説明

ポリウレタン積層体の製造方法及びこの方法により製造されたポリウレタン積層体

【課題】フォームシートとポリウレタンフィルムとを、接着剤を用いることなく、接合させるポリウレタン積層体の製造方法、及びこの方法により製造されたポリウレタン積層体を提供する。
【解決手段】本発明のポリウレタン積層体の製造方法は、イソシアネート末端プレポリマー、及びイソシアネート基に対して過剰となる水を含有するフォーム原料を反応させ、発泡させてなるポリウレタンフォームからなるシートと、一面に支持材が貼着されたポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムとを、シートの一面とフィルムの他面とを対向させて積層し、その後、フィルムの温度が、フィルムが融解する温度より20℃低い温度から20℃高い温度となるように支持材側から加熱し、加圧して、接合させ、次いで、次いで、冷却し、その後、支持材を除去することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン積層体の製造方法及びこの方法により製造されたポリウレタン積層体に関する。更に詳しくは、ポリウレタンフォームシート(以下、「フォームシート」ともいう。)とポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルム(以下、「ポリウレタンフィルム」ともいう。)とを、接着剤を用いることなく、所定温度で加熱し、加圧することにより、十分な強度で接合させることができるポリウレタン積層体の製造方法、及びこの方法により製造され、フォームシートとポリウレタンフィルムとの間の剥離試験をしたときに、材料破壊になるほどに強固に接合されたポリウレタン積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂フォームと樹脂フィルムとを貼り合わせる場合、樹脂フォーム及び/又は樹脂フィルムに溶剤系接着剤又は水系接着剤を塗布し、その後、溶剤又は水を除去し、次いで、塗布面を対向させて積層し、加熱、加圧して接合させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、樹脂フォームと樹脂フィルムとの間にホットメルト系接着剤シートを介装させて積層し、これを加熱し、加圧することにより接合せさる方法が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−48046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、溶剤系接着剤を用いる場合、樹脂フォーム及び/又は樹脂フィルムに接着剤を塗布し、その後、乾燥して溶剤を除去し、この溶剤を回収するという煩雑な工程を必要とする。また、溶剤の回収には特殊な乾燥炉等を設置する必要があり、積層体製造のコストの面でも不利である。更に、トルエン、キシレン等の有機溶剤を用いた溶剤系接着剤は、これらの揮発性有機化合物(VOC)及び環境負荷物質(SOC)に対する近年の厳しい規制という点でも、多量に用いることは好ましくないと考えられる。
【0005】
また、水系接着剤及びホットメルト系接着剤であれば、VOC、SOC規制を考慮する必要はないが、水系接着剤は、通常、相当に多量の水(例えば、50質量%程度)を含有しており、この多量の水を除去するための乾燥炉等を必要とし、工程も煩雑になる。更に、ホットメルト系接着剤でも、VOC、SOC規制を考慮する必要はないが、接着剤を溶融させるためのアプリケータ、及び溶融した接着剤を塗工するための塗工ヘッドなどの特殊な設備が必要である。
【0006】
更に、樹脂フォームと樹脂フィルムとの積層体を医療用途に用いる場合、公的機関、例えば、アメリカ食品医薬品局(FDA)等の認可を取得しなければならないが、樹脂フォーム及び樹脂フィルムの各々の認可が取得されていたとしても、接着剤を用いたときは、この接着剤についても認可を取得しなければならない。この認可申請及び取得には相当の期間と費用とが必要になる。
【0007】
本発明は上記課題を解決するものであり、フォームシートとポリウレタンフィルムとを、接着剤を用いることなく、加熱、加圧により直接接着させることにより、十分な強度で接合させることができ、且つVOC、SOC規制等を考慮する必要もないポリウレタン積層体の製造方法、及びこの方法により製造され、剥離試験をしたときに材料破壊になるほどに強固に接合されており、且つ絆創膏等の医療用途においても用いることができるポリウレタン積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のとおりである。
