説明

ボールジョイント構造及びワイパアーム

【課題】棒状部材(サブアーム)を廃棄することなくボールハウジングを交換することができるボールジョイント構造及びワイパアームを得る。
【解決手段】ボールハウジング52は、ボールピンを転動可能に支持し、サブアーム18の端部に形成された取付孔58に回動可能に挿通される挿通部58を備えている。ボールハウジング52から径方向へ延出された嵌合固定部62をサブアーム18に向けて回動させると、嵌合固定部62がサブアーム18に脱着可能に固定される。このように、ボールハウジング58及び嵌合固定部62と、サブアーム18を別々に形成した後に、ボールハウジング52及び嵌合固定部62とサブアーム18を組み付け固定することで、ボールハウジング52が損傷した場合に、サブアーム18を廃棄することなくボールハウジング52を交換することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールジョイント構造及びこのボールジョイント構造を採用したワイパアームに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワイパ装置に設けられたリンクコンロッドを回動可能に支持するボールジョイント構造が記載されている。
【0003】
詳細には、板状のリンクコンロッドに形成された開口部に、球状のボールピンを支持するボールハウジングが樹脂のインサート成形等により設けられている。この構成により、リンクコンロッドをボールピンに対し回動可能に支持するようになっている。
【特許文献1】特開2003−247526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のボールジョイント構造では、リンクコンロッドに樹脂製のボールハウジングが一体的に成形されているため、ボールハウジングが破損した場合は、リンクコンロッド(棒状部材)ごと廃棄し、リンクコンロッド(棒状部材)ごと交換可能としなければならなかった。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、棒状部材を廃棄することなくボールハウジングを交換することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るボールジョイント構造は、端部に取付孔が形成された板状の棒状部材と、ボールピンを転動可能に支持すると共に、前記取付孔に回動可能に挿通された挿通部を備えるボールハウジングと、前記ボールハウジングから径方向へ延出され、前記棒状部材に向けて回動させて前記棒状部材に脱着可能に固定された装着固定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、ボールハウジングは、ボールピンを転動可能に支持し、棒状部材の端部に形成された取付孔に回動可能に挿通された挿通部を備えている。
【0008】
さらに、ボールハウジングから径方向へ延出された装着固定部を棒状部材に向けて回動させると、装着固定部が棒状部材に脱着可能に固定される。これにより、ボールハウジングが棒状部材に固定される。
【0009】
このように、ボールハウジング及び装着固定部と、棒状部材を別々に形成した後に、ボールハウジング及び装着固定部と棒状部材とを組み付け固定することで、ボールハウジングが損傷した場合など、装着固定部を回動させて棒状部材からボールハウジングを容易に取外しができる。
【0010】
このため、ボールハウジングが損傷した場合に棒状部材を廃棄することなくボールハウジングを交換することができる。
【0011】
本発明の請求項2に係るボールジョイント構造は、請求項1に記載の構造において、前記棒状部材の前記取付孔には、前記取付孔を切り欠いた延出部が設けられ、前記ボールハウジングの前記挿通部には、前記延出部を通過可能とすると共に、前記ボールハウジングを回動させて前記装着固定部が前記棒状部材に固定されると前記延出部を通過不可能とする係合部が設けられることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、ボールハウジングの挿通部に設けられた係合部は、棒状部材の取付孔を切り欠いた延出部を通過可能とすると共に、ボールハウジングを回動させて装着固定部が棒状部材に固定されると延出部を通過不可能とする。
【0013】
