説明

ポリアミドマトリックスをベースとする静電塗装組成物

本発明は、ポリアミドマトリックスをベースとし且つ導電性充填剤及び帯電防止剤を含む組成物に関する。この組成物は、例えば自動車分野において用いられる車体部品のようなプラスチック物品であって、塗料の静電塗装方法によって塗装するのに適したものを得ることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドマトリックスをベースとし且つ導電性充填剤及び帯電防止剤を含む組成物に関する。この組成物の形成は、例えば自動車分野における車体部品のようなプラスチック物品であって、塗料の静電塗装方法によって良好に塗装することができるものを得ることを可能にする。
【背景技術】
【0002】
多くの産業界において、ポリアミド材料製の部品に対する高い要求が存在する。その理由は、これらの部品が軽量であり、特に自動車産業の分野において、鉄鋼やアルミニウム製の部品より容易に構想/設計することができるからである。
【0003】
しかしながら、プラスチック部品は塗装することが望まれる場合に問題点を示す。
【0004】
かくして、例えば自動車の分野においては、静電塗装するため、即ち電流の作用下における粒子の移動による塗装のための方法として、特に3つの主な方法が存在する。第1のものは「インライン」プロセスと称されるものであり、この方法に従えば、車両を脂汚れ除去及び電気めっき工程に付し、次いで乾燥工程に付した後に、この車両上にプラスチック製部品が組み立てられる。このプラスチック製部品及び車両は次いで塗装され、加熱によって乾燥される。第2のものは「オンライン」プロセスと称されるものであり、この方法に従えば、上に挙げたプロセスの開始時に車両上にプラスチック製部品が組み立てられる。従って、プラスチック製部品は脂汚れ除去、電気めっき及び乾燥工程に付され、その際の温度は200℃を超えることがある。その結果、このタイプのプロセスについては、プラスチック製部品は高温に耐えることができることが必要である。第3の方法は「オフライン」プロセスと称されるものであり、この方法においては、プラスチック製部品は最初に塗装され、その後に車両上に組み立てられる。
【0005】
静電塗装による塗装方法を用いる場合、慣用のプラスチック部品に対する塗料の付着性が劣る。特に、この塗料は容易に剥がれてしまい、プラスチック部品に付着しないか又は僅かに付着するだけである。
【0006】
プラスチック部品を塗料の静電塗装方法によって塗装するのに好適なものにするために、熱可塑性マトリックスに導電性充填剤を添加することが知られている。しかしながら、これらの充填剤を添加すると、プラスチックの機械的特性のようなある種の特性に対して負の影響がある。さらに、導電性充填剤を添加すると、熱可塑性マトリックスの溶融粘度が有意に増大し、これらのマトリックスはそれらを形成させるためのある種のプロセスにおいて用いるのに適さないものになってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かくして、良好な衝撃強さのような優れた機械的特性を示し且つ塗料の静電塗装方法によって良好に塗装することができるプラスチック部品を製造して用いることについての要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願人は、ポリアミドマトリックスをベースとし且つ導電性充填剤及び帯電防止剤を含む組成物を示した。
【発明の効果】
【0009】
このポリアミド組成物は、機械的特性、熱的特性及び塗装能力に関する特性(特に静電塗装法によって塗料を塗布することによるもの)において良好なバランスを示す物品を形成させることができる。
【0010】
本発明に従うプラスチック部品はまた、好適な線熱膨張係数(LTEC)を、特に自動車産業の分野について、示す。本発明に従うプラスチック部品はさらに、良好な温度安定性、良好な表面外観及び良好な型成形傾向を有する。
【0011】
従って、これらのプラスチック部品は、特に自動車産業において用いられる「インライン」、「オンライン」及び「オフライン」プロセスのような静電塗装による塗装方法に非常によく適したものである。
【0012】
さらに、本発明に従うポリアミドマトリックスをベースとする組成物は、導電性充填剤だけを含むポリアミド組成物と比較して有意に低い溶融粘度を有し、これは、射出成形のような部品製造のためのある種のプロセスにとって特に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第1の主題は、少なくとも1種のポリアミドマトリックスを含み、
・少なくとも2重量%の導電性充填剤、及び
・少なくとも1重量%の帯電防止剤
を含む組成物(重量%は組成物の総重量に対して表わしたものである)にある。
【0014】
この組成物は、1つ又はそれより多くのタイプの導電性充填剤及び1つ又はそれより多くのタイプの帯電防止剤を含むことができる。
【0015】
好ましくは、本発明に従う組成物は、静電気を消散させる組成物であり、IEC規格61340−4−1に従って測定して105Ω〜1011Ωの範囲の表面抵抗率を示す。