1.イソシアネート末端プレポリマー、及び該イソシアネート末端プレポリマーが有するイソシアネート基のモル数に対して過剰となるモル数の水を含有するフォーム原料を反応させ、発泡させてなるポリウレタンフォームからなるポリウレタンフォームシートと、一面に支持材が貼着されたポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムとを、該ポリウレタンフォームシートの一面と該ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムの他面とを対向させて積層し、その後、該ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムの温度が、該ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムが融解する温度より20℃低い温度から20℃高い温度となるように該支持材側から加熱し、加圧して、接合させ、次いで、冷却し、その後、該支持材を除去することを特徴とするポリウレタン積層体の製造方法。
2.上記イソシアネート基の上記モル数(M)と、上記水の上記モル数(M)との比(M/M)が、7.0〜350である上記1.に記載のポリウレタン積層体の製造方法。
3.上記ポリウレタンフォームシートから採取した試験片を、23℃の水に1時間浸漬したときの浸漬後重量が浸漬前重量の10〜20倍である上記1.又は2.に記載のポリウレタン積層体の製造方法。
4.ワンショット法により製造され、且つ23℃の水に1時間浸漬したときの浸漬後重量が浸漬前重量の1.5〜5.0倍である吸水性ポリウレタンフォームからなるポリウレタンフォームシートと、一面に支持材が貼着されたポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムとを、該ポリウレタンフォームシートの一面と該ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムの他面とを対向させて積層し、その後、該ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムの温度が、該ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムが融解する温度より20℃低い温度から20℃高い温度となるように該支持材側から加熱し、加圧して、接合させ、次いで、冷却し、その後、該支持材を除去することを特徴とするポリウレタン積層体の製造方法。
5.上記ポリウレタンフォームシートと、上記ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムとを、上下2枚のベルト間に連続的に供給し、該ベルト間に挟持して移送させながら、加熱、加圧し、上記接合を連続的に実施する上記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載のポリウレタン積層体の製造方法。
6.上記ポリウレタンフォームシートの他面側から50〜100℃で加熱する上記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載のポリウレタン積層体の製造方法。
7.上記ポリウレタンフォームシートの他面に、圧縮変形可能な樹脂フォームシートからなるスペーサを積層して、上記加熱と上記加圧をし、上記接合の後、該スペーサを除去する上記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載のポリウレタン積層体の製造方法。
8.上記ポリウレタンフォームシートの厚さが0.5〜2mmであり、上記スペーサの厚さが5〜10mmである上記7.に記載のポリウレタン積層体の製造方法。
9.上記スペーサ側から70〜120℃で加熱する上記7.又は8.に記載のポリウレタン積層体の製造方法。
10.上記1.乃至9.のうちのいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とするポリウレタン積層体。
11.医療用絆創膏の吸血部材として用いられる上記10.に記載のポリウレタン積層体。
【発明の効果】
【0009】
プレポリマー法によるフォームシートと、支持材が貼着されたポリウレタンフィルムとを用いる本発明のポリウレタン積層体の製造方法、及びワンショット法によるフォームシートと、支持材が貼着されたポリウレタンフィルムとを用いる他の本発明のポリウレタン積層体の製造方法によれば、接着剤を用いることなく、簡易な装置及び簡便な操作により、フォームシートとポリウレタンフィルムとを強固に接合させることができ、接合時にVOC等が発生せず、作業環境が汚染されることもない。
また、イソシアネート基のモル数(M)と、水のモル数(M)との比(M/M)が、7.0〜350である場合は、特に絆創膏等の医療用途において有用なポリウレタン積層体を容易に製造することができる。
