。
【0376】
51. アミノ糖塩である、項1−28のいずれかの塩。
【0377】
52. アミノ糖が開環の糖である、項51の塩。
【0378】
53. アミノ糖がグルカミンである、項52の塩。
【0379】
54. アミノ糖が環状アミノ糖である、項51の塩。
【0380】
55. アミノ糖が N-非置換である、項51−54のいずれかの塩。
【0381】
56. アミノ糖が1または2の置換基により N-置換されている、項51−54のいずれかの塩。
【0382】
57. 置換基または各置換基がヒドロカルビル基である、項56の塩。
【0383】
58. 置換基または各置換基が C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7 および C8 のアルキル基よりなる群から選ばれる、項57の塩。
【0384】
59. 単一の N-置換基が存在する、56−58のいずれかの塩。
【0385】
60. グルカミンが N-メチル-D-グルカミンである、項51の塩。
【0386】
61. ペプチドボロン酸から誘導されるボロネート・イオンを含み、単一の負電荷を保持するボロネートに一致する化学量を有する、項1−60のいずれかの塩。
【0387】
62. 塩が、三方晶的に表示されるとき、ボロネートの1 B-OH 基がプロトン化されたままである酸塩から基本的になる、項1−60のいずれかの塩。
【0388】
63. 塩がペプチドボロン酸と対イオンから誘導されるボロネート・イオンを含み、塩が単一型の対イオンを有する塩から基本的になる、項1−62のいずれかの塩。
【0389】
64. モノリチウムまたはモノナトリウム塩である、項1−28のいずれかの塩。
【0390】
65. モノリチウムまたはモノナトリウム塩である、項23の塩。
【0391】
66. 1 重量%を超える水を含有しない Cbz-(R)-Phe-(S)-Pro-(R)-Mpg-B(OH)2 の固体相モノリチウムまたはモノナトリウム塩。
【0392】
67. 0.5 重量%を超える水を含有しない、項66の塩。
【0393】
68. 0.1 重量%を超える水を含有しない、項66の塩。
【0394】
69. モノナトリウム塩である、項66−68のいずれかの塩。
【0395】
70. 固体相にある、項1−65のいずれかの塩。
【0396】
71. 実質的に乾燥されている、項70の塩。
【0397】
72. 項1−71のいずれかの塩を含む、医薬としての使用のための産物。
【0398】
73. 項1−71のいずれかの塩および薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体を含む、経口投与形態の医薬製剤。
【0399】
74. 固体の製剤である、項73の製剤。
【0400】
75. 十二指腸で塩を放出するのに適する、項74の医薬製剤。
【0401】
76. 腸溶性皮膜のなされている、項75の医薬製剤。
【0402】
77. 血栓症を処置するための医薬の製造における項1−71の塩の使用。
【0403】
78. 疾患が急性冠状徴候群である、項77の使用。
【0404】
79. 疾患が急性心筋梗塞である、項77の使用。
【0405】
80. 疾患が深静脈血栓症および肺塞栓症よりなる群から選ばれる静脈血栓塞栓性事象である、項77の使用。
【0406】
81. 患者の血液透析回路での血栓症を予防するため、末期腎疾患の患者の心臓血管事象を予防するため、内在カテーテルを介して化学療法を受けている患者での静脈血栓塞栓症を予防するため、下肢動脈再構築がなされている患者での血栓塞栓症を予防するための経口医薬の製造における、項1−71のいずれかの塩の使用。
【0407】
82. 急性冠状徴候群、脳血管血栓症、末梢動脈閉塞および動脈細動からの動脈血栓症、心臓弁疾患、動脈-静脈シャント、内在のカテーテルまたは冠状ステントから選択される動脈疾患の治療または予防での処置のための経口医薬の製造における、項1−71のいずれかの塩の使用。
【0408】
83. (i) 項1−71のいずれかの塩および (ii) さらなる薬学的に許容される活性物質の組合せを含む、経口医薬製剤。
