説明

ポットおよびこのポットを備えた基板処理装置

【課題】処理液を含む雰囲気の漏洩を抑制または防止するとともに、排気量を低減することができるポットおよびこのポットを備えた基板処理装置を提供すること。
【解決手段】基板処理装置は、薬液を吐出する薬液吐出口3aを有する薬液ノズル3と、待機位置P13に配置された薬液ポット5とを含む。薬液ポット5は、薬液吐出口3aが配置される内部空間S1を区画するハウジング25と、内部空間S1を仕切る仕切部材26とを含む。ハウジング25は、薬液ノズル3が挿入される挿入口27と、挿入口27より下方に配置された排出口28とを有している。また、仕切部材26は、挿入口27と排出口28との間の高さで内部空間S1を上方空間S2と下方空間S3とに仕切っている。仕切部材26は、上方空間S2と下方空間S3とを接続する接続口30を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズルの処理液吐出口から吐出された処理液を受け止めるポット、および基板を処理する基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板に対して処理液を用いた処理が行われる。基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置は、たとえば、基板を水平に保持して回転させるスピンチャックと、このスピンチャックに保持された基板に薬液を供給するための薬液ノズルと備えている。特許文献1記載の基板処理装置は、処理位置と待機位置との間で薬液ノズルを移動させるノズル移動機構と、待機位置の近傍に配置されたポットと、ポット内を排気するための排気管とをさらに備えている。
【0003】
特許文献1記載の基板処理装置において、基板が薬液によって処理されるときには、薬液ノズルが処理位置に配置され、薬液ノズルからスピンチャックに保持された基板に向けて薬液が吐出される。一方、薬液ノズルが基板の処理に使用されないときには、スピンチャックの側方に設けられた待機位置に薬液ノズルが配置される。そして、薬液ノズルが基板の処理に使用される前に、待機位置で薬液ノズルから薬液が吐出され、薬液ノズル内に残留している薬液がポット内に排出される(プリディスペンス)。これにより、薬液ノズル内に残留している劣化した薬液が基板に供給されることが抑制または防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−258462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
待機位置で薬液ノズルから薬液を吐出させると、この薬液は、ポットによって受け止められる。そのため、薬液を含む雰囲気がポット内に発生する。また、揮発性の薬液がポットの内壁面に付着している場合には、この薬液が蒸発して、薬液を含む雰囲気がポット内に発生する。薬液を含む雰囲気がポットから漏れると、薬液を含む雰囲気が基板に付着して基板が汚染されるおそれがある。したがって、ポットからの薬液を含む雰囲気の漏洩を確実に防止しなければならない。すなわち、ポット内を排気する構成では、十分な排気量を確保しなければならない。そのため、排気量の低減が困難である。また、基板処理装置は、ポット内以外にも排気が必要な部分を有しており、さらに、複数のポットを備えている場合もある。したがって、基板処理装置全体として相当な排気量が必要である。
【0006】
そこで、この発明の目的は、処理液を含む雰囲気の漏洩を抑制または防止するとともに、排気量を低減することができるポットおよびこのポットを備えた基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、ノズル(3)の処理液吐出口(3a)から吐出された処理液を受け止めるポットであって、前記ノズルの処理液吐出口が配置される内部空間(S1)を区画し、前記ノズルが挿入される挿入口(27)と、前記挿入口より下方に配置された処理液排出口(28)とを有するハウジング(25、225、325)と、前記挿入口と前記処理液排出口との間の高さで前記ハウジングの内部空間を上方空間(S2)と下方空間(S3)とに仕切っており、前記上方空間と前記下方空間とを接続する接続口(30)を有する仕切部材(26)と、を含む、ポット(5、205、305)である。なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【0008】