【0016】
本発明に従う組成物はまた、IEC規格61340−5−1に従って測定して10秒又はそれより長い、好ましくは30秒又はそれより長い、より一層好ましくは50秒又はそれより長い放電時間を示すこともできる。放電時間は例えば、本発明に従う組成物から得られたシート(例えば200×150×3mmの寸法を有するもの)に1000ボルト(V)の電荷を加えることによって測定することができる。放電時間は、シートの表面の電圧が1000Vから100Vまで変化するのに必要な時間に相当する。
【0017】
本発明の組成物の表面抵抗率及び放電時間のパラメーターは、塗装するのに非常に適していて且つ機械的特性の良好な折衷点を有する物品をも製造するのには特に、非常に好適である。
【0018】
本発明に従う組成物は、組成物の総重量に対して2〜50重量%、好ましくは2〜30重量%、さらにより一層好ましくは2〜10重量%、特に2〜5重量%の導電性充填剤を含むことができる。
【0019】
この導電性充填剤は、カーボンブラック、金属、グラファイト、導電性ポリマー、金属層でコーティングされたガラス及び/若しくは無機充填剤、並びに/又はそれらの混合物より成る群から選択されるのが好ましい。
【0020】
前記のガラス及び/又は無機充填剤は、例えばニッケル、アルミニウム、銀、鉄、クロム及び/又はチタンのような金属層でコーティングされていることができる。
【0021】
導電性充填剤は、例えばマイクロスフェア及び/若しくはナノスフェアの形のようなスフェア(球)の形;例えばマイクロチューブ及び/若しくはナノチューブのようなチューブの形;並びに/又は例えばマイクロファイバー及び/若しくはナノファイバーのようなファイバーの形にあることができる。これらのファイバーは、細断し且つ/又は粉砕したものであることができる。
【0022】
導電性ポリマーとしては、例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン及び/又はポリアセチレンを用いることができる。
【0023】
本発明に従う導電性充填剤は、カーボンブラックであるのが好ましい。
【0024】
導電性カーボンブラックは、特に、Carbon Black, Second Edition, Revised and Expanded, Science and Technology(J.B. Donnet、R.C. Bansal及びM.J. Wang編集、Marcel Dekker Inc.社)第271〜275頁に記載されている。本発明に従う組成物は、組成物の総重量に対して2〜10重量%、好ましくは2〜5重量%、特に2〜4重量%のカーボンブラックを導電性充填剤として含むのが好ましい。
【0025】
本発明に従って用いられる帯電防止剤は、「静電気消散剤」と称することもできる。
【0026】
本発明に従う組成物は、組成物の総重量に対して1〜30重量%の帯電防止剤を含むのが好ましく、5〜20重量%の帯電防止剤を含むのがさらにより一層好ましい。
【0027】
帯電防止剤は、例えばポリエーテルアミド、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホネート、第1、第2又は第3アミン、エトキシル化アミン、エトキシル化アルコール、グリセリルモノステアレート、ジステアレート又はトリステアレート及びそれらの混合物より成る群から選択することができる。
【0028】
用語「ポリエーテルアミド」とは、1つ以上のポリアミドブロック及び1つ以上のポリ(アルキレンオキシド)ブロックを含む様々なタイプのポリマーを意味するものとする。
【0029】
好ましくは、ポリエーテルアミドは下記の式(式(I)とする)によって表わされるブロックポリマー化合物である。
【化1】

{ここで、nは5〜50の範囲の整数であり;
Xは酸素原子又はNH基を表わし;
PAOはポリ(アルキレンオキシド)ブロックを表わし;
PAは繰返し単位が式(IIa)又は式(IIb):
【化2】

(ここで、R1、R2及びR3は4〜36個の炭素原子を有する芳香族又は脂肪族基である)
によって表わされるポリアミドブロックを表わす。}
【0030】
式(I)で表わされるブロックコポリマーは、ポリエーテル−ブロック−アミド又はポリエーテルエステルアミドである。かかる化合物は特に、Atofina社よりPebax(登録商標)の名称で及びCiba社よりIrgastatの名称で販売されている。これらは、ポリアミドブロック及びポリ(アルキレングリコール)ブロックを含む。それぞれの性状のブロックの数は、3〜50の範囲、好ましくは10〜15の範囲である。ブロックの数は、式(I)において整数nで表わされる。
【0031】
ポリアミドブロックは、上記の式(IIa)又は(IIb)のいずれかによって表わすことができる。式(IIa)のブロックは、ラクタム及び/又はアミノ酸から出発する重合によって得られるもののタイプのポリアミドである。かかる化合物の重合方法は周知である。特に、例えばVKチューブ中におけるアニオン重合又は溶融重縮合を挙げることができる。(IIb)ブロックは、ジカルボン酸とアミンとの重縮合によって得られるもののタイプのものである。
