説明

ポリガンマグルタミン酸−ビタミン複合体及びその用途

本発明は、ポリガンマグルタミン酸(poly-gamma-glutamic acid:PGA)を含有するPGA−ビタミン複合体、及び前記PGA−ビタミン複合体を含むビタミン製剤または化粧料組成物に関する。本発明によるPGA−ビタミン複合体は、優れた吸湿性、保湿性及び皮膚適合性を有するポリガンマグルタミン酸とビタミンの複合体であって、生体新陳代謝の促進、抗酸化効果、細胞壁の保護、免疫力の増進、皮膚乾燥及び角化防止、皺防止、並びに皮膚保湿などの様々な作用をするビタミンの安定性を向上させるだけでなく、徐放性効果も持っているので、多様な用途の化粧料組成物及び徐放性ビタミン製剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリガンマグルタミン酸(poly-gamma-glutamic acid:PGA)を含有するPGA−ビタミン複合体、及び前記PGA−ビタミン複合体を含むビタミン製剤または化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品原料物質の最も代表的なものとしてビタミンが挙げられるが、ビタミンは、少量でも皮膚の代謝機能と生理機能を正常化させ、ビタミン欠乏による皮膚疾患を予防する。ビタミンは、生体新陳代謝の促進、抗酸化効果、細胞壁の保護、免疫力の増進、感染抵抗力の上昇といった機能などを持つ生体内必須物質であって、生合成が不可能で飲食物から摂取するしかなく、足りない場合には様々な欠乏症を起こす原因となる。また、ビタミンは、皮膚美容及び治療においては、色素沈着防止、コラーゲン合成の促進、UVカット、皮膚乾燥及び角化防止、皺防止、皮膚保湿など、健康な皮膚の維持に非常に重要な役割を行う物質である。
【0003】
ビタミンには、レチノール(retinol、ビタミンA)、アスコルビン酸(ascorbic acid、ビタミンC)、トコフェロール(tocopherol、ビタミンE)、ビタミンD及びこれらの誘導体などが含まれる。ビタミンCは、アスコルビン酸と呼ばれることもあり、人間の体内では合成できない必須栄養素の一つである。ビタミンCは、コラーゲン(collagen)形成の基本物質であって組織の成長と保守に必要であり、骨折の治療にも必須成分である。歯肉を丈夫にし、副腎機能を良くし、鉄分の吸収を良くする。また、抗酸化作用を持っているため、人体内の酸化型物質を還元型に戻して酸化を防止する。ビタミンC自体は、容易に酸化して分解され、また水溶性であって容易に皮膚に吸収されないから、ビタミンCの安定性を高め且つ皮膚吸収を促進するために、主にエステルタイプのビタミンCパルミテート(vitamin C palmitate)を使用する。
【0004】
ビタミンDは、一般に、佝僂病の予防及び治療に使われる化合物として知られており、これには主にエルゴカルシフェロール(ergocalciferol;ビタミンD)とコレカルシフェロール(cholecalciferol;ビタミンD)がある。エルゴカルシフェロールは、植物ステロイドエルゴステロール(ergosterol)から誘導され、一般にビタミンD食品強化剤として用いられる。開環(Ring-opening)されたseco−ステロイド形態であるコレカルシフェロールは、皮膚から生成されるビタミンDの形であって、皮下にある7−ジヒドロコレステロール(7-dehydrocholesterol)から光(radiation)によって生成されるが、これは名前からみてコレステロール及びカルシウムに関連していることが分かる。このように、ビタミンDは、体内で作られるので、伝統的な意味のビタミンではなく、かつ、体内で代謝される過程で例えばステロイドホルモンなどの生理活性物質に変わるため、プロホルモン(prohormone)に分類することもできる。伝統的に知られているビタミンDの主要機能としては、カルシトニン及びパラトロイドホルモン(PTH)と共にカルシウムとリンの吸収及び骨の形成に関与し、最近では再生(reproduction)、免疫効果(immune effect)、遺伝子制御(gene regulation)などに関する機能が関心の対象となっている。
【0005】
ビタミンの他にも化粧品用原料物質として重要なものには、皮膚の美白機能をするコウジ酸、皺防止機能をするインドール酢酸、皮膚角質除去と新陳代謝作用を助ける乳酸、クエン酸、サリチル酸などの各種化粧品原料物質が知られている。
【0006】
ところが、その利用方法には実際多くの困難さと制約があるが、化粧品原料物質の大部分は、物質自体の安定性、皮膚刺激、毒性、徐放性、分散性などの問題により機能や効能を十分示すことができない。ビタミンの場合、物理化学的に非常に不安定であり、熱、光、湿気、酸素、アルカリ等によって容易に破壊されるため、その機能及び効能が低下したり変色または変臭が発生したりするという問題点がある。したがって、化粧品用原料物質の安定化、皮膚刺激または毒性の軽減などのための剤形技術の開発に多くの研究が報告されている(韓国特許出願公開第2000−0048451号、韓国特許出願公開第2000−0069893号、韓国特許出願公開第1999−0070885号)。