更に、ポリウレタンフォームシートから採取した試験片を、23℃の水に1時間浸漬したときの浸漬後重量が漬前重量の10〜20倍である場合は、十分な吸水性を有し、特に絆創膏等の医療用途において有用なポリウレタン積層体を容易に製造することができる。
また、フォームシートとポリウレタンフィルムとを、上下2枚のベルト間に連続的に供給し、ベルト間に挟持して移送させながら、加熱、加圧し、接合を連続的に実施する場合は、特に絆創膏等の医療用途において有用なポリウレタン積層体を、連続的に、効率よく製造することができる。
更に、フォームシートの他面側から50〜100℃で加熱する場合は、フォームシートとポリウレタンフィルムとをより安定して接合させることができ、より高品質のポリウレタン積層体を容易に製造することができる。
また、フォームシートの他面に、圧縮変形可能な樹脂フォームシートからなるスペーサを積層して、加熱と加圧をし、接合の後、スペーサを除去する場合は、フォームシートの厚さが十分ではなく、フォームシートとポリウレタンフィルムとの積層品の全面を均等に押圧することができないときでも、スペーサにより全面を均等に押圧することができ、フォームシートとポリウレタンフィルムとが十分な強度で接合されたポリウレタン積層体を製造することができる。
更に、フォームシートの厚さが0.5〜2mmであり、スペーサの厚さが5〜10mmである場合は、スペーサを介装させることによる作用が十分に発揮され、フォームシートが薄いにもかかわらず、フォームシートとポリウレタンフィルムとが十分に強固に接合されたポリウレタン積層体を製造することができる。
また、スペーサ側から70〜120℃で加熱する場合は、スペーサによる伝熱の低下があったとしても、フォームシートとポリウレタンフィルムとをより安定して接合させることができ、より高品質のポリウレタン積層体を容易に製造することができる。
【0010】
本発明のポリウレタン積層体は、十分な吸水性を有し、水又は水溶液を吸収し、併せて保水性も有するため、吸水等を必要とする用途において有用である。また、フォームシートとポリウレタンフィルムとを剥離させたとき、いずれかが破壊されるほどに強固に接合されたポリウレタン積層体とすることができる。更に、製造されたポリウレタン積層体からVOC、SOC等の有害物質が検出されることもない。
また、医療用絆創膏の吸血部材として用いられる場合は、出血した血液等の体液が十分に吸収され、且つ保持されるため、患部が短時間のうちに乾燥してしまうことがなく、より短期間で傷を治癒させることができる。
【0011】
尚、ポリウレタン積層体を医療用途に用いるときは、例えば、FDA等の公的機関の認可が必要であり、認可申請から取得までには相当高額の費用がかかる。しかし、本発明のポリウレタン積層体は接着剤層を有していないため、接着剤層についての認可取得が不要であり、認可申請及び取得のための期間、及びコストといった面でも有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のポリウレタン積層体の製造方法は、イソシアネート末端プレポリマー及び過剰量の水を含有するフォーム原料を反応させ、発泡させてなるポリウレタンフォームからなるフォームシートと、一面に支持材が貼着されたポリウレタンフィルムとを、フォームシートの一面とポリウレタンフィルムの他面とを対向させて積層し、その後、ポリウレタンフィルムの温度が融解温度±20℃となるように支持材側から加熱し、加圧して、接合させ、次いで、冷却し、その後、支持材を除去することを特徴とする。
【0013】
他の本発明のポリウレタン積層体の製造方法は、ワンショット法により製造され、且つ特定の吸水率を有する吸水性ポリウレタンフォームからなるフォームシートと、一面に支持材が貼着されたポリウレタンフィルムとを、フォームシートの一面とポリウレタンフィルムの他面とを対向させて積層し、その後、ポリウレタンフィルムの温度が融解温度±20℃となるように支持材側から加熱し、加圧して、接合させ、次いで、冷却し、その後、支持材を除去することを特徴とする。
【0014】
(1)本発明のポリウレタン積層体の製造方法におけるポリウレタンフォーム
上記「ポリウレタンフォーム」は、イソシアネート末端プレポリマーと過剰な水とを含有するフォーム原料を反応させ、発泡させて製造される。
【0015】
上記「イソシアネート末端プレポリマー」(以下、「プレポリマー」という。)は、ポリオール、ポリイソシアネート化合物及び架橋剤等を混合し、攪拌して製造される。
【0016】