この発明によれば、ハウジングが、ノズルが挿入される挿入口と、処理液が排出される処理液排出口とを有している。処理液排出口は、挿入口より下方に配置されている。仕切部材は、挿入口と処理液排出口との間の高さでハウジングの内部空間を上方空間と下方空間とに仕切っている。さらに、仕切部材は、上方空間と下方空間と接続する接続口を有している。ノズルに供給された処理液は、処理液吐出口が上方空間に位置する状態で処理液吐出口から吐出されてもよいし、処理液吐出口が下方空間に位置する状態で処理液吐出口から吐出されてもよい。いずれの場合においても、処理液吐出口から吐出された処理液は、ポットによって受け止められ、処理液排出口を通ってポットから排出される。
【0009】
また、処理液吐出口が上方空間および下方空間のいずれの空間に位置する状態で処理液吐出口から処理液が吐出されても、下方空間で発生した処理液を含む雰囲気は、仕切部材によって上方空間への移動が抑制または防止される。さらに、上方空間で発生した処理液を含む雰囲気や、接続口を通って下方空間から上方空間に移動した処理液を含む雰囲気は、ハウジングによって外部への漏洩が抑制または防止される。このように、ハウジングおよび仕切部材によって処理液を含む雰囲気の漏洩が抑制または防止されるから、処理液を含む雰囲気の漏洩を防止するために、ポット内を排気しなくてもよい。また、ポット内を排気したとしても、排気量を低減しつつ、処理液を含む雰囲気の漏洩を抑制または防止することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記ポットは、前記上方空間に水を供給する水供給手段(32)をさらに含み、前記仕切部材は、前記水供給手段から供給された水を前記上方空間で保持する貯水部(33)を含む、請求項1記載のポットである。
この発明によれば、水供給手段から供給された水が、仕切部材に設けられた貯水部によって上方空間で保持される。したがって、処理液が水溶性の場合、上方空間を漂う処理液を含む雰囲気は、貯水部に保持された水に溶け込む。これにより、ハウジングの外への処理液を含む雰囲気の漏洩が一層抑制または防止される。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記貯水部は、前記貯水部に保持された水が前記接続口を通って前記下方空間に排出されるように構成されている、請求項2記載のポットである。
この発明によれば、貯水部に保持された水が接続口を通って下方空間に排出される。したがって、水供給手段から上方空間に水を供給し続けることにより、貯水部に保持された水を後続の水によって置換することができる。そのため、貯水部に保持された水が処理液によって飽和することが抑制または防止される。よって、処理液を含む雰囲気が貯水部に保持された水に溶け込み易い状態が維持される。これにより、上方空間を漂う処理液を含む雰囲気が、貯水部に保持された水に確実に溶け込み、ハウジングの外への処理液を含む雰囲気の漏洩が確実に抑制または防止される。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記ポットは、前記下方空間に配置されており、前記処理液排出口に沿って設けられた筒状の分離部(236)をさらに含み、前記ハウジングは、前記分離部の周囲に配置された第2処理液排出口(237)をさらに有し、前記接続口は、平面視において前記分離部を取り囲むように形成されている、請求項3記載のポットである。
【0013】
貯水部に保持された水は、接続口を通って上方空間から下方空間に排出される。この発明によれば、接続口が、平面視において分離部を取り囲むように形成されているから、貯水部に保持された水は、分離部の周囲に落下する。そして、分離部の周囲に落下した水は、第2処理液排出口を通ってポットから排出される。したがって、水供給手段から供給された水が処理液排出口に進入することが抑制または防止される。これにより、ノズルから吐出された処理液を、水供給手段から供給された水とは分離することができる。したがって、処理液排出口に排出される処理液に、水が混入することを抑制または防止することができる。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポットと、基板(W)を保持する基板保持手段(2)と、処理液を吐出する処理液吐出口(3a)を有するノズル(3)と、前記ノズルから吐出された処理液が前記基板保持手段に保持された基板に供給される処理位置(P11)と、前記処理液吐出口が前記ポット内に配置される待機位置(P13)との間で、前記ノズルを移動させるノズル移動手段(12)と、を含む、基板処理装置(1)である。
【0015】