【0007】
PGAは、D,L−グルタミン酸がγ−グルタミル(γ-glutamyl)に結合した重合体であって、粘液性物質である。PGAは、稲わらを用いた韓国の伝統豆発酵食品であるチョングッチャン、日本の伝統豆発酵食品である納豆、ネパールの伝統豆発酵食品であるキネマなどから分離したバシラス属菌株から生産される。バシラス属菌株から生産されるPGAは、食用、水溶性、陰イオン性、生分解性高分子物質であって、吸湿剤、保湿剤及び化粧品の原料物質としての利用が可能である。最近、PGAの生産と利用に関して難分解性重合体の代替商品素材、エステル化反応による耐熱性プラスチックの開発、水溶性繊維及び膜の生産などに関する研究が先進国を中心として盛んに行われている。
【0008】
また、PGAにガンマ線照射の際に引き起こされる物性変化の研究及び架橋結合剤によるヒドロゲル(Hydrogel)の開発及び産業化研究が推進されている。ヒドロゲルは、バシラスサブチリスチョングッチャンが発酵生産する再生産可能なバイオポリマーであるPGAを原料として、分子間或いは同一分子内に架橋結合させて合成した吸収性、生分解性及び可塑性を特徴とする素材である。架橋法には、ガンマ線や電子線などの放射線の照射またはエポキシ樹脂などを用いた化学架橋剤処理方法などがある。水溶液に放射線を照射すると、PGAの分子間に架橋反応が起こり、吸収性、生分解性及び可塑性を特徴とするPGA樹脂が得られる。
【0009】
PGAの組成、PGAの生産に及ぼすマンガンイオンの影響、超音波分解による水溶性重合体への利用に関する研究、及びエステル誘導体の合成による低水溶性プラスチックの開発に関する研究(Biosci, Biotechnol., Biochem., 60(8):1239-1242, 1996)とバシラスサブチリスによるPGAの生産及びカルシウム溶解剤としての骨粗鬆症治療効果を持った健康食品としての活用(特開平6−32742号)などが報告されている。
【0010】
この他にも、水系のリン含量を減少させて水質汚染を減少させる効果(欧州特許第838160号)、放射線照射による高ゲル化性、吸収性を持った生分解性吸着性樹脂を製造してオムツなどの衛生用品、食品、園芸産業への応用(特開平10−251402号)及び活用(特開平7−300522号、特開平6−322358号)などに関する報告がある。また、PGAの溶解、沈殿及び乾燥による固形化生分解性繊維またはフィルム及びフィルム成形体への利用(特開平7−138364号、特開平5−117388号)、薬物担体用ポリマー(特開平6−92870号、特開平6−256220号)などに関する報告もある。
【0011】
一方、韓国では、PGAの効率的な生産(韓国特許出願番号第1997−0003404号、韓国特許出願番号第1997−0067605号)や物性改善などの基礎研究と、高濃度PGAの生産方法(韓国特許出願番号第2001−0106025号)などがあり、高分子量のPGAを生産する耐塩性菌株としてのバシラスサブチリスチョングッチャン菌株に関しても報告されている(韓国特許出願番号第2001−0001481号)。
【0012】
本発明者らは、従来から医薬及び化粧品に広範囲に用いられているビタミンまたはその誘導体の安定性を高められる物質を開発しようと努力した結果、例えばビタミンの安定性、皮膚刺激及び毒性、徐放性などの問題点を著しく改善させ、優れた吸湿性、保湿性及び皮膚適合性を持つPGA−ビタミン複合体を製造することにより、本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
【0013】
本発明の主な目的は、PGA−ビタミン複合体及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、前記PGA−ビタミン複合体を有効成分として含有するビタミン製剤及び化粧料組成物を提供することにある。
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、PGAのカルボキシル基にビタミンの水酸基がエステル結合によって連結されているPGA−ビタミン複合体を提供する。
【0016】
本発明において、前記ビタミンは、水溶性ビタミンC、脂溶性ビタミンDまたはこれらの誘導体を含み、水溶性ビタミンCの誘導体は、エチルアスコルビルエーテル(ethylascorbyl ether)、マグネシウムアスコルビルホスフェート(magnesium ascorbyl phosphate)、アスコルビン酸2−グルコシド(ascorbic acid 2-glucoside)、アラントインアスコルベート(allantoin ascorbate)を含み、脂溶性ビタミンDの誘導体はエルゴカルシフェロール(ergocalciferol;ビタミンD)、コレカルシフェロール(cholecalciferol;ビタミンD)を含む。
【0017】
本発明は、また、下記構造式Iで表わされるPGA−水溶性ビタミンC複合体を提供する。
【0018】
《構造式I》
【化1】

