説明

ポリマーを製造するための2−イソプロピル−2−アルキル−1,3−プロパンジオールの使用

モノマー化合物の重縮合またはポリ付加形成によって得られたポリマーであって、モノマー化合物として式(I)の2−イソプロピル−2−アルキル−1,3−プロパンジオールまたはそのアルコキシル化誘導体が共用されていることによって特徴付けられる、モノマー化合物の重縮合またはポリ付加形成によって得られたポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマー化合物を重縮合するかまたはポリ付加形成することによって得られるポリマーに関し、この場合モノマー化合物として式I
【化1】

で示される2−イソプロピル−2−アルキル−1,3−プロパンジオールまたはそのアルコキシル化誘導体が共用される。
【0002】
ジオールは、ポリマー、例えばポリエステルまたはポリウレタンの製造に必要とされる。欧州特許出願公開第562578号明細書には、例えばポリエステルの製造のために種々のシクロヘキサンジオール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノールまたは1,4−シクロヘキサンジエタノールを使用することが記載されている。
【0003】
ポリエステルの製造のために2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールを使用することは、特開平03−161452号公報の記載から公知である。
【0004】
原則的に、ポリマーの異なる使用の際にポリマーの使用技術的性質を改善することは、望ましい。
【0005】
ポリマーを結合剤として塗料、接着剤またはシーラントに使用する場合には、粘度は、溶融粘度(100%の系)であるかまたは溶液粘度(ポリマー溶液)であるかが重要である。形成された塗膜は、塗膜形成の用途に対して良好な機械的性質、例えば衝撃靭性および弾性率、高い耐引掻強さおよび耐衝撃強さ、水、溶剤、脂肪および化学薬品、および環境への影響に対する良好な安定性、ならびに高い光沢を有している。
【0006】
本発明の課題は、この種のポリマーを提供することであった。
【0007】
この課題は、モノマー化合物として式I
【化2】