プレポリマーの製造に用いられるポリオールは特に限定されず、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール及びポリカーボネートポリオール等の各種のポリオールを用いることができる。ポリオールとしては、ポリイソシアネート化合物と反応させるときの粘度の調整が容易なポリエーテルポリオールが好ましい。また、官能基数が2〜5、数平均分子量が500〜10000のポリオールが用いられることが多い。ポリオールは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパン等のヒドロキシル基を有する化合物に、プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させた化合物などが挙げられる。また、所定の強度とクッション性とを併せて有するフォームシートとするためには、ポリエーテルポリオールの官能基数が2〜3で、数平均分子量が2000〜5000であることがより好ましい。
【0018】
ポリイソシアネート化合物としては、2,4又は2,6−トルエンジイソシアネート(2,4又は2,6−TDI)、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、TDI及びMDIが用いられることが多い。
【0019】
架橋剤としては、多官能であって、且つイソシアネート基と反応するヒドロキシル基を有する化合物が好ましい。この架橋剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリレン−2,4,6−トリアミン、エチレンジアミン、アミノエタノール、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ヒドラジントリエタノールアミン、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、ニトリロトリ酢酸、クエン酸及び4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)等が挙げられる。これらのうちでは、グリセリン及びトリメチロールプロパン等が用いられることが多い。架橋剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
プレポリマーにおけるイソシアネート基の含有量は特に限定されないが、プレポリマーを100質量%とした場合に、3〜25重量%、特に5〜15質量%の範囲で設計されることが好ましい。
【0021】
フォーム原料に含有される上記「水」は、プレポリマーが有するイソシアネート基のモル数に対して過剰となるモル数であればよい。水の含有量は、イソシアネート基のモル数(M)と、水のモル数(M)との比(M/M)が、7.0〜350となる含有量であることが好ましい。
【0022】
上記「フォーム原料」には、プレポリマー、水の他、触媒、整泡剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤及び充填剤等を、必要に応じて適量配合することができる。
【0023】
また、ポリウレタンフォームは十分な吸水性を有していることが好ましく、フォームシートから採取した試験片を、23℃の水に1時間浸漬したときの浸漬後重量が浸漬前重量の10〜20倍であることが好ましい。
【0024】
(2)他の本発明のポリウレタン積層体の製造方法における吸水性ポリウレタンフォーム
上記「吸水性ポリウレタンフォーム」は、ワンショット法により製造され、且つ23℃の水に1時間浸漬したときの浸漬後重量が浸漬前重量の1.5〜5.0倍である親水性の高いフォームである。
【0025】
吸水性ポリウレタンフォームは、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを、整泡剤、触媒及び発泡剤等の存在下に反応させる、所謂、ワンショット法により製造される。ポリオールとしてはポリエステルポリオールが用いられ、整泡剤としてアニオン系界面活性剤が用いられることが特徴的である。特に、比較的、親水性を有する傾向にあるカルボキシル基を備えるポリエステルポリオールと、水との親和性が高いアニオン系界面活性剤とを併用した場合、この併用に加えて、アニオン系界面活性剤がフォーム表面に移行することにより、十分な親水性を有する吸水性ポリウレタンフォームとすることができる。
【0026】
ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、フタル酸及びセバシン酸等のポリカルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパン等のヒドロキシル基を有する化合物とを反応させることにより生成する縮合系ポリエステルポリオールを用いることができる。その他、ラクトン系ポリエステルポリオール及びポリカーボネート系ポリオール等を用いることもできる。このポリエステルポリオールは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
