説明

ポジ型感光性樹脂組成物およびパターン形成方法

【課題】 熱膨張係数が小さく、このために、基材との密着性の低下や基材の反り等が低減され、電気特性、解像度などが劣化することがない樹脂膜を与えることができるポジ型感光性ポリイミド前躯体組成物を提供する。
【解決手段】 ベンゾオキサゾール骨格とフェノール性水酸基を有するポリイミド前躯体、ビニルエーテル化合物、光酸発生剤とを主成分とするアルカリ水溶液にて現像が可能なポジ型パターン形成能を有する感光性樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の信頼性向上のための半導体デバイス等の製造において電気、電子絶縁材料、特に半導体表面保護膜や層間絶縁膜として用いられるポジ型感光性樹脂組成物とこの組成物を用いたパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、バッファーコートには優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミド樹脂が用いられている。しかし近年半導体素子の高集積化、大型化が進む中、封止樹脂パッケージの薄型化、小型化の要求がありLOC(リード・オン・チップ)や半田リフローによる表面実装などの方式が取られてきており、これまで以上に機械特性、耐熱性等に優れたポリイミド樹脂が必要とされるようになってきた。
さらに、近年電子機器で使用される回路基板や半導体実装部品では、軽量化と高集積・高密度化を両立させるために配線ピッチの超微細化が急速に進んでいる。この流れの中で、これまで重視されていなかった基板や部品材料間の線膨張係数の差が、製品の品質、信頼性に重大な影響を与えるようになりつつある。この問題を解決する寸法安定性が優れるポリイミドフィルムが強く求められている。
【0003】
一方、ポリイミド樹脂自身に感光性特性を付与した感光性ポリイミドが用いられてきているが、これを用いるとパターン作製工程が簡略化でき、煩雑な製造工程の短縮が行えるという特徴を有する。ネガ型では、ポリイミド前駆体(アミック酸)にエステル結合またはイオン結合あるいはアミド結合、IPN型などを介してメタクリロイル基を導入する方法(例えば、特許文献1〜5参照)、光重合オレフィンを有する可溶性ポリイミド(例えば、特許文献6参照)、ベンゾフェノル骨格を有し、かつ窒素原子が結合する芳香環のオルト位にアルキル基を有する水素引抜反応を利用した自己増感型ポリイミド(例えば、特許文献7、8参照)、光酸化誘起重合反応を利用し、フラン構造を有する可溶性ポリイミド(例えば、特許文献9参照)などがある。
しかし、これらネガ型では、現像工程にて環境上好ましくないN−メチルピロリドンなどの有機溶剤を使用するので、現像工程での安全性に問題があり、近年、従来のネガ型に代わって、アルカリ水溶液で現像できるポジ型感光性ポリイミド樹脂が開発されている。露光した部分が現像により溶解するポジ型の耐熱性樹脂組成物としては、ポリアミド酸にナフトキノンジアジドを添加したもの(例えば、特許文献10参照)、水酸基を有したポリアミド酸にナフトキノンジアジドを添加したもの(例えば、特許文献11参照)、酸・塩基分解基を有するポリイミド前駆体に光酸発生剤(PAG)/光塩基発生剤(PBG)を添加したもの(例えば、特許文献12、13参照)、O−ニトロベンジル基をポリイミド前駆体に導入したもの(例えば、特許文献14参照)。
何れの方法においても耐熱性、耐薬品性においてポリイミド樹脂より性能が悪く、限られた半導体製品への適用しかできない。また、これらの樹脂組成物は、半導体回路形成時に広く使用されているポジ型レジスト、例えばノボラック樹脂にジアゾナフトキノンを混合した樹脂組成物と比較すると、紫外線に対する感度が低く、パターン形成能が悪い。このため、パターン現像時に薄膜が残り、パターンの寸法が大きくなり過ぎるといった不良が発生していた。これらの問題からパターン形成の際にアルカリ水溶液が利用でき、且つ、この現像液に対して非膨潤で優れた感光特性と優れた熱寸法安定を兼備する可能なポジ型感光性ポリイミド前躯体が強く要求されている。

【特許文献1】特開昭 54−145794号公報
【特許文献2】特開昭 55−030207号公報
【特許文献3】特開昭 61−118424号公報
【特許文献4】特開昭 57−168942号公報
【特許文献5】特開平 03−170547号公報
【特許文献6】特開昭 59−108031号公報
【特許文献7】特開昭 61−145794号公報
【特許文献8】特開2003−076017号公報
【特許文献9】特開2000−338668号公報
【特許文献10】特開昭 52−013315号公報
【特許文献11】特開平 04−204945号公報
【特許文献12】特開平 04−120171号公報
【特許文献13】特開平 10−186664号公報
【特許文献14】特開昭 60−037550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来のポジ型感光性樹脂の熱膨張係数が大きいことに起因する、基材との密着性の低下や基材の反りなど従来技術包含課題を軽減するためになされたものであり、熱膨張係数が小さく、このために、基材との密着性の低下や基材の反り等が軽減され、電気特性、解像性などを劣化させることのない、耐熱性樹脂膜を与えることができるポジ型感光性ポリイミド組成物を提供することを目的としたものである。
また本発明は、前記組成物の使用により、前述した従来の欠点を解消し、アルカリ水溶液にて現像が可能、且つ耐熱性、機械特性及び熱寸法安定性に優れる良好な形状のパターンが得られるパターンの製造法を提供するものである。また、本発明は、良好な形状と特性のパターンを有することにより、信頼性の高い電子部品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、主鎖にベンゾオキサザールなどのベンゾアゾール骨格を有し、且つ主鎖及び側鎖の少なくとも何れかにフェノール性水酸基を含有するポリイミドと、特徴構造をもつビニルエーテル化合物、及び光酸発生剤とを必須成分を特徴とし、そのことにより上記目的が達成される。
本発明者らは、かかる状況に鑑み鋭意研究を続けた結果、次なる発明に到達した。すなわち本発明は以下の構成になるものである。
1. (A)主鎖にベンゾオキサゾール骨格を有し、且つ主鎖及び側鎖の少なくとも何れかにフェノール性水酸基を有するポリイミド前躯体と、(B)ビニルエーテル化合物、(C)活性光線照射で酸を発生する感光剤を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
2. (A)ポリイミド前躯体が、一般式(化1)で示される構造を繰返し単位中に有し、
【化1】