この発明によれば、ノズル移動手段によって、処理位置と待機位置との間でノズルを移動させることができる。ノズルを処理位置に位置させた状態で、ノズルの処理液吐出口から処理液を吐出させることにより、基板保持手段に保持された基板に処理液を供給することができる。また、ノズルを待機位置に位置させた状態で、ノズルの処理液吐出口から処理液を吐出させることにより、ポット内に処理液を排出することができる。したがって、処理位置で処理液吐出口から処理液を吐出させる前に、待機位置で処理液吐出口から処理液を吐出させることにより、ノズル内に残留している処理液を排出することができる。これにより、ノズル内に残留している劣化した処理液が基板に供給されることを抑制または防止することができる。また、前述のように、排気量を低減しつつ、ポットからの処理液を含む雰囲気の漏洩を抑制または防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る薬液ポットの概略構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る薬液ポットの概略構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る薬液ポットの概略構成を示す断面図である。
【図6】図5におけるVI−VI線に沿う薬液ポットの断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る薬液ポットの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す側面図である。また、図2は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す平面図である。
この基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円形の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置である。基板処理装置1は、基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック2(基板保持手段)と、スピンチャック2に保持された基板Wに薬液を供給するための薬液ノズル3(ノズル)と、スピンチャック2に保持された基板Wに純水(脱イオン水)を供給するための純水ノズル4と、スピンチャック2の側方に配置された薬液ポット5(ポット)および純水ポット6と、スピンチャック2などの基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御する制御部7とを含む。
【0018】
スピンチャック2は、基板Wを水平に保持して当該基板Wの中心を通る鉛直軸線まわりに回転可能なスピンベース8と、このスピンベース8を鉛直軸線まわりに回転させるスピンモータ9とを含む。スピンチャック2は、基板Wを水平方向に挟むことにより当該基板Wを水平に保持する挟持式のチャックであってもよいし、基板Wの下面(裏面)を吸着することにより当該基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。第1実施形態では、スピンチャック2は、挟持式のチャックである。スピンモータ9は、制御部7によって制御される。
【0019】
また、基板処理装置1は、第1ノズルアーム10と、第1回動軸11と、薬液ノズル移動機構12(ノズル移動手段)とを含む。薬液ノズル3は、第1ノズルアーム10に連結されている。第1ノズルアーム10は、水平方向に延びている。薬液ノズル3は、第1ノズルアーム10の一端部に連結されており、第1回動軸11は、第1ノズルアーム10の他端部に連結されている。第1回動軸11は、鉛直方向に延びている。薬液ノズル移動機構12は、第1回動軸11の下端部に連結されている。薬液ノズル移動機構12は、薬液ノズル回動機構13と、薬液ノズル昇降機構14とを含む。
【0020】
薬液ノズル回動機構13は、たとえば、モータを含む。薬液ノズル回動機構13は、第1回動軸11の中心軸線まわりに薬液ノズル昇降機構14を回動させる。薬液ノズル3、第1ノズルアーム10、および第1回動軸11は、薬液ノズル昇降機構14と共に、第1回動軸11の中心軸線まわりに回動する。薬液ノズル回動機構13は、薬液ノズル3を回動させることにより、スピンチャック2の上方に設けられた処理位置P11と、処理位置P11から水平方向に離れた中間位置P12との間で、薬液ノズル3を円弧状の軌跡(図2参照)に沿って移動させる。
【0021】
また、薬液ノズル昇降機構14は、たとえば、エアシリンダを含む。薬液ノズル昇降機構14は、第1回動軸11を昇降させる。薬液ノズル3および第1ノズルアーム10は、第1回動軸11と共に昇降する。薬液ノズル昇降機構14は、薬液ノズル3を昇降させることにより、中間位置P12と、中間位置P12の下方に設けられた待機位置P13との間で、薬液ノズル3を移動させる。薬液ノズル3が基板Wの処理に使用されないときには、制御部7は、薬液ノズル回動機構13および薬液ノズル昇降機構14を制御して、薬液ノズル3を待機位置P13で待機させる。
【0022】
