説明

ポリマーに固定されたビスアシルホスフィンオキシド

本発明は、1つ以上のビスアシルホスフィンオキシド部分によって置換されたオリゴマーまたはポリマーであって、前記ビスアシルホスフィンオキシド部分が、リン原子を介して、場合によりスペーサー基を介して、当該オリゴマーまたはポリマーに結合していることを特徴とするオリゴマーまたはポリマー、ならびに、具体的には、前記ポリマーまたはオリゴマーの製造に好適な、官能化されたビスアシルホスフィンオキシドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の高分子光開始剤およびその製造方法、ならびに光重合性組成物、特に印刷用インク、におけるその使用に関する。
【0002】
ビスアシルホスフィンオキシドは、優れた光開始剤として周知であり、例えば、コーティング剤、印刷用インク、または電子材料などの用途において広く使用されている(例えば、W.Rutsch et al.,Prog.Org.Coatings 1996,27,227を参照されたい)。ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤は、UV−A/可視領域の光を吸収し、同時にフォトブリーチングを受け、他の光開始剤のタイプでは適合しない独特の硬化特性を提供する。これまでに報告されているビスアシルホスフィンオキシドは、ほとんどが、単官能性光開始剤であり、すなわち、1分子あたり1つの光活性ビスアシルホスフィンオキシド構造単位を有している。さらに、当該化合物は、通常、MG<1000を有し、例えば樹脂化合物、担持体材料、または基材表面など他の成分と容易に化学反応可能な官能基を有していない。
【0003】
高分子量の光開始剤または好適な官能基で置換されている光開始剤は、多くの用途において益々関心が高まっている。例えば、米国特許第7166647号、同第7354957号、または国際公開第97/1737号は、いくつかの光活性基が多官能性コア材料に結合している多官能性光開始剤について特許請求している。使用されている光開始剤部分は、ベンゾフェノン−、チオキサントン−、α−ヒドロキシケトン、またはα−アミノケトンタイプである。米国特許第5410060号、国際公開第03/19295号、および同第09/03065号では、二官能性モノアシルホスフィンオキシド誘導体について報告されている。米国特許第7396861号、L.Angiolini et al.,J.Appl.Polym.Sci.1994,51,133、同書 1995,57,519;国際公開第00/55212号、同第00/55214号、ならびにJ.H.de Groot et al.,Biomacromolecules 2001,2(4),1271、国際公開第09/030658号では、例えば、デンドリマー、ホモポリマー、およびコポリマーに固定されたアクリレート基を有する、モノアシルホスフィンオキシドについて開示されている。国際公開第09/068590号では、アクリレート官能化モノ−およびビスアシルホスフィンオキシドの製造方法について開示されている。
【0004】
国際公開第03/104245号には、モノ−またはビスアシルホスフィンオキシド部分がベンゾイル基を介してコアに結合している、二量体および多量体モノ−およびビスアシルホスフィンオキシド光開始剤について記載されている。国際公開第06/056541号では、アシルホスファンおよびその誘導体を製造する方法が明らかにされている。この方法を用いて、2つの光活性部分がリン上の置換基を介して結合しているいくつかの二官能性ビスアシルホスフィンオキシド誘導体が製造される。
【0005】
既知の、ポリマーに固定されたアシルホスフィンオキシド光開始剤のほとんどが、モノアシルホスフィンオキシド構造に限られており、担持体への結合のほとんどが、ベンゾイル部分を介して実現されている。したがって、光活性部分がリン原子を介してポリマー骨格または担持体材料に優先的に結合している、オリゴマーもしくはポリマーに固定されたビスアシルホスフィンオキシド構造が必要とされている。リン上の置換基を介して、例えば、ポリマー性担持体材料などに結合しているビスアシルホスフィンオキシド構造は、当該担持体上における高いラジカル密度の形成を提供し、結果、高い反応性を生じる。
【0006】
本発明は、そのような、リン原子を介してポリマーまたは担持体材料に結合している、オリゴマーもしくはポリマーに固定されたビスアシルホスフィンオキシド光開始剤、ならびに当該オリゴマーおよびポリマーの製造のための出発材料として使用される、対応する官能化ビスアシルホスフィンオキシド中間体を提供する。
【0007】
したがって、本発明の主題は、ビスアシルホスフィンオキシド部分によって置換されているオリゴマーまたはポリマーであって、当該ビスアシルホスフィンオキシド部分が、リン原子を介して、場合によりスペーサー基を介して、当該オリゴマーまたはポリマー骨格に結合していることを特徴とするオリゴマーまたはポリマーである。
【0008】
上記のオリゴマーまたはポリマーにおいて、スペーサー基は、ビスアシルホスフィンオキシド部分の2つのベンゾイル基のうちの1つではない。したがって、本発明の主題は、ビスアシルホスフィンオキシド部分によって置換されているオリゴマーまたはポリマーであって、当該ビスアシルホスフィンオキシド部分が、リン原子を介して、場合によりスペーサー基を介して、当該オリゴマーまたはポリマー骨格に結合しており、ただし、当該スペーサー基は、ビスアシルホスフィンオキシド部分の2つのベンゾイル基のうちの1つではないことを特徴とするオリゴマーまたはポリマーである。
【0009】
当該ポリマーまたはオリゴマーは、例えば、2つ以上、特に3つ以上のビスアシルホスフィンオキシド部分を含む。
【0010】
特に、当該オリゴマーまたはポリマーは、式I:
【化1】

[式中、
mは、2以上の整数であり、
Aは、オリゴマーまたはポリマー骨格の繰り返し単位あるいは多官能性オリゴマー単位であり、
Xは、直接結合またはスペーサー基であり、
1は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、ならびに
2は、水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClである
]の単位を含む。
【0011】
当該オリゴマーまたはポリマーは、例えば、式Ia:
【化2】

[式中、
mは、2以上の整数であり、
yおよびzは、互いに独立して、0〜15000の整数であり、
Aは、
【化3】

であって、この場合、アスタリスクはXへの結合を意味しており、
1およびB2は、互いに独立して、
【化4】

であり、
この場合、A、B1、およびB2は、ランダム重合またはブロック重合によって同じポリマー骨格中に組み入れられており、
Xは、直接結合、C1〜C10−アルキレン、−(CH2o−NH−CO−O−(CH2p−*、−(CH2o−NH−CO−O−CH2−CHOH−CH2−*、−(CH2o−NH−CO−NH−(CH2p−*、−(CH2o−NH−CO−S−(CH2p−*、−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−NH−(CH2p−*、*−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−NH−(CH2p−、−(CH2o−CO−O−(CH2p−*、−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−S−(CH2p−*、*−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−S−(CH2p−、−(CH2o−O−CO−CH(COCH3)−CH2−C(COOR3)CH2−*、−(CH2o−NH−CH2−CH2−C(COOR3)CH2−*、−(CH2o−S−(CH2o−C(COOR3)CH2−*、−(CH2o−O−CO−CH(COCH3)−CH2−CHR3−CO−O−(CH2−CH2−O)t(CO)CH2−*、−(CH2o−NH−CH2−CHR3−CO−O−(CH2−CH2−O)t(CO)CH2−*、−(CH)−S−CH2−CHR3−CO−O−CH2−CH2−*、−(CH2o−S−CH2−CHR3−CO−O−(CH2−CH2−O)t(CO)CH2−*、−(CH2o−NH−CH2−CHR3−CO−O−CH2−CH2−*、−(CH2o−O−CO−CH(COCH3)−CH2−CHR3−CO−O−CH2−CH2−*、−(CH2o−CO−O−CH2−CHOH−CH2−*、−(CH2o−O(CO)−CH2−*、−(CH2CH2O)t−(CO)−CH2−*、−(CH2o−CHOH−CH2−O(CO)−CH2−*、または
【化5】

であって、この場合、アスタリスクは、ビスアシルホスフィンオキシド部分への結合を意味しており、
o、p、およびqは、互いに独立して、1〜4の整数であり、
rは、0〜2の整数であり、
sは、0または1であり、
tは、1または2の整数であり、
1は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、および
2は、水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、
3は、水素またはメチルであり、
4は、C1〜C4アルキルであり、
5は、メチル、フェニル、またはエトキシであり、
6は、C1〜C10アルキルまたはC1〜C9ペルフルオロアルキルであり、
7は、無置換かあるいはC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、またはClによって置換されている、C1〜C10アルキル、−CH2−O−C1〜C10アルキル、−CH2−O−(CH2o−C5〜C8シクロアルキル、−CH2−O−(CH2o−C6〜C10アリール、C1〜C9ペルフルオロアルキル、−CH2−O−C1〜C10ペルフルオロアルキル、−CH2−O−C6〜C10アリールであり、
8は、水素、C1〜C8アルキル、(CO)O−R15、またはCNであり、
9は、水素または(CO)O−R15であり、
あるいはR8およびR9が一緒になって、−(CH2w−、−CH=CH−CH2−、−(CO)−O−(CO)−、−(CO)−N(R16)−CO−、または
【化6】

であり、
10は、水素、C1〜C8−アルキル、または−SO3-+であり、
11は、水素であり、
あるいはR10およびR11が一緒になって、−O−CH2CH2−O−であり、
12およびR13は、互いに独立して、C1〜C4−アルキル、ビニル、フェニル、またはC1〜C4アルコキシであり、
14は、水素、CH2Br、CH2Cl、またはIであり、
15は、水素、C1〜C4−アルキルまたはベンジルであり、
16は、C1〜C4アルキルまたはフェニルであり、
wは、3〜10の整数であり、
Eは、陽イオンであり、ならびに
Zは、CH2またはOである]の単位を含む。
【0012】
本発明のさらなる主題は、上記において説明したような式Iaのオリゴマーまたはポリマーである。
【0013】
興味深いのは、上記において説明したような式Iaのオリゴマーまたはポリマーであって、この場合、
zは0であり、
yは0であるか、または請求項2において定義されたmと、mの20倍との間の整数であり、
1は、C1〜C4−アルキルであり、
2は、C1〜C4−アルキルであり、
Xは、直接結合、C1〜C10−アルキレン、−(CH2O−O(CO)−CH2−*、または
【化7】

であって、この場合、アスタリスクは、ビスアシルホスフィンオキシド部分への結合を意味しており、
oおよびqは1であり、
rは0であり、
sは0であり、
Aは、
【化8】

であって、この場合、アスタリスクはXへの結合を意味しており、
1は、
【化9】

であり、
この場合、AおよびB1は、ランダム重合またはブロック重合によって同じポリマー骨格中に組み入れられており、
4は、C1〜C4アルキルであり、
5は、メチル、フェニル、またはエトキシであり、
8は水素であり、
9は水素であり、
12およびR13は、互いに独立して、C1〜C4−アルキル、ビニル、またはC1〜C4アルコキシであり、
14は、水素、CH2Br、またはIであり、
Zは、CH2である。
【0014】
式IおよびIaでは正確には定義されておらずアスタリスク*によって表されている末端基は、当業者には明らかである。このような基は、対応するポリマー骨格Aおよび製造に使用された重合開始剤の種類に応じて変わる。その例は、水素、対応する重合可能な基、例えば、−CH=CR−COOR’、−CH=CH(C65)など、あるいは対応する開始剤の基、例えば、(ベンゾイルペルオキシドに由来する)C65CO−、(AIBNに由来する)NC−(CH32−など、である。この一覧は、包括的であることを意味するものではなく、当該末端基は、例えば、規定された制御重合反応などにおいて、さらに変わり得る。
【0015】
式IおよびIaの化合物におけるmは、2以上の整数であり、例えば、mは、2〜2000、2〜1200、3〜200、3〜1200、50〜2000、50〜1200、100〜2000、100〜1200、150〜2000、または150〜1200の整数である。
【0016】
yおよびzは、互いに独立して、0〜15000の整数であり、例えば、0〜10000、0または500〜10000、0または1000〜10000、0または2000〜9500、0または2500〜9500である。
【0017】
zは、好ましくは0であり、ならびにyは、特に、上記において与えられた意味のうちの1つを有する。
【0018】
o、p、およびqは、互いに独立して、1〜4の整数であり、例えば、1、2、または3であり、例えば、1または2であり、好ましくはo、p、およびqは1である。
【0019】
rは、0〜2の整数であり、例えば、0または1であり、特に、rは0である。
【0020】
sは、0または1であり、特に、sは0である。
【0021】
tは、1または2の整数である。
【0022】
Aは、オリゴマーまたはポリマー骨格の繰り返し単位であり、例えば、
【化10】

であって、この場合、アスタリスクはXへの結合を意味しており、あるいは、Aは、多官能性オリゴマー単位であり、例えば、
【化11】

である。
【0023】
興味深いのは、
【化12】

、特に、
【化13】

であって、この場合、アスタリスクはXへの結合を意味している。
【0024】
Xは、直接結合またはスペーサー基である。好適なスペーサー基Xの例は、C1〜C10アルキレン、−(CH2o−NH−CO−O−(CH2p−*、−(CH2o−NH−CO−O−CH2−CHOH−CH2−*、−(CH2o−NH−CO−NH−(CH2p−*、−(CH2o−NH−CO−S−(CH2p−*、−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−NH−(CH2p−*、*−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−NH−(CH2p−、−(CH2o−CO−O−(CH2p−*、−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−S−(CH2p−*、*−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−S−(CH2p−、−(CH2o−O−CO−CH(COCH3)−CH2−C(COOR3)CH2−*、−(CH2o−NH−CH2−CH2−C(COOR3)CH2−*、−(CH2o−S−CH2−CH2−C(COOR3)CH2−*、−(CH2o−O−CO−CH(COCH3)−CH2−CHR3−CO−O−(CH2−CH2−O)t(CO)CH2−*、−(CH2o−NH−CH2−CHR3−CO−O−(CH2−CH2−O)t(CO)CH2−*、−(CH)o−S−CH2−CHR3−CO−O−CH2−CH2−*、−(CH2o−S−CH2−CHR3−CO−O−(CH2−CH2−O)t(CO)CH2−*、−(CH2o−NH−CH2−CHR3−CO−O−CH2−CH2−*、−(CH2o−O−CO−CH(COCH3)−CH2−CHR3−CO−O−CH2−CH2−*、−(CH2o−CO−O−CH2−CHOH−CH2−*、−(CH2o−O(CO)−CH2−*、−(CH2CH2O)t−(CO)−CH2−*、−(CH2o−CHOH−CH2−O(CO)−CH2−*、または
【化14】

であって、この場合、アスタリスクは、ビスアシルホスフィンオキシド部分への結合を意味している。
【0025】
興味深いスペーサー基Xは、C1〜C10−アルキレン、−(CH2o−NH−CO−O−(CH2p−*、−(CH2o−NH−CO−NH−(CH2p−*、−(CH2o−NH−CO−S−(CH2p−*、−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−NH−(CH2p−*、*−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−NH−(CH2p−、−(CH2o−CO−O−(CH2p−、−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−S−(CH2p−*、*−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−S−(CH2p−、−(CH2o−NH−CH2−CH2−C(COOR3)CH2−*、−(CH2o−S−CH2−CH2−C(COOR3)CH2−*、−(CH2o−NH−CH2−CHR3−CO−O−(CH2−CH2−O)t(CO)CH2−*、−(CH2o−S−CH2−CHR3−CO−O−(CH2−CH2−O)t(CO)CH2−*、−(CH2o−CO−O−CH2−CHOH−CH2−*、−(CH2o−O(CO)−CH2−*、−(CH2CH2O)t−(CO)−CH2−*、または
【化15】

であって、この場合、アスタリスクは、ビスアシルホスフィンオキシド部分への結合を意味している。
【0026】
特に、Xは、直接結合、C1〜C10−アルキレン、−(CH2o−O(CO)−CH2−*、−(CH2o−NHCH2−CH2−C(COOR3)CH2−*、−(CH2o−S−CH2−CH2−C(COOR3)CH2−*、または
【化16】

を意味しており、この場合、アスタリスクは、ビスアシルホスフィンオキシド部分への結合を意味している。
【0027】
1およびB2は、互いに独立して、
【化17】

である。
【0028】
興味深い基B1およびB2は、
【化18】

であり、B1およびB2は、特に、
【化19】

である。
【0029】
本発明のポリマーまたはオリゴマーにおいて、単位A、B1、およびB2は、ランダム重合またはブロック重合により同じポリマー骨格中に組み入れられている。最終的なポリマーにおける基の分布は、統計的である。
【0030】
興味深いのは、単位Aのみを含むポリマーまたはオリゴマー、ならびに単位A以外に単位B1およびB2を含む、そのようなポリマーまたはオリゴマー、例えば、単位A以外に単位B1を含むポリマーまたはオリゴマーなど、である。
【0031】
1は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、例えば、R1は、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシである。
【0032】
2は、水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、例えば、R2は、C1〜C4アルキルまたは水素である。R1がC1〜C4アルコキシの場合、R2は、好ましくは水素である。特に、R1およびR2は、C1〜C4−アルキルである。
【0033】
3は、水素またはメチルである。
【0034】
4は、C1〜C4アルキルであり、とりわけメチルまたはエチルであり、特にエチルである。
【0035】
5は、メチル、フェニル、またはエトキシである。
【0036】
6は、C1〜C10アルキルまたはC1〜C9ペルフルオロアルキルである。
【0037】
6として好ましいのは、C1〜C4−アルキルである。
【0038】
7は、無置換あるいはC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、またはClによって置換されている、C1〜C10アルキル、−CH2−O−C1〜C10アルキル、−CH2−O−C1〜C10シクロアルキル−アルキリデニル−、C1〜C9ペルフルオロアルキル、−CH2−O−C1〜C10ペルフルオロアルキル、−CH2−O−C6〜C10アリールである。
【0039】
7として好ましいのは、無置換あるいはC1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシによって置換されている、−CH2−O−C1〜C10アルキル、−CH2−O−C1〜C10シクロアルキル−アルキリデニル−、CH2−O−C6〜C10アリールである。
【0040】
8は、水素、C1〜C8アルキル、(CO)O−R15、またはCNであり、例えばR8は、水素またはC1〜C4アルキルであり、特に、水素であり、
9は、水素または(CO)O−R15であり、特に、水素であり、
あるいは、R8およびR9は一緒になって、−(CH2w−、−CH=CH−CH2−、−(CO)−O−(CO)−、−(CO)−N(R16)−CO−、または、
【化20】