【0409】
84. (i) 項1−71のいずれかの塩および (ii) 他の心臓血管処置剤の組合せを含む、経口医薬製剤。
【0410】
85. 他の心臓血管処置剤が、脂質低下剤、フィブラート、ナイアシン、スタチン、CETP 阻害剤、胆汁酸封鎖剤、抗酸化剤、IIb/IIIa アンタゴニスト、アルドステロン阻害剤、A2 アンタゴニスト、A3 アゴニスト、ベータブロッカー、アセチルサリチル酸、ループ利尿剤、ACE 阻害剤、異なるメカニズムをもつ抗血栓剤、抗血小板剤、トロンボキサン受容体およびシンテターゼ阻害剤、フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト、プロスタシクリンミメティック、ホスホジエステラーゼ阻害剤、ADP-受容体 (P2 T) アンタゴニスト、血栓溶解剤、心臓保護剤または COX-2 阻害剤を含む、項84の製剤。
【0411】
86. 実質的に乾燥されている、項83−85のいずれかの製剤。
【0412】
87. 他の心臓血管処置剤との共投与における心臓血管障害の処置、例えば予防のための医薬の製造における、項1−71のいずれかの塩の使用。
【0413】
88. 選択性トロンビン阻害剤であって、トロンビン S2 および S3 サブ部位に結合可能な疎水性部分にペプチド結合を介して連結されたトロンビン S1 サブ部位に結合可能な中性のアミノボロン酸残基を有するボロン酸の塩を含み、その塩が価 n を有するカチオンを含み、観測される化学量が理論的化学量 (ボロン酸:カチオン) n:1 に一致する、経口医薬。
【0414】
89. ボロン酸がトロンビンについての Ki 約 100 nM 以下または任意に約 20 nM 以下を有する、項88の医薬。
【0415】
90. 経口投与に適合し、固体相で酸 Cbz-(R)-Phe-(S)-Pro-(R)-Mpg-B(OH)2 に対応するボロネート種源ならびにコリンおよびアンモニウム以外の薬学的に許容されるカチオン源を含む医薬製剤。
【0416】
91. 下記式 (I) のボロン酸またはインビボでかかるボロン酸の源となる産物:
【化27】


式中、
Y は、アミノボロン酸残基 -NHCH(R9)-B(OH)2 と一緒に、トロンビン基質結合部位に親和性を有する疎水性部分を含み;
R9 は1以上のエーテル結合で遮られる直鎖アルキル基であり、うち、酸素および炭素原子の全数が 3、4、5 もしくは 6 であり、または R9 は -(CH2)m-W であり、うち、m は2、3、4 もしくは 5 であり、W が -OH またはハロゲン (F、Cl、Br または I)である;
をつくる方法であって、
この方法が下記を含む:
酸のエステルのジエチルエーテル溶液を準備し;
ジエタノールアミンを溶液に溶解し;
沈殿物を形成せしめて、その沈殿物を回収し、および
沈殿物を遊離の有機ボロン酸またはインビボでかかるボロン酸源となりうる産物から選択される最終産物に変換せしめること。
【0417】
92. 該最終産物を医薬組成物に製剤することをさらに含む、項91の方法。
【0418】
93. 対応するボロン酸のアセトニトリル溶液を薬学的に許容される塩基と組み合わせて、塩を形成せしめることを含む、項1−71のいずれかの塩を形成せしめる方法。
【0419】
94. 有機ボロン酸を安定化する方法であって、その塩の形態とすることを含む方法。
【0420】
95. 医薬的使用のために安定な形態の有機ボロン酸薬剤を提供する方法であって、有機ボロン酸を薬学的に許容される塩基付加塩の形態で固体相で提供することを含む方法。
【0421】
96. 経口投与に適合し、下記a)およびb)を含む医薬製剤:
a) 下記式 (I) のボロン酸、該ボロン酸のボロネート・イオン、該ボロン酸および該ボロネート・イオンの当量形態:
【化28】


式中、
Y は、アミノボロン酸残基 -NHCH(R9)-B(OH)2 と一緒に、トロンビン基質結合部位に親和性を有する疎水性部分を含み;
R9 は1以上のエーテル結合で遮られる直鎖アルキル基であり、うち、酸素および炭素原子の全数が 3、4、5 もしくは 6 であり、または R9 は -(CH2)m-W であり、うち、m は2、3、4 もしくは 5 であり、W が -OH またはハロゲンである;