(式中、Rはフェノール性水酸基を含有してもよい4価の有機基、Rは、フェノール性水酸基を含有する1価の有機基またはその他の1価の有機基、Rは一般式(化2)〜(化5)のいずれかで示される芳香族ベンゾオキサゾール残基を表す)。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

(一般式(化2)〜(化5)中、Xは酸素原子、硫黄原子またはNR(式中Rは水素原子、アルキル基またはフェニル基を示す)を示し、R,Rはそれぞれ独立し、フェノール性水酸基を有してもよい単環または複数の環から構成される芳香族環基または複素環基を示し、R,Rはそれぞれ独立し、フェノール性水酸基を有してもよい単環または複数の環から構成される芳香族環基または複素環基または脂肪族基を示す。)
かつ(B)ビニルエーテル化合物が下記(化6)〜(化8)にて示されるビニルエーテル化合物
【化6】

(mは1以上の整数、Rは脂肪族基若しくは芳香族基を示す)
【化7】

(p及びnは1以上の整数、R10は脂肪族基若しくは芳香族基を示す)
【化8】

(q及びrは1以上の整数、R11は脂肪族基若しくは芳香族基を示す)
である1.のポジ型感光性樹脂組成物。
3. 支持体の表面に請求項1および請求項2のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を塗設してなる感光性基材。
4. 3.で得られた感光性基材に、加熱処理を行った後、マスクパターンを介して活性光線の照射を行って、更にアルカリ性現像液にて露光部分を除去することを特徴とするレリーフパターン形成方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、シリコンウェハーなどの低熱膨張係数の基材上に塗布、熱環化した後に得られるポリイミドと基材との熱膨張係数の差が小さく、また、基材との密着性が良く、かつ反りなどを軽減でき、また、現像性、感光性などを良好に維持できるので、これらの結果として、良好なパターンが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の実施形態について説明するが、これらは本発明の実施形態の一例であり、これらの内容に限定されない。
【0008】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、主鎖にベンゾアゾール骨格を有し、且つ主鎖及び側鎖の少なくとも何れかにフェノール性水酸基を有するポリイミド前躯体と、特定のビニルエーテル化合物と、紫外線等活性光線に対して酸を発生する感光剤からなることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。該ビニルエーテル化合物は、加熱処理により架橋するためアルカリ水溶液に対して不溶化するが、活性光線の照射により生成する酸の触媒作用により架橋が分解して、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液に対する溶解度が増加することを特徴とする。
【0009】
本発明に関するポリイミド前躯体は、好ましくは、一般式(化1)で表される構造単位を主成分としており、加熱するか、または適当な触媒を添加することにより、イミド環を有する樹脂となりえるものであり、イミド環形成により耐熱性に優れたポリイミドが形成される。
【0010】
【化1】

