説明

ポリイミド、ポリイミドフィルム及びそのフィルムを用いた銅張積層板、プリント配線板及び多層回路基板

【課題】高引張破断強度、高引張弾性率、低面方向での線膨張係数を兼ね備え、かつ表面接着性に優れたポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】下記式の繰り返し構造単位を有するポリイミドであって、Rがピロメリット酸残基およびまたはビフェニルテトラカルボン酸残基、Rが芳香族ジアミン類の残基1〜40モル%と、ベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンの残基および/またはフェニレンジアミンの残基60〜99モル%であるポリイミド、そのポリイミドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張破断強度、引張弾性率が共に大きく、線膨張係数が低めの特定範囲でありかつ接着性に優れた、特定のポリイミドと特定のポリイミドとが特定比率で混合および/または共縮重合されたポリイミドに関し、さらに引張破断強度、引張弾性率が共に大きく、線膨張係数が低めの特定範囲にある、かつ接着性及び耐熱性に優れたポリイミドフィルムとこのフィルムを使用した銅張積層板および多層回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、−269℃〜300℃までの広い温度範囲での物性変化が極めて少ないために、電気および電子分野での応用、用途が拡大している。電気分野では、例えば車両用モーターや産業用モーター等のコイル絶縁、航空機電線および超導電線の絶縁等に使用されている。一方、電子分野では、例えばフレキシブルプリント基板や、半導体実装用フィルムキャリヤーのベースフィルム等に利用されている。このようにポリイミドフィルムは、種々の機能性ポリマーフィルムの中でも極めて信頼性の高いものとして、電気および電子分野で広く利用されている。しかしながら、最近では電気および電子分野等のファイン化にともなって大きな問題が顕在化してきている。例えば、銅を蒸着又はメッキ等によって銅張したポリイミドフィルム基材からなるプリント基板は、経時変化、環境変化によって銅層の密着力が低下し、更には剥離が発生する傾向にあった。
【0003】
また、情報通信機器(放送機器、移動体無線、携帯通信機器等)、レーダーや高速情報処理装置などといった電子部品の基材の材料として、従来、セラミックが用いられていた。セラミックからなる基材は耐熱性を有し、近年、情報通信機器の信号帯域の高周波数化(GHz帯に達する)にも対応し得る。しかし、セラミックはフレキシブルでなく、薄くできないので使用できる分野が限定される。そのため、有機材料からなるフィルムを電子部品の基材として用いる検討がなされ、ポリイミドからなるフィルム、ポリテトラフルオロエチレンからなるフィルムが提案されている。ポリイミドからなるフィルムは耐熱性に優れ、また、強靭であるのでフィルムを薄くできるという長所を備えているが、高周波の信号への適用において、信号強度の低下や信号伝達の遅れなどといった問題が懸念され、引張破断強度、引張弾性率でまだ不十分であり、線膨張係数においても大きすぎるなどの課題を有している。ポリテトラフルオロエチレンからなるフィルムは、高周波にも対応し得るが、引張弾性率が低いのでフィルムを薄くできない点、表面への金属導体や抵抗体などとの接着性が悪いという点、線膨張係数が大きく温度変化による寸法変化が著しくて微細な配線をもつ回路の製造に適さない点等が問題となり、使用できる分野が限定される。このように、耐熱性、高機械的物性、フレキシブル性を具備した基材用として十分な物性のフィルムは未だ得られていない。
引張弾性率を高くしたポリイミドフィルムとして、ベンゾオキサゾール環を主鎖に有するポリイミドからなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムが提案されている(特許文献1参照)。このポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを誘電層とするプリント配線板も提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。
これらのベンゾオキサゾール環を主鎖に有するポリイミドからなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは、引張破断強度、引張弾性率で改良され、線膨張係数において満足し得る範囲のものとなっているが、その優れた機械的物性の反面、その表面特性が接着性において不十分であるなどの課題を有していた。
【0004】
優れた物性のポリイミドの接着性を改良するために種々の提案がなされており、例えば接着性を有しないポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を形成するもの(特許文献4参照)、ポリイミドフィルムとポリアミド系樹脂からなるフィルムとが積層される少なくとも2層フイルム(特許文献5参照)などがある。
これらのポリイミドフィルム上に熱可塑性樹脂層を設けたものは、接着性の改良においては満足し得ても、これら熱可塑性樹脂の耐熱性の低さは折角のポリイミドフィルムの耐熱性を台無しにする傾向を有していた。
【特許文献1】特開平06−056992号公報
【特許文献2】特表平11−504369号公報
【特許文献3】特表平11−505184号公報
【特許文献4】特開平09−169088号公報
【特許文献5】特開平07−186350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、引張破断強度、引張弾性率が共に大きく、線膨張係数が低めの特定範囲でありかつ接着性に優れたポリイミドとそのポリイミドフィルムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定のポリイミドと特定のポリイミドとが特定比率で混合およびまたは共縮重合されたポリイミドが、引張破断強度、引張弾性率が共に大きく、線膨張係数が低めの特定範囲にあり、接着性、耐熱性、フレキシブル性をより高いレベルで具備し、このポリイミドからのポリイミドフィルムと、このフィルムを絶縁層として用いて絶縁性の信頼性と軽小(軽薄)化をも達成し得る回路基板や多層回路基板を提供せんとするものである。
すなわち本発明は以下の構成からなる。
1. 下記化1の繰り返し構造単位を有するポリイミドであって、Rがピロメリット酸残基および/またはビフェニルテトラカルボン酸残基、Rが下記化2から選択される芳香族ジアミン類の残基1〜40モル%と、ベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンの残基および/またはフェニレンジアミンの残基60〜99モル%であることを特徴とするポリイミド。
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