【0019】
本発明は、また、下記構造式IIで表わされるPGA−脂溶性ビタミンD(またはその誘導体)複合体を提供する:
【0020】
《構造式II》
【化2】

【0021】
ここで、Bは

または

である。
【0022】
本発明は、また、PGAと脂溶性ビタミンD(またはその誘導体)がリンカーを介して連結されていることを特徴とする、下記構造式IIIで表わされるPGA−脂溶性ビタミンD(またはその誘導体)複合体を提供する:
【0023】
《構造式III》
【化3】

【0024】
ここで、Bは

または

である。
【0025】
本発明において、前記リンカーは、HN−R−NH、HN−R−SH、HN−R−OH、HN−R−CHO、HS−R−SHまたはHO−R−OHであることを特徴とすることができる。ここで、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立にC1−20の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基または芳香族有機基である。
【0026】
本発明は、また、PGAのカルボキシル基とビタミンの水酸基をエステル結合によって連結することを含む、PGA−ビタミン複合体の製造方法を提供する。
【0027】
本発明において、前記PGAは、バシラスサブチリス(Bacillus subtilis)菌株から製造されたものであることを特徴とする。
【0028】
本発明は、また、前記PGA−ビタミン複合体を有効成分として含有するビタミン製剤及び食品を提供する。
【0029】
本発明は、また、前記PGA−ビタミンC複合体を有効成分として含有する飲料を提供する。
【0030】
本発明は、また、前記PGA−ビタミン複合体を有効成分として含有する皮膚適合性、保湿力及び/または吸湿力の改善のための化粧料組成物を提供する。
【0031】
本発明の組成物において、PGA−ビタミン複合体は、組成物の総重量に対して0.01〜60重量%、好ましくは0.1〜50重量%で含有することを特徴とする。
【0032】
本発明の化粧料組成物は、一般皮膚化粧料に配合される成分、例えば油分、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、色素、防腐剤、香料などを必要分だけ適用配合することが可能である。
【0033】
本発明のPGA含有ビタミン複合体を含む化粧料組成物は、保湿用化粧品、洗顔剤、ボディ用化粧品などに様々に利用できる。
【0034】
本組成物を添加することが可能な製品としては、例えば収斂化粧水、柔軟化粧水、栄養化粧水、各種クリーム、エッセンス、パック、ファウンデーションなどの化粧品類、クレンジング、洗顔剤、石鹸、トリートメント、美容液などがある。
【0035】
本発明の化粧料の具体例としては、スキンローション、スキンソフナー、スキントナー、アストリンジェント、ローション、ミルクローション、モイスチャーローション、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、エッセンス、栄養エッセンス、パック、石鹸、シャンプー、クレンジングフォーム、クレンジンロージョン、クレンジングクリーム、ボディローション、ボディクレンザー、乳液、プレスパウダー、ルースパウダー、アイシャドウなどが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ビタミンD(エルゴカルシフェロール)の化学構造式を示す。
【図2】ビタミンD(コレカルシフェロール)の化学構造式を示す。
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を一層詳細に説明する。但し、これらの実施例は単に本発明を例示するためのものである。本発明の範囲がこれらの実施例に制限されると解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者には自明であろう。
【0038】
実施例1:PGA(poly-γ-glutamic acid)の製造
PGA生産用基本培地(5%のL−グルタミン酸が添加されたGS培地:グルコース5%、(NHSO1%、KHPO0.27%、NaHPO・12HO0.42%、NaCl0.05%、MgSO・7HO0.3%、ビタミン溶液1mL/L、pH6.8)3Lが入っている5Lサイズの発酵器に、バシラスサブチリスチョングッチャン(Basillus subtilis var chungkookjang、KCTC 0697BP)菌株の培養液を1%接種し、その後攪拌速度は150rpm、空気注入速度は1vvmにして37℃で72時間培養した後、2N硫酸溶液を加えてpHが3.0となるように調節し、PGA含有試料液を得た。
【0039】
前記のPGA含有試料液を4℃で10時間静置させて発酵液内の多糖類を除去した後、ここにエタノールを発酵液の2倍体積となるように加えて十分混合した。混合液を4℃で10時間静置させた後、遠心分離してPGA沈殿物を得た。得られた沈殿物に蒸留水を加えて溶解させ、タンパク質分解酵素を100μg/mLとなるように加えて37℃の恒温器で6時間静置反応させ、PGA試料に存在する細胞外タンパク質を分解させた。これを十分な量の蒸留水で透析し、遊離されたグルタミン酸を除去した後、濃縮して純粋なPGAを得た。
【0040】
実施例2:PGAと水溶性ビタミンC複合体の製造
前記実施例1で生産されたPGA0.65gをアルゴン(または窒素)条件の下で乾燥した試験管に仕込んでDMSO6.5mLで溶解させた。室温で混合物を攪拌すると、数時間内に透明な液体が得られるが、得られた透明な液体に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライド(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride)0.58gと活性化剤としてのN−ヒドロキシスクシニミド(N-hydroxysuccinimide)0.23gを加えて、室温で攪拌した。6時間後、水溶性ビタミンC0.030gが溶解されたDMSO溶液1mLを加えてゲルを形成させた後、形成されたゲルを多量の水中に浸漬し、数回にわたって水を交換した後、凍結乾燥させて水溶性の粉末状PGAと水溶性ビタミンCの複合体を得た。前記のPGAと水溶性ビタミンCの反応を下記反応式1で示した。
【0041】
反応式1
【化4】