このように、装着固定部だけを棒状部材と固定するのではなく、ボールハウジングの挿通部に設けられた係合部が棒状部材の取付孔を切り欠いた延出部を通過不可能とすることで、係合部が棒状部材に支持されることとなる。
【0014】
これにより、脱着性能を維持したまま、棒状部材にボールハウジングをしっかりと支持固定することができる。
【0015】
本発明の請求項3に係るボールジョイント構造は、請求項1又は2に記載の構造において、前記ボールハウジングの回動中心軸が、前記棒状部材の前記取付孔の中心を通って前記棒状部材の板面と垂直な直線と一致させるように、前記取付孔及び前記挿通部の形状を設定したことを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、ボールハウジングの回動中心軸が、棒状部材の取付孔の中心を通って棒状部材の板面と垂直な直線と一致している。
【0017】
これにより、ボールハウジングの回動による軸間距離の変化が発生しないので、組付けのためにボールハウジングを棒状部材に対して回動させても連結軸間距離には影響がない。
【0018】
本発明の請求項4に係るボールジョイント構造は、請求項1〜3何れか1項に記載の構造において、前記ボールピンは、転動面となる球面状の球状部を備え、前記ボールハウジングは、前記球状部を収容する球面凹部を備え、前記球状部の中心点と、前記棒状部材の取付孔の中心点が一致するように前記取付孔及び前記挿通部の形状を設定したことを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、球状部の中心点と、棒状部材の取付孔の中心点が一致する。これにより、棒状部材からボールピンに向って負荷される力はボールピンの球状部の中心に向けて作用する。このため、ボールハウジングの球面凹部が、棒状部材から力を受けてボールピンから離脱するのを抑制することができる。
【0020】
本発明の請求項5に係るボールジョイント構造は、請求項1〜4何れか1項に記載の構造において、前記装着固定部は、前記ボールハウジングを回動させると、前記棒状部材を側部からくわえ込む嵌合固定部であることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、ボールハウジングから延出した嵌合固定部が、ボールハウジングを回動させると、棒状部材を側面部からくわえ込む。このように、嵌合固定部が棒状部材をくわえ込むことで、棒状部材がボールハウジングをさらに確実に支持する。
【0022】
本発明の請求項6に係るボールジョイント構造は、請求項2〜5何れか1項に記載の構造において、前記棒状部材の前記取付孔に形成された前記延出部は、前記棒状部材の長手方向に切り欠かれたことを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、棒状部材の取付孔に形成された延出部は、棒状部材の長手方向に切り欠かれている。これにより、延出部を形成するために棒状部材の幅を広くする必要がないため、延出部を形成することで棒状部材の材料費が高くなるのを防止することができる。
【0024】
本発明の請求項7に係るワイパアームは、往復回動する駆動軸と、基端部が前記駆動軸に取り付けられたメインアームと、前記メインアームの先端部が回動可能に取り付けられた連結プレートと、前記連結プレートに取り付けられ、被払拭面上を往復回動して前記被払拭面を払拭するワイパブレードと、先端部が前記連結プレートの前記メインアームと異なる点に回動可能に取り付けられ、基端部が前記駆動軸と異なる位置に設けられたボールピンにボールジョイント構造によって回動可能に支持されると共に、前記メインアームに連動して回動し、前記メインアームに対する前記ワイパブレードの姿勢を前記メインアームの回動に伴って変化させる板状のサブアームと、を備え、前記ボールジョイント構造は、前記ボールピンを転動可能に支持すると共に、前記サブアームの基端部に形成された取付孔に回動可能に挿通される挿通部を備えたボールハウジングと、前記ボールハウジングから径方向へ延出され、前記サブアームに向けて回動させて前記サブアームに脱着可能に固定された装着固定部と、が設けられることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、駆動軸が往復回動すると、メインアーム及び連結プレートを介して駆動軸の回動がワイパブレードへ伝達され、ワイパブレードは被払拭面上で往復回動し、被払拭面がワイパブレードによって払拭される。
【0026】