2. 前記1のポリイミドを主成分とするフィルムであって、面方向での線膨張係数が0〜30ppm/℃であることを特徴とするポリイミドフィルム。
3. 引張破断強度が300MPa以上、引張弾性率が5GPa以上である2.のポリイミドフィルム。
4. 前記2または3記載のポリイミドフィルムを基板として用いた銅張積層板。
5. 前記4の銅張積層板の銅層を一部除去して回路パターンを形成してなるプリント配線板。
6. 前記2〜5のいずれかのポリイミドフィルム及び/又はプリント配線板を用いた多層回路基板。
【発明の効果】
【0009】
本発明の特定のポリイミドと特定のポリイミドとが特定比率で混合および/または共縮重合されたポリイミドが、引張破断強度、引張弾性率が共に大きく、線膨張係数が低めの特定範囲にあり、接着性、耐熱性、フレキシブル性をより高いレベルで具備し、このポリイミドを主成分とするポリイミドフィルムと、このフィルムを絶縁層として用いて絶縁性の信頼性と軽小(軽薄)化をも達成し得る回路基板や多層回路基板として、高い引張弾性率と引張破断強度と特定範囲の低い線膨張係数とを保持し、かつその金属などと接する表面が接着性に優れ、金属層特に銅層積層体、それからの回路基板、多層回路基板、金属箔(層)との接合フィルムなどに極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のポリイミドおよびフィルムは、化1の繰り返し構造単位を有するポリイミドであって、Rがピロメリット酸残基および/またはビフェニルテトラカルボン酸残基、Rが下記化2から選択される芳香族ジアミン類の残基1〜40モル%と、ベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンの残基および/またはフェニレンジアミンの残基60〜99モル%であるポリイミドとそれを主成分とするポリイミドフィルムであり、この化2から選択される残基は10〜30モル%で、ベンゾオキサゾール骨格を有する残基及び/又はフェニレンジアミンの残基が70〜90モル%であるものがより好ましいポリイミドであり、それを主成分とするポリイミドフィルムである。
なお、化1の構造単位の繰り返し数は、イミド化する前のポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)が1.5dl/g以上になる繰り返し数であればよいが、還元粘度(ηsp/C)が2.0dl/g以上であることがより好ましい。
【0011】
本発明におけるポリイミドは、そのフィルムは、例えば芳香族テトラカルボン酸類(無水物、誘導体も含む)であるピロメリット酸およびまたはビフェニルテトラカルボン酸残基とを芳香族ジアミン類であるベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンおよび/またはフェニレンジアミンとを溶媒中で反応せしめ前駆体であるポリアミド酸(a)溶液を得、一方芳香族テトラカルボン酸類としてピロメリット酸およびまたはビフェニルテトラカルボン酸残基とを芳香族ジアミン類の1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンとを溶媒中で反応せしめ前駆体であるポリアミド酸(b)溶液を得てこれらを混合した溶液(a+b)溶液とするか、または前記した芳香族テトラカルボン酸と両者の芳香族ジアミンとを同時に溶媒中で反応せしめポリイミドの前駆体であるポリアミド酸(ab)溶液を得て、これらの溶液を支持体上に流延し、乾燥してポリイミドの前駆体フィルム(グリーンフィルムともいう)を得て、該前駆体フィルムをさらに熱処理してイミド化しポリイミドフィルムを得る方法で製造することができる。
本発明においては芳香族ジアミンとして化2に示す構造を有する芳香族ジアミン類を用いる。このうち、n=1の場合の各異性体を用いることが好ましい。
本発明での(a)に使用するベンゾオキサゾール骨格(構造)を有する芳香族ジアミン類(芳香族ジアミン、芳香族ジアミンのアミド結合性誘導体などを総称する、以下単に芳香族ジアミンともいう)として、下記の化合物が例示できる。
【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