〔式中、Rは、1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表わす〕で示される2−イソプロピル−2−アルキル−1,3−プロパンジオールまたはそのアルコキシル化誘導体を使用することを特徴とする、モノマー化合物を重縮合するかまたはポリ付加形成することによって得られるポリマーによって解決される。
【0008】
好ましくは、本発明によるポリマーは、式Iのモノマー化合物またはそのアルコキシル化誘導体としてRがメチルまたは3−メチル−ブチルを表わすようなものが使用されることによって特徴付けられている。
【0009】
好ましくは、本発明によるポリマーは、式Iの化合物がアルドール−カンニザロ反応(Aldol-Cannizarro-Reaktion)における3−メチル−2−アルキルブタナールとホルムアルデヒドとの反応によって得られたものであるかまたはアルドール反応および引続く水素化によって得られたものであることによって特徴付けられている。
【0010】
好ましくは、本発明によるポリマーは、ポリエステルであることによって特徴付けられている。
【0011】
好ましくは、本発明によるポリマーは、アルコールの脱離下にジアルキルカーボネートまたは環式カーボネートとジオールとの反応によって得られるポリカーボネートジオールであることによって特徴付けられている。
【0012】
好ましくは、本発明によるポリマーは、ポリウレタンであることによって特徴付けられている。
【0013】
好ましくは、本発明によるポリマーは、ラクトンまたはラクタムの開環重合によって得られるポリ付加物であることによって特徴付けられている。
【0014】
更に、本発明の対象は、熱可塑性組成物の製造のために本発明によるポリマーを使用することである。
【0015】
更に、本発明の対象は、本発明によるポリマーおよび/または本発明によるポリマーの繰返し単位を含有する熱可塑性組成物である。
【0016】
更に、本発明の対象は、成形体の製造のために本発明による熱可塑性組成物を使用することである。
【0017】
更に、本発明の対象は、塗料、シーラントまたは接着剤の製造のために本発明によるポリマーを使用することである。
【0018】
更に、本発明の対象は、本発明によるポリマーの繰返し単位を含有する、塗料、シーラントまたは接着剤である。
【0019】
好ましくは、本発明による塗料、シーラントまたは接着剤は、水性材料であることによって特徴付けられている。
【0020】
更に、本発明の対象は、粉末塗料を製造するために本発明によるポリマーを使用することである。
【0021】
更に、本発明の対象は、本発明によるポリマーの繰返し単位を含有する粉末塗料である。
【0022】
更に、本発明の対象は、放射線硬化可能な塗料を製造するために本発明によるポリマーを使用することである。
【0023】
更に、本発明の対象は、本発明によるポリマーの繰返し単位を含有する、放射線硬化可能な塗料である。
【0024】
本発明によるポリマーの製造のために、Rが1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であるような式Iの化合物またはそのアルコキシル化誘導体が使用される。好ましくは、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、1−メチル−ブチル、2−メチル−ブチル、3−メチル−ブチル、第三ブチルの群から選択されている。特に好ましいのは、メチルまたは3−メチル−ブチルである。
【0025】
一般式Iの化合物のアルコキシル化誘導体は、アルキレンオキシドまたはアルキレンオキシドからの混合物との反応生成物である。アルキレンオキシドの例は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、n−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、スチレンオキシドまたはシクロヘキセンオキシドである。殊に、前記のジオールは、エトキシル化およびプロポキシル化されている。アルコキシル化生成物は、公知方法で前記アルコールをアルキレンオキシド、殊にエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドと反応させることによって得られる。特に、アルコキシル化度は、ヒドロキシル基1個当たり0〜20、殊に0〜10であり、即ち、ヒドロキシル基1モルは、特にアルキレンオキシド20モルまで、殊に10モルでアルコキシル化されていてよい。
【0026】
好ましい実施態様において、式Iの化合物は、アルコキシル化されていない。
【0027】
式Iの化合物は、相応する3−メチル−2−アルキルブタナールとホルムアルデヒドとのカンニザロ反応(Cannizarro-Reaktion)によって得られる。このような1,3−プロパンジオール誘導体を製造する方法は、既に公知であり、英国特許第1009915号明細書または米国特許第3975450号明細書中に記載されている。1,3−プロパンジオールは、他の選択可能な方法によれば、相応する3−メチル−2−アルキルブタナールをホルムアルデヒドとアルドール反応させ、相応する2−ヒドロキシメチル−3−メチル−2−アルキルブタナールに変え、これを引続き水素化することによって得ることができる。アルドール反応は、例えばWO 01/51438、WO 97/17313またはWO 98/29374中に記載されている。水素化は、欧州特許出願公開第44412号明細書または欧州特許出願公開第44444号明細書の開示内容と同様に実施されてよい。2−イソプロピル−2(3−メチルブチル)−1,3−プロパンジオールの製造のためには、相応する3−メチル−2−アルキルブタナールは、欧州特許出願公開第487035号明細書(第2〜5頁)の記載と同様に、イソバレルアルデヒドをホモアルドール縮合させ、引続き二重結合を選択的に水素化することによって製造される。
【0028】
ポリマーについて
ポリマーは、式Iの1つ以上の化合物の共用しながらモノマー化合物を重縮合するかまたはポリ付加形成することによって得られ;ポリマーは、望ましい場合には、別の反応またはさらなる反応によって化学的に変性されてよく、例えば官能化または架橋されてよい。
【0029】
モノマー化合物の重縮合の場合には、水またはアルコールの脱離を生じ、ポリ付加形成の場合には、脱離を生じない。
【0030】
好ましい重縮合物は、ジオールまたはポリオールを、反応性誘導体、例えば無水物またはエステルの形で使用されてもよいジカルボン酸またはポリカルボン酸と反応させることによって得られるポリエステルである。
【0031】
以下、ポリエステルの概念は、50質量%超、特に有利に70質量%超、殊に90質量%超がジオール、ポリオール、ジカルボン酸およびポリカルボン酸から選択された合成成分からなるポリマーである。
【0032】
また、ジアルキルカーボネートまたは環式カーボネートをジオールと反応させることによってアルコールの脱離下に得られるポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0033】
ポリ付加物としては、殊にポリウレタンが挙げられる。殊に、ポリウレタンは、本発明によるポリマーの繰返し単位を含有していてもよい。
【0034】
例えば、ラクトンまたはラクタムを開環重合させることによって得られるポリ付加物もこれに該当する。
【0035】
以下、ポリウレタンの概念は、50質量%超、特に有利に70質量%超、殊に90質量%超がジイソシアネート、ポリイソシアネート、ジオールおよびポリオールから選択された合成成分からなるポリマーである。
【0036】
前記の全てのポリマーは、該ポリマーが本質的にジオールおよびこのジオールと反応性の化合物、例えばジカルボン酸またはポリカルボン酸(ポリエステル)またはジイソシアネートもしくはポリイソシアネート(ポリウレタン)とから構成されていることで共通している。
【0037】
好ましいポリマーは、ポリエステルおよびポリウレタンであり、特に好ましいのは、ポリエステルである。
【0038】
本発明によるポリマーは、特に式Iの化合物またはそのアルコキシル化誘導体のモノマー構成単位の下記の含量を有する。この場合ポリマー中の式Iの化合物またはそのアルコキシル化誘導体の含量についての下記の質量の記載は、式Iの化合物またはそのアルコキシル化化合物に由来するポリマーの単位に関連する。ポリ付加物の場合、前記単位の質量は、そのまま式Iの化合物またはそのアルコキシル化誘導体に相当し、重縮合物の場合には、前記単位の質量は、ヒドロキシル基の水素原子の質量の値の点で減少されている。
【0039】
好ましいポリマーは、少なくとも0.5質量%、特に有利に少なくとも2質量%、殊に有利に少なくとも5質量%、殊に少なくとも10質量%、特に好ましい実施態様において少なくとも20質量%が式Iの化合物またはそのアルコキシル化誘導体からなる。ジオールと反応性の別の化合物の共用は、強制的であるので、ポリマーは、一般に90質量%以下、殊に60質量%以下、または50質量%以下が式Iの化合物またはそのアルコキシル化誘導体からなる。
【0040】
式Iの化合物またはそのアルコキシル化誘導体と共に、ポリマーは、合成成分とは別のジオールまたはポリオールを含有していてもよい。1つの好ましい実施態様において、前記ポリマーが構成されているジオールおよびポリオールの少なくとも10質量%、特に有利に少なくとも25質量%、殊に有利に少なくとも50質量%は、式Iの化合物またはそのアルコキシル化誘導体である。
【0041】
殊に、前記ポリマーが構成されているジオールおよびポリオールの少なくとも70質量%または少なくとも90質量%は、式Iの化合物またはそのアルコキシル化誘導体である。
【0042】
特殊な実施態様において、前記ポリマーが構成されている全てのジオールおよびポリオールの100質量%は、式Iの化合物またはそのアルコキシル化誘導体である。
【0043】
ポリエステルの他の成分について
ポリエステルは、式Iの化合物またはそのアルコキシル化誘導体と共に、合成成分とは別のジオールまたはポリオールを含有していてもよい。
【0044】
他のジオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、およびこれらの高度に縮合された代表例、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルコキシル化フェノール系化合物、例えばエトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。更に、適したポリオールとしては、三官能価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリトリット、ネオペンチルグリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリット、ソルビット、マンニットが挙げられる。
【0045】
前記のジオールまたはポリオールは、アルコキシル化されていてよく、殊にエトキシル化およびプロポキシル化されていてよい。アルコキシル化生成物は、公知方法で前記アルコールをアルキレンオキシド、殊にエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドと反応させることによって得られる。アルコキシ化度は、ヒドロキシル基1個当たり0〜20モルであることが好ましく、すなわち1モルのヒドロキシル基は、好ましくは20モルまでのアルキレンオキシドでアルコキシ化されていてよい。
【0046】
更に、ポリエステルは、ジカルボン酸またはポリカルボン酸を合成成分として含有する。ジカルボン酸またはポリカルボン酸は、ポリエステルの製造の際に反応性誘導体の形でも、例えば無水物またはエステルとして使用されてよい。適したジカルボン酸は、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、その異性体および水素化生成物、例えばテトラヒドロフタル酸である。不飽和ポリエステルには、マレイン酸およびフマル酸もこれに該当する。
【0047】
ポリエステルは、モノアルコールまたはモノカルボン酸を成分として含有していてもよく、この種の化合物を共用することによって、分子量は、調節されてもよいし、制限されてもよい。
【0048】
特殊な性質を達成させるために、ポリエステルは、特殊な官能基を含有することができる。水溶性または水分散性のポリエステルは、必要量の親水性基、例えばカルボキシル基またはカルボキシレート基を含有し、水溶性または水分散性を達成する。例えば、粉末塗料のために架橋性ポリエステルは、官能基を含有し、この官能基は、使用される架橋剤と架橋反応を生じる。その際、ヒドロキシル基を含有する化合物、例えばヒドロキシアルキルアミドとの架橋が意図されている場合には、同様にカルボン酸基が重要である。官能基は、例えば不飽和ジカルボン酸(マレイン酸)でのポリエステルの変性または(メタ)アクリル酸との反応によるエチレン系不飽和基であってもよい。この種のポリエステルは、熱的または化学的に架橋可能であるかまたは放射線硬化可能である。
【0049】
不飽和ポリエステルは、単一または多重のエチレン系飽和のラジカル重合可能な化合物、例えばスチロン、C1〜C10アルキルアクリレート、ジアルキルアクリレート、例えばエタンジオールまたはブタンジオールのジアクリレートと共重合されてもよい。そのために、不飽和ポリエステルは、例えばWO 00/23495および欧州特許第1131372号明細書の記載と同様にエチレン系不飽和モノマーとの混合物で使用されてよい。この場合、前記のエチレン系不飽和化合物は、同時に溶剤(反応性希釈剤)として使用され、したがって、この混合物は、特に前記化合物中にポリエステルの溶液として存在する。この混合物は、例えば塗料または含浸剤として、殊にラミネートを製造するために使用されてもよい。硬化は、熱的または光化学的に行なうことができ、双方の場合には、場合により開始剤を添加しながら行なうこともできる。
【0050】
ポリウレタンの他の成分について
ポリウレタンは、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートを本質的な合成成分として含有する。
【0051】
殊に、ジイソシアネートX(NCO)2を挙げることができ、この場合、Xは、4〜15個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、6〜15個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基または7〜15個の炭素原子を有する芳香脂肪族炭化水素基を表わす。この種のジイソシアネートの例は、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,5,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,2−ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)−プロパン、トリメチルヘキサンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4′−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、2,4′−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、p−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(HMDI)の異性体、例えばトランス/トランス−異性体、シス/シス−異性体およびシス/トランス−異性体ならびにこれらの化合物からなる混合物である。
【0052】
この種のジイソシアネートは、商業的に入手可能である。
【0053】
前記のイソシアネートの混合物として、特に、ジイソシアナトトルエン及びジイソシアナトジフェニルメタンのそれぞれの構造異性体の混合物が重要であり、殊に、2,4−ジイソシアナトトルエン80mol%と2,6−ジイソシアナトトルエン20mol%とからなる混合物が好適である。更に、芳香族イソシアネート、例えば2,4−ジイソシアナトトルエンおよび/または2,6−ジイソシアナトトルエンと、脂肪族または脂環式のイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネートまたはIPDIとの混合物が特に有利であり、その際、脂肪族イソシアネートと芳香族イソシアネートとの好ましい混合比は4:1〜1:4である。
【0054】
ジイソシアネートまたはポリイソシアネートと反応されるジオールまたはポリオールとして、一般式Iの本発明による化合物は、純粋な物質として、または一般式Iの化合物の混合物として使用されるか、または別のジオールもしくはポリオールとの混合物で使用される。殊に、本発明によるポリマーは、ジオールまたはポリオールとして使用されてもよい。
【0055】
ポリウレタンの場合、ジオールまたはポリオールとして、特にポリエステルジオールまたはポリエステルポリオールが使用されてもよい。以下、一般的にポリエステロールと呼称される。この種のポリエステロールは、予めジオールまたはポリオールとジカルボン酸またはポリカルボン酸との反応によって得られる(ポリエステルについて上記記載参照)。一般式Iの化合物または一般式Iの化合物の混合物は、この種のポリエステロールの形でポリウレタン中に含有されていてよい。更に、ジオールおよびポリオールとして上記のものには、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートと直接に反応される合成成分、またはポリエステロールの成分がこれに該当する。ポリエステロールのためのジカルボン酸またはポリカルボン酸として、同様に上記のものがこれに該当する。
【0056】
ポリウレタンは、モノアルコールまたはモノイソシアネートを成分として含有していてもよく、この種の化合物を共用することによって、分子量は、調節されてもよいし、制限されてもよい。
【0057】
特殊な性質を達成させるために、ポリウレタンは、特殊な官能基を含有することができる。水溶性または水分散性のポリエステルは、必要量の親水性基、例えばカルボキシル基またはカルボキシレート基を含有し、水溶性または水分散性を達成する。適した合成成分として、例えばジメチロールプロピオン酸が挙げられる。架橋性ポリウレタンは、官能基を含有し、この官能基は、使用される架橋剤と架橋反応を生じる。ポリウレタンは、ウレタン基と共に、殊に別の官能基、例えば尿素基を含有することができ、この尿素基は、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートとアミノ化合物との反応によって生じる。
【0058】
ポリマーは、望ましい場合には、使用の場合または殊に後の時点でも、例えば使用の場合に別の反応またはさらなる反応によって化学的に変性されてよく、例えば官能化または架橋されてよい。
【0059】
殊に、ポリマーは、架橋性基を含有することができ、この架橋性基は、必要な条件が存在すると直ちに架橋反応を生じる。ポリマーは、殊に架橋剤との混合物でも使用されてよく、この架橋剤は、望ましい時点で必要な条件下で(殊に、高められた温度で)ポリマーとの架橋反応を生じる。
【0060】
架橋剤の反応性により、一成分(1K)系と二成分(2K)系とは、区別される。2K系の場合、架橋剤は、後の使用の直前で初めて添加され、1K系の場合には、架橋剤は、早期に系に添加されることができ(潜在的架橋剤)、架橋は、後に調節された条件で、例えば溶剤の除去および/または温度上昇の際に初めて起こる。
【0061】
普通の架橋剤は、例えばイソシアネート、エポキシド、酸無水物であるか、またはラジカル重合可能なエチレン系不飽和基を有するポリマーの場合には、エチレン系不飽和モノマー、例えばスチレンでもある。
【0062】
ポリマーの使用について
ポリマーは、熱可塑性組成物の成分として適している。ポリマー、例えばポリエステルまたはポリウレタンは、当該ポリマーが熱可塑性の性質を有するようにするために、特に十分に高い分子量を有する。
【0063】
熱可塑性組成物は、一般に成形体の製造に使用され、この場合には、通常の方法、例えば射出成形、押出または吹込成形が使用される。
【0064】
殊に、ポリマーは、塗料、シーラントまたは接着剤の成分として適している。
【0065】
塗料、シーラントまたは接着剤は、本発明によるポリマーを特に結合剤として含有する。前記の塗料、シーラントまたは接着剤は、他の結合剤および他の添加剤、例えば酸化防止剤、安定剤、染料、顔料、流展助剤、濃稠化剤または湿潤助剤を含有することができる。