であり、例えば、R8およびR9は一緒になって、−(CH2w−または−CH=CH−CH2−であり、特に、−(CH2w−である。
【0041】
wは、3〜10の整数であり、例えば、3〜8、3〜5、特に、3または4であり、とりわけ3である。
【0042】
10は、水素、C1〜C8−アルキル、または−SO3-+であり、とりわけ水素またはC1〜C8−アルキルであり、特に、水素である。
【0043】
基−SO3-+におけるEは、陽イオンであり、特に、例えば、アルカリ金属イオン、例えば、Na、K、またはLi、またはアンモニウム陽イオン、NH4+、ならびに、対応するモノ−、ジ−、トリ−、またはテトラアルキルアルキルアンモニウム陽イオンであり、例えば、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラデシルアンモニウム、トリメチル−n−セチルアンモニウム、トリメチルヒドロキシメチルアンモニウムなど、であり、
11は、水素であり、
あるいはR10およびR11は一緒になって、−O−CH2CH2−O−であり、
12およびR13は、例えば、C1〜C4−アルキル、ビニル、フェニル、またはC1〜C4アルコキシである。
【0044】
14は、水素、CH2Br、CH2Cl、またはIであり、特に、水素、CH2Br、またはIである。
【0045】
15は、水素、C1〜C4−アルキル、ベンジルである。
【0046】
16は、C1〜C4アルキルまたはフェニルである。
【0047】
Zは、CH2またはOであり、特に、CH2である。
【0048】
1〜C10アルキルは、直鎖状または分岐鎖状であり、例えば、C1〜C9−、C1〜C8−、C1〜C6−、またはC1〜C4アルキルである。その例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、2,4,4−トリメチルペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、またはデシルである。C1〜C8アルキルおよびC1〜C4アルキルは、対応するC原子の数まで、上記においてC1〜C10アルキルに対して与えられたのと同じ意味を有する。
【0049】
基−CH2−O−C1〜C10アルキルにおいて、C1〜C10アルキルは、上記において与えられたのと同様に定義される。C1〜C10ペルフルオロアルキルは、例えば、C1〜C9−、C1〜C8−、C1〜C6−、またはC1〜C4ペルフルオロアルキルである。それは、直鎖状または分岐鎖状の、上記のように定義されたC1〜C10−、C1〜C9−、C1〜C8−、C1〜C6−、またはC1〜C4アルキルを意味し、この場合、水素原子は、フッ素原子によって完全に置き換えられている。好ましい例は、トリフルオロメチルである。
【0050】
基−CH2−O−C1〜C10ペルフルオロアルキルにおいて、ペルフルオロアルキルは、上記において与えられたのと同様に定義される。C1〜C4アルコキシは、直鎖状または分岐鎖状であり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、イソ−ブチルオキシ、またはtert−ブチルオキシである。例えば基−CH2−O−(CH2o−C5〜C8シクロアルキルなどにおけるC5〜C8シクロアルキルは、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、またはシクロオクチルである。
【0051】
基CH2−O−C6〜C10アリールおよび−CH2−O−(CH2o−C6〜C10アリールにおいて、C6〜C10アリールは、例えば、フェニルまたはナフチルであり、例えば、1−ナフチルまたは2−ナフチルであり、好ましくはフェニルである。
【0052】
置換C6〜C10アリールは、例えば、1〜5回、例えば、1回、2回、または3回、特に1回または2回置換されている。当該フェニル環における置換基は、フェニル環の、例えば、2位、3位、または4位、または2,4−位、2,6−位、または2,4,6−位に位置している。当該置換基は、上記において定義された通りである。
【0053】
8およびR9が一緒になって、−(CH2w−、−CH=CH−CH2−、−(CO)−O−(CO)−、−(CO)−N(R16)−CO−、または、
【化21】

である場合、例えば、以下のような構造が形成される:
【化22】

【0054】
10およびR11が一緒になって、−O−CH2CH2−O−である場合、以下の構造が形成される:
【化23】

【0055】
1〜C10アルキレンは、直鎖状または分岐鎖状のアルキレンであり、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、1−メチルエチレン、1,1−ジメチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、またはデシレンである。
【0056】
本文脈における「および/または」または「または/および」なる用語は、定義された選択肢(置換物)のうちの1つだけではなく、定義された選択肢(置換物)のいくつかが一緒に存在し得ること、すなわち、様々な選択肢(置換物)の混合物が存在し得ることを表現することを意味する。「少なくとも」なる用語は、1つ以上、例えば、1つまたは2つまたは3つ、好ましくは1つまたは2つ、を規定することを意味する。「場合により置換されていてもよい」なる用語は、それが指す基が非置換であるかまたは置換されているかのどちらかであることを意味する。本明細書および続く請求項全体において、文脈がそうでないことを要しない限り、「含む("comprise")」なる言葉、またはその変形、例えば、「含む("comprises")」もしくは「含むこと("comprising")」など、は、言明された整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を包含するが、任意の他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群も排除しないことを暗に意味するものとして理解されるであろう。
【0057】
本明細書の文脈における「(メタ)アクリレート」なる用語は、アクリレートならびに対応するメタクリレートを指すことを意味する。
【0058】
前述および本文全体の文脈において与えられるような式I、Ia、およびIIの化合物に言及する優先性は、そのような化合物のみに言及するのではなく、請求項のすべてのカテゴリに言及することが意図される。すなわち、当該化合物を含む組成物、ならびに当該化合物が用いられる使用または方法の請求項に言及することが意図される。
【0059】
ビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)官能化ポリマーは、原則として、例えば、2つのコンセプトのいずれかを用いて得られる。
【0060】
1)ポリマー合成コンセプト:=重合性官能基を有するBAPO誘導体の重合または共重合による合成
BAPO官能化ポリマーは、単独でのまたは同じ重合、重付加、もしくは重縮合プロセスにおける反応が可能な他のモノマーとの重合、重付加、もしくは重縮合反応を受けられる好適な官能基を有するBAPO誘導体(「BAPOモノマー」)の(共)重合により合成される。高分子化学において使用される当業者に既知の任意のそのような方法は、場合によっては好適な重合、重付加、または重縮合開始剤または触媒を用いることにより、重合、重付加、または重縮合方法として用いることができるが、反応条件がBAPO官能基と適合する場合に限られる。したがって、200〜500nmの範囲の光を使用する光誘起重合法は、BAPO部分がこれらの条件下において光反応を受けるであろうために、除外される。このコンセプトでは、出発材料として低分子の共重合性BAPO誘導体が使用される。
【0061】
この方法では、好適なスペーサーを介してリン原子に結合している反応基を有するBAPO化合物を、単独重合または共重合反応におけるモノマー単位として使用する。そのような方法の典型的ではあるが非限定的な例は、ラジカル重合、カチオン重合、開環メタセシス重合(ROMP)、電気化学的酸化によるチオフェン誘導体の重合、Michael付加、またはシロキサン重縮合である。使用する官能基のタイプに応じて、ある特定の重合法に対して任意の既知の技術を使用することができる。そのような技術の典型的ではあるが非限定的な例は、ラジカル共重合の場合、ランダム重合または、ATRP、NORなどの制御重合のための任意の既知の技術を使用する制御重合である。用いる技術に応じて、様々な特徴のポリマー、例えば、ランダムポリマー、ブロックポリマー、ブラシ型ポリマーを製造することができる。共重合が実施される場合、BAPOモノマーに加えて、BAPO基を有さない1種以上のさらなる重合性モノマーが使用される。あるいは、可能であれば、1種以上の異なるBAPOモノマーを、非BAPOモノマーと共重合させてもよい。追加のモノマー化合物のタイプおよび比率を適切に選択することにより、様々な特性を有するBAPO官能化ポリマー、例えば、直鎖状ポリマー(単官能性モノマーを使用した場合)、高分子網目構造体(多官能性モノマーを使用した場合)、規定された溶媒に可溶または非可溶なポリマー、液体または固体ポリマーなど、ならびに様々な極性、粘度、他の成分に対する親和性を有するポリマーなどが得られる。ポリマー特性のそのような最適化は、当業者に周知である。さらに、適切な重合技術、例えば、制御重合など、を用いることにより、オリゴマー(少ないモノマー単位)からポリマー(多くのモノマー単位)までの範囲にわたり、狭い分子量分布のポリマーを製造することができる。これらの技術は、当業者に周知であり、当該技術により、様々な特性、例えば粘度など、を有するポリマーが生成される。例えば、C.J.Hawker,Acc.Chem.Res.1997,30,373;K.Matyjaszewski,J.Xia Chem.Rev.2001,101,2921;W.A.Braunecker,K.Matyjaszewski,Prog.Polym.Sci.2007,32,93;G.Moad,E.Rizzardo,S.H.Tang,Acc.Chem.Res.2008,41,1133を参照されたい。このコンセプトは、重合法による新規のポリマーの合成を扱うために、新規のポリマー合成とみなすことができる。
【0062】
上記において説明した反応は、例えば、以下に与えられた基本スキーム:
【化24】

に従い、この場合、R1、R2、R3、m、y、z、X、A、B1、およびB2は、上記のように定義され、一方、YおよびFGの定義は、以下に与えられる(式IIを参照されたい)。PGは、FGに適合する、すなわち、FGと反応する重合性基を意味する。
【0063】
重合または重縮合反応を受けられる置換基を有するBAPO化合物の典型的だが非限定的な例は、例えば、(メタ)アクリレート−置換BAPO、ビニルエステル−置換BAPO、エポキシド−置換BAPO、ノルボルネン−置換BAPO、チオフェン−置換BAPO、またはシロキサン−置換BAPO:
【化25】

である。
【0064】
そのようなモノマーを使用して実施される重合および共重合の典型的な例は、
ノルボルネン置換BAPOとノルボルネンとのROMP共重合:
【化26】

【0065】
メタクリレート置換BAPOのAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)誘起ラジカル単独重合:
【化27】

【0066】
電気化学的酸化によるチオフェン置換BAPOの単独重合
【化28】

【0067】
シロキサン置換BAPOとシロキサンとの酸触媒化共縮合
【化29】

である。
【0068】
2)表面修飾コンセプト:BAPO官能化ポリマーは、該反応を介してBAPO基がポリマー骨格に結合するような方法において好適な条件下でポリマーが反応を受ける場合に、得られる。
【0069】
ポリマーの表面修飾によりBAPO官能化ポリマーを生成するために使用される2つの異なる方法が存在する:
2a)BAPO合成に関与するのに好適な反応基を有する予め形成されたポリマーの修飾
ポリマーが、任意の既知のBAPO合成における反応を可能にする好適な官能基を有する場合、当該ポリマーは、BAPO合成のための試薬として使用することができ、当該合成は、ポリマー骨格上において実施される。このコンセプトでは、低分子のBAPO化合物は使用されない。官能基(1)を有する予め形成されたポリマーが、ホスホエノラートとの反応((2)、国際公開第06/056541号の実施例1a〜1cに記載されているようなこの化合物の合成)のための反応剤(=アルキル化剤)として使用される。したがって、このアプローチにおいて、当該官能化されたポリマーは、BAPO構造の合成における試薬である。ポリマー上の官能基に応じて、当該反応は、好適な触媒を用いて、または用いずに実施される。
【0070】
このコンセプトは、予め形成されたポリマーを扱うため、表面修飾技術とみなすことができる。当該反応は、基本スキーム:
【化30】

に従い、
A、B1、B2、R1、R2、X、y、m、zは、上記のように定義され、
1は、ハロゲン、−OSO2−C1〜C4アルキル、−OSO2−フェニル、または−OSO2−ナフチルであり、この場合、当該フェニルまたはナフチルは、場合により、C1〜C4アルキルによって1回または2回置換されていてもよい。
【0071】
Aは、特に−C64−CH2−または−C64−であり、一方、G1は、特に、Cl、Br、またはIを意味する。典型的な例は、ポリ(ブロモメチルスチレン)の反応であり、当該ポリ(ブロモメチルスチレン)は、ホスホエノラート(2)と、または好適なパラジウム触媒の存在下において(2)と反応するポリ(ヨードスチレン)と、直接反応する(後述の具体例52および53を参照されたい。
【0072】
2b)好適な反応基を有するポリマーへの官能化BAPO誘導体のぶら下げ
低分子BAPOが、ポリマー上の好適な官能基と反応可能な好適な反応基によって官能化されている場合、当該官能化されたBAPOを当該ポリマーと反応させて、BAPO官能化ポリマーが得られる。このコンセプトでは、低分子の官能化BAPO化合物を使用する。
【0073】
このコンセプトでは、ポリマーに固定された第二の反応性官能基E2と化学反応可能な反応性官能基E1を有するBAPO誘導体を用いる。E1およびE2の間において安定な新しい結合または結合基(E3)を形成可能な、当該2つの反応基の間の任意の反応が、この転換に好適である。官能基E2を有するポリマーは、当業者に既知の任意のタイプであり得る。それは、直鎖状ポリマー、例えば、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックポリマー、テレケリックポリマーなどであり得るか、あるいは非直鎖状ポリマー、例えば、グラフト化ポリマー、櫛型ポリマー、樹枝状ポリマー、デンドリマー、またはシルセスキオキサンなどであり得る。繰り返し単位の数に応じて、官能基E2を有する部分は、例えば、ポリマー、オリゴマー、または多官能性分子である。
【0074】
このコンセプトも、予め形成されたポリマーを扱うため、表面修飾技術とみなされる。当該反応は、基本スキーム:
【化31】

に従う。
【0075】
典型的だが非限定的な例は、シロキサン置換BAPO誘導体のシロキサン基とポリマー上のヒドロキシル基との縮合反応、またはアルキン置換BAPOのアルキン三重結合とポリマー上のアジド基との銅触媒化付加環化反応(「クリック反応」)、ポリマー骨格に固定された(メタ)アクリレート二重結合へのアミノ官能基またはチオール官能基を有するBAPO化合物によるMichael付加(Michael付加)、あるいはエステル基によって置換されたBAPO化合物とヒドロキシル基を有するポリマーとのエステル交換反応、またはその逆の、ヒドロキシル基を有するBAPO化合物とエステル基によって置換されているポリマーとのエステル交換反応である。
【0076】
本発明のさらなる主題は、上記において説明したような反応を受けるために、P原子に好適な基を有するビスアシルホスフィンオキシド化合物である。
【0077】
好ましくは、当該化合物は、式(II):
【化32】

[式中、
1は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、
2は、H、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、
Yは、−(CH2a−または−CH2−CHOH−CH2−であり、
aは、1〜10の整数であり、
FGは、Cl、Br、OH、SH、NH2、N3、COOH、COO-+、COOCH3、COONH2
【化33】

であり、
bは、0、1、または2であり、
cは、1または2であり、
3は、水素またはメチルであり、
4は、C1〜C4アルキル、特に、エチルであり、
5およびR5aは、互いに独立して、メチル、フェニル、またはエトキシであり、
Eは、陽イオンであり、
ただし、nが1の場合、FGは、COOCH3、または、
【化34】

ではない]の化合物である。
【0078】
さらに興味深いのは、上記において定義された式Iのポリマーまたはオリゴマーの製造のための、式(IIa):
【化35】

[式中、
1は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、
2は、H、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、
Yは、−(CH2a−または−CH2−CHOH−CH2−であり、
aは、1〜10の整数であり、
FGは、Cl、Br、OH、SH、NH2、N3、COOH、COO-+、COOR17、CH=CH2
【化36】

、COONH2
【化37】

であり、
bは、0,1,または2であり、
cは、1または2であり、
3は、水素またはメチルであり、
4は、C1〜C4アルキル、特に、エチルであり、
5およびR5aは、互いに独立して、メチル、フェニル、またはエトキシであり、
Eは、陽イオン、特にNa、K、またはLiであり、
17は、C1〜C4アルキルまたはCH=CH2である]の化合物の使用、ならびに、
上記において定義されるような式Iのポリマーまたはオリゴマーの製造のための、上記において定義された式IIの化合物の使用である。
【0079】
式IIおよびIIaの化合物は、例えば、国際公開第06/056541号に記載されているような方法により製造される。当該方法は、以下の工程:
a)金属ホスフィドMe3PまたはMe’32を得るために、元素リン[P]、P(Hal)3、またはリン原子の形式酸化状態が(−3)より高い他のリン化合物を、溶媒中で、場合により触媒または活性化剤の存在下において還元金属と接触させる工程であって、MeおよびMe’が、それぞれ、金属ポリホスフィドを得るためのアルカリ金属およびアルカリ土類金属である、工程と、
b)場合により、金属二水素ホスフィドMePH2を得るために、場合により触媒または活性化剤の存在下において、プロトン供給源を添加する工程、
c)その後の、式IIIのm個の酸ハロゲン化物または式IVのm個のカルボン酸エステル:
【化38】