ポリエステルポリオールとしては、ヒドロキシル基の平均官能基数が2〜3のジエチレングリコールと、アジピン酸との反応生成物であるポリエステルポリオールが好ましい。この特定のポリオールであれば、吸水時に膨潤し難く、且つ十分な強度を有する吸水性ポリウレタンフォームとすることができる。また、この特定のポリオールの数平均分子量は2000〜5000であることがより好ましく、これにより良好なクッション性及び歪特性等を有するフォームとすることができる。
【0028】
ポリイソシアネート化合物としては、前記(1)本発明のポリウレタン積層体の製造方法におけるポリウレタンフォームの製造に用いられるポリイソシアネート化合物と同様の化合物を用いることができ、同様にTDI及びMDIが用いられることが多い。
【0029】
アニオン系界面活性剤は整泡剤として作用する。このアニオン系界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩及びジアルキルスルホコハク酸エステル塩等のスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩等の硫酸エステル塩、並びにアルキルリン酸塩等のリン酸エステル塩等を用いることができる。アニオン系界面活性剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
触媒としては、N,N’,N’−トリメチルアミノエチルピペラジン、トリエチレンジアミン及びジメチルエタノールアミン等の3級アミン、スズオクトエート等の有機金属化合物、酢酸塩、並びにアルカリ金属アルコラート等を用いることができる。触媒は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
発泡剤としては、ポリイソシアネート化合物と反応して二酸化炭素を発生する水の他、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン及びジクロロメタン等の有機溶剤系発泡剤、並びに二酸化炭素等を用いることができる。発泡剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ワンショット法におけるフォーム原料には、ポリエステルポリオール、ポリイソシアネート化合物、整泡剤、触媒及び発泡剤の他、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤及び充填剤等を、必要に応じて適量配合することができる。
【0033】
(3)フォームシート
上記「フォームシート」は、本発明のポリウレタン積層体の製造方法では前記のポリウレタンフォームからなる。また、他の本発明のポリウレタン積層体の製造方法では前記の吸水性ポリウレタンフォームからなる。このフォームシートの厚さは用途等によっても異なり、特に限定されないが、例えば、絆創膏の吸血部材として用いられる場合、1〜10mm、特に1.5〜8.5mm、更に2〜7mmであることが好ましい。
【0034】
(4)ポリウレタンフィルム
上記「ポリウレタンフィルム」は、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなるフィルムであり、長鎖グリコールと−ポリイソシアネート化合物との反応で形成されるソフトセグメントと、短鎖グリコールとポリイソシアネート化合物との反応で形成されるハードセグメントとを有する、直鎖状のマルチブロックコポリマーである。エラストマーの製造には、長鎖グリコール、短鎖グリコール及びポリイソシアネート化合物の他、必要に応じて、架橋剤(鎖延長剤)が用いられる。
【0035】
長鎖グリコールとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体等のエーテル系グリコールが挙げられる。また、短鎖グリコールとしては、通常、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、並びにハイドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル等の芳香族グリコールが用いられる。長鎖グリコール及び短鎖グリコールは、それぞれ1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
更に、ポリイソシアネート化合物としては、MDI、2,4−TDI及び2,6−TDI等が用いられる。また、架橋剤(鎖延長剤)としては、多官能ポリオールである、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、及びこれらの多官能ポリオールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させたものなどが用いられる。架橋剤(鎖延長剤)は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
(5)支持材