【0016】
【化7】

【0017】
【化8】

【0018】
【化9】

【0019】
【化10】

【0020】
【化11】

【0021】
【化12】

【0022】
【化13】

【0023】
【化14】

【0024】
【化15】

【0025】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化3」〜「化6」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明における、フェニレンジアミンは、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミンなどが挙げられるが、好ましくはp−フェニレンジアミンである。
本発明においては、芳香族テトラカルボン酸類(酸、無水物、アミド結合性誘導体を総称する、以下芳香族テトラカルボン酸ともいう)として、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸(ビフェニルテトラカルボン酸およびその二無水物(BPDA)ならびにそれらの低級アルコールエステル)が使用される。ビフェニルテトラカルボン酸のうち3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸又はその二無水物が好ましい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン、フェニレンジアミン、化2骨格を有するジアミンをイミド構成の全ジアミンの70モル%以上、好ましくは80モル%以上使用することが好ましい。
また、本発明においては、芳香族テトラカルボン酸類として、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸を全カルボン酸の80モル%以上、好ましくは90モル%以上使用することが好ましい。
【0026】
前記ジアミンに限定されず下記のジアミン類を全ジアミンの30モル%未満であれば使用することができる。これらのジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0027】
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0028】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0029】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0030】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0031】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0032】
本発明における芳香族テトラカルボン酸類としてのピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸は、下記化16、化17で示される。
【0033】
【化16】

【0034】
【化17】

【0035】
本発明においては、全カルボン酸類の20モル%未満より好ましくは10モル%未満であれば前記以外の下記に例示される芳香族テトラカルボン酸類を使用してもよい。
【0036】
【化18】