【0011】
ここで、上記(化1)式中、Rはフェノール性水酸基を含有してもよい4価の有機基、Rは、フェノール性水酸基を含有する1価の有機基またはその他の1価の有機基を表している。
【0012】
上記一般式(化1)式中、Rは、4価の有機基であれば特に限定されないが、ポリイミドに耐熱性を持たせるために炭素数6〜30の芳香族環基又は芳香族複素環基であることが好ましい。Rの好ましい具体例としては、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3‘、4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3‘、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンテトラカルボン酸、3,3‘、4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3‘、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸などといったテトラカルボン酸由来の構造などが挙げられる。
またRはフェノール性水酸基を含有する芳香族環基または芳香族複素環基であってもよく、このような有機基としては、例えば、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−ヒドロキシー4−アミノフェニル)プロパン、ビス(3−アミノー4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノー4−ヒドロキシフェニル)エーテル、3,3‘−ジアミノー4,4’−ジヒドロキシビフェニルなどのジアミンと、2倍モルの無水ピロメリット酸を反応させた反応生成物であるテトラカルボン酸のR該当部分が挙げられる。
【0013】
上記一般式(化1)において、Rは、フェノール性水酸基を有する1価の有機基又はその他の1価の有機基であり、ポリイミド前躯体構造中に共有結合により導入されている。フェノール性水酸基を有する有機基またはその他の1価の有機基は、共有結合によりポリイミド前躯体中に導入可能なものであれば、特に限定があるわけではないが、ポリイミド前躯体への導入のし易さ、導入可能な基を考慮する場合の選択の幅広さ、イミド環形成時の脱離の容易さを考慮すると、アルコール化合物由来のもの、またはアミン化合物由来のものが好適である。これらであれば、公知の方法でアルコール化合物を用いてエステル体を合成するか、または、アミン化合物を用いてアミド体を合成するかのいずれかにより、ポリイミド前躯体に導入される。
【0014】
が表すフェノール性水酸基を含有する有機基としては、ヒドロキシベンジロキシ基、ヒドロキシフェネチロキシ基などが挙げられる。このようなフェノール性水酸基を含有する有機基をエステル結合により導入するために用いられるフェノール性水酸基を有するアルコール化合物としては、例えば、4−ヒドロキシベンジルアルコール、3−ヒドロキシベンジルアルコール、2−ヒドロキシベンジルアルコール、4−ヒドロキシフェネチルアルコールなどが挙げられる。また、フェノール性水酸基を含有する有機基をアミド結合により導入するために用いられるフェノール性水酸基を有するアミン化合物としては、例えば、4−ヒドロキシベンジルアミン、3−ヒドロキシベンジルアミン、2−ヒドロキシベンジルアミン、4−ヒドロキシフェネチルアミンなどが挙げられる。
【0015】
また、Rが表すその他の1価の有機基としては、フェノール性水酸基を有さない基であれば特に限定されないが、例えば、炭素数が1〜10であるアルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基など、炭素数が6〜10であるフェニル基、フェノキシ基、フェニルアミノ基、ベンジル基などが挙げられる。
【0016】
一般にポリイミドの熱膨張係数を小さくするためには、化学構造上、ポリイミド主鎖が剛直で直線状の棒状構造を有していることが必要であると考えられる。そして、このような剛直で直線状の棒状構造を形成するためには、環構造のパラ結合が特に重要である。このようなパラ結合を有する環結合のポリイミドでは、ポリイミド骨格の面内配向度が大きくなり、そのために、剛直で直線状の棒状構造を有するようになると考えられるからである。
【0017】
本発明に関するポリイミド前躯体は、このようなポリイミドの熱膨張係数を小さくなるために適した化学構造として、主鎖にベンゾオキサゾール骨格を有しており、さらに好ましくは、上記一般式(化1)において、R3が、以下の一般式(化2)〜(化5)のいずれかで表されるベンゾオキサゾール骨格を有している。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

上記一般式(化2)〜(化5)中、R,R,R,Rは、それぞれ独立して、フェノール性水酸基を有していてもよい単環または複数の環から構成される芳香族環基または複素環基を表している。
【0018】
の具体例としては、下記の化9内に示す5の例が挙げられる。
【0019】
【化9】

【0020】
ここで、化9内において、Xは、O,S,SO,S=O,CH,C=O,ヘキサフルオロイソプロピリデン、イソプロピリデンの1つ以上を示すものである。
【0021】
の具体例としては、下記の化10内に示す5つの例が挙げられる。
【0022】
【化10】

【0023】
ここで、化10内において、Xは、O,S,SO,S=O,CH,C=O,ヘキサフルオロイソプロピリデンまたはイソプロピリデンの1つ以上を示すものである。
【0024】
の具体例としては、下記の化11内に示す5つの例が挙げられる。
【0025】
【化11】

【0026】
ここで、化11内において、Xは、O,S,SO,S=O,CH,C=O,ヘキサフルオロイソプロピリデンまたはイソプロピリデンの1つ以上を示すものである。
【0027】
の具体例としては、下記の化12内に示す5つの例が挙げられる。
【0028】
【化12】