また、基板処理装置1は、薬液供給配管15と、薬液バルブ16とを含む。薬液供給配管15は、薬液ノズル3に接続されている。薬液バルブ16は、薬液供給配管15に介装されている。薬液バルブ16が開かれると、薬液供給配管15から薬液ノズル3に薬液が供給される。また、薬液バルブ16が閉じられると、薬液供給配管15から薬液ノズル3への薬液の供給が停止される。薬液ノズル3に供給された薬液は、薬液ノズル3の薬液吐出口3a(処理液吐出口)から下方に吐出される。薬液ノズル3の薬液吐出口3aから吐出される薬液は、たとえば、水溶性および揮発性を有する薬液である。第1実施形態では、薬液は、高濃度のSC1(アンモニア水と過酸化水素水の混合液)である。揮発性を有する薬液とは、室温(20℃〜30℃程度)で気化する薬液である。
【0023】
一方、基板処理装置1は、第2ノズルアーム17と、第2回動軸18と、純水ノズル移動機構19とを含む。純水ノズル4は、第2ノズルアーム17に連結されている。第2ノズルアーム17は、水平方向に延びている。純水ノズル4は、第2ノズルアーム17の一端部に連結されており、第2回動軸18は、第2ノズルアーム17の他端部に連結されている。第2回動軸18は、鉛直方向に延びている。純水ノズル移動機構19は、第2回動軸18の下端部に連結されている。純水ノズル移動機構19は、純水ノズル回動機構20と、純水ノズル昇降機構21とを含む。
【0024】
純水ノズル回動機構20は、たとえば、モータを含む。純水ノズル回動機構20は、第2回動軸18の中心軸線まわりに純水ノズル昇降機構21を回動させる。純水ノズル4、第2ノズルアーム17、および第2回動軸18は、純水ノズル昇降機構21と共に、第2回動軸18の中心軸線まわりに回動する。純水ノズル回動機構20は、純水ノズル4を回動させることにより、スピンチャック2の上方に設けられた処理位置P21と、処理位置P21から水平方向に離れた中間位置P22との間で、純水ノズル4を円弧状の軌跡(図2参照)に沿って移動させる。
【0025】
また、純水ノズル昇降機構21は、たとえば、エアシリンダを含む。純水ノズル昇降機構21は、第2回動軸18を昇降させる。純水ノズル4および第2ノズルアーム17は、第2回動軸18と共に昇降する。純水ノズル昇降機構21は、純水ノズル4を昇降させることにより、中間位置P22と、中間位置P22の下方に設けられた待機位置P23との間で、純水ノズル4を移動させる。純水ノズル4が基板Wの処理に使用されないときには、制御部7は、純水ノズル回動機構20および純水ノズル昇降機構21を制御して、純水ノズル4を待機位置P23で待機させる。
【0026】
また、基板処理装置1は、純水供給配管22と、純水バルブ23と、スローリークバルブ24とを含む。純水供給配管22は、純水ノズル4に接続されている。純水バルブ23およびスローリークバルブ24は、純水供給配管22に介装されている。純水バルブ23およびスローリークバルブ24が開かれると、純水供給配管22から純水ノズル4に純水が供給される。また、純水バルブ23が閉じられると、純水供給配管22から純水ノズル4への純水の供給が停止される。さらに、純水バルブ23が開かれ、スローリークバルブ24が閉じられると、純水バルブ23およびスローリークバルブ24が開かれているときよりも小さい微小流量で、純水供給配管22から純水ノズル4に純水が供給される。純水ノズル4に供給された純水は、純水ノズル4の純水吐出口から下方に吐出される。
【0027】
制御部7は、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、薬液ノズル3から薬液を吐出させて、当該基板Wの上面に薬液を供給させる。具体的には、制御部7は、スピンモータ9を制御して、スピンチャック2に保持された基板Wを回転させる。そして、制御部7は、薬液ノズル回動機構13および薬液ノズル昇降機構14を制御して、薬液ノズル3を待機位置P13から中間位置P12を経て処理位置P11に移動させる。その後、制御部7は、薬液バルブ16を開いて、薬液ノズル3から薬液を吐出させる。これにより、基板Wの上面全域に薬液が供給される。
【0028】
同様に、制御部7は、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、純水ノズル4から純水を吐出させて、当該基板Wの上面に純水を供給させる。具体的には、制御部7は、スピンモータ9を制御して、スピンチャック2に保持された基板Wを回転させる。そして、制御部7は、純水ノズル回動機構20および純水ノズル昇降機構21を制御して、純水ノズル4を待機位置P23から中間位置P22を経て処理位置P21に移動させる。その後、制御部7は、純水バルブ23およびスローリークバルブ24を開いて、純水ノズル4から純水を吐出させる。これにより、基板Wの上面全域に純水が供給される。
【0029】