[式中、Rはアルコールの残基であり、ならびにR1およびR2は上記において定義された通りである]によるアシル化反応と、
d)アルキル化反応として、それぞれ上記において定義された式IIまたはIIaの化合物を得るための、求電子試薬FG−Y−Hal、FG−Y−OSO2−Y−FG、FG−Y−OSO2アルキルなど[式中、FGおよびYは、上記において定義された通りであり、Halは、ハロゲン、例えばCl、を意味する]による後続の反応と
を含む。式IIおよびIIaの化合物を製造するための明示的な反応の例を、以下に示す。
【0080】
本発明によれば、上記において説明されたような「ポリマー合成コンセプト」は、上記において定義された1つ以上のビスアシルホスフィンオキシド部分によって置換されたオリゴマーまたはポリマーの合成のための方法であって、当該生成物が、上記において定義された式IIの官能化されたビスアシルホスフィンオキシド化合物、または上記において定義された式IIaの官能化されたビスアシルホスフィンオキシド化合物の、単独重合または、あるいは場合によりビスアシルホスフィンオキシド部分を有さない1種以上のモノマーとの共重合によって、場合により好適な触媒を使用して、得られることを特徴とする方法である。
【0081】
「重合」なる用語は、当業者に明らかであるように、「重付加」反応および「重縮合」反応を包含する。当業者は、対応する目的の反応に好適な官能基を有する化合物の選択についても詳しい。
【0082】
さらに、
a)好適な触媒を使用した、上記において定義された式IIまたはIIaの化合物の重合反応または共重合反応−「ポリマー合成コンセプト」、または
b)上記において定義された式IIまたはIIaの化合物の官能基「FG」と、式IIまたは式IIaのビスアシルホスフィンオキシド部分上の官能基と反応可能なオリゴマーまたはポリマー骨格の第二の官能基との反応−「ぶら下げ法」、
のどちらかによる、式Iの化合物の製造方法も、興味深い。
【0083】
本発明の主題はさらに、コンセプト2b)、すなわち、上記において開示されたような好適な反応基を有する「ポリマー上への、官能化されたBAPO誘導体のぶら下げ」による、上記において定義された1つ以上のビスアシルホスフィンオキシド部分によって置換されたオリゴマーまたはポリマーの合成の方法であって、上記において定義された式IIまたはIIaのビスアシルホスフィンオキシド化合物の官能基「FG」と、当該ビスアシルホスフィンオキシド化合物上の当該官能基と反応可能なポリマーまたはコポリマー骨格上の第二の官能基との反応によって、場合により好適な触媒を使用して、生成物が得られることを特徴とする方法である。
【0084】
上記において説明されたような、コンセプト2a)、すなわち、上記において説明されたような「予め形成されたポリマーの修飾」による本発明のさらなる主題は、上記のような1つ以上のビスアシルホスフィンオキシド部分によって置換されたオリゴマーまたはポリマーの合成の方法であって、生成物が、対称または非対称な金属ビスアシルホスフィドオキシドと、当該金属ビスアシルホスフィドと反応可能なポリマーまたはコポリマー骨格上の官能基との反応、ならびにその後の好適な酸化剤による酸化、によって得られることを特徴とする、方法である。
【0085】
好適な対応する対称または非対称の金属ビスアシルホスフィドオキシドは、例えば、国際公開第06/056541号に記載されている(特に、国際公開第06/056541号の請求項5および6に記載の化合物を参照されたい)。
【0086】
本発明は、有機(例えば、ポリスチレン、ポリノルボルネン、ポリアクリレート、ポリチオフェン)および無機(例えば、ポリシロキサン)の両方のポリマー性骨格を有するBAPO官能化ポリマーを包含する。合成ポリマー以外に、バイオポリマー(例えば、セルロース)も、BAPO基によって官能化されるポリマー骨格として使用することができる。
【0087】
本特許出願において意味されるポリマーは、オリゴマー(少数の、少なくとも2つの繰り返し単位を有する)ならびにポリマー(多数の繰り返し単位を有する)を包含することが意図される。
【0088】
興味深いのは、成分またはラジカル重合性配合物、例えば、バインダー、反応性希釈剤、および架橋剤、との高い適合性を有するポリマーまたはオリゴマーである。材料の好都合な取り扱いが可能な粘度(例えば、5000mPas以下)を有するポリマーまたはオリゴマーも好ましい。さらに興味深いのは、例えば、100以下、特に50以下の多数の繰り返し単位を有する化合物である。
【0089】
本明細書において使用される場合、ポリマーなる用語は、ホモポリマー(1つのタイプの繰り返し単位だけ)またはコポリマー(様々なタイプの繰り返し単位による)も包含する。当該ポリマーがコポリマーの場合、例えば、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーである。ブロックコポリマーは、ポリマー骨格中に異なるブロックを有するか、いくつかのブロックがポリマー骨格の側鎖を形成している(いわゆる、ブラシ型ポリマー)。本発明との関連において好適なポリマーのこの概要は、限定を意図するものではなく、上記において説明された反応のための対応する官能基を有する任意の種類のポリマーが好適である。
【0090】
本発明は、BAPO構造がリン原子および(2つのベンゾイル基のうちの1つではない)好適なスペーサーを介してポリマー骨格に結合していることを特徴とする。この特徴は、上記において説明したようなホスホエノラートのアルキル化に基づく化合物の合成によるものである。
【0091】
本発明は、特に、以下のクラスのビスアシルホスフィンオキシド官能化(BAPO官能化)ポリマー:BAPO官能化ポリスチレン、BAPO官能化ポリノルボルネン、BAPO官能化ポリアクリレート、BAPO官能化ポリチオフェン、BAPO官能化ポリシロキサン、BAPO官能化バイオポリマー、BAPO官能化ポリエポキシド、BAPO官能化ポリビニルエステル、およびBAPO官能化樹枝状ポリマー、特に、BAPO官能化ポリスチレン、BAPO官能化ポリノルボルネン、BAPO官能化ポリアクリレート、BAPO官能化ポリチオフェン、BAPO官能化ポリシロキサン、BAPO官能化バイオポリマー、BAPO官能化ポリエポキシド、およびBAPO官能化ポリビニルエステル、を包含する。
【0092】
BAPO官能化オリゴマーおよびポリマーは、例えば、表面コーティング剤の修飾のために使用することができる。ポリマー中に光活性BAPO部分を有する表面コーティング剤は、ラジカルと反応可能な官能基を有する重合性材料または化合物の存在下において、好適な波長の光による完全な露光または像様の露光によって、修飾および/または構造化され得、結果、当該表面の照射された部分においてモノマーまたはポリマー鎖のグラフト化を生じる。この方法では、例えば、照射/非照射領域において多様な異なる特性を有する構造化された表面を生成するためにフォトリソグラフィー技術を使用することができる。
【0093】
BAPO官能化オリゴマーおよびポリマーは、例えば、ゲル形成のために使用することができる。当該オリゴマーは、非極性溶媒をゲル化することができる。好適な固体材料、例えばデンプンなど、による極性溶媒の物理的ゲル化は周知であり、少量の固体による大量の液体(例えば、水)の吸収のために広く使用されている(L.A.Estroff et al.,Chem.Rev.2003,104,1201)。多量の溶媒分子を閉じ込めることができる三次元網目構造体の形成は、当該網目構造と溶媒との強い双極子相互作用、例えば、水素結合など、に基づいている。非極性液体では弱いファン・デル・ワールス結合しか生じないため、非極性液体と効率的にゲルを形成可能な構造はあまりない。例えば、BAPO官能化されたビニル置換ポリシランの使用は、光照射下での非極性液体のゲル化を可能にするアプローチである。シロキサン置換BAPO誘導体と市販されているアルコキシビニルシランとの酸触媒化重縮合は、BAPO基およびビニル基の両方によって置換されたシリコーンポリマーを提供し、当該シリコーンポリマーは、非極性溶媒、例えば、ベンゼンまたはトルエンなど、に容易に溶解する。当該溶液への照射により、ビニル基のラジカル架橋が生じ、結果、三次元ポリシロキサン網目構造体が急速に形成される。この網目構造体の形成の間に、非極性溶媒は、かなりの程度までポリシロキサンの網目構造中に閉じ込められる。閉じ込められる溶媒の容量は、形成される網目構造体の構造に応じて変わり、シロキサン官能化BAPO/ビニルシロキサンの比率および対応するシロキサンの構造により制御することができる。ポリシロキサン縮合工程の間にある程度の三次元網目構造体が形成されるようなシロキサン構造は、通常、結果として直鎖状のシロキサンポリマーを生じる構造よりも高い容量を提供する。取り込まれた溶媒を減圧下で蒸発させることにより、固体白色粉末としてポリシロキサン網目構造体が得られる。この粉末は、非極性溶媒(例えば、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、酢酸エチルなど)中において再膨潤可能である一方、極性溶媒(例えば、水、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド)からは影響を受けない。吸収可能な溶媒の容量は、自身の質量の数倍である。
【0094】
ポリチオフェンは、電子デバイスの製作における導電性ポリマーとしての使用(J.Roncali,Chem.Rev.1997,97,173;H.Sirringhaus et al.,Nature 1999,401,685)、ならびに、環境刺激に応答する光学的特性(D.T.McQuade et al.,Chem.Rev.2000,100,2537)に関して周知である。例えば、BAPO基によるポリチオフェンの官能化は、光化学的に生成されたホスフィノイルラジカルと容易に反応可能な官能基を有する担持体材料上へのポリチオフェンポリマーの固定化を可能にする。さらに、ホスホラニルラジカルは、チオフェン環の硫黄原子と反応可能であり、それによって、導電性を担っているπ共役系が途切れることになる。したがって、高度にBAPO官能基を有するポリチオフェンを、フォトリソグラフィー法により光照射されたエリアには絶縁領域を生じるが照射されていないエリアには導電構造を残すことによって、パターン形成することができる。
【0095】
セルロースなどのバイオポリマーのヒドロキシル基は、アルコキシシランとの縮合反応を受けてセルロース−O−SiR3結合を生じ得るということは周知である(M.Castellano et al.,J.Coll.Interf.Sci.2004,273,505)。例えば、アルコキシシランを本発明によるビスアシルホスフィンオキシド基によって置換する場合、これは、バイオポリマーにBAPO基を化学的に結合させるために使用可能な簡素な方法である。BAPO基によって置換されたバイオポリマーは、さらに、光化学的に生成されたラジカルとの反応を受ける材料の存在下での照射により、官能化することができる。この方法によって達成される化学的グラフト化により、バイオポリマー表面の永久的で耐久性のある修飾が得られる。バイオポリマーとして特に興味深いのは、セルロース含有材料、例えば、木材、コットン、または、デンプンなど、である。光化学的に生成されたラジカルとの反応に好適な材料は、例えば、(全)フッ素化アクリレートまたは(ポリ)シラン含有アクリレートである。したがって、例えばコットンなどの親水性バイオポリマー材料を、例えば、室外着などに使用される布地の製作に使用するために、それらを撥水加工材料に転換させる。
【0096】
BAPO官能化された、例えばセルロースなどのバイオポリマーは、重合反応を介して反応しない機能性部分、例えば色素など、の共有結合を達成するためにも使用することができる。BAPO修飾されたバイオポリマーへの照射において生成されるホスホラニルラジカルは、効率的にヒドロキシル基に付加し、ホスホン酸エステルを生じる。したがって、例えば、アルコールまたはフェノールは、このエステル形成を介して、バイオポリマーへの共有結合によるグラフト化が可能であり、これにより、共有結合によってグラフト化された化学的に安定な分子が得られる。一例は、フェノール性ヒドロキシル基を有する染料、例えば、フェノールフタレインなどである。光誘起グラフト化プロセスの後、バイオポリマーの安定で永続的な着色が達成される。グラフト化プロセスのトリガーとして光が使用されるため、例えば、フォトリソグラフィープロセスを介して構造修飾を容易に達成することができる。このグラフト化反応を受けるのに好適な他の官能基は、ジスルフィドまたはアミンである。
【0097】
したがって、本発明の主題は、上記において定義された1つ以上のビスアシルホスフィンオキシド部分によって置換されたオリゴマーまたはポリマーの、光開始剤としての使用であって、フラッド照射または像様照射のいずれかによる表面および粒子の官能化のための、好適なモノマーの存在下での光照射による布地の貴化ための、または非極性環境でのゲルの光誘起形成のための、使用でもある。
【0098】
本発明のBAPO官能化オリゴマーおよびポリマー、特にオリゴマーは、例えば、通例の光硬化性(光重合性)組成物、例えば、コーティング剤、ワニス、印刷用インク、接着剤など、において光開始剤としても用いられる。
【0099】
通常、当該光硬化性組成物は、
(A)少なくとも1種のエチレン性不飽和光重合性化合物と、
(B)光開始剤としての、1つ以上のビスアシルホスフィンオキシド部分によって置換された少なくともオリゴマーまたはポリマー、特に、上記において定義された式Iの化合物と
を含む。当該組成物は、成分(B)に加えて、少なくとも1種のさらなる光開始剤(C)および/または他の添加剤(D)を含み得る。
【0100】
当業者は、好適な材料(A)に詳しい。例えば、不飽和化合物(A)は、1つ以上のオレフィン性二重結合を有する。それらは、低分子量(モノマー性)または高分子量(オリゴマー性)である。二重結合を含有するモノマーの例は、アルキルまたはヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレートであり、例えば、メチル、エチル、ブチル、2−エチルヘキシル、または2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メチルメタクリレート、あるいはエチルメタクリレートである。ケイ素またはフッ素で修飾された樹脂、例えば、シリコンアクリレートなど、も興味深い。他の例は、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、例えば、酢酸ビニルなど、ビニルエーテル、例えば、イソブチルビニルエーテルなど、スチレン、アルキル−およびハロスチレン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、あるいは塩化ビニリデンである。
【0101】
2つ以上の二重結合を有するモノマーの例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、またはビスフェノールAのジアクリレート、ならびに4,4’−ビス(2−アクリル−オイルオキシエトキシ)ジフェニルプロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレートまたはテトラアクリレート、ビニルアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルスクシネート、ジアリルフタレート、トリアリルホスフェート、トリアリルイソシアヌレート、あるいはトリス(2−アクリロイルエチル)イソシアヌレートである。
【0102】
比較的高分子量(オリゴマー)の多価不飽和化合物の例は、アクリル化エポキシ樹脂、アクリル化ポリエステル、ビニルエーテル基またはエポキシ基を有するポリエステル、ならびにポリウレタンおよびポリエーテルである。不飽和オリゴマーのさらなる例は、不飽和ポリエステル樹脂であり、これは、通常、マレイン酸、フタル酸、および1つ以上のジオールから製造され、約500〜3000の分子量を有する。加えて、ビニルエーテルモノマーおよびオリゴマー、ならびにポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、およびエポキシ主鎖を有するマレエート末端オリゴマーを用いることもできる。特に好適なのは、ビニルエーテル基を有するオリゴマーと国際公開第90/01512号に記載されているようなポリマーとの組み合わせである。しかしながら、ビニルエーテルとマレイン酸官能化モノマーとのコポリマーも好適である。この種の不飽和オリゴマーは、プレポリマーとも呼ばれ得る。
【0103】
特に好適な例は、エチレン性不飽和カルボン酸とポリオールまたはポリエポキシドとのエステル、ならびに主鎖または側鎖にエチレン性不飽和基を有するポリマー、例えば、不飽和ポリエステル、不飽和ポリアミド、および不飽和ポリウレタン、ならびにそれらのコポリマー、アルキド樹脂、ポリブタジエンおよびブタジエンコポリマー、ポリイソプレンおよびイソプレンコポリマー、側鎖に(メタ)アクリル基を有するポリマーおよびコポリマー、ならびに1種以上のそのようなポリマーの混合物である。不飽和カルボン酸の例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、および不飽和脂肪酸、例えば、リノレン酸またはオレイン酸などである。中でも、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。
【0104】
好適なポリオールは、芳香族ポリオールならびに、特に、脂肪族および脂環式ポリオールである。芳香族ポリオールの例は、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ならびにノボラックおよびレゾールである。ポリエポキシドの例は、上述のポリオール、特に、芳香族ポリオール、およびエピクロロヒドリンをベースとするものである。他の好適なポリオールは、ポリマー鎖または側鎖にヒドロキシル基を有するポリマーおよびコポリマーであり、その例は、ポリビニルアルコールおよびそれらのコポリマー、あるいはポリヒドロキシアルキルメタクリレートまたはそれらのコポリマーである。さらなる好適なポリオールは、ヒドロキシル末端基を有するオリゴエステルである。
【0105】
脂肪族および脂環式ポリオールの例は、好ましくは2〜12個のC原子を有するアルキレンジオール、例えば、エチレングリコール、1,2−、または1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−、または1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、好ましくは200〜1500の分子量を有するポリエチレングリコール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−、または1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、グリセロール、トリス(p−ヒドロキシエチル)アミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、およびソルビトールなど、である。
【0106】
ポリオールは、1種のカルボン酸または様々な不飽和カルボン酸によって、部分的にまたは完全にエステル化されていてもよく、ならびに部分エステルにおいて、遊離ヒドロキシル基が修飾されていてもよく、例えば、他のカルボン酸によってエーテル化またはエステル化されていてもよい。
【0107】
エステルの例は、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタ−アクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールジアクリレート、ジペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリトリトールオクタアクリレート、ペンタエリトリトールジメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ジペンタエリトリトールジメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、トリペンタエリトリトールオクタメタクリレート、ペンタエリトリトールジイタコネート、ジペンタエリトリトールトリス−イタコネート、ジペンタエリトリトールペンタイタコネート、ジペンタエリトリトールヘキサイタコネート、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトール−修飾トリアクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、オリゴエステルアクリレートおよびメタクリレート、グリセロールジアクリレートおよびトリアクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、200〜1500の分子量を有するポリエチレングリコールのビスアクリレートおよびビスメタクリレート、あるいはそれらの混合物である。