【0032】
Xは酸素原子を表わすのが好ましく、かくして式(I)は次のようになる。
【化3】

【0033】
ポリアミドブロックが式(IIa)で表わされる具体例に従えば、基R1は次の基から選択されるのが有利である:
・直鎖状二価ペンチル基:この場合、ポリアミドブロックはポリアミド−6ブロックである;
・枝無し二価デシル基(10個の炭素原子):この場合、ポリアミドブロックはポリアミド−11ブロックである;
・枝無し二価ウンデシル基(11個の炭素原子):この場合、ポリアミドブロックはポリアミド−12ブロックである。
【0034】
ポリアミドブロックが式(IIb)で表わされる具体例に従えば、基R2及びR3は次のペアから選択されるのが有利である:
・R2=直鎖状二価ブチル基、R3=直鎖状二価ヘキシル基:ポリアミド−6,6ブロック;
・R2=直鎖状二価ブチル基、R3=直鎖状二価ブチル基:ポリアミド−4,6ブロック;
・R2=直鎖状二価オクチル基、R3=直鎖状二価ヘキシル基:ポリアミド−6,10ブロック。
【0035】
ポリ(アルキレンオキシド)ブロックは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(トリメチレンオキシド)又はポリ(テトラメチレンオキシド)ブロックから選択することができる。このブロックがポリ(エチレンオキシド)をベースとする場合、これはブロックの末端にプロピレングリコール単位を含むことができる。
【0036】
各ブロックの平均分子量は、互いに独立的である。しかしながら、それらは互いに近いのが好ましい。PAOブロックの平均分子量は、1000〜3000g/モルの範囲であるのが好ましい。PAブロックの平均分子量は、1000〜3000g/モルの範囲であるのが有利である。
【0037】
式(I)の化合物は、末端官能基がカルボン酸官能基であるポリアミドマクロ分子鎖と末端官能基がアルコール官能基であるポリエーテルジオール鎖(即ちポリ(アルキレンオキシド)マクロ分子鎖)との間の触媒反応によって得ることができる。それらは、例えばアルコール末端基を含むポリ(エチレングリコール)鎖である。
【0038】
これらのブロックの官能基の間の反応は、オルトチタン酸テトラアルキルや酢酸ジルコニルによって触媒することができる。
【0039】
本発明の特定的な具体例に従えば、式(I)の変性用化合物は、150℃より高い融点、好ましくは150〜250℃の範囲の融点を有する。
【0040】
本発明に従うポリアミドマトリックスは、(コ)ポリアミド−6、−4、−11、−12、−4,6、−6,6、−6,9、−6,10、−6,12、−6,18、−6,36、−6(T)、−9(T)、−6(I)、−MXD6、それらのコポリマー及び/又はブレンドより成る群から選択される少なくとも1種の(コ)ポリアミドから成るのが一般的である。
【0041】
例えば、半結晶質又は非晶質ポリアミド、例えば脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド及びより一般的には脂肪族若しくは芳香族飽和二酸と脂肪族若しくは芳香族飽和第1アミンとの間の重縮合によって得られる線状ポリアミド、ラクタム若しくはアミノ酸の縮合によって得られるポリアミド、又はこれら各種のモノマーの混合物の縮合によって得られる線状ポリアミドを挙げることができる。これらのコポリアミドは、例えば、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、テレフタル酸及び/若しくはイソフタル酸から得られるポリフタルアミド、又はカプロラクタムとアジピン酸、テレフタル酸及び/若しくはヘキサメチレンジアミンのようなポリアミドの製造用に一般的に用いられる1種以上のモノマーとから得られるコポリアミドであることができる。
【0042】
ポリアミド−6(T)は、テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの重縮合によって得られるポリアミドである。ポリアミド−9(T)は、テレフタル酸と9個の炭素原子を有するジアミンとの重縮合によって得られるポリアミドである。ポリアミド−6(I)は、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの重縮合によって得られるポリアミドである。ポリアミド−MXD6は、アジピン酸とm−キシリレンジアミンとの重縮合によって得られるポリアミドである。
【0043】
前記組成物は、例えばブレンド又はコポリマーとして得られた1種以上の(コ)ポリアミドを含むことができる。
【0044】
前記ポリアミドマトリックスは特に、星形又はHマクロ分子鎖及び適宜に線状マクロ分子鎖を含むポリアミドであることができる。かかる星形又はHマクロ分子鎖を含むポリマーは、例えばフランス国特許第2743077号、同第2779730号及び米国特許第5959069号の各明細書、ヨーロッパ特許公開第0632703号、同第0682057号及び同第0832149号の各公報に開示されている