【0066】
塗料、シーラントまたは接着剤は、水性材料または溶剤含有材料である。好ましいのは、水性材料である。この種の材料は、本発明による結合剤を特に水または有機溶剤、またはこれらの混合物中の溶液または分散液の形で含有する。必要である限り、ポリマーは、付加的な官能基を含有し、この官能基は、水または有機溶剤中、有利に水中での溶解度または分散可能性に影響を及ぼす(上記参照)。
【0067】
塗料、シーラントまたは接着剤は、水または有機溶剤をできる限り含有しない材料である(いわゆる、100%系)。この種の材料は、一般に材料100質量部に対して水またはそれ以外の有機溶剤10質量部未満(沸点150℃未満、1バール)を含有する。特に有利には、前記の材料は、材料100質量部に対して水またはそれ以外の有機溶剤2質量部未満、殊に有利に1質量部未満または0.5質量部未満(沸点150℃未満、1バール)を含有する。
【0068】
この場合には、室温でなお流動能を有する材料が重要であるか、または例えば粉末として存在し、高められた温度で初めて加工される材料が重要である。
【0069】
前記材料、殊に塗料は、放射線硬化可能であることができるか、或いは放射線硬化可能な材料または塗料として使用されることができる。特に、前記材料は、そのために放射線硬化可能な本発明によるポリマー、殊に放射線硬化可能なポリエステルを含有する(上記参照)。放射線硬化は、エネルギーに富んだ放射線、例えば電子線またはUV光を用いて行なうことでき;UV光を使用する場合、ポリマーには、特に光開始剤を添加することができる。
【0070】
本発明の範囲内での好ましい使用は、粉末塗料としての本発明によるポリマーの使用であるか、或いは粉末塗料中への本発明によるポリマーの使用である。特に、ポリエステルは、架橋性である粉末塗料として使用される。好ましい実施態様において、粉末塗料は、ポリエステル、架橋剤および他の添加剤、例えば顔料および流展助剤を高い温度で混合し、および溶融することによって製造される。この混合物は、引続く押出および相応する押出品の加工によって粉末の形にもたらすことができる。
【0071】
粉末塗料は、通常の方法で、例えば静電的にも、望ましい支持体上、例えば金属表面、プラスチック表面または木材表面を有する支持体上に被覆されることができる。
【0072】
本発明によるポリマーは、僅かな粘度、即ち僅かな溶融粘度(100%の系)または僅かな溶液粘度(ポリマー溶液)を有する。僅かな粘度は、簡単な取扱を可能にし、良好な被覆特性を生じさせ、および溶液または分散液中でのよりいっそう高い固体含量または顔料含有材料中でのよりいっそう僅かな結合剤含量を可能にする。本発明によるポリマーは、殊に極めて加水分解安定性でもある。
【0073】
本発明によるポリマーは、塗料、シーラントおよび接着剤への使用の際に良好な機械的性質を生じさせ、殊に塗料、例えば粉末塗料は、高い衝撃靭性、良好な弾性率および良好な光沢を有する。
【実施例】
【0074】
実施例
2−イソプロピル−2−メチル−1,3−プロパンジオールの製造
冷却器および窒素シーリング(Stickstoffabdeckung)を備えた4 lの攪拌式フラスコ中に、2,3−ジメチル−ブタナール粗製生成物(250g、2.5モル)(2,3−ジメチルブタナール88%および4−メチル−ペンタナール11%)およびホルムアルデヒド(水中で30%、750g、7.5モル)をメタノール120gと一緒に装入した。1.5時間で苛性ソーダ液(水中で25%、645g、4モル)を滴加し、50℃で昇温させた。塩基の添加後に、このバッチ量をさらに50℃で30分間攪拌し、引続き室温で蟻酸でpH7に調節した。相を分離した。水相は、ジオールを含有していた(12%まで)ので、この水相をアミルアルコールで抽出した。合わせた有機相から減圧下でメタノールおよびアミルアルコールを取り除いた。生成物の粗製蒸留を蒸留ブリッジにより行なった(4ミリバールで109〜135℃)。蒸留精製を充填塔中で実施した(4ミリバールで108〜106℃)。生成物を98%の純度で固体としておよび92%の収率で得た。
【0075】
構造をGC、GC−MSおよびNMR(1H、13C)により測定した。
【0076】
2−イソプロピル−5−メチル−2−ヘキセナールの製造
冷却器および窒素シーリングを備えた4 lの攪拌式フラスコ中に、イソバレルアルデヒド2150gを(15質量%の)メタノール322gと一緒に室温で装入した。1時間で苛性ソーダ液(水中で25%、600g、3.75モル)を冷却下(最大温度60℃)で滴加した。塩基の添加後、このバッチ量をさらに50℃で30分間攪拌し、引続き室温で酢酸でpH7に調節した。相を分離した。有機相(1993g、収率82%)は、GC面積%により次のものを含有していた:メタノール5%、2−イソプロピル−5−メチル−2−ヘキセナール85%、なかんずく2−イソプロピル−5−メチル−1,3−ヘキサンジオール5%。
【0077】
2−イソプロピル−5−メチル−2−ヘキサナールへの2−イソプロピル−5−メチル−2−ヘキセナールの選択的水素化
アルドール縮合による有機相(1700g)をPd/C1.5%(25.5g、10%の)でオートクレーブ中で20バールおよび80℃で5時間に亘って水素化した。GC面積%による生成物の組成は、次の通りであった:2−イソプロピル−5−メチル−2−ヘキセナール1.8%、2−イソプロピル−5−メチル−2−ヘキサナール70%、2−イソプロピル−5−メチル−2−ヘキセノール4%、なかんずく2−イソプロピル−5−メチル−1,3−ヘキサンジオール5%。(水素化の収率:81%)。
【0078】
2−イソプロピル−2−(3−メチルブチル)−1,3−プロパンジオールの製造
冷却器および窒素シーリングを備えた4 lの攪拌式フラスコ中に、水素化生成物665g(2−イソプロピル−5−メチル−2−ヘキサナール中70%の)およびホルムアルデヒド(水中で30%、900g、9モル)をメタノール583gと一緒に室温で装入した。1.5時間で苛性ソーダ液(水中で25%、768g、4.8モル)を滴加し、50℃で昇温させた。塩基の添加後、このバッチ量をさらに50℃で30分間攪拌し、引続き室温で蟻酸でpH7に調節した。相を分離した。水相は、ジオールを含有していた(20%まで)ので、この水相をアミルアルコールで抽出した。合わせた有機相から減圧下でメタノールおよびアミルアルコールを取り除いた。生成物の粗製蒸留を蒸留ブリッジにより行なった(2ミリバールで124〜165℃)。蒸留精製を充填塔中で実施した(2.5ミリバールで塔底温度180〜178℃、塔頂温度126〜129℃)。生成物を95%の純度で無色の液体としておよび69%の収率で得た。構造をGC、GC−MSおよびNMR(1H、13C)により測定した。
【0079】
使用例
略符号
ADS:アジピン酸
D:多分散性指数(Mw/Mn
DPG:ジプロピレングリコール
DBZO:ジブチル錫オキシド
DSC:示差走査熱量測定
GPC:ゲル浸透クロマトグラフィー
IPS:イソフタル酸
IMBPD:2−イソプロピル−2−(3−メチルブチル)−プロパン−1,3−ジオール
IMPD:2−イソプロピル−2−メチル−プロパン−1,3−ジオール
n:[g/mol]での数平均分子量
w:[g/mol]での質量平均分子量
nFA:非揮発性含量
NPG:ネオペンチルグリコール
OHZ:OH価
SZ:酸価
g:ガラス転移温度
TMP:トリメチロールプロパン
TMSA:無水トリメリット酸
TPS:テレフタル酸
η1:溶融粘度
η2:溶液粘度。
【0080】
ポリマーの特性決定法
分子量の測定をGPCで実施した。固定相:Polymer Laboratories社のPL−GELとして商業的に入手可能な、高度に架橋された多孔質ポリスチレンジビニルベンゼン。流展剤:THF。流速:0.3ml/分。PSS社のポリエチレングリコール28700〜194ダルトンでの較正。ポリエステルの酸価をDIN規格法53169により測定する。ポリエステルの溶融粘度η1の測定を、円錐−平板型粘度計を用いて160℃で振動モードで0.1rad/秒の角速度で実施する。ポリエステルの溶液粘度η2の測定を、円錐−平板型粘度計を用いて室温で回転モードで実施する。この溶液は、ポリエステル70%と溶剤30%(Solvesso 100TM/Solvenon PMTM 5/1の混合物)とからなる。
【0081】
ポリエステルのTgをASTM D3418によるDSCにより測定する。
【0082】
COOH基を有する粉末ポリエステルの製造
ポリエステルP1
工程I OH基含有オリゴマーの製造
IMBPD150.4g(0.80モル)、NPG266.3g(2.56モル)、TMP53.6g(0.40モル)、TPS531.3g(3.20モル)および触媒DBZO0.7gを、温度計、保護ガス導入管、攪拌機および還流冷却器を装備した2 lの四口フラスコ中に装入する。窒素流を通過させながら、還流下に反応体混合物を急激に180℃に加熱する。水を連続的に留去する。引続き、この反応混合物を段階的に3〜5時間で攪拌しながら窒素流の下で230℃に加熱し、230℃でオリゴマーが10〜15mg KOH/gのSZを有することになるまでさらに攪拌する。オリゴマーのSZは、11mg KOH/gである。
【0083】
工程II COOH基含有ポリマーP1の製造
上記の合成されたオリゴマーを180℃に冷却し、その後にIPS132.8g(0.80モル)を添加する。温度を230℃に上昇させ、この条件下でポリマーが30〜40mg KOH/gのSZを有することになるまでさらに縮合させる。重合により生じる水を反応の終結時に弱い真空によってストリッピングすることができ、望ましいSZが達成される。分枝鎖状のCOOH基含有粉末ポリエステルP1が得られ、この粉末ポリエステルのSZは、31mg KOH/gである。P1は、72℃のガラス転移温度Tgおよび160℃での194Pa.sの溶融粘度η1を有する。GPC分析は、次の値を生じる:Mn=2700g/mol;D=16(第1表参照)。
【0084】
ポリエステルP2〜P7
P1の製造の場合と同様に方法を実施し、この場合組成は、第1表中に記載されている。分枝鎖状のCOOH基含有粉末ポリエステルが得られ、この粉末ポリエステルの特性データSZ、Mn、D、Tgおよびη1は、第1表中にリストアップされている。
【0085】
P2 比較例2
P3 実施例3
P4 実施例4
P5 比較例5
P6 実施例6
P7 比較例7
【0086】
【表1】