ポリウレタンフィルムの一面には、上記「支持材」が貼着されている。
支持材の材質は、フォームシートとポリウレタンフィルムとを積層し、加熱し、加圧するときに、溶融したり、破損したりすることがなければよく、特に限定されない。この支持材としては、樹脂がラミネートされた紙からなる離型紙、並びに延伸ポリプロピレンフィルム及び延伸ポリエステルフィルム等の延伸樹脂フィルムからなる離型フィルムなどを用いることができる。
【0038】
支持材は、ポリウレタン積層体の製造時、ポリウレタンフィルムの劣化を抑え、傷付き等を防止し、高品質のポリウレタン積層体を製造するため貼着されるものであり、ポリウレタン積層体の製造後、剥離され、除去される。このように、ポリウレタン積層体は、フォームシートの一面とポリウレタンフィルムの他面とが接合されてなる2層の積層体となる。
【0039】
(7)フォームシートとポリウレタンフィルムとの接合
フォームシートの一面とポリウレタンフィルムの他面とを対向させて積層し、支持材側から、加熱し、加圧して、フォームシートとポリウレタンフィルムとを接合させる。上記「加熱」の温度は、ポリウレタンフィルムの温度が、ポリウレタンフィルムが融解する温度より20℃低い温度から20℃高い温度となるように調整される。
【0040】
加熱温度は、ポリウレタンフィルムが融解する温度より、20℃低い温度から15℃高い温度とすることができ、15℃低い温度から10℃高い温度、特に10℃低い温度から5℃高い温度に調整することが好ましい。加熱温度が過度に低いときは、十分な強度で接合させることができず、過度に高いときは、ポリウレタンフィルムが軟化し、表面にフォームシートのセルによる凹凸模様が生じることがある。
【0041】
フォームシートとポリウレタンフィルムとの接合に用いる装置は、これらを十分な強度で接合させることができ、且つ優れた外観等を有する高品質のポリウレタン積層体を製造することができればよく、特に限定されない。この装置としては、例えば、プレス装置が挙げられ、一方のプレス板が、ポリウレタンフィルムが前記の温度となるように調温されたプレス装置の2枚のプレス板の間に、フォームシートとポリウレタンフィルムとの積層品を載置し、2枚のプレス板を所定の間隔とし、所要時間、加熱し、加圧することにより、接合させることができる。
【0042】
また、この装置としては、フォームシートとポリウレタンフィルムとを、所定間隔に設定された上下2枚の回動するベルト間に供給し、ベルト間に挟持して移送させながら、加熱、加圧し、接合させるラミネーション装置を用いることができる。この装置では、フォームシートと、支持材が貼着されたポリウレタンフィルムとの積層品を、炉内を移動するベルト間に挟持して移送させ、これを支持材側、通常、炉内の上方、に設けられた遠赤外線ヒータ等の加熱源により加熱し、接合させることができる。この装置の場合、フォームシートとポリウレタンフィルムとを連続的に供給し、加熱、加圧して接合することができ、ポリウレタン積層体を効率よく、且つ連続的に製造することができる。
【0043】
フォームシートとポリウレタンフィルムとの積層品は、ポリウレタンフィルムに貼着された支持材の側から加熱すればよいが、この加熱と併せて、フォームシートの他面側から加熱してもよい。この加熱により、ポリウレタンフィルムを容易に所定温度に加熱することができ、フォームシートとポリウレタンフィルムとを全面に渡って、より十分に、且つ均等に加熱することができ、より均質なポリウレタン積層体を製造することができる。この加熱温度は特に限定されないが、50〜100℃、特に60〜80℃とすることが好ましい。
【0044】
フォームシートとポリウレタンフィルムとは、加熱するばかりでなく、加圧して接合させる必要があり、上記「加圧」によって、全面に渡って、より十分に、且つ均等に接合させることができる。加圧条件は特に限定されないが、加圧により変形、即ち、圧縮されたフォームシートの厚さ(T)と、加圧されないときの厚さ(T)との比(T/T)が0.4〜0.8、特に0.5〜0.7となるように加圧することが好ましい。
【0045】
フォームシートとポリウレタンフィルムとは、加熱、加圧されて接合された後、冷却される。上記「冷却」の方法は特に限定されず、雰囲気温度において放冷してもよく、強制的に冷却してもよい。強制冷却する場合、その方法は特に限定されず、冷却ロール間を通過させる、冷却速度が制御された冷却槽を用いる、等の各種の方法が挙げられる。
【0046】
また、フォームシートが薄いときは、プレス装置及びラミネーション装置等のいずれの装置であっても、フォームシートとポリウレタンフィルムとの積層品を全面に渡って十分に、且つ均等に加圧することは容易ではない。その場合は、フォームシートの他面に、圧縮変形可能な樹脂フォームシートからなるスペーサを積層して、加熱、加圧をし、接合させた後、スペーサを除去して、ポリウレタン積層体を製造することもできる。スペーサは、圧縮後、十分に回復する弾性を有し、加熱しても変形し難い樹脂フォームであれば、制限なく使用することができ、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等のポリオレフィンフォームなどからなるシートを用いることができる。
