説明

ポリアミドイミド樹脂系シ−ムレス管状体用樹脂組成物及びシ−ムレス管状体

【課題】 引張強度及び破断伸度に優れた塗膜及びシ-ムレス管状体を形成ためのポリアミドイミド樹脂系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (a)酸無水物基を有し、カルボキシル基又はそれから誘導される基を有していてもよい3価以上のポリカルボン酸無水物を必須成分とするポリカルボン酸成分
及び
(b)4,4´-ビフェニルジカルボン酸又はその誘導体
を必須とするポリカルボン酸化合物
並びに
(c)芳香族ポリイソシアネート
を塩基性極性溶媒中で反応させて得られることを特徴とするポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドイミド樹脂を用いた電気/電子機器、電子複写機など各種精密機器等において回転運動伝達の目的などに用いられるのに適したシームレス管状体のためのポリアミドイミド樹脂系樹脂組成物及びこれを用いて得られるシームレス管状体に関する。
【背景技術】
【0002】
上記したようなシームレス管状体として、ポリイミド樹脂は例えば、ピロメリット酸二無水物と4,4´‐ジアミノジフェニルエーテルよりえられるポリイミド樹脂、3,3´−4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物とp−フェニレンシアミンよりえられるポリイミド樹脂から作製されたものが知られている。ポリイミド樹脂は、特に、優れた機械特性(引裂強度・弾性率・伸び率)を有していることから主流として適用されている。しかしながら、近年、コストダウンのニーズが一層高まりつつあり、低コスト、同イミド樹脂系との面からポリアミドイミド樹脂が着目されてきている。
【0003】
一般にポリアミドイミド樹脂は、耐熱性、耐薬品性及び耐溶剤性に優れているため、エナメル線用ワニス各種塗料の塗膜成分として、各種基板に保護塗膜を形成するために、特に耐熱保護塗膜を形成するために広く用いられてきた。従来のポリアミドイミド樹脂としては、例えば、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートと無水トリメリット酸との反応により得られるポリアミドイミド樹脂が最もよく知られている。しかし、このポリアミドイミド樹脂を用いたシームレス管状体は、その寿命に大きく影響を及ぼす引張強度及び破断伸度が著しく劣る。
【0004】
また、従来、ポリアミドイミド樹脂を用いたシームレス管状体として、引裂強度等を改善したものが提案されている(特許文献2,特許文献3参照)が、シームレス管状体の寿命に大きく影響を及ぼす塗膜の引張強度及び破断伸度について、特に、提案されているものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−160729号公報
【特許文献2】特開2007−016097号公報
【特許文献3】特開2009−099891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリアミドイミド樹脂を用い、引張強度及び破断伸度に優れたシームレス管状体を提供することを目的とするものであり、また、そのためのポリアミドイミド樹脂系樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、次のものに関する。
1. (a)酸無水物基を有し、カルボキシル基又はそれから誘導される基を有していてもよい3価以上のポリカルボン酸無水物を必須成分とするポリカルボン酸成分
及び
(b)4,4´−ビフェニルジカルボン酸又はその誘導体
を必須とするポリカルボン酸化合物
並びに
(c)芳香族ポリイソシアネート
を塩基性極性溶媒中で反応させて得られることを特徴とするポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物。
2. 反応に用いられる(a)成分及び(b)成分の配合割合{(b)/(a)}が当量比で0.01/0.99〜0.60/0.40である項1記載のポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物。
3. 反応に用いられる全イソシアネ−ト成分と全ポリカルボン酸成分との配合割合{(c)/〔(a)+(b)〕}が当量比で0.8〜1.4であり、数平均分子量が10000〜50000である項1又は2いずれかに記載のポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物。
4. ポリアミドイミド樹脂系耐熱性樹脂組成物を塗布及び加熱して形成された塗膜の引張強度が150MPa以上であって、かつ、破断伸度が30%以上であることを特徴とする項1〜3のいずれかに記載のポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物。
5. 項1〜4のいずれかに記載のポリアミドイミド樹脂系耐熱性樹脂組成物を用いて成形されたシ−ムレス管状体。
【0008】