から選択される第1種、および
b) 薬学的に許容される金属イオン(該金属イオンは価 n を有す)、リシン、アルギニンおよびアミノ糖から選択される第2種。
なお、この製剤は、第2種が価 1 の金属イオン、リシン、アルギニンまたはアミノ糖であるとき、観測される化学量の第1種対第2種が理論的化学量 1:1 に基本的に一致し、第2種が1より大きい価をもつ金属イオンであるとき、観測される化学量が n:1 である。
【図面の簡単な説明】
【0422】
【図1】図1は、実施例32のプロットであり、TRI 50b または TRI 50c 経口投与後の経口相クレアランスおよび速度を示す。
【図2】図2は、実施例32の第2プロットであり、TRI 50b または TRI 50c 十二指腸内投与後の経口相クレアランスおよび速度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式 (I) のボロン酸の薬学的に許容される塩基付加塩:
【化1】

式中、
Y は、アミノボロン酸残基 NHCH(R9)-B(OH)2 とともに、トロンビンの基質結合部位への親和性を有する疎水性部分を含み;
R9 は1以上のエーテル結合に遮られる直鎖アルキル基であり、そのうち酸素および炭素原子の全数が 3、4、5 または 6 であり、あるいは R9 が -(CH2)m-W であり、うち m が 2、3、4 または 5 であり、W が-OH またはハロゲン (F、Cl、Br または I)である。
【請求項2】
R9 がアルコキシアルキル基である、請求項1の塩。
【請求項3】
YCO- がトロンビンの S2 サブ部位に結合するアミノ酸を含み、そのアミノ酸がトロンビンの S3 サブ部位を結合する部分に N-末端で結合している、請求項1または2の塩。
【請求項4】
Y がトロンビンの S3 および S2 結合部位に結合する任意的に N-末端保護されたジペプチドであり、酸中のペプチド結合は、鎖中または環中に窒素、酸素または硫黄を任意的に含有し、ハロ、ヒドロキシおよびトリフルオロメチルから選択される置換基で任意的に置換されるC1-C13 ヒドロカルビルで任意的に置換されるC1-C13 ヒドロカルビルで任意的かつ独立的にN-置換され、任意的に該ペプチドがN-末端保護されおよび/または酸中のすべてのペプチド結合が非置換である、請求項1または2の塩。
【請求項5】
S3-結合アミノ酸残基が R 配置であり、S2-結合残基が S 配置であり、フラグメント -NHCH(R9)-B(OH) が R 配置である、請求項4の塩。
【請求項6】
下記式 (II) のボロン酸の薬学的に許容される塩基付加塩:
【化2】


式中、
X は H (NH2 を形成する) またはアミノ-保護基であり;
aa1 は、20 を超えない炭素原子を含有するヒドロカルビル側鎖を有し、13 までの炭素原子を有する少なくとも1の環状基を含むアミノ酸であり;
aa2 は 4 〜 6 員環を有し;
R1 は式-(CH2)s-Z の基であり、うち s が 2、3 または 4 であり、Z が-OH、-OMe、-OEt またはハロゲン (F、Cl、Br または I)である。
【請求項7】
aa1 は Phe、Dpa およびこれらの全般的または部分的水素化類似体から選択され、任意的に Dpa、Phe、Dcha および Cha から選択され、例えば (R)-Phe または (R)-Dpaである、請求項6の塩。
【請求項8】
aa2 が下記式 (IV) のイミノ酸の残基:
【化3】


式中、R11 は -CH2-、-CH2-CH2-、-S-CH2-、-S-C(CH3)2- または -CH2-CH2-CH2- であり、うち、環が 5- または 6- 員であるとき、基が1以上の -CH2- 基で 1 〜 3 C1-C3 アルキル基により任意的に置換され、そして任意的に aa2 が (S)-プロリン残基であり、例えば aa1-aa2 が (R)-Phe-(S)-Proである、請求項10−15のいずれかの塩。
【請求項9】