【0029】
ここで、化12内において、Xは、O,S,SO,S=O,CH,C=O,ヘキサフルオロイソプロピリデンまたはイソプロピリデンの1つ以上を示すものである。
【0030】
〜Rの主鎖形成のための結合位置は任意でよいが、生成するポリイミドに直線形状を持たせるためは、前述のように、パラ位置で結合するか、または、環構造内でできるだけ離間した位置関係になるように結合することが好ましい。
また、R,R,R,Rは、それぞれフェノール性の水酸基を置換基として有しても良い。
【0031】
上記のようなR〜Rのいずれかで示されるRの好ましい具体例としては、2,6−(4,4‘−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、5−アミノー2−(p−アミノフェニル)−ベンゾオキサゾール、5−アミノー2−(m−アミノフェニル)−ベンゾオキサゾール、4,4‘−ジフェニルエーテルー2,2’−ビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2‘−p−フェニレンビズ(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−ビス(4−フェニル)ヘキサフルオロプロパンー2,2‘−(5−アミノベンゾオキサゾール)などが挙げられる。また、フェノール性水酸基を有するものとしては、5−アミノー2−(m−ヒドロキシーp−アミノフェニル)−ベンゾオキサゾール、5−アミノー2−(m−アミノ−p−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾール、4,4’−ジ(m−ヒドロキシフェニル)エーテル−2,2‘−ビス(5−アミノベンゾオキサゾール)などが挙げられる。
【0032】
上記構成のポリイミド前躯体は、ポリイミド前躯体全体に含まれるフェノール性水酸基が一般式(化1)で示される繰返し単位1モルあたり、0.3〜3モルであることが好ましい。フェノール性水酸基の量が小さな過ぎる場合は、アルカリ現像液に対して十分な溶解性を示さない恐れがあり、良好なポジ型感光性の性能を発揮することができない恐れがある。フェノール性水酸基が多すぎると、現像時に膜減りが大きく、良好なパターンを形成できない。
【0033】
また、本発明のポジ型感光性(ポリイミド前躯体)樹脂組成物と基板との接着性を向上させるために、耐熱性を低下させない範囲内でR,Rにシロキサン構造を有する脂肪族の基を共重合しても良い。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどを1〜10モル%共重合したものなどが挙げられる。
【0034】
また、本発明においては、芳香族ジアミンまたは二酸無水物と結合する結合性基と、芳香族ジアミンと二酸無水物とからポリイミド前躯体を形成するための条件とは異なる条件で該ポリイミド前躯体同士を連結性基との二種類の官能基を有する連鎖延長剤によって、ポリイミド前躯体の少なくとも一方の末端が結合性基を介して封鎖されていることが好ましい。
【0035】
ポリイミド前躯体がこのような連鎖延長剤によって封鎖されていると、芳香族ジアミンと二酸無水物とからポリイミド前躯体を形成した後に、連結性基を用いて、膳躯体形成と異なる条件で、ポリイミド前躯体の分子量を増大させることができる。この分子量の増大は、添加する連鎖延長剤の量を調整することによって任意に制御することができる。
【0036】
本発明において使用される連鎖延長剤は、特に限定はないが、例えば、アルケニル基、アルキニル基、シクロブテン環を含有する二酸無水物又は1級又は2級のアミンが挙げられる。具体的には、無水マレシン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビニルフタル酸無水物、1,2−ジメチル無水マレイン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、フェニルエチニルアニリン、エチニルアニリン、3−(3−フェニルエチニルフェノキシ)アニリン、プロパルギルアミン、アミノベンゾシクロブテンなどが挙げられる。一般的に、添加される連鎖延長剤の量が多くなると、ポリイミド前躯体の分子量が減少し、それゆえそれを含む溶液の粘度が減少する。また、塗布方法により最適な溶液粘度が存在する。したがって、望ましい分子量及び溶液粘度が得られるように考慮して、連鎖延長剤の濃度及び塗布方法が選択される。
【0037】
本発明のポリイミド前躯体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミノベンズアゾールとを反応させることにより合成されるが、合成する際のモノマー混合比(モル比)は、テトラカルボン酸(酸無水物)/ジアミンの表記方法で、好ましくは0.800〜1.200/1.200〜0.800、より好ましくは0.900〜1.100/1.100〜0.900、更に好ましくは0.950〜1.150/1.150〜0.950である。
また、本発明のポリイミド前躯体は、主鎖にフェノール性水酸基を有するように、テトラカルボン酸二無水物及びジアミノベンズアゾールの少なくともいずれかにフェノール性水酸基を含有するものを選択するか、または、側鎖にフェノール性水酸基を有するように、フェノール性水酸基を有する基をRとして導入する。フェノール性水酸基を有する基をR2として導入する場合、アルコール化合物又はアミン化合物を反応させる方法が公知であるので、例示として、この方法について説明する。まず、テトラカルボン酸二無水物とアルコール化合物又はアミン化合物とを反応させて、テトラカルボン酸ジエステルまたはテトラカルボン酸ジアミドを合成し、ついで、該ジエステル又はジアミドを塩化チオニルなどと反応させて、テトラカルボン酸ジエステル塩化物又はテトラカルボン酸ジアミド塩化物を合成する。その後、得られた該塩化物を有機溶媒に溶解させて、ピリジンなど脱ハロゲン化水素剤を含有した有機溶剤に溶解したジアミノベンゾアゾールと反応させるか、シクロヘキシルカルボジイミド、ジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソー3−ベンゾオキサゾール)ホソホナートなどの適当な脱水剤を用いてジアミノベンゾオキサゾールと反応させる。この際の溶剤としては、例えば、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン,N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられ、これらの溶媒は,単独あるいは混合して使用することができる。極性有機溶媒の使用量は、仕込みモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、通常は1〜50質量%であり好ましくは5〜30質量%の固形分を含むものであればよい。
【0038】
本発明の耐熱性ポジ型感光性樹脂組成物に含有させる(B)ビニルエーテル化合物としては、上記(化6)〜(化8)にて表される化合物を用いる。(化6)〜(化8)におけるR〜R11はビニルエーテル基を1つ以上結合する有機基であって、具体的にはベンゼン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルエーテル、シクロヘキサン、エタンなどを基本骨格とする1価もしくは高価の芳香族もしくは脂肪族炭化水素基が例示される。好ましい基としてはベンゼン、ジフェニルプロパン、シクロヘキサンであり、2〜4価の有機基が好ましい、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0039】
上記ビニルエーテル化合物は前記のポリイミド前躯体100重量部に対して10〜80重量部、好ましくは10〜60重量部の範囲で含有させる。含有量が10重量部未満であるとその効果がなく、また80重量部を超えると得られる塗膜の特性が低下する。
【0040】