【0047】
スペーサを用いる必要があるフォームシートの厚さは特に限定されないが、フォームシートの厚さが2mm以下、特に0.5〜2mmであるときは、スペーサを用いることが好ましい。更に、スペーサの厚さも特に限定されないが、加熱条件等の成形条件に影響を与えない厚さとすることが好ましく、スペーサの厚さはフォームシートの厚さに対して5〜20倍の厚さで設計されることがより好ましい。
【0048】
スペーサを用いたときも、ポリウレタンフィルムに貼着された支持材の側からの加熱と併せて、フォームシートの他面側、即ち、スペーサ側から加熱してもよい。このスペーサ側からの加熱は、加熱源とポリウレタンフォームとの間にスペーサが介在するため、スペーサを用いない場合と比べて高温にすることが好ましく、この加熱温度は、70〜120℃、特に80〜100℃とすることが好ましい。
【0049】
(8)ポリウレタン積層体
本発明のポリウレタン積層体は、本発明の方法により製造され、フォームシートとポリウレタンフィルムとの剥離試験をしたときに、いずれかが破壊するほどに強固に接合されている。また、十分な吸水性を有し、水又は水溶液を吸収し、併せて保水性も有するため、吸水等を必要とする用途において有用である。例えば、医療用絆創膏の吸血部材として用いることができ、この場合、出血した血液等の体液が十分に吸収され、且つ保水性を有することにより、患部が短時間のうちに乾燥してしまうことがないため、より短期間で傷を治癒させることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
実施例1〜4及び比較例1〜2
幅300mm、長さ2000mm、厚さ5mmのエーテル系ポリウレタンフォーム(イノアックコーポレーション社製、商品名「レンデル」、吸水倍率;15倍、密度;100kg/m)からなるフォームシートと、表1に記載の物性を有し、一面に支持材(ポリプロピレンがラミネートされた離型紙)が貼着され、幅350mm、長さ2050mm、厚さ30μmのシーダム社製のエーテル系ポリウレタンフィルム(実施例1〜4)及びエステル系ポリウレタンフィルム(比較例1〜2)とを、MAYER社製のラミネーション装置を用いて接合させた。
【0051】
フォームシートとポリウレタンフィルムとを、装置の上下のベルト間に速度4m/分で連続的に供給し、炉内の天井面に取り付けられた遠赤外線ヒータにより、支持材側からポリウレタンフィルムが表1に記載の温度となるように加熱し、フォームシートとポリウレタンフィルムとを接合させた。
尚、ベルト間の間隙は3mmとし、フォームシート側から70〜90℃で加熱し、接合させた。
上記のようにして接合させたフォームシートとポリウレタンフィルムとの接合状況を目視で観察し、また、支持材から離型紙を剥離させて剥離性を評価した。
結果は表1のとおりである。
【0052】
【表1】

【0053】
表1の結果によれば、エーテル系ポリウレタンフィルムを使用し、加熱温度が融解温度を10℃上回る実施例1では、フォームシートとポリウレタンフィルムとは強固に接合しており、離型紙は容易に剥離することができた。また、加熱温度が融解温度を20℃上回る実施例2では、接合には全く問題なかったが、加熱温度が高いためか、離型紙の剥離性が少し低下した。更に、物性は異なるものの、エーテル系ポリウレタンフィルムを使用し、融解温度を20℃下回る温度で加熱した実施例3、及び融解温度を10℃上回る温度で加熱した実施例4でも、接合及び離型紙の剥離ともに良好な結果であった。
【0054】
一方、エステル系ポリウレタンフィルムを使用し、加熱温度が融解温度を25℃下回る比較例1では、接合が十分ではなかった。また、加熱温度が融解温度を15℃下回る比較例2では、融解温度と加熱温度との差は、エーテル系ポリウレタンフィルムであれば、接合及び離型紙の剥離性ともに問題のない温度差であるにもかかわらず、離型紙を剥離することができなかった。
【0055】
実験例1