【0045】
本発明の別の特定的な態様に従えば、本発明のポリアミドマトリックスは、ランダムツリータイプのポリマー、好ましくはランダムツリー構造を示すコポリアミドであることができる。これらのランダムツリー構造のコポリアミド及びそれらの製造方法は、国際公開WO99/03909号パンフレットに開示されている。本発明の熱可塑性マトリックスはまた、上記の線状熱可塑性ポリマー並びに上記のH及び/又はツリー熱可塑性ポリマーを含む組成物であることもできる。本発明の熱可塑性マトリックスはまた、国際公開WO00/68298号パンフレットに開示されたもののタイプの多分岐コポリアミドを含むこともできる。本発明の熱可塑性マトリックスはまた、上記の線状、星形、H若しくはツリー熱可塑性ポリマー又は多分岐コポリアミドの任意の組合せを含むこともできる。
【0046】
本発明の特定的な特徴に従えば、組成物のポリアミドマトリックスは、ポリアミドと1種以上の他のポリマー(好ましくは(コ)ポリアミドタイプのもの)とのブレンドから成る。また、コポリアミドと、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)ポリマー、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)及び/又はポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)より成る群から選択される少なくとも1種のポリマーとのブレンドも可能である。
【0047】
本発明に従うポリアミド組成物は、補強用及び/又は増量用充填剤を含むことができ、これらは、ガラス繊維、金属繊維若しくは炭素繊維のような繊維質充填剤;クレー、カオリン、ウォラストナイト(ケイ灰石)、雲母、タルク及びガラスビーズのような無機充填剤;モンモリロナイトのような微細分散可能な補強用ナノ粒子;又は熱可塑性材料製のものより成る群から選択されるのが好ましい。これらの充填剤の添加割合は、複合材料の分野における標準に従う。充填剤の割合は、例えば組成物の総重量に対して1〜70重量%、好ましくは10〜60重量%であることができる。
【0048】
本発明に従うポリアミド組成物はまた、少なくとも1種の衝撃強さ改良剤を含むこともでき、これは例えば、随意に無水マレイン酸をグラフトされたエチレン−プロピレン(EP)、随意に無水マレイン酸をグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ターポリマー、弾性コポリマー、例えばスチレン−無水マレイン酸(SMA)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、スチレン−ブタジエン(SBS及びSBR)化合物、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)化合物、ポリプロピレン(PP)、アクリルエラストマー(例えばポリアクリレートエラストマー)、エチレンとアクリル若しくはメタクリル酸誘導体及び/又は酢酸ビニルとのコポリマー及びターポリマー、イオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)ターポリマー並びにアクリル−スチレン−アクリロニトリル(ASA)ターポリマーより成る群から選択される。この衝撃強さ改良剤は、例えば無水マレイン酸のようなグラフト基を随意に含むことができる。本発明に従う衝撃強さ改良剤は、上に挙げた化合物の組合せ物、ブレンド、ホモポリマー、コポリマー及び/又はターポリマーであることもできる。衝撃強さ改良剤は、ポリアミドマトリックスと相溶性であるように当業者によって選択される。
【0049】
本発明に従うポリアミド組成物は、特に成形物品の製造のために用いられる熱可塑性組成物において当業者が通常用いる1種以上の添加剤を追加的に含むことができる。かくして、添加剤の例としては、熱安定剤、難燃剤、モールド剤、例えばステアリン酸カルシウム、UV安定剤、酸化防止剤、潤滑剤、摩耗減少剤、顔料、染料、可塑剤、レーザーマーキング促進剤、ワックス又は衝撃強さ改良剤を挙げることができる。例として、酸化防止剤及び熱安定剤は、例えばハロゲン化アルカリ、ハロゲン化銅、立体障害フェノール化合物、有機ホスファイト及び芳香族アミンである。
【0050】
本発明はまた、少なくとも2重量%の導電性充填剤及び少なくとも1重量%の帯電防止剤を随意に溶融状態においてポリアミドマトリックスとブレンドする、上で定義したポリアミド組成物の製造方法にも関する。
【0051】
ブレンド操作は、溶融状態で、例えば一軸若しくは二軸スクリュー押出機を用いて、又は溶融状態にすることなく例えば機械式ミキサーを用いてブレンドすることによって、実施することができる。化合物群は、同時に導入しても順次導入してもよい。熱可塑性組成物の各種化合物の導入に関する当業者に周知の任意の方法を用いることができる。一般的には、材料を加熱し、剪断力を加え、搬送する押出装置が用いられる。かかる装置は、当業者によく知られている。