【0108】
同一または異なる不飽和カルボン酸と、好ましくは2〜6個、とりわけ2〜4個のアミノ基を有する芳香族、脂環式、および脂肪族ポリアミンとのアミドも、成分(A)として好適である。そのようなポリアミンの例は、エチレンジアミン、1,2−または1,3−プロピレンジアミン、1,2−、1,3−、または1,4−ブチレンジアミン、1,5−ペンチレンジアミン、1,6−ヘキシレンジアミン、オクチレンジアミン、ドデシレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、フェニレンジアミン、ビスフェニレンジアミン、ジ−β−アミノエチルエーテル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジ(β−アミノエトキシ)エタン、あるいはジ(β−アミノプロポキシ)エタンである。他の好適なポリアミンは、好ましくは、側鎖にさらなるアミノ基を有するポリマーおよびコポリマー、ならびにアミノ末端基を有するオリゴアミドである。そのような不飽和アミドの例は、メチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミドプロポキシ)エタン、β−メタクリルアミドエチルメタクリレート、およびN[(β−ヒドロキシエトキシ)エチル]アクリルアミドである。
【0109】
好適な不飽和ポリエステルおよびポリアミドは、例えば、マレイン酸と、ジオールまたはジアミンとから誘導される。いくつかのマレイン酸は、他のジカルボン酸によって置き換えることができる。それらは、エチレン性不飽和コモノマー、例えば、スチレンなど、と一緒に用いることができる。ポリエステルおよびポリアミドは、ジカルボン酸と、エチレン性不飽和ジオールまたはジアミン、特に、例えば6〜20個のC原子の比較的長い鎖を有するもの、とから誘導することもできる。ポリウレタンの例は、飽和または不飽和ジイソシアネートと、不飽和または飽和ジオールとからそれぞれ構成されるものである。
【0110】
ポリブタジエンおよびポリイソプレンならびにそれらのコポリマーは、既知である。好適なコモノマーの例は、オレフィン、例えば、エチレン、プロペン、ブテン、およびヘキセンなど、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、スチレン、または塩化ビニルである。側鎖に(メタ)アクリレート基を有するポリマーも、同様に既知である。それらは、例えば、ノボラックをベースとするエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であってもよく、あるいは(メタ)アクリル酸でエステル化されたビニルアルコールまたはそれらのヒドロキシアルキル誘導体のホモポリマーまたはコポリマーであってもよく、あるいはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートでエステル化された(メタ)アクリレートのホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。
【0111】
光重合性化合物は、単独で、または任意の所望の混合物において用いることができる。ポリオール(メタ)アクリレートの混合物を使用することが好ましい。
【0112】
バインダーも、これらの新規の組成物に加えることができ、これは、光重合性化合物が液体または粘稠物質である場合、特に好都合である。バインダーの量は、全固形分に対して、例えば、5〜95%、好ましくは10〜90%、特に40〜90質量%である。バインダーの選択は、適用の分野およびその分野に必要とされる特性、例えば、水性および有機溶媒系中での展開能力、基材への付着性、および酸素に対する感受性など、に応じて為される。
【0113】
好適なバインダーの例は、約5000〜2000000、好ましくは10000〜1000000の分子量を有するポリマーである。
【0114】
当該不飽和化合物は、非光重合性の皮膜形成成分との混合物として使用することもできる。これらは、例えば、物理的乾燥性のポリマーまたは有機溶媒におけるそれらの溶液であり得、例えば、ニトロセルロースまたはセルロースアセトブチレートなどである。しかしながら、それらは、化学的および/または熱的硬化性(熱硬化性)樹脂であってもよく、その例は、ポリイソシアネート、ポリエポキシド、およびメラミン樹脂、ならびにポリイミド前駆体である。同時に、熱硬化性樹脂の使用は、ハイブリッド系として知られる系における使用に重要であり、当該系は、第一段階で光重合され、第二段階で熱的後処理により架橋される。
【0115】
本発明による光開始剤は、さらに、例えば、"Lehrbuch der Lacke und Beschichtungen",Vol.III,296−328,Verlag W.A.Colomb in Heenemann GmbH,Berlin−Oberschwandorf(1976)に記載されているような、酸化乾燥系の硬化のための開始剤として好適である。
【0116】
当該光重合性混合物は、光開始剤に加えて、光硬化技術において通例的な様々な添加剤(D)を含んでいてもよい。
【0117】
これらの例は、熱抑制剤、安定化剤、帯電防止剤、流動性向上剤、および接着促進剤、硬化促進剤、例えば、アミンなど、連鎖移動剤、光増感剤、共開始剤、熱的条件下においてフリーラジカルを形成する成分(例えば、アゾまたはペルオキシ化合物)、有機または無機顔料、染料、蛍光増白剤、充填材、顔料、染料、湿潤剤、またはレベリング補助剤である。
【0118】
少量で添加可能な光安定剤は、UV吸収剤、例えば、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニル−ベンゾフェノン、オキサルアミド、またはヒドロキシフェニル−s−トリアジン型のものである。これらの化合物は、立体障害アミン(HALS)と一緒にまたはそれを用いずに、個別にまたは混合物において使用することができる。そのようなUV吸収剤および光安定化剤の例は、国際公開第04/074328号第12頁第9行〜第14頁第23行に開示されており、なお、当該開示は、参考として本明細書で援用される。
【0119】
光重合は、スペクトルの感受性をシフトさせるまたは広げる、さらなる光増感剤を添加することによって促進することもできる。これらは、特に、芳香族カルボニル化合物、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン、アントラキノン、および3−アシルクマリン誘導体、ならびに3−(アロイルメチレン)チアゾリン、カンファーキノンであり、さらにエオシン、ローダミン、およびエリスロシン染料、ならびに上記において説明されたような共開始剤として使用可能なすべての化合物である。好適な増感剤化合物(d)の例は、国際公開第06/008251号第36頁第30行〜第38頁第8行において開示されており、なお、当該特許の開示は、参考として本明細書で援用される。
【0120】
染料の例は、キサンテン染料、ベンゾキサンテン染料、ベンゾチオキサンテン染料、チアジン染料、ピロニン染料、ポルフィリン染料、もしくはアクリジン染料、および/または、照射によって開裂し得るトリハロゲンメチル化合物である。同様の組成物は、例えば、欧州特許第445624号に記載されている。顔料の例は、二酸化チタン顔料、カーボンブラックラス、酸化亜鉛、酸化鉄、クロム−、ニッケル−他のチタン化合物など、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、チオインディゴ顔料、キナクリドン顔料、またはトリフェニルメタン顔料、ならびにジケト−ピロロ−ピロール顔料、イソインドリノン顔料、例えば、テトラクロロイソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、ベンズイミダゾロン顔料、およびキノフタロン顔料である。
【0121】
そのような追加の添加剤の性質および量は、関心対象のコーティング剤の目的とする用途に従って決定され、当業者はこれらに詳しいであろう。
【0122】
場合によって、2つ以上の当該新規のオリゴマー性またはポリマー性光開始剤の混合物を使用することが有利であり得る。当然のことながら、既知の光開始剤(C)との混合物を使用することも可能である。当業者は、多くの場合市販されているたくさんの光開始剤化合物(例えば、IRGACURE(登録商標)およびDAROCUR(登録商標)の商標の下、BASF SEによって提供されている)、ならびに様々な用途におけるそれらの特定の特性について熟知している。
【0123】
その例は、ベンゾフェノン、ケタール化合物、アセトフェノン誘導体、ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシ−またはα−アミノアセトフェノン、4−アロイル−1,3−ジオキソラン、ベンゾインアルキルエーテル、およびベンジルケタール、フェニルグリオキサル酸エステル、オキシムエステル、パーエステル、モノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、トリスアシルホスフィンオキシド、ハロメチルトリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤系、フェロセニウム化合物、またはチタノセンの類である。さらに、共開始剤として、ホウ酸塩化合物を使用することができる。
【0124】
好適なさらなる光開始剤の具体例は、国際公開第09/019173号第19頁第19行〜第20頁第33行において開示されている。なお、当該開示は、参考として本明細書で援用される。
【0125】
さらなる好適なものは、例えば、1−[4−(ベンゾイル−フェニル−チア)フェニル]−2−メチル−2−(p−トリルスルホニル)−プロパン−1−オン(ESACURE 1001M);オリゴマー性α−ヒドロキシアルキルフェニルケトン、例えば、ESACURE ONE、ESACURE KIP 100、ESACURE KIP 150である。
【0126】
新規のオリゴマー性またはポリマー性光開始剤と組み合わせた使用に特に好適なのは、α−ヒドロキシケトンタイプの光開始剤、例えば、DAROCUR(登録商標) 1173、IRGACURE(登録商標) 184、ESACURE(登録商標) ONE、ESACURE(登録商標) KIP 100、またはESACURE(登録商標) KIP 150など、である。これらの化合物の中で好ましいのは、高分子量および低移行傾向を有するもの、例えば、ESACURE(登録商標) ONE、ESACURE(登録商標) KIP 100、またはESACURE(登録商標) KIP 150など、特にESACURE(登録商標) ONEである(ESACURE(登録商標)は、Lamberti SPAによって提供される)。
【0127】
光重合性組成物は、概して、当該組成物に対して0.05質量%〜15質量%、好ましくは0.1質量%〜5質量%の光開始剤を含む。当該量は、開始剤の混合物が用いられる場合、添加されたすべての光開始剤の合計を意味する。したがって、当該量は、光開始剤(B)または光開始剤(B)+(C)のいずれかを意味する。
【0128】
当該光重合性組成物は、様々な目的のため、例えば、印刷用インクとして、例えば、スクリーン印刷用インク、フレキソ印刷またはオフセット印刷のためのインクとして、例えば木材または金属用の透明、白色、または有色の仕上げ剤として、粉末コーティング剤として、コーティング材料、とりわけ、紙、木材、金属、またはプラスチック用のコーティング材料として、建築物および路面標識のマーキングのための、複写写真技術のための、ホログラフィック記録材料のための、画像記録技術のための、または印刷版を製造するための、スクリーン印刷用のマスクを製造するための、日光−硬化性コーティング剤として、歯科用充填組成物として、接着剤として、ラミネート加工樹脂として、フォトレジストとして、光造形可能な誘電体として、および電気回路のための半田マスクとして、任意のタイプのディスプレイ用途のための色フィルターを製造するためまたはプラズマディスプレイパネルおよびエレクトロルミネッセンスディスプレイの製造プロセスにおいて構造体を形成するためのレジストとして、光学式スイッチ、光学格子(干渉格子)、光回路の製造のための、例えば米国特許第4575330号に記載されているように、塊状硬化(透明成形品におけるUV硬化)によってまたはステレオリソグラフィー技術によって三次元物品を製造するために、複合材料(例えば、所望であればガラス繊維および/または他の繊維ならびに他の補助剤を含有していてもよいスチレン性ポリエステル)および他の厚層組成物を製造するために、電子部品およびチップのコーティングまたはシーリングのために、または光ファイバーのためのコーティング剤として、または光学レンズ、例えば、フレネルレンズ、または眼科用デバイス、例えば、ソフトコンタクトレンズ、人工水晶体など、を製造するために、または医療機器、補助装置、またはインプラント、人工角膜、良好な包帯、腎臓透析膜、血液貯蔵バッグ、ペースメーカーのリード、人工血管、ドラッグデリバリーパッチ、外科手術において使用可能な成形品、例えば、心臓弁、カテーテル、人工器官、移植された生物学的インプラント、例えば、膵島など、人工補装具、例えば、代用骨または代用歯など、のための材料、診断のための成形品、または膜などの製造に使用することができる。
【0129】
当該新規の光開始剤系は、さらに、乳化重合、パール重合、または懸濁重合の開始剤として、液晶性モノマーおよびオリゴマーの秩序状態を固定するための重合開始剤として、または染料を有機材料上に固定するための開始剤として用いることができる。
【0130】
本発明よる組成物は、UV硬化性接着剤での使用、例えば、感圧性接着剤、ラミネート加工接着剤、ホットメルト接着剤、湿分硬化性接着剤、シラン反応性接着剤、シラン反応性封止剤などの製造ならびに関連する用途においての使用にも好適である。当該接着剤は、ホットメルト接着剤、ならびに水性もしくは溶媒系接着剤、液体無溶媒接着剤、または二液型反応性接着剤であり得る。特に、感圧性接着剤(PSA)、例えば、UV硬化性ホットメルト感圧性接着剤など、が好適である。当該接着剤は、例えば、少なくとも1種のゴム成分、粘着付与剤としての少なくとも1種の樹脂成分、および少なくとも1種の油成分を、例えば、30:50:20の質量比において含む。好適な粘着付与剤は、天然樹脂または合成樹脂である。当業者は、好適な対応する化合物、ならびに好適な油成分またはゴムを知っている。イソシアネートを例えばブロック形態において含有する予備重合した接着剤は、例えば、高温で処理し、当該ホットメルトプロセスの後に基材上にコーティングすることができ、その後、ブロックイソシアネートが関与するさらなる硬化工程であって光潜在性触媒の光活性化によって実現される工程により、完全な硬化が達成される。ホットメルト接着剤は、感圧性接着剤として興味深く、ならびに環境の観点からは望ましくない溶媒系組成物の使用の代替に好適である。ホットメルト押出法は、高い流動粘度を達成するために、高い適用温度を必要とする。イソシアネートを含む本発明の組成物は、ホットメルトコーティング剤の製造における架橋剤として好適であり、この場合、当該架橋剤は、(メタ)アクリレートPSAの官能性コモノマーとの化学反応に関与する。コーティング作業の後、PSAが最初に熱的に架橋されるか、または二重架橋メカニズムが実施され、それに続いて、PSAがUV光により架橋される。UV架橋性照射は、200〜400nmの範囲の波長の短波紫外線により実施され、これは、紫外線装置の光源ならびに光潜在金属触媒に応じて、可視範囲まで、例えば、650nmまで拡がる。そのような系およびプロセスは、例えば、米国特許出願公開第2006/0052472号に記載されており、なお、当該特許の開示は、参考として本明細書で援用される。
【0131】
上記において言及されたような本発明の光硬化性組成物は、印刷用インクにも好適である。そのような印刷用インクは、当業者に既知であり、当該技術分野において広く使用されており、ならびに文献にも記載されている。それらは、例えば、顔料印刷用インクおよび染料で着色された印刷用インクである。印刷用インクは、例えば、着色剤(顔料または染料)、バインダー、ならびに場合により溶媒および/または場合により水、および添加剤を含む、液体またはペースト状の分散物である。液体印刷用インクにおいて、バインダーおよび、適用可能であれば添加剤は、一般的に、溶媒中に溶存している。ブルックフィールド粘度計での通例的な粘度は、液体印刷用インクの場合、例えば、20〜5000mPa・s、例えば、20〜1000mPa・sである。ペースト状印刷用インクの場合、当該値は、例えば、1〜100Pa・s、好ましくは5〜50Pa・sの範囲である。当業者は、印刷用インクの成分および組成物に詳しいであろう。
【0132】
当該光硬化性組成物は、例えば、すべての種類の基材、例えば、木材、布地、紙、セラミック、ガラス、プラスチック、例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、またはセルロースアセテートなど、特に膜の形態において、ならびに金属、例えば、Al、Cu、Ni、Fe、Zn、Mg、またはCo、およびGaAs、Si、またはSiO2などのためのコーティング材料として好適であり、保護層を適用することが意図される、または像様の露光により画像を形成することが意図される。
【0133】
基材のコーティングは、当該基材に液体組成物、溶液、または懸濁液を塗装することによって実施することができる。溶媒および濃度の選択は、原則として、組成物のタイプおよびコーティング技術に応じて変わる。溶媒は不活性でなければならず、すなわち、溶媒は、成分と化学反応すべきではなく、コーティングの後に、乾燥の過程において除去できなければならない。好適な溶媒の例は、ケトン、エーテル、およびエステル、例えば、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1,2−ジメトキシエタン、酢酸エチル、n−酢酸ブチル、および3−エトキシプロピオン酸エチルなど、である。
【0134】
溶液は、既知のコーティング技術、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、ナイフコーティング、カーテンコーティング、はけ塗り、噴霧、特に静電噴霧、およびリバースロールコーティングによって、ならびに電気泳動析出によって、基材に均一に塗装される。光感受性層を、一時的な柔軟な支持体に塗装し、次いで、張り合わせを介して当該層を移すことにより、最終的な基材、例えば、銅被覆回路板など、をコーティングすることも可能である。
【0135】
塗装量(コーティング厚)および基材(層支持体)の性質は、所望の適用分野に応じて変わる。
【0136】
当業者は、光硬化性組成物の様々な用途について詳しく、ならびに異なる分野における様々な用途については、多くの刊行物に記載されている。
【0137】
本発明により、さらに、本発明のポリマー性またはオリゴマー性光開始剤を含む、上記において説明されたような組成物によって少なくとも1つの表面がコーティングされている被覆基材、ならびに、具体的には官能化されたビスアシルホスフィンオキシドを含む、下記において説明されるような組成物によって少なくとも1つの表面がコーティングされている被覆基材である。当該被覆基材は、硬化された配合物によってコーティングされている基材として理解されるべきである。換言すれば、上記において(または下記において、それぞれ)説明されるような組成物が、当該基材の少なくとも1つの表面に塗布され、放射線への暴露により硬化される。
【0138】
ポリマー固定化ビスアシルホスフィンオキシドの合成に使用した、例えば式IIおよびIIaの、官能化されたビスアシルホスフィンオキシド光開始剤も、傑出した新規の特性を有する光開始剤として有用である。一例として、カルボキシレート−置換誘導体は、または、さらにより顕著には後者のカルボキシレート塩は、水などの極性媒体中において優れた溶解性を提供する。したがって、そのような化合物は、水性環境においてラジカル光開始剤として使用することができ、光誘起乳化重合などの新しい適用を可能にする。
【0139】
したがって、本発明は、
(A*)水中に乳化、分散、または溶解されている少なくとも1種のエチレン性不飽和光重合性化合物と、
(B*)光開始剤として、式IIb:
【化39】