【0037】
【化19】

【0038】
【化20】

【0039】
【化21】

【0040】
本発明においては、全カルボン酸類の5モル%未満であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種または二種以上、適宜併用してもよい。
非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、
【0041】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0042】
芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。
重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の濃度は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが、引張弾性率、引張破断強度、引張破断伸度を向上するために2.0以上が好ましく、3.0以上がさらに好ましい。
【0043】
本発明におけるポリイミドまたはポリイミドフィルムにおいては、その中に滑剤を添加・含有せしめて、層(フィルム)表面に微細な凹凸を付与し層(フィルム)の接着性などを改善することが好ましい。滑剤としては、無機や有機の0.03〜3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
これらの微粒子はポリイミドやフィルムに対して好ましくは、0.20〜2.0質量%の範囲で含有させることが必要である。微粒子の含有量が0.20質量%未満であるときは、接着性の向上がそれほどなく好ましくない。一方2.0質量%を超えると表面凹凸が大きくなり過ぎ接着性の向上が見られても平滑性の低下を招くなどによる課題を残し好ましくない。
【0044】
重合反応により得られるポリアミド酸溶液から、ポリイミドフィルムを形成する方法としては、ポリアミド酸溶液を支持体上に塗布して乾燥するなどによりグリーンフィルムを得て、次いで、グリーンフィルムを熱処理に供することでイミド化反応させる方法が挙げられる。
ポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラムまたはベルト状回転体などが挙げられる。中でも、支持体の表面は好ましくは金属であり、より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体表面は必要に応じて鏡面にする、あるいは梨地状に加工することができる。またポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどの高分子フィルムを支持体として用いることも可能である。
支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形して前駆体フィルム(グリーンフィルム)を得て、これをイミド化して、ポリイミドフィルムを得る。その具体的なイミド化方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができるが、ポリイミドフィルム表裏面の表面面配向度の差が小さいポリイミドフィルムを得るためには、熱閉環法が好ましい。
【0045】
熱閉環法の加熱最高温度は、100〜500℃が例示され、好ましくは200〜500℃である。加熱最高温度がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、またこの範囲より高いと劣化が進行し、フィルムが脆くなりやすくなる。より好ましい態様としては、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間処理する2段階熱処理が挙げられる。
化学閉環法では、ポリアミド酸溶液を支持体に塗布した後、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有するフィルムを形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。この場合、イミド化反応を一部進行させる条件としては、好ましくは100〜200℃による3〜20分間の熱処理であり、イミド化反応を完全に行わせるための条件は、好ましくは200〜400℃による3〜20分間の熱処理である。
【0046】
本発明におけるポリイミドフィルムは、高引張破断強度、高引張弾性率、低線膨張係数を保有し、かつ表面接着性が優れたものであり、得られたポリイミドフィルムは、好ましい態様として、引張破断強度が300MPa以上、引張弾性率が5GPa以上、面方向での線膨張係数が0〜30ppm/℃である優れた性能のポリイミドフィルムであり、これらの値は、引張破断強度が330MPa以上、引張弾性率が5.4GPa以上、面方向での線膨張係数が0〜20ppm/℃であることがより好ましい。
【0047】
本発明における面方向での線膨張係数(CTE)の測定は下記による。
測定対象のフィルムについて、下記条件にてMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、90〜100℃、100〜110℃、…と10℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を400℃まで行い、100℃から350℃までの全測定値の平均値をCTE(平均値)として算出した。MD方向、TD方向の意味は、流れ方向(MD方向;長尺フィルムの長さ方向)および幅方向(TD方向;長尺フィルムの幅方向)を示すものである。
面方向の線膨張係数はMD方向、TD方向の値の平均値である。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 10mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0048】
引張破断強度、引張弾性率の測定は下記による。
測定対象のフィルムを、MD方向およびTD方向にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(登録商標)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度を測定した。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は前記した以外は以下の通りである。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
【0050】
2.フィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
【0051】
3.剥離強度
測定対象の接着剤積層ポリイミドフィルムを100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。T形に接着した試料を引き剥がしたときに要する強度を以って剥離強度とした。常温での測定を初期剥離強度とし、PCT環境(121℃、100%RH、2atom、168hr)に放置した後測定した剥離強度をPCT後剥離強度とした。JIS C6418に準じて引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ(登録商標)機種名AG−5000A)を用いて行った。剥離強度保持率は(PCT後剥離強度/初期剥離強度)×100の値をもって示す。
【0052】
〔ポリアミド酸溶液(1)の作製〕
(PMDA/p−DAMBO)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(p−DAMBO)211質量部を仕込んだ。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド3000質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをN,N−ジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(商品名)DMAC−ZL(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)を加え,ピロメリット酸二無水物(PMDA)204質量部を加え,25℃の反応温度で24時間攪拌すると、淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(1)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは4.2dl/gであった。
【0053】
〔ポリアミド酸溶液(2)の作製〕
(ODPA/TPER)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPER)201質量部を仕込んだ。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド3000質量部を導入し、均一になるようによく攪拌した後、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(商品名)DMAC−ZL(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)を加え,この溶液を0℃まで冷やし、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)213質量部を加え、25℃の反応温度で72時間攪拌した。淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(2)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは3.1dl/gであった。
【0054】
〔ポリアミド酸溶液(3)の作製〕