また、上記のいずれかのポリアミドイミド樹脂系耐熱性樹脂組成物を表面に塗布及び加熱して成形された塗膜を有する塗膜板に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物によれば、引張強度及び破断伸度に優れた塗膜の作製が可能となり、電気/電子機器、電子複写機などの精密機器内の回転運動伝達目的であるシームレス管状体にとどまらず、各種耐熱コーティング塗膜の高機能化が可能となり、信頼性向上に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明におけるポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物の製造に用いられるポリカルボン酸無水物(a)は、1分子中に、イソシアネ−ト基と反応してイミド結合を形成する酸無水物基を有し、イソシアネ−ト基と反応してアミド結合を形成するカルボキシル基(又はそれから誘導される基)を有していてもよいものであり、これらの基を合計で2個以上有する化合物、又は、その混合物であり、そうであれば、特に制限はない。酸無水物基及びカルボキシル基又はそれから誘導される基を有する3価のポリカルボン酸無水物としては、例えば一般式(1)及び(2)で示す芳香族トリカルボン酸無水物を挙げることができる。耐熱性、コスト面等を考慮すれば、トリメリット酸無水物が特に好ましい。
【0011】
【化1】

【化2】

(但し、両式中R′は水素、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基等のアリール基を示し、
Yは−CH−、−CO−、−SO−、又は−O−を示す。)
本発明おけるポリカルボン酸成分中に含まれていてもよいカルボキシル基から誘導される基とは、一般式(1)または(2)に示されるように、アルキルオキシカルボニル基やアリールオキシカルボニル基等のエステル結合を有する基などのイソシアネート基と反応してアミド結合を形成することができる基である。
【0012】
また、(a)成分のポリカルボン酸成分としては、これらのほかに、ピロメリット酸二無水物、3,3´−4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3;3´−4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2´−3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコ−ルビスアンドヒドロトリメリテ−ト、2,2−ビス(2、5−ジカルボキシフェニル)プロパンニ無水物、1,1−ビス(2、3−ジカルボキシフェニル)エタン酸二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホンニ無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4´−スルホニルジフタル酸二無水物、m−ターフェニル−3,3´,4,4´−テトラカルボン酸二無水物、4,4´−オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2:3:5:6−テトラカリボン酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸等の芳香族ジカルボン酸などを併用することができる。また、これらポリカルボン酸成分の誘導体(カルボキシル基から誘導される基を有するもの)も使用することができる。
酸無水物基及びカルボキシル基若しくはそれから誘導される基を有する3価のポリカルボン酸無水物以外の(a)成分として使用可能な酸や酸無水物の使用量は全酸成分の50当量%以下とすることが好ましい。
【0013】
本発明において(b)成分として用いる4,4´−ビフェニルジカルボン酸は、下記(3)で示される化合物である。
【0014】
【化3】

【0015】
4,4´−ビフェニルジカルボン酸誘導体とは、4,4´−ビフェニルジカルボン酸のカルボキシル基が前項と同様にカルボキシル基から誘導される基となった化合物である。
【0016】
本発明における(b)成分のカルボン酸成分と(a)成分のポリカルボン酸成分の配合割合は、{(b)成分/(a)成分}の当量比で0.01/0.99〜0.60/0.40とすることが好ましく、0.1/0.9〜0.5/0.5とすることがより好ましく、0.2/0.8〜0.8/0.2とすることが特に好ましい。この当量比が0.01/0.99未満では、引張強度の向上効果が発現せず、0.60/0.40を超えると、塗膜の破断伸度が著しく低下してしまう。
【0017】
本発明における(c)成分の芳香族ポリイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、下記一般式(4)で表される。
【0018】
【化4】

[式中、Xは、炭素数1〜18のアルキレン基又はフェニレン基等のアリーレン基(これはメチル基等の低級アルキル基を置換基として有していてもよい)を示す]で表される。
【0019】
また、上記一般式(4)で表されるジイソシアネート類としては例えば、ジフェニルメタン−2,4´−ジイソシアネート、3,2´−、3,3´−、4,2´−、4,3´−、5,2´−、5,3´−、6,2´−又は6,3v−ジメチルジフェニルメタン−2,4´−ジイソシアネート、3,2´−、3,3v−、4,2v−、4,3´−、5,2´−、5,3´−、6,2´−又は6,3´−ジエチルジフェニルメタン−2,4´−ジイソシアネート、3,2´−、3,3´−、4,2´−、4,3´−、5,2´−、5,3´−、6,2´−又は6,3´−ジメトキシジフェニルメタン−2,4´−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4´−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4´−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4´−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート、4,4´−{2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン}ジイソシアネートなど従来公知の種々のジイソシアネート化合物が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種以上混合して使用してもよい。上記各ポリイソシアネート化合物中でも、塗膜の耐熱性及び機械特性の面からジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートが、本発明に最も好適に使用される。