また、制御部7は、薬液ノズル3から基板Wに向けて薬液を吐出させた後、薬液ノズル回動機構13および薬液ノズル昇降機構14を制御して、薬液ノズル3からの薬液の吐出を停止させた状態で、薬液ノズル3を処理位置P11から中間位置P12を経て待機位置P13に移動させる。これにより、薬液ノズル3の下端部が薬液ポット5内に差し込まれ、薬液ノズル3の薬液吐出口3aが、薬液ポット5内に配置される。薬液ノズル3から基板Wに向けて薬液を吐出させる前には、制御部7は、待機位置P13で薬液ノズル3から薬液を吐出させて、薬液ノズル3内に残留している薬液を薬液ポット5内に排出させる(プリディスペンス)。これにより、薬液ノズル3内に残留している劣化した薬液が基板Wに供給されることが抑制または防止される。
【0030】
同様に、制御部7は、純水ノズル4から基板Wに向けて純水を吐出させた後、純水ノズル回動機構20および純水ノズル昇降機構21を制御して、純水ノズル4からの純水の吐出を停止させた状態で、純水ノズル4を処理位置P21から中間位置P22を経て待機位置P23に移動させる。これにより、純水ノズル4の下端部が純水ポット6内に差し込まれ、純水ノズル4の純水吐出口が、純水ポット6内に配置される。純水ノズル4が待機位置P23に位置する状態では、純水バルブ23が開かれ、スローリークバルブ24が閉じられた状態が維持される。したがって、純水ノズル4が待機位置P23に位置する状態では、純水ノズル4から微小流量で純水が吐出され、この純水が純水ポット6内に排出される。これにより、純水ノズル4内や純水供給配管22内での純水の滞留が抑制または防止され、純水ノズル4内や純水供給配管22内でのバクテリアの発生が抑制または防止される。したがって、バクテリアによって基板Wが汚染されることを抑制または防止することができる。
【0031】
図3は、本発明の第1実施形態に係る薬液ポット5の概略構成を示す斜視図である。また、図4は、本発明の第1実施形態に係る薬液ポット5の概略構成を示す断面図である。図3および図4では、薬液ノズル3が待機位置P13に位置する状態が示されている。
薬液ポット5は、内部空間S1を区画するハウジング25と、ハウジング25の内部を仕切る仕切部材26とを含む。ハウジング25は、たとえば、直方体である。ハウジング25は、ハウジング25の上壁25aに形成された挿入口27と、ハウジング25の下壁25bに形成された排出口28(処理液排出口)と、ハウジング25の周壁25cに形成された水供給口29とを有している。仕切部材26は、挿入口27と排出口28との間で、ハウジング25の内部空間S1を上下に仕切っている。水供給口29は、仕切部材26より上方に位置している。ハウジング25の内部空間S1は、仕切部材26によって、仕切部材26より上方の上方空間S2と、仕切部材26より下方の下方空間S3とに仕切られている。
【0032】
上壁25a、下壁25b、および仕切部材26は、平板状である。上壁25a、下壁25b、および仕切部材26は、水平面に沿って配置されている。したがって、上壁25a、下壁25b、および仕切部材26は、平行である。仕切部材26は、仕切部材26を上下に貫通する接続口30を有している。上方空間S2と下方空間S3とは、接続口30によって接続されている。接続口30は、挿入口27および排出口28の間に位置している。すなわち、挿入口27、排出口28、および接続口30は、平面視において重なり合うように配置されている。挿入口27、排出口28、および接続口30は、それぞれ、上壁25aの中央部、下壁25bの中央部、および仕切部材26の中央部に形成されている。挿入口27、排出口28、および接続口30は、たとえば、円形である。薬液ノズル3の下端部は、たとえば円筒状であり、挿入口27の直径は、薬液ノズル3の下端部より大きい。
【0033】
また、薬液ポット5は、排出配管31と、純水供給配管32(水供給手段)とを含む。排出配管31は、排出口28に接続されており、純水供給配管32は、水供給口29に接続されている。図示はしないが、純水供給配管32には、純水バルブが介装されている。純水バルブが開かれると、純水供給配管32から水供給口29に室温(20℃〜30℃程度)の純水が供給される。また、純水バルブが閉じられると、純水供給配管32から水供給口29への純水の供給が停止される。純水供給配管32から水供給口29に供給される純水は、基板処理装置1の設置場所に設けられた純水供給源から供給される純水であってもよいし、純水ノズル4から純水ポット6内に排出された純水であってもよい。すなわち、図1に示すように、純水ノズル4から純水ポット6内に排出された純水が、回収配管43を介して薬液ポット5に供給されることにより、純水ポット6内において純水ノズル4から吐出された純水が再利用されてもよい。純水ノズル4から吐出された純水を再利用することにより、純水の消費量を抑制することができる。
【0034】