(PMDA:p−DAMBO:TPER=100:85:15)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール175質量部と1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン40質量部を仕込んだ。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド3000質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(商品名)DMAC−Zl(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)を加え,ピロメリット酸二無水物199質量部を加え、25℃の反応温度で50時間攪拌すると、淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(3)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは2.8dl/gであった。
【0055】
〔ポリアミド酸溶液(4)の作製〕
(PMDA:p−DAMBO:TPER=100:80:20)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール164質量部と1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン53質量部を仕込んだ。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド3000質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(商品名)DMAC−Zl(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)を加え,ピロメリット酸二無水物198質量部を加え、25℃の反応温度で50時間攪拌すると、淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(4)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは2.2dl/gであった。
【0056】
〔ポリアミド酸溶液(5)の作製〕
(PMDA:p−DAMBO:TPER=100:70:30)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール141質量部と1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン78質量部を仕込んだ。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド3000質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(商品名)DMAC−Zl(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)を加え,ピロメリット酸二無水物195質量部を加え、25℃の反応温度で50時間攪拌すると、淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(5)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは2.0dl/gであった。
【0057】
〔ポリアミド酸溶液(6)の作製〕
(PMDA:PPD:TPER=100:80:20)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、p−フェニレンジアミン(PPD)99質量部と1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン67質量部を仕込んだ。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド3000質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(商品名)DMAC−Zl(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)を加え,ピロメリット酸二無水物249質量部を加え、25℃の反応温度で50時間攪拌すると、淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(6)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは2.5dl/gであった。
【0058】
〔ポリアミド酸溶液(7)の作製〕
(PMDA:BPDA:DAMBO:TPER=60:40:85:15)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール164質量部と1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン38質量部を仕込んだ。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド3000質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(商品名)DMAC−Zl(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)を加え,ピロメリット酸二無水物112質量部とビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)101質量部を加え、25℃の反応温度で50時間攪拌すると、淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(7)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは2.3dl/gであった。
【0059】
〔ポリアミド酸溶液(8)の作製〕
(PMDA:p−DAMBO:TPER:ODA=100:66:17:17)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール137質量部と1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン46質量部、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)31質量部を仕込んだ。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド3000質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(商品名)DMAC−Zl(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)を加え,ピロメリット酸二無水物133質量部と4,4’−オキシジフタル酸無水物201質量部を加え、25℃の反応温度で50時間攪拌すると、淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(8)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは2.2dl/gであった。
【0060】
〔ポリアミド酸溶液(9)の作製〕
(PMDA:ODPA:p−DAMBO=80:20:100)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール202質量部を仕込んだ。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド3000質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(商品名)DMAC−Zl(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)を加え、ピロメリット酸二無水物157質量部と4,4’−オキシジフタル酸無水物56質量部を加え、25℃の反応温度で50時間攪拌すると、淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(9)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは2.5dl/gであった。
【0061】
〔ポリアミド酸溶液(10)の作製〕
(ODPA:p−DAMBO:TPER=100:80:20)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール136質量部と1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン44質量部を仕込んだ。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド3000質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(商品名)DMAC−Zl(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)を加え,4,4’−オキシジフタル酸無水物234質量部を加え、25℃の反応温度で50時間攪拌すると、淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(10)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは2.4dl/gであった。
【0062】
(実施例1)
ポリアミド酸溶液(3)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、230μm、塗工幅700mm)、110℃にて15分間乾燥することで、厚さが18μmのポリアミド酸フィルムを得た。
上記のポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ10μmのポリイミドフィルムを得た。
上記フィルムでエポキシ系接着剤(京セラケミカル製)の両面をはさみ、ロール加熱温度100℃、ロール接圧0.4MPa、送り速度1m/分にて積層した。その後、ヒートプレス機にて160℃、10MPaにて1時間処理することにより接着剤を硬化させた。