【0020】
また、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネーロ、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式イソシアネート及び3官能以上のポリイソシアネートを用いてもよく、経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。
【0021】
なお、全イソシアネ−ト成分及び酸成分の配合割合{(c)/〔(a)+(b)〕}が当量比で0.8〜1.4とすることが好ましく、0.9〜1.3となるようにすることがより好ましく、0.9〜1.2となるようにすることが特に好ましい。この比が0.8未満ではポリアミドイミド樹脂の高分子量化が困難であり、また1.4を超えると破断伸度が著しく低下してしまう。
【0022】
本重合は有機溶媒中で行われ、有機溶媒としては、溶解性の点より極性溶媒が好ましく用いられる。具体的にN−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド、N、N−ジエチルアセトアミド、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、が挙げられ、単独または併用することができるが、経済性および重合しやすさの面から、N−メチル−2−ピロリドンまたはN、N−ジメチルアセトアミドを用いることが好ましい。また、使用量に特に制限はないが、前記ポリカルボン酸と4,4´−ビフェニルジカルボン酸及びポリイソシアネ−トの総量100重量部に対して、100〜900重量部とするのが好ましく、125〜600とすることがより好ましく、150〜400とすることが特に好ましい。
【0023】
このようにして得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、1,000〜50,000であることが好ましく、15000〜40000であることがより好ましく、20000〜35000であることが特に好ましい。数平均分子量が1,0000未満であると、塗膜としたときの塗膜の耐熱性や機械的特性等の諸特性が低下する傾向があり、50,000を超えると、塗料として適性な濃度になるよう溶媒に溶解させたときに粘度が高くなり、塗装時の作業性が劣る傾向がある。
【0024】
なお、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、合成終了時に反応液をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定し、目的の数平均分子量になるまで合成を継続することにより、所望の範囲に調整することができる。
【0025】
本発明において、ポリアミドイミド樹脂を塩基性極性溶媒中で合成した後は、塩基性極性溶媒からポリアミドイミド樹脂を分離することなく、そのまま又は適宜有機溶剤を追加して樹脂濃度を調整し、ポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物として、シームレス管状体の作製に供することができる。
ポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物は、適当な基材に塗布、加熱することにより引張強度、破断伸度、耐熱性、耐薬品性及び耐溶剤性に優れる塗膜を形成し、これを剥離してシ−ムレス管状体することができる。これは、長期耐久性を必要とする電気/電子機器、電子複写機などの各種精密機器内の回転運動伝達目的に適しており、特に転写ベルトとして有用である。転写ベルト以外にも同様の機器における定着ベルト、中間転写ベルト、媒体搬送ベルト、搬送ベルト、筒状体、転写ロール、ベルト感光体の基体等に有用である。
また、ポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物は、電気電子部品、機械部品などのフィルム、繊維、その他の原料として用いることができる。
本発明のポリアミドイミド樹脂系耐熱性樹脂組成物を上記の方法により、塗布、加熱することにより、引張強度が150MPa以上であって、かつ、破断伸度が60%以上である塗膜(シ−ムレス管状体等として使用できる)を形成することができる。
【0026】
塗膜を形成する場合、通常、本発明のポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物は、固形分濃度が、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%となるように調整することが好ましい。固形分濃度の調整に用いる有機溶媒としては、前記した塩基性溶媒以外に、例えば、ケトン系溶媒(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等)、エーテル系溶媒(ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等)、セロソルブ系溶媒(ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート等)、芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、p−シメン等)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホンなどが挙げられる。