[式中
1は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、
2は、H、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、
Yは、−(CH2a−または−CH2−CHOH−CH2−であり、
aは、1〜10の整数であり、
FGは、COOH、または
【化40】

であり、好ましくは、COOHまたはCOO-+
【化41】

であり、
Eは、陽イオン、特にNaである
]の化合物と
を含む組成物も提供する。
【0140】
そのような放射線硬化性水性プレポリマー分散物(A*)の多くの変形が、市販されている。
【0141】
プレポリマー分散物は、水およびその中に分散された少なくとも1種のプレポリマーの分散物であるとして理解される。水中に分散されている放射線硬化性プレポリマーまたはプレポリマー混合物の量は、例えば、20〜95質量%、特に30〜70質量%の範囲である。これらの組成物において、水およびプレポリマーに与えられたパーセントの合計は、目的とする用途に応じて様々な量において添加されている助剤および添加剤(例えば、乳化剤)と共に、各場合において100である。
【0142】
当該放射線硬化性水性プレポリマー分散物は、少なくとも400、特に500〜100,000の平均分子量Mn(g/mol)を有する単官能性もしくは多官能性エチレン性不飽和プレポリマーを含む、既知のポリマー系である。しかしながら、高分子量を有するプレポリマーも、目的とする適用に応じて変わると考えられる。例えば、欧州特許第12339号に記載されているように、10以下の酸価を有するポリエステル、重合性C−C二重結合を有するポリエーテル、1分子あたり少なくとも2つのエポキシド基を有するポリエポキシドと少なくとも1つのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とのヒドロキシル含有反応生成物、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ならびにα,β−エチレン性不飽和アクリル基を有するアクリルコポリマー、が使用される。これらのプレポリマーの混合物も同様に使用することができる。欧州特許第33896号に記載されている重合性プレポリマーも好適であり、これらは、少なくとも600の平均分子量Mn(g/mol)を有し、さらに重合性C−C二重結合を含む、重合性プレポリマーのチオエーテル付加体である。特定のアルキル(メタ)アクリレートポリマーをベースとする他の好適な水性分散物が、欧州特許第41125号に記載されている。
【0143】
これらの放射線硬化性水性プレポリマー分散物中に含まれ得るさらなる添加剤は、分散助剤および乳化剤、ならびに上記において説明したような添加剤である。好適な分散助剤は、例えば、高分子量でありかつ極性基を有する水溶性有機化合物であり、その例は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、またはセルロースエーテルである。使用可能な乳化剤は、非イオン性乳化剤であり、所望の場合、イオン性乳化剤も使用することができる。
【0144】
当該新規の組成物の光感受性は、概して、約150nm〜600nm、例えば、190〜600nm(UV〜可視領域)に拡がり得る。好適な放射線は、例えば、太陽光または人工光源の光の中に存在する。したがって、多くの多種多様なタイプの光源が用いられる。点光源およびアレイ(「面光源」)の両方が好適である。その例は、カーボンアークランプ、キセノンアークランプ、低−、中−、高−、超高圧水銀ランプ、可能であれば金属ハライドがドープされたランプ(金属−ハロゲンランプ)、マイクロ波励起金属蒸気ランプ、エキシマランプ、超化学線蛍光管、蛍光ランプ、アルゴン白熱ランプ、電子フラッシュライト、写真撮影用電球、電子ビーム、およびX線である。ランプと本発明により暴露される基材との距離は、目的とする適用、ランプのタイプおよび出力に応じて変わり得、例えば、2cm〜150cmであり得る。レーザー光源、例えばエキシマレーザー、例えば、157nmでの露光のF2エキシマレーザー、248nmでの露光のKrFエキシマレーザー、および193nmでの露光のArFエキシマレーザーなども好適である。可視領域のレーザーも用いることができる。
【0145】
あるいは、化学線は、発光ダイオード(LED)、例えば、有機発光ダイオード(OLED)、例えば、UV発光ダイオード(UV−LED)など、によって提供される。当該LEDは、放射線源の即座のオン/オフ切替が可能である。さらに、UV−LEDは、一般的に、狭い波長分布を有しており、ピーク波長をカスタマイズすることが可能であり、ならびに電気エネルギーを効率的に紫外線へと変換する。
【0146】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するものであり、当該実施例のみに範囲を限定するわけではない。部およびパーセンテージは、特に明記しない限り、残りの説明および請求項において、質量に基づくものである。特定の異性体についての言及なしに、実施例において4個以上の炭素原子を有するアルキル基について言及する場合、各場合において、n−異性体が意図される。
【0147】
官能化ビスアシルホスフィンオキシド(ポリマー固定化BAPOの合成のための中間体)
実施例1:(4−ビニルベンジル)−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシドの調製
【化42】

【0148】
1a):Na3Pの調製
3.45gのナトリウム砂(150mmol、3当量、M=22.99g/mol)、1.55gの精製赤リン(50.0mmol、1当量、M=30.97g/mol)、および125mgのナフタレン(1.0mmol、M=128.17g/mol)を、120mlのジメトキシエタン(DME)に懸濁させる。当該懸濁液を75℃まで加熱し、撹拌しながら20時間この温度に維持する。色が緑から赤茶を経て黒へ変化する。
【0149】
1b):NaPH2の調製
工程a)の反応混合物を、−10〜−15℃に冷却する。10mlのDMEにおける10mlのtert−ブタノール(0.1mol、2当量、M=74.12g/mol)を、撹拌しながら20分以内に加える。少量の未反応ナトリウムを含む、ほぼ透明な茶色の溶液が得られる。撹拌をさらに20分間続ける。
【0150】
1c):ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィドの調製
16.8mlの2,4,6−トリメチルベンゾイルクロリド(TMBCl)(0.1mol、2当量、M=182.65g/mol)を、工程b)の反応混合物に手早く加え、それにより、色が黄色に変化する。当該反応混合物を、氷冷下においてさらに20分間撹拌し、続いて室温で1時間撹拌する。31PNMRスペクトルは、82ppm(>95%)において、ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド×DME{Na[P(COMes)2]×DME}に対するシグナルを示す。
【0151】
当該反応混合物を、高減圧下において濃縮する。得られたオレンジ色〜黄色のフォームを100mlのトルエン中に入れ、次いで、G4/セライトを通してろ過する。ろ過ケーキをトルエンで二回洗浄して、透明なオレンジ色〜黄色のろ液を得る。当該ろ液を、約70mlの体積まで減圧下において濃縮し、次いで、注意深くヘキサン(30ml)を加える。黄色の立方結晶を当該溶液から分離し、31P−、1H−、および13C−NMR分光分析により、ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド×DME{Na[P(COMes)2]×DME}(C2432NaO4P、M=438.47g/mol)として同定する。さらに、単結晶X線構造解析は、当該結晶が式[Na3[P(COMes)24][Na(DME)3]のイオン対錯体で構成されていることを示している。当該黄色結晶は、トルエン、THF、およびDMEに可溶であるが、ヘキサンにはほとんど溶けない。融点=208℃。
【0152】

【0153】
1d):(4−ビニルベンジル)−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシドの調製
3.04g(8.72mmol、1当量)のナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィドを、20mlのDMEに溶解させる。室温で、この溶液に1.37ml(8.72mmol、1当量)のp−クロロメチルスチレンを滴加する。40℃で115時間撹拌した後、溶媒を減圧によって除去する。当該化合物をトルエンに溶解させ、塩化ナトリウムを取り除くためにろ過する。このようにして得られた3.47g(7.85mmol、1当量)の(4−ビニルベンジル)−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンを、15mlのトルエンに溶解させる。室温で、この溶液に0.8ml(7.85mmol、1当量)の過酸化水素(30%)を滴加する。RT(=室温)において27時間撹拌した後、溶媒を減圧下において除去する。当該化合物を再びトルエンに溶解させ、既に重合している副生物を取り除くためにろ過する。溶媒を除去し、生成物を減圧下において乾燥させ、831.0mgの((4−ビニルベンジル)−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシドを得る。収率:23.25%。融点=208℃。この化合物は、長期保管において重合する。
【0154】

【0155】
実施例2:エチル−2−([ビス{2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスホリル]メチル)アクリレートの調製
【化43】

【0156】
当該化合物は、実施例1d)において説明したような方法を用いて、テトラヒドロフラン(THF)(5ml)に溶解させたナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド(実施例1c)(250mg、0.72mmol、1当量)と、エチル−2−(ブロモメチル)アクリレート(138.9mg、0.72mmol、1当量)とを反応させ、続いて過酸化水素により酸化させて調製した。生成物を、淡黄色の生産物として得る(収率:61%、0.43mmol、195.4mg)。
【0157】

【0158】
実施例3:[4−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5−イル)−ブチル]−4−ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスフィンオキシドの調製
【化44】

【0159】
3a):5−(4−ブロモブチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの調製
250mLの三ツ口瓶において、マグネシウム屑(5.2g、214mmol、2.35当量)を、テトラヒドロフラン(10ml)と混合する。撹拌しながら、テトラヒドロフラン(25ml)中に溶解させた5−(ブロモメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(17g、90.8mmol、1.03当量)を滴加する。1時間撹拌した後、過剰なマグネシウム屑をろ別する。当該溶液を、1,3−ジブロモプロパン(17.9g、88mmol、1当量)、Li2CuCl4(THF中0.1M)(9ml、0.9mmol、0.01当量)、およびテトラヒドロフラン(35ml)の混合物に滴加する。グリニャール試薬の付加が完了した後、当該黒色溶液をさらに1時間撹拌する。当該反応混合物を、酢酸(20%)で加水分解する。ジエチルエーテル(40ml)を加え、有機相を、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(30ml)および蒸留水(30ml)で洗浄する。当該有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を室温にて真空で蒸発させる。当該生成物を、20mbarおよび140℃で蒸留する。無色の油を得る(収量:10.31g、45mmol、51%)。
【0160】

【0161】
3b):[4−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5−イル)−ブチル]−4−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)の調製
ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド(実施例1c)(1.12g、3.21mmol、1当量)および5−(4−ブロモブチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(0.79g、3.45mmol、1.07当量)を、ジメトキシエタン(20ml)に溶解させ、2日間撹拌する。続いて、溶媒を蒸発させ、黄色の残留物をトルエン(20ml)に溶解させる。過酸化水素溶液(10%)(3ml)を加え、当該混合物を40℃で24時間撹拌する。ジエチルエーテルを加えた後、当該溶液を、炭酸水素ナトリウム溶液(2%)および塩水の両方で洗浄する。当該有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を蒸発させた後、黄色の油として純粋な生成物を得る(収量:1.142g、2.33mmol、75%)。
【0162】

【0163】
実施例4:(プロパ−2−イン−1−イル)−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシドの調製
【化45】

【0164】
当該化合物は、実施例1d)において説明したような方法を用いて、ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィドおよび3−ブロモプロピンから調製する。淡黄色の粉末(収量:2.04g、5.36mmol、86%)。
【0165】

【0166】
実施例5:(3−ブロモプロピル)−ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシドの調製
【化46】

【0167】
当該化合物は、実施例1d)において説明したような方法を用いて、溶媒としてのトルエン/テトラヒドロフランにおけるナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィドおよび1,3−ジブロモプロパンから調製し、黄色の油として生成物を得る(収量:0.97g、2.10mmol)。
【0168】

【0169】
実施例6:(3−クロロプロピル)−ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシドの調製
【化47】

【0170】
当該化合物は、実施例5において説明したような方法により、1,3−ジブロモプロパンの代わりに1−ブロモ−3−クロロプロパンを用いて調製する。黄色の油として生成物を得る(収量:0.749g、1.79mmol、62%)。
【0171】

【0172】
実施例7:(3−アミノプロピル)−ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシドの調製
【化48】

【0173】
当該化合物は、実施例1d)において説明したような方法を用いて、ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィドおよび3−ブロモプロピルアンモニウムブロミドから調製する。
【0174】

【0175】
実施例8:(3−アミノプロピル)−ビス(2,6−ジメトキシ−ベンゾイル)−ホスフィンオキシドの調製
【化49】

【0176】
8a):ナトリウムビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ホスフィドの調製
NaPH2×2NaOtBu(実施例1b)(0.846g、3.41mmol、1当量)をDME(6ml)に溶解させ、氷浴において0℃まで冷却する。DME(8ml)に溶解させた2,6−ジメトキシベンゾイルクロリド(1.37g、6.82mmol、2当量)を当該溶液に滴加する。室温で1時間撹拌した後、溶媒を真空で除去し、ナトリウムビス(2,6−ジメトキシ−ベンゾイル)ホスフィドの黄色粉末を得る(収率:87%、1.14g、2.97mmol)。
【0177】

【0178】
8b):(3−アミノプロピル)−ビス(2,6−ジメトキシ−ベンゾイル)−ホスフィンオキシドの調製
ナトリウムビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ホスフィド(25mg(0.065mmol、1当量))を、ジメトキシエタン(2ml)に溶解させる。3−ブロモプロピルアミンヒドロブロミド(14mg、0.065mmol、1当量)を室温にて加える。当該反応混合物を15分間撹拌した後、溶媒を室温にて真空で除去しエタノール(2ml)で置換する。マイクロリットルシリンジで、過酸化水素(30%)(0.008ml、0.065mmol、1当量)をゆっくり加え、当該溶液を30分間撹拌する。続いて、当該溶媒を真空で除去する。残留物をジエチルエーテル(2ml)に溶解させ、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。ろ過し、ジエチルエーテルを蒸発させた後、純粋な生成物を得る。
【0179】

【0180】
実施例9:(3−アジドプロピル)−ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシドの調製
【化50】

【0181】
(3−ブロモプロピル)−ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシド(実施例5)(100mg、0.22mmol、1当量)を、ジメチルスルホキシド(DMSO、5.0ml)に溶解させる。アジ化ナトリウム(14.3mg、0.22mmol、1当量)を加え、当該溶液を70℃で12時間撹拌する。臭化ナトリウムの白色沈殿物が形成され、これをろ別し、DMSOを50℃にて真空で除去する。5mlのジエチルエーテルを当該残留物に加え、当該溶液を塩水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。当該溶媒を蒸発させた後、黄色の生成物を得る(収率:35%、0.08mmol、32.7mg)。
【0182】

【0183】
実施例10:(2−ヒドロキシエチル)−ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシドの調製
【化51】

【0184】
ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド(実施例1c)(2.08g、5.89mmol、1当量)を、ジメトキシエタン(5.00ml)に溶解させる。2−ブロメタノール(0.41ml、0.78g、5.78mmol、1当量)を加え、当該溶液を室温で24時間撹拌する。無色のビスアシルホスフィンが形成され、白色の臭化ナトリウムが沈殿する。ろ過により当該臭化ナトリウムを除去した後、当該溶液を真空で蒸発させる。残留した黄色の油を10mlのエタノールに溶解させ、0.65ml(6.36mmol、1.08当量)の過酸化水素(10%)を加える。当該溶液を40℃で3時間撹拌する。反応完了後、エタノールを真空で除去する。淡黄色の結晶粉末として生成物を得る(収量:1.76g、4.55mmol、76%)である。
【0185】
アルキル化剤としての2−ブロモエタノールの代わりに、1当量のオキシランを求電子剤としても使用することができる。
【0186】