このフィルムを100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。測定は、JIS K6854−3に準じて引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ(登録商標)(機種名AG−5000A)を用いて行った。 得られたポリイミドフィルムの特性などを表1と表2に示す。
なお、表中剥離強度に関する項目以外はポリイミドフィルムの物性を測定した値を示す。
【0063】
(実施例2)
ポリアミド酸溶液(4)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、230μm、塗工幅700mm)、110℃にて15分間乾燥することで、厚さが18μmのポリアミド酸フィルムを得た。上記のポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ10μmのポリイミドフィルムを得た。以下実施例1と同様の方法で接着剤積層ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性などを表1、表2に示す。
【0064】
(実施例3)
ポリアミド酸溶液(5)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、230μm、塗工幅700mm)、110℃にて15分間乾燥することで、厚さが18μmのポリアミド酸フィルムを得た。上記のポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ10μmのポリイミドフィルムを得た。以下実施例1と同様の方法で接着剤積層ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性などを表1、表2に示す。
【0065】
(実施例4)
ポリアミド酸溶液(6)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、230μm、塗工幅700mm)、110℃にて15分間乾燥することで、厚さが18μmのポリアミド酸フィルムを得た。上記のポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ10μmのポリイミドフィルムを得た。以下実施例1と同様の方法で接着剤積層ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性などを表1、表2に示す。
【0066】
(実施例5)
ポリアミド酸溶液(7)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、230μm、塗工幅700mm)、110℃にて15分間乾燥することで、厚さが18μmのポリアミド酸フィルムを得た。上記のポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ10μmのポリイミドフィルムを得た。以下実施例1と同様の方法で接着剤積層ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性などを表1、表2に示す。
【0067】
(実施例6)
ポリアミド酸溶液(8)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、230μm、塗工幅700mm)、110℃にて15分間乾燥することで、厚さが18μmのポリアミド酸フィルムを得た。上記のポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ10μmのポリイミドフィルムを得た。以下実施例1と同様の方法で接着剤積層ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性などを表1、表2に示す。
【0068】
(比較例1)
ポリアミド酸溶液(1)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、230μm、塗工幅700mm)、110℃にて15分間乾燥することで、厚さが18μmのポリアミド酸フィルムを得た。
上記のポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目400℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ10μmのポリイミドフィルムを得た。
以下、実施例1と同様の方法で接着剤積層ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性などを表1、表2に示す。得られたフィルムは、低CTEであるものの、接着性の低いフィルムであった。
【0069】
(比較例2)
ポリアミド酸溶液(2)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、230μm、塗工幅700mm)、110℃にて15分間乾燥することで、厚さが18μmのポリアミド酸フィルムを得た。
上記のポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目400℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ10μmのポリイミドフィルムを得た。
以下、実施例1と同様の方法で接着剤積層ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性などを表1、表2に示す。得られたフィルムは、高接着性であるものの、CTEが高いフィルムであった。
【0070】
(比較例3)
ポリアミド酸溶液(9)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、230μm、塗工幅700mm)、110℃にて15分間乾燥することで、厚さが18μmのポリアミド酸フィルムを得た。
上記のポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ10μmのポリイミドフィルムを得た。