【0087】
本発明によるポリマーP1、P3、P4およびP6は、比較可能なSZおよびMnの相応する比較ポリマーP2、P5およびP7よりも明らかに僅かな溶融粘度を有する。
【0088】
OH基を有する非晶質ポリエステルの製造
ポリエステルP8
IMPD155.73g(1.18モル)、NPG194.68g(1.87モル)、TMP158.09g(1.18モル)、IPS46.97g(2.75モル)、ADS172.25g(1.18モル)および触媒DBZO0.5gを、温度計、保護ガス導入管、攪拌機および還流冷却器を装備した、2 lの四口フラスコ中に装入する。窒素流を通過させながら、還流下に反応体混合物を急激に160℃に加熱する。水を連続的に留去する。引続き、この反応混合物を段階的に3〜5時間で攪拌しながら窒素流の下で230℃に加熱し、230℃でポリエステルP8が10〜15mg KOH/gのSZを有することになるまでさらに攪拌する。分枝鎖状の非晶質OH基含有ポリエステルP8が得られ、このポリエステルのSZは、12mg KOH/gである。P8は、100mg KOH/gのOHZおよび26℃のガラス転移温度Tgを有する。GPC分析は、次の値を生じる:Mn=2000g/mol;D=7.4。P8は、160℃で2.9Pa.sの溶融粘度を有する。室温でのポリエステルP8の溶液粘度η2(溶剤としてのnFA70%およびSolvesso 100TM/Solvenon PMTM 5/1の混合物を有するP8溶液)は、29.8Pa.sである(第2表参照)。
【0089】
ポリエステルP9およびP10
P8の製造の場合と同様に方法を実施し、この場合組成は、第2表中に記載されている。ポリエステルP9およびP10の特性データは、第2表中にリストアップされている。
【0090】
P9 IMBPDを有する実施例
P10 NPGだけを有する比較例
【0091】
【表2】