【0027】
シームレス管状体を形成する場合には、本発明のポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物を基材(例えば、ステンレススチール製円筒金型)に注入し、150〜300℃の熱風で30〜120分間乾燥させた後、脱型することによりシームレス管状体を得ることができる。
塗膜を形成する基材として、例えば、ガラス板等の板状基材を用い、その表面に、本発明のポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物を塗布し、加熱することにより、引張強度、破断伸度、耐熱性、耐薬品性及び耐溶剤性に優れる塗膜を表面に有する塗膜板を得ることができる。
これらの場合に、ポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物に、更にカーボンなどの導電性フィラー等の充填材を混練して用いてもよい。
これらの場合に、塗膜の厚みは、塗膜の用途、期待値によって異なり、特に制限はないが、通常、20〜120μm、好ましくは50〜80μmである。
【0028】
なお、ポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物は、ポリアミドイミド樹脂以外の材料を含んで構成されていてもよく、例えば、同樹脂系統のポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなどの高耐熱性熱可塑性樹脂等を含んで構成されていてもよい。
【0029】
次に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨に基づいたこれら以外の多くの実施態様を含むことは言うまでもない。
【実施例1】
【0030】
(a)成分として無水トリメリット酸115.3g(0.70モル)、(b)成分として4,4´−ビフェニルジカルボン酸[商標名:4BPA](東レ・ファインケミカル社製)72.7g(0.3モル)、(c)成分としてジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート256.5(1.025モル)、N−メチル−2−ピロリドン825.5gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに仕込み、この混合物を乾燥させた窒素気流中で、反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら約6時間かけて除々に昇温して140℃まで昇温した後、11時間反応させて数平均分子量が28900のポリアミドイミド樹脂を含む樹脂組成物溶液を得た。
この反応に用いた(a)成分、(b)成分、(c)成分の配合割合は、当量比で次のとおりである。
{(b)/(a)}=0.30/0.70
{(c)+/〔(a)+(b)〕}=1.025
得られた樹脂組成物溶液をキシレンで希釈し、樹脂分濃度24重量%のポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物を得た。
【実施例2】
【0031】
(a)成分として無水トリメリット酸172.9g(0.90モル)、ピロメリット酸無水物32.7g(0.15モル)(b)成分として4,4´−ビフェニルジカルボン酸[商標名:4BPA](東レ・ファインケミカル社製)36.3g(0.15モル)、(c)成分としてジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート256.5(1.05モル)、N−メチル−2−ピロリドン925.6gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに仕込み、この混合物を乾燥させた窒素気流中で、反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら約6時間かけて除々に昇温して145℃まで昇温した後、13時間反応させて数平均分子量が31300のポリアミドイミド樹脂系耐熱性樹脂組成物の溶液を得た。
この反応に用いた(a)成分、(b)成分、(c)成分の配合割合は、当量比で次のとおりである。
{(b)/(a)}=0.15/0.85
{(c)+/〔(a)+(b)〕}=1.05
得られた溶液をN,N−ジメチルアセトアミドで希釈し、耐熱性塗料(樹脂分濃度:27重量%)を得た。
【実施例3】
【0032】
(a)成分として無水トリメリット酸134.5g(0.70モル)、セバシン酸20.2g(0.10モル)(b)成分として4,4´−ビフェニルジカルボン酸[商標名:4BPA](東レ・ファインケミカル社製)48.4g(0.20モル)、(d)成分としてジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート270.3(1.08モル)、N−メチル−2−ピロリドン1105.5gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに仕込み、この混合物を乾燥させた窒素気流中で、反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら約6時間かけて除々に昇温して145℃まで昇温した後、16時間反応させて数平均分子量が25800のポリアミドイミド樹脂系耐熱性樹脂組成物の溶液を得た。
この反応に用いた(a)成分、(b)成分、(c)成分の配合割合は、当量比で次のとおりである。
{(b)/(a)}=0.20/0.80