【0042】
前記と同様の方法を行い、PGAとエチルアスコルビルエーテル、マグネシウムアスコルビルホスフェート、アスコルビン酸2−グルコシドまたはアラントインアスコルベートなどのビタミンC誘導体の複合体を製造することができる。
【0043】
実施例3:PGAと脂溶性ビタミンD複合体の製造
脂溶性ビタミンDは、伝統的なステロイドと比較するとき、構造的に類似であるが、一般なステロイド化合物とは異なり、9、10番の炭素結合が破れることにより、コンジュゲート(conjugate)されたトリエン(triene)骨格をしている。また、10番〜19番炭素の二重結合が平面から60°程度ずれている。その結果、A環は2つの可能な椅子型構造で存在することができ、これにより硬直(rigid)されたCD−環と側鎖が拡張されている。このような構造的流動性(conformational mobility)は、他のステロイドホルモンでは見られず、seco−ステロイドである脂溶性ビタミンD分子でのみ唯一に見られる。B環の9、10番の炭素結合が切れることにより、A環が「フリー(free)」になるが、このため、A環の置換基は垂直(axial)と水平(equatorial)の位置に変化できる(図1及び図2)。これに関連し、ビタミンDの受容体が他のステロイドの受容体と全く一致しないなど他のステロイドとは性質が異なることを示すが、これは環の流動性が欠如しているいずれのステロイドとは異なり、seco−Bステロイドの独特な性質であるA環の構造的流動性に起因するものと説明されている。下記反応式2に示すように、前記実施例1で生産されたPGAと脂溶性ビタミンDのA環に、DMSO溶媒、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライド及びN−ヒドロキシスクシニミドを用い、カップリング反応を行い、PGAと脂溶性ビタミンD(またはその誘導体)の複合体を得た。リンカーとしては、エチレンジアミン(ethylene diamine)またはエチレングリコール(ethylene glycol)を使用した。
【0044】
反応式2
【化5】