また、仕切部材26は、純水供給配管32から供給された純水を溜める貯水部33を含む。貯水部33は、接続口30の周縁に沿って設けられた筒状の突起34と、突起34の周囲に配置された平坦部35とを含む。突起34および平坦部35は、上方空間S2に配置されており、突起34は、平坦部35から上方に突出している。純水供給配管32から水供給口29に供給された純水は、水供給口29から水平に吐出され、平坦部35に沿って流れる。これにより、水供給口29から吐出された純水が、貯水部33に溜まり、貯水部33が純水で満たされる。また、純水供給配管32から水供給口29に純水が供給され続けると、純水が貯水部33から溢れ、貯水部33に貯められた純水が突起34の上方および接続口30を通って下方空間S3に排出される。これにより、貯水部33に貯められた純水が後続の純水に置換される。制御部7は、たとえば、薬液ノズル3が待機位置P13に位置する間、純水供給配管32から水供給口29に純水を供給させ続ける。
【0035】
制御部7が、薬液ノズル3を待機位置P13に移動させると、薬液ノズル3の下端部が挿入口27に対して上から挿入され、薬液ノズル3の薬液吐出口3aが、上方空間S2に配置される。薬液ノズル3が待機位置P13に位置する状態では、薬液吐出口3aが接続口30および排出口28に対向している。制御部7は、薬液吐出口3aを接続口30および排出口28に対向させた状態で、薬液吐出口3aから下方に薬液を吐出させる。したがって、薬液吐出口3aから吐出された薬液の大部分は、接続口30を通って下方空間S3に排出される。また、薬液吐出口3aから吐出され、薬液吐出口3aの周囲に飛散した薬液(薬液の液滴)は、貯水部33に保持された純水中に落下し、この純水に溶け込んだ状態で、接続口30を通って下方空間S3に排出される。これにより、薬液吐出口3aから吐出された薬液が、下方空間S3に排出される。そして、下方空間S3に排出された薬液および純水は、排出口28を通って排出配管31に排出される。
【0036】
また、薬液ポット5内で薬液ノズル3の薬液吐出口3aから薬液が吐出されると、上方空間S2および下方空間S3に薬液を含む雰囲気が発生する。下方空間S3を漂う薬液を含む雰囲気は、仕切部材26によって上方空間S2への移動が抑制または防止される。また、上方空間S2を漂う薬液を含む雰囲気は、ハウジング25の上壁25aによってハウジング25の外への移動が抑制または防止される。さらに、貯水部33に純水が保持されているので、上方空間S2で発生した薬液を含む雰囲気や、下方空間S3から上方空間S2に移動した薬液を含む雰囲気は、貯水部33に保持された純水に溶け込む。これにより、ハウジング25の外への薬液を含む雰囲気の漏洩が抑制または防止される。
【0037】
特に、薬液ノズル3から吐出される薬液は、水溶性の薬液であるから、上方空間S2を漂う薬液を含む雰囲気は、貯水部33に保持された純水に溶け込み易い。さらに、貯水部33に保持された純水は、後続の純水によって置換されるから、貯水部33に保持された純水が薬液によって飽和することが抑制または防止される。したがって、薬液を含む雰囲気が貯水部33に保持された純水に溶け込み易い状態が維持される。これにより、上方空間S2を漂う薬液を含む雰囲気が、貯水部33に保持された純水に溶け込み、ハウジング25の外への薬液を含む雰囲気の漏洩が確実に抑制または防止される。
【0038】
以上のように第1実施形態では、待機位置P13で薬液吐出口3aから吐出された薬液が、薬液ポット5によって受け止められる。このとき、下方空間S3で発生した薬液を含む雰囲気は、仕切部材26によって上方空間S2への移動が抑制または防止される。さらに、上方空間S2で発生した薬液を含む雰囲気や、接続口30を通って下方空間S3から上方空間S2に移動した薬液を含む雰囲気は、ハウジング25によって外部への漏洩が抑制または防止される。さらにまた、上方空間S2を漂う薬液を含む雰囲気は、貯水部33に保持された純水に溶け込む。これにより、ハウジング25の外への薬液を含む雰囲気の漏洩が抑制または防止される。したがって、薬液を含む雰囲気の漏洩を防止するために、薬液ポット5内を排気しなくてもよい。また、薬液ポット5内を排気したとしても、排気量を低減しつつ、薬液を含む雰囲気の漏洩を抑制または防止することができる。これにより、基板処理装置1の排気量を低減することができる。
【0039】
図5は、本発明の第2実施形態に係る薬液ポット205の概略構成を示す断面図である。また、図6は、図5におけるVI−VI線に沿う薬液ポット205の断面図である。図5では、薬液ノズル3が待機位置P13に位置する状態が示されている。この図5および図6において、前述の図1〜図4に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0040】