【0187】
実施例11:(2−ヒドロキシエチル)−ビス(2,6−ジメトキシ−ベンゾイル)−ホスフィンオキシドの調製
【化52】

【0188】
この化合物は、ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィドの代わりにナトリウムビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ホスフィド(実施例8a)を使用することを除いて、実施例10において説明したような方法を用いて調製する。収率:76%、0.05mmol、20.85mg。
【0189】

【0190】
実施例12:(オキシラン−2−イル−メチル)−ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスフィンオキシドの調製
【化53】

【0191】
ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド(実施例1c)(2.05g、5.89mmol、1当量)をDME(5.00ml)に溶解させる。エピブロモヒドリン(1.23ml、1.82g、13.3mmol、1当量)を加え、当該溶液を室温で24時間撹拌する。臭化ナトリウムの白色沈殿物が形成される。当該臭化ナトリウムをろ過により除去した後、当該溶液を真空で蒸発させる。残留した黄色の油をエタノール(10ml)に溶解させ、過酸化水素(10%)(0.65ml、6.36mmol、1.08当量)を加える。当該溶液を40℃で3時間撹拌する。反応完了後、エタノールを真空で除去する。黄色の油として生成物を得る(収量:2.58g、6.48mmol、49%)。
【0192】

【0193】
実施例13:(2,3−ジヒドロキシプロピル)−ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスフィンオキシドの調製
【化54】

【0194】
当該化合物は、実施例1d)の方法により、THFおよび1−ブロモ−2,3−プロパンジオールにおけるナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィドから得られる。淡黄色の生成物を得る(収率:64%、0.46mmol、191.5mg)。
【0195】

【0196】
実施例14:2−(テトラ−O−アセチル−α−D−グルコピラノシルオキシ)−エチル−ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシドの調製
【化55】

【0197】
テトラ−O−アセチル−α−D−グルコピラノシルブロミド(0.26g、0.65mmol、1当量)をアセトニトリル(40ml)に溶解させる。(2−ヒドロキシエチル)−ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシド(実施例10)(0.5g、1.2mmol、2当量)、硫酸カルシウム(100mg)、および炭酸銀(0.27g、0.97mmol、1.5当量)を加える。当該反応混合物を6時間還流させる。冷却後、硫酸カルシウムおよび銀塩をセライトによりろ過する。当該溶媒を、室温にて真空で蒸発させる。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン(90:10))により当該生成物を精製した後、溶媒を蒸発させて、黄色の油を得る。
【0198】

【0199】
実施例15:(2−メルカプトエチル)−ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシドの調製
【化56】

【0200】
ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド(実施例1c)(250mg、0.72mmol、1当量)をジメトキシエタン(5ml)およびトルエン(5ml)の混合物に溶解させる。チイラン(43.2mg、0.72mmol、1当量)を加え、当該溶液を2日間撹拌する。このようにして得られた溶液は、無色のビスアシルホスフィン(31P−NMR(C66、121MHz):δ=41.5ppm)を含有する。
当該溶液を氷浴中で0℃まで冷却し、過酸化水素(10%)(0.244ml、0.72mmol、1当量)を滴加する。続いて、当該溶液を室温で一晩撹拌する。5mlのジエチルエーテルを加え、当該溶液を、炭酸水素ナトリウム溶液(2%)および塩水で洗浄する。硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を蒸発させ、生成物をトルエン/n−ヘキサン(5:95)から再結晶させる。淡黄色の生成物が得られる(収率:29%、0.22mmol、83.6mg)。
【0201】

【0202】
実施例16:ジエチル−2−(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−ホスホリル)エチルホスホネートの調製
【化57】

【0203】
当該化合物は、実施例1d)において説明したような方法を用いて、ナトリウムビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ホスフィド(実施例8a)およびブロモエチルホスホン酸ジエチルエステルから調製する。黄色の油として生成物を得る(収量:97.35mg、0.19mmol、74%)。
【0204】

【0205】
実施例17:(チオフェン−3−イル−メチル)−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスフィンオキシドの調製
【化58】

【0206】
17a):3−(クロロメチル)チオフェンの調製
3−ヒドロキシチオフェン(1.00g、0.90ml、8.77mmol)をCH2Cl2(10ml)に溶解させる。当該溶液を0℃まで冷却し、激しく撹拌する。SOCl2(1.9ml、83.1g、26mmol)を滴加する。当該氷浴を取り外し、当該反応混合物を室温で1時間撹拌する。続いて、溶媒を減圧下において除去する。残留した油をジエチルエーテルに溶解させる。その後、当該溶液を炭酸水素ナトリウム(2%)水溶液および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。ジエチルエーテルを蒸発させた後、純粋な生成物を得る(収量:0.88g、67%、5.88mmol)。
【0207】

【0208】
17b):(チオフェン−3−イル−メチル)−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシドの調製
ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド(実施例1c)(250mg、0.72mmol、1当量)および3−クロロメチルチオフェン(95.4mg、0.72mmol、1当量)をトルエン(5ml)に溶解させ、50℃で12時間撹拌する。塩化ナトリウムの白色沈殿物をろ過により除去し、溶媒を室温で減圧下において蒸発させる。このようにして得られた当該化合物を、トルエン(10ml)および過酸化水素(10%)(0.19ml、0.72mmol、1当量)に溶解させる。40℃で12時間撹拌した後、酸化が完了する。ジエチルエーテル(25ml)を加え、当該溶液を、炭酸水素ナトリウム水溶液(2%)で2回、塩水で1回洗浄し、最後に蒸留水で洗浄する。硫酸ナトリウムで当該ジエチルエーテル溶液を乾燥させろ過した後、当該溶液を真空で濃縮する。黄色の油を得る(収量:247mg、0.56mmol、83%)。
【0209】

【0210】
実施例18:2−[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィニル]−酢酸の調製
【化59】

【0211】
ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド(実施例1c)(1.00g、2.88mmol、1当量)をテトラヒドロフラン(5.00ml)に溶解させる。ブロモ酢酸(0.40g、2.88mmol、1当量)をテトラヒドロフラン(5.00ml)に溶解させる。これらの溶液を混合し、室温で24時間撹拌する。臭化ナトリウムの白色沈殿物が形成される。ろ過により臭化ナトリウムを除去した後、当該溶液を真空で蒸発させる。残留した黄色の油をジエチルエーテルに溶解させ、脱ガス処理した塩化アンモニウム水溶液(5%)で洗浄する。エーテル溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を室温にて真空で蒸発させ、高真空において4時間乾燥させる。当該化合物を脱ガス処理したエタノール(5.00ml)に溶解させ、過酸化水素(30%)(0.29ml、2.60mmol、1当量)を加える。当該溶液を40℃で1時間撹拌する。エタノールを室温にて真空で除去する。白色結晶粉末が得られ、これは、40℃の温水から容易に再結晶することができる(収量:定量的)。融点118.9℃(分解)。
【0212】

【0213】
実施例19:ナトリウム−2−[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィニル]−アセテートの調製
【化60】

【0214】
2−(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスホリル)酢酸(実施例18b)(0.1g、0.25mmol、1当量)を蒸留水(2ml)に懸濁させ、炭酸水素ナトリウム(21.0mg、0.25mmol、1当量)を加える。透明な淡黄色の溶液が得られる。室温にて真空で水を除去した後、淡黄色結晶粉末が単離される(収量:定量的)。炭酸塩または炭酸水素塩から(例えば、炭酸水素カリウムまたは炭酸リチウムにより)、2−(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスホリル)酢酸の他のアルカリ塩を合成するために同じ手法を実施することができることは明らかである。
【0215】

【0216】
実施例20:2−(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ホスフィニル)−酢酸の調製
【化61】

【0217】
ナトリウムビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ホスフィド(実施例8a)(100mg、0.26mmol、1当量)をジメトキシエタン(5ml)に溶解させる。この溶液に、ブロモ酢酸(36mg、0.26mmol、1当量)をジメトキシエタン(2ml)に溶解させたものを室温において加える。当該反応混合物を2時間撹拌した後、溶媒を室温にて真空で除去する。このようにして得られた2−(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ホスフィノ)酢酸(109mg、0.26mmol、1当量)のエタノール(4ml)における溶液に、過酸化水素(30%)(0.03ml、0.26mmol、1当量)をゆっくりと加える。当該反応混合物を30分間撹拌する。続いて、溶媒を真空で除去し、2−(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ホスホリル)酢酸を、再びエタノールに溶解させる。臭化ナトリウムをろ過した後、溶媒を真空で蒸発させ、結晶2−(ビス(2,6ジメトキシベンゾイル)ホスフィニル)酢酸を得る(収率:78%、88mg、0.20mmol)。
【0218】

【0219】
実施例21:11−[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィニル]−ウンデカン酸の調製
【化62】

【0220】
当該化合物は、実施例1d)において説明したような方法を用いて、THFおよび11−ブロモウンデカン酸におけるナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド(実施例1c)から調製する。固体の淡黄色の生成物を得る(収量:312.3mg、0.594mmol、82%)。
【0221】

【0222】
実施例22:メチル−2−[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィニル]−アセテートの調製
【化63】

【0223】
当該化合物は、実施例1d)において説明したような方法を用いて、トルエンおよびブロモ酢酸メチルエステルにおけるナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド(実施例1c)から調製する。黄色の油を得る(収量:227mg、0.55mmol、77%)。
【0224】

【0225】
実施例23:2−(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスホリル)アセトアミドの調製
【化64】

【0226】
当該化合物は、実施例1d)において説明したような方法を用いて、トルエンおよびブロモ酢酸アミドにおけるナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド(実施例1c)から調製する。淡黄色の生成物を得る(収率:87%、0.63mmol、251.4mg)。
【0227】

【0228】
実施例24:(3−(トリエトキシシリル)プロピル)−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスフィンオキシドの調製
【化65】

【0229】
ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド(実施例1c(4.28g、12.3mmol、1当量))をテトラヒドロフラン(10ml)に溶解させる。G.Dubois et al.,J.Mat.Chem.2002,12,2255に従って調製された3−ヨードプロピル−トリエトキシシラン(1.85g、8.78mmol、1当量)を加え、当該溶液を50℃で3時間撹拌する。テトラヒドロフランを真空で蒸発させ、残留した油をトルエンに溶解させる。ヨウ化ナトリウムの白色沈殿物が形成される。当該ヨウ化ナトリウムをセライトによるろ過によって除去した後、溶液を真空で蒸発させる。このようにして得られたホスファン(31P−NMR(C66、80.0MHz):δ=51.39)は、淡黄色の油である。それを、10mlのトルエンに溶解させる。50mgの炭酸水素カリウムを3.80ml(12.3mmol、1当量)の過酸化水素(10%)に溶解させる。この溶液をホスファンのトルエン溶液に加える。40℃で4時間の撹拌の後、酸化が完了する。ジエチルエーテル(50ml)を加え、当該溶液を、炭酸水素ナトリウム溶液(2%)で2回、塩水で1回洗浄し、最後に蒸留水で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した後、当該溶液を真空で濃縮する。黄色の油を得る(収量:6.19g、11.3mmol、92%)。
【0230】

【0231】
実施例25:(3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル)−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスフィンオキシドの調製
【化66】

【0232】
ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド(実施例1c)(3.05g、8.76mmol、1当量)をテトラヒドロフラン(10ml)に溶解させる。3−クロロプロピル−ジエトキシメチルシラン(1.85g、8.78mmol、1当量)およびヨウ化ナトリウム(0.48g、3.20mmol、0.37当量)を加え、当該溶液を50℃で18時間撹拌する。テトラヒドロフランを真空で蒸発させ、残留した油をトルエンに溶解させる。ヨウ化ナトリウムの白色沈殿物が形成される。当該ヨウ化ナトリウムをセライトによるろ過によって除去した後、当該溶液を真空で蒸発させる。このようにして得られたホスファン(31P NMR(121.49MHz、C66):δ=44.3)は淡黄色の油であり、これを、トルエン(10ml)に溶解させる。炭酸水素カリウム(50mg)を過酸化水素(10%)(1.08ml、3.53mmol、1当量)に溶解させ、この溶液を、ホスファンのトルエン溶液に加える。40℃で4時間の撹拌の後、酸化が完了する。50mLのジエチルエーテルを加え、当該溶液を、炭酸水素ナトリウム溶液(2%)で2回、塩水および蒸留水でそれぞれ1回洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過した後、当該溶液を真空で濃縮する(収量:3.98g、7.71mmol、88%)。
【0233】

【0234】
実施例26:(3−[ジエトキシ(フェニル)シリル]プロピル)−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスフィンオキシドの調製
【化67】

【0235】
ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド(実施例1c)(250mg、0.72mmol、1当量)を、テトラヒドロフラン(5ml)およびジメトキシエタン(3ml)の混合物に溶解させる。3−クロロプロピルジエトキシフェニルシラン(200mg、0.72mmol、1当量)を加え、当該溶液を50℃で20日間撹拌する。塩化ナトリウムの白色沈殿物をろ過により除去し、溶媒を室温で減圧下において蒸発させる。このようにして得られたホスファン(31P−NMR(121.49MHz、C66):δ=45.2)は淡黄色の油である。これをトルエン(10ml)に溶解させる。炭酸水素カリウム(50mg)を過酸化水素(10%)(0.20ml、0.72mmol、1当量)に溶解させる。この溶液をホスファンのトルエン溶液に加える。40℃で17時間の撹拌の後、酸化が完了する。ジエチルエーテル(50ml)を加え、当該溶液を、炭酸水素ナトリウム溶液(2%)で2回、塩水で1回洗浄し、最後に蒸留水で洗浄する。当該ジエチルエーテル溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した後、当該溶液を真空で濃縮させる。黄色の油を得る(収量:369mg、0.64mmol、89%)。
【0236】

【0237】
実施例27:プロピン−3−イル2−[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィニル]アセテートの調製
【化68】

【0238】
2.9g(7mmol)のメチル2−(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィニル)アセテート(実施例22)を10倍過剰な2−プロピン−1−オールに溶解させ、10モル%のジブチルスズジラウレートの存在下において90℃で12時間加熱する。過剰な2−プロピン−1−オールを減圧下において蒸留し、残留油を分取カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:トルエン/酢酸エチル=9:1)により精製する。黄色の油として、1.7g(55%)のプロピン−3−イル2−[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスホリル]アセテートを得る。
【0239】

【0240】
実施例28:2−(プロピン−3−オキシ)エチル2−[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィニル]アセテートの調製
【化69】

【0241】
実施例28の化合物は、2−プロピン−1−オールの代わりに2−(2−プロピン−1−イルオキシ)−エタノールを使用することを除いて、実施例27の1つと同様に調製する。
【0242】

【0243】
実施例29:2−[2−(プロピン−3−オキシ)−2−エトキシ]エチル2−(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィニル)アセテートの調製
【化70】

【0244】
実施例29の化合物は、2−プロピン−1−オールの代わりに2−[2−(プロピン−1−イルオキシ)エトキシ]エタノールを使用することを除いて、実施例27の1つと同様に調製する。
【0245】

【0246】
実施例30:2−(メタクリロイルオキシ)−エチル2−(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィニル)アセテートの調製
【化71】

【0247】
実施例30の化合物は、2−プロピン−1−オールの代わりに2−ヒドロキシエチルメタクリレートを使用することを除いて、実施例27の1つと同様に調製する。
【0248】

【0249】
実施例31:2−(アクリロイルオキシ)−エチル2−(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィニル)アセテートの調製
【化72】

【0250】
実施例31の化合物は、2−プロピン−1−オールの代わりに2−ヒドロキシエチルアクリレートを使用することを除いて、実施例27の1つと同様に調製する。
【0251】

【0252】
ポリマー固定化ビスアシルホスフィンオキシドの合成
実施例32:ポリ(エチル2−((ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスホリル)メチル)アクリレートの調製
【化73】

【0253】
エチル2−([ビス{2,4,6−トリメチルベンゾイル}ホスフィニル]メチル)アクリレート(実施例2)(250mg)をトルエン(5ml)に溶解させる。AIBN(3モル%)を加え、当該溶液を60℃で2日間撹拌する。溶媒を除去した後、淡黄色の固体を得る(収量:定量的)。
【0254】

【0255】
実施例33:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド部分を有するセルロースポリマーの調製
【化74】

【0256】
33a):セルローストシレートの調製
T.Heinze et al.,J.Appl.Polym.Sci.1996,60,1891に記載の合成に従って、トリエチルアミン(59.4ml、427.2mmol)およびジメチルアセトアミド(DMA)(40.6mL)の混合物を、DMA/LiCl(4.3%w/w)における20.2gの風乾セルロースの溶液に、撹拌しながら加える。約8℃まで冷却した後、DMA(60mL)におけるp−トルエンスルホニルクロリド(40.7g、213.6mmol)の溶液を、30分以内に滴加する。均一な反応混合物を8℃で24時間撹拌し、その後、ゆっくりと氷水(5L)中に注ぐ。沈殿物をろ別し、蒸留水(15L)およびエタノール(2L)の混合物で注意深く洗浄し、最後に、不純物を溶解させるためにアセトン(1L)中に懸濁させる。続いて、水(3L)を加え、ろ過によりアセトンからセルロースを分離する。ろ過し、エタノールで洗浄した後、当該試料を減圧下において50℃で乾燥させる(収率:75%)。置換度(DS)=1.36(硫黄分析に基づく)。
【0257】
33b):6−アジド−6−デオキシセルロースの調製
アジ化ナトリウム(7.49g、0.115mol)を、ジメチルホルムアミド(120ml)におけるトシルセルロース(実施例33aにおいて説明したようして調製)(7.0g、0.023mol;DS(置換度)=0.92)の溶液に加え、当該反応混合物を100℃で24時間撹拌する。単離は、当該混合物を水(600ml)において沈殿させ、当該ポリマーをろ過することにより実施する。水(250ml)で5回、エタノール(250ml)で5回洗浄した後、当該生成物を減圧下において60℃で乾燥させて、6−アジド−セルロースを得る。置換度(DS):0.88(元素分析により特定したN含有量から算出)。IEA:計算値:C38.92、H4.90、N20.88%;実測値:C37.94、H5.10、N19.4%。
【0258】