aa1 が (R)-配置であり、および/または aa2 が (S)-配置でありおよび/またはフラグメント -NH-CH(R1)-B(OH)2 が R 配置である、請求項16の塩。
【請求項10】
R1 が 2-ブロモエチル、2-クロロエチル、2-メトキシエチル、3-ブロモプロピル、3-クロロプロピルまたは 3-メトキシプロピル、例えば 3-メトキシプロピルである、請求項6−9のいずれかの塩。
【請求項11】
X は R6-(CH2)p-C(O)-、R6-(CH2)p-S(O)2-、R6-(CH2)p-NH-C(O)- または R6-(CH2)p-O-C(O)- であり、うち p は 0、1、2、3、4、5 または 6 であり、R6 は H あるいはハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、C5-C6 環状基、C1-C4 アルキル、および 5 〜 13-員環状基に結合するかおよび/またはこれに鎖中の O を介して連結する C1-C4 アルキルから選択された 1、2 または 3 の置換基に任意的に置換される 5 〜 13-員環状基であり、上記アルキル基はハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシおよび C5-C6 環状基から選択される置換基により任意的に置換されており、および該 5 〜 13-員環状基が芳香族またはヘテロ芳香族であり、例えばフェニルまたは 6-員ヘテロ芳香族基であり、例えば、X がベンジルオキシカルボニルである、請求項6−10のいずれかの塩。
【請求項12】
下記式 (VIII):
X-(R)-Phe-(S)-Pro-(R)-Mpg-B(OH)2
の化合物の塩である、請求項6または11の塩。
【請求項13】
コリンまたはアンモニウム塩を含まない、請求項1−12のいずれかの塩。
【請求項14】
ペプチドボロン酸とアルカリ金属または強い塩基性有機窒素含有化合物との塩を含み、任意的に、強い塩基性有機窒素含有化合物がグアニジン、グアニジン類似体またはアミンであり、例えば、ボロン酸とアルカリ金属、アミノ糖、グアニジンまたは下記式 (XI)のアミンとの塩:
【化4】


式中、n は 1 〜 6 であり、R2 は H、カルボキシレートまたは誘導体カルボキシレートであり、R3 は H、C1-C4 アルキル または天然もしくは非天然のアミノ酸残基、例えば、リシン、アルギニンまたはグルカミンとの塩である、請求項1−13のいずれかの塩。
【請求項15】
ボロン酸と金属との塩である、請求項1−12の塩。
【請求項16】
ペプチドボロン酸から誘導されるボロネート・イオンを含み、単一負電荷を保持するボロネート・イオンに一致する化学量を有する、請求項1−60のいずれかの塩。
【請求項17】
請求項1−16のいずれかの塩を含む経口投与形態のおける医薬製剤。
【請求項18】
固体の製剤であり、十二指腸中で塩を放出するように任意的に適用され、例えば、腸溶性被膜されている、請求項17の製剤。
【請求項19】
血栓症、例えば、急性冠状徴候群(例えば、急性心筋梗塞)、静脈血栓塞栓症(例えば、深静脈血栓症または肺塞栓症)を治療するため、血液透析回路での血栓症を予防するため、末期腎疾患の患者の心臓血管事象を予防するため、内在カテーテルを介して化学療法を受けている患者での静脈血栓塞栓症を予防するため、下肢動脈再構築がなされている患者での血栓塞栓症を予防するための医薬の製造における、項1−16のいずれかの塩の使用。
【請求項20】
(i) 請求項1−16のいずれかの塩と (ii) さらなる医薬活性剤、例えば他の心臓血管処置剤との組合せを含む経口医薬製剤であって、例えば、心臓血管処置剤が、脂質低下剤、フィブラート、ナイアシン、スタチン、CETP 阻害剤、胆汁酸封鎖剤、抗酸化剤、IIb/IIIa アンタゴニスト、アルドステロン阻害剤、A2 アンタゴニスト、A3 アゴニスト、ベータブロッカー、アセチルサリチル酸、ループ利尿剤、ACE 阻害剤、異なるメカニズムをもつ抗血栓剤、抗血小板剤、トロンボキサン受容体およびシンテターゼ阻害剤、フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト、プロスタシクリンミメティック、ホスホジエステラーゼ阻害剤、ADP-受容体 (P2 T) アンタゴニスト、血栓溶解剤、心臓保護剤または COX-2 阻害剤を含む。