この第2実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、排出口28の周縁に沿って筒状の分離部236が設けられており、この分離部236によって、薬液ノズル3から吐出された薬液と、上方空間S2から下方空間S3に排出された純水とが分離されることである。
具体的には、薬液ポット205(ポット)は、排出口28の周縁に沿って設けられた筒状の分離部236と、ハウジング225の下壁25bに形成された第2排出口237(第2処理液排出口)に接続された第2排出配管238とをさらに含む。分離部236は、下方空間S3に配置されている。分離部236は、たとえば、円筒状である。分離部236の外径は、接続口30の直径より小さい。図6に示すように、分離部236は、平面視において接続口30によって取り囲まれている。貯水部33に保持された純水は、接続口30の周縁から落下することにより、下方空間S3に排出される。分離部236の外径が接続口30の直径より小さいから、貯水部33に保持された純水は、分離部236の周囲に落下する。したがって、上方空間S2から下方空間S3に排出された純水は、分離部236の周囲に溜まり、第2排出口237を通って第2排出配管238に排出される。
【0041】
一方、薬液ノズル3が待機位置P13に位置する状態では、薬液吐出口3aが接続口30および排出口28に対向している。制御部7(図1参照)は、薬液吐出口3aを接続口30および排出口28に対向させた状態で、薬液吐出口3aから下方に薬液を吐出させる。待機位置P13に位置する薬液ノズル3から吐出された薬液の大部分は、分離部236の内側を通って排出口28に排出される。したがって、薬液ノズル3から吐出された薬液と、上方空間S2から下方空間S3に排出された純水とは、下方空間S3において分離部236によって分離される。したがって、排出口28には、純度の高い薬液が排出される。そのため、排出口28から排出された薬液を再び基板Wに供給して、再利用することができる。これにより、薬液の消費量を低減することができる。
【0042】
図7は、本発明の第3実施形態に係る薬液ポット305の概略構成を示す断面図である。図7では、薬液ノズル3が待機位置P13に位置する状態が示されている。この図7において、前述の図1〜図6に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この第3実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、薬液ポット305内で薬液ノズル3を洗浄するための洗浄液供給配管339および洗浄液供給口341と、薬液ポット305内で薬液ノズル3を乾燥させるための気体供給配管340および気体供給口342とが設けられていることである。
【0043】
具体的には、薬液ポット305(ポット)は、薬液ポット305に洗浄液を供給する洗浄液供給配管339と、薬液ポット305に気体を供給する気体供給配管340とを備えている。また、ハウジング325は、ハウジング325の周壁25cに形成された洗浄液供給口341および気体供給口342を有している。洗浄液供給口341および気体供給口342は、仕切部材26より上方に配置されている。洗浄液供給配管339は、洗浄液供給口341に接続されており、気体供給配管340は、気体供給口342に接続されている。図示はしないが、洗浄液供給配管339には、洗浄液バルブが介装されており、気体供給配管340には、気体バルブが介装されている。洗浄液バルブが開かれると、洗浄液供給配管339から洗浄液供給口341に洗浄液(たとえば、純水)が供給される。同様に、気体バルブが開かれると、気体供給配管340から気体供給口342に気体(たとえば、乾燥空気や、窒素ガスなどの不活性ガス)が供給される。
【0044】
洗浄液供給配管339から洗浄液供給口341に供給された洗浄液は、待機位置P13に位置する薬液ノズル3の下端部に向けて吐出される。これにより、薬液ノズル3の下端部に洗浄液が供給され、薬液ノズル3の下端部に付着している薬液やパーティクルが除去される。また、気体供給配管340から気体供給口342に供給された気体は、待機位置P13に位置する薬液ノズル3の下端部に向けて吐出される。したがって、薬液ノズル3の下端部に洗浄液が供給された後に、気体供給口342から気体を吐出させることにより、薬液ノズル3の下端部に気体を供給して、薬液ノズル3の下端部に付着している洗浄液を除去することができる。これにより、薬液ノズル3の下端部を乾燥させることができる。
【0045】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の第1〜第3実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の第1〜第3実施形態では、薬液吐出口3aが上方空間S2に位置する状態で、薬液吐出口3aから薬液が吐出される場合について説明した。しかし、薬液ノズル3の下端部を接続口30に挿入して、薬液吐出口3aが下方空間S3に位置する状態で、薬液吐出口3aから薬液を吐出させてもよい。