実施例1のポリウレタン積層体を医療用絆創膏の緩衝層として用いたときの吸血性及び血液等の体液の保持性を評価するため、ポリウレタン積層体のフォームシート側に、スポイドにより生理食塩水を2ミリリットル滴下した。その結果、生理食塩水は約5秒でフォームシートに吸収され、反対面、即ち、ポリウレタンフィルムの表面側にまで透過することはなかった。これにより、絆創膏として用いたときに、血液が十分に吸収され、且つこの血液等の体液がフォームシートに保持されて患部の乾燥が抑えられ、優れた治癒性を有する絆創膏とすることができると推察される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート末端プレポリマー、及び該イソシアネート末端プレポリマーが有するイソシアネート基のモル数に対して過剰となるモル数の水を含有するフォーム原料を反応させ、発泡させてなるポリウレタンフォームからなるポリウレタンフォームシートと、一面に支持材が貼着されたポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムとを、該ポリウレタンフォームシートの一面と該ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムの他面とを対向させて積層し、その後、該ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムの温度が、該ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムが融解する温度より20℃低い温度から20℃高い温度となるように該支持材側から加熱し、加圧して、接合させ、次いで、冷却し、その後、該支持材を除去することを特徴とするポリウレタン積層体の製造方法。
【請求項2】
上記イソシアネート基の上記モル数(M)と、上記水の上記モル数(M)との比(M/M)が、7.0〜350である請求項1に記載のポリウレタン積層体の製造方法。
【請求項3】
上記ポリウレタンフォームシートから採取した試験片を、23℃の水に1時間浸漬したときの浸漬後重量が浸漬前重量の10〜20倍である請求項1又は2に記載のポリウレタン積層体の製造方法。
【請求項4】
ワンショット法により製造され、且つ23℃の水に1時間浸漬したときの浸漬後重量が浸漬前重量の1.5〜5.0倍である吸水性ポリウレタンフォームからなるポリウレタンフォームシートと、一面に支持材が貼着されたポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムとを、該ポリウレタンフォームシートの一面と該ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムの他面とを対向させて積層し、その後、該ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムの温度が、該ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムが融解する温度より20℃低い温度から20℃高い温度となるように該支持材側から加熱し、加圧して、接合させ、次いで、冷却し、その後、該支持材を除去することを特徴とするポリウレタン積層体の製造方法。
【請求項5】
上記ポリウレタンフォームシートと、上記ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンフィルムとを、上下2枚のベルト間に連続的に供給し、該ベルト間に挟持して移送させながら、加熱、加圧し、上記接合を連続的に実施する請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載のポリウレタン積層体の製造方法。
【請求項6】
上記ポリウレタンフォームシートの他面側から50〜100℃で加熱する請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載のポリウレタン積層体の製造方法。
【請求項7】
上記ポリウレタンフォームシートの他面に、圧縮変形可能な樹脂フォームシートからなるスペーサを積層して、上記加熱と上記加圧をし、上記接合の後、該スペーサを除去する請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載のポリウレタン積層体の製造方法。
【請求項8】
上記ポリウレタンフォームシートの厚さが0.5〜2mmであり、上記スペーサの厚さが5〜10mmである請求項7に記載のポリウレタン積層体の製造方法。
【請求項9】
上記スペーサ側から70〜120℃で加熱する請求項7又は8に記載のポリウレタン積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちのいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とするポリウレタン積層体。
【請求項11】
医療用絆創膏の吸血部材として用いられる請求項10に記載のポリウレタン積層体。

【公開番号】特開2009−154395(P2009−154395A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335198(P2007−335198)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】