【0092】
本発明によるポリマーP8およびP9は、比較ポリマーP10よりも明らかに僅かな溶融粘度および明らかに僅かな溶液粘度を有する。
【0093】
水希釈可能なポリエステルの製造
ポリエステルP11
工程I OH基含有オリゴマーの製造
IMPD170.5g(1.29モル)、NPG302.2g(2.91モル)、IPS401.9g(2.42モル)および触媒DBZO0.5gを、温度計、保護ガス導入管、攪拌機および還流冷却器を装備した、2 lの四口フラスコ中に装入する。窒素流を通過させながら、還流下に反応体混合物を急激に160℃に加熱する。水を連続的に留去する。引続き、この反応混合物を段階的に3〜5時間で攪拌しながら窒素流の下で220℃に加熱し、220℃で反応混合物が10〜15mg KOH/gのSZを有することになるまでさらに攪拌する。オリゴマーのSZは、14mg KOH/gである。
【0094】
工程II ポリマーP11の製造
上記の合成されたオリゴマーを160℃に冷却し、その後にTMSA155.0g(0.81モル)を添加する。温度を230℃に上昇させ、この条件下でポリマーが42〜48mg KOH/gのSZを有することになるまでさらに縮合させる。重合により生じる水を反応の終結時に弱い真空によってストリッピングすることができ、望ましいSZが達成される。直鎖状の水希釈可能なポリエステルP11が得られ、このポリエステルのSZは、45mg KOH/gである。P11は、48℃のガラス転移温度Tgおよび160℃で3.0Pa.sの溶融粘度η1を有する。GPC分析は、次の値を生じる:Mn=1180g/mol;D=2.1(第3表参照)。
【0095】
P11の加水分解安定性の評価
P11の20%のコロイド状水溶液を製造し、N,N−ジメチルエタノールアミンでpH8にもたらし、および45℃で貯蔵する。コロイド状溶液が沈殿するまでの時間的間隔をポリエステルの加水分解安定性のための基準として採用する(第4表参照)。
【0096】
ポリエステルP12およびP13
P11の製造の場合と同様に方法を実施し、この場合組成は、第3表中に記載されている。ポリエステルP12およびP13の特性データは、第3表中にリストアップされている。
【0097】
P12 IMBPDを有する実施例
P13 NPGだけを有する比較例
【0098】
【表3】