【0046】
また、前述の第1〜第3実施形態では、純水供給配管32から上方空間S2に純水が供給される場合について説明した。しかし、純水供給配管32から上方空間S2に供給される液体は、炭酸水や窒素水(窒素を含む水溶液)などの機能水であってもよい。
また、前述の第1〜第3実施形態では、室温(20℃〜30℃程度)の純水が、純水供給配管32から上方空間S2に供給される場合について説明した。しかし、室温より低温の純水(冷水)が、純水供給配管32から水供給口29に供給されてもよい。この場合、貯水部33に保持された純水の温度が低下するので、貯水部33に保持された純水に対する薬液を含む雰囲気の溶け込み易さが向上する。
【0047】
また、前述の第1〜第3実施形態では、純水供給配管32から貯水部33に純水が供給される場合について説明した。しかし、ハウジング25の上壁25aの下面や、ハウジング25の周壁25cの内面に沿って純水が流れるように、純水が上方空間S2に供給されてもよい。
また、前述の第1〜第3実施形態では、貯水部33に保持された純水が、後続の純水に置換される場合について説明した。しかし、貯水部33に保持された純水は、置換されなくてもよい。
【0048】
また、前述の第1〜第3実施形態では、薬液ポット5、205、305内を排気しない場合について説明した。しかし、薬液ポット5、205、305内を排気することにより、薬液を含む雰囲気の漏洩をより確実に防止してもよい。
また、前述の第1〜第3実施形態では、ハウジング25、225、325が、直方体である場合について説明した。しかし、ハウジング25、225、325の形状は、直方体に限らず、薬液ノズル3の下端部を差し込める形状であればよい。
【0049】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 基板処理装置
2 スピンチャック(基板保持手段)
3 薬液ノズル(ノズル)
3a 薬液吐出口(処理液吐出口)
5 薬液ポット(ポット)
12 薬液ノズル移動機構(ノズル移動手段)
25 ハウジング
26 仕切部材
27 挿入口
28 排出口(処理液排出口)
30 接続口
32 純水供給配管(水供給手段)
33 貯水部
205 薬液ポット(ポット)
225 ハウジング
236 分離部
237 第2排出口(第2処理液排出口)
305 薬液ポット(ポット)
325 ハウジング
P11 処理位置
P13 待機位置
S1 内部空間
S2 上方空間
S3 下方空間
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルの処理液吐出口から吐出された処理液を受け止めるポットであって、
前記ノズルの処理液吐出口が配置される内部空間を区画し、前記ノズルが挿入される挿入口と、前記挿入口より下方に配置された処理液排出口とを有するハウジングと、
前記挿入口と前記処理液排出口との間の高さで前記ハウジングの内部空間を上方空間と下方空間とに仕切っており、前記上方空間と前記下方空間とを接続する接続口を有する仕切部材と、を含む、ポット。
【請求項2】
前記ポットは、前記上方空間に水を供給する水供給手段をさらに含み、
前記仕切部材は、前記水供給手段から供給された水を前記上方空間で保持する貯水部を含む、請求項1記載のポット。
【請求項3】
前記貯水部は、前記貯水部に保持された水が前記接続口を通って前記下方空間に排出されるように構成されている、請求項2記載のポット。
【請求項4】
前記ポットは、前記下方空間に配置されており、前記処理液排出口に沿って設けられた筒状の分離部をさらに含み、
前記ハウジングは、前記分離部の周囲に配置された第2処理液排出口をさらに有し、
前記接続口は、平面視において前記分離部を取り囲むように形成されている、請求項3記載のポット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のポットと、
基板を保持する基板保持手段と、
処理液を吐出する処理液吐出口を有するノズルと、
前記ノズルから吐出された処理液が前記基板保持手段に保持された基板に供給される処理位置と、前記処理液吐出口が前記ポット内に配置される待機位置との間で、前記ノズルを移動させるノズル移動手段と、を含む、基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−74471(P2012−74471A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217167(P2010−217167)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】