【0259】
33c):ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド部分を有するセルロースポリマーの調製
6−アジド−6−デオキシセルロース(DS:0.60)(0.3g、1.64mmol、1当量)および(プロパ−2−イン−イル)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィン(実施例4)(0.62g、1.64mmol、1当量)をジメチルスルホキシド(30ml)に溶解させる。水(5ml)における硫酸銅(II)五水和物(0.012g、0.049mmol、3モル%)の溶液と、水(5ml)中に溶解させたアスコルビン酸ナトリウム(0.019g、0.098mmol)の溶液とを加える。当該混合物を70℃で24時間撹拌した後、当該生成物を、メタノール(75ml)を加えることによって沈殿させる。当該ポリマーを、ろ過により収集する。当該生成物を、メタノール(200ml)で3回洗浄し、真空で乾燥させ、BAPO−セルロースを得る。置換度(DS):0.52(元素分析によって特定したN、C、およびH含有量から算出)。
【0260】

【0261】
実施例34〜50:ビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)部分で官能化されたシリコーン
実施例34〜50の化合物は、以下の基本手順により、シロキサン修飾BAPOおよび可能であるなら実施例において示されたようなアルコキシシランコモノマーを使用して調製する。
【0262】
トルエンにおける対応するBAPO官能化ジ−またはトリ−アルコキシシランおよびコモノマーの希釈溶液を、過剰な塩酸(1%)と一緒に、40℃で2時間撹拌する。有機相を分離し、炭酸水素ナトリウム溶液(2%)で1回、塩水で2回洗浄する。硫酸ナトリウムで乾燥させた後、室温にて真空でトルエンを除去する。淡黄色の生成物を、ほぼ定量的収量において得る。
【0263】
実施例34:ポリ(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
【化75】

出発物質:実施例24の3−(トリエトキシシリル)プロピル)−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシド

【0264】
実施例35:ポリ(3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
【化76】

出発物質:実施例25の3−(ジエトキシメチル)シリルプロピル)(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシド

【0265】
実施例36:ポリ(3−(ジエトキシフェニルシリル)プロピル)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
【化77】

出発物質:実施例26の3−(ジエトキシフェニル)シリルプロピル)(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシド

【0266】
実施例37:(3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル)ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジメトキシジメチルシランコポリマーの調製
【化78】

比率 m:y=1:20
コポリマーにおけるn基およびm基の分布は統計的であり、したがって、「ランダムコポリマー」を表す。
出発物質:実施例25の3−(ジエトキシメチル)シリルプロピル)(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシド/ジメトキシジメチルシラン、比率は1:20。
【0267】

【0268】
実施例38:(3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル)−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシジメチルシランコポリマーの調製
【化79】

比率 m:y=5:95
コポリマーにおけるn基およびm基の分布は統計的であり、したがって、「ランダムコポリマー」を表す
出発物質:実施例25の3−(ジエトキシメチル)シリルプロピル)−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシジメチルシラン、比率は5:95。
【0269】

【0270】
実施例39:(3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル)ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシジメチルシランコポリマーの調製
【化80】

比率 m:y=1:20
コポリマーにおけるn基およびm基の分布は統計的であり、したがって、「ランダムコポリマー」を表す
出発物質:実施例25の3−(ジエトキシメチル)シリルプロピル)−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド/ジエトキシジメチルシラン、比率は1:20。
【0271】

【0272】
実施例40:(3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル)ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシジメチルシランコポリマーの調製
【化81】

比率 m:y=1:9
コポリマーにおけるn基およびm基の分布は統計的であり、したがって、「ランダムコポリマー」を表す
出発物質:実施例25の3−(ジエトキシメチル)シリルプロピル)−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド/ジエトキシジメチルシラン、比率は1:9。
【0273】

【0274】
実施例41:(3−(ジエトキシフェニルシリル)プロピル)ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジメトキシジメチルシランコポリマーの調製
【化82】

比率 m:y=1:20
コポリマーにおけるn基およびm基の分布は統計的であり、したがって、「ランダムコポリマー」を表す
出発物質:実施例26の3−(ジエトキシフェニル)シリルプロピル)−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド/ジメトキシジメチルシラン、比率は1:20。
【0275】

【0276】
実施例42:(3−(ジエトキシフェニルシリル)プロピル)ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシジメチルシランコポリマーの調製
【化83】

比率 m:y=1:20
コポリマーにおけるn基およびm基の分布は統計的であり、したがって、「ランダムコポリマー」を表す
出発物質:実施例26の3−(ジエトキシフェニル)シリルプロピル)−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシジメチルシラン、比率は1:20。
【0277】

【0278】
実施例43:(3−(ジエトキシフェニルシリル)プロピル)ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシジメチルシランコポリマーの調製
【化84】

比率 m:y=1:9
コポリマーにおけるn基およびm基の分布は統計的であり、したがって、「ランダムコポリマー」を表す
出発物質:実施例26の3−(ジエトキシフェニル)シリルプロピル)−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシジメチルシラン、比率は1:9。
【0279】

【0280】
実施例44:(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/トリエトキシ(ビニル)シランコポリマーの調製
【化85】

比率 m:y=1:1
コポリマーにおけるn基およびm基の分布は統計的であり、したがって、「ランダムコポリマー」を表す
出発物質:実施例24の3−(トリエトキシシリル)プロピル)−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスフィンオキシド/トリエトキシビニルシラン、比率は1:1。
【0281】

【0282】
実施例45:(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド/トリエトキシ(ビニル)シランコポリマーの調製
【化86】

比率 m:y=1:3
コポリマーにおけるn基およびm基の分布は統計的であり、したがって、「ランダムコポリマー」を表す
出発物質:実施例24の3−(トリエトキシシリル)プロピル)(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシド/トリエトキシビニルシラン、比率は1:3。
【0283】

【0284】
実施例46:(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/トリエトキシ(ビニル)シランコポリマーの調製
【化87】

比率 m:y=1:20
コポリマーにおけるn基およびm基の分布は統計的であり、したがって、「ランダムコポリマー」を表す
出発物質:実施例24の3−(トリエトキシシリル)プロピル)(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシド/トリエトキシビニルシラン、比率は1:20。
【0285】

【0286】
実施例47:(3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシ(メチル)(ビニル)シランコポリマーの調製
【化88】

比率 m:y=1:1
コポリマーにおけるn基およびm基の分布は統計的であり、したがって、「ランダムコポリマー」を表す
出発物質:実施例25の3−(ジエトキシ[メチル]シリル)−プロピル)−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシメチルビニルシラン、比率は1:1。
【0287】

【0288】
実施例48:(3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシ(メチル)(ビニル)シランコポリマーの調製
【化89】

比率 m:y=1:3
コポリマーにおけるn基およびm基の分布は統計的であり、したがって、「ランダムコポリマー」を表す
出発物質:実施例25の3−(ジエトキシ[メチル]シリル)プロピル)−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシメチルビニルシラン、比率は1:3。
【0289】

【0290】
実施例49:((3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル)ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシ(メチル)−(ビニル)シランコポリマーの調製
【化90】

比率 m:y=1:20
コポリマーにおけるn基およびm基の分布は統計的であり、したがって、「ランダムコポリマー」を表す
出発物質:実施例25の3−(ジエトキシ[メチル]シリル)プロピル)−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシメチルビニルシラン、比率は1:20。
【0291】

【0292】
実施例50:(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシジメチルシランコポリマーの調製
【化91】

比率 m:y=1:9
コポリマーにおけるn基およびm基の分布は統計的であり、したがって、「ランダムコポリマー」を表す
出発物質:実施例24の3−(トリエトキシシリル)プロピル)(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスフィンオキシド/ジエトキシジメチルシラン、比率は1:9。
【0293】

【0294】
実施例51:(5−ノルボルネン−2−ブチル)−4−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/ノルボルネンコポリマーの調製
【化92】

【0295】
(5−ノルボルネン−2−ブチル)−4−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスファンオキシド(0.5g、1.01mmol、1当量)およびノルボルネン(1.89g(20.2mmol、20当量))を、ジクロロメタン(50ml)に溶解させる。グラブス触媒第一世代(3モル%、509mg)を加え、当該溶液を2時間還流する。続いて、反応を停止させるために、ビニルエチルエーテル(1ml)を加える。当該反応混合物を、セライトによりろ過する。ろ液をメタノール(100ml)に加える。即座にポリマーが沈殿する。
【0296】

【0297】
実施例52:メチル−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド部分を含むポリスチレンの調製
【化93】

【0298】
20mLのシュレンクフラスコにおいて、ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド(実施例1c)(100mg、0.26mmol、1当量)を、トルエン(5.00ml)およびテトラヒドロフラン(5ml)の混合物に溶解させる。ポリ(ブロモメチルスチレン)(51.9mg、0.26mmol、1当量)を加え、当該溶液を60℃で72時間撹拌した。白色沈殿物をろ別し、ろ液を真空で濃縮した。残留する油をトルエンに溶解させ、過酸化水素(10%)(0.01ml、0.26mmol、1当量)を加える。4時間後、ホスファンの酸化が完了する。トルエン(15ml)を加えた後、当該溶液を、炭酸水素ナトリウム水溶液(2%)で2回、塩水で2回洗浄し、最後に硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を除去し、生成物を高真空で2時間乾燥させる(収量:87.02mg、0.19mmol、74%)。
【0299】

【0300】
実施例53:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド部分を含むポリスチレンの調製
【化94】

【0301】
20mLのシュレンクフラスコにおいて、ナトリウムビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィド(実施例1c)(100mg、0.26mmol、1当量)を、トルエン(10.0ml)に溶解させる。ポリ(p−ヨードスチレン)(51.9mg、0.26mmol、1当量)および[Pd(dba)2](4.86mg、0.014mmol、5モル%)を加える。当該溶液を、85℃で72時間撹拌する。続いて、白色沈殿物をセライトでろ別し、ろ液を真空で濃縮する。ホスファンの酸化の前にすべてのヨウ化ナトリウムを除去することが重要である。残留するオイルをトルエンに溶解させ、マイクロリットルシリンジによって過酸化水素(0.01mL、0.26mmol、1当量)を加える。4時間後、ホスファンの酸化が完了する。トルエン(15ml)を加えた後、当該溶液を、炭酸水素ナトリウム水溶液(2%)で2回、塩水で2回洗浄し、最後に硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を除去し、生成物を高真空で2時間乾燥させる(収量:123.3mg、0.236mmol、91%)。
【0302】

【0303】
実施例54:2−(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスホリル)−酢酸置換コットンの調製
【化95】

【0304】
コットン片(10x10cm)を、ジクロロメタンにおける2−(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスホリル)−酢酸(実施例18)(200mg)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(200mg)の溶液30ml中において1時間、40℃に温める。続いて、化学的に結合していない有機物質を除去するために、当該コットンを、純粋なジクロロメタンに2回、その都度2時間浸漬し、空気乾燥させる。このようにして、2−(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスホリル)官能化コットンを得る。
【0305】
実施例55:(4−ビニルベンジル)−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンとスチレンとの共重合
【化96】

【0306】
0.78g(1.71mmol、1当量)の新たに調製した(4−ビニルベンジル)−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィン(実施例1)および1.8mL(1.6g、15.4mmol、9当量)のスチレンを、0.6mLのトルエンに溶解させる。47.6mg(2%w/w)のAIBNを加え、当該溶液を60℃で50時間撹拌する。続いて、ポリマーを溶解させるために、形成された黄色のゲルに5mlのトルエンを加える。次いで、石油エーテルを加えることにより、当該ポリマーを沈殿させる。この手順を2回繰り返した後、当該ポリマーをろ別し、石油エーテルで洗浄する。当該ポリマーを減圧下において乾燥させ、2.121gの(4−ビニルベンジル)−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィン/スチレンコポリマーを得る。転換率:87.4%。
【0307】
実施例56:(エチル−2−([ビス{2,4,6−トリメチルベンゾイル}−ホスホリル]−メチル)アクリレートとスチレンとの共重合
【化97】

【0308】
1.31g(2.88mmol、1当量)の(エチル−2−([ビス{2,4,6−トリメチルベンゾイル}−ホスホリル]−メチル)アクリレート(実施例2)および2.98mL(2.7g、25.9mmol、9当量)のスチレンを、1mlのトルエンに溶解させる。80mg(2質量%)のAIBNをこの溶液に加え、当該溶液を60℃で60時間撹拌する。ポリマーを溶解させるために、形成された黄色のゲルに5mLのトルエンを加える。続いて、石油エーテルを加えることにより、当該ポリマーを沈殿させる。この手順を2回繰り返し、当該ポリマーをろ別し、石油エーテルで洗浄する。当該ポリマーを減圧により乾燥させて、2.3gの(エチル2−([ビス{2,4,6−トリメチルベンゾイル}−ホスホリル]−メチル)アクリレート/スチレンコポリマーを得る。転換率:55.6%。
【0309】
適用例
実施例A1:ビニル置換BAPO官能化シリコーンの光誘起ゲル化
実施例41〜46のビニル−およびBAPO官能化コポリマーをベンゼンに溶解させ、対応する溶液を、中圧水銀ランプにより5分間照射し、結果、淡黄色のゲルの形成が生じる。形成される様々なゲルの1グラムあたりに閉じ込められるベンゼンの量を表に示す。
【0310】
【表1】