本発明におけるC)の紫外線等活性光線照射で酸を発生する感光剤(光酸発生剤)に適した光酸発生剤は紫外線のような光の照射によって酸性を呈する。このような光酸発生剤としては、具体的にはジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨーヂニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンベンジルエステル、芳香族スルファミド、ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステルなどが用いられる。このような化合物は必要に応じて2種以上併用したり、他の増感剤と組み合わせて使用したりすることができる。
【0041】
光酸発生剤はポリイミド前躯体100重量部に対して0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜40重量部が添加される。含有量が0.01重量部に満たない場合には紫外線や可視光線などの活性光線を照射した際に、光感度が十分ではなく溶解性コントラストが不鮮明となりやすく、また、含有量が50重量部を超えると、感光性組成物として溶液状態で保存した場合に保存安定性が悪くなる傾向を示し、さらに、光照射後に得られる画像に対しても悪影響を及ぼし、解像度が低下する傾向を示す。
【0042】
本発明では更に、ポリイミド樹脂の性能向上を目的として、添加物を加えても良い。これら、添加物は、その目的によって様々であり、特に限定されるものではない。
また、添加方法、添加時期においても特に限定されるものではない。添加物の例としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、等の金属酸化物、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸塩など、有機、無機の公知のフィラーが挙げられる。
【0043】
例えば、本発明の組成物の塗膜または加熱処理後に形成されるポリイミド膜と基板との接着性を向上させるために、接着促進剤を用いてもよい。
接着促進剤としては、有機シラン化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、珪素含有ポリアミド酸などが好ましい。さらに、基板との接着性、感度、解像度、耐熱性などを損なわない範囲で他の添加物を含有させても良い。
【0044】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、溶剤に溶解して溶液状態で得ることができる。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン,N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等の有機溶剤が挙げられる。
【0045】
本発明のポジ型感光性(ポリイミド前躯体)樹脂組成物を使用しての被膜形成は、感光性樹脂組成物の粘度などに応じて、スピナを用いた回転塗布、浸漬、噴霧印刷、スクリーン印刷などの手段から適宜選択された手段により行う。なお、被膜の膜厚は塗布条件、本組成物の固形分濃度等により調節できる。また、あらかじめ支持基板上に形成した被膜を支持体上から剥離してポリイミド前駆体からなるシートを上記支持基板の表面に貼り付けることにより、上述の被膜を形成してもよい。塗膜の厚みには特に制限はないが、3〜50μmであることが好ましい。
【0046】
この形成された被膜を50〜150℃で膜を乾燥させる。得られた塗膜上に所定のパターンのマスクパターンを介して光(紫外線などの活性光線)を照射する。次に50〜160℃で再度塗膜を加熱し、続けて塗膜をアルカリ(塩基性)水溶液により露光部を溶解除去して、所望のレリーフパターンを得る。この際、現像後の残膜率は80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがことさらに好ましい。また、感度としては、600mJ/cm以下であることが好ましく、500mJ/cm以下であることがより好ましく、450mJ/cm以下であることがことさらに好ましい。ここで感度とは、10μm以下の高い解像度でパターンを得るために最低限必要な露光量のことである。
【0047】
前記アルカリ(塩基性)水溶液は、通常、塩基性化合物を水に溶解した溶液である。塩基性化合物としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウムイオンの水酸化物又は炭酸塩や、アミン化合物などが挙げられる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミンなどの第三アミン類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニルムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩アルカリ類の水溶液及びこれにメタノール、エタノールのようなアルコール類などの水溶液有機溶液や界面活性剤を適量添加した水溶液を好適に使用することができる。現像方法としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。多くの電子機器では残留金属が電気特性に悪影響を及ぼす恐れがあるため、有機アルカリが好適に用いられ、半導体プロセスでよく使用されているテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好適に用いられる。
この際テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の濃度は0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、更に好ましくは2.38重量%水溶液を用いて室温で10秒〜10分間現像し、更に純水でリンスすることにより鮮明なポジ型パターンを得ることができる。
【0048】
上記現像の後に、必要に応じて、水又は貧溶媒で洗浄し、ついで約100℃前後で乾燥し、パターンを安定化することが望ましい。パターンを形成させた膜を加熱して、優れた耐熱性、機械特性、電気特性を有する膜を得ることができる。
【0049】
以上のようにして得られたパターンは、最終的な高温加熱処理、例えば150℃で1時間、250℃で1時間、350℃〜450℃で1時間の熱処理をすることによってこの樹脂組成物をイミド化し、膜特性に優れるポリイミド膜を形成することができる。
【0050】
本発明は、硬化後に熱膨張係数が小さいポリイミドを得ることができるポジ型ポリイミド前躯体組成物を与えるものである。主鎖にベンゾオキサゾール骨格を有する特定のポリイミド前躯体と光酸発生剤とビニルエーテル化合物の組合せることにより、露光前の塗膜乾燥工程では、熱で架橋反応が起こり、現像液に対して不溶化膜を形成する。次でこの不溶化塗膜に紫外線等の活性線を照射することによって活性光線露光部の光酸発生感光剤が分解し、酸が発生する。更に、次で加熱する露光塗膜分解工程で、発生した酸が上記化学架橋結合を分解させ、ポリマー樹脂が現像液に高い溶解性を示し、一方、未照射部は不溶化しているため溶けない。このようにして露光部と非露光部との溶解コントラストが生じて所望のポジ型パターンを得ることができるのである。
しかもベンゾオキサゾール骨格を有していることにより、硬化して得られるポリイミドの熱膨張係数が小さくなることに基づいている。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお実施例中の各特性は前記した方法以外は以下の方法で測定した。
1.ポリイミドの線熱膨張係数(CTE)
測定対象のポリイミドについてウエハーを破壊して剥離し、下記条件にて伸縮率を測定し、50℃〜65℃、65℃〜80℃…と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を200℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。
機器名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 250℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン

2.残膜率の算出
プリベーク処理後の膜厚と現像後の膜厚を測定し、以下の計算方法により残膜率を算出した。
残膜率(%)={(現像後の膜厚)/(プリベーク処理後の膜厚)}×100

3.感度の評価
解像度10μmのパターンを鮮明に形成させるために最低限必要な露光量を感度とした。解像度10μmのパターンが鮮明に形成されているかどうかは、露光・現像後のレリーフパターンをマイクロスコープにて観察することにより判断した。露光量は、紫外線照度計・光量系(UV−M03:オーク株式会社製)を用いて測定した。

4.膜の外観評価
現像後ならびに熱処理後の外観を目視ならびにマイクロスコープにて観察した。現像後の外観評価に関しては、未露光部の現像残りがなく、パターンのエッジが平滑であれば、「良好」と評価した。また、熱処理後の外観評価に関しては、膜の割れや膨れ、ボイド、剥がれ、ウェハーの割れや反りなどがなければ、「良好」と評価した。
【0052】
(合成例1)
窒素導入管を備えたフラスコ1に、1モルの4,4‘−オキシジフタル酸無水物、2.1モルの4−ヒドロキシベンジルアルコール及び2LのN−メチルー2−ピロリドン(以下、「NMP」と記載する)を加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置し、反応終了後に1モルの2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)−ベンゾ[1,2−d:5,4−d‘]ビスオキサゾールを加えた。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソ−3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。また、別の窒素導入管を備えたフラスコ2に、2モルの無水マレイン酸と2.1モルの4−ヒドロキシベンジルアルコール及び1LのNMPとを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置した後、フラスコ1にフラスコ2の溶液を混合し、30分間攪拌した。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソ−3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。得られたスラリー状の混合物を大量のメタノール中に投入して洗浄し、得られた固形樹脂を真空乾燥機によって12時間乾燥した。
【0053】
(合成例2)
窒素導入管を備えたフラスコ1に、1モルのピロメリット酸無水物、2.1モルの4−ヒドロキシベンジルアルコール及び2LのNMPを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置し、反応終了後に1モルの5−アミノー2−(p−アミノフェニル)−ベンゾオキサゾールを加えた。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソ−3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。また、別の窒素導入管を備えたフラスコ2に、2モルの無水マレイン酸と2.1モルの4−ヒドロキシベンジルアルコール及び1LのNMPとを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置した後、フラスコ1にフラスコ2の溶液を混合し、30分間攪拌した。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソ−3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。得られたスラリー状の混合物を大量のメタノール中に投入して洗浄し、得られた固形樹脂を真空乾燥機によって12時間乾燥した。
【0054】
(合成例3)
窒素導入管を備えたフラスコ1に、1モルのピロメリット酸無水物、2.1モルのエチルアルコール及び2LのNMPを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置し、反応終了後に1モルの5−アミノ−2−(p−アミノ−m−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾールを加えた。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソー3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。また、別の窒素導入管を備えたフラスコ2に、2モルの無水マレイン酸と2.1モルのエチルアルコール及び1LのNMPとを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置した後、フラスコ1にフラスコ2の溶液を混合し、30分間攪拌した。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソ−3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。得られたスラリー状の混合物を大量のメタノール中に投入して洗浄し、得られた固形樹脂を真空乾燥機によって12時間乾燥した。
【0055】
(合成例4)
窒素導入管を備えたフラスコ1に、1モルの4,4‘−オキシジフタル酸無水物、2.1モルのエチルアルコール及び2LのNMPを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置し、反応終了後に1モルの5−アミノ−6−ヒドロキシ−2−(p−アミノフェニル)−ベンゾチアゾールを加えた。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソ−3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。また、別の窒素導入管を備えたフラスコ2に、2モルの無水マレイン酸と2.1モルのエチルアルコール及び1LのNMPとを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置した後、フラスコ1にフラスコ2の溶液を混合し、30分間攪拌した。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソ−3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。得られたスラリー状の混合物を大量のメタノール中に投入して洗浄し、得られた固形樹脂を真空乾燥機によって12時間乾燥した。
【0056】
(合成例5)
窒素導入管を備えたフラスコ1に、1モルのピロメリット酸無水物、2.1モルのエチルアルコール及び2LのNMPを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置し、反応終了後に1モルの5−アミノ−2−(4−アミノシクロヘキシル)ベンゾオキサゾールを加えた。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソ−3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。また、別の窒素導入管を備えたフラスコ2に、2モルの無水マレイン酸と2.1モルのエチルアルコール及び1LのNMPとを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置した後、フラスコ1にフラスコ2の溶液を混合し、30分間攪拌した。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソー3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。得られたスラリー状の混合物を大量のメタノール中に投入して洗浄し、得られた固形樹脂を真空乾燥機によって12時間乾燥した。
【0057】
(合成例6)
窒素導入管を備えたフラスコ1に、1モルのピロメリット酸無水物、2.1モルの4−ヒドロキシベンジルアルコール及び2LのNMPを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置し、反応終了後に1モルの5−アミノー2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを加えた。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソー3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。また、別の窒素導入管を備えたフラスコ2に、2モルのナジック酸無水物(5−ノルボルネンー2,3−ジカルボン酸無水物)と2.1モルの4−ヒドロキシベンジルアルコール及び1LのNMPとを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置した後、フラスコ1にフラスコ2の溶液を混合し、30分間攪拌した。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソー3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。得られたスラリー状の混合物を大量のメタノール中に投入して洗浄し、得られた固形樹脂を真空乾燥機によって12時間乾燥した。
【0058】
(合成例7)