【0045】
実施例4:PGA−ビタミン複合体の徐放性効果
前記実施例2および3で製造されたPGA−ビタミン複合体が腸内吸収に徐放性を持つかを、本発明者による韓国特許出願第2003−0046898に記載の方法によって下記のように行った。
【0046】
すなわち、30匹の4週齢雄BALB/cマウスを用いて、適正の温度と12時間明暗周期が調節されるマウスケージで基本飼料と蒸留水を与えて飼育した。PGA−ビタミン複合体を経口投与してから1時間、1.5時間、2時間後にエーテルで麻酔し、十二指腸から回腸までの全体小腸をマウスの腹部から取った後、小腸を上、下の2部分に分けて冷生理食塩水で内容物を洗い出した。その後、小腸組織を適正な冷生理食塩水を加え、ホモジナイザで均質化した。均質化された小腸組織を4℃で20分間8000gで遠心分離した後、各分画の可溶性部分と非可溶性沈殿物を分離して−20℃に保管しながら、含有されたビタミンをHPLCで分析した。
【0047】
実験の結果、ビタミンの腸内吸収率は時間経過に伴って増加し、これより本発明のPGA−ビタミン複合体は有意的な徐放性を持つことが確認できた。
【0048】
実施例5:PGA−ビタミン複合体のビタミン安定性向上効果
前記実施例2および3から得たPGA−ビタミン複合体の化粧料剤形におけるビタミン安定性向上効果を試験するために、下記のとおりに実験した。
【0049】
5−1:温度変化による安定性の試験
下記剤形例2で剤形されたPGA−ビタミン複合体を含有するローションを実験群とし、PGA−ビタミン複合体の代わりにビタミンのみを含有するローションを対照群として、対照群と実験群を、45℃に一定に維持される恒温槽で不透明硝子容器に入れて1週間保管した。また、4℃に一定に維持される、完全に遮光された冷蔵庫内で不透明硝子容器に入れて1週間保管した後、変色程度(変色評価基準−0:変化なし、1:極めて少し変わる、2:少し変わる、3:やや激しく変わる、4:激しく変わる、5:極めて激しく変わる)を比較測定した。
【0050】
実験の結果、本発明のPGA−ビタミン複合体を含有するローションは、殆ど変色しないため、ビタミンの安定化に非常に効果的であることが確認できた(表1)。
【0051】
【表1】

【0052】
5−2:時間経過による安定性の試験
下記剤形例2で剤形されたPGA−ビタミン複合体を含有するローションを実験群とし、PGA−ビタミン複合体の代わりにビタミンのみを含有するローションを対照群として、対照群と実験群を、20℃に一定に維持される恒温槽で不透明硝子容器に入れて9週間保管した後、ビタミンの量を測定した。
【0053】
実験の結果、本発明のPGA−ビタミン複合体を含有するローションは、6週程度まではビタミンの含量がほとんど変わらないことからみて、ビタミンの安定化に非常に効果的であることが確認できた(表2)
【0054】
【表2】

【0055】
実施例6:PGA−ビタミン複合体の保湿力の測定
下記剤形例3で剤形されたPGA−ビタミン複合体を含有するエッセンスと比較剤形例3の保湿能力を評価した。水分保有能の測定は、水分測定器(Corneomter、GmbII、Germany)を用いて皮膚表面の電気伝導度を測定することによりなされた。測定温度は25℃とし、40%相対湿度が保たれる恒温恒湿室で皮膚16cm当り0.05gの試料を塗布してから30分後、2時間後の水分損失量を測定した。この際、被試験者を20名にして3回測定した。
【0056】
実験結果、本発明のPGA−ビタミン複合体を含有する組成物がPGA−ビタミン複合体を含有していない組成物に比べて水分保有能に優れることが確認できた(表3)。
【0057】
【表3】