【0311】
実施例A2:BAPO−シロキサンによるコットンの官能化
A2−a):BAPO官能化セルロースの調製
未処理のコットン織物片(6×20cm)を、ジクロロメタンにおける実施例24、25、および26のBAPO−置換シロキサンの6.5%w/w溶液に15分間浸漬する。このようにして得られた材料を、当該織物に化学的に固定されていないすべてのBAPO置換シロキサンを除去するために、純粋なジクロロメタンに2回、2時間浸漬する。このようにして得られたオフホワイトないし淡黄色の材料を空気乾燥させて、それぞれ、実施例24、25、または26のBAPOシロキサンによって官能化されたコットン織物A2−a1、A2−a2、またはA2−a3を得る。
【0312】
A2−b):BAPO官能化セルロースの修飾
実施例A2−a1、A2−a2、およびA2−a3の官能化コットン織物を、n−ヘキサンにおける1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレートの5%w/w溶液に浸漬する。当該溶液中の織物を、中圧水銀ランプによって10分間照射し、続いて、それをソックスレー抽出器に入れ、材料に化学的に固定されていないものすべてを、ジクロロメタンによる連続抽出によって除去する。このようにして、化学的に固定された、ポリ(1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート)の層で修飾されたコットン織物A2−b1、A2−b2、およびA2−b3を得る。
【0313】
A2−c):撥水性の測定
処理されたコットン織物A2−b1、A2−b2、およびA2−b3の撥水性は、当該織物上に水を滴下し、未使用(非処理)コットン上に同じ手順で滴下した水の液滴に対して、それらによる吸収時間を比較することにより試験する。すべての実施例A2−b1、A2−b2、およびA2−b3において、吸収時間は、未処理コットンより長く、改質されたコットンの撥水効果を実証している。
【0314】
実施例A3:BAPO−シリコーンによるコットンの官能化
A3−a):BAPO官能化セルロースの調製
未使用コットン織物片(6x20cm)を、BAPO−置換シロキサンの代わりに実施例31〜33のBAPO−シリコーンホモポリマーあるいは実施例37、40、および47のコポリマーの6%w/w溶液を使用することを除いて、実施例A2−a)において説明したように処理する。このようにして、BAPO−修飾コットン織物A3−a1、A3−a2、およびA3−a3を得る。
【0315】
A3−b):BAPO官能化セルロースの修飾
実施例A3−a1、A3−a2、およびA3−a3の官能化コットン織物を、n−ヘキサンにおける1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレートの5%w/w溶液に浸漬し、実施例A2−b)について説明したように処理する。このようにして、化学的に固定された、ポリ(1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート)の層によって修飾されたコットン織物A3−b1、A3−b2、およびA3−b3を得る。
【0316】
A3−c):撥水性の測定
処理されたコットン織物A3−b1、A3−b2、およびA3−b3の撥水性は、実施例A2−c)において説明した方法により試験する。すべての実施例A3−b1、A3−b2、およびA3−b3において、吸収時間は、未処理コットンより著しく長く、修飾されたコットンの撥水効果を実証している。シロキサン−BAPO/シロキサンコポリマーによって処理した試料は、モノマーで処理した試料より高い撥水性を示す。
【0317】
実施例A4:BAPO官能化コットン上へのフェノールフタレインの光誘起化学吸着
BAPO官能化コットン(実施例30c)を、テトラヒドロフランにおけるフェノールフタレインの濃縮溶液に浸漬し、中圧水銀ランプにより照射する。化学的に固定されていないフェノールフタレインを除去するために、テトラヒドロフランおよびエタノールで12時間激しく洗浄して、未使用の素材を得る。当該コットンを水に浸漬し、水酸化ナトリウム溶液(1%)を1滴加えると、当該コットンは赤色になり、当該コットンに化学的に固定されたフェノールフタレインの存在を示す。
【0318】
実施例A5:BAPO−修飾ポリ(ノルボルネン)ポリマーによるシリコンウェハのパターン形成
クロロホルムにおける実施例48の(5−ノルボルネン−2−ブチル)−4−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/ノルボルネンコポリマーの5(質量)%溶液の1滴を、シリコンウェハ上に滴下して、薄膜を得る。この薄膜上に、マスクとして銅ネット(0.14mmメッシュ)を置く。続いて、数滴のエチルアクリレートを、当該ネットの上に滴加する。中圧水銀ランプで10分間照射した後、当該銅ネットを除去すると、露光されたエリアにおけるポリアクリレートコーティングと、ネット構造体によりマスクされたエリアにおける当該コーティングで覆われていないシリカの線とを有する構造化された表面が残る。
【0319】
実施例A6:BAPO−修飾ポリ(シロキサン)ポリマーによるシリコンウェハのパターン形成
A6−a):ポリ(シロキサン)/ポリ(アクリレート)構造体
ポリ(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(実施例31)を溶解させたクロロホルムの1滴をシリコンウェハ上に滴下し、溶媒を蒸発させて薄膜を得る。数滴のエチルアクリレートを当該薄膜の上に加え、当該シリコンウェハの半分をアルミホイルで覆う。次いで、当該ウェハを、高圧水銀ランプの照射により露光する。アルミホイルによって覆われた部分には、ポリシロキサンポリマーが見られるが、露光した部分は、アクリルポリマーで覆われている。
【0320】
A−6b):ポリ(シロキサン)/ポリ(アクリロニトリル)構造体
実施例A6−a)と同様に、調製したポリ(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(実施例31)でコーティングされたウェハ上に、銅ネットを置く。数滴のアクリロニトリルを加え、中圧水銀ランプにより当該試料を照射する。銅ネットを除去した後、SEM分析は、照射されたゾーンにポリ(アクリルニトリル)ポット(直径:約50μm)と、遮蔽されたエリアにポリシロキサンコーティングとを有する構造化された表面を示している。
【0321】
実施例A7:ナトリウム2−(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスホリル)アセテートを用いた光誘起乳化重合
100mlの円筒形シュレンクフラスコにおいて、脱ガス処理した蒸留水(33.5ml)、脱ガス処理したドデシル硫酸ナトリウム溶液(1.00ml)、新たに蒸留したスチレン(10.0g)、および2−(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスホリル)アセテート(実施例19)(30.0mg)を、アルゴン雰囲気下において混合する。当該反応混合物を、テフロンコーティングされた大きなマグネティック撹拌棒で激しく撹拌する。当該反応混合物を、中圧水銀UVランプで30分間照射する。UVランプを消した後、反応を完了させるために、当該溶液を72時間撹拌する。反応を停止させるために、1滴のヒドロキノン水溶液(1%)を加える。当該白色ラテックスを、スクリューキャップ付きのガラスフラスコの中へ、コットンウールでろ過する(収率:96%)。分析のため、以下に説明するようにしてポリマー試料を調製する。
【0322】
GPC:溶媒を真空で除去する。残留する白色粉末をクロロホルムで希釈する。光散乱法:1滴のラテックスを5mlの水で希釈する。この希釈したエマルションでセルを満たす。収量分析:ペトリ皿(7cm直径)を、3mmの乾燥砂(12時間、110℃、真空で数日間)で満たし、秤量する。続いて、1mlのラテックスを加える。その後、それを、真空で110℃にて12時間、オーブンに入れる。ペトリ皿を再び秤量する。質量の違いが、当該ラテックスの固形分の収量である。
【0323】
実施例A8:UV硬化性白色コーティングの硬化
UV硬化性白色コーティングを、
67.5部のポリエステルアクリレートオリゴマー(RTMEBECRYL 830、UCB、ベルギー)と、
5.0部のヘキサンジオールジアクリレートと、
2.5部のトリメチロールプロパントリアクリレートと、
25.0部のルチル二酸化チタン(RTMR−TC2、Tioxide、フランス)と
を混合することにより調製する。
【0324】
2質量%の(3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル)−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシジメチルシランコポリマー(実施例38)を、50℃で1時間混ぜ合わせることにより当該配合物に溶解させる。
【0325】
当該コーティング剤を、60μmのワイヤを巻いたバーコーターを用いて、コイルコーティングされたアルミニウムシートに塗布し、次いで硬化させる。硬化は、10m/分のスピードで移動しているコンベアベルト上で当該試料を2つの100W/cm中圧水銀ランプ(IST Minicure)の下を通過させることによって実施する。
【0326】
続いて、硬化させたコーティングを評価する。全体の硬化は、振り子硬度により達成された秒数で評価する。表面の硬化は、ATR分光分析により、表面での二重結合の転換率を測定することによって特定する。同様に、硬化させたコーティングをアルミニウムシートから剥がした後に、ATRによりコーティングの底部での二重結合の転換率を特定する。
コーティングの黄色度は、カラー測定装置Minolta 2600 dを使用して測定する。黄色度は、タイプTL 40W/03(Philips、430nmにおいて発光最大)の低圧水銀ランプへの暴露による硬化の直後、ならびに硬化の15分後または120分後それぞれにおいて測定する。得られた結果を第1表にまとめる。
【0327】
実施例A9:光開始剤ブレンドを含むUV−硬化性白色コーティングの硬化
白色コーティングの硬化は、フェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトン(Irgacure(登録商標) 184、BASF SE)(80部)および20部の(3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル)−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/ジエトキシジメチルシランコポリマー(実施例38)の混合物を光開始剤として使用することを除いて、実施例A8において説明したのと同様に繰り返す。結果を第1表にまとめる。
【0328】
第1表
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のビスアシルホスフィンオキシド部分によって置換されたオリゴマーまたはポリマーであって、前記ビスアシルホスフィンオキシド部分が、リン原子を介して、場合によりスペーサー基を介して、前記オリゴマーまたはポリマー骨格に結合しており、オリゴマーまたはポリマーが、式Ia:
【化1】

[式中、
mは、2以上の整数であり、
yおよびzは、互いに独立して、0〜15000の整数であり、
Aは、
【化2】

であって、この場合、アスタリスクはXへの結合を意味しており、
1およびB2は、互いに独立して、
【化3】

であり、
この場合、A、B1、およびB2は、ランダム重合またはブロック重合によって同じポリマー骨格中に組み入れられており、
Xは、直接結合、C1〜C10−アルキレン、−(CH2o−NH−CO−O−(CH2p−*、−(CH2o−NH−CO−O−CH2−CHOH−CH2−*、−(CH2o−NH−CO−NH−(CH2p−*、−(CH2o−NH−CO−S−(CH2p−*、−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−NH−(CH2p−*、*−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−NH−(CH2p−、−(CH2o−CO−O−(CH2p−*、−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−S−(CH2p−*、*−(CH2o−O−CO−CHR3−CH2−S−(CH2p−、−(CH2o−O−CO−CH(COCH3)−CH2−C(COOR3)CH2−*、−(CH2o−NH−CH2−CH2−C(COOR3)CH2−*、−(CH2o−S−(CH2o−C(COOR3)CH2−*、−(CH2o−O−CO−CH(COCH3)−CH2−CHR3−CO−O−(CH2−CH2−O)t(CO)CH2−*、−(CH2o−NH−CH2−CHR3−CO−O−(CH2−CH2−O)t(CO)CH2−*、−(CH)o−S−CH2−CHR3−CO−O−CH2−CH2−*、−(CH2o−S−CH2−CHR3−CO−O−(CH2−CH2−O)t(CO)CH2−*、−(CH2o−NH−CH2−CHR3−CO−O−CH2−CH2−*、−(CH2o−O−CO−CH(COCH3)−CH2−CHR3−CO−O−CH2−CH2−*、−(CH2o−CO−O−CH2−CHOH−CH2−*、−(CH2o−O(CO)−CH2−*、−(CH2CH2O)t−(CO)−CH2−*、−(CH2o−CHOH−CH2−O(CO)−CH2−*、または
【化4】

であって、この場合、アスタリスクは、前記ビスアシルホスフィンオキシド部分への結合を意味しており、
o、p、およびqは、互いに独立して、1〜4の整数であり、
rは、0〜2の整数であり、
sは、0または1であり、
tは、1または2の整数であり、
1は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、ならびに
2は、水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、
3は、水素またはメチルであり、
4は、C1〜C4アルキルであり、
5は、メチル、フェニル、またはエトキシであり、
6は、C1〜C10アルキルまたはC1〜C9ペルフルオロアルキルであり、
7は、無置換あるいはC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、またはClによって置換されている、 1〜C10アルキル、−CH2−O−C1〜C10アルキル、−CH2−O−(CH2o−C5〜C8シクロアルキル、−CH2−O−(CH2o−C6〜C10アリール、C1〜C9ペルフルオロアルキル、−CH2−O−C1〜C10ペルフルオロアルキル、−CH2−O−C6〜C10アリールであり、
8は、水素、C1〜C8アルキル、(CO)O−R15、またはCNであり、
9は、水素、(CO)O−R15であり、
あるいはR8およびR9が一緒になって、−(CH2w−、−CH=CH−CH2−、−(CO)−O−(CO)−、−(CO)−N(R16)−CO−、または
【化5】

であり、
10は、水素、C1〜C8−アルキル、または−SO3-+であり、
11は、水素であり、
あるいはR10およびR11は一緒になって、−O−CH2CH2−O−であり、
12およびR13は、互いに独立して、C1〜C4−アルキル、ビニル、フェニル、またはC1〜C4アルコキシであり、
14は、水素、CH2Br、CH2Cl、またはIであり、
15は、水素、C1〜C4−アルキル、またはベンジルであり、
16は、C1〜C4アルキルまたはフェニルであり、
wは、3〜10の整数であり、
Eは、陽イオンであり、ならびに
Zは、CH2またはOである
]の単位を含むことを特徴とするオリゴマーまたはポリマー。
【請求項2】
請求項1に記載の式Iaのオリゴマーまたはポリマーであって、
zは0であり、
yは0であるか、または請求項2において定義されたmと、mの20倍との間の整数であり、
1は、C1〜C4−アルキルであり、
2は、C1〜C4−アルキルであり、
Xは、直接結合、C1〜C10−アルキレン、−(CH2O−O(CO)−CH2−*、または
【化6】

であって、この場合、アスタリスクは、前記ビスアシルホスフィンオキシド部分への結合を意味しており、
oおよびqは1であり、
rは0であり、
sは0であり、
Aは、
【化7】

であって、この場合、アスタリスクはXへの結合を意味しており、
1は、
【化8】

であり、
この場合、AおよびB1は、ランダム重合またはブロック重合によって同じポリマー骨格中に組み入れられており、
4は、C1〜C4アルキルであり、
5は、メチル、フェニル、またはエトキシであり、
8は水素であり、
9は水素であり、
12およびR13は、互いに独立して、C1〜C4−アルキル、ビニル、またはC1〜C4アルコキシであり、
14は、水素、CH2Br、またはIであり、
Zは、CH2である、
オリゴマーまたはポリマー。
【請求項3】
ビスアシルホスフィンオキシド官能化ポリスチレン、ビスアシルホスフィンオキシド官能化ポリノルボルネン、ビスアシルホスフィンオキシド官能化ポリアクリレート、ビスアシルホスフィンオキシド官能化ポリチオフェン、ビスアシルホスフィンオキシド官能化ポリシロキサン、ビスアシルホスフィンオキシド官能化バイオポリマー、ビスアシルホスフィンオキシド官能化ポリエポキシド、ビスアシルホスフィンオキシド官能化ポリビニルエステル、およびビスアシルホスフィンオキシド官能化樹枝状ポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載のオリゴマーまたはポリマー。
【請求項4】
式(II):
【化9】

[式中、
1は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、
2は、H、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、
Yは、−(CH2a−または−CH2−CHOH−CH2−であり、
aは、1〜10の整数であり、
FGは、Cl、Br、OH、SH、NH2、N3、COOH、COO-+、COOCH3、COONH2
【化10】

であり、
bは、0、1、または2であり、
cは、1または2であり、
3は、水素またはメチルであり、
4は、C1〜C4アルキル、特に、エチルであり、
5およびR5aは、互いに独立して、メチル、フェニル、またはエトキシであり、
Eは、陽イオンであり、
ただし、aが1の場合、FGは、COOCH3または
【化11】

ではない]の、官能化ビスアシルホスフィンオキシド化合物。
【請求項5】
請求項2において定義された式Iのポリマーまたはオリゴマーの製造のための、式IIa:
【化12】

[式中、
1は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、
2は、H、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、
Yは、−(CH2a−または−CH2−CHOH−CH2−であり、
aは、1〜10の整数であり、
FGは、Cl、Br、OH、SH、NH2、N3、COOH、COO-+、COOR17、CH=CH2
【化13】

、COONH2
【化14】

であり、
bは、0、1、または2であり、
cは、1または2であり、
3は、水素またはメチルであり、
4は、C1〜C4アルキル、特に、エチルであり、
5およびR5aは、互いに独立して、メチル、フェニル、またはエトキシであり、
Eは、陽イオン、特にNa、K、またはLiであり、
17は、C1〜C4アルキルまたはCH=CH2である]の化合物の使用。
【請求項6】
請求項1おいて定義された式Iのポリマーまたはオリゴマーの製造のための、請求項4において定義された式IIの化合物の使用。
【請求項7】
請求項1から3までのいずれか1項において定義された、1つ以上のビスアシルホスフィンオキシド部分によって置換されているオリゴマーまたはポリマーの合成方法であって、前記生成物が、請求項4において定義された式IIの官能化されたビスアシルホスフィンオキシド化合物または請求項5において定義された式IIaの官能化されたビスアシルホスフィンオキシド化合物の、単独重合、あるいは場合によりビスアシルホスフィンオキシド部分を有さない1種以上のモノマーとの共重合によって、場合により好適な触媒を使用して、得られることを特徴とする前記合成方法。
【請求項8】
請求項1から3までのいずれか1項において定義された、1つ以上のビスアシルホスフィンオキシド部分によって置換されているオリゴマーまたはポリマーの合成方法であって、前記生成物が、請求項4において定義された式IIのビスアシルホスフィンオキシド化合物における官能基「FG」と、または請求項5において定義された式IIaのビスアシルホスフィンオキシド化合物における官能基「FG」と、前記ビスアシルホスフィンオキシド化合物上の前記官能基と反応可能な、ポリマーまたはコポリマー骨格上の第二官能基との反応によって、場合により好適な触媒を使用して得られることを特徴とする前記合成方法。
【請求項9】
請求項1から3までのいずれか1項において定義された、1つ以上のビスアシルホスフィンオキシド部分によって置換されているオリゴマーまたはポリマーの合成方法であって、前記生成物が、対称または非対称な金属ビスアシルホスフィドオキシドと、前記金属ビスアシルホスフィドと反応可能なポリマーまたはコポリマー骨格上の官能基との反応、ならびにその後の好適な酸化剤による酸化によって得られることを特徴とする前記合成方法。
【請求項10】
請求項1から3までのいずれか1項において定義された1つ以上のビスアシルホスフィンオキシド部分によって置換されたオリゴマーまたはポリマーの、光開始剤としての使用であって、フラッド照射または像様照射のいずれかによる表面および粒子の官能化のための、好適なモノマーの存在下での照射による布地の貴化ための、または非極性環境でのゲルの光誘起形成のための前記使用。
【請求項11】
(A)少なくとも1種のエチレン性不飽和光重合性化合物と、
(B)光開始剤としての、請求項1において定義された1つ以上のビスアシルホスフィンオキシド部分によって置換されている少なくともオリゴマーまたはポリマーと
を含む光重合性組成物。
【請求項12】
成分(A)および(B)に加えて、さらなる光開始剤(C)および/またはさらなる添加剤(D)を含む、請求項11に記載の光重合性組成物。
【請求項13】
(A*)水中に乳化、分散、または溶解されている少なくとも1種のエチレン性不飽和光重合性化合物と、
(B*)光開始剤として、式IIb:
【化15】

[式中、
1は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、
2は、H、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、またはClであり、
Yは、−(CH2a−または−CH2−CHOH−CH2−であり、
aは、1〜10の整数であり、
FGは、COOH、
【化16】

、COO-+
【化17】

であり、
Eは、陽イオン、特にNaである]の化合物と
を含む光重合性組成物。
【請求項14】
請求項11から13までのいずれか1項に記載の組成物によって少なくとも1つの表面がコーティングされている被覆基材。

【公表番号】特表2012−532238(P2012−532238A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518889(P2012−518889)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059175
【国際公開番号】WO2011/003772
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】