また、駆動軸とは異なる位置に設けられたボールピンにボールジョイント構造によって回動可能に支持されたサブアームによってワイパブレードの払拭姿勢が変更され、1本のワイパブレードに1本のアームしか設けられていないワイパアームでは払拭できない範囲が払拭される。
【0027】
ここで、ボールジョイント構造を構成するボールハウジングは、ボールピンを転動可能に支持すると共に、サブアームの基端部に形成された取付孔に回転可能に挿通される挿通部を備えている。
【0028】
そして、ボールハウジングから径方向へ延出された装着固定部をサブアームに向けて回動させると、装着固定部がサブアームに脱着可能に固定され、ボールハウジングがサブアームに支持される。
【0029】
このように、ボールハウジング及び装着固定部と、サブアームを別々に形成した後に、ボールハウジング及び装着固定部とサブアームを組み付け固定することで、ボールハウジングが損傷した場合など、装着固定部を回動させてサブアームからボールハウジングを容易に取外しができる。
【0030】
このため、ボールハウジングが損傷した場合に、サブアームを廃棄することなくボールハウジングを交換することができる。
【0031】
本発明の請求項8に係るワイパアームは、請求項7に記載の構造において、前記サブアームの前記取付孔には、前記取付孔を切り欠いた延出部が設けられ、前記ボールハウジングの前記挿通部には、前記延出部を通過可能とすると共に、前記ボールハウジングを回動させて前記装着固定部が前記サブアームに固定されると前記延出部を通過不可能とする係合部が設けられることを特徴とする。
【0032】
上記構成によれば、ボールハウジングの挿通部に設けられた係合部は、サブアームの取付孔を切り欠いた延出部を通過可能とすると共に、ボールハウジングを回動させて装着固定部がサブアームに固定されると延出部を通過不可能とする。
【0033】
このように、装着固定部だけをサブアームと固定するのではなく、装着固定部のサブアームへの固定に伴ってボールハウジングが回動され、ボールハウジングの挿通部に設けられた係合部がサブアームの取付孔を切り欠いた延出部を通過不可能とすることで、係合部がサブアームに支持されることとなる。
【0034】
これにより、脱着性能を維持したまま、サブアームに棒状部材にボールハウジングをしっかりと支持固定することができる。
【0035】
本発明の請求項9に係るワイパアームは、請求項7又は8記載の構造において、前記ボールハウジングの回動中心軸が、前記サブアームの前記取付孔の中心を通って前記サブアームの板面と垂直な直線と一致させるように、前記取付孔及び前記挿通部の形状を設定したことを特徴とする。
【0036】
上記構成によれば、ボールハウジングの回動中心軸が、サブアームの取付孔の中心を通ってサブアームの板面と垂直な直線と一致している。
【0037】
これにより、ボールハウジングの回動による軸間距離の変化が発生しないので、組付けのためにボールハウジングをサブアームに対して回動させても連結軸間距離には影響がない。
【0038】
軸間距離が変化しないことにより、ワイパブレードの姿勢の変化が車両によってバラツいてしまう事が抑止でき、反転位置でのピラーなどへの干渉防止のための安全度設定も容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の実施形態に係るボールジョイント構造の一例が採用されたワイパアームについて図1〜図8に従って説明する。
【0040】
(全体構成)
図7、図8に示されるように、ワイパアーム10は、車体に回動自在に支持されたピボット軸28に固定されてピボット軸28と一体に回動されるメインアーム12と、ピボット軸28と異なる位置において車体に間接的に支持されたボールピン50(図2(B)参照)にボールジョイント構造54により回動可能に連結され、メインアーム12の回動に従動して回動されるサブアーム18と、メインアーム12とサブアーム18とに連結されメインアーム12の回動位置に応じて払拭姿勢を変化させて払拭面を払拭するワイパブレード(図示省略)と、を備えている。なお、ボールジョイント構造54については詳細を後述する。
【0041】
メインアーム12及びサブアーム18は、その先端部が連結部材としての連結プレート22に所定の間隔を置いて回動可能に取り付けられている。この連結プレート22には、フック22Aが形成されており、このフック22Aが図示せぬクリップ部材によりワイパブレードに連結され、ワイパブレードは払拭面に沿った方向に回動可能とされている。このように、本実施形態では、メインアーム12及びサブアーム18とワイパブレードとは、連結プレート22によって連結されている。