窒素導入管を備えたフラスコ1に、1モルのピロメリット酸無水物、2.1モルの4−ヒドロキシベンジルアルコール及び2LのNMPを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置し、反応終了後に1モルの5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンズイミダゾールを加えた。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソ−3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。また、別の窒素導入管を備えたフラスコ2に、2モルの1,2,3,4−テトラヒドロフタル酸無水物と2.1モルの4−ヒドロキシベンジルアルコール及び1LのNMPとを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置した後、フラスコ1にフラスコ2の溶液を混合し、30分間攪拌した。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソー3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。得られたスラリー状の混合物を大量のメタノール中に投入して洗浄し、得られた固形樹脂を真空乾燥機によって12時間乾燥した。
【0059】
(合成例8)
窒素導入管を備えたフラスコ1に、1モルのピロメリット酸無水物、2.1モルのエチルアルコール及び2LのNMPを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置し、反応終了後に1モルの2,2‘−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを加えた。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソ−3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。また、別の窒素導入管を備えたフラスコ2に、2モルの無水マレイン酸と2.1モルのエチルアルコール及び1LのNMPとを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置した後、フラスコ1にフラスコ2の溶液を混合し、30分間攪拌した。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソー3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。得られたスラリー状の混合物を大量のメタノール中に投入して洗浄し、得られた固形樹脂を真空乾燥機によって12時間乾燥した。
【0060】
(合成例9)
窒素導入管を備えたフラスコ1に、1モルのピロメリット酸無水物、2.1モルのエチルアルコール及び2LのNMPを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置し、反応終了後に1モルのビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテルを加えた。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソー3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。また、別の窒素導入管を備えたフラスコ2に、2モルの無水マレイン酸と2.1モルのエチルアルコール及び1LのNMPとを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置した後、フラスコ1にフラスコ2の溶液を混合し、30分間攪拌した。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソー3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。得られたスラリー状の混合物を大量のメタノール中に投入して洗浄し、得られた固形樹脂を真空乾燥機によって12時間乾燥した。
【0061】
(合成例10)
窒素導入管を備えたフラスコ1に、1モルのピロメリット酸無水物、2.1モルの4−ヒドロキシベンジルアルコール及び2LのNMPを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置し、反応終了後に1モルの2,2‘−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンを加えた。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソー3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。また、別の窒素導入管を備えたフラスコ2に、2モルの無水マレイン酸と2.1モルの4−ヒドロキシベンジルアルコール及び1LのNMPとを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置した後、フラスコ1にフラスコ2の溶液を混合し、30分間攪拌した。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソー3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。得られたスラリー状の混合物を大量のメタノール中に投入して洗浄し、得られた固形樹脂を真空乾燥機によって12時間乾燥した。
【0062】
(合成例11)
窒素導入管を備えたフラスコ1に、1モルのピロメリット酸無水物、2.1モルの4−ヒドロキシベンジルアルコール及び2LのNMPを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置し、反応終了後に1モルの4,4‘−ジアミノジフェニルエーテルを加えた。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソー3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。また、別の窒素導入管を備えたフラスコ2に、2モルの無水マレイン酸と2.1モルの4−ヒドロキシベンジルアルコール及び1LのNMPとを加えて攪拌し、続けて2.1モルのトリエチルアミンを30分間にわたって滴下した。滴下後、この状態で3時間放置した後、フラスコ1にフラスコ2の溶液を混合し、30分間攪拌した。次に2.1モルのジフェニル(2,3−ジヒドローチオキソー3−ベンゾオキサゾール)ホスホナートを5回に分けて添加し、添加後、その状態で5時間縮合した。得られたスラリー状の混合物を大量のメタノール中に投入して洗浄し、得られた固形樹脂を真空乾燥機によって12時間乾燥した。
【0063】
(実施例1)
合成例1で得られたポリイミド前躯体100重量部、ジフェニルヨードニウムー9,10―ジメトキシアントラセンー2−スルホネート10重量部、トリエチレングリコールジビニルエーテルを20重量部をNMPに溶解させ、感光性ポリイミド前躯体組成物のワニスを得た。得られた感光性ポリイミド前躯体組成物をスピンコーターでシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレートを用いて100℃で5分間乾燥を行い、10μmの塗膜を得た。この塗膜をマスク(1〜50μmの残しパターン及び抜きパターン)を通して、超高圧水銀灯を用いて紫外線を照射した後、140℃で5分間加熱した。そして2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で現像した後、水でリンスし、乾燥した。その結果、露光量600mJ/cm2の照射で良好なパターンが形成され、残膜率は90%であった。また、現像後の外観も良好であった。さらに、200℃で30分、400℃で60分の熱処理を行った。得られたフィルムの熱膨張係数は5ppm/℃であり、熱膨張係数が低い樹脂であることが確認された。
【0064】
(実施例2)
合成例2のポリイミド前躯体を用いて、ビニル化合物としてはトリエチレングリコールジビニルエーテルの代わりに、1,3,5−トリス[(2−ビニロキシ)エタロキシ)]ベンゼンを用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して感光性ワニスを調製し、実施例1と同様にして評価した。
【0065】
(実施例3)
合成例3のポリイミド前躯体を用いて、ビニル化合物としてはトリエチレングリコールジビニルエーテルの代わりに、2−エチルヘキシルビニルエーテルを用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して感光性ワニスを調製し、実施例1と同様にして評価した。
【0066】
(実施例4)
合成例4のポリイミド前躯体を用いて、ビニル化合物としてはトリエチレングリコールジビニルエーテルの代わりに、4,4‘-ビス [(2−ビニロキシ)エタロキシ)]ジフェニルプロパンを用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して感光性ワニスを調製し、実施例1と同様にして評価した。
【0067】
(実施例5)
合成例5のポリイミド前躯体を用いてたこと以外は、実施例1と同様に操作して感光性ワニスを調製し、実施例1と同様にして評価した。
【0068】
(実施例6)
合成例6のポリイミド前躯体を用いを用いたこと以外は、実施例2と同様に操作して感光性ワニスを調製し、実施例1と同様にして評価した。
【0069】
(実施例7)
合成例7のポリイミド前躯体を用いを用いたこと以外は、実施例3と同様に操作して感光性ワニスを調製し、実施例1と同様にして評価した。
【0070】
(比較例1)
実施例1において用いた光分解性プロトン活性剤の代わりに、光ラジカル発生剤であるジメチルアミノベンゾフェノンを用いた以外は、実施例1と同様にして感光液を調製し、パターン形成を行ったが、現像の結果は、パターンを得ることができなかった。
(比較例2〜5)
実施例1において用いた合成例1のポリイミド前躯体の代わりに、合成例8〜11のポリイミド前躯体を用いた以外は、実施例1と同様に操作して感光性ワニスを調製し、実施例1と同様にして評価した。
【0071】
実施例1〜7、比較例1〜4の評価結果については以下の表1に示した。
【表1】