以下、実施例1と同様の方法で金属積層ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性などを表1、表2に示す。得られたフィルムは、低CTEであるものの、接着性の低いフィルムであった。
【0071】
(比較例4)
ポリアミド酸溶液(10)を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100、厚さ188μm)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、230μm、塗工幅700mm)、110℃にて15分間乾燥することで、厚さが18μmのポリアミド酸フィルムを得た。
上記のポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、厚さ10μmのポリイミドフィルムを得た。
以下実施例1と同様の方法で金属積層ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性などを表1、表2に示す。得られたフィルムは、高接着性であるものの、CTEが高いフィルムであった。
【0072】
<両面COF及び多層基板の製造>
実施例1で得られたポリイミドフィルムを連続式スパッタ装置に装着し、周波数13.56MHz、出力400W、ガス圧0.8Paの条件、ニッケル−クロム(クロム含有量10%)合金のターゲット用い、アルゴン雰囲気下にてRFスパッタ法により、10Å/秒のレートで厚さ50Åのニッケル−クロム合金被膜を形成した。次いで、100Å/秒のレートで銅を蒸着し、厚さ0.3μmの銅薄膜を形成させた。その後、このフィルムを250mm×400mmに切り出し、プラスチック製の枠に固定し直し、硫酸銅めっき浴を用いて、厚さ8μmの厚付け銅メッキ層を上記銅薄膜上に形成して、金属化ポリイミドフィルムを得た。
上記両面金属積層ポリイミドフィルムを250mm幅にスリットし、両端に搬送用のスプロケット孔及び位置合わせ用の孔、及びスルーホール接続孔をパンチングした。次いでロールトゥロール式のデスミア処理装置を経て、ダイレクトメタライズ工程に通し、スルーホール部分を導通させた後に、ロールトゥロール方式の連続的電気めっき装置によりスルーホールめっきを行った。
めっき以後は通常のドライフィルムレジストを用いる両面回路加工工程を通し、所定のパターンを露光して現像を行なった後、パターニングしたレジストをマスクとし、塩化第二鉄水溶液を用いてエッチング処理を施した。レジスト剥離後、パッド部を残して液状レジスト型のソルダーレジストを塗布・乾燥、マスク露光、現像し、パッド部分には、厚さ1.5μmの錫めっきを施し、各ポリイミドフィルムロールを用いて幅250mm、長さ約300mのプリント配線板(COF用フィルム基板)ロールを得、リールに巻き取った。得られた各COF用フィルム基板の最も線幅の細い回路部分は線幅/線間=45/55μmであった。
上記の両面COF3枚の間に接着シート(パイララックスLF)を挟み、180℃、20MPaにて15分間プレス積層した。その後NCドリルマシンを用い、ドリルの回転速度12000rpmで、穴径φ200μmのスルーホールを作製した。スルーホール内面を無電解めっき及び電解めっきにより層間接続することで、10層の多層回路基板を作製した。得られた多層回路基板は、外観良好、反りのなし、接続不良無しの高信頼な基板が得られた。
上記と同様の方法で実施例2〜4の金属積層ポリイミドフィルムを用いて作製した多層回路基板は、いずれも外観良好、反りのなし、接続不良無しの高信頼な基板が得られた。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のポリイミドから得られるポリイミドフィルムは、高温での金属薄膜や金属箔との接合に優れ、かつ高温時における変形・反り・歪みなどのないフレキシブルな金属積層板たとえばフレキシブルプリント回路板などの層間絶縁層として極めて有用であり、絶縁層形成時の加圧加熱成型時において、基材としてのポリイミドフィルムの変形が抑制できる。高引張破断強度、高引張弾性率、低面方向での線膨張係数を兼ね備えた本発明のポリイミドフィルムは、しかも表面接着性に優れており多層プリント配線板などの層間絶縁に使用した場合に得られる多層プリント配線板などの軽小(軽薄)化を達成しうるものであり、電子機器の高機能化、高性能化、軽小化に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化1の繰り返し構造単位を有するポリイミドであって、Rがピロメリット酸残基および/またはビフェニルテトラカルボン酸残基、Rが下記化2から選択される芳香族ジアミン類の残基1〜40モル%と、ベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンの残基および/またはフェニレンジアミンの残基60〜99モル%であることを特徴とするポリイミド。
【化1】

【化2】

【請求項2】
請求項1記載のポリイミドを主成分とするフィルムであって、面方向での線膨張係数が0〜30ppm/℃であることを特徴とするポリイミドフィルム。
【請求項3】
引張破断強度が300MPa以上、引張弾性率が5GPa以上である請求項2記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
請求項2又は3記載のポリイミドフィルムを基板として用いた銅張積層板。
【請求項5】
請求項4に記載の銅張積層板の銅層を一部除去して回路パターンを形成してなるプリント配線板。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれかに記載のポリイミドフィルム及び/又はプリント配線板を用いた多層回路基板。

【公開番号】特開2009−138035(P2009−138035A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313051(P2007−313051)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】