【0042】
詳細には、サブアーム18の先端部は、回転軸部材32を介して連結プレート22の長手方向端部に回動自在に連結されている。そして、図6(C)に示されるように回転軸部材32には、樹脂製のブッシュ部材30が設けられている。
【0043】
これに対し、メインアーム12は、メインアームヘッド16と、メインアームリテーナ26と、メインアームピース20と、を備えている。
【0044】
このメインアームヘッド16が、ピボット軸28に固定されており、ピボット軸28と一体に回動される。そして、ピボット軸28の軸方向は、払拭面に対して交差する方向とされており、ピボット軸28が回動することにより、メインアームヘッド16の先端部が払拭面に沿って移動する。このピボット軸28は、駆動軸であり、駆動部としてのワイパモータ(図示省略)から駆動力を付与されて往復回動するようになっている。
【0045】
さらに、メインアームリテーナ26は、互いに対向し合う一対の側壁26Aとその側壁26Aの上端部間に連続する上壁26Bとによって、払拭面側が開口する断面コ字状に形成されている。また、メインアームリテーナ26は、その基端部がメインアームヘッド16に回転軸部材32によって回動自在に取り付けられており、先端部が払拭面に対して接離する方向に回動するようになっている。
【0046】
一方、メインアームピース20の基端部は、メインアームリテーナ26の先端部に固定されている。そして、メインアームピース20の先端部に、連結プレート22が回転軸部材24によって回動可能に取り付けられている。
【0047】
さらに、メインアームヘッド16とメインアームリテーナ26との間には、引っ張りばね等の付勢手段(図示省略)が取り付けられており、メインアームリテーナ26及びメインアームピース20が払拭面へ付勢される構成となっている。これにより、払拭面の湾曲に追従して、ワイパブレードが移動する。
【0048】
(要部構成)
次に、ボールジョイント構造54について説明する。
【0049】
図4(A)(B)に示されるように、鋼板を加工して形成された長尺板状のサブアーム18の基端部には、一般部(基端部以外)に比して、幅広で薄肉とされる幅広部56が設けられており、この幅広部56には、円状の取付孔58が、幅広部56の表裏を貫通するように設けられている。なお、この幅広部56は、例えば、金属製の板部材を潰し加工することにより成形され、取付孔58は、例えば、潰し加工後にピアス加工することにより成形される。
【0050】
これに対し、図3(A)(B)に示されるように、サブアーム18に取り付けられるボールハウジング52は、樹脂材料で成形され、サブアーム18の取付孔58(図4(A)参照)が挿通する円柱状の挿通部66と、ボールピン50の転動面となる球面状の球状部50A(図2(B)参照)を転動可能に支持する球面凹部64を備えている。
【0051】
また、図1(A)(B)に示されるように、取付孔58に挿通部66を挿入させると、挿通部66の基端部に広がる基端面70と、サブアーム18の幅広部56が当接し、挿通部66の側面と取付孔58の内周面との間には一定隙が設けられるようになっている。そして、挿通部66は、取付孔58の内周面に案内されるように回動軸線Z(図2(B)参照)を中心に回動可能とされている。
【0052】
つまり、サブアーム18の取付孔58にボールハウジング52の挿通部66を挿通させた状態で、ボールハウジング52は回動軸線Zを中心に回動可能とされており、この回動軸線Zは、円状の取付孔58の中心C(図4(A)参照)を通ってサブアーム18の板面と垂直な直線X(図4(B)参照)と一致させるように、取付孔58及び挿通部66の形状が決められている。
【0053】
さらに、図6(A)に示されるように、取付孔58に挿通部66を挿通させた状態で、ボールピン50の球状部50Aの中心点と、サブアーム18の取付孔58の中心点が図に示すB点で一致するように取付孔58及び挿通部66の形状が決められている。
【0054】
また、図3(A)に示されるように、挿通部66の側面には、側面66Aから回動軸線Zの径方向に凸となるように一対の係合部68が形成されており、図4(A)に示されるように、この係合部68を通過可能とする延出部60がサブアーム18の長手方向に取付孔58を切り欠いて設けられている。さらに、係合部68と基端面70との間隙D(図3(B)参照)は、幅広部56の板厚寸法G(図4(B)参照)と同等に設定されており、ボールハウジング52の回動によって軽圧入状態で係合するようになっている。