【請求項21】
選択性トロンビン阻害剤であって、トロンビン S2 および S3 サブ部位に結合可能な疎水性部分にペプチド結合を介して連結されたトロンビン S1 サブ部位に結合可能な中性のアミノボロン酸残基を有するボロン酸の塩を含み、その塩が価 n を有するカチオンを含み、観測される化学量が理論的化学量 (ボロン酸:カチオン) n:1 に一致する、経口医薬。
【請求項22】
(i) 請求項1−16のいずれかの塩、(ii) 請求項1−12のいずれかのボロン酸または (iii) インビボでかかるボロン酸源となり得る他の産物をつくる方法であって、
溶媒中、例えばジエチルエーテル中で、ジエタノールアミンと請求項1−12のいずれかのボロン酸エステルとを組合せ;
沈殿物を形成せしめ、その沈殿物を回収し;
沈殿物を所望の最終産物に、例えば遊離の有機ボロン酸に、例えば沈殿物を水性酸または塩基と接触せしめて、変換し、ついで酸を薬学的に許容される塩基と接触せしめて、請求項1−16のいずれかの塩をつくること
を含む方法。
【請求項23】
最終産物が薬学的に許容される塩基付加塩であり、方法が塩を医薬組成物に製剤することをさらに含む、請求項22の方法。
【請求項24】
対応するボロン酸のアセトニトリル溶液と薬学的に許容される塩基とを組み合わせて、塩をつくることを含む、請求項1−16のいずれかの塩をつくる方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式 (I) のボロン酸の薬学的に許容される塩基付加塩:
【化1】

[式中、
Y は、アミノボロン酸残基 NHCH(R9)-B(OH)2 とともに、トロンビンの基質結合部位への親和性を有する疎水性部分を含み;
R9 は1以上のエーテル結合に遮られる直鎖アルキル基であり、そのうち酸素および炭素原子の全数が 3、4、5 または 6 であり、あるいは R9 が -(CH2)m-W であり、うち m が 2、3、4 または 5 であり、W が-OH またはハロゲン (F、Cl、Br または I)であり;
Y が任意的に N-末端保護されたジペプチドであるときに、酸中のペプチド結合は、鎖中または環中に窒素、酸素または硫黄を任意的に含有し、ハロ、ヒドロキシおよびトリフルオロメチルから選択される置換基で任意的に置換されるC1-C13 ヒドロカルビルで任意的にかつ独立的にN-置換される。]
【請求項2】
R9 がアルコキシアルキル基である、請求項1の塩。
【請求項3】
酸中のすべてのペプチド結合が非置換である、請求項1または2の塩
【請求項4】
C1-C13 ヒドロカルビル基がC1-C6 飽和ヒドロカルビル基である、請求項1または2の塩。
【請求項5】
YCO- がトロンビンの S2 サブ部位に結合するアミノ酸を含み、そのアミノ酸がトロンビンの S3 サブ部位を結合する部分に N-末端で結合している、請求項1−4のいずれかの塩。
【請求項6】
Y がトロンビンの S3 および S2 結合部位に結合する任意に N-末端保護されたジペプチドである、請求項1−4のいずれかの塩。
【請求項7】
該ジペプチドが N-末端保護されている、請求項6の塩。
【請求項8】
Y が、下記式 (B) の側鎖:

-(CO)a-(CH2)b-Dc-Ce(E1)(E2)(E3) (B)

[式中、
a は 0 または 1 であり;
e は 1 であり;
b および d は、独立的に 0 または (b+d) が 0 〜 4 もしくは (b+e) が 1 〜 4 であり得るような整数であり得;
c は 0 または 1 であり;
D は O または S であり;
E1、E2 および E3 は各々独立的に -R15 および-J-R15 から選択され、Jは 5-6 員環であり、-R15 は、C1-C6 トリアルキルシリル、-CN、-R13、-R12OR13、-R12COR13、-R12CH2R13、-R12O2CR13 および1または2のハロゲン原子から独立的に選択され、なお、R12 は (CH2)f- であり、および R13 は -(CH2)gH であり、うち、f および g はそれぞれ独立的に 0 〜 10 であり、ただし、(f+g) は 1、2、3 または 4 である]