【0072】
以上の表1に示される結果によると、実施例1〜7の熱膨張係数と比較例1〜4の熱膨張係数とを比較して明らかなように、実施例1〜7に示される本発明に係るポジ型感光性ポリイミド前躯体組成物から得られるポリイミドは、従来のポリイミド(比較例1〜4)に比較して、明らかに熱膨張係数が低減されている。また、実施例1〜7と比較例1〜4とにおける感度及び残膜率及び現像後外観を比較すると、感度及び残膜率及び現像外観ともに実施例1〜7は、比較例1〜4に比較して劣化しておらず、本発明に係るポジ型感光性ポリイミド前躯体から得られるポリイミドは、現像性や感度も優れているとが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のポジ型感光性ポリイミド組成物は、半導体デバイスなどの製造での電気、電子絶縁材料として、詳しくは、ICやLSIなどの半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜などに用いられ、微細パターンの加工が必要とされるものなどに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)主鎖にベンゾアゾール骨格を有し、且つ主鎖及び側鎖の少なくとも何れかにフェノール性水酸基を有するポリイミド前躯体と、(B)ビニルエーテル化合物、(C)活性光線照射で酸を発生する感光剤を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)ポリイミド前躯体が、一般式(化1)で示される構造を繰返し単位中に有し、
【化1】

(式中、Rはフェノール性水酸基を含有してもよい4価の有機基、Rは、フェノール性水酸基を含有する1価の有機基またはその他の1価の有機基、Rは一般式(化2)〜(化5)のいずれかで示される芳香族ベンゾアゾール残基を表す)。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

(一般式(化2)〜(化5)中、Xは酸素原子、硫黄原子またはNR(式中Rは水素原子、アルキル基またはフェニル基を示す)を示し、R,Rはそれぞれ独立し、フェノール性水酸基を有してもよい単環または複数の環から構成される芳香族環基または複素環基を示し、R,Rはそれぞれ独立し、フェノール性水酸基を有してもよい単環または複数の環から構成される芳香族環基または複素環基または脂肪族基を示す。)
(B)ビニルエーテル化合物が下記(化6)〜(化8)にて示されるビニルエーテル化合物
【化6】

(mは1以上の整数、Rは脂肪族基または芳香族基を示す)
【化7】

(p及びnは1以上の整数、R10は脂肪族基または芳香族基を示す)
【化8】

(q及びrは1以上の整数、R11は脂肪族基または芳香族基を示す)
である、請求項1記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
支持体の表面に請求項1および請求項2のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を塗設してなる感光性基材。
【請求項4】
請求項3記載の感光性基材に、加熱処理を行った後に、マスクパターンを介して活性光線の照射を行い、さらに加熱処理した後、アルカリ性現像液にて露光部分を除去することを特徴とするレリーフパターン形成方法。

【公開番号】特開2010−139931(P2010−139931A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318090(P2008−318090)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】