【0099】
本発明によるP11およびP12は、比較例P13よりも明らかに僅かな溶融粘度を有する。
【0100】
【表4】

【0101】
本発明によるポリマーP11およびP12は、比較ポリマーP13よりも加水分解安定性である。
【0102】
粉末塗料の製造
参照結合剤(REF)として、DSM Resin B.V.社のポリエステル樹脂Uralac P−862(Tg58.0℃、SZ35mg KOH/g)を利用する。粉末塗料PL3、PL4、PL5、PL6、PL7およびPLRの製造のために、相応して粉末ポリエステルP3、P4、P5、P6、P7またはPEF570.0gをそれぞれ商業的な硬化剤Primid(登録商標)XL−552 30.0g(EMS社のヒドロキシルアルキルアミド)、チタンジオキシド顔料Kronos(登録商標)2160 300.0g(Kronos社)、流展剤Resiflow(登録商標)PV5 9.0g(Worlee Chemie GmbH社)およびベンゾイン2,5gと実験室用汎用ミキサー(MIT Mischtechnik GmbH社)中で混合し、溶融し、および引続き二軸押出機(MP 19、APV社)中で80〜100℃で押出す。次に、得られた押出物を粗大に破砕し、微粉砕し、および篩別する。こうして得られた粉末塗料PL3、PL4、PL5、PL6、PL7およびPLRを次の試験に掛ける:
【表5】

【0103】
引続き、粉末塗料を鋼製試験薄板(Qパネル R−36)上に静電塗布し、160℃で15分間焼き付ける。この場合、60μm〜80μmの層厚を達成しようと努力される。生じる塗膜は、次の試験に掛けられる:
【表6】