【0055】
一方、図1、図3に示されるように、ボールハウジング52の径方向に延出するよう嵌合固定部62が、ボールハウジング52と一体的に設けられている。詳細には、一対の係合部68を結んだ直線と直交する方向に嵌合固定部62が延出しており、嵌合固定部62の延出方向に対して直交する断面は、一方が開放された略U字状となっている。さらに、U字状とされた嵌合固定部62の開口部には、互いに接近するように凸となる一対の突起部72が設けられている。
【0056】
なお、ボールハウジング52と嵌合固定部62は、例えば、射出成形(インジェクションジェクション成形)等で、一体的に成形されている。
【0057】
この構成により、図1(A)(B)に示されるように、サブアーム18の取付孔58に設けられた延出部60を係合部68が通過させ、嵌合固定部62をサブアーム18に向けて(図1(B)に示す矢印A方向)回動させると、図2(A)に示されるように、断面U字状の嵌合固定部62が、サブアーム18の側部からサブアーム18をくわえ込むようになっている。
【0058】
詳細には、突起部72がサブアーム18と当り、U字状の開口を広げながらサブアーム18が嵌合固定部62内に入り込む。そして、完全にサブアーム18が嵌合固定部62内に入り込むと、図6(B)に示されるように、突起部72が基の位置に弾性復帰して、サブアーム18が嵌合固定部62から離脱するのを抑制する構成となっている。
【0059】
これに対し、図2(A)(B)に示されるように、ボールハウジング52が回動することで、挿通部66に設けられた係合部68が取付孔58を通過不可能となり、サブアーム18の幅広部56が、係合部68と基端面70との間に軽圧入状態で挟持されてボールハウジング52に固定される構成となっている。
【0060】
これにより、図5(A)(B)(C)に示されるように、サブアーム18がボールハウジング52を確実に支持するようになっている。
【0061】
さらに、図5(B)に示されるように、ボールハウジング52内に設けられた球面凹部64には、上下に延びる凹状のスリット74が複数個設けられている。詳細には、スリット74は、球面凹部64の上下方向略中央部からボールピン50が挿入される開口部76に向けて延設されている。
【0062】
この構成により、ボールピン50の球状部50A(図6(A)参照)をボールハウジング52の開口部76を通して球面凹部64へ挿入しようとすると、スリット74が弾性変形して広がり、球状部50Aが球面凹部64に達するとスリット74が弾性復帰して、球面凹部64がボールピン50の球状部50Aを保持するようになっている。
【0063】
なお、スリット74は、球面凹部64の中心点Bの開口部76側に形成されているため、予めサブアーム18の取付孔58にボールハウジング52を組み付けても、ボールピン50のボールハウジング52への挿入組付けを妨げない。
【0064】
(作用・効果)
図7、図8に示されるように、この構成のワイパアーム10では、ワイパモータ(図示省略)が作動してピボット軸28が往復回動すると、ピボット軸28に固定されたメインアーム12がこのピボット軸28周り往復回動する。このとき、サブアーム18が、連結プレート22のメインアーム12に対する角度を変化させつつボールピン50(図2(B)参照)周りを回動する。
【0065】
すると、連結プレート22に固定されたワイパブレードは、連結プレート22に追従してメインアーム12(ワイパアーム10)に対し姿勢を変化させつつ払拭面を払拭する。これにより、ワイパアーム10では、通常のワイパアームと比較して払拭面を広範囲に亘り払拭する(異なる払拭パターンで払拭する)。
【0066】
図2(B)に示されるように、サブアーム18の基端部に取り付けられたボールハウジング52によって、サブアーム18がボールピン50を中心に回動する。
【0067】
ここで、ボールハウジング52は、樹脂材料で成形されているため、外部からの衝撃でクラック等が入り損傷する場合がある。ボールハウジング52が破損すると、サブアーム18とボールピン50との連結が外れ、ワイパブレードの払拭姿勢を保つことができなくなるため適正な視界確保が困難となる。
【0068】