−試料塗布前の平均値は約60であり、3回の測定値を平均して示す。
【0058】
実施例7:皮膚安全性の試験
PGA−ビタミン複合体を含有する化粧料組成物の皮膚安全性を測定した。具体的に、被検者30名(平均年齢25歳、年齢分布19〜40歳)をA、Bの2グループに分け、Aグループには本発明の化粧料組成物を、Bグループには比較剤形例の化粧料組成物をHaye’s Test Chamberを用いて皮膚貼布試験(Patch Test)を行った。この際、乾癬、湿疹などの皮膚病変保有者、妊娠婦、授乳婦、または抗ヒスタミン剤などを服用している人は実験で除外した。実験部位を70%エタノールで洗浄し、乾燥させた後、AグループおよびBグループのチャンバーににそれぞれ試料を15μgずつ滴下させ、しかる後に、実験部位である上膊部位にのせて固定させた。貼布は24時間塗布し、貼布を除去した後には、マーキングペンで実験部位を表示してそれぞれ24時間、48時間および72時間後に実験部位を観察し、判定は国際接触皮膚炎研究会(International Contact Dermatitis Research Group;ICDRG)の規定に基づいて判定した(表4)
【0059】
【表4】

【0060】
実験結果、本発明のPGA−ビタミン複合体を含有する組成物は、平均刺激程度が0であって、皮膚に刺激がない安全な化粧料であることが分かった。これより、本発明のPGA−ビタミン複合体が高度の皮膚適合性を持つことが確認できた(表5)
【0061】
【表5】

【0062】
以下、本発明の剤形例として柔軟化粧水(スキン)、ローション、エッセンス、洗顔剤(クレンジングフォーム)及びシャンプーを例示しているが、本発明の化粧料組成物を含む剤形はこれに限定されるものではない。
【0063】
剤形例1:柔軟化粧水(スキン)
精製水にブチレングリコール、グリセリン、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ベタイン、クエン酸、クエン酸ナトリウム及び防腐剤を添加して攪拌し、溶解させた後、エタノールに溶解した香料の混合物を添加した。ここにPGA含有ビタミン複合体を加えて十分攪拌した後、熟成させてPGA−ビタミン複合体含有柔軟化粧水を製造した。下記表6に各成分の含量を示した。
【0064】
【表6】

【0065】
剤形例2:ローション(エマルジョン)
前記実施例で得たPGA含有ビタミン複合体、ブチレングリコール、グリセリン、カルボキシビニルポリマー、アルギニン、防腐剤及び精製水を70〜75℃で攪拌しながら加熱した。ここに75〜80℃で攪拌して加熱させたスクアレン、ブチレングリコールジカプリレート/ジカプレート、ソルビタンステアレート、ポリソルベート60、グリセリルステアレート及びステアリルグリセレティネート混合物を加えて乳化させた後、攪拌しながら45℃程度に冷却されると、香料を添加して攪拌し、30℃まで冷却した後、熟成させてPGA−ビタミン複合体含有ローションを製造した。下記表7に各成分の含量を示した。
【0066】
【表7】

【0067】
剤形例3:エッセンス
シトステロール、ポリグリセリル2−オレート、セラミド、セテアレス−4及びコレステロールを攪拌して混合した後、PGA−ビタミン複合体、ジセチルホスフェート、濃グリセリン及び精製水混合溶液を添加して乳化させた後、攪拌しながら45℃に冷却されると、香料を添加して攪拌し、30℃まで冷却させて熟成させた。ここにカルボキシビニルポリマー、キサンタンガム及び防腐剤を添加して安定化させた後、熟成させてPGA−ビタミン複合体含有エッセンスを製造した。下記表8に各成分の含量を示した。
【0068】
【表8】

【0069】
剤形例4:洗顔剤(クレンジングフォーム)
精製水にN−アシルグルタミン酸ナトリウム、グリセリン、PEG−400及びプロピレングリコールを添加して混合した後、PGA−ビタミン複合体を少量ずつ加え、EDTA−4Naを添加して攪拌しながら80℃で加熱して溶解させた。ここに80℃で加熱したPOE(15)オレイルアルコールエーテル、ラウリン誘導体及びメチルパラベン混合溶液を添加して攪拌した後、香料を加えて徐々に冷却してPGA−ビタミン複合体含有洗顔剤を製造した。下記表9に各成分の含量を示した。
【0070】
【表9】

【0071】
剤形例5:シャンプー
精製水にグリセリン及びEDTA−4Naを加えて80℃で加熱して溶解させた後、TEAラウリルサルフェート、ソジウムラウリルエーテルサルフェート、ラウリルアミドプロピルベタイン及びラウリン酸ジエタノールアミドを加えて攪拌した。ここにクエン酸を入れて50℃で中和させた後、45℃でPGA−ビタミン複合体及び亜鉛ピリチオンを加え、攪拌してPGA−ビタミン複合体含有シャンプーを製造した。下記表10に各成分の含量を示した。
【0072】
【表10】