【0104】
塗料試験の結果は、第5表および第6表中に記載されている。
【0105】
【表7】

【0106】
本発明による粉末塗料は、極めて良好な使用技術的性質を有する。PL3は、PL5よりも僅かな黄変傾向を有し;PL4は、高度に光沢を有し、およびPL5よりも良好な機械的性質を達成する。
【0107】
【表8】

【0108】
本発明による粉末塗料PL6は、良好な使用技術的性質を有し、黄変および外観の点でPL7と比較して利点を有する。
【0109】
固体に富んだ一成分系塗料(1K)の製造
固体に富んだ1K塗料、1K−PL8、1K−PL9および1K−PL10の製造のために、相応して酢酸ブチル中のポリエステルP8、P9およびP10の70%の溶液を製造する。70%のポリエステル溶液80gをそれぞれ商業的な硬化剤Luwipal(登録商標)066 14g(BASF社のメラミン縮合体)、n−ブタノール4gおよび触媒p−トルエンスルホン酸2gと混合する。生じる溶液(nFA70%)をガラス板および鋼製試験薄板上にバーコーターを用いて塗布する。この場合、40μm〜50μmの層厚を達成しようと努力される。引続き、被覆された試験薄板を140℃で30分間焼き付ける。生じる塗膜は、次の試験に掛けられる:
【表9】

【0110】
塗料試験の結果は、第7表中に記載されている。1K−PL8および1K−PL9は、本発明によるものであり、1K−PL10は、比較例として役立つ。
【0111】
【表10】

【0112】
本発明による固体に富んだ塗料1K−PL8および1K−PL9は、極めて良好な特性プロフィールを示す。殊に、IMPDおよびIMBPDは、被膜の機械的性質ならびに酸安定性の点でNPGと比較して利点を示す。
【0113】
固体に富んだ二成分系塗料(2K)の製造
固体に富んだ2K塗料、2K−PL8、2K−PL9および2K−PL10の製造のために、相応して酢酸ブチル中のポリエステルP8、P9およびP10の70%の溶液を製造する。70%のポリエステル溶液70gをそれぞれ流展剤Baysilon(登録商標)OL17の溶液1g(酢酸ブチル中10%の)(Borchers GmbH社のポリエステル)、触媒のジブチル錫ジラウレート溶液1g(酢酸ブチル中5%の)、メトキシプロピルアセテート3g、商業的な硬化剤Basonat(登録商標)HI 190 BS 20g(90%の、BASF社のポリイソシアネート)および酢酸ブチル5gと混合する。生じる溶液(nFA67%)をガラス板および鋼製試験薄板上にバーコーターを用いて塗布する。この場合、40μm〜50μmの層厚を達成しようと努力される。引続き、被覆された試験薄板を80℃で30分間焼き付ける。生じる塗膜は、次の試験に掛けられる:
【表11】

【0114】
塗料試験の結果は、第8表中に記載されている。2K−PL8および2K−PL9は、本発明によるものであり、2K−PK10は、比較例として役立つ。
【0115】
【表12】

【0116】
本発明による固体に富んだ塗料2K−PL8および2K−PL9は、極めて良好な特性プロフィールを示す。機械的性質ならびに加水分解安定性は、NPGだけを基礎とする塗料2K−PL10の場合よりも明らかに良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー化合物の重縮合またはポリ付加形成によって得られるポリマーであって、式I
【化1】

〔式中、Rは、1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表わす〕で示される2−イソプロピル−2−アルキル−1,3−プロパンジオールまたはそのアルコキシル化された誘導体がモノマー化合物として使用されている、モノマー化合物の重縮合またはポリ付加形成によって得られるポリマー。
【請求項2】
モノマー化合物または式Iの該化合物のアルコキシル化された誘導体としてRがメチルおよび/または3−メチル−ブチルを表わすような化合物が使用されている、請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
式Iの化合物がアルドール−カンニザロ反応における3−メチル−2−アルキルブタナールとホルムアルデヒドとの反応によって得られたものであるかまたはアルドール反応および引続く水素化によって得られたものである、請求項2記載のポリマー。
【請求項4】
ポリエステルである、請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーが(アルコールの脱離下でジアルキルカーボネートまたは環式カーボネートとジオールとの反応によって得られた)ポリカーボネートジオールである、請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項6】
ポリウレタンである、請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項7】
ラクトンまたはラクタムの開環重合によって得られたポリ付加物である、請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項8】
成形品を製造するための、請求項1から7までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料の使用。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリマーおよび/またはポリマーの繰返し単位を含有する熱可塑性組成物。
【請求項10】
成形体を製造するための請求項9記載の熱可塑性組成物の使用。
【請求項11】
塗料、シーラントまたは接着剤を製造するための請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリマーの使用。
【請求項12】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリマーの繰返し単位を含有する、塗料、シーラントまたは接着剤。
【請求項13】
水性材料である、請求項12記載の塗料、シーラントまたは接着剤。
【請求項14】
粉末塗料を製造するための請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリマーの使用。
【請求項15】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリマーの繰返し単位を含有する粉末塗料。
【請求項16】
放射線硬化可能な塗料を製造するための請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリマーの使用。
【請求項17】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリマーの繰返し単位を含有する放射線硬化可能な塗料。

【公表番号】特表2011−528745(P2011−528745A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519142(P2011−519142)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059326
【国際公開番号】WO2010/010075
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】