を有する P3 残基を含む、請求項6または7の塩。
【請求項9】
E1、E2 または E3 が -R13基を含有し、g が 0 または 1 である、請求項8の塩。
【請求項10】
Y が、イミノ酸残基である p2 残基を含む、請求項8または9の塩
【請求項11】
ジペプチド残基が、(R)-配置のP3-結合アミノ酸残基および (S)-配置のP2-結合残基を含み、フラグメント -NHCH(R9)-B(OH) が (R)-配置である、請求項6−10のいずれかの塩。
【請求項12】
ボロン酸がトロンビンについて Ki 約 100 nM 以下を有する、請求項1−11のいずれかの塩。
【請求項13】
ボロン酸がトロンビンについて Ki 約 20 nM 以下を有する、請求項12の塩。
【請求項14】
下記式 (II) のボロン酸:
【化2】

[式中、
X は H (NH2 を形成する) またはアミノ-保護基であり;
aa1 は、20 を超えない炭素原子を含有するヒドロカルビル側鎖を有し、13 までの炭素原子を有する少なくとも1の環状基を含むアミノ酸であり;
aa2 は 4 〜 6 員環を有し;
R1 は式-(CH2)s-Z の基であり、うち s が 2、3 または 4 であり、Z が-OH、-OMe、-OEt またはハロゲン (F、Cl、Br または I)である]
である、請求項1の塩。
【請求項15】
aa1 が Phe、Dpa およびこれらの全般的または部分的水素化類似体から選択される、請求項14の塩。
【請求項16】
aa1 が Dpa、Phe、Dcha および Cha から選択される、請求項14の塩。
【請求項17】
aa1 が R-配置である、請求項14−16のいずれかの塩。
【請求項18】
aa1 が (R)-Phe または (R)-Dpaである、請求項14の塩。
【請求項19】
aa1 が (R)-Pheである、請求項14の塩。
【請求項20】
aa2 が下記式 (IV) のイミノ酸:
【化3】


[式中、R11 は -CH2-、-CH2-CH2-、-S-CH2-、-S-C(CH3)2- または -CH2-CH2-CH2- であり、うち、環が 5- または 6- 員であるとき、基が1以上の -CH2- 基で 1 〜 3 C1-C3 アルキル基により任意に置換されている]
の残基である、請求項14−19のいずれかの塩。
【請求項21】
aa2 が (S)-配置である、請求項20の塩。
【請求項22】
aa2 が (S)-プロリン残基である、請求項20の塩。
【請求項23】
aa1-aa2 が (R)-Phe-(S)-Proである、請求項14の塩。
【請求項24】
フラグメント -NH-CH(R1)-B(OH)2 が (R) 配置である、請求項14−23のいずれかの塩。
【請求項25】
R1 が 2-ブロモエチル、2-クロロエチル、2-メトキシエチル、3-ブロモプロピル、3-クロロプロピルまたは 3-メトキシプロピルである、請求項14−24のいずれかの塩。
【請求項26】
R1 が 3-メトキシプロピルである、請求項14−24のいずれかの塩。
【請求項27】
下記式 (VIII):
X-(R)-Phe-(S)-Pro-(R)-Mpg-B(OH)2
の化合物の塩である、請求項14の塩。
【請求項28】
X は R6-(CH2)p-C(O)-、R6-(CH2)p-S(O)2-、R6-(CH2)p-NH-C(O)- または R6-(CH2)p-O-C(O)- であり、うち p は 0、1、2、3、4、5 または 6 であり、R6 は H あるいはハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、C5-C6 環状基、C1-C4 アルキル、および 5 〜 13-員環状基に結合するかおよび/またはこれに鎖中の O を介して連結する C1-C4 アルキルから選択された 1、2 または 3 の置換基に選択的に置換される 5 〜 13-員環状基であり、上記アルキル基はハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシおよび C5-C6 環状基から選択される置換基により置換される、請求項14−27のいずれかの塩。