【0073】
以上、本発明の特定の内容部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な技術は単に望ましい実施様態であり、本発明の範囲がこれに制限されないという点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲及びそれらの等価物によって定義されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上詳細に説明したように、本発明は、ビタミンの安定性と吸水性を高め、徐放性を向上させ、高度の皮膚適合性、保湿性及び吸湿性を持つPGA−ビタミン複合体およびその製造方法を提供するという効果がある。また、前記PGA−ビタミン複合体を有効成分として含有するビタミン製剤及び化粧料組成物を提供するという効果がある。
本発明によるPGA−ビタミン複合体は、生体新陳代謝の促進、抗酸化効果、細胞壁の保護、免疫力の増進、皮膚乾燥及び角化防止、皺防止、並びに皮膚保湿などの様々な作用をするビタミンの安定性及び吸水性を向上させるだけでなく、徐放性効果も持っているので、多様な用途の化粧料組成物及びビタミン製剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PGA(poly-gamma-glutamic acid)のカルボキシル基に水溶性ビタミンC、脂溶性ビタミンDまたはこれらの誘導体の水酸基がエステル結合によって連結されているPGA−ビタミン複合体。
【請求項2】
前記水溶性ビタミンCの誘導体は、エチルアスコルビルエーテル(ethylascorbyl ether)、マグネシウムアスコルビルホスフェート(magnesium ascorbyl phosphate)、アスコルビン酸2−グルコシド(ascorbic acid 2-glucoside)又はアラントインアスコルベート(allantoin ascorbate)であることを特徴とする請求項1に記載のPGA−ビタミン複合体。
【請求項3】
下記構造式Iで表わされるPGA−水溶性ビタミンC複合体であることを特徴とする請求項1に記載のPGA−ビタミン複合体:
《構造式I》
【化1】

【請求項4】
前記脂溶性ビタミンDの誘導体はエルゴカルシフェロール(ergocalciferol;ビタミンD)又はコレカルシフェロール(cholecalciferol;ビタミンD)であることを特徴とする請求項1に記載のPGA−ビタミン複合体。
【請求項5】
下記構造式IIで表わされるPGA−脂溶性ビタミンD(またはその誘導体)複合体であることを特徴とする請求項1に記載のPGA−ビタミン複合体:
《構造式II》
【化2】

ここで、Bは

または

である。
【請求項6】
前記PGAと脂溶性ビタミンD(またはその誘導体)がHN−R−NH、HN−R−SH、HN−R−OH、HN−R−CHO、HS−R−SH及びHO−R−OH(ここで、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立にC1−20の飽和炭化水素類、不飽和炭化水素類または芳香族有機基)からなる群から選択されたリンカーを介して連結されていることを特徴とする、下記構造式IIIで表わされるPGA−脂溶性ビタミンD(またはその誘導体)複合体であることを特徴とする請求項1に記載のPGA−ビタミン複合体:
《構造式III》
【化3】

ここで、Bは

または

である。
【請求項7】
前記PGAは、バシラスサブチリス(Bacillus subtilis)菌株から製造されたものであることを特徴とする請求項1に記載のPGA−ビタミン複合体。
【請求項8】
PGAのカルボキシル基とビタミンの水酸基をエステル結合によって連結することを含む、PGA−ビタミン複合体の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7のいずれか一つのPGA−ビタミン複合体を有効成分として含有するビタミン製剤。
【請求項10】
請求項1乃至請求項7のいずれか一つのPGA−ビタミン複合体を有効成分として含有する食品。
【請求項11】
請求項1乃至請求項7のいずれか一つのPGA−ビタミン複合体を有効成分として含有する飲料。
【請求項12】
請求項1乃至請求項7のいずれか一つのPGA−ビタミン複合体を有効成分として含有する皮膚適合性、保湿力及び/または吸湿力の改善のための化粧料組成物。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−503564(P2008−503564A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517940(P2007−517940)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000603
【国際公開番号】WO2006/001567
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(506010208)バイオリーダーズ コーポレーション (16)
【氏名又は名称原語表記】BIOLEADERS CORPORATION
【出願人】(506272301)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (17)
【Fターム(参考)】