【0052】
本発明に従う組成物は、押出装置を用いて製造した場合、粒体(顆粒)の形にすることができる。
【0053】
導電性充填剤及び帯電防止剤は、例えば連続式又はバッチ式混合によって前もってブレンドしておくことができる。これを行うためには、例えばバンバリー(Banbury)ミキサーを用いることができる。
【0054】
また、例えば上に記載した方法に従って調製された濃厚ブレンド(好ましくはポリアミドをベースとし且つ導電性充填剤及び/又は帯電防止剤を含むもの)をポリアミドマトリックスに添加することもできる。このマスターブレンドは、例えば各種化合物を予備ブレンドすることによって調製することができる。
【0055】
かくして、本発明はまた、少なくとも1種のポリアミドマトリックスを、
・熱可塑性マトリックスをベースとし且つ少なくとも20重量%の導電性充填剤を含む濃厚ブレンド、及び
・少なくとも1重量%の帯電防止剤
とブレンドする、上記のポリアミド組成物の製造方法にも関する。
【0056】
前記マスターブレンドは、例えば、カーボンブラックのような導電性充填剤を20〜50重量%含むことができる。
【0057】
このマスターブレンドは、例えば(コ)ポリアミド、 エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマー、エチレン−アクリル酸(EAA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、それらのコポリマー及び/又はブレンドより成る群から選択される熱可塑性マトリックスをベースとする。
【0058】
前記マスターブレンドに本発明に従う帯電防止剤を含ませることもできるということにも留意すべきである。
【0059】
本発明の(コ)ポリアミドと補強用及び/若しくは増量用充填剤、衝撃強さ改良剤並びに/又は添加剤とをブレンドするための方法としては、多くの方法を用いることができる。例えば、これらは顆粒を製造前の溶融状態の(コ)ポリアミドとのブレンドとして導入することができる。また、これらの充填剤、改良剤及び/又は添加剤の内の一部を(コ)ポリアミドの重合の際に添加することもできる。
【0060】
本発明はまた、本発明に従う組成物を、薄いシート及びフィルムの押出のような押出法、圧縮型成形のような型成形法並びに射出成形のような射出法より成る群から選択される方法によって成形することによる、物品の製造方法にも関する。
【0061】
本発明に従う物品は、例えば自動車部品、特に車体部品、液体や気体の輸送用のパイプ、タンク、被覆材、フィルム及び/又はタンク用のプラスチック製のカバーであることができる。
【0062】
本発明はまた、上記の本発明の物品が用いられることを特徴とする、物品上に静電塗装することによる塗料塗布方法にも関する。塗料は、例えば吹付又は浸漬によって、物品上に塗布される。一般的には、物品上への静電塗装による塗料の塗布方法は、少なくとも次の工程を含む:150〜250℃の範囲の温度において物品を電気泳動処理する工程、静電吹付によって下塗りを塗布する工程及び静電吹付によって塗料を塗布する工程。それそれの吹付工程の後に、100〜200℃の範囲の温度に加熱する工程(群)及び冷却する工程(群)を行うことができる。
【0063】
本発明はまた、静電塗装による塗料の塗布方法によって塗装された物品にも関する。
【実施例】
【0064】
本発明のその他の詳細や利点は、単に指標として下に与えた実施例を見ればより一層明らかになるであろう。
【0065】
実験の部
【0066】
用いた材料
【0067】
・PA6,6:Rhodia Engineering Plastics社よりTechnyl(登録商標)27 A00の名称で販売されている、2.7の相対粘度(ISO規格307に従い、溶剤として硫酸を用いて測定)を有するポリアミド−6,6。
【0068】
・PA6:Rhodia Engineering Plastics社よりASN 27 Sの名称で販売されている、2.7の相対粘度(ISO規格307に従い、溶剤として硫酸を用いて測定)を有するポリアミド−6。
【0069】
・エラストマー:EPR−g−MA:0.87g/ミリリットルの密度(ASTM規格D792に従って測定)及び23のMFR(ASTM規格D1238に従い、280℃/2.16kgにおいて測定)を有する、グラフトした無水マレイン酸を含むエチレン−プロピレンコポリマー。
【0070】
・導電性カーボンブラック:Akzo社よりKetjen Black 600(登録商標)の名称で販売されているもの。
【0071】
・ポリエーテルアミド:ポリアミド−6ブロック50重量%及びポリエチレングリコールブロック50重量%を含み、Xが酸素原子に相当し、各ブロックの平均分子量が約1500g/モルであるマルチセグメント化ブロックコポリマー。融点:ASTM規格D3418に従って204℃。
【0072】
・ウォラストナイト:10μm未満の粒子寸法及び5のアスペクト比を有し、カップリング剤で表面処理したケイ酸カルシウム。
【0073】