【請求項29】
該 5 〜 13-員環状基が芳香族またはヘテロ芳香族である、請求項28の塩。
【請求項30】
該 5 〜 13-員環状基がフェニルまたは 6-員ヘテロ芳香族基である、請求項29の塩。
【請求項31】
X が R6-(CH2)p-C(O)- または R6-(CH2)p-O-C(O)- であり、p が 0 または 1 である、請求項28−30のいずれかの塩。
【請求項32】
X がベンジルオキシカルボニルである、請求項14−26のいずれかの塩。
【請求項33】
ボロン酸が Cbz-(R)-Phe-(S)-Pro-(R)-Mpg-B(OH)2 である、請求項14の塩。
【請求項34】
コリンまたはアンモニウム塩を含まない、請求項1−33の塩
【請求項35】
ボロン酸および1価の対イオンから誘導されるボロネート・イオンを含む、請求項1−34のいずれかの塩。
【請求項36】
ペプチドボロン酸とアルカリ金属または強い塩基性有機窒素含有の化合物との塩である、請求項1−34のいずれかの塩。
【請求項37】
強い塩基性有機窒素化合物が pKb 約 7 以上、例えば、約 7.5 以上をもつ、請求項36の塩。
【請求項38】
ボロン酸と金属との塩である、請求項1−35のいずれかの塩。
【請求項39】
ボロン酸とアルカリ金属、アミノ糖、グアニジンまたは下記式 (XI) のアミン:
【化4】


[式中、n は 1 〜 6 であり、R2 は H、カルボキシラートまたは誘導カルボキシラートであり、R3 は H、C1-C4 アルキルまたは天然もしくは非天然のアミノ酸の残基である]
との塩である、請求項1−33または37のいずれかの塩。
【請求項40】
L-アルギニン塩である、請求項39の塩。
【請求項41】
L-リシン塩である、請求項39の塩。
【請求項42】
カリウム塩である、請求項39の塩。
【請求項43】
ナトリウム塩である、請求項39の塩。
【請求項44】
リチウム塩である、請求項39の塩。
【請求項45】
グルカミン塩である、請求項39の塩。
【請求項46】
グルカミンが N-メチル-D-グルカミンである、請求項45の塩。
【請求項47】
ペプチドボロン酸から誘導されるボロネート・イオンを含み、単一の負電荷を保持するボロネートに一致する化学量を有する、請求項1−46のいずれかの塩。
【請求項48】
塩がペプチドボロン酸と対イオンから誘導されるボロネート・イオンを含み、塩が単一型の対イオンを有する塩から基本的になる、請求項1−47のいずれかの塩。
【請求項49】
モノリチウム、モノナトリウムまたはモノカリウムの塩である、請求項1−48のいずれかの塩。
【請求項50】
モノリチウムまたはモノナトリウム塩である、請求項28−33いずれかの塩。
【請求項51】
モノナトリウム塩である、請求項49−51のいずれかの塩。
【請求項52】
1 重量%を超える水を含有しない Cbz-(R)-Phe-(S)-Pro-(R)-Mpg-B(OH)2 の固体相モノリチウムまたはモノナトリウム塩。
【請求項53】
固体相にある、請求項1−51のいずれかの塩。
【請求項54】
実質的に乾燥されている、請求項53の塩。
【請求項55】
請求項1−54のいずれかの塩を含む、医薬としての使用のための産物。
【請求項56】
請求項1−55のいずれかの塩を含む、経口投与形態の医薬製剤。
【請求項57】
薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体をさらに含む、請求項56の医薬製剤。
【請求項58】
固体の製剤である、請求項56の製剤。
【請求項59】
十二指腸で塩を放出するのに適する、例えば、腸溶性皮膜のなされている、請求項57の医薬製剤。
【請求項60】
血栓症を予防的または治療的に処置するための医薬の製造における、請求項1−54いずれかの塩の使用。
【請求項61】