そこで、ボールハウジング52を交換する必要がある。ボールハウジング52を交換する場合は、先ず、図2(A)(B)に示されるように、ボールピン50からボールハウジング52を矢印UP方向に引き抜く。そして、ボールハウジング52をサブアーム18から離脱させるため、嵌合固定部62を図2(A)に示す矢印C方向に略90度回動させ、嵌合固定部62をサブアーム18から離脱させる。
【0069】
さらに、図1(B)に示されるように、サブアーム18の取付孔58を切り欠いた延出部60が挿通部66に設けられた係合部68を通過可能とし、図1(A)に示されるように、サブアーム18から破損したボールハウジング52を取り外す。
【0070】
そして、交換用のボールハウジング52をサブアーム18に装着する場合は、先ず、図1(A)(B)に示されるように、サブアーム18の取付孔58に設けられた延出部60に係合部68を通過させ、この状態で、嵌合固定部62をサブアーム18に向けて(図1(B)に示す矢印A方向)回動させる。
【0071】
嵌合固定部62をサブアーム18に向けて回動させると、図2(A)に示されるように、断面U字状の嵌合固定部62が、サブアーム18の側部からサブアーム18をくわえ込み、嵌合固定部62の突起部72はサブアーム18が嵌合固定部62から離脱するのを抑制する。
【0072】
嵌合固定部62を回動させることでボールハウジング52に設けられた挿通部66も回動し、挿通部66に設けられた係合部68が取付孔58を通過不可能となる。これにより、図5(A)(B)(C)に示されるように、サブアーム18がボールハウジング52を確実に支持する。
【0073】
このように、サブアーム18とボールハウジング52を脱着可能とすることで、ボールハウジング52が破損した場合に、サブアーム18を廃棄することなくボールハウジング52を交換することができる。
【0074】
また、ボールハウジング52の回動軸線Zが、サブアーム18の取付孔58の中心Cを通ってサブアーム18の板面と垂直な直線Xと一致している。これにより、ボールハウジング52の回動による軸間距離の変化が発生しないので、組付けのためにボールハウジング52をサブアーム18に対して回動させても連結軸間距離には影響がない。そして、軸間距離が変化しないことにより、ワイパブレードの姿勢の変化が車両によってバラツいてしまう事が抑止でき、反転位置でのピラーなどへの干渉防止のための安全度設定も容易にすることができる。
【0075】
また、ボールピン50の球状部50Aの中心点と、サブアーム18の取付孔58の中心点が一致している。これにより、サブアーム18からボールピン50に向って負荷される力はボールピン50の球状部50Aの中心に向けて作用する。このため、ボールハウジング52の球面凹部64がサブアーム18から力を受けてボールピン50から離脱するのを抑制することができる。
【0076】
また、サブアーム18の取付孔58に形成された延出部60は、サブアーム18の長手方向に切り欠かれている。これにより、延出部60を形成するためにサブアーム18の幅を広くする必要がないため、延出部60を形成することでサブアーム18の材料費が高くなるのを防止することができ、サブアーム18による視界の妨げも抑制できる。
【0077】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、ボールジョイント構造54をワイパアーム10に採用した例について説明したが、リンク機構のコンロッドやレバー等におけるボールジョイント構造に採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】(A)(B)本発明の実施形態に係るボールジョイント構造を示した斜視図である。
【図2】(A)(B)本発明の実施形態に係るボールジョイント構造を示した斜視図である。
【図3】(A)(B)本発明の実施形態に係るボールジョイント構造に採用されたボールハウジング等を示した平面図及び側面図である。
【図4】(A)(B)本発明の実施形態に係るボールジョイント構造に採用されたサブアームを示した平面図及び側面図である。
【図5】(A)(B)(C)本発明の実施形態に係るボールジョイント構造を示した平面図、断面図、側面図である。
【図6】(A)(B)(C)本発明の実施形態に係るボールジョイント構造を示した断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るボールジョイント構造が採用されたワイパアームを示した平面図である。
【図8】本発明の実施形態に係るボールジョイント構造が採用されたワイパアームを示した側面図である。