・雲母:D50として表わして40μm又はそれ未満の平均粒子寸法及び450g/リットルの嵩密度を有する、粉砕白雲母タイプの雲母。
【0074】
・その他:色安定剤と潤滑剤(ステアリン酸カルシウム)とのブレンドに相当するもの。
【0075】
・マスターブレンドMB:Iridi Color Srl社よりMBUN NIRO N129の名称で販売されている、EVAをベースとし、導電性カーボンブラックKetjen Black 300(登録商標)30%を含むブレンド。
【0076】
例1:組成物の調製
【0077】
下に挙げた各種の化合物を二軸スクリュー押出機によってブレンドすることによって、ポリアミドベース組成物を製造する。組成、用いた化合物及びそれらの量を、表1に与える。
【0078】
【表1】

【0079】
各種成分の百分率は、組成物の総重量に対する重量によって表わしたものである。
【0080】
特性は、次の方法で測定する:
【0081】
・MFI(メルトフローインデックス)は、ISO規格1133に従い、5kgの荷重下で275℃において測定。
【0082】
・ノッチ付シャルピー衝撃強さは、ISO規格179/1eAに従い、23℃において測定。
【0083】
・破断点伸びは、ISO規格527に従い、23℃において測定。
【0084】
・引張弾性率は、ISO規格527に従い、23℃において測定。
【0085】
・HDT(加熱撓み温度)は、ISO規格75Beに従い、0.45N/mm2の荷重下で測定。
【0086】
・表面抵抗率は、IEC規格61340−4−1に従って測定。測定は次のようにして実施する。射出成形シート(200×150×3mm)上に、抵抗率を測定するための装置のプローブ(Metriso 2000 ESD)を互いから1cmの間隔で置く。100Vの電圧をかけ、シートの表面抵抗率を測定する。この測定は、室内で、約23℃の温度及び50%の相対湿度において実施する。
【0087】
・静電塗装による塗料の付着性:上記の組成物からシートを射出成形する。このシートに、7工程の電気泳動による「オンライン」塗装方法によって塗料を塗布する:工程1:185℃において30分間のe−コート(e-coat)シミュレーション(電気泳動処理)。工程2:20分間の冷却。工程3:静電吹付による下塗りBASF PMR82の塗布。工程4:160℃に30分間加熱。工程5:20分間冷却。工程6:静電吹付による白色塗料の塗布。工程7:20分間冷却。オレンジピール外観、塗料の欠乏及び/又はシートへの塗料の劣悪な付着が観察された場合には、静電塗装による付着が劣悪であると記録される(上記の表において「−」として記録)。逆の場合には、塗料の付着が良好であることが観察される(上記の表において「+」として記録)。
【0088】
上記の表において、nは測定しなかったことを意味する。
【0089】
例2:組成物の調製
【0090】
下に挙げた各種の化合物を二軸スクリュー押出機によってブレンドすることによって、ポリアミドベース組成物を製造する。組成、用いた化合物及びそれらの量を、表2に与える。
【0091】
【表2】

【0092】
各種成分の百分率は、組成物の総重量に対する重量によって表わしたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドマトリックスを含む組成物であって、組成物の総重量に対する重量%で表わして、
・少なくとも2重量%の導電性充填剤、及び
・少なくとも1重量%の帯電防止剤
を含むことを特徴とする、前記組成物。
【請求項2】
IEC規格61340−4−1に従って測定して105Ω〜1011Ωの範囲の表面抵抗率を示すことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
IEC規格61340−5−1に従って測定して10秒又はそれより長い放電時間を示すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物の総重量に対して2〜50重量%の導電性充填剤を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記導電性充填剤がカーボンブラック、金属、グラファイト、導電性ポリマー、金属層でコーティングされたガラス及び/若しくは無機充填剤、並びに/又はそれらの混合物より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
組成物の総重量に対して2〜10重量%のカーボンブラックを導電性充填剤として含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
組成物の総重量に対して1〜30重量%の帯電防止剤を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記帯電防止剤がポリエーテルアミド、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホネート、第1、第2又は第3アミン、エトキシル化アミン、エトキシル化アルコール、グリセリルモノステアレート、ジステアレート又はトリステアレート、及びそれらの混合物より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記帯電防止剤が次式(I):