疾患が、深静脈血栓症や肺塞栓症などの静脈血栓塞栓性事象であるか、または急性冠状症候群である、請求項60の使用。
【請求項62】
患者の血液透析回路での血栓症を予防するため、末期腎疾患の患者の心臓血管事象を予防するため、内在カテーテルを介して化学療法を受けている患者での静脈血栓塞栓症を予防するため、下肢動脈再構築がなされている患者での血栓塞栓症を予防するための経口医薬の製造における、請求項1−54のいずれかの塩の使用。
【請求項63】
急性冠状症候群、脳血管血栓症、末梢動脈閉塞および動脈細動からの動脈血栓症、心臓弁疾患、動脈-静脈シャント、内在のカテーテルまたは冠状ステントから選択される動脈疾患の治療または予防での処置のための経口医薬の製造における、請求項1−54のいずれかの塩の使用。
【請求項64】
(i) 請求項1−54のいずれかの塩および (ii) さらなる薬学的に許容される活性物質、例えば、他の心臓血管処置剤の組合せを含む経口医薬製剤であって、他の心臓血管処置剤が、例えば、脂質低下剤、フィブラート、ナイアシン、スタチン、CETP 阻害剤、胆汁酸封鎖剤、抗酸化剤、IIb/IIIa アンタゴニスト、アルドステロン阻害剤、A2 アンタゴニスト、A3 アゴニスト、ベータブロッカー、アセチルサリチル酸、ループ利尿剤、ACE 阻害剤、異なるメカニズムをもつ抗血栓剤、抗血小板剤、トロンボキサン受容体およびシンテターゼ阻害剤、フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト、プロスタシクリンミメティック、ホスホジエステラーゼ阻害剤、ADP-受容体 (P2 T) アンタゴニスト、血栓溶解剤、心臓保護剤または COX-2 阻害剤である、医薬製剤。
【請求項65】
他の心臓血管処置剤との共投与における心臓血管障害の処置、例えば予防のための医薬の製造における、請求項1−54のいずれかの塩の使用。
【請求項66】
選択性トロンビン阻害剤であって、トロンビン S2 および S3 サブ部位に結合可能な疎水性部分にペプチド結合を介して連結されたトロンビン S1 サブ部位に結合可能な中性のアミノボロン酸残基を有するボロン酸の塩を含み、その塩が、価 n を有し、理論的化学量 (ボロン酸:カチオン) n:1 に一致する観測される化学量を有するカチオンを含む、経口医薬。
【請求項67】
ボロン酸がトロンビンについての Ki 約 100 nM 以下または任意的に約 20 nM 以下を有する、請求項66の医薬。
【請求項68】
経口投与に適合し、固体相で酸 Cbz-(R)-Phe-(S)-Pro-(R)-Mpg-B(OH)2 に対応するボロネート種源ならびにコリンおよびアンモニウム以外の薬学的に許容されるカチオン源を含む医薬製剤。
【請求項69】
請求項1−54、66または67のいずれかに定義されるボロン酸塩をつくる方法であって、
ジエタノールアミンを酸のエステルのエーテル溶液に溶解し;
沈殿物を形成せしめて、その沈殿物を回収し;
沈殿物を遊離の有機ボロン酸に変換し;
有機ボロン酸を薬学的に許容される塩基と反応せしめて、塩を形成する;
ことを含む方法。
【請求項70】
エーテルがジエチルエーテルであり、エステルがピナコールエステルである、請求項69の方法。
【請求項71】
請求項69または70の方法を実施し、塩を医薬組成物に製剤すること含む、医薬製剤をつくる方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2006−511593(P2006−511593A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−569795(P2004−569795)
【出願日】平成15年9月9日(2003.9.9)
【国際出願番号】PCT/GB2003/003897
【国際公開番号】WO2004/022072
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(399013672)トライジェン・リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】TRIGEN LIMITED
【Fターム(参考)】