【符号の説明】
【0079】
10・・・ワイパアーム、12・・・メインアーム、18・・・サブアーム、22・・・連結プレート、28・・・ピボット軸(駆動軸)、50・・・ボールピン、50A・・・球状部、52・・・ボールハウジング、54・・・ボールジョイント構造、58・・・取付孔、60・・・延出部、62・・・嵌合固定部、64・・・球面凹部、66・・・挿通部、68・・・係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に取付孔が形成された板状の棒状部材と、
ボールピンを転動可能に支持すると共に、前記取付孔に回動可能に挿通された挿通部を備えるボールハウジングと、
前記ボールハウジングから径方向へ延出され、前記棒状部材に向けて回動させて前記棒状部材に脱着可能に固定された装着固定部と、
を備えるボールジョイント構造。
【請求項2】
前記棒状部材の前記取付孔には、前記取付孔を切り欠いた延出部が設けられ、
前記ボールハウジングの前記挿通部には、前記延出部を通過可能とすると共に、前記ボールハウジングを回動させて前記装着固定部が前記棒状部材に固定されると前記延出部を通過不可能とする係合部が設けられる請求項1に記載のボールジョイント構造。
【請求項3】
前記ボールハウジングの回動中心軸が、前記棒状部材の前記取付孔の中心を通って前記棒状部材の板面と垂直な直線と一致させるように、前記取付孔及び前記挿通部の形状を設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載のボールジョイント構造。
【請求項4】
前記ボールピンは、転動面となる球面状の球状部を備え、
前記ボールハウジングは、前記球状部を収容する球面凹部を備え、
前記球状部の中心点と、前記棒状部材の取付孔の中心点が一致するように前記取付孔及び前記挿通部の形状を設定したことを特徴とする請求項1〜3何れか1項に記載されたボールジョイント構造。
【請求項5】
前記装着固定部は、前記ボールハウジングを回動させると、前記棒状部材を側部からくわえ込む嵌合固定部である請求項1〜4何れか1項に記載のボールジョイント構造。
【請求項6】
前記棒状部材の前記取付孔に形成された前記延出部は、前記棒状部材の長手方向に切り欠かれたことを特徴とする請求項2〜5何れか1項に記載のボールジョイント構造。
【請求項7】
往復回動する駆動軸と、
基端部が前記駆動軸に取り付けられたメインアームと、
前記メインアームの先端部が回動可能に取り付けられた連結プレートと、
前記連結プレートに取り付けられ、被払拭面上を往復回動して前記被払拭面を払拭するワイパブレードと、
先端部が前記連結プレートの前記メインアームと異なる点に回動可能に取り付けられ、基端部が前記駆動軸と異なる位置に設けられたボールピンにボールジョイント構造によって回動可能に支持されると共に、前記メインアームに連動して回動し、前記メインアームに対する前記ワイパブレードの姿勢を前記メインアームの回動に伴って変化させる板状のサブアームと、
を備え、
前記ボールジョイント構造は、
前記ボールピンを転動可能に支持すると共に、前記サブアームの基端部に形成された取付孔に回動可能に挿通される挿通部を備えたボールハウジングと、
前記ボールハウジングから径方向へ延出され、前記サブアームに向けて回動させて前記サブアームに脱着可能に固定された装着固定部と、
が設けられるワイパアーム。
【請求項8】
前記サブアームの前記取付孔には、前記取付孔を切り欠いた延出部が設けられ、
前記ボールハウジングの前記挿通部には、前記延出部を通過可能とすると共に、前記ボールハウジングを回動させて前記装着固定部が前記サブアームに固定されると前記延出部を通過不可能とする係合部が設けられる請求項7に記載のワイパアーム。
【請求項9】
前記ボールハウジングの回動中心軸が、前記サブアームの前記取付孔の中心を通って前記サブアームの板面と垂直な直線と一致させるように、前記取付孔及び前記挿通部の形状を設定したことを特徴とする請求項7又は8に記載のワイパアーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−48367(P2010−48367A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214140(P2008−214140)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】