【化1】

{ここで、nは5〜50の範囲の整数であり;
Xは酸素原子又はNH基を表わし;
PAOはポリ(アルキレンオキシド)ブロックを表わし;
PAは繰返し単位が式(IIa)又は式(IIb):
【化2】

(ここで、R1、R2及びR3は4〜36個の炭素原子を有する芳香族又は脂肪族基である)
によって表わされるポリアミドブロックを表わす}
によって表わされるポリエーテルアミドであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
基R1が直鎖状二価ペンチル基であることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記PAOブロックがポリ(エチレンオキシド)ブロックであることを特徴とする、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリアミドマトリックスが(コ)ポリアミド−6、−4、−11、−12、−4,6、−6,6、−6,9、−6,10、−6,12、−6,18、−6,36、−6(T)、−9(T)、−6(I)、−MXD6、それらのコポリマー及び/又はブレンドより成る群から選択される少なくとも1種の(コ)ポリアミドから成ることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
随意に無水マレイン酸をグラフトされたエチレン−プロピレン(EP)、随意に無水マレイン酸をグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ターポリマー、スチレン−無水マレイン酸(SMA)の如き弾性コポリマー、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、スチレン−ブタジエン(SBS及びSBR)化合物、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)化合物、ポリプロピレン(PP)、アクリルエラストマー(例えばポリアクリレートエラストマー)、エチレンとアクリル若しくはメタクリル酸誘導体及び/又は酢酸ビニルとのコポリマー及びターポリマー、イオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)ターポリマー並びにアクリル−スチレン−アクリロニトリル (ASA)ターポリマーより成る群から選択される少なくとも1種の衝撃強さ改良剤を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも2重量%の導電性充填剤及び少なくとも1重量%の帯電防止剤を随意に溶融状態においてポリアミドマトリックスとブレンドすることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載のポリアミド組成物の製造方法。
【請求項15】
少なくとも1種のポリアミドマトリックスを
・熱可塑性マトリックスをベースとし且つ少なくとも20重量%の導電性充填剤を含む濃厚ブレンド、及び
・少なくとも1重量%の帯電防止剤
とブレンドすることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載のポリアミド組成物の製造方法。
【請求項16】
前記熱可塑性マトリックスが(コ)ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマー、エチレン−アクリル酸(EAA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、それらのコポリマー及び/又はブレンドより成る群から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれかに記載の組成物を押出法、型成形法及び射出法より成る群から選択される方法によって成形することによる、物品の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれかに記載の組成物を成形することによって得られる物品。
【請求項19】
静電塗装による塗料塗布方法によって塗装されることを特徴とする、請求項18に記載の物品。

【公表番号】特表2007−501874(P2007−501874A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522374(P2006−522374)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002077
【国際公開番号】WO2005/017038
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(302045945)ロディア エンジニアリング プラスティックス ソシエテ アノニム (1)
【Fターム(参考)】