{(c)+/〔(a)+(b)〕}=1.08
得られた溶液をN,N−ジメチルアセトアミドで希釈し、耐熱性塗料(樹脂分濃度:27重量%)を得た。
【0033】
比較例1
無水トリメリット酸192.1g(1.0モル)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート262.8g(1.05モル)、N−メチル−2−ピロリドン556.0gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに入れ、この混合物を乾燥させた窒素気流中で、反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら約5時間かけて徐々に昇温して140℃まで昇温した後、12時間保温し、数平均分子量が30700のポリアミドイミド樹脂の溶液を得た。
この溶液をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、塗料(樹脂分濃度:23%)を得た。
【0034】
比較例2
無水トリメリット酸134.5(0.70モル)、セバシン酸60.7g(0.30モル)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート262.8g(1.01モル)、N−メチル−2−ピロリドン687.0g温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに入れ、この混合物を乾燥させた窒素気流中で、反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら約5時間かけて徐々に昇温して130℃まで昇温した後、8時間保温し、数平均分子量が22700のポリアミドイミド樹脂の溶液を得た。
この溶液をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、塗料(樹脂分濃度:30%)を得た。
【0035】
比較例3
4,4′−ジアミノジフェニルエ−テル200.24g(1.0モル)、および反応溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン1673.4gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに仕込み、この混合物を乾燥させた窒素気流中、室温で攪拌溶解し、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294.22g(1.0モル)を加え、30℃以下で7時間反応させ、数平均分子量25100のポリアミド酸の溶液(固形分濃度:20重量%)を得た。これを塗料として用いる。
【0036】
引張試験
塗料を表1に示す塗膜作成条件で作製し、硬化後の塗膜を基板から剥離して、試験に供した。試験は、表2に記載の測定条件下にて引張試験を行い、塗膜が破断する時の引張強度及び破断伸度を測定した。これらの結果を表3に示す。
【0037】
【表1】

1)比較例3のみ350℃−30分の硬化を行った。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
表3から、実施例1〜3のポリアミドイミド樹脂系耐熱性樹脂組成物から得られた塗膜は比較例1〜2の従来ポリアミドイミド樹脂より得られた塗膜と比較して、引張強度及び破断伸度が優れており、また比較例3のポリイミド樹脂より得られた塗膜と比較してほぼ同等の引張強度と破断伸度の特性バランスを有していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酸無水物基を有し、カルボキシル基又はそれから誘導される基を有していてもよい3価以上のポリカルボン酸無水物を必須成分とするポリカルボン酸成分
及び
(b)4,4´−ビフェニルジカルボン酸又はその誘導体
を必須とするポリカルボン酸化合物
並びに
(c)芳香族ポリイソシアネート
を塩基性極性溶媒中で反応させて得られることを特徴とするポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物。
【請求項2】
反応に用いられる(a)成分及び(b)成分の配合割合{(b)/(a)}が当量比で0.01/0.99〜0.60/0.40である請求項1記載のポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物。
【請求項3】
反応に用いられる全イソシアネ−ト成分と全ポリカルボン酸成分との配合割合{(c)/〔(a)+(b)〕}が当量比で0.8〜1.4であり、数平均分子量が10000〜50000である請求項1又は2いずれかに記載のポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物。
【請求項4】
ポリアミドイミド樹脂系耐熱性樹脂組成物を塗布及び加熱して形成された塗膜の引張強度が150MPa以上であって、かつ、破断伸度が30%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミドイミド樹脂系シームレス管状体用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミドイミド樹脂系耐熱性樹脂組成物を用いて成形されたシ−ムレス管状体。

【公開番号】特開2011−231278(P2011−231278A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105102